(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】コーティングデバイスおよびコーティング方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/06 20060101AFI20230221BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20230221BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
G01B11/06 Z
B05D7/00 K
B05D3/00 D
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020138880
(22)【出願日】2020-08-19
【審査請求日】2020-12-25
(32)【優先日】2019-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516381459
【氏名又は名称】シュトゥルム マシーネン ウント アラゲンバウ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Sturm Maschinen- & Anlagenbau GmbH
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 10, 94330 Salching, Deutschland
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【氏名又は名称】井上 一
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【氏名又は名称】黒田 泰
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング ウルリッヒ
【審査官】山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-044206(JP,A)
【文献】特表2012-530926(JP,A)
【文献】特開2012-225848(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第10104684(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
B05D 1/00-7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスク(50
を回転させる回転装置
と、回転する前記ディスク(50)に対して前記ディスク(50)の径方向に移動するレーザコーティングデバイスと、コーティングプロセスの一環として、前記ディスク(50)の回転中に前記ディスク(50)のコーティング
(51)の検査を行うためのセンサ・デバイス(100、200、300)
と、を有するコーティングデバイスであって、
センサ・デバイス(100、200、300)は、前記コーティングプロセスで前記ディスク(50)に塗布された前記コーティング(51)の層厚さを判定する第1の光学センサ・システム(110、210、310)を備え、
前記第1の光学センサ・システム(110、210、310)が、少なくとも1つの第1の位置ベースの測定値と1つの第2の位置ベースの測定値とを同時に確認するように構成され、
前記第1および第2の位置ベースの測定値が、前記第1の光学センサ・システム(110、210、310)と前記ディスク(50)の表面との間の距離を表わし、
前記第1の光学センサ・システム(110、210、310)が、前記ディスク(50)のコーティング済み領域の前記第1の位置ベースの測定値、および前記ディスク(50)のコーティングなし領域の前記第2の位置ベースの測定値を確認し、
前記第1の光学センサ・システム(110、210、310)が、前記ディスク(50)の中央領域から縁部領域まで延在する少なくとも1つの直線状ガイド(131、132、231、232、331、332)を備え、
前記第1および第2の位置ベースの測定値を用いて、前記第1の位置ベースの測定値の位置における前記ディスク(50)の層厚さを計算する制御及び分析装置が設けられること、
を特徴とするコーティングデバイス。
【請求項2】
前記第1の光学センサ・システム(110、210)が、前記第1の位置ベースの測定値を確認するための第1の光学センサ(111、211)と、前記第2の位置ベースの測定値を確認するための第2の光学センサ(112、212)とを備えること、
を特徴とする請求項1に記載のコーティングデバイス。
【請求項3】
前記第1および第2の光学センサ(111、112)が、向かい合う位置において前記ディスク(50)の両側に配置されること、
を特徴とする請求項2に記載のコーティングデバイス。
【請求項4】
前記第1および第2の光学センサ(211、212)が、互いに径方向にオフセットされる位置において前記ディスク(50)の第1の面側に配置されること、
を特徴とする請求項2に記載のコーティングデバイス。
【請求項5】
互いに径方向にオフセットされるような位置において前記ディスク(50)の第2の面側に配置される第3(213)および第4(214)の光学センサが設けられること、
を特徴とする請求項4に記載のコーティングデバイス。
【請求項6】
少なくとも前記第1および第2の光学センサ(111、112、211、212)が、共焦点クロマティック・センサとして構成されること、
を特徴とする請求項2に記載のコーティングデバイス。
【請求項7】
前記少なくとも1つの第1の位置ベースの測定値および前記第2の位置ベースの測定値を同時に確認する前記第1の光学センサ・システム(310)が、前記ディスク(50)の径方向における測定のために前記ディスク(50)の第1の面側に配置された第1の三角測量センサ(311)を備えること、
を特徴とする請求項1に記載のコーティングデバイス。
【請求項8】
前記第1の光学センサ・システム(300)が、前記第1の三角測量センサ(311)に向かい合う位置において前記ディスク(50)の第2の面側に配置される第2の三角測量センサ(312)を備えること、
を特徴とする請求項7に記載のコーティングデバイス。
【請求項9】
前記第1の光学センサ・システム(110、210、310)が、センサ(111、112、211、212、213、214、311、312)を含み、各センサ(111、112、211、212、213、214、311、312)が、直線状ガイド(131、132、231、232、331、332)および/または調節装置(141、142、241、242、341、342)を備えること、
を特徴とする請求項1に記載のコーティングデバイス。
【請求項10】
前記ディスク(50)の同じ面側に配置されたセンサ(211、212、213、214)が、共通の直線状ガイド(231、232)および/または調節装置(241、242)を備えること、
を特徴とする請求項5に記載のコーティングデバイス。
【請求項11】
ライン走査カメラを備える第2の光学センサ・システム(20)が、前記ディスク(50)の一方の面または両面側に設けられ、かつ、前記ディスク(50)の一方の面の半径全体にわたって延在する測定領域を含むこと、
を特徴とする請求項1に記載のコーティングデバイス。
【請求項12】
前記第1の光学センサ・システム(110、210、310)に対する前記ディスク(50)の中心の位置を確認するための装置が設けられること、
を特徴とする請求項1に記載のコーティングデバイス。
【請求項13】
前記ディスク(50)の角度位置を確認するための装置が設けられること、
を特徴とする請求項1に記載のコーティングデバイス。
【請求項14】
回転されるディスク(50)への螺旋状のコーティングと同時に、前記ディスク(50)に塗布された前記コーティング(51)の層厚さを測定する請求項1乃至13のいずれか一項記載のコーティングデバイス。
【請求項15】
ディスク(50を回転させる回転装置と、回転する前記ディスク(50)に対して前記ディスク(50)の径方向に移動するレーザコーティングデバイスと、コーティングプロセスの一環として、前記ディスク(50)の回転中に前記ディスク(50)のコーティングの検査を行うためのセンサ・デバイス(100、200、300)と、を有するコーティングデバイスにおいて、前記ディスク(50)
がコーティングされるコーティングプロセスの一環として、前記ディスク(50)に塗布されたコーティング(51)の層厚さを判定するために前記コーティングを検査する
コーティング方法であって、
少なくとも1つの第1の位置ベースの測定値および1つの第2の位置ベースの測定値が、第1の光学センサ・システム(110、210、310)によって同時に確認され、
前記第1および第2の位置ベースの測定値が、前記第1の光学センサ・システム(110、210、310)と前記ディスク(50)の表面との間の距離を表わし、
前記ディスク(50)のコーティング済み領域の前記第1の位置ベースの測定値、および前記ディスク(50)のコーティングなし領域の前記第2の位置ベースの測定値が確認され、
前記第1の位置ベースの測定値の位置における前記ディスク(50)の層厚さが、前記第1および第2の位置ベースの測定値を用いて計算され、
前記ディスク(50)が、前記コーティングが検査されている間、前記回転装置によって回転され、
前記第1の光学センサ・システム(110、210、310)が、前記ディスク(50)の中央領域から縁部領域まで延在する少なくとも1つの直線状ガイド(131、132、231、232、331、332)によって移動される、
コーティング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティングプロセスの一環としてディスクのコーティングの検査を行うためのセンサ・デバイスであって、ディスクに塗布されたコーティングの層厚さを判定するための第1の光学センサ・システムを備え、かつ、ディスクを回転させるための回転装置を備えるセンサ・デバイスに関し、また、ディスクに塗布されたコーティングの層厚さを判定するためにコーティングを検査することを含む、ディスク、特にブレーキ・ディスクのためのコーティング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粒状物汚染は、都心での排気物質を最小限に抑えることに関する現在の議論に大きく関与し、そのような排出物は、部分的には車両に由来する。ヒトの健康に害を及ぼす物質であると見なされる構成物であるPM10およびPM2.5は、ここで特に関連する。
【0003】
発電所または加熱器における燃焼過程などの多くの要因に加えて、道路交通もまた、大都市圏での粒状物汚染に関与する。この場合、主な要因は、内燃機関、タイヤの摩耗、さらにはブレーキ系によって生じる摩耗である。
【0004】
ブレーキ過程中に発生する排出物を減少させるための1つの選択肢は、ブレーキ・ディスク上に炭化物コーティングを設けることである。この場合、従来のブレーキ・ディスクと比較して、摩耗、したがって粒子状物質の、最大で90%の減少が達成され得る。
【0005】
現時点では、この目的のために使用される2つの一般的な方法が存在する。第1の方法は、HVOF(高速酸素燃料)溶射と呼ばれるものであり、第2の方法は、レーザ・クラッディングと呼ばれるものである。どちらの塗布方法においても、可能な限り均一でかつ欠陥のない層が塗布されることが不可欠である。
【0006】
以下、レーザ・クラッディングをより詳細に考察する。このプロセスでは、ディスクのキャリア領域がレーザによって加熱され、レーザによって同様に溶融された粉末またはワイヤを供給することにより溶融浴が生成される。したがって、キャリア材料と一緒に溶融される追加の層が積層される。通常、この層は、複数のサイクルにおいて、すなわち重層的な態様で積層される。全体的に、この種のディスクは主に、このようにして内側から外側へ螺旋形状で複数の層を備える。
【0007】
欠陥を少しも含まずに可能な限り均一な層厚さを得ることが、コーティングの品質に不可欠である。この点において、コーティングプロセスを検査すること、および、第2のステップにおいていかなる欠陥をも潜在的に矯正することが必要である。これにより、製造プロセスの最適化がもたらされ、したがって、可能な限り均一かつ最適な層厚さが得られる。要するに、均一でない層厚さは、さもなければ後続の研削過程で取り除かれるかまたは均一にされなければならず、これは時間のかかることなので、上記のことにより、材料および時間が節約される。
【0008】
ブレーキ・ディスクのためのレーザコーティング法では、コーティングされるべきブレーキ・ディスクがそのハブ・ボアにより容器に受け入れられて回転されるシステムが、通常提供される。レーザコーティングデバイスは、ブレーキ・ディスクに対して静止するように配置されるが、ブレーキ・ディスクの径方向には移動され得る。コーティングプロセス中、ブレーキ・ディスクは、例えば内側から外側へ径方向に移動するコーティングデバイスによりディスクの螺旋状のコーティングが行われ得るように、対応する速度で回転される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ディスクのコーティングプロセスを効率的に監視するのに適したコーティングデバイスおよびコーティング方法を提供するという目的に基づくものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、本発明によれば、請求項1に記載の特徴を有するセンサ・デバイスによって、また、請求項15に記載の特徴を有するコーティング方法によって、解決される。
【0011】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項、記述および図面、ならびにその説明に見出される。
【0012】
本発明によるセンサ・システムでは、第1の光学センサ・システムが少なくとも1つの第1の位置ベースの測定値および1つの第2の位置ベースの測定値を同時に確認するように構成されることが、提供される。前述のシステムでは、第1および第2の位置ベースの測定値は、第1のセンサ・システムとディスクの表面との間の距離を表わす。
【0013】
さらに、第1のセンサ・システムは、ディスクのコーティング済み領域の第1の位置ベースの測定値とディスクのコーティングなし領域の第2の位置ベースの測定値とを確認するように構成される。第1の光学センサ・システムは、ディスクの中央領域から縁部領域まで延在する少なくとも1つの直線状ガイドをさらに備える。さらに、第1および第2の位置ベースの測定値を用いて、第1の位置ベースの測定値におけるディスクの層厚さを計算する制御および分析装置が設けられる。
【0014】
本発明の基本概念は、比較的厚くかつ光学的に不透明な層での層厚さの完全な測定は極めて難しいと認識されたことである。加えて、様々な材料特性が測定に関与し、それらはそれぞれ、選択されたコーティングによって異なり得る。材料特性には、とりわけ、磁化特性、導電率、または、特定の波長に使用される材料の透過挙動、例えば波長もしくはスペクトルに基づく層境界の屈折特性などが含まれる。
【0015】
一般に、この特性を考慮に入れる対応方法が、層厚さを確認するために使用され得るが、それらの方法は、比較的低い測定周波数および大きな測定点直径を有するという、重大な欠点を有する。これは、方法が比較的ゆっくりと進行し、また、高精度の空間分解能を提供しないことを意味する。
【0016】
したがって、本発明によれば、層厚さを判定するために示差測定を行うことが提案される。これは、層厚さを判定するために第1の位置ベースの測定値および第2の位置ベースの測定値が確認されることを意味する。次いで、2つの位置ベースの測定値間の差が確認され、したがって、層厚さに関して結論が得られる。高精度の空間分解能により、表面輪郭もこの方法で編集され得るため、局所的な欠陥すら検出され得る。
【0017】
説明したように、ここで使用される第1の光学センサ・システムは、センサ・システムをディスクの内側領域または中央領域から縁部領域へ案内するために、直線状ガイドを備える。したがって、ディスクがさらに回転されることを考慮すれば、コーティングすべきディスク上のいかなる位置にも到達することができる。
【0018】
2つの位置ベースの測定値間の差を利用することの別の利点は、最適ではないクランプに起因して状況により生じ得るディスクのぶれ挙動が、層厚さを確認する際に軽減されるかまたは差し引かれ得ることである。2つの位置ベースの測定値のぶれは、2つの測定値間の差により数値的に差し引かれる。
【0019】
第1の位置ベースの測定値を確認するための第1の光学センサと第2の位置ベースの測定値を確認するための第2の光学センサとを備えることが、第1の光学センサ・システムにとって有利である。
【0020】
光学センサの使用は、コーティング厚さが迅速かつ即座に確認され得るように、比較的高い測定周波数が得られ得るという利点を提供する。これは、コーティングの検査を含む全体的な生産時間を短縮するのに、特に有意義である。したがって、ディスクがコーティングされるのと同時に層厚さが確認されるインライン処理も行われ得る。非常に遅い、低周波数の測定方法では、層厚さの確認は、オフラインでのみ、すなわちコーティングが行われた後で、行われ得る。
【0021】
基本的に、2つの光学センサは、ディスクに対して任意の位置に配置され得る。したがって、例えば、第1および第2の光学センサは、向かい合う位置においてディスクの両側に配置されることが可能である。結果として、コーティングされる面側の第1のセンサにより、固定点からの距離、例えば第1の光学センサ・システムからの距離が、確認される。同様の方法で、ディスクの反対面側の第2の光学センサにより、距離が同様に確認される。したがって、先の測定との比較により、追加された層厚さが、考慮されている距離間の差によって計算され得る。また、この配置により、ディスクのぶれが2つのセンサの位置決めによって補償されるという利点が再度もたらされる。
【0022】
別の選択肢は、第1および第2の光学センサを、ディスクの同じ面、特にディスクの第1の面で互いに径方向にオフセットされるような位置に配置することである。この場合、ディスクと第1および第2の光学センサ・システムとの間の各距離は、ディスクの同じ面側に対して確認される。第1の光学センサがコーティング済み領域に向けられ、第2の光学センサがコーティングなし領域に向けられた場合、層厚さは、固定点または固定平面からのセンサの距離の差によって確認され得る。また、この場合、ぶれ挙動は両方の測定値、第1および第2の光学センサの両方に同時に影響を及ぼすので、ぶれは補償されるはずである。
【0023】
別の実施形態では、ディスクの第2の面で互いに径方向にオフセットされるような位置に配置される、第3および第4の光学センサが設けられ得る。言い換えれば、これらの2つのセンサは、径方向に離間された第1および第2のセンサに向かい合う。この場合、例えばディスクの両面が同時にコーティングされるときに、同時測定が行われ得る。さらに、この構成は、同じ面に対する測定値の比較に加えて反対面に対する測定値も参考にされ得るので、さらなる測定精度を提供する。このようにして、測定精度はさらに向上される。
【0024】
例えば、共焦点クロマティック・センサが、第1、第2、第3、および/または第4の光学センサに使用され得る。前述のセンサは、コーティングのインライン測定または検査も可能であるように、高い時間分解能を有する。
【0025】
このタイプのセンサの別の利点は、ある位置において層厚さが非常に正確に計算または確認され得るように、比較的高い空間分解能を有することである。
【0026】
別の実施形態では、少なくとも1つの第1の位置ベースの測定値および第2の位置ベースの測定値を同時に確認するための第1の光学センサ・システムは、ディスクの径方向における測定のためにディスクの第1の面側に配置される、第1の三角測量センサを備え得る。例えば、このようにして使用される三角測量センサは、数ミリメートルの測定幅を有し得る。三角測量センサは、センサの一部がコーティング領域を走査する一方で別の部分がコーティングなし領域を走査するように、配置または案内される。したがって、2つの位置ベースの測定値は、層厚さの増大を判定するために2つの光学センサを使用するのと同様に互いに設定されて、同様にして確認される。
【0027】
この実施形態の発展形態では、第1の光学センサ・システムは、第1の三角測量センサに向かい合う位置においてディスクの第2の面側に配置された、第2の三角測量センサを備え得る。この場合、4つの測定値は、層厚さの増大と垂直プロファイルを判定するために4つの独立した光学センサを使用するのと同様にして互いに設定されて、同時にして確認される。
【0028】
各センサが直線状ガイドおよび/または調節装置を備えることも、有利である。直線状ガイドは、そのガイドによりセンサがディスクの内側領域から外側領域に向かって移動され得るように、径方向に配置されることが好ましい。したがって、ディスク自体のさらなる回転により、ディスクの任意の箇所が走査され得る。追加的に設けられ得る調節装置は、測定すべきディスクの面から最適な距離にセンサを調節するために使用される。
【0029】
ディスクの同じ面側に複数のセンサが配置される場合、これらのセンサは、共通の直線状ガイドおよび/または調節装置を備え得る。
【0030】
この種の構成は、1つのセンサがコーティング済み領域を走査し、別のセンサが同じ面側でディスクのコーティングなし領域を走査する場合に、特に適している。このようにして、測定プロセスを改善するために、両方のセンサが、同じ直線状ガイドおよび同じ調節装置上に設けられ得る。
【0031】
本発明の文脈において、ディスクのコーティング済み領域は、特に、少なくとも1つのコーティングがすでに与えられている領域であると理解され得る。対照的に、コーティングなし領域は、まだコーティングされていないかまたは走査されることが意図されているコーティング済み領域よりも薄いコーティング厚さもしくは少ないコーティング回数を有する領域であると理解され得る。
【0032】
ライン走査カメラを含む第2の光学センサ・システムが、実質的にディスクの一方の面の半径全体にわたって延在する測定領域を含むディスクの一面または両方の面に設けられることが、有利である。第1の光学センサ・システムを使用してディスクの表面全体を走査することがすでに可能であるが、これは、とりわけ高い空間分解能のために、比較的長い時間を要する。この点において、本発明によれば、走査は、第1のセンサ・システムにより、いくつかの点状または帯状においてのみ実行され、層厚さのみが決定されることが好ましい。さらなる欠陥検出を可能にするために、また、第1の光学センサ・システムによって走査されるべき領域を予め選択する可能性を考慮して、ライン走査カメラを備える第2の光学センサ・システムを設けることができる。第2の光学センサ・システムは、例えば、回転形式で交互に切り替えられる明/暗視野照明を含み得る。その結果、欠陥を検出するために使用され得る表面画像を非常に高速に取得することが可能である。
【0033】
検出される可能性のある任意の欠陥に基づいて、第1のセンサ・デバイスによって層厚さをより正確に判定することができ、また、欠陥を検証または除外することができる。
【0034】
第1および/または第2の光学センサ・システムに対するディスクの中心の位置を確認するための装置が、さらに設けられることが好ましい。この種の装置は、第1および/または第2の光学センサ・システムのための基準点を定めるために使用される。したがって、ディスクの中心点が確認され得る場合、中心の位置を確認するための装置により、第1および/または第2の光学センサ・システムの相対位置を判定することが可能であり、その結果、確実なデータがもたらされ得る。
【0035】
さらに優れた精度を得るために、ディスクの角度位置を確認するための装置が、さらに設けられ得る。したがって、正確な角度位置およびゼロ点と一緒に、測定値の位置は、第1および/または第2の光学センサ・システムと関連して正確に決定され得る。
【0036】
制御および分析装置は、位置ベースの測定値を連続的にかつ/または不連続的に確認するように構成されることが好ましい。位置ベースの測定値を最終的に確認するための様々な選択肢が存在する。1つの選択肢は、インライン法として知られるものであり、この方法では、位置ベースの測定値、したがって層厚さは、ディスクのコーティングと同時に確認される。別の選択肢は、ディスクの一方の面またはその一領域を最初にコーティングし、次いで塗布された層厚さを確認することである。
【0037】
基本的に、第1のセンサ・デバイスを使用してディスクまたはその表面上の任意の可能な箇所を走査することが、ここでは可能である。しかし、これは、使用されるセンサ・システムにもよるが、比較的長い時間を要する。したがって、例えば、ディスクは、走査線間に間隙を含んで螺旋状に走査され得る。しかし、他の曲線形状も走査に使用可能である。加えて、位置ベースの測定値により連続的な走査が行われるのか、または点状の態様で判定された特定の領域が走査されるのかは、正確な応用分野に応じて判定され得る。
【0038】
本発明によるセンサ・デバイスは、ブレーキ・ディスクのためのコーティング装置に特に良く使用され得る。すでに上述したように、摩耗に起因して生じる粒子状物質の量が減少されるように高強度のコーティングが施されることが、ここでは有利である。本発明によるセンサ・デバイスは、コーティングが均一でかつ十分な厚さであることを確実にするために使用され得る。
【0039】
ディスクに塗布されたコーティングの層厚さを判定するためにコーティングの検査を行うことを含む、請求されたディスク、特にブレーキ・ディスクのためのコーティング方法では、少なくとも1つの位置ベースの測定値および1つの第2の位置ベースの測定値が、第1の光学センサ・システムを使用して同時に確認される。第1および第2の位置ベースの測定値は、第1の光学センサ・システムとディスクの表面との間の距離を表わし、ここで、ディスクのコーティング済み領域の第1の位置ベースの測定値、およびディスクのコーティングなし領域の第2の位置ベースの測定値が確認される。第1の位置ベースの測定値の位置におけるディスクの層厚さは、第1および第2の位置ベースの測定値を用いて計算される。ディスクの任意の箇所を検査することを可能にするために、ディスクは、コーティングが検査されている間に回転装置によって回転されてもよく、また、第1の光学センサ・システムは、ディスクの中央領域から縁部領域まで延在する少なくとも1つの直線状ガイドによって移動され得る。
【0040】
以下、図面を参照しながら、概略的な実施形態に基づいて本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】本発明によるセンサ・デバイスの第1の実施形態の概略図である。
【
図2】本発明によるセンサ・デバイスの第2の実施形態の概略図である。
【
図3】本発明によるセンサ・デバイスの第3の実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1は、本発明によるセンサ・デバイス100の第1の実施形態を示す。本発明によるセンサ・デバイスは、2つの部品で構成された第1の光学センサ・システム110を備える。このセンサ・システム110の各部品は、特にブレーキ・ディスクであり得るディスク50の両側に配置される。すでに説明したように、本発明によるセンサ・デバイス100の目的は、ディスク50のコーティングの層厚さを判定することである。
【0043】
第1の光学センサ・システム110の各下位ユニットは、光学センサ111、112を備える。これらのセンサ111、112のそれぞれは、直線状ガイド131、132に固定され、かつ、調節器141、142をさらに含む。
【0044】
ここでは、ディスク50の対応する面からの距離を判定する共焦点クロマティック・センサが、光学センサ111、112として使用され得る。
【0045】
さらに、第2の光学センサ・システム20が設けられ、この第2の光学センサ・システム20は、例えばライン走査カメラの形態で構成され得る。このライン走査カメラは、ディスク50の中心点から外側径方向端部までの領域が監視され得るように、選択される。
【0046】
さらに、ディスク50の中央領域、すなわち中間領域に、追加的なライン走査カメラ60も設けられる。このライン走査カメラ60は、第1の光学センサ・システム110および第2の光学センサ・システム20によって確認された測定値が固定点に対して特定され得るように、ディスク50の正確な中心点を判定する働きをする。この固定点は、例えばディスク50の締結点である。
【0047】
ここで示されてないのは回転装置であるが、この回転装置は、ディスク50を回転させることを可能にするもので、それにより、2つのセンサ・システム110および20は、測定プロセス中は静止したままであるかまたは径方向にのみ移動されれば良い。
【0048】
以下、2つのセンサ・システム110、20の機能性に関して、さらなる詳細が説明される。
【0049】
すでに説明したように、第1の光学センサ・システム110は、実質的に向かい合う位置においてディスク50の両側に配置される2つの光学センサ111および112を有する。2つの調節器141、142により、2つの光学センサ111、112は、正確、確実、かつ効率的な測定が行われ得るように、ディスク50の表面から最適な距離にもたらされる。次いで、2つのセンサ111、112により、ディスク50からの関連する距離が判定される。
【0050】
図1による実施形態では、この測定は、ディスク50の一方の面にコーティング51が塗布された場合に繰り返される。コーティングを含むとき、およびコーティングを含まないときの異なる時点における2つの光学センサ111、112の確認された距離から、コーティングの厚さを判定することが可能である。
【0051】
第1の光学センサ・システム110により、ディスク50のコーティングの層厚さを判定することが可能である。しかし、使用されるセンサに起因して、全体的な層厚さ分布の高精度の解像度をもたらすためにディスク50上のあらゆる箇所を走査することは、経済的ではない。ディスク50は、螺旋状または蛇行状に走査されることが好ましい。帯状または輪状の走査も可能であるが、そうすると、いずれの場合にも、中心からの距離が異なる複数の円が走査される。
【0052】
測定を行うために、ディスク50は、回転装置によって回転され、2つのセンサ111、112は、直線状ガイド131、132によってシフトされる。
【0053】
第2の光学センサ・システム20は、測定精度をさらに向上させること、および、ディスク50の表面全体にわたって潜在的なコーティング欠陥を判定することを可能にするために設けられる。すでに説明したように、この第2の光学センサ・システム20は、画像を取得するかまたはディスク50の中心から外縁部までの測定値を特定することができるように配置されるライン走査カメラで構成される。ディスクの回転中、値は、例えば、明/暗欠陥認識を使用して、第2の光学センサ・システム20によって連続的に確認される。次いで、前述の値は、コーティングが失敗していたかまたは特定の位置において不完全であるかどうかを判定するために、欠陥識別および品質管理に使用され得る。
【0054】
図2は、本発明によるセンサ・デバイス200の別の実施形態を示す。
【0055】
この図では、
図1からの同一の構成要素は、同じ参照記号によって示されており、また、再度説明されることはない。
【0056】
本発明によるセンサ・デバイス200は、わずかに異なって構成された第1の光学センサ・システム210のため、
図1によるデバイス100とは異なる。
【0057】
ここで示されている実施形態では、第1の光学センサ・システム210は、全部で4つの光学センサ211、212、213、214で構成される。ここでは、各2つの光学センサ211、212、および213、214は、ディスク50の同じ面側にそれぞれ設けられる。ディスク50の同じ面側に配置された各2つのセンサ211、212、および213、214は、共通の直線状ガイド231、232および共通の調節器241、242を共有する。
【0058】
示された実施形態により、インライン測定が可能である。これは、ディスク50をコーティングする過程中でも、塗布された層厚さが確認され得ることを意味する。この目的のために、ディスク50の同じ面側に位置決めされる各2つの光学センサ211、212および213、214は、光学センサ211、213がコーティング済み領域を走査し、光学センサ211、213に隣接する光学センサ212、214がコーティングなし領域を走査するように、配置される。その結果、各2つの測定値間の差から、両面の層厚さがそれぞれ確認され得る。
【0059】
図3を参照すると、本発明によるセンサ・デバイス300の第3の実施形態が、最後に説明される。ここでもやはり、センサ・デバイス300は単に第1の光学センサ・システム300の正確な構成のために、上記で説明された構成とは異なる。
【0060】
この場合、第1の光学センサ・システム300は、ディスク50の両面側に配置された2つの光学センサ311、312を備える。光学センサ311、312は、三角測量センサである。これらのセンサはそれぞれ、対応する調節器341、342を含む直線状ガイド331、332上に配置される。三角測量センサ311、312は、ディスク50のコーティング51が設けられた領域とコーティングが設けられていない領域とを監視することができるように構成される。これは、センサ311、312によって確認された測定値により両面の層厚さをそれぞれ確認することを可能にする。
【0061】
ディスク50の両面側にセンサ111、112、211、212、213、214、311、312が配置されること、および、それによって確認された測定値が両面の層厚さを判定するために全面的に使用されることによって生じる、本発明によるセンサ・デバイス100、200、300の別の利点は、ディスク50の最適ではないクランプに起因して生じるぶれが、確認された測定値を使用して差し引かれ得るということである。
【0062】
本発明によるセンサ・デバイスを使用することにより、層厚さを確認するための高精度の値を迅速かつ効率的に得ることが可能である。