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特許7231606組織プロセッサによって処理される組織サンプルを監視するシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】組織プロセッサによって処理される組織サンプルを監視するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/30 20060101AFI20230221BHJP
【FI】
G01N1/30
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020501196
(86)(22)【出願日】2018-08-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-05
(86)【国際出願番号】 AU2018050890
(87)【国際公開番号】W WO2019036758
(87)【国際公開日】2019-02-28
【審査請求日】2021-06-22
(31)【優先権主張番号】62/548,651
(32)【優先日】2017-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504466373
【氏名又は名称】ライカ・バイオシステムズ・メルボルン・プロプライエタリー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LEICA BIOSYSTEMS MELBOURNE PTY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】フィオナ・メアリー・ターベット
(72)【発明者】
【氏名】ドンチャド・オー-エインル
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-141287(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0188545(US,A1)
【文献】特表2013-502560(JP,A)
【文献】国際公開第2016/120224(WO,A1)
【文献】特開2014-115213(JP,A)
【文献】特表2012-514201(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00~ 1/44
G01N 35/00~35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織病理学ワークフローのために組織プロセッサによって処理される組織サンプルを監視するためのシステムであって、
前記組織プロセッサによって処理される少なくとも1つの組織サンプルの電子サンプル識別子をスキャンするように配設された前記組織プロセッサに関連付けられたスキャナと、
前記少なくとも1つの組織サンプルを処理するために使用される前記組織プロセッサの複数の処理ステーションのうちの選択されたものによって処理される前記少なくとも1つの組織サンプルのための組織プロセッサワークフローを示す組織プロセッサワークフローデータを受信するように配設された入力モジュールと、
前記処理ステーションの前記選択されたものの各々において処理された前記少なくとも1つの組織サンプルの特性を監視するように、かつ前記少なくとも1つの組織サンプルの前記特性を前記電子サンプル識別子に関連付けて前記組織プロセッサワークフローのサンプル記録に記録するように配設された監視モジュールと、
組織病理学ワークフローにおいて前記少なくとも1つの組織サンプルをさらに処理するために、1つ以上の研究室機器に前記サンプル記録を出力するように配設された出力モジュールと、を含み、
前記組織プロセッサによって処理される前記少なくとも1つの組織サンプルが、カセットで提供され、前記電子サンプル識別子が、カセット識別子を含み、前記カセットが、バスケットにおいて提供され、前記電子サンプル識別子が、バスケット識別子をさらに含み、
前記バスケット内に前記少なくとも1つの組織サンプルを受け入れるための一対のレトルトと、を含み、
少なくとも1つのラインがバルブを介して前記一対のレトルトのうちの少なくとも1つのレトルトに接続され、前記バルブの制御下で、対応する試薬容器からパラフィンが送達されるようにし、
前記少なくとも1つのラインは、加熱され、
前記システムは、パラフィンの特徴的な特性を感知するように構成されたセンサをさらに含み、
前記パラフィンの特徴的な特性は、前記少なくとも1つのラインを流れるパラフィンの純度であり、
前記サンプル記録は、パラフィンを使用する処理ステップを示す前記組織プロセッサワークフローデータと、パラフィンを使用する処理ステップで使用される前記パラフィンの特徴的な特性とを含む、
システム。
【請求項2】
前記サンプル記録が、前記電子サンプル識別子に関連して、前記少なくとも1つの組織サンプルの前記組織プロセッサワークフローを示す前記組織プロセッサワークフローデータをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記サンプル記録が、前記電子サンプル識別子に関連して、前記少なくとも1つの組織サンプルの前記組織プロセッサワークフローに基づく前記少なくとも1つの組織サンプルの予想される特性をさらに含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記システムが、前記処理されている少なくとも1つの組織サンプルの前記特性を感知するように配設された前記組織プロセッサ内の前記複数の処理ステーションの各々に関連付けられた1つ以上のセンサをさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記電子サンプル識別子が、バーコードタグを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記少なくとも1つの組織サンプルが、前記少なくとも1つの組織サンプルのグロス化時に前記バスケット識別子に関連付けられる、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記1つ以上の研究室機器が、前記組織病理学ワークフローにおいて、前記サンプル記録に基づいて、前記少なくとも1つの組織サンプルをさらに処理するための自動組織染色装置を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
組織病理学ワークフローのために組織サンプルを処理するための組織プロセッサであって、
前記組織プロセッサによって処理される少なくとも1つの組織サンプルの電子サンプル識別子をスキャンするように配設されたスキャナと、
前記少なくとも1つの組織サンプルを処理するように配設された複数の処理ステーションと、
前記複数の処理ステーションのうちの選択されたものによって処理される前記少なくとも1つの組織サンプルのための組織プロセッサワークフローを示す組織プロセッサワークフローデータを受信するように配設された入力モジュールと、
前記処理ステーションの前記選択されたものの各々において処理された前記少なくとも1つの組織サンプルの特性を監視するように、かつ前記少なくとも1つの組織サンプルの前記特性を前記電子サンプル識別子に関連付けて前記組織プロセッサワークフローのサンプル記録に記録するように配設された監視モジュールと、
組織病理学ワークフローにおいて前記少なくとも1つの組織サンプルをさらに処理するために、1つ以上の研究室機器に前記サンプル記録を出力するように配設された出力モジュールと、を含み、
前記組織プロセッサによって処理される前記少なくとも1つの組織サンプルが、カセットで提供され、前記電子サンプル識別子が、カセット識別子を含み、前記カセットが、バスケットにおいて提供され、前記電子サンプル識別子が、バスケット識別子をさらに含み、
前記バスケット内に前記少なくとも1つの組織サンプルを受け入れるための一対のレトルトと、を含み、
少なくとも1つのラインがバルブを介して前記一対のレトルトのうちの少なくとも1つのレトルトに接続され、前記バルブの制御下で、対応する試薬容器からパラフィンが送達されるようにし、
前記少なくとも1つのラインは、加熱され、
パラフィンの特徴的な特性を感知するように構成されたセンサと、を含み、
前記パラフィンの特徴的な特性は、前記少なくとも1つのラインを流れるパラフィンの純度であり、
前記サンプル記録は、パラフィンを使用する処理ステップを示す前記組織プロセッサワークフローデータと、パラフィンを使用する処理ステップで使用される前記パラフィンの特徴的な特性とを含む、
組織プロセッサ。
【請求項9】
前記サンプル記録が、前記電子サンプル識別子に関連して、前記少なくとも1つの組織サンプルの前記組織プロセッサワークフローを示す前記組織プロセッサワークフローデータをさらに含む、請求項8に記載の組織プロセッサ。
【請求項10】
前記サンプル記録が、前記電子サンプル識別子に関連して、前記少なくとも1つの組織サンプルの前記組織プロセッサワークフローに基づく前記少なくとも1つの組織サンプルの予想される特性をさらに含む、請求項9に記載の組織プロセッサ。
【請求項11】
前記組織プロセッサが、前記処理されている少なくとも1つの組織サンプルの前記特性を感知するように配設された前記組織プロセッサの前記複数の処理ステーションの各々に関連付けられた1つ以上のセンサをさらに含む、請求項8~10のいずれか1項に記載の組織プロセッサ。
【請求項12】
前記電子サンプル識別子が、バーコードタグを含む請求項8~11のいずれか1項に記載の組織プロセッサ。
【請求項13】
前記少なくとも1つの組織サンプルが、前記少なくとも1つの組織サンプルのグロス化時に前記バスケット識別子に関連付けられる、請求項12に記載の組織プロセッサ。
【請求項14】
ディスプレイをさらに含み、前記サンプル記録を示す情報が、前記ディスプレイ上で前記組織プロセッサのユーザに表示される、請求項4~13のいずれか1項に記載の組織プロセッサ。
【請求項15】
組織病理学ワークフローのために組織プロセッサによって処理される組織サンプルを監視する方法であって、
前記組織プロセッサに関連付けられたスキャナから、前記組織プロセッサによって処理される少なくとも1つの組織サンプルの電子サンプル識別子を受信することと、
前記少なくとも1つの組織サンプルを処理するために使用される前記組織プロセッサ内の複数の処理ステーションのうちの選択されたものによって処理される前記少なくとも1つの組織サンプルの組織プロセッサワークフローを示す組織プロセッサワークフローデータを受信することと、
前記処理ステーションの前記選択されたものの各々において処理された前記少なくとも1つの組織サンプルの特性を監視することと、
前記組織プロセッサワークフローのサンプル記録に、前記電子サンプル識別子に関連付けて前記少なくとも1つの組織サンプルの前記特性を記録することと、
前記組織病理学ワークフローにおいて前記少なくとも1つの組織サンプルをさらに処理するために、前記サンプル記録を1つ以上の研究室機器に出力することと、を含み、
前記組織プロセッサによって処理される前記少なくとも1つの組織サンプルが、カセットで提供され、前記電子サンプル識別子が、カセット識別子を含み、前記カセットが、バスケットにおいて提供され、前記電子サンプル識別子が、バスケット識別子をさらに含み、
一対のレトルトで、前記バスケット内に前記少なくとも1つの組織サンプルを受け入れることと、を含み、
少なくとも1つのラインがバルブを介して前記一対のレトルトのうちの少なくとも1つのレトルトに接続され、前記バルブの制御下で、対応する試薬容器からパラフィンが送達されるようにし、
前記少なくとも1つのラインは、加熱され、
センサによってパラフィンの特徴的な特性を感知することと、を含み、
前記パラフィンの特徴的な特性は、前記少なくとも1つのラインを流れるパラフィンの純度であり、
前記サンプル記録は、パラフィンを使用する処理ステップを示す前記組織プロセッサワークフローデータと、パラフィンを使用する処理ステップで使用される前記パラフィンの特徴的な特性とを含む、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年8月22日に出願された米国仮特許出願第62/548,651号の優先権を主張し、その内容は、この参照により本明細書に組み込まれるものとみなされる。
【0002】
本発明は、組織病理学ワークフローのために組織プロセッサによって処理される組織サンプルを監視するシステム及び方法に関する。本発明は、特に限定されないが、サンプル記録の電子サンプル識別子に関連して処理される組織サンプルの特性を監視及び記録し、組織病理学ワークフローにおいて組織サンプルをさらに処理する研究室機器で使用するためにサンプル記録を出力する用途に適用される。
【背景技術】
【0003】
生物学的組織サンプル、特に組織学的組織サンプルは、ヒト及び獣医学の分野で、特に細胞及びその環境の評価のための顕微鏡で調製された標本として、しばしば必要である。顕微鏡検査の場合、組織サンプルの切片は、専門家が顕微鏡下で、入射光または透過光下での評価のために調製されなければならない。
【0004】
例えば、ミクロトームを使用した薄い切片の作成には、ナイフを使用して、約数マイクロメートルの厚さを有する薄い透明な切片を作成することができるように、組織サンプルに一定の強度を有することが必要である。この目的のために、組織サンプルは、最初に、固定され、脱水され、透明にされ、次にキャリア材料、好ましくは溶融パラフィンが浸透される、処理プロセスを通過する必要がある。これらのプロセスは、多くの場合、「組織プロセッサ」と呼ばれる単一のユニットで連続して実行され、この目的のために、この組織プロセッサは、好適な温度及び圧力でプロセスステップを実行するための様々な試薬、特にプロセス媒体を受け取る「レトルト」と呼ばれる閉鎖可能なプロセスチャンバを含む。
【0005】
組織プロセッサで組織サンプルを処理するこれらのプロセスは、一般に組織プロセッサワークフローとして提供される。組織プロセッサワークフローは、レトルトなど、組織プロセッサ内の選択された研究室ステーションによって適用されるプロセスを定義する。また、組織病理学的または組織学的評価のために組織サンプルを分析する場合、組織プロセッサワークフローは、組織病理学ワークフローの一部を形成する。
【0006】
例えば、免疫組織化学染色及びその場での(in situ)核酸分析は、典型的な組織病理学ワークフローの一部である組織診断及び研究に使用される既存のツールである。免疫組織化学染色は、組織サンプル中のエピトープとの抗体の特異的結合親和性、及び特定のタイプの疾患細胞組織にのみ存在する特異なエピトープと特異的に結合する抗体の利用可能性の増加に依存している。免疫組織化学染色は、スライドガラスに載置された組織サンプル(典型的には、切片)で行われる一連の処理ステップを伴い、選択的な染色により、疾患状態の特定の形態学的指標を強調表示する。
【0007】
免疫組織化学染色の典型的な処理ステップには、組織プロセッサを使用した組織サンプルの前処理による非特異的結合の低減、抗体処理とインキュベーション、酵素標識二次抗体処理及びインキュベーション、抗体と結合するエピトープを有する組織サンプルの領域を強調表示する発蛍光団または発色団を生成する酵素との基質反応、対比染色などを含む。各処理ステップの間に、前のステップから未反応の残留試薬を除去するために、組織サンプルを洗浄する必要がある。ほとんどの処理ステップには、約25℃~最大約40℃の周囲温度で典型的に行われるインキュベーション期間を伴うが、セル調整ステップは典型的には、例えば90℃~100℃のやや高い温度で行われる。その場でのDNA分析は、細胞または組織サンプルの特異なヌクレオチド配列とプローブ(DNA結合タンパク質)の特異的結合親和性に依存し、同様に、様々な試薬とプロセス温度要件を伴う一連のプロセスステップを含む。いくつかの特定の反応には、120℃~130℃までの温度を伴う。したがって、組織プロセッサでの組織サンプルの前処理は、組織病理学ワークフローの残りの部分で他の研究室機器での組織サンプルのさらなる処理に影響を与える可能性が高い大量の変動性をもたらす。
【0008】
組織病理学的ワークフローにおいて組織サンプルを処理するために使用されるいくつかの研究室機器を自動化する試みが行われている。例えば、既存の用途では、自動化された組織サンプル染色装置が、免疫学的用途のためにスライド上に配置された組織サンプルを処理するために採用される。この例では、自動染色装置は、試薬を使用して組織サンプルを処理し、次にスライド上に配置されたサンプルを染色するために、単一の機器に多数の研究室モジュールを実装している。この例では、このような装置を使用したサンプルの処理には、1つ以上のロボットを構成してスライドを脱ろう液に浸し、次に染色プロトコルに従って所定の順序でスライド上のサンプルに試薬を分配する。しかしながら、自動化された組織サンプル染色装置は、以前の組織サンプル処理ステップの知識が限られているか、全くなく、これは、場合によっては、染色の質に悪影響を与える可能性がある。
【0009】
さらに、ほとんどの最新の研究室機器は何らかの方法で自動化され、コンピュータ制御が一般的になりつつあるが、各機器は、独自のオペレーティングシステムを有し、異なるデータスキーマと制御信号を使用して通信し得る。
【発明の概要】
【0010】
したがって、本発明の一態様は、組織病理学ワークフローのために組織プロセッサによって処理される組織サンプルを監視するためのシステムを提供し、システムは、組織プロセッサによって処理される少なくとも1つの組織サンプルの電子サンプル識別子をスキャンするように配設された組織プロセッサに関連付けられたスキャナと、少なくとも1つの組織サンプルを処理するために使用される組織プロセッサの複数の処理ステーションのうちの選択されたものによって処理される少なくとも1つの組織サンプルのための組織プロセッサワークフローを示す組織プロセッサワークフローデータを受信するように配設された入力モジュールと、処理ステーションの選択されたものの各々において処理された少なくとも1つの組織サンプルの特性を監視するように、かつ少なくとも1つの組織サンプルの特性を電子サンプル識別子に関連付けて組織プロセッサワークフローのサンプル記録に記録するように配設された監視モジュールと、組織病理学ワークフローにおいて少なくとも1つの組織サンプルをさらに処理するために、1つ以上の研究室機器にサンプル記録を出力するように配設された出力モジュールと、を含む。
【0011】
この態様では、システムは、組織プロセッサによって処理された組織サンプルを監視するための組織病理学ワークフローのために組織プロセッサに関して使用されるように配設されたモジュールを含む。1つ以上のモジュールを、例えばクライアント/サーバ配設で配設することができる。例えば、入力モジュール、監視モジュール、及び出力モジュールは、1つ以上の組織プロセッサとデータ通信するサーバによって提供され、スキャナは、各組織プロセッサと同じ場所に位置し得る。
【0012】
本発明の別の態様は、組織病理学ワークフローのために組織サンプルを処理するための組織プロセッサを提供し、組織プロセッサは、組織プロセッサによって処理される少なくとも1つの組織サンプルの電子サンプル識別子をスキャンするように配設されたスキャナと、少なくとも1つの組織サンプルを処理するように配設された複数の処理ステーションと、複数の処理ステーションのうちの選択されたものによって処理される少なくとも1つの組織サンプルのための組織プロセッサワークフローを示す組織プロセッサワークフローデータを受信するように配設された入力モジュールと、処理ステーションの選択されたものの各々において処理された少なくとも1つの組織サンプルの特性を監視するように、かつ少なくとも1つの組織サンプルの特性を電子サンプル識別子に関連付けて組織プロセッサワークフローのサンプル記録に記録するように配設された監視モジュールと、組織病理学ワークフローにおいて少なくとも1つの組織サンプルをさらに処理するために、1つ以上の研究室機器にサンプル記録を出力するように配設された出力モジュールと、を含む。
【0013】
この態様では、組織プロセッサは、組織病理学ワークフローのために処理されている組織サンプルを監視するために使用されるモジュールを組み込んでいる。
【0014】
少なくとも1つの組織サンプルを処理するように配設された複数の処理ステーションは、異なる試薬で組織サンプルを処理するためのレトルトを含んでもよい。レトルトを使用して、ホルマリンによる固定、アルコールによる脱水、キシレンによる透明化、サンプルへのパラフィンの添加など、多くの処理ステーションで実行することができる多くの処理ステップを実装することができることが当業者には理解されるであろう。
【0015】
いくつかの実施形態では、サンプル記録は、電子サンプル識別子に関連して、少なくとも1つの組織サンプルの組織プロセッサワークフローを示す組織プロセッサワークフローデータをさらに含む。また、いくつかの実施形態では、サンプル記録は、電子サンプル識別子に関連して、少なくとも1つの組織サンプルの組織プロセッサワークフローに基づいて少なくとも1つの組織サンプルの予想される特性をさらに含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、システムは、処理されている少なくとも1つの組織サンプルの特性を感知するように配設された組織プロセッサの複数の処理ステーションの各々に関連付けられた1つ以上のセンサをさらに含む。いくつかの実施形態では、組織プロセッサは、処理されている少なくとも1つの組織サンプルの特性を感知するように配設された組織プロセッサの複数の処理ステーションの各々に関連付けられた1つ以上のセンサをさらに含む。好ましくは、処理される少なくとも1つの組織サンプルの特性は、固定期間、組織厚さ、組織タイプ、プロトコルステップ、プロトコル期間、試薬濃度、試薬ロット番号、レトルト温度、サイクル時間、及び試薬キャリーオーバを含む。一部の特性は、感知された特性から導出することもできる。組織を処理する試薬の濃度は、キャリーオーバの計算から導出される。キャリーオーバとは、プロセスの前のステップから、ならびに現在の処理実行中のカセット、バスケット、組織、及び生検拘束の数から繰り越される試薬の量として定義される。これは、機器入力とユーザ入力の両方から計算される。
【0017】
いくつかの実施形態では、組織プロセッサによって処理される少なくとも1つの組織サンプルは、カセットで提供され、電子サンプル識別子は、カセット識別子を含む。さらに、カセットは、バスケット内に設けられてもよく、電子サンプル識別子は、バスケット識別子をさらに含んでもよい。なおさらに、電子サンプル識別子(例えば、カセットまたはバスケット識別子)は、バーコードタグを含み得る。例えば、これらの実施形態では、少なくとも1つのサンプルのグロス化時に、少なくとも1つのサンプルをバスケット識別子に関連付けることができる。好ましくは、バーコードタグは、人間が読み取り可能なテキストを備えた2次元データマトリックス数値バーコードである。または、バスケット識別子は、無線周波数識別技術(RFID)タグである。
【0018】
当業者であれば、印刷されたテキスト、バーコード(1、2、または3次元)、データグリフ、光学文字認識(OCR)コード、識別子または識別子サポートに配置された集積回路、無線周波数識別技術(RFID)タグ、及び電子インクなどであるが、これらに限定されない、他の電子可読識別子を使用することができることを理解するであろう。電子可読識別子は、(インターネット、Wi-Fi、または他の通信ネットワーク、Bluetooth(登録商標)、RFID、携帯電話などの通信インフラストラクチャを介して)組織プロセッサまたは他の監視装置と通信可能に結合されてもよい。
【0019】
いくつかの実施形態では、システムは、組織処理を自動化するために使用されるソフトウェア及び/またはセンサデータを記録し、それを使用して組織病理学ラボユーザに情報を提供することができる。
【0020】
一例では、組織サンプルは、切り取られてカセットに配置され、次にカセットがバスケットに配置されることによりグロス化される。組織プロセッサのユーザは、それをバスケットに、次に組織プロセッサに読み込むときに、バスケットを組織サンプルの組織プロセッサのワークフローに関連付けることができる。組織プロセッサは、組織プロセッサのワークフローデータを受信し、スキャナを使用してバスケットバーコードタグの形態で電子サンプル識別子をスキャンし、組織プロセッサのワークフローに従って処理されているサンプルを識別する。上記のように、処理中の組織サンプルの特性は、組織病理学ワークフローにおいて組織サンプルをさらに処理するための1つ以上のさらなる研究室機器に出力するためのサンプル記録内の電子サンプル識別子に関連付けて記録される。
【0021】
組織処理プロトコル及び試薬は、研究室での高度な染色最適化の検証記録の一部を形成する。一例では、高度な染色プロセスはサンプル記録に基づいて変更され、肉眼的及び/または顕微鏡的外観またはいくつかの他の組織の特性(組織の品質など)などの処理出力に基づいて染色技術を再検証する。
【0022】
いくつかの実施形態では、組織プロセッサは、さらにディスプレイを含み、サンプル記録を示す情報がディスプレイ上で組織プロセッサのユーザに表示されるようにする。代替的に、システムは、サーバに関連付けられたディスプレイをさらに含み、サンプル記録を示す情報が、1つ以上の組織プロセッサによって処理されている組織サンプルを監視するユーザに表示されるようにしてもよい。これらの実施形態では、ユーザは、組織処理が必要な処理基準を満たしているかどうかを視覚的に判断することができる。
【0023】
好ましくは、サンプル記録は、ユーザによってフィルタリングされ、組織プロセッサ上でユーザによって見ることができる、照合レポートとして提供される。また、いくつかの実施形態では、サンプル記録は、組織病理学ワークフローにおける他の研究室機器による使用のために、USBを介してCSV形式で出力される。さらに、サンプル記録は、研究室情報システム(LIS)などの研究室機器の一般的なアーキテクチャを使用して出力することができる。サンプル記録をパッケージ化し、ユーザがそれをエクスポートできるようにするために、他のオプションを提供することができることを当業者は理解するであろう。サンプル記録は、生データ、表形式のデータで提供され、レポートとして照合され、フィルタリング(日付、ユーザ、イベントなどによるフィルタリング)を備えることができ、複数の形式(Excel、pdfなどで使用されるHTML、CSVファイルなど)であり得る。ユーザは、複数のチャネルを介してサンプル記録にアクセスすことができ、例えば、機器のディスプレイで表示すること、ユーザによって手動でエクスポートすること(例えば、USBもしくは他の接続タイプ経由で)、または自動的にアクセスすることができる(例えば、LISで使用するイーサネット(登録商標)経由で)。また、典型的なデータ入力、データロギング、サンプル追跡(グロス化時のバーコード付きサンプルなど)、上記のタイプの組織処理機器にはこの規定がないことも理解されよう。その結果、プロセスと制御は手動で行われ、組織処理プロセスを通じて患者のサンプルを追跡することが難しくなり、トラブルシューティング(例えば、最適でない組織処理の場合)が困難かつ非実用的になる。
【0024】
本発明の別の態様は、組織病理学ワークフローのために組織プロセッサによって処理される組織サンプルを監視する方法を提供し、方法は、組織プロセッサに関連付けられたスキャナから、組織プロセッサによって処理される少なくとも1つの組織サンプルの電子サンプル識別子を受信することと、少なくとも1つの組織サンプルを処理するために使用される組織プロセッサ内の複数の処理ステーションのうちの選択されたものによって処理される少なくとも1つの組織サンプルの組織プロセッサワークフローを示す組織プロセッサワークフローデータを受信することと、処理ステーションの選択されたものの各々において処理された少なくとも1つの組織サンプルの特性を監視することと、組織プロセッサワークフローのサンプル記録に、電子サンプル識別子に関連付けて少なくとも1つの組織サンプルの特性を記録することと、組織病理学ワークフローにおいて少なくとも1つの組織サンプルをさらに処理するために、サンプル記録を1つ以上の研究室機器に出力することと、を含む。
【0025】
ここで、本発明は、同様の特徴が同様の数字で表される添付の図面を参照してより詳細に説明される。示されている実施形態は例に過ぎず、添付の特許請求の範囲に定義されている本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことを理解されたい。実施形態は、添付の図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施形態による組織病理学ワークフローのために組織プロセッサによって処理される組織サンプルを監視するためのシステムの概略図である。
図2】本発明の実施形態による組織病理学ワークフローのために組織プロセッサによって処理される組織サンプルを監視するためのシステムの別の概略図である。
図3】本発明の実施形態による組織サンプルを処理するためのシステムの概略図である。
図4】本発明の実施形態による組織病理学ワークフローのための組織プロセッサの描写である。
図5】本発明の実施形態による組織サンプルを処理するためのシステムの研究室機器によりサンプルが処理されるフローチャートである。
図6】本発明の実施形態による組織病理学ワークフローのために組織プロセッサによって処理される組織サンプルを監視する方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施形態は、縮尺通りではなく、単に本発明の説明を支援することを意図した図面を参照することにより本明細書で説明される。
【0028】
組織病理学ワークフローのために組織プロセッサによって処理される組織サンプルを監視するためのシステム10の実施形態が図1に示されている。システム10は、組織プロセッサによって処理される少なくとも1つの組織サンプルの電子サンプル識別子13をスキャンするように配設された組織プロセッサに関連付けられたスキャナ12を含む。説明したように、システム10は、サーバによって実装されている組織プロセッサによって処理されている組織サンプルを監視するためのいくつかのモジュールを備えたクライアントサーバ配設で実装することができる。このようにして、システム10は、多くの組織プロセッサによって処理された組織サンプルを監視するために使用することができ、ネットワークを介してサーバとデータ通信する既存の組織プロセッサに適用することができる。
【0029】
サーバによって実装されるこれらのモジュールは、少なくとも1つの組織サンプルを処理するために使用される組織プロセッサの複数の処理ステーションのうちの選択されたものによって処理される少なくとも1つの組織サンプルのための組織プロセッサワークフローを示す組織プロセッサワークフローデータ15を受信するように配設された入力モジュール14を含む。すなわち、組織プロセッサは、組織プロセッサのワークフローに従って組織サンプルを処理するように配設された、以下でより詳細に議論される多くの処理ステーションを含む。
【0030】
モジュールは、組織プロセッサのワークフローに従って、処理ステーションの選択されたものの各々において処理された少なくとも1つの組織サンプルの特性を監視し、前記少なくとも1つの組織サンプルの特性を電子サンプル識別子13に関連付けて組織プロセッサワークフローのサンプル記録17に記録するように配設された監視モジュール16をさらに含む。さらに、出力モジュール18は、組織病理学ワークフローにおいて少なくとも1つの組織サンプルをさらに処理するために、1つ以上の研究室機器にサンプル記録17を出力するように配設される。
【0031】
図5は、組織病理学ワークフローの例を示す。ここでは、組織サンプルをグロス化し、組織プロセッサを使用した組織サンプルを処理し、及び組織サンプルを埋め込むステップが高度な染色ステップの直前に発生することがわかる。したがって、組織処理ステップの品質は、組織病理学的ワークフローにおける高度な染色、したがって組織サンプルの診断に影響を与えることが理解されよう。
【0032】
図2は、組織病理学ワークフローのために組織プロセッサ20によって処理されている組織サンプルを監視するための上記モジュールを組み込んだ組織プロセッサ20の代替実施形態を示す。すなわち、組織プロセッサ20は、組織プロセッサ20と共に位置するスキャナ12を含み、組織プロセッサ20によって処理される少なくとも1つの組織サンプルの電子サンプル識別子13をスキャンするように配設される。
【0033】
例えば、電子サンプル識別子は、バーコードタグである。一実施形態では、バーコードタグは、切断され、カセット内のサンプルのバッチ処理のためにバスケット内に配置されたカセット内に配置された組織サンプルを含有するバスケットに適用される。別の実施形態では、識別子は、カセットに適用される。さらに、カセットは、バスケット識別子に加えてカセット識別子を有し、組織プロセッサ20によって処理されているサンプルをさらに識別することもできる。
【0034】
組織プロセッサ20は、組織プロセッサワークフローに従って少なくとも1つの組織サンプルを処理するように配設された複数の処理ステーション22を含む。処理ステーション22の1つは、異なる試薬で組織サンプルを処理するためのレトルトである。組織プロセッサのワークフローには、これらのステーション22のどれがサンプルの処理にどの順序で使用されるかの詳細が含まれる。これらのステーション22は、以下により詳細に説明される。
【0035】
組織プロセッサ20はまた、組織プロセッサ20によって処理されている組織サンプルを監視するために上述のモジュールを実装するように構成されたCPU11(または他のマイクロプロセッサ)を含む。CPU11は、モジュールごとにメモリ24に格納されたプログラムコードを実行することによりこれらのモジュールを実施するように構成される。上記のクライアント-サーバ配設もまた、モジュールを実装するためにプログラムコードを使用し、このコードは、サーバプロセッサとデータ通信するメモリに格納することができることを当業者は理解するであろう。
【0036】
具体的には、図2に示される組織プロセッサ20のCPU11によって実装されるモジュールは、複数の処理ステーション22のうちの選択されたものによって処理されるサンプルの組織プロセッサワークフローを示す組織プロセッサワークフローデータ15を受信するように配設された入力モジュール14を含む。サンプルが組織プロセッサ20によって処理されている間、監視モジュール16は、処理ステーション22の各々で処理された組織サンプルの特性を監視するように、かつ組織プロセッサのワークフローサンプル記録17内の電子サンプル識別子13に関連してこれらの特性を記録するように配設される。さらに、組織プロセッサ20は、組織病理学ワークフローにおいて組織サンプルをさらに処理するために、サンプル記録17を1つ以上の研究室機器に出力するように配設された出力モジュール18を含む。
【0037】
病理組織学的ワークフローにおいて組織サンプルをさらに処理するための別の研究室機器の例には、自動組織染色装置が含まれる。図3は、本発明の実施形態による機器ID28を有する機器A26(例えば、自動化組織染色装置)及びネットワーク34を介して機器ID32を有する機器B30とデータ通信する組織プロセッサ20、組織サンプルを処理するためシステム36を形成する構成要素の表示を示す。サンプル記録17は、組織病理学ワークフローにおいて組織サンプルをさらに処理するために、研究室機器A26及びB30によって理解されるフォーマットでネットワーク34を介して通信される。サンプル記録17は、電子サンプル識別子に関連して、少なくとも1つの組織サンプルの組織プロセッサワークフローを示す組織プロセッサワークフローデータを含む。サンプル記録17はまた、少なくとも1つの組織サンプルの組織プロセッサワークフローに基づいて少なくとも1つの組織サンプルの予想される特性を含む。これらの特性は、自動化された組織染色装置(例:機器A26)によって使用され、そのワークフローを変更してより高い品質の染色を保証する。
【0038】
さらに、サンプル記録17は、トラブルシューティングツールとして使用され、例えば処理または試薬の問題のために、組織処理のエラーが発生する理由があるかどうかを判断する。また、監査時に表示する必要のある品質管理(QC)記録としても使用される。
【0039】
図4は、上述の組織プロセッサ20及びその処理ステーション22の実施形態を示している。組織プロセッサ20は、異なる試薬で組織サンプルを同時に処理するためのレトルト21A及び21Bとして2つの処理ステーション22を含む。レトルト21A及び21Bでは、組織サンプルは、複数のプロセスステップを通過する。レトルト21A及び21Bがこれらの異なるステップを実施しているとき、レトルト21A及び21B自体が異なる処理ステーション22を形成することは、当業者によって理解されるであろう。
【0040】
そのようなプロセスの1つに固定プロセスがあり、典型的にはホルマリンが使用される。このプロセスは、組織処理ワークフローにおいて最初に行われることが好ましい。次に、様々な純度のアルコール溶液を使用して、脱水プロセスを成し遂げる。後続の浄化プロセスでは、アルコール残留物が組織サンプルから除去され、組織サンプルは担体材料の取り込みのために調製される。このクリアリングプロセスでは、キシレンまたは同様の媒体がよく使用される。様々な組成のパラフィンまたはワックスが、担体材料として好ましく好適である。個々または複数のプロセスステップは、組織サンプルが異なる純度の前述の試薬に曝されるプロセスサブステップに細分化することができる。
【0041】
これらのプロセスステップが組織プロセッサのワークフローにおいて実行されると、レトルト21A及び21Bを洗浄するプロセスが、前述の、またはさらなる試薬を使用して、例えば、レトルト21A及び21Bの組織サンプルなしで、逆の順序で前述のプロセスステップを実行することによりを実行される。組織プロセッサ20は、固定プロセス、脱水プロセス、及び/または洗浄プロセスを含む様々なプロセスに必要な試薬を含有する容器25用の2つの引き出しを有するキャビネット23を含む。
【0042】
作業領域は、ディスプレイ27と同様に、組織プロセッサ20のデスクトップ上に提供される。CPU11及びメモリ24は、組織プロセッサ20によって提供され、組織プロセッサのワークフローに従って組織サンプルの処理プロセスを制御し、処理されている組織サンプルを監視することが理解されるであろう。ディスプレイ27は、サンプル記録17を示す情報を組織プロセッサ20のユーザに表示するようにCPU11により構成される。例えば、サンプル記録17は、ユーザがフィルタリングすることができるディスプレイ27上の照合レポートとして示されている。
【0043】
レトルト21A及び21Bは、バスケット内の組織サンプルを受け入れるための開口部を有する密閉可能なチャンバとして組織プロセッサ20内に具現化され、閉鎖位置で示されている。レトルト21Aの1つの内部では、様々な試薬(例えば、浸透プロセスに重要なパラフィン)が圧力、真空、または温度によって組織サンプルに作用し得る。レトルト21Aの内部は、バルブ配設を介して、電気的に制御可能なバルブを介して試薬容器25からのラインに接続されている。例えば、バルブの制御下で、対応する試薬容器25から液体パラフィンが送達されるように、1つのラインがバルブを介してレトルト21Aの内容物に接続されている。さらなるラインは、固定プロセス、脱水プロセス、及び/または浄化プロセスなどに必要な試薬のためのさらなる試薬容器25に接続する。さらに、バルブの制御下で液体パラフィンを分配する分配器に別のラインが接続されている。パラフィンは、パラフィンの供給ステーションまたは試薬容器25の1つに含有され得る。さらなる実施形態では、分配器は、純度が増加する流動パラフィンを含有する容器25に接続するラインに接続される。
【0044】
実施形態では、パラフィンが常に液体状態、例えば65℃に保たれ、操作中に固化しないことを保証するために、分配器のようにラインも加熱され、使用される試薬に応じてバルブ配設も同様に加熱される。同じことが、レトルト21A及び21B及びその部品、ならびに供給ステーションと一部の容器にも当てはまる。
【0045】
センサ29は、処理されている組織サンプルの特性を感知するために組織プロセッサ20に配設されている(例えば、図2を参照)。これらのセンサ29は、組織プロセッサ20内のレトルト21A及び21Bなどの複数の処理ステーション22の各々に関連付けられ、それが処理されるときに組織サンプルの特性を感知するように配設される。
【0046】
例えば、センサ29のいくつかは、試薬容器25とレトルト21A及び21Bとの間、ならびに分配器とそのバルブとの間に位置している。パラフィンの特徴的な特性、特に、現在ラインを流れているパラフィンを表す測定値を取得するための別のセンサが提供されている。したがって、パラフィンがレトルト21A及び21Bにポンプ圧送され、容器25に戻されるため、組織サンプルの処理の前後に現在使用されているパラフィンの異なる純度を確認することが可能である。この例では、サンプル記録には、パラフィンを使用して処理するステップと、この処理ステップで使用されたパラフィンの純度の詳細を示す組織プロセッサワークフローデータが含まれている。サンプル記録17のこの情報は、在庫管理及び試薬使用の最適化のために、監査、トラブルシューティング、機器の使用及びメンテナンスの確認、試薬の使用の確認、ならびに試薬の再注文に使用することができる。
【0047】
センサ29の例には、パラフィンの濁度または着色を感知するように構成された光センサが含まれ、パラフィンは、その純度を確認するために着色剤で処理することができる。また、このタイプのセンサを使用すると、パラフィンの密度または導電率を確認することができ、したがってその関数として、純度を確認することができる。
【0048】
固定プロセスの次のステップは、例えば、これらの試薬容器25に圧力を加えることにより、コネクタを介して他の試薬容器25からレトルト21A及び21Bへの連続的なプロセス媒体をポンプ圧送することを伴う。これらの試薬容器25は、異なる純度の対応するプロセス媒体を含有する。したがって、組織プロセッサ20の他のセンサ29は、レトルト21A及び21Bに現在流れているプロセス媒体の密度を感知するための密度センサ及び圧力センサを含む。プロセス媒体の純度は、その密度の関数として決定できる。したがって、密度センサと圧力センサは、プロセス媒体の純度を表す測定値を取得するために使用される。密度センサは、この処理ステップで使用されるアルコールまたはキシレンの純度を確認するのに特に好適である。
【0049】
また、試薬容器25にストックされるプロセス媒体は、例えば、固定試薬、特にアルカリ固定試薬、例えばホルマリン、脱水試薬、特にアルコール、特にエタノール、中間体、例えばイソプロパノールまたは芳香族化合物、特にキシレン、及び/または洗浄試薬、特に蒸留水を包含する。さらに、固定試薬、脱水試薬、及び/または中間体も洗浄に使用でき、この文脈では、洗浄試薬とも呼ばれる。使用されるすべてのプロセス媒体の特徴的特性を感知するために、1つ以上の他のセンサ29も提供することができる。これらの特性は、光センサ、導電率センサ、pHセンサなどのセンサを使用して測定できるが、これらに限定されない。
【0050】
ここで、図6を参照すると、組織病理学ワークフローのために組織プロセッサによって処理される組織サンプルを監視する方法40の要が示され、方法は、組織プロセッサに関連付けられたスキャナから、組織プロセッサによって処理される少なくとも1つの組織サンプルの電子サンプル識別子を受信する42ことと、少なくとも1つの組織サンプルを処理するために使用される組織プロセッサ内の複数の処理ステーションのうちの選択されたものによって処理される少なくとも1つの組織サンプルの組織プロセッサワークフローを示す組織プロセッサワークフローデータを受信する44ことと、処理ステーションの選択されたものの各々において処理された少なくとも1つの組織サンプルの特性を監視する46ことと、組織プロセッサワークフローのサンプル記録に、電子サンプル識別子に関連付けて少なくとも1つの組織サンプルの特性を記録する48ことと、組織病理学ワークフローにおいて少なくとも1つの組織サンプルをさらに処理するために、サンプル記録を1つ以上の研究室機器に出力する50ことと、を含む。
【0051】
方法のさらなる態様は、システム10及び組織プロセッサ20の上記の説明から明らかであろう。当業者はまた、この方法がプログラムコードで具体化され得ることを理解するであろう。プログラムコードは、例えば組織プロセッサ20のメモリ上、または有形のコンピュータ可読媒体上で、または組織プロセッサ20用のデータ信号またはファイルとして通信されるなど、いくつかの方法で供給され得る。
【0052】
また、本発明の範囲から逸脱することなく、前述の部分に対して様々な変更、追加、及び/または修正を行うことができ、上記の教示に照らして、当業者に理解されるように、様々な方法でソフトウェア、ファームウェア及び/またはハードウェアで本発明を実装され得ることも理解されたい。
【0053】
また、以下の特許請求の範囲は、例としてのみ提供されるものであり、将来の出願で請求される可能性のある範囲を限定することを意図するものではないことも理解されたい。本発明または複数の発明をさらに定義または再定義するために、後日請求項に特徴を追加または省略してもよい。
【0054】
本明細書に含まれる文献、行為、材料、装置、物品等のいずれの考察も、単に本発明に前後関係を提供するためである。本出願のそれぞれの特許請求の主張の優先日前に存在したため、これらの事柄のいずれかもしくはすべてが先行技術の基礎の一部を形成するか、または本発明の関連分野で共通の一般的知識であった示唆または表現するものではない。
【0055】
「備える(comprise)」、「備える(comprises)」、「備えた(comprised)」または「備える(comprising)」という用語のいずれかまたはすべてが本明細書で使用される場合(特許請求の範囲を含む)、それらは、述べられた特徴、整数、ステップまたは構成要素の存在を指定するが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、または構成要素の存在を排除しないと解釈される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6