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7231604塩化ビニル系樹脂凝集体粒子、その製造方法、金属缶塗料用組成物、マーキングフィルム用組成物及び塗膜
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】塩化ビニル系樹脂凝集体粒子、その製造方法、金属缶塗料用組成物、マーキングフィルム用組成物及び塗膜
(51)【国際特許分類】
   C08F 6/22 20060101AFI20230221BHJP
   C08F 14/06 20060101ALI20230221BHJP
   C09D 127/06 20060101ALI20230221BHJP
   C09D 161/06 20060101ALI20230221BHJP
   C09D 163/00 20060101ALI20230221BHJP
   C09D 133/06 20060101ALI20230221BHJP
   C09D 167/00 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
C08F6/22
C08F14/06
C09D127/06
C09D161/06
C09D163/00
C09D133/06
C09D167/00
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020500483
(86)(22)【出願日】2019-02-12
(86)【国際出願番号】 JP2019004883
(87)【国際公開番号】W WO2019159896
(87)【国際公開日】2019-08-22
【審査請求日】2021-12-22
(31)【優先権主張番号】P 2018026182
(32)【優先日】2018-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】西山 義隆
(72)【発明者】
【氏名】三田村 文寛
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/041697(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/165021(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/035830(WO,A1)
【文献】特開2007-284512(JP,A)
【文献】特開2004-224838(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00-246/00、301/00
C09D 1/00-10/00、101/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル系樹脂凝集体粒子であって、
体積粒度分布における累積体積百分率が50体積%の粒子径D50が0.5μm以上5.0μm以下であり、且つ体積粒度分布における累積体積百分率が90体積%の粒子径D90が8.0μm以下であり、
前記塩化ビニル系樹脂凝集体粒子におけるNa濃度が90ppm以下であることを特徴とする塩化ビニル系樹脂凝集体粒子。
【請求項2】
前記塩化ビニル系樹脂凝集体粒子は、塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子が凝集したものであり、前記塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子は、体積平均粒子径が0.1μm以上0.6μm未満の塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子を5体積%以上95体積%以下、及び体積平均粒子径が0.6μm以上2.0μm以下の塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子を5体積%以上95体積%以下含む請求項1に記載の塩化ビニル系樹脂凝集体粒子。
【請求項3】
前記塩化ビニル系樹脂凝集体粒子において、塩化ビニル系樹脂の平均重合度が1400以上2500以下である請求項1又は2に記載の塩化ビニル系樹脂凝集体粒子。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の塩化ビニル系樹脂凝集体粒子の製造方法であって、
樹脂固形分の濃度が22重量%以上の塩化ビニル系樹脂ラテックスに、無機酸を10重量%以上含む凝固剤を添加して凝固させ、塩化ビニル系樹脂の凝固ラテックスを得る工程、
前記塩化ビニル系樹脂の凝固ラテックスを、塩化ビニル系樹脂のガラス転移温度をTgとした場合、Tg以上Tg+35℃以下の温度範囲で熱処理し、塩化ビニル系樹脂凝集体粒子を含むスラリーにする工程、
前記塩化ビニル系樹脂凝集体粒子を含むスラリーを、pHが4以上11以下の範囲になるように調整する工程、
前記pH調整後の塩化ビニル系樹脂凝集体粒子を含むスラリーを脱水した後、樹脂固形分の重量に対して2倍以上100倍以下の重量の水を添加して水洗する工程、
前記水洗後の塩化ビニル系樹脂凝集体粒子を含むスラリーを、脱水、乾燥した後、粉砕及び/又は分級する工程を含むことを特徴とする塩化ビニル系樹脂凝集体粒子の製造方法。
【請求項5】
前記塩化ビニル系樹脂ラテックスは、体積平均粒子径が0.1μm以上0.6μm未満の塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子を5体積%以上95体積%以下、及び体積平均粒子径が0.6μm以上2.0μm以下の塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子を5体積%以上95体積%以下含む請求項4に記載の塩化ビニル系樹脂凝集体粒子の製造方法。
【請求項6】
前記熱処理は、Tg以上95℃以下の温度で行う請求項4又は5に記載の塩化ビニル系樹脂凝集体粒子の製造方法。
【請求項7】
前記pH調整後の塩化ビニル系樹脂凝集体粒子を含むスラリーを脱水した後、樹脂固形分の重量に対して20倍より多い重量の水を添加して水洗する請求項4~6のいずれか1項に記載の塩化ビニル系樹脂凝集体粒子の製造方法。
【請求項8】
請求項1~3のいずれか1項に記載の塩化ビニル系樹脂凝集体粒子を含む金属缶塗料用組成物。
【請求項9】
(A)前記塩化ビニル系樹脂凝集体粒子を20重量部以上80重量部以下、
(B)フェノール樹脂、エポキシ樹脂及びアクリル樹脂からなる群から選ばれる1種以上の樹脂を1重量部以上30重量部以下、
(C)ポリエステル系樹脂を1重量部以上60重量部以下、及び
(D)有機溶剤を含み、
(A)、(B)及び(C)の合計量が100重量部である請求項8に記載の金属缶塗料用組成物。
【請求項10】
請求項1~3のいずれか1項に記載の塩化ビニル系樹脂凝集体粒子を含むマーキングフィルム用組成物。
【請求項11】
(a)前記塩化ビニル系樹脂凝集体粒子を50重量部以上90重量部以下、
(b)可塑剤を10重量部以上50重量部以下、及び
(c)有機溶剤を含み、
(a)及び(b)の合計量が100重量部である請求項10に記載のマーキングフィルム用組成物。
【請求項12】
請求項1~3のいずれか1項に記載の塩化ビニル系樹脂凝集体粒子を含む組成物の塗膜であり、
前記塗膜は、厚みが20μm以下であり、ヘイズ値が10.0%以下であり、0.26MPa且つ121℃雰囲気下で純水中に90分間浸漬した後の光沢値が50以上であることを特徴とする塗膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩化ビニル系樹脂凝集体粒子、その製造方法、それを含む金属缶塗料用組成物、マーキングフィルム用組成物及び塗膜に関する。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニル系樹脂は、安価であり、加工性及び耐久性に優れることから、金属缶用塗料やマーキングフィルム等に使用されている。例えば、特許文献1~3には、塩化ビニル系樹脂を含む金属缶用塗料組成物が記載されている。特許文献4~5には、塩化ビニル系樹脂を含むマーキングフィルムが記載されている。
【0003】
一方、特許文献6~8には、平均粒子径を調整することで布地への無浸透性を向上させたプラスチゾルを提供できる塩化ビニル系樹脂凝集体粒子が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭55-89363公報
【文献】特開昭59-68376号公報
【文献】特開平2-34648号公報
【文献】特開2016-107496号公報
【文献】特開2017-160307号公報
【文献】国際公開2008/041697号
【文献】国際公開2012/165021号
【文献】国際公開2012/035830号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1~3に記載の金属缶用塗料組成物の場合、塗膜の透明性や耐レトルト性をさらに改善する必要があった。また、特許文献4~5に記載の塩化ビニル系樹脂を含むマーキングフィルムの場合、透明性や耐水性をさらに改善する必要があった。一方、特許文献6~8では、塩化ビニル系樹脂凝集体粒子を金属缶用塗料やマーキングフィルムに用いることについては検討されていなかった。
【0006】
本発明は、前記従来の問題を解決するため、金属缶の塗膜に高い透明性及び耐レトルト性を付与する、或いは/並びに、マーキングフィルムに高い透明性及び耐水性を付与することができる塩化ビニル系樹脂凝集体粒子、その製造方法、それを含む金属缶塗料用組成物、マーキングフィルム用組成物及び塗膜を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、塩化ビニル系樹脂凝集体粒子であって、体積粒度分布における累積体積百分率が50体積%の粒子径D50が0.5μm以上5.0μm以下であり、且つ体積粒度分布における累積体積百分率が90体積%の粒子径D90が8.0μm以下であり、前記塩化ビニル系樹脂凝集体粒子におけるNa濃度が90ppm以下であることを特徴とする塩化ビニル系樹脂凝集体粒子に関する。
【0008】
前記塩化ビニル系樹脂凝集体粒子は、塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子が凝集したものであり、前記塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子は、体積平均粒子径が0.1μm以上0.6μm未満の塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子を5体積%以上95体積%以下、及び体積平均粒子径が0.6μm以上2.0μm以下の塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子を5体積%以上95体積%以下含むことが好ましい。前記塩化ビニル系樹脂凝集体粒子において、塩化ビニル系樹脂の平均重合度が1400以上2500以下であることが好ましい。
【0009】
本発明は、また、前記の塩化ビニル系樹脂凝集体粒子の製造方法であって、樹脂固形分の濃度が22重量%以上の塩化ビニル系樹脂ラテックスに、無機酸を10重量%以上含む凝固剤を添加して凝固させ、塩化ビニル系樹脂の凝固ラテックスにする工程、前記塩化ビニル系樹脂の凝固ラテックスを、塩化ビニル系樹脂のガラス転移温度をTgとした場合、Tg以上Tg+35℃以下の温度範囲で熱処理し、塩化ビニル系樹脂凝集体粒子を含むスラリーを得る工程、前記塩化ビニル系樹脂凝集体粒子を含むスラリーを、pHが4以上11以下の範囲になるように調整する工程、前記pH調整後の塩化ビニル系樹脂凝集体粒子を含むスラリーを脱水した後、樹脂固形分の重量に対して2倍以上100倍以下の重量の水を添加して水洗する工程、前記水洗後の塩化ビニル系樹脂凝集体粒子を含むスラリーを、脱水、乾燥した後、粉砕及び/又は分級する工程を含むことを特徴とする塩化ビニル系樹脂凝集体粒子の製造方法に関する。
【0010】
前記塩化ビニル系樹脂ラテックスは、体積平均粒子径が0.1μm以上0.6μm未満の塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子を5体積%以上95体積%以下、及び体積平均粒子径が0.6μm以上2.0μm以下の塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子を5体積%以上95体積%以下含むことが好ましい。前記熱処理は、75℃以上95℃以下の温度で行うことが好ましい。前記pH調整後の塩化ビニル系樹脂凝集体粒子を含むスラリーを脱水した後、樹脂固形分の重量に対して20倍より多い重量の水を添加して水洗することが好ましい。
【0011】
本発明は、また、前記の塩化ビニル系樹脂凝集体粒子を含む金属缶塗料用組成物に関する。
【0012】
前記金属缶塗料用組成物は、(A)前記塩化ビニル系樹脂凝集体粒子を20重量部以上80重量部以下、(B)フェノール樹脂、エポキシ樹脂及びアクリル樹脂からなる群から選ばれる1種以上の樹脂を1重量部以上30重量部以下、(C)ポリエステル系樹脂を1重量部以上60重量部以下、及び(D)有機溶剤を含み、(A)、(B)及び(C)の合計量が100重量部であることが好ましい。
【0013】
本発明は、また、前記の塩化ビニル系樹脂凝集体粒子を含むマーキングフィルム用組成物に関する。
【0014】
前記マーキングフィルム用組成物は、(a)前記塩化ビニル系樹脂凝集体粒子を50重量部以上90重量部以下、(b)可塑剤を10重量部以上50重量部以下、及び(c)有機溶剤を含み、(a)及び(b)の合計量が100重量部であることが好ましい。
【0015】
本発明は、また、前記の塩化ビニル系樹脂凝集体粒子を含む組成物の塗膜であり、前記塗膜は、厚みが20μm以下であり、ヘイズ値が10.0%以下であり、0.26MPa且つ121℃雰囲気下で純水中に90分間浸漬した後の光沢値が50以上であることを特徴とする塗膜に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の塩化ビニル系樹脂凝集体粒子によれば、金属缶の塗膜に高い透明性及び耐レトルト性を付与する金属缶塗料用組成物を提供することができる。また、本発明の塩化ビニル系樹脂凝集体粒子によれば、マーキングフィルムに高い透明性及び耐水性を付与するマーキングフィルム用組成物を提供することができる。また、本発明は、厚みが薄く、高い透明性及び耐レトルト性を有する塗膜を提供することができる。
【0017】
本発明の製造方法によれば、金属缶の塗膜に高い透明性及び耐レトルト性を付与する金属缶塗料用組成物を提供する、或いは/並びに、マーキングフィルムに高い透明性及び耐水性を付与するマーキングフィルム用組成物を提供する塩化ビニル系樹脂凝集体粒子が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の発明者らは、塩化ビニル系樹脂を含む組成物を用いて金属缶の塗膜を形成した場合、塩化ビニル系樹脂として、特定の粒子径を有するとともに、Na濃度が所定の値以下の塩化ビニル系樹脂凝集体粒子を用いることで、金属缶の塗膜に高い透明性及び良好な耐レトルト性を付与し得ることを見出した。また、塩化ビニル系樹脂として、特定の粒子径を有するとともに、Na濃度が所定の値以下の塩化ビニル系樹脂凝集体粒子を用いることで、該塩化ビニル系樹脂凝集体粒子を含む組成物でマーキングフィルムを形成した場合、高い透明性及び良好な耐水性を有するマーキングフィルムが得られることを見出した。
【0019】
(塩化ビニル系樹脂凝集体粒子)
塩化ビニル系樹脂凝集体粒子は、体積粒度分布における累積体積百分率が50体積%の粒子径D50(以下において、単にD50とも記す。)が0.5μm以上5.0μm以下であり、且つ体積粒度分布における累積体積百分率が90体積%の粒子径D90(以下において、D90とも記す。)が8.0μm以下である。塩化ビニル系樹脂凝集体粒子のD50及びD90が上述した範囲内であると、該塩化ビニル系樹脂凝集体粒子を含む組成物を用いた金属缶の塗膜は、透明性に優れるとともに、耐レトルト性、すなわちレトルト試験後の接着性及び光沢が良好である。また、塩化ビニル系樹脂凝集体粒子のD50及びD90が上述した範囲内であると、該塩化ビニル系樹脂凝集体粒子を含む組成物を用いたマーキングフィルムは、透明性に優れるとともに、耐水性が良好となる。なお、D50が0.5μm以上であると、塩化ビニル系樹脂凝集体粒子を生産性よく得ることができる。本発明において、D50及びD90は、体積基準の粒子径分布より求めており、粒子の粒子径分布は、レーザー回折式粒度分布測定装置であるマイクロトラックHRA9320-X100型(日機装株式会社製)を用いて測定することができる。
【0020】
前記塩化ビニル系樹脂凝集体粒子のD50は、透明性と、耐レトルト性及び/又は耐水性の観点から、好ましくは0.5μm以上4.5μm以下であり、より好ましくは0.5μm以上4.0μm以下であり、さらに好ましくは0.5μm以上3.5μm以下であり、さらに好ましくは1.0μm以上3.5μm以下であり、さらにより好ましくは1.0μm以上3.0μm以下であり、さらにより好ましくは1.0μm以上2.5μm以下であり、特に好ましくは1.0μm以上2.0μm以下である。
【0021】
前記塩化ビニル系樹脂凝集体粒子のD90は、透明性と、耐レトルト性及び/又は耐水性の観点から、好ましくは7.5μm以下であり、より好ましくは7.0μm以下であり、さらに好ましくは6.5μm以下であり、さらにより好ましくは6.0μm以下であり、さらにより好ましくは5.5μm以下であり、特に好ましくは5.0μm以下である。
【0022】
前記塩化ビニル系樹脂凝集体粒子において、Na濃度が90ppm以下である。塩化ビニル系樹脂凝集体粒子は、通常、塩化ビニル系樹脂の重合時の乳化剤や塩化ビニル系樹脂を凝集させる際の凝固剤等に由来するNa(イオン)を含む。本願では、前記塩化ビニル系樹脂凝集体粒子におけるNa濃度を90ppm以下に低減させることで、該塩化ビニル系樹脂凝集体粒子を含む組成物を用いた金属缶の塗膜は、透明性に優れるとともに、耐レトルト性、すなわちレトルト試験後の接着性及び光沢も良好になる。また、前記塩化ビニル系樹脂凝集体粒子におけるNa濃度が90ppm以下であると、該塩化ビニル系樹脂凝集体粒子を含む組成物を用いたマーキングフィルムは、透明性に優れるとともに、耐水性も良好となる。本発明において、塩化ビニル系樹脂凝集体粒子におけるNa濃度は、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)で測定することができる。
【0023】
前記塩化ビニル系樹脂凝集体粒子におけるNa濃度は、透明性と、耐レトルト性及び/又は耐水性の観点から、好ましくは85ppm以下であり、より好ましくは80ppm以下であり、さらに好ましくは75ppm以下であり、さらにより好ましくは70ppm以下であり、さらにより好ましくは65ppm以下であり、さらにより好ましくは60ppm以下であり、さらにより好ましくは55ppm以下であり、特に好ましくは50ppm以下である。
【0024】
前記塩化ビニル系樹脂凝集体粒子は、JIS A 1475の操作手順に従い、30℃且つ相対湿度97.0±0.4%(硫酸カリウム飽和水溶液を用いたデシケータ法での試験)の条件下で24時間保持した際の吸湿率が、1.5重量%以下であることが好ましく、1.0重量%以下であることがより好ましく、0.75重量%以下であることがさらに好ましい。吸湿率が上述した範囲内であると、塩化ビニル系樹脂凝集体粒子を含む組成物の貯蔵時の粘度安定性が良好になる。
【0025】
前記塩化ビニル系樹脂凝集体粒子は、塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子が凝集したものであり、前記塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子は、体積平均粒子径が0.1μm以上2.0μm以下であることが好ましい。より好ましくは、前記塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子は、体積平均粒子径が0.1μm以上0.6μm未満の塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子(以下において、塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子Fとも記す。)を5体積%以上95体積%以下、及び体積平均粒子径が0.6μm以上2.0μm以下の塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子(以下において、塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子Rとも記す。)を5体積%以上95体積%以下含む。上述した範囲の異なる粒子径の塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子を凝集して得られた塩化ビニル系樹脂凝集体粒子を含む組成物は、粘度が低く、粗粒が少なく、ゲル化速度が速いことから、透明性と、耐レトルト性及び/又は耐水性が良好であるとともに、厚みが薄い塗膜が得られやすい。粘度をより低下させ、フィルムの透明性をより高める等の観点から、前記塩化ビニル系樹脂凝集体粒子は、体積平均粒子径が0.1μm以上0.6μm未満の塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子を5体積%以上50体積%以下、及び体積平均粒子径が0.6μm以上2.0μm以下の塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子を50体積%以上95体積%以下含むことがさらに好ましい。本発明において、塩化ビニル系樹脂凝集体粒子を構成した塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子の体積平均粒子径は、塩化ビニル系樹脂凝集体粒子にノニオン系界面活性剤を添加して、塩化ビニル系樹脂凝集体粒子を塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子に解したものを測定サンプルとして用い、体積基準の粒子径分布より求めることができ、粒子径分布は、レーザー回折式粒度分布測定装置であるマイクロトラックHRA9320-X100型(日機装株式会社製)を用いて測定することができる。
【0026】
前記塩化ビニル系樹脂凝集体粒子は、低粘度及びゲル化を促進する観点から、好ましくは塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子Fを10体積%以上90体積%以下含み、及び塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子Rを10体積%以上90体積%以下含み;より好ましくは塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子Fを15体積%以上85体積%以下含み、及び塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子Rを15体積%以上85体積%以下含み;さらに好ましくは塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子Fを20体積%以上50体積%以下含み、及び塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子Rを50体積%以上80体積%以下含む。塩化ビニル系樹脂の重合の安定性から、塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子Rの体積平均粒子径は、1.7μm以下であることが好ましく、1.4μm以下であることがより好ましい。低粘度及びゲル化を促進する観点から、塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子Fの体積平均粒子径は、0.5μm以下であることが好ましく、0.4μm以下であることがより好ましい。
【0027】
前記塩化ビニル系樹脂凝集体粒子において、塩化ビニル系樹脂の平均重合度が1400以上2500以下であることが好ましい。塩化ビニル系樹脂の平均重合度が上述した範囲内であると、塩化ビニル系樹脂凝集体粒子を含む組成物を用いた金属缶の塗膜の耐レトルト性が良好になりやすい。塩化ビニル系樹脂の平均重合度が1500以上2500以下であることがより好ましく、1600以上2500以下であることがさらに好ましい。
【0028】
以下、本発明の塩化ビニル系樹脂凝集体粒子の製造方法を説明する。本発明の塩化ビニル系樹脂凝集体粒子は、塩化ビニル系樹脂粒子(ラテックス粒子)を凝集させることで得られる。具体的には、本発明の塩化ビニル系樹脂凝集体粒子は、塩化ビニル系樹脂ラテックスに、凝固剤を添加して凝固させて得られた塩化ビニル系樹脂の凝固ラテックスを熱処理し、得られた塩化ビニル系樹脂凝集体粒子を含むスラリーをpH調整し、pH調整後の塩化ビニル系樹脂凝集体粒子を含むスラリーを脱水した後に水洗し、水洗後の塩化ビニル系樹脂凝集体粒子を含むスラリーを、脱水、乾燥した後、粉砕及び/又は分級することにより得ることができる。
【0029】
先ず、塩化ビニル系樹脂ラテックスに、凝固剤を添加して凝固させることで塩化ビニル系樹脂の凝固ラテックスを得る。凝固剤の添加量は、塩化ビニル系樹脂ラテックスを凝固できればよく特に制限はないが、塩化ビニル系樹脂ラテックス中の樹脂固形分100重量部に対し、0.3重量部以上5重量部以下であることが好ましい。凝固剤の添加量が0.3重量部以上であると、塩化ビニル系樹脂ラテックスの凝固が十分に進行する。また、凝固剤の添加量が5重量部以下であると、製造コストを低減でき生産性が良好になる。
【0030】
前記凝固剤は、凝固剤の全重量に対して10重量%以上の無機酸を含む。凝固剤の全重量に対する無機酸の含有量が10重量%以上であることにより、塩化ビニル系樹脂凝集体粒子の吸湿率が低くなりやすく、該塩化ビニル系樹脂凝集体粒子を含む組成物の貯蔵時の粘度が安定しやすい。前記凝固剤中の無機酸の含有量は20重量%以上であることが好ましく、30重量%以上であることがより好ましく、50重量%以上であることがさらに好ましく、70重量%以上であることがさらにより好ましく、100重量%であることが特に好ましい。
【0031】
前記無機酸としては、特に限定されないが、例えば硫酸、塩酸、硝酸、燐酸等を用いることができる。排水処理の観点から、前記無機酸は、硫酸及び塩酸からなる群から選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。
【0032】
前記凝固剤は、均質な凝固ラテックスを短時間で得ることができる観点から、無機酸に加えて、水溶性凝固剤を含んでもよい。前記水溶性凝固剤としては、例えば無機塩、有機酸、有機塩、水溶性高分子等が挙げられる。
【0033】
前記無機塩としては、例えばNaCl、KCl、Na2SO4、CaCl2、AlCl3、Al2(SO43等を用いることができる。前記有機酸としては、特に限定されないが、例えばクエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、グルタコン酸等を用いることができる。前記有機塩としては、例えば酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム等を用いることができる。
【0034】
前記水溶性高分子としては、例えば合成高分子、天然高分子、半合成高分子等を用いることができる。前記合成高分子としては、例えばアクリロイル基含有モノマー重合体、ビニル重合体、ポリアミジン、ポリエチレンオキサイド及びポリエチレンイミン等が挙げられる。前記天然高分子としては、例えば多糖類及び蛋白質等が挙げられる。前記半合成高分子としては、例えばセルロースエーテル及びデンプン誘導体等が挙げられる。なお、上記無機酸以外の凝固剤として水溶性高分子を用いる場合は、塩化ビニル系樹脂凝集体粒子の吸湿率を低くするという観点から、水溶性高分子の配合量は凝固剤の全重量に対して25重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましい。
【0035】
塩化ビニル系樹脂凝集体粒子の吸湿率を低下させ、該塩化ビニル系樹脂凝集体粒子を含む組成物の貯蔵時の粘度を安定させる観点から、前記無機酸以外の凝固剤としては、無機塩、有機酸及び有機塩からなる群から選ばれる一種以上を用いることが好ましい。
【0036】
前記凝固剤は、塩化ビニル系樹脂ラテックスへ添加する際、固体及び水溶液のいずれの形態であっても良いが、分散性の点から、水溶液の形態が好ましく、撹拌や混合により流動状態にある塩化ビニル系樹脂ラテックス中へ添加することがより好ましい。また、前記凝固剤は、塩化ビニル系樹脂の重合終了後に、塩化ビニル系樹脂ラテックスへ添加することが好ましい。
【0037】
前記塩化ビニル系樹脂ラテックスは、特に限定されないが、例えば水性媒体中で、塩化ビニル単量体又は塩化ビニル単量体とこれと共重合可能な単量体との混合物に、重合開始剤、及び乳化剤とを加え、乳化重合、シード乳化重合、微細懸濁重合、又はシード微細懸濁重合することにより得ることができる。また、上記重合においては、必要に応じて、高級アルコール、及び高級脂肪酸等の分散助剤、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム等のpH調整剤を用いてもよい。
【0038】
前記塩化ビニル系樹脂ラテックスにおいて、塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子の体積平均粒子径は、特に制限されないが、重合の安定性の観点から、0.1μm以上2.0μm以下であることが好ましい。塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子の体積平均粒子径が0.1μm以上であると、ラテックス移送時の機械安定性が良好になり、生産性が向上する。塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子の体積平均粒子径が2.0μm以下であると、重合の安定性が高まる。重合の安定性の観点から、塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子の体積平均粒子径は1.7μm以下であることがより好ましく、1.4μm以下であることがさらに好ましい。
【0039】
塩化ビニル系樹脂凝集体粒子を含む組成物の粘度を低くし、ゲル化を促進する観点から、前記塩化ビニル系樹脂ラテックスは、塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子Fを5体積%以上95体積%以下、及び塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子Rを5体積%以上95体積%以下含むことが好ましく、より好ましくは塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子Fを10体積%以上90体積%以下含み、及び塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子Rを10体積%以上90体積%以下含み、さらに好ましくは塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子Fを15体積%以上85体積%以下含み、及び塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子Rを15体積%以上85体積%以下含み、さらにより好ましくは塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子Fを20体積%以上50体積%以下含み、及び塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子Rを50体積%以上80体積%以下含む。塩化ビニル系樹脂の重合の安定性から、塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子Rの体積平均粒子径は、1.7μm以下であることが好ましく、1.4μm以下であることがより好ましい。低粘度及びゲル化を促進する観点から、塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子Fの体積平均粒子径は、0.5μm以下であることが好ましく、0.4μm以下であることがより好ましい。
【0040】
前記塩化ビニル単量体と共重合可能な単量体は、特に限定されるものではないが、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン等のオレフィン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル等のビニルエーテル類;塩化ビニリデン等のビニリデン類;アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸及びその酸無水物;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ブチルベンジル等の不飽和カルボン酸エステル類;スチレン、αーメチルスチレン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;及びジアリルフタレート等の架橋性モノマー等の塩化ビニルと共重合可能な全ての単量体が使用できる。これらの単量体は、一種を単独又は二種以上組み合わせて用いることができる。これらの単量体の使用量は、塩化ビニル単量体との単量体混合物中50重量%未満であるのが好ましい。
【0041】
前記乳化剤は特に限定されるものではないが、例えばアニオン性界面活性剤を用いることができる。前記アニオン性界面活性剤としては、脂肪酸、アルキル硫酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルスルホコハク酸、α-オレフィンスルホン酸、アルキルエーテルリン酸エステル等のカリウム塩、ナトリウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。塩化ビニル系樹脂凝集体粒子を含む組成物の粘度安定性の観点から、前記乳化剤は、脂肪酸塩であることが好ましく、脂肪酸のカリウム塩、脂肪酸のナトリウム塩及び脂肪酸のアンモニウム塩からなる群から選ばれる一種以上であることがより好ましく、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ミリスチン酸カリウム及びミリスチン酸アンモニウムからなる群から選ばれる一種以上であることがさらに好ましい。
【0042】
前記乳化剤は、例えば、単量体100重量部当たり0.1重量部以上3.0重量部以下程度用いることができる。得られる塩化ビニル系樹脂ラテックスの安定性、缶内面用フィルム及びマーキングフィルム等のフィルムの透明性を高める観点から、前記乳化剤は、単量体100重量部当たり0.2重量部以上1.0重量部以下用いることが好ましく、0.2重量部以上0.5重量部以下用いることがより好ましい。
【0043】
前記重合開始剤としては、油溶性重合開始剤と水溶性重合開始剤が挙げられる。前記油溶性重合開始剤としては、例えば、ジラウロイルパーオキサイド、ジ-3,5,5,トリメチルヘキサノイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート類;t-ブチルヒドロペルオキシド、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート等の有機過酸化物;及び2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系開始剤等を用いることができる。また、前記水溶性重合開始剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過酸化水素水等を用いることができる。前記重合開始剤は、一種を単独又は二種以上組み合わせて用いることができる。前記重合開始剤は、必要に応じて、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物(ロンガリットとも称される。)、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム等の還元剤と併用することができる。前記還元剤は、一種を単独又は二種以上組み合わせて用いることができる。
【0044】
前記塩化ビニル系樹脂ラテックスと前記凝固剤との混合は、特に限定されないが、凝固ラテックスが短時間で均質となるように、例えば、オンレーターや上下振動式撹拌機(例えば、冷化工業株式会社製「バイブロミキサー」)等のラテックスに大きなせん断力を付与できる混合機を用い、凝固操作を実施するのが好ましい。凝固ラテックスが短時間で均質となるようなせん断力を付与するという観点から、混合(凝固)操作における撹拌動力は2kW/m3以上であることが好ましく、5kW/m3以上であることがより好ましい。混合操作における撹拌動力の上限は特に限定されないが、設備コスト上の観点から、50kW/m3以下であることが好ましい。
【0045】
前記塩化ビニル系樹脂ラテックス中に凝固剤を添加して凝固させる際の温度は、塩化ビニル系樹脂のガラス転移温度Tg未満であればよく、特に制限されないが、大きなせん断場において均質な凝固ラテックスが短時間で得られる観点から、5℃以上Tg-15℃以下の範囲であることが好ましい。
【0046】
前記塩化ビニル系樹脂の凝固ラテックス(以下において、単に凝固ラテックスとも記す。)において、樹脂固形分の濃度は、好ましくは22重量%以上であり、より好ましくは25重量%以上50重量%以下、さらに好ましくは30重量%以上45重量%以下である。前記凝固ラテックス中の樹脂固形分の濃度が上述した範囲内であると、凝固ラテックスが流動性に優れ、熱処理を行う容器へ添加する際の配管での移送が容易になる。
【0047】
次に、得られた塩化ビニル系樹脂の凝固ラテックスを、塩化ビニル系樹脂のガラス転移温度をTgとした場合、Tg以上Tg+35℃以下の温度範囲で熱処理することで、塩化ビニル系樹脂凝集体粒子を含むスラリーを得ることができる。熱処理温度がTg以上であると、D50及びD90が上述した範囲の塩化ビニル系樹脂凝集体粒子が得られやすい。塩化ビニル系樹脂のガラス転移温度は、分子量や共重合組成等により異なるが、通常、一般的な重合方法で、塩化ビニル単量体のみから得られる塩化ビニル系樹脂のガラス転移温度は約80℃である。なお、ガラス転移温度(Tg)の測定は、示差走査熱量計(株式会社日立ハイテクサイエンス製、型式DSC7020)を用いて、温度30℃以上200℃以下、昇温速度10℃/分の操作条件で行うことができる。熱処理温度は、具体的には、75℃以上95℃以下であることが好ましく、80℃以上95℃以下であることがより好ましく、缶内面用フィルム及びマーキングフィルム等のフィルムの透明性を高める観点から、80℃以上90℃以下であることがさらに好ましい。また、熱処理時間は、特に限定されないが、所定の温度に到達後、工業的実施の側面から、30秒以上300分以下保持することが好ましく、3分以上120分以下保持することがより好ましく、5分以上30分以下保持することがさらに好ましい。
【0048】
前記熱処理は、熱処理を均一に行うという観点から、塩化ビニル系樹脂の凝固ラテックスを、水蒸気及び水浴からなる群から選ばれる一種以上の加熱媒体と混合することにより行うことが好ましい。前記水蒸気の種類と圧力は、温度を、塩化ビニル系樹脂のTg以上に上昇できるものであれば良いが、中でも0.1MPa以上の水蒸気が好ましい。また、水浴で行う場合は、所定の温度を維持するため、水浴中に水蒸気を投入しても良い。
【0049】
塩化ビニル系樹脂の凝固ラテックスを、所定の温度に調整した水浴中に連続的に添加し、さらに連続的に抜き出しながら熱処理する場合には、例えば、熱処理を行う槽における平均の滞留時間(熱処理を行う槽の仕込み容量(L)を、熱処理槽に連続的に供給される凝固ラテックス及び水の供給速度(L/分)で除した値)が熱処理時間に相当する。熱処理時間は、特に制限されないが、例えば30秒以上とするのが好ましい。
【0050】
次に、得られた塩化ビニル系樹脂凝集体粒子を含むスラリーを、pHが4以上11以下、好ましくはpHが5以上10以下、より好ましくはpHが6以上9以下の範囲になるように調整する。pHが上記の範囲内であることにより、得られる塩化ビニル系樹脂凝集体粒子の吸湿率が低く、該塩化ビニル系樹脂凝集体粒子を含む組成物の貯蔵安定性が良好になる。pH調整には、pHを上述した範囲内に調整することができる化合物を用いればよく、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウム等を用いることができる。
【0051】
次に、pH調整後の塩化ビニル系樹脂凝集体粒子を含むスラリーを脱水した後、水を添加して水洗する。前記脱水は、特に限定されないが、濾過により行うことができる。水洗工程は、得られる塩化ビニル系樹脂凝集体粒子におけるNa濃度を90ppm以下にするための必須工程である。前記水洗は、純水を用いて行なうことができる。水洗に用いる純水の量は、脱水後の樹脂固形分(湿樹脂)重量に対して2倍以上100倍以下である。水洗に用いる純水の量が上述した範囲内であると、得られる塩化ビニル系樹脂凝集体粒子におけるNa濃度が90ppm以下になる。得られる塩化ビニル系樹脂凝集体粒子におけるNa濃度をより低減する観点から、水洗に用いる純水の量は、脱水後の樹脂固形分(湿樹脂)重量に対して3倍以上であることが好ましく、5倍以上であることがより好ましく、10倍以上であることがさらに好ましく、20倍より多いことがさらにより好ましく、21倍以上であることがさらにより好ましく、25倍以上であることが特に好ましい。水洗に用いる純水の量は、脱水後の樹脂固形分(湿樹脂)重量に対して20倍より多いと、水溶性の残存物をより低減することができる。操作性の観点から、水洗に用いる純水の量は、脱水後の樹脂固形分(湿樹脂)重量に対して90倍以下であることが好ましく、80倍以下であることがより好ましく、70倍以下であることがさらに好ましい。
【0052】
次に、前記水洗後の塩化ビニル系樹脂凝集体粒子を含むスラリーを、脱水、乾燥した後、粉砕及び/又は分級する。前記脱水は、特に限定されないが、濾過により行うことができる。乾燥温度には特に制限はないが、乾燥は、通常、樹脂温度35℃以上100℃以下の範囲で行うことができる。脱水、乾燥した後、粉砕及び/又は分級することで、粒子径を調整し、所望のD50及びD90を有する塩化ビニル系樹脂凝集体粒子を得る。前記粉砕機或いは破砕機にも特に制限はなく、例えば、ローラーミル、高速回転粉砕機、ボールミル、ジェットミル等を使用することができる。所望のD50及びD90を有する塩化ビニル系樹脂凝集体粒子が得られやすく、粉砕機由来のコンタミネーションを防止でき、生産性が高い観点から、高速回転粉砕機、流動層ジェットミル粉砕機を用いることが好ましい。
【0053】
(金属缶塗料用組成物)
前記塩化ビニル系樹脂凝集体粒子を含む組成物は、金属缶塗料用組成物として用いることができる。該金属缶塗料用組成物で形成した金属缶の塗膜は、高い透明性及び耐レトルト性を有する。前記金属缶塗料用組成物は、金属缶の内面に用いる缶内面塗料用組成物であってもよく、金属缶の外面に用いる缶外面塗料用組成物であってもよいが、高い耐レトルト性を有することから特に缶内面塗料用組成物として好適に用いることができる。
【0054】
前記金属缶塗料用組成物は、塗膜の加工性、耐レトルト性及び引裂き性の観点から、(A)前記塩化ビニル系樹脂凝集体粒子を20重量部以上80重量部以下、(B)フェノール樹脂、エポキシ樹脂及びアクリル樹脂からなる群から選ばれる1種以上の樹脂を1重量部以上30重量部以下、(C)ポリエステル系樹脂を1重量部以上60重量部以下、及び(D)有機溶剤を含み、(A)、(B)及び(C)の合計量が100重量部であることが好ましい。
【0055】
前記金属缶塗料用組成物は、(A)前記塩化ビニル系樹脂凝集体粒子を30重量部以上65重量部以下含むことがより好ましい。前記金属缶塗料用組成物は、(B)フェノール樹脂、エポキシ樹脂及びアクリル樹脂からなる群から選ばれる1種以上の樹脂を10重量部以上20重量部以下含むことがより好ましい。前記金属缶塗料用組成物は、(C)ポリエステル系樹脂を15重量部以上35重量部以下含むことがより好ましい。
【0056】
前記フェノール樹脂、前記エポキシ樹脂、前記アクリル樹脂及び前記ポリエステル系樹脂は、特に限定されず、例えば、通常金属缶の塗膜に用いるものを適宜用いることができる。
【0057】
前記フェノール樹脂は、フェノール類とアルデヒド類の縮合物であればよく、ノボラック型及びレゾール型のいずれも用いることができる。前記フェノール類はフェノール骨格を有する化合物をいい、フェノールの他にフェノールの芳香環の水素原子の1つ以上をアルキル基、シクロアルキル基、アリール基で置換した化合物等も含む。具体的には、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、キシレノール、ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、フェニルフェノール、シクロヘキシルフェノール、トリメチルフェノール、ビスフェノールA、カテコール、レゾシノール、ハイドロキノン、ナフトール、ピロガロール等を、単独又は二種以上混合して使用することができる。前記アルデヒド類としても特に限定されないが、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド、アクロレイン等を使用することができる。この中でも、反応操作が容易であることからホルムアルデヒドが好ましい。
【0058】
前記エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの縮合物、いわゆるビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いることができる。
【0059】
前記アクリル樹脂としては、例えば、アクリル酸エステル及び/又はメタアクリル酸エスエルの重合体を用いることができる。前記アクリル樹脂は、アクリル酸エステル及び/又はメタアクリル酸エスエルに加えて、他の単量体を含んでも良い。他の単量体としては、例えば、スチレン系モノマー、ヒドロキシ含有モノマー、アクリロニトリル等が挙げられる。他の単量体は、一種を単独で用いても良く、二種以上を組合わせて用いても良い。
【0060】
前記ポリエステル系樹脂としては、引裂き性の観点から、例えば、水酸基を有する非晶性のポリエステ系樹脂を用いることが好ましい。
【0061】
前記有機溶剤(揮発成分)は、前記塩化ビニル系樹脂凝集体粒子を溶解せず、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂及びポリエステル系樹脂を溶解するものであればよい。前記塩化ビニル系樹脂凝集体粒子は有機溶媒中に分散することになる。このような有機溶剤としては、例えば、メタノール等のアルコール系溶剤、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸ブトキシエチル等のエステル系溶剤、キシレン等の芳香族系溶剤、及びその他の炭化水素系溶剤等を適宜用いることができる。前記有機溶剤は、一種を単独で用いても良く、二種以上を組合わせて用いても良い。
【0062】
前記金属缶塗料用組成物は、キャスト成形時の粘度安定性及び塗膜形成性の観点から、(A)、(B)及び(C)を含む不揮発成分を合計で20重量%以上80重量%以下含むことが好ましく、より好ましくは25重量%以上60重量%以下含む。
【0063】
前記金属缶塗料用組成物(ゾル)は、ゾル作製後24時間経過後の回転数が6rpm時の粘度が100mPa・s以上800mPa・s以下であることが好ましく、300mPa・s以上700mPa・s以下であることがより好ましく、350mPa・s以上600mPa・s以下であることがより好ましい。前記金属缶塗料用組成物(ゾル)は、ゾル作製後24時間経過後の回転数が12rpm時の粘度が100mPa・s以上800mPa・s以下であることが好ましく、300mPa・s以上700mPa・s以下であることがより好ましく、350mPa・s以上600mPa・s以下であることがより好ましい。前記金属缶塗料用組成物の粘度は、B型粘度計を用いて測定する。前記金属缶塗料用組成物の粘度が上述した範囲であると、粘度が低く、粘度安定性に優れることから、キャスト成形に好適に用いることができる。
【0064】
前記金属缶塗料用組成物(ゾル)は、キャスト成形による塗膜形成性の観点から、ゾル中に残存する粗粒の量が増える粒子径(A法)は、20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。また、粒子径が80μm以上100μm以下の範囲の粗粒(C法)は、2個以下であることが好ましく、1個以下であることがより好ましい。
【0065】
前記金属缶塗料用組成物(ゾル)を、特に限定されないが、例えば、金属素材上に塗工し、焼き付ける(キャスト成形する)ことで塗膜(例えば、缶内面用フィルム)を形成することができる。金属素材としては、特に限定されないが、例えば、ブリキ、テインフリースチール、アルミ材等が挙げられる。塗工は、例えば、ロールコート、スプレコート、ディップコート、グラビアコート、カーテンフローコート、はけ塗り、印刷法等の公知の方法で行うことができる。焼き付けは、特に限定されないが、有機溶剤の除去性及び硬化反応の反応性の観点から、例えば、温度180℃以上250℃以下で、3分以上20分以下行っても良く、温度190℃以上240℃以下で、3分以上20分以下行っても良い。
【0066】
前記塗膜(例えば、缶内面用フィルム)の厚みは、0.2μm以上100μm以下であることが好ましい。塗膜の厚みが上述した範囲内であると、塗膜から有機溶剤を完全に除去しやすく、缶成形工程で塗膜が破損することもない。前記塗膜の厚みは、0.5μm以上であることがより好ましく、1.0μm以上であることがさらに好ましく、2.0μm以上であることがさらにより好ましく、3.0μm以上であることが特に好ましい。前記塗膜の厚みは、50μm以下であることがより好ましく、40μm以下であることがさらに好ましく、30μm以下であることがさらにより好ましく、20μm以下であることが特に好ましい。
【0067】
前記塗膜(例えば、缶内面用フィルム)は、透明性に優れる観点から、ヘイズ値が、10.5%以下であることが好ましく、10.0%以下であることがより好ましく、9.8%以下であることがさらに好ましい。前記塗膜は、耐レトルト性に優れる観点から、0.26MPa且つ121℃雰囲気下で純水中に90分間浸漬した後の光沢値が50以上であることが好ましく、60以上であることがより好ましく、70以上であることがさらに好ましく、75以上であることが特に好ましい。また、前記塗膜は、耐レトルト性に優れる観点から、0.26MPa且つ121℃雰囲気下で純水中に90分間浸漬することによる光沢の低下値が45以下であることが好ましく、34以下であることがより好ましい。
【0068】
前記塗膜(例えば、缶内面用フィルム)は、厚みが20μm以下であり、ヘイズ値が10.0%以下であり、0.26MPa且つ121℃雰囲気下で純水中に90分間浸漬した後の光沢値が50以上であることが好ましい。厚みが薄くても、耐レトルト性に優れることから、オーバル缶、角缶、DR缶等の様々な金属缶の缶内面用フィルムとして好適に用いることができる。
【0069】
(マーキングフィルム用組成物)
前記塩化ビニル系樹脂凝集体粒子を含む組成物は、マーキングフィルム用組成物として用いることができる。該マーキングフィルム用組成物で形成したマーキングフィルムは、高い透明性及び耐水性を有する。
【0070】
前記マーキングフィルム用組成物は、マーキングフィルムの透明性、耐水性及び耐候性の観点から、(a)前記塩化ビニル系樹脂凝集体粒子を50重量部以上90重量部以下、(b)可塑剤を10重量部以上50重量部以下、及び(c)有機溶剤を含み、(a)及び(b)の合計量が100重量部であることが好ましい。
【0071】
前記マーキングフィルム用組成物は、(a)前記塩化ビニル系樹脂凝集体粒子を60重量部以上80重量部以下含むことがより好ましい。前記マーキングフィルム用組成物は、(b)可塑剤を20重量部以上40重量部以下含むことがより好ましい。
【0072】
前記マーキングフィルム用組成物は、マーキングフィルムに柔軟性を付与する観点から可塑剤を含む。前記可塑剤としては特に限定されず、一般的に塩化ビニル系樹脂組成物に使用されているものを用いることができる。具体例としては、例えば、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル、ジノルマルオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ブチルベンジルフタレート等のフタル酸エステル系可塑剤;トリクレジルホスフェート、トリ-2-エチルヘキシルホスフェート等のリン酸エステル系可塑剤;ジ-2-エチルヘキシルアジペート等のアジピン酸エステル系可塑剤;ジ-2-エチルヘキシルセバケート等のセバシン酸エステル系可塑剤;ジ-2-エチルヘキシルアゼレート等のアゼライン酸エステル系可塑剤;トリ-2-エチルヘキシルトリメリテート等のトリメリット酸エステル系可塑剤;ポリエステル系可塑剤;ジ-2-エチルヘキシルベンゾエート、ジエチレングリコールジベンゾエート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールイソブチレートベンゾエート等の安息香酸エステル系可塑剤;アセチルトリブチルシトレート等のクエン酸エステル系可塑剤;グリコール酸エステル系可塑剤;塩素化パラフィン系可塑剤;塩素化脂肪酸エステル系可塑剤;エポキシ系可塑剤;テキサノールイソブチレート等を用いることができる。これらは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いても良い。
【0073】
前記マーキングフィルム用組成物は、必要に応じて、安定剤、帯電防止剤、着色剤、紫外線吸収材、滑剤、改質剤、充填剤、希釈剤等の塩化ビニル系樹脂組成物に一般的に使用される各種添加剤を更に含有してもよい。
【0074】
前記(c)有機溶剤(揮発成分)は、マーキングフィルム組成物の粘度を下げる目的に使用される。前記塩化ビニル系樹脂凝集体粒子は有機溶媒中に分散することになる。このような有機溶剤としては、例えば、メタノール等のアルコール系溶剤、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸ブトキシエチル等のエステル系溶剤、キシレン等の芳香族系溶剤、その他の炭化水素系溶剤等を適宜用いることができる。前記有機溶剤は、一種を単独で用いても良く、二種以上を組合わせて用いても良い。
【0075】
前記マーキングフィルム用組成物は、粘度安定性及び塗膜形成性の観点から、(a)及び(b)を含む不揮発成分を合計で10重量%以上90重量%以下含むことが好ましく、より好ましくは15重量%以上60重量%以下含む。
【0076】
前記マーキングフィルム用組成物(ゾル)は、低粘度及び粘度安定性ゾル作製後24時間経過後の回転数が6rpm時の粘度が350mPa・s以上8500mPa・s以下であることが好ましく、400mPa・s以上6000mPa・s以下であることがより好ましく、500mPa・s以上1000mPa・s以下であることがさらに好ましい。前記マーキングフィルム用組成物(ゾル)は、低粘度及び粘度安定性ゾル作製後24時間経過後の回転数が12rpm時の粘度が300mPa・s以上75000mPa・s以下であることが好ましく、400mPa・s以上5000mPa・s以下であることがより好ましく、500mPa・s以上1000mPa・s以下であることがさらに好ましい。前記マーキングフィルム用組成物の粘度は、B型粘度計を用いて測定する。前記マーキングフィルム用組成物の粘度が上述した範囲であると、粘度が低く、粘度安定性に優れることから、キャスト成形に好適に用いることができる。
【0077】
前記マーキングフィルム用組成物(ゾル)は、キャスト成形時の塗膜形成性の観点から、ゾル中に残存する粗粒の量が増える粒子径(A法)は、20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。また、粒子径が80μm以上100μm以下の範囲の粗粒(C法)は、3個以下であることが好ましく、1個以下であることがより好ましい。
【0078】
前記マーキングフィルム用組成物(ゾル)を、特に限定されないが、例えば、キャスト成形することでマーキングフィルムを形成する。キャスト成形方法として、例えば、前記マーキングフィルム用組成物(ゾル)を、グラビアコーター、ロールコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、カーテンコーター、ディップコーター、スプレイコーター、スピンコーター、押出コーター、ダイコーターにより塗工した後、熱風乾燥して塗膜を得る方法が挙げられる。熱風乾燥は、例えば、温度180℃以上250℃以下で、3分以上20分以下行っても良く、温度190℃以上240℃以下で、3分以上20分以下行っても良い。
【0079】
前記塗膜(マーキングフィルム)の厚みは、10μm以上1000μm以下であることが好ましい。マーキングフィルムの厚みが上述した範囲内であると、使用中に破損しにくく、無駄に厚くなるのも防ぐことができる。前記塗膜の厚みは、20μm以上であることがより好ましく、30μm以上であることがさらに好ましい。前記マーキングフィルムの厚みは、800μm以下であることがより好ましく、500μm以下であることがさらに好ましく、300μm以下であることがさらにより好ましく、200μm以下であることが特に好ましい。
【0080】
前記マーキングフィルムは、透明性に優れる観点から、ヘイズ値が12.0%以下であることが好ましく、10.0%以下であることがより好ましく、8.0%以下であることがさらに好ましい。前記マーキングフィルムは、耐水性(吸水白化)に優れる観点から、30℃の純水中に3日間浸漬させた後のヘイズが35.0%以下であることが好ましく、30.0%以下であることがより好ましく、26.0%以下であることがさらに好ましい。また、前記マーキングフィルムは、耐水性(回復性)に優れる観点から、30℃の純水中に3日間浸漬させた後に23℃、相対湿度45%で1時間回復した後のヘイズが23.0%以下であることが好ましく、20.0%以下であることがより好ましい。
【0081】
前記マーキングフィルムは、そのままの形で提供されても良く、屋外の広告看板等の被着体に容易に貼り付けることができるよう、マーキングフィルムの一方の表面に配置された接着剤層を有しても良い。また、接着剤層に、剥離紙、離型紙、剥離フィルム、リリースライナー等を貼り付けて保護層を形成して接着剤層を保護しても良い。
【0082】
前記マーキングフィルムは、屋内外、特に屋外の装飾表示用として好適に使用される。具体的には、屋外の広告看板、サインディスプレー、壁装用シート等として使用することができる。
【実施例
【0083】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0084】
まず、実施例及び比較例で用いた測定方法及び評価方法について説明する。
【0085】
(塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子の体積平均粒子径)
塩化ビニル系樹脂ラテックスを測定試料とし、JIS Z 8823-2に準拠し、ディスク遠心式粒子径分布測定装置(CPS Instroments.Inc製、「Disk Centrifuge Model DC18000」)を用いて、沈降法に基づく遠心分離により粒子の濃度勾配を作ることで、それぞれの体積基準に基づく重量分布から、塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子の体積平均粒子径(ピーク粒子径)を求めた。測定条件としては、ディスクの回転数を12000rpmに設定した後、8重量%スクロース水溶液と、24重量%スクロース水溶液を各8mLずつ注入し、スクロースの濃度勾配を作製した。測定試料は、350メッシュの金網でろ過した塩化ビニル系樹脂ラテックスに、0.2μmのフィルターでろ過したイオン交換水を加えて調整したものを用い、0.1mLの試料を入れて、470nmの検出機を用いて測定した。
【0086】
(塩化ビニル系樹脂の平均重合度)
塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、JIS K 7367-2に準拠して測定した。まず、100mlのビーカーに、塩化ビニル系樹脂凝集体粒子又は乾燥させた塩化ビニル系樹脂ラテックス2.5mg、シクロヘキサノン50mL(47.1g)を入れ、25℃の振とう機に入れ1時間溶解させて試料溶液を作製した。次に、試料溶液及びシクロヘキサノンの落下秒数の平均(n=2)をそれぞれ求め、粘度比(VR)=試料溶液の落下秒数/シクロヘキサノンの落下秒数を求めた。次に、JIS K 7367-2-1999の換算表に基づいて、粘度比(VR)に対応するK値を測定した。次に、K値に基づいて平均重合度を算出した。
【0087】
(塩化ビニル系樹脂のガラス転移温度)
塩化ビニル系樹脂のガラス転移温度Tgの測定方法は、アルミニウム容器に、塩化ビニル系樹脂を5mg測り取り、蓋をしてクリンプした後、空のアルミニウム容器を基準物質と併せて、示差走査熱量計(株式会社日立ハイテクサイエンス製、DSC7020)にセットし、窒素ガス雰囲気下、30℃~200℃の範囲で、昇温速度10℃/minにて、示差走査熱量分析を行い、Tgを算出した。なお、塩化ビニル系樹脂の試料は、各種製造例で得られた塩化ビニル系樹脂ラテックスを、入口温度105℃、出口温度55℃にて、噴霧乾燥した樹脂を用いた。
【0088】
(塩化ビニル系樹脂凝集体粒子の粒子径分布)
粒度分布測定装置であるマイクロトラックHRA9320-X100型(日機装株式会社製)を用いて、塩化ビニル系樹脂凝集体粒子の粒子径分布を体積基準で測定し、体積粒度分布における累積体積百分率が50体積%の粒子径(体積平均粒子径)D50、及び体積粒度分布における累積体積百分率が90体積%の粒子径D90を求めた。測定条件としては、温度25℃、物質情報は透明で屈折率1.51、球形粒子のチェックはなし、キャリアーは水を用い屈折率は1.33とした。また、セットゼロ(SET ZERO)10秒、計測10秒、ドライカット(DRY CUT)計算なしとした。
また、塩化ビニル系樹脂凝集体粒子を構成した塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子の体積平均粒子径(D50)を測定する場合は、塩化ビニル系樹脂凝集体粒子100重量部に非イオン界面活性剤である「ノイゲンLP-180」(第一工業製薬社製)を10重量部添加して、塩化ビニル系樹脂凝集体粒子を塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子に解し、測定サンプルとして用いた。
【0089】
(塩化ビニル系樹脂凝集体粒子のNa濃度)
<試料の水抽出液>
試料約90mgをポリプロピレン(PP)製の容器に秤量し、超純水を45g加えて40℃で超音波処理を1時間行い、攪拌した後、24時間振とうさせてNaを抽出した。次に、上澄みを採取し、孔径0.2μmの親水性ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製フィルターでろ過し、試料の水抽出液を得た。なお、加えた超純水は密度を1g/mLとみなし、重量測定値(g)をそのまま体積(mL)とした。
<ICP-MS測定>
アジレント・テクノロジー製Agilent7500CXを用いて、1点検量線法により試料の水抽出液に含まれるNaについて半定量分析をした。測定条件は、定性/半定量モード、RFパワー1500W、キャリアガス0.85L/minであった。また、リアクションガスにH2を5.0mL/minの条件で使用し、コリジョンガスにHeを3.0mL/minの条件で使用した。
【0090】
(粘度)
組成物(ゾル)について、ゾル作製後2時間後及び1日後(24時間後)のゾルを試料とし、B型粘度計(BM型ViSCOMETER、TOKIMEC INC.製)を用いて、6rpm及び12rpmのそれぞれの回転数におけるゾルの粘度を測定した。ゾル温度は25℃とした。
【0091】
(粗粒)
組成物(ゾル)について、グラインドメーターを用いて、それぞれゾル中に残存する粗粒をA法及びC法(80μm以上100μm以下の範囲)で測定した。なお、A法は、粗粒の量が増える粒子径サイズであり、C法は、各種粒子径範囲に存在する粒子の個数であり、ここでのC法では、80μm以上100μm以下の範囲に存在する粗粒の個数を求めた。
【0092】
(缶内面用フィルムの透明性)
缶内面用フィルム(OHPフィルム上に塗装したフィルム)について、濁度計(日本電色工業製、Haze Meter NDH4000)を用いてヘイズ及び全光線透過率を測定した。また、ヘイズの値に基づいて、下記の4段階の基準で透明性を評価した。ヘイズの値が小さいほど透明性に優れる。
A:9.8%以下
B:9.8%超え10.5%以下
C:10.5%超え15.0%以下
D:15.0%超え
【0093】
(耐レトルト性)
<レトルト性試験>
缶内面用フィルム(ブリキ板上に塗装したフィルム)を、0.26MPa且つ121℃の雰囲気下で純水中に90分間浸漬させた。
<フィルムの光沢>
レトルト性試験前後の缶内面用フィルムの光沢を測定した。なお、フィルムの光沢の測定は、光沢計(村上色彩技術研究所製、GLOSS METER GM-3D)を用いて、入射角と受光角の差60℃の条件で、検出された光度を測定した。レトルト性試験前の光沢に対するレトルト性試験後の光沢の低下量に基づいて、下記の4段階の基準で耐レトルト性を評価した。光沢の低下量が低いほど耐レトルト性に優れる。
A:34以下
B:34超え45以下
C:45超え80以下
D:80超え
<接着性>
レトルト性試験後に、缶内面用フィルム(ブリキ板上に塗装したフィルム)に一辺5mm角の正方形が、縦に2個、横に4個並ぶように切れ目を入れ、セロハンテープ(積水化学工業製、セキスイセロテープ(登録商標)No.252)で剥離試験を行い、剥離した枚数を数えた。剥離した枚数に基づいて、下記の3段階の基準で接着性を評価した。剥離した枚数が少ないほど接着性に優れる。
A:0個
B:1個
C:2個以上
【0094】
(マーキング用フィルムの透明性)
マーキング用フィルムについて、濁度計(日本電色工業製、Haze Meter NDH4000)を用いてヘイズを測定した。ヘイズの値に基づいて、下記の4段階の基準で透明性を評価した。ヘイズの値が小さいほど透明性に優れる。
A:8.0%以下
B:8.0%超え12.0%以下
C:12.0%超え20.0%以下
D:20.0%超え
【0095】
(耐水性)
マーキング用フィルムについて、30℃の純水中に3日間浸漬させ、耐水性試験を行った。耐水性試験直後(吸水白化)、及び耐水性試験後に23℃、相対湿度45%で1時間回復した後(回復性)のマーキング用フィルムのヘイズを、濁度計(日本電色工業製、Haze Meter NDH4000)を用いて測定した。ヘイズの値に基づいて、吸水白化及び回復性を下記の基準で評価した。ヘイズの値が小さいほど耐水性に優れる。
<吸水白化>
A:26%以下
B:26%超え35%以下
C:35%超え50%以下
D:50%超え
<回復性>
A:20%以下
B:20%超え23%以下
C:23%超え40%以下
D:40%超え
【0096】
(製造例1)
ジャケット付き300L耐圧容器に塩化ビニル単量体136.4Kg、イオン交換水150Kg、ラウリル硫酸ナトリウム16.7g、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物(ロンガリット)127.5g、及び炭酸水素ナトリウム60gを仕込んで50℃に昇温し、攪拌しながら、0.3重量%t-ブチルヒドロペルオキシド水溶液3.2kg、及び4重量%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液7.9kgを連続的に追加することで、重合を行った。重合圧力が初期圧力(0.7MPa)より0.35MPa低下するまで重合した後、残存単量体を回収して塩化ビニル系樹脂ラテックスを得た。最終的に得られた塩化ビニル系樹脂ラテックスにおいて、塩化ビニル単量体の総仕込み量に対する重合転化率は90%であった。得られた塩化ビニル系樹脂ラテックスにおいて、塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子の体積平均粒子径は0.45μmであり、平均重合度は1480であった。また、塩化ビニル系樹脂ラテックス中の樹脂固形分の濃度は38重量%であった。
【0097】
(製造例2)
ジャケット付き300L耐圧容器に塩化ビニル単量体150Kg、イオン交換水150Kg、製造例1で得られた塩化ビニル系樹脂ラテックス14.6kg、ミリスチン酸カリウム水溶液83.3g(塩化ビニル単量体の総仕込み量100重量部に対して0.06重量部)ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物(ロンガリット)127.5g、及びリン酸カリウム15gを仕込んで48℃に昇温し、攪拌しながら、0.4重量%t-ブチルヒドロペルオキシド水溶液5.44kg、及び10重量%ミリスチン酸カリウム水溶液6.8kg(塩化ビニル単量体の総仕込み量100重量部に対して0.45重量部)を連続的に追加することで、重合を行った。重合圧力が初期圧力(0.65MPa)より0.3MPa低下するまで重合した後、残存単量体を回収して塩化ビニル系樹脂ラテックスを得た。最終的に得られた塩化ビニル系樹脂ラテックスにおいて、塩化ビニル単量体の総仕込み量に対する重合転化率は90%であった。得られた塩化ビニル系樹脂ラテックスは、体積平均粒子径が1.24μmの塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子を80体積%と、体積平均粒子径が0.45μmの塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子を20体積%含み、塩化ビニル系樹脂の平均重合度は1640であった。また、塩化ビニル系樹脂ラテックス中の樹脂固形分の濃度は40重量%であり、塩化ビニル系樹脂のTgは80℃であった。
【0098】
(製造例3)
ジャケット付き300L耐圧容器に塩化ビニル単量体150Kg、イオン交換水150Kg、ミリスチン酸カリウム150g、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物(ロンガリット)127.5g、及びリン酸カリウム15gを仕込んで50℃に昇温し、攪拌しながら、0.6重量%t-ブチルヒドロペルオキシド水溶液3.2kg、及び12重量%ミリスチン酸カリウム水溶液7.9kgを連続的に追加することで、重合を行った。重合圧力が初期圧力(0.7MPa)より0.35MPa低下するまで重合した後、残存単量体を回収して塩化ビニル系樹脂ラテックスを得た。最終的に得られた塩化ビニル系樹脂ラテックスにおいて、塩化ビニル単量体の総仕込み量に対する重合転化率は90%であった。得られた塩化ビニル系樹脂ラテックスにおいて、塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子の体積平均粒子径は0.27μmであり、塩化ビニル系樹脂の平均重合度は1500であった。また、塩化ビニル系樹脂ラテックス中の樹脂固形分の濃度は46重量%であり、塩化ビニル系樹脂のTgは78℃であった。
【0099】
(製造例4)
ジャケット付き300L耐圧容器に塩化ビニル単量体136.4Kg、イオン交換水150Kg、製造例3で得られた塩化ビニル系樹脂ラテックス4.0kg、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物(ロンガリット)115.9g、及びリン酸カリウム13.6gを仕込んで48℃に昇温し、攪拌しながら、0.8重量%t-ブチルヒドロペルオキシド水溶液2.94kg、及び10重量%ミリスチン酸カリウム水溶液6.8kg(塩化ビニル単量体の総仕込み量100重量部に対して0.50重量部)を連続的に追加することで、重合を行った。重合圧力が初期圧力(0.65MPa)より0.3MPa低下するまで重合した後、残存単量体を回収して塩化ビニル系樹脂ラテックスを得た。最終的に得られた塩化ビニル系樹脂ラテックスにおいて、塩化ビニル単量体の総仕込み量に対する重合転化率は90%であった。得られた塩化ビニル系樹脂ラテックスにおいて、塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子の体積平均粒子径は1.05μmであり、塩化ビニル系樹脂の平均重合度は1620であった。また、塩化ビニル系樹脂ラテックス中の樹脂固形分の濃度は40重量%であり、塩化ビニル系樹脂のTgは79℃であった。
【0100】
(製造例5)
ジャケット付き300L耐圧容器に塩化ビニル単量体150Kg、イオン交換水150Kg、ラウリル硫酸ナトリウム50g、及びヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物(ロンガリット)67.7gを仕込んで50℃に昇温し、攪拌しながら、0.3重量%過酸化水素水溶液3.2kg、及び8.6重量%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液10.5kgを連続的に追加することで、重合を行った。重合圧力が初期圧力(0.7MPa)より0.35MPa低下するまで重合した後、残存単量体を回収して塩化ビニル系樹脂ラテックスを得た。最終的に得られた塩化ビニル系樹脂ラテックスにおいて、塩化ビニル単量体の総仕込み量に対する重合転化率は92%であった。得られた塩化ビニル系樹脂ラテックスにおいて、塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子の体積平均粒子径は0.37μmであり、塩化ビニル系樹脂の平均重合度は1480であった。また、塩化ビニル系樹脂ラテックス中の樹脂固形分の濃度は46重量%であった。
【0101】
(製造例6)
ジャケット付き300L耐圧容器に塩化ビニル単量体150Kg、イオン交換水150Kg、亜硫酸ナトリウム120g、製造例5の塩化ビニル系樹脂ラテックス4330g、及び3.7重量%銅アンモニア錯体水溶液9.5gを加え、46℃に昇温し、攪拌した。続いて、0.5重量%過硫酸アンモニウム水溶液7.5kg、8重量%ラウリン酸アンモニウム水溶液8.9kg、及び3.7重量%銅アンモニア錯体水溶液1.0kgを連続的に追加することで、重合を行った。重合圧力が初期圧力(0.6MPa)より0.25MPa低下するまで重合した後、残存単量体を回収して塩化ビニル系樹脂ラテックスを得た。最終的に得られた塩化ビニル系樹脂ラテックスにおいて、塩化ビニル単量体の総仕込み量に対する重合転化率は85%であった。得られた塩化ビニル系樹脂ラテックスは、体積平均粒子径が1.00μmの塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子を70体積%と、体積平均粒子径が0.16μmの塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子を30体積%含み、塩化ビニル系樹脂の平均重合度は1500であった。また、塩化ビニル系樹脂ラテックス中の樹脂固形分の濃度は40重量%であった。
【0102】
(製造例7)
ジャケット付き300L耐圧容器に塩化ビニル単量体150Kg、イオン交換水150Kg、製造例1で得られた塩化ビニル系樹脂ラテックス21.2kg、ミリスチン酸カリウム141g(塩化ビニル単量体の総仕込み量100重量部に対して0.09重量部)、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物(ロンガリット)127.5g、及びリン酸カリウム15.0gを仕込んで46℃に昇温し、攪拌しながら、0.34重量%t-ブチルヒドロペルオキシド水溶液6.76kg、及び10重量%ミリスチン酸カリウム水溶液4.03kg(塩化ビニル単量体の総仕込み量100重量部に対して0.27重量部)を連続的に追加することで、重合を行った。重合圧力が初期圧力(0.60MPa)より0.3MPa低下するまで重合した後、残存単量体を回収して塩化ビニル系樹脂ラテックスを得た。最終的に得られた塩化ビニル系樹脂ラテックスにおいて、塩化ビニル単量体の総仕込み量に対する重合転化率は90%であった。得られた塩化ビニル系樹脂ラテックスにおいて、塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子の体積平均粒子径は1.05μmの塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子を70体積%と、体積平均粒子径が0.38μmの塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子を30体積%含み、塩化ビニル系樹脂の平均重合度は1780であった。また、塩化ビニル系樹脂ラテックス中の樹脂固形分の濃度は44重量%であり、塩化ビニル系樹脂のTgは80℃であった。
【0103】
(製造例8)
ジャケット付き300L耐圧容器に塩化ビニル単量体150Kg、イオン交換水150Kg、製造例1で得られた塩化ビニル系樹脂ラテックス21.2kg、ミリスチン酸カリウム141g(塩化ビニル単量体の総仕込み量100重量部に対して0.09重量部)、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物(ロンガリット)127.5g、及びリン酸カリウム15.0gを仕込んで42℃に昇温し、攪拌しながら、0.34重量%t-ブチルヒドロペルオキシド水溶液6.76kg、及び10重量%ミリスチン酸カリウム水溶液4.03kg(塩化ビニル単量体の総仕込み量100重量部に対して0.27重量部)を連続的に追加することで、重合を行った。重合圧力が初期圧力(0.60MPa)より0.3MPa低下するまで重合した後、残存単量体を回収して塩化ビニル系樹脂ラテックスを得た。最終的に得られた塩化ビニル系樹脂ラテックスにおいて、塩化ビニル単量体の総仕込み量に対する重合転化率は90%であった。得られた塩化ビニル系樹脂ラテックスにおいて、塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子の体積平均粒子径は1.05μmの塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子を70体積%と、体積平均粒子径が0.36μmの塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子を30体積%含み、塩化ビニル系樹脂の平均重合度は2200であった。また、塩化ビニル系樹脂ラテックス中の樹脂固形分の濃度は44重量%であり、塩化ビニル系樹脂のTgは82℃であった。
【0104】
(実施例1)
攪拌機付き混合機(熱処理槽)内に、純水10.7kg投入した後、蒸気を混合し、80℃に保温した。
別途、製造例2で得られた塩化ビニル系樹脂ラテックス18.2kgに対して、ラテックス中の樹脂固形分濃度が24.5重量%となるように純水を添加し、40℃に調整した。さらに、この塩化ビニル系樹脂ラテックスの樹脂固形分100重量部に対して、硫酸の配合量が1重量部となるように、10重量%の硫酸水溶液と塩化ビニル系樹脂ラテックスを混合し、冷化工業社製「バイブロミキサー」にて5kW/m3以上の強せん断力下で撹拌し、得られた塩化ビニル系樹脂の凝固ラテックスを連続的に、上記熱処理槽内の80℃の水浴中に投入し、80℃で30分間攪拌しながら、熱処理を行った。
熱処理終了後の塩化ビニル系樹脂凝集体粒子(以下において、単に凝集体粒子とも記す。)を含むスラリーのpHは2.5であったため、5重量%水酸化ナトリウム水溶液を用い、凝集体粒子を含むスラリーのpHが7となるように調整した後、熱処理槽から凝集体粒子を含むスラリーを払い出した。
続いて、凝集体粒子を含むスラリーを濾過により脱水し、樹脂固形分(湿樹脂)重量に対し30倍量(以下において、「水洗倍数」とも記す。)の純水で水洗後、再度濾過脱水を行った。得られた湿樹脂を60℃に設定した定温乾燥機(ヤマト科学株式会社取り扱い品、DX402型)で48時間静置乾燥して乾燥粉体を得た。さらに、得られた乾燥粉体を、NETZSCH―CONDUX社製の流動床ジェットミル粉砕機CGS-10で、常温(20±5℃)で、粉砕圧力0.55MPa、分級回転数12000rpmで粉砕し、粉砕粒子(凝集体粒子)を得た。実施例1の凝集体粒子は、80体積%の体積平均粒子径が1.24μmの塩化ビニル系ラテックス粒子と、20体積%の体積平均粒子径が0.45μmの塩化ビニル系ラテックス粒子を凝集したものであった。
【0105】
(実施例2)
熱処理温度を85℃に変更した以外は、実施例1と同様にして、粉砕粒子(凝集体粒子)を得た。実施例2の凝集体粒子は、80体積%の体積平均粒子径が1.24μmの塩化ビニル系ラテックス粒子と、20体積%の平均粒子径が0.45μmの塩化ビニル系ラテックス粒子を凝集したものであった。
【0106】
(実施例3)
熱処理温度を90℃に変更した以外は、実施例1と同様にして、粉砕粒子(凝集体粒子)を得た。実施例3の凝集体粒子は、80体積%の体積平均粒子径が1.24μmの塩化ビニル系ラテックス粒子と、20体積%の平均粒子径が0.45μmの塩化ビニル系ラテックス粒子を凝集したものであった。
【0107】
(実施例4)
塩化ビニル系樹脂ラテックスとして、製造例3で得られた塩化ビニル系樹脂ラテックス3.6kgと、製造例4で得られた塩化ビニル系樹脂ラテックス14.5kgを混ぜて攪拌したものを用いた以外は、実施例1と同様にして、粉砕粒子(凝集体粒子)を得た。実施例4の凝集体粒子は、80体積%の体積平均粒子径が1.05μmの塩化ビニル系ラテックス粒子と、20体積%の体積平均粒子径が0.27μmの塩化ビニル系ラテックス粒子を凝集したものであった。
【0108】
(実施例5)
粉砕時の分級回転数を2000rpmに変更した以外は、実施例1と同様にして、粉砕粒子(凝集体粒子)を得た。実施例5の凝集体粒子は、80体積%の体積平均粒子径が1.24μmの塩化ビニル系ラテックス粒子と、20体積%の平均粒子径が0.45μmの塩化ビニル系ラテックス粒子を凝集したものであった。
【0109】
(実施例6)
湿樹脂重量に対し20倍量の純水で水洗したこと、及び粉砕を乳鉢摺りで行ったこと以外は、実施例1と同様にして、粉砕粒子(凝集体粒子)を得た。実施例6の凝集体粒子は、80体積%の体積平均粒子径が1.24μmの塩化ビニル系ラテックス粒子と、20体積%の平均粒子径が0.45μmの塩化ビニル系ラテックス粒子を凝集したものであった。
【0110】
(実施例7)
湿樹脂重量に対し5倍量の純水で水洗したこと、及び粉砕を乳鉢摺りで行ったこと以外は、実施例1と同様にして、粉砕粒子(凝集体粒子)を得た。実施例7の凝集体粒子は、80体積%の体積平均粒子径が1.24μmの塩化ビニル系ラテックス粒子と、20体積%の平均粒子径が0.45μmの塩化ビニル系ラテックス粒子を凝集したものであった。
【0111】
(実施例8)
湿樹脂重量に対し2倍量の純水で水洗したこと、及び粉砕を乳鉢摺りで行ったこと以外は、実施例1と同様にして、粉砕粒子(凝集体粒子)を得た。実施例8の凝集体粒子は、80体積%の体積平均粒子径が1.24μmの塩化ビニル系ラテックス粒子と、20体積%の平均粒子径が0.45μmの塩化ビニル系ラテックス粒子を凝集したものであった。
【0112】
(実施例9)
塩化ビニル系樹脂ラテックスとして、製造例4で得られた塩化ビニル系樹脂ラテックス18.2kgを用い、粉砕の分級回転数を9500rpmに変更した以外は、実施例1と同様にして、粉砕粒子(凝集体粒子)を得た。実施例9の凝集体粒子は、体積平均粒子径が1.05μmの塩化ビニル系ラテックス粒子を凝集したものであった。
【0113】
(実施例10)
塩化ビニル系樹脂ラテックスとして、製造例7で得られた塩化ビニル系樹脂ラテックスを用い、湿樹脂重量に対し2倍量の水で水洗したこと、及び粉砕を乳鉢摺りで行ったこと以外は、実施例1と同様にして、粉砕粒子(凝集体粒子)を得た。実施例10の凝集体粒子は、70体積%の体積平均粒子径が1.05μmの塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子と、30体積%の平均粒子径が0.38μmの塩化ビニル系樹脂ラテックスを凝集したものであった。
【0114】
(実施例11)
塩化ビニル系樹脂ラテックスとして、製造例3で得られた塩化ビニル系樹脂ラテックス9.0kgと、製造例4で得られた塩化ビニル系樹脂ラテックス9.0kgを混ぜて攪拌したものを用いて、湿樹脂重量に対し2倍量の水で水洗したこと、及び粉砕を乳鉢摺りで行ったこと以外は、実施例1と同様にして、粉砕粒子(凝集体粒子)を得た。実施例11の凝集体粒子は、50体積%の体積平均粒子径が1.05μmの塩化ビニル系ラテックス粒子と、50体積%の体積平均粒子径が0.27μmの塩化ビニル系ラテックス粒子を凝集したものであった。
【0115】
(実施例12)
熱処理温度を95℃に変更した以外は、実施例1と同様にして、粉砕粒子(凝集体粒子)を得た。実施例12の凝集体粒子は、80体積%の体積平均粒子径が1.24μmの塩化ビニル系ラテックス粒子と、20体積%の平均粒子径が0.45μmの塩化ビニル系ラテックス粒子を凝集したものであった。
【0116】
(実施例13)
塩化ビニル系樹脂ラテックスとして、製造例8で得られた塩化ビニル系樹脂ラテックスを用い、粉砕を乳鉢摺りで行ったこと以外は、実施例3と同様にして、粉砕粒子(凝集体粒子)を得た。実施例13の凝集体粒子は、70体積%の体積平均粒子径が1.05μmの塩化ビニル系ラテックス粒子と、30体積%の体積平均粒子径が0.36μmの塩化ビニル系ラテックス粒子を凝集したものであった。
【0117】
(比較例1)
乾燥粉体を、ホソカワミクロン製分級機付ハンマーミル(ACM-10)を用いて、常温で粉砕回転数3750rpm、分級回転数7000rpmで粉砕した以外は、実施例4と同様にして、粉砕粒子(凝集体粒子)を得た。
【0118】
(比較例2)
塩化ビニル系樹脂凝集体粒子を含むスラリーの水洗を、湿樹脂重量に対し20倍量の純水を添加して行った以外は、比較例1と同様にして、粉砕粒子(凝集体粒子)を得た。
【0119】
(比較例3)
得られた乾燥粉体を、ホソカワミクロン製バンタムミル粉砕機にて、60Hzの回転数で粉砕する以外は、比較例1と同様にして、粉砕粒子(凝集体粒子)を得た。
【0120】
(比較例4)
製造例2で得られた塩化ビニル系樹脂ラテックス20kgを、スプレー型2流体ノズル式乾燥にて、入口105℃、出口50℃の条件にて乾燥し、得られた乾燥粒子を、ホソカワミクロン製バンタムミル粉砕機にて、60Hzの回転数で粉砕して、粉砕粒子を得た。
【0121】
(比較例5)
製造例6で得られた塩化ビニル系樹脂ラテックス20kgを、スプレー型2流体ノズル式乾燥にて、入口105℃、出口50℃の条件にて乾燥し、得られた乾燥粒子を、ホソカワミクロン製バンタムミル粉砕機にて、60Hzの回転数で粉砕して、粉砕粒子を得た。
【0122】
(比較例6)
製造例4で得られた塩化ビニル系樹脂ラテックス18.2kgを用いた以外は、比較例1と同様にして、粉砕粒子(凝集体粒子)を得た。
【0123】
(比較例7)
塩化ビニル単独重合体であるPolyone社製のGeon178(Tg:81℃)を使用した。該塩化ビニル単独重合体は、70体積%の体積平均粒子径が1.05μmである塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子と、30体積%の体積平均粒子径が0.30μmである塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子が凝集したものであった。
【0124】
(実施例A1)
<缶内面塗料用組成物の作製>
実施例1で得られた粉砕粒子(凝集体粒子)100重量部に、ポリエステル系樹脂(東洋紡社製、バイロン(登録商標)103)53.5重量部、フェノール樹脂(群栄化学工業社製、レジトップ(登録商標)PL-4329)16.7重量部、エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製、JER(登録商標)828)16.7重量部、メチルエチルケトン5.6重量部、キシレン62.4重量部、酢酸ブトキシエチル62.4重量部、及び炭化水素系溶剤(エッソスタンダード社製、ソルベッソ150)49.5重量部を添加し、ディゾルバー型混練機「KIKA社製、ROBO MICS/TOKU SHU」を用いて、2000rpmで2分間ずつ2回混練し、缶内面用塗料組成物を得た。
【0125】
<缶内面用フィルムの作製>
前記で得られた缶内面用塗料組成物を乾燥厚みが20μmになるように、ブリキ金属板(JFEスチール製、ぶりき)上及びOHPフィルム上にそれぞれロールコーターで塗装し、200℃で5分間焼付して缶内面用フィルムを得た。
【0126】
(実施例A2~A8、A10~A13)
実施例1で得られた粉砕粒子(凝集体粒子)に代えて、実施例2~8、10~13で得られた粉砕粒子(凝集体粒子)をそれぞれ100重量部用いた以外は、実施例A1と同様にして缶内面用塗料組成物及び缶内面用フィルムを得た。
【0127】
(実施例A9)
実施例1で得られた粉砕粒子(凝集体粒子)に代えて、実施例9で得られた粉砕粒子(凝集体粒子)を100重量部用いた以外は、実施例A1と同様にして缶内面用塗料組成物を得た。また、乾燥厚みが100μmになるようにした以外は、実施例A1と同様にして缶内面用フィルムを得た。
【0128】
(比較例A1~A6)
実施例1で得られた粉砕粒子(凝集体粒子)に代えて、比較例1~5で得られた粉砕粒子及び比較例7の塩化ビニル系樹脂粒子をそれぞれ100重量部用いた以外は、実施例A1と同様にして缶内面用塗料組成物及び缶内面用フィルムを得た。
【0129】
(比較例A7~A8)
実施例1で得られた粉砕粒子(凝集体粒子)に代えて、比較例6で得られた粉砕粒子及び比較例7の塩化ビニル系樹脂粒子をそれぞれ100重量部用いた以外は、実施例A1と同様にして缶内面用塗料組成物を得た。また、乾燥厚みが100μmになるようにした以外は、実施例A1と同様にして缶内面用フィルムを得た。
【0130】
(実施例B1)
<マーキングフィルム用組成物>
実施例1で得られた粉砕粒子(凝集体粒子)100重量部に、ポリエステル系可塑剤(ADEKA製、ADEKAサイザーPN-280)30重量部、Ba/Zn系塩ビ用安定剤(ADEKA製、ADEKAスタブAC323)3重量部、炭化水素系溶剤(エッソスタンダード社製、ソルベッソ150)30重量部を添加し、ディゾルバー型混練機「KIKA社製、ROBO MICS/TOKU SHU」を用いて、350rpmで1分間、次いで2000rpmで2分間予備混練した後、ジイソブチルケトンを30重量部追加し、さらに2000rpmで2分間混練し、マーキングフィルム用組成物を得た。
【0131】
<マーキングフィルムの作製>
前記で得られたマーキングフィルム用組成物を乾燥厚みが50μmになるように、OHPフィルム上にロールコーターで塗装し、200℃で5分間乾燥してマーキングフィルムを得た。
【0132】
(実施例B2~B8、B10~B11、B13)
実施例1で得られた粉砕粒子(凝集体粒子)に代えて、実施例2~8、10~11、13で得られた粉砕粒子(凝集体粒子)をそれぞれ100重量部用いた以外は、実施例B1と同様にしてマーキングフィルム用組成物及びマーキングフィルムを得た。
【0133】
(実施例B9、B12)
実施例1で得られた粉砕粒子(凝集体粒子)に代えて、実施例9、12で得られた粉砕粒子(凝集体粒子)を100重量部用いた以外は、実施例B1と同様にしてマーキングフィルム用組成物を得た。また、乾燥厚みが100μmになるようにした以外は、実施例B1と同様にしてマーキングフィルムを得た。
【0134】
(比較例B1~B4)
実施例1で得られた粉砕粒子(凝集体粒子)に代えて、比較例1、3、4で得られた粉砕粒子及び比較例7の塩化ビニル系樹脂粒子をそれぞれ100重量部用いた以外は、実施例B1と同様にしてマーキングフィルム用組成物及びマーキングフィルムを得た。
【0135】
(比較例B5~B6)
実施例1で得られた粉砕粒子(凝集体粒子)に代えて、比較例6で得られた粉砕粒子及び比較例7の塩化ビニル系樹脂粒子をそれぞれ100重量部用いた以外は、実施例B1と同様にしてマーキングフィルム用組成物を得た。また、乾燥厚みが100μmになるようにした以外は、実施例B1と同様にしてマーキングフィルムを得た。
【0136】
製造例1~6で得られた塩化ビニル系樹脂ラテックスにおける塩化ビニル系樹脂の平均粒子径(ラテックス粒子)、平均重合度及びガラス転移温度を上述したとおりに測定算出し、その結果を下記表1に示した。
【0137】
実施例1~13及び比較例1~7で得られた粉砕粒子のD50及びD90を上述したとおりに測定算出し、その結果を下記表2及び表3に示した。実施例1~13及び比較例1~7で得られた粉砕粒子におけるNa濃度を上述したとおりに測定算出し、その結果を下記表2及び表3に示した。
【0138】
実施例A1~A13及び比較例A1~A8で得られた缶内面用塗料組成物(ゾル)、並びに実施例B1~B13及び比較例B1~B6で得られたマーキングフィルム用組成物(ゾル)の粘度(V6は回転数が6rpmの粘度、V12は回転数が12rpmの粘度)及び粗粒を上記のとおり測定し、その結果を下記表2及び表3に示した。
【0139】
実施例A1~A13及び比較例A1~A8で得られた缶内面用フィルムについて、透明性、全光線透過率、及び耐レトルト性(レトルト性試験後の光沢及び接着性)を上述したとおりに測定評価し、その結果を下記表2及び表3に示した。
【0140】
実施例B1~B13及び比較例B1~B6で得られたマーキング用フィルムについて、透明性、及び耐水性(吸水白化及び回復性)を上述したとおりに測定評価し、その結果を下記表2及び表3に示した。
【0141】
【表1】
【0142】
【表2】
【0143】
【表3】
【0144】
表2から分かるように、D50が0.5μm以上5.0μm以下、且つD90が8.0μm以下であり、Na濃度が90ppm以下の実施例1~13の塩化ビニル系樹脂凝集体粒子をそれぞれ含む実施例A1~A13の組成物をそれぞれ用いた実施例A1~A13の缶内面用フィルムは、高い透明性と、良好な耐レトルト性を有していた。
【0145】
また、表2から分かるように、D50が0.5μm以上5.0μm以下、且つD90が8.0μm以下であり、Na濃度が90ppm以下の実施例1~13の塩化ビニル系樹脂凝集体粒子をそれぞれ含む実施例B1~B13の組成物をそれぞれ用いた実施例B1~B9のマーキング用フィルムは、高い透明性と、良好な耐水性を有していた。
【0146】
一方、表3から分かるように、Na濃度が90ppmを超える比較例4、5及び7の塩化ビニル系樹脂凝集体粒子をそれぞれ含む比較例A4、A5及びA8の組成物をそれぞれ用いた比較例A4、A5及びA8の缶内面用フィルムは、耐レトルト性が悪かった。また、D90が8.0μmを超えている比較例5、7の塩化ビニル系樹脂凝集体粒子をそれぞれ含む比較例A5及びA8の組成物をそれぞれ用いた比較例A5の缶内面用フィルム(厚み20μm)及び比較例A8の缶内面用フィルム(厚み100μm)は、透明性にも劣っていた。また、D50が5.0μmを超え、且つD90が8.0μmを超えている比較例1~3及び6の塩化ビニル系樹脂凝集体粒子をそれぞれ含む比較例A1~A3及びA6の組成物をそれぞれ用いた比較例A1~A3及びA6の缶内面用フィルムは、透明性及びレトルト性のいずれも悪かった。
【0147】
また、表3から分かるように、Na濃度が90ppmを超える比較例4及び7の塩化ビニル系樹脂凝集体粒子をそれぞれ含む比較例B3、B4及びB6の組成物をそれぞれ用いた比較例B3、B4及びB6のマーキングフィルムは、耐水性が悪かった。また、D90が8.0μmを超えている比較例7の塩化ビニル系樹脂凝集体粒子をそれぞれ含む組成物を用いた比較例B4及びB6のマーキングフィルムは、透明性にも劣っていた。また、D50が5.0μmを超え、D90が8.0μmを超えている比較例1、3及び6の塩化ビニル系樹脂凝集体粒子を含む組成物を用いた比較例B1、B2及びB5のマーキングフィルムは、透明性及び耐水性のいずれも悪かった。