(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】プロバイオティクスの性質を有する弱毒生コレラワクチン
(51)【国際特許分類】
C12N 1/21 20060101AFI20230221BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20230221BHJP
C12N 15/31 20060101ALN20230221BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20230221BHJP
【FI】
C12N1/21 ZNA
C12N15/09 110
C12N15/31
C12N15/113 Z
(21)【出願番号】P 2020501328
(86)(22)【出願日】2018-07-12
(86)【国際出願番号】 US2018041846
(87)【国際公開番号】W WO2019014462
(87)【国際公開日】2019-01-17
【審査請求日】2021-06-11
(32)【優先日】2017-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【微生物の受託番号】ATCC PTA-125138
(73)【特許権者】
【識別番号】503146324
【氏名又は名称】ザ ブリガム アンド ウィメンズ ホスピタル インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】The Brigham and Women’s Hospital, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100186897
【氏名又は名称】平川 さやか
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ワルダー,マシュー,ケー.
(72)【発明者】
【氏名】ハバード,トロイ
(72)【発明者】
【氏名】ビリングス,ガブリエル
【審査官】平林 由利子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0064138(US,A1)
【文献】国際公開第01/068829(WO,A2)
【文献】国際公開第2016/177682(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/113322(WO,A1)
【文献】Infection and Immunity, 2000, Vol.68, No.3, pp.1171-5
【文献】Current Opinion in Microbiology, 2003, Vol.6, pp.35-42
【文献】Trends in parasitology, 2017, Vol.33, No.33, pp.202-13
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00- 7/08
C12N 15/00-15/90
A61K 35/00-35/768
CAPLUS/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺伝子組換え
型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌であ
って、
(a)コレラ毒素サブユニットAをコードする核酸配列における欠失
であって、前記細菌が前記コレラ毒素サブユニットAを発現できなくなるようにする前記欠失;
(b)Cas9ヌクレアーゼ分子をコードする異種性核酸配列
であって、前記Cas9ヌクレアーゼ分子が前記細菌のゲノムに組み込まれる、異種性核酸配列;
(c)ガイドRNA(gRNA)をコードする異種性核酸配列であって、前記gRNAがctxAの標的核酸配列と相補的であるターゲティングドメインを含む、異種性核酸配列
;
(d)多機能性自己プロセシング毒素内リピート(MARTX)毒素をコードする核酸配列における欠失であって、前記細菌が前記MARTX毒素を発現できなくなるようにする前記欠失;
(e)フラゲリンをコードする核酸における欠失であって、前記細菌が前記フラゲリンを発現できなくなるようにする前記欠失;および
(f)RecAタンパク質をコードする核酸配列における欠失であって、前記細菌が前記RecAタンパク質を発現できなくなるようにする前記欠失
を含み、El Torバイオタイプに属する親株に由来する、前記細菌。
【請求項2】
前記コレラ毒素サブユニットAをコードする核酸配列における欠失が、前記細菌のゲノムへ組み込まれたctxA遺伝子内に位置する
、請求項
1に記載の遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌。
【請求項3】
前記細菌のゲノムへ組み込まれたCTXΦゲノムのコア領域の核酸配列における欠失を含む、請求項1に記載の遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌。
【請求項4】
前記細菌のゲノムへ組み込まれたCTXΦゲノムのRS2領域の核酸配列における欠失を含む、請求項1に記載の遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌。
【請求項5】
前記細菌のゲノムへ組み込まれたCTXΦゲノムの完全な欠失を含む、
請求項1に記載の遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌。
【請求項6】
前記gRNAが、核酸配列5’-cctgatgaaataaagcagtcgttttagagctagaaatagcaagttaaaataaggctagtccgttatcaacttgaaaaagtggcaccgagtcggtgc-3’(配列番号3)を含む、請求項
1に記載の遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌。
【請求項7】
前記MARTX毒素をコードする核酸配列が、rtxA、rtxB、rtxC、rtxD、およびrtxEからなる群から選択される
;および/またはDNA結合タンパク質HU-ベータをコードする核酸配列における欠失をさらに含み、好ましくは前記DNA結合タンパク質HU-ベータをコードする核酸配列が、hupB遺伝子である
;および/また
は前記フラゲリンをコードする核酸配列がflaA、flaB、flaC、flaD、およびFlaEからなる群から選択される、請求項
1に記載の遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌。
【請求項8】
前記細菌が異種性核酸を含み、前記異種性核酸が、プロモーターに作動可能に連結しているコレラ毒素サブユニットBをコードする遺伝子を含み、好ましくは前記コレラ毒素サブユニットBをコードする遺伝子がctxB遺伝子である、および/または前記プロモーターが誘導性プロモーターである、および/または前記プロモーターがP
htpgプロモーターである、請求項
1に記載の遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌。
【請求項9】
以下の1つまたは複数の欠失:
トリメトプリムに対する抵抗性を与える産物をコード
するdfrA遺伝子であって、前記欠失が、他の細菌へのdfrA遺伝子の分散を防止する、dfrA遺伝子;
スルファメトキサゾールに対する抵抗性を与える産物をコードする
sul2遺伝子であって、前記欠失が、他の細菌へのsul2遺伝子の分散を防止する、sul2遺伝子;
ストレプトマイシンに対する抵抗性を与える産物をコードする
strAB遺伝子であって、前記欠失が、他の細菌へのstrAB遺伝子の分散を防止する、strAB遺伝子;および
クロラムフェニコールに対する抵抗性を与える産物をコードする
floR遺伝子であって、前記欠失が、他の細菌へのfloR遺伝子の分散を防止する、floR遺伝子;
を含む、請求項
1に記載の遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌。
【請求項10】
Haiti親株
、および/またはInaba血清型、Ogawa血清型、またはHikojima血清型に由来する、請求項
1に記載の遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌。
【請求項11】
コレラ毒素サブユニットAをコードする核酸配列における欠失が、前記細菌のゲノムへ組み込まれたCTXΦゲノムのコア領域の核酸配列内に存在し、かつ前記欠失が、CTXΦの染色体組込みを防止することにより毒素産生性復帰変異から保護する、請求項1に記載の遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌。
【請求項12】
請求項1~
11のいずれか一項に記載の遺伝子組換え型細菌および薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的組成物。
【請求項13】
対象においてコレラ菌(Vibrio cholerae)の毒性株に対する防御応答を誘導する方法における使用のための、請求項
1~11のいずれか
一項に記載の遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌
を含む組成物。
【請求項14】
コレラ菌(Vibrio cholerae)の毒性株を有する対象を処置する方法における使用のための、請求項
1~11のいずれか
一項に記載の遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌
を含む組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府資金援助による研究または開発
この発明は、米国国立衛生研究所により授与された認可番号AI042347およびAI-120665による政府支援でなされた。政府は本発明に一定の権利を有する。
【0002】
関連出願の相互参照
この出願は、2017年7月12日に出願された米国特許出願第62/531,551号明細書、および2018年6月4日に出願された米国特許出願第62/680,286号明細書の優先権の利益を主張する。前述の出願のそれぞれの内容は、全体として参照により本明細書に組み入れられている。
【0003】
遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌、前記細菌を含む薬学的組成物、ならびに前記細菌および/または前記細菌を含む薬学的組成物を用いて、迅速なプロバイオティクスによる保護と適応免疫応答の誘発の組合せを通して、コレラ菌(Vibrio cholerae)の毒性株により引き起こされる疾患から保護する方法が本明細書に記載されている。
【0004】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子出願され、全体として参照により本明細書に組み入れられる配列表を含有する。2018年7月10日に作成された前記ASCIIコピーは、29618-0175WO1_SL.txtという名前であり、サイズが5.03メガバイトである。
【背景技術】
【0005】
コレラは、グラム陰性細菌コレラ菌(Vibrio cholerae)の感染により引き起こされる下痢性疾患である。その疾患は、急速な致死性であり得、大発生が、爆発的に広がる場合が多い。その疾患と戦う取り組みとして、経口的水分補給および抗生物質治療が挙げられる。しかしながら、その疾患は、発展途上国および不安定な国においては、公衆衛生上の大きな危険である(例えば、Bohles et al. (2014) Hum. Vaccin. Immunother. 10(6): 1522-35)。死滅したコレラ菌(Vibrio cholerae)細菌株を含むワクチンを配備するワクチン接種キャンペーンは現在、進行中である。しかしながら、進行中の流行の拡散を抑えるため(いわゆる「受け身的ワクチン接種(reactive vaccination)」)のこれらのワクチンの有用性は、ワクチン接種された対象がコレラに対して抵抗性になるのに必要とされる時間に依存する。現在のワクチンにより誘発される防御免疫応答は、典型的には、顕在化するのに数日または数週間かかり、複数回のワクチン投与を必要とする場合が多い。したがって、単回投与後にコレラ菌(Vibrio cholerae)からの迅速な保護を誘導することができるワクチンの必要性がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Bohles et al. (2014) Hum. Vaccin. Immunother. 10(6): 1522-35
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
コレラから迅速に保護するためのプロバイオティクス剤として、および既存のコレラワクチンについて見られるコレラに対する長寿命の防御免疫を誘発し得る伝統的なワクチンとしての両方で、前例のない様式で作用する弱毒コレラ菌(V. cholerae)細菌株が本明細書に記載されている。HaitiVのような本明細書に記載された弱毒コレラ菌(V. cholerae)細菌株は、最近の臨床分離株に由来し、複数の遺伝子改変を含み、ヒトにおいてコレラに対する長寿命免疫を生じるそれらの潜在能力を示唆/予測する、ロバストな、複数日の腸の占有を示す。驚くべきことに、弱毒細菌株の単回投与は、コレラの乳児ウサギモデルにおいてHaitiV投与から24時間以内に致死的曝露からの保護を与える能力がある。感染の新生仔モデルにおけるそのような迅速な保護の観察は、伝統的なワクチンにより誘発される防御免疫とは一致しない。それどころか、複数の曝露株に対するコロニー形成抵抗性および疾患保護を迅速に媒介する、生きているHaitiVの能力は、HaitiVが、既存のワクチンと違って、コレラからのプロバイオティクスによる保護を与えることを示す。さらに、数学的モデル化は、HaitiV媒介性保護の前例のない速度が、受け身的ワクチン接種の公衆衛生上の影響を劇的に向上させ得ることを示している。したがって、本明細書に記載された細菌株の投与は、コレラ感染のリスクを、特に、進行中の流行の間、迅速と長寿命の両方の保護を生じることにより、低下させるために用いることができる。
【0008】
さらに、弱毒コレラ菌(V. cholerae)細菌株は、毒性遺伝子を再獲得することにより毒性株へ復帰するように誘導され得、HaitiVの毒素産生性への復帰変異の可能性を防止および/または軽減する方法もまた提供される。特に懸念されるのは、病原体の主要な下痢原性因子である、コレラ毒素をコードする遺伝子であり、それらは、生コレラワクチンから欠失している。コレラ毒素をコードするバクテリオファージ(CTXΦ)による再感染または自然形質転換を含む遺伝子水平移動の任意の手段は、ワクチン復帰変異を誘導するのに十分であり得る。本出願人らは、コレラ毒素の活性サブユニットをコードするctxA遺伝子を特異的にターゲットする能力があるRNAガイド型エンドヌクレアーゼシステムを含むように改変された弱毒コレラ菌(V. cholerae)細菌株を開発した。このストラテジーは、コレラ菌(V. cholerae)細菌が、CTXΦプロファージの感染を含む任意の手段によりctxAを再獲得することを防止するためのバイオセーフティ機構を提供する。さらに、このストラテジーは、プラスミドにコードされたまたは染色体に組み込まれた構築物から抗毒性因子CRISPRシステムを産生するように菌株を設計することにより、他の弱毒ワクチン株(例えば、VaxchoraおよびPeru-15)へ一般化することができる。
【0009】
一態様において、本開示は、コレラ毒素サブユニットAをコードする核酸配列における欠失;Cas9ヌクレアーゼ分子をコードする異種性核酸配列;およびガイドRNA(gRNA)をコードする異種性核酸配列であって、前記gRNAがctxAの標的核酸配列と相補的であるターゲティングドメインを含む、異種性核酸配列を有する遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌を提供する。
【0010】
いくつかの実施形態において、本明細書に提供された遺伝子組換え型コレラ菌(V. cholerae)細菌は、その細菌のゲノムへ組み込まれたctxA遺伝子内に位置するコレラ毒素サブユニットAをコードする核酸配列における欠失を有する。
【0011】
いくつかの実施形態において、本明細書に提供された遺伝子組換え型コレラ菌(V. cholerae)細菌は、その細菌のゲノムへ組み込まれたCTXΦゲノムのコア領域の核酸配列における欠失を有する。
【0012】
いくつかの実施形態において、本明細書に提供された遺伝子組換え型コレラ菌(V. cholerae)細菌は、その細菌のゲノムへ組み込まれたCTXΦゲノムのRS2領域の核酸配列における欠失を有する。
【0013】
いくつかの実施形態において、本明細書に提供された遺伝子組換え型コレラ菌(V. cholerae)細菌は、その細菌のゲノムへ組み込まれたCTXΦゲノムの完全な欠失を有する。
【0014】
別の態様において、本開示は、Cas9ヌクレアーゼ分子をコードする異種性核酸配列、およびガイドRNA(gRNA)をコードする異種性核酸配列であって、前記gRNAがCTXΦの標的核酸配列と相補的であるターゲティングドメインを含む、異種性核酸配列を有する遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌を提供する。
【0015】
いくつかの実施形態において、CTXΦゲノムの標的核酸配列は、rstR、rstA、rstB、psh、cep、orfU、ace、zot、ctxA、およびctxBからなる群から選択される遺伝子内に位置する。いくつかの実施形態において、CTXΦゲノムの標的核酸配列は、ctxA遺伝子内に位置する。いくつかの実施形態において、gRNAは、核酸配列5’-cctgatgaaataaagcagtcgttttagagctagaaatagcaagttaaaataaggctagtccgttatcaacttgaaaaagtggcaccgagtcggtgc-3’(配列番号3)を含み、またはそれからなる。
【0016】
いくつかの実施形態において、本明細書に提供された遺伝子組換え型コレラ菌(V. cholerae)細菌は、細菌ゲノムへ組み込まれたCTXΦゲノムのコピーを事前に有していない。
【0017】
いくつかの実施形態において、本明細書に提供された遺伝子組換え型コレラ菌(V. cholerae)細菌は、多機能性自己プロセシング毒素内リピート(MARTX)毒素をコードする核酸配列における欠失を有する。いくつかの実施形態において、MARTX毒素をコードする核酸配列は、rtxA、rtxB、rtxC、rtxD、およびrtxEからなる群から選択される。
【0018】
いくつかの実施形態において、本明細書に提供された遺伝子組換え型コレラ菌(V. cholerae)細菌は、DNA結合タンパク質HU-ベータをコードする核酸配列における欠失を有する。いくつかの実施形態において、DNA結合タンパク質HU-ベータをコードする核酸配列は、hupB遺伝子である。
【0019】
いくつかの実施形態において、本明細書に提供された遺伝子組換え型コレラ菌(V. cholerae)細菌は、フラゲリンをコードする核酸配列における欠失を有する。いくつかの実施形態において、フラゲリンをコードする核酸配列は、flaA、flaB、flaC、flaD、およびFlaEからなる群から選択される。
【0020】
いくつかの実施形態において、本明細書に提供された遺伝子組換え型コレラ菌(V. cholerae)細菌は異種性核酸を含み、前記異種性核酸は、プロモーターに作動可能に連結しているコレラ毒素サブユニットBをコードする遺伝子を含む。いくつかの実施形態において、コレラ毒素サブユニットBをコードする遺伝子は、ctxB遺伝子である。いくつかの実施形態において、プロモーターは誘導性プロモーターである。いくつかの実施形態において、プロモーターは、Phtpgプロモーターである。いくつかの実施形態において、プロモーターは構成的プロモーターである。
【0021】
いくつかの実施形態において、本明細書に提供された遺伝子組換え型コレラ菌(V. cholerae)細菌は、RecAタンパク質をコードする核酸配列における欠失を有する。いくつかの実施形態において、RecAタンパク質をコードする核酸配列はrecA遺伝子である。
【0022】
別の態様において、本開示は、rtxA、rtxB、rtxC、rtxD、rtxE、およびrtxHからなる群から選択されるMARTX毒素をコードする1つまたは複数の核酸配列における欠失;flaA、flaB、flaC、flaD、およびFlaEからなる群から選択される1つまたは複数のフラゲリン遺伝子における欠失;recA遺伝子における欠失;ならびに前記異種性核酸がプロモーター(例えば、構成的プロモーターまたは誘導性プロモーター)に作動可能に連結したctxB遺伝子を含む、異種性核酸を有する、遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌を提供する。いくつかの実施形態において、前記細菌は、その細菌のゲノムへ組み込まれたCTXΦゲノムの完全な欠失を含む。いくつかの実施形態において、前記細菌は、その細菌ゲノムへ組み込まれたCTXΦプロファージゲノムのコピーを事前に有していない。
【0023】
いくつかの実施形態において、本明細書に提供された遺伝子組換え型コレラ菌(V. cholerae)細菌は、Cas9ヌクレアーゼ分子をコードする異種性核酸配列;およびガイドRNA(gRNA)をコードする異種性核酸配列であって、前記gRNAが、ctxAの標的核酸配列と相補的であるターゲティングドメインを含む、異種性核酸配列を含む。いくつかの実施形態において、CTXΦの標的核酸配列は、ctxA遺伝子内に位置する。いくつかの実施形態において、gRNAは、核酸配列5’-cctgatgaaataaagcagtcgttttagagctagaaatagcaagttaaaataaggct agtccgttatcaacttgaaaaagtggcaccgagtcggtgc-3’(配列番号3)を含み、またはそれからなる。
【0024】
いくつかの実施形態において、本明細書に提供された遺伝子組換え型コレラ菌(V. cholerae)細菌は、トリメトプリムに対する抵抗性を与える産物をコードする核酸配列、スルファメトキサゾールに対する抵抗性を与える産物をコードする核酸配列、ストレプトマイシンに対する抵抗性を与える産物をコードする核酸配列、およびクロラムフェニコールに対する抵抗性を与える産物をコードする核酸配列のうちの1つまたは複数における欠失を有する。いくつかの実施形態において、トリメトプリムに対する抵抗性を与える産物をコードする遺伝子は、dfrAである。いくつかの実施形態において、スルファメトキサゾールに対する抵抗性を与える産物をコードする遺伝子は、sul2である。いくつかの実施形態において、ストレプトマイシンに対する抵抗性を与える産物をコードする遺伝子は、strABである。いくつかの実施形態において、クロラムフェニコールに対する抵抗性を与える産物をコードする遺伝子は、floRである。
【0025】
いくつかの実施形態において、本明細書に提供された遺伝子組換え型コレラ菌(V. cholerae)細菌は、El Torバイオタイプに属する親株に由来する。
【0026】
いくつかの実施形態において、本明細書に提供された遺伝子組換え型コレラ菌(V. cholerae)細菌は、Haiti親株に由来する。
【0027】
いくつかの実施形態において、本明細書に提供された遺伝子組換え型コレラ菌(V. cholerae)細菌は、配列番号7の核酸配列を含み、またはそれからなる第1の細菌染色体を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に提供された遺伝子組換え型コレラ菌(V. cholerae)細菌は、配列番号51の核酸配列を含み、またはそれからなる第2の細菌染色体を含む。
【0028】
一態様において、本開示は、遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌であって、前記細菌が、それの親株(例えば、毒性親株)と比べて、ATCC寄託番号PTA-125138を有する株と同じ遺伝子における変異を有する、遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌を提供する。
【0029】
別の態様において、本開示は、ATCC寄託番号PTA-125138を有するコレラ菌(V. cholerae)株である、遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌を提供する。
【0030】
本開示はまた、本明細書に提供された遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌および薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的組成物を提供する。
【0031】
本開示はさらに、対象においてコレラ菌(Vibrio cholerae)の毒性株に対する防御応答を誘導する方法であって、本明細書に提供された遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌、または前記細菌を含む薬学的組成物を前記対象に投与して、それにより、前記対象(例えば、ヒト対象)においてコレラ菌(Vibrio cholerae)の毒性株に対する防御応答を誘導することを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態において、防御応答は、遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌または薬学的組成物を対象へ投与してから24時間以内に誘導される。
【0032】
本開示はまた、対象においてコレラ菌(Vibrio cholerae)の毒性株に対する防御応答を誘導する方法における使用のための、本明細書に提供された遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌を提供する。
【0033】
コレラ菌(Vibrio cholerae)の毒性株を有する対象を処置する方法における使用のための、本明細書に提供された遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌もまた提供される。
【0034】
別の態様において、本開示はまた、少なくとも1つの毒性遺伝子の欠失;Cas9ヌクレアーゼ分子をコードする異種性核酸;およびガイドRNA(gRNA)をコードする1つまたは複数の異種性核酸であって、前記gRNAが前記欠失した毒性遺伝子の標的核酸配列と相補的であるターゲティングドメインを含む、異種性核酸を有する遺伝子組換え型細菌であって、前記Cas9ヌクレアーゼ分子が前記gRNAと結合して、それにより複合体を形成する能力があり、前記複合体が、前記欠失した毒性遺伝子の核酸配列をターゲットして、切断する能力がある、遺伝子組換え型細菌を提供する。いくつかの実施形態において、前記細菌は、コレラ菌(Vibrio cholerae)、サルモネラ・エンテリカ(Salmonella enterica)、シゲラ・フレクスネリ(Shigella flexneri)、シゲラ・ソンネイ(Shigella sonnei)、志賀赤痢菌(Shigella dysenteriae)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、およびクロストリディオイデス・ディフィシル(Clostridioides difficile)からなる群から選択される種である。いくつかの実施形態において、毒性遺伝子は、ctxA、aroA、aroQ、aroC、aroD、htrA、ssaV、cya、crp、phoP、phoQ、guaB、guaA、clpX、clpP、set、sen、virG/icsA、luc、aroA、msbB2、stxA、stxB、ampG、dnt、tcdA、およびtcdBからなる群から選択される。
【0035】
本開示はまた、本明細書に提供された遺伝子組換え型細菌および薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的組成物を提供する。
【0036】
本明細書に提供された遺伝子組換え型細菌または前記遺伝子組換え型細菌を含む薬学的組成物を対象に投与し、それにより前記対象(例えば、ヒト対象)において細菌の毒性株に対する防御応答を誘導することを含む、対象において本明細書に記載された細菌の毒性株(例えば、コレラ菌(Vibrio cholerae)、サルモネラ・エンテリカ(Salmonella enterica)、シゲラ・フレクスネリ(Shigella flexneri)、シゲラ・ソンネイ(Shigella sonnei)、志賀赤痢菌(Shigella dysenteriae)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、およびクロストリディオイデス・ディフィシル(Clostridioides difficile))に対する防御応答を誘導する方法もまた提供される。
【0037】
他に規定がない限り、本明細書で用いられる全ての技術的および科学的用語は、この発明が属する技術分野における当業者により一般的に理解されているのと同じ意味をもつ。方法および材料は、本発明における使用のために本明細書に記載される;当技術分野において知られた他の適切な方法および材料もまた、用いることができる。その材料、方法、および例は、例証となるのみであり、限定することを意図するものではない。本明細書に言及された全ての刊行物、特許出願、特許、配列、データベースエントリー、および他の参考文献は、全体として参照により組み入れられている。矛盾する場合、定義を含む本明細書が支配する。
【0038】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および図から、ならびに特許請求の範囲から、明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】CTXΦプロファージ、およびサテライトプロファージ、TLCとRS1を含む隣接配列、ならびにMARTX毒素遺伝子の欠失を描く図である(影の部分が欠失した領域である)。
【
図2】トリメトプリム(dfrA)、スルファメトキサゾール(sul2)、ストレプトマイシン(strAB)、およびクロラムフェニコール(floR)に対する抵抗性を与える遺伝子における欠失を描く図である。
【
図3】
図3A、3B、および3Cは、CTXΦ感染に対する免疫を提供する抗ctxA CRISPRシステムを描く図である。
図3Aは、HaitiV lacZ遺伝子座へ組み込まれた、ctxAをターゲットするガイドRNAをコードする配列と共に化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)Cas9を描く。
図3Bは、抗ctxA Cas9-sgRNA複合体によるCTXΦゲノムのターゲティングを示す概略図である。
図3Cは、CTXΦ-IGKn(標的+;遺伝子間Kan
Rカセット、無傷ctxA)またはCTX-KnΦ(標的-;ctxAがKan
Rカセットに置き換えられている)のいずれかに感染したCRISPRシステム有り/無し(CRISPR+/-)のHaitiVにおける形質導入効率を示す棒グラフであり、形質導入体の数がモニターされた。検出可能なKan
R形質導入体がない場合は「
*」として示されている。
【
図4-1】
図4A、4B、4C、4D、および4Eは、HaitiVが、コレラ様疾患を引き起こすことなく乳児ウサギ腸にコロニー形成することを示す図である。
図4Aは、同腹仔が、野生型(「WT」;n=11)かまたはHaitiV(「ワクチン」;n=10)のいずれかを接種された後の液体貯留比を描く棒グラフである。プロットは、2匹の同腹仔から導かれた平均および標準偏差を示す。
****P<0.001、独立t検定。
図4Bは、およそ10
9CFU HaitiVを接種された動物(n=10)の連続的な毎日の体重を示す折れ線グラフである。
図4Cは、接種後1日目または4日目におけるウサギ遠位小腸(dSI)から回収されたWT CFU(丸)またはHaitiV CFU(四角形)を示すドットプロットである(2匹の同腹仔/群)。線は幾何平均を示す。中空の点は、CFUが回収されなかった検出の限界を示す。NS:P>0.05、クラスカル-ウォリス検定、続いて、Dunnの多重比較検定。
【
図4-2】
図4Dは、WTとHaitiVの1:1混合物の接種から1日後のdSI細菌の競争力指数(CI)を描く。中空の点は、ワクチンCFUが回収されなかった検出の限界を示す;線およびバーは、2匹の同腹仔に渡るCIの幾何平均および幾何標準偏差を示す(n=6)。
図4Eは、同時接種された動物から回収されたWT CFU(丸)およびHaitiV CFU(四角形)を示すドットプロットである;線は幾何平均を示す。
【
図5-1】
図5A、5B、5C、5D、5E、5F、および5Gは、HaitiVが、様々なサイズの感染ボトルネックに関連したコロニー形成抵抗性を媒介することを示す図である。
図5Aは、WTの接種から18時間後に動物のdSIから回収されたWT CFU(丸)を示す。同腹仔は、WT曝露の24時間前に炭酸水素ナトリウムバッファー(モック、n=8)またはホルマリン死滅型HaitiV(死滅型ワクチン、n=7)で前処置された;3匹の同腹仔に渡る各群の幾何平均が示されている。NS:P>0.05、マン-ホイットニー検定。
図5Bは、WTでの曝露から18時間後に動物のdSIから回収されたWT CFU(丸)またはHaitiV CFU(四角形)を示す。動物は、曝露の24時間前に死滅型ワクチン(n=6)または生ワクチン(n=8)で前処置された。中空の点は、CFUが回収されなかった検出の限界を示し、線は、2匹の同腹仔に渡る各群の幾何平均を示す。
***P<0.001、マン-ホイットニー検定。
【
図5-2】
図5Cは、N16961株のWTでの曝露から18時間後に動物のdSIから回収されたWT CFU(丸)またはHaitiV CFU(四角形)を示す。動物は、曝露の24時間前に死滅型ワクチン(n=6)または生ワクチン(n=8)で前処置された。中空の点は、CFUが回収されなかった検出の限界を示し、線は、2匹の同腹仔に渡る各群の幾何平均を示す。
*P<0.05、マン-ホイットニー検定。
図5Dは、前処置なしにトランスポゾン変異体ライブラリーの接種から1日後に個々の動物(ウサギr1~r6)のdSIから回収された、WT CFU(丸)および固有のトランスポゾン変異体(三角形)を描く。
【
図5-3】
図5Fは、トランスポゾン変異体ライブラリーの接種から1日後に個々の動物(ウサギr1~r7)のdSIから回収された、WT CFU(丸)、HaitiV CFU(四角形)、および固有のトランスポゾン変異体(三角形)を描く。動物は、トランスポゾン変異体ライブラリーでの曝露の24時間前にHaitiVで前処置された。
図5Eは、最大数の固有の遺伝子型での単一接種試料(ウサギr4)についてのCon-ARTIST(Pritchard et al. (2014) PLoS Genet. 10: e1004782参照)分析の結果を描く。x軸は、インビボでの遺伝子あたりの挿入変異体の相対的存在量の変化を示し、y軸は、各遺伝子内の独立した挿入変異体の一致を示す。複数の変異体に渡る2倍より大きい倍数変化(Log
2(平均倍数変化)<-1または>1)を示す遺伝子(平均逆P値>10
2)は、枯渇した/濃縮されたと考えられる。濃縮された変異体cqsSおよびhapRが示されている。毒素共調整線毛生合成(丸)、ならびに関連した転写制御因子toxRおよびtoxS(アスタリスク)を含む重要なコロニー形成因子における変異が枯渇した。
【
図5-4】
図5Gは、最大数の固有の遺伝子型での逐次的接種試料(ウサギr6)についてのCon-ARTIST(Pritchard et al. (2014) PLoS Genet. 10: e1004782参照)分析の結果を描く。x軸は、インビボでの遺伝子あたりの挿入変異体の相対的存在量の変化を示し、y軸は、各遺伝子内の独立した挿入変異体の一致を示す。複数の変異体に渡る2倍より大きい倍数変化(Log
2(平均倍数変化)<-1または>1)を示す遺伝子(平均逆P値>10
2)は、枯渇した/濃縮されたと考えられる。濃縮された変異体cqsSおよびhapRが示されている。毒素共調整線毛生合成(丸)、ならびに関連した転写制御因子toxRおよびtoxS(アスタリスク)を含む重要なコロニー形成因子における変異が枯渇した。
【
図6-1】
図6A、6B、6C、および6Dは、HaitiVコロニー形成が、HaitiWT曝露後の疾患から保護し、モデル化がコレラ大発生中の迅速な保護の恩恵を実証することを示す図である。
図6Aは、死滅型ワクチン(黒色)または生ワクチン(赤色)での前処置(t=-24時間目における)後、0時間目にWTを接種された動物における瀕死の疾患状態への進行を追跡する生存曲線を描く。
***P<0.001、Logランク検定。
図6Bは、目に見える下痢を発症した(
図6Aからの)動物における下痢の発生から瀕死状態への疾患進行を描く。
***P<0.001、Logランク検定。
【
図6-2】
図6Cは、瀕死の疾患状態へ進行しなかった(
図6Aからの)動物のdSIから回収されたWT CFU(丸)を描く。
図6Dは、点線で示された、症候性個体の数が1000個(全集団の1%)に達した時点で、受け身的ワクチン接種キャンペーン(RVC)が発動される場合、100,000個の感受性個体の集団における単一感染から始まるシミュレーションされた大発生(R
0=2.1)におけるコレラ感染者の数への受け身的ワクチン接種の効果を描く。投薬のロールアウトは、最近の受け身的ワクチン接種キャンペーンにより達成されているように、集団の70%がワクチン接種されるまで、7日間を通して一定の割合を以て、モデル化される。モデル化パラメータは
図10Bに記載されている。
【
図7】HaitiVがコレラ毒素のBサブユニットのみを産生することを示すウェスタンブロットの図である。Haiti野生型(「Haiti WT」)およびHaitiV、加えて、精製されたコレラ毒素(「精製CT」)由来の無細胞上清は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動により分離された。ポリクローナル抗CTX抗体でのイムノブロッティングにより、HaitiVの上清においてCT-Bの存在が明らかにされたが、CT-Aの存在は示されなかった。
【
図8】
図8A、8B、8C、および8Dは、単一接種試料についてのCon-ARTIST分析の結果を示す。x軸は、インビボでの遺伝子あたりの挿入変異体の相対的存在量の変化を示し、y軸は、各遺伝子内の独立した挿入変異体の一致を示す。複数の変異体に渡る2倍より大きい倍数変化(Log
2(平均倍数変化)<-1または>1)を示す遺伝子(平均逆P値>100)は、枯渇した/濃縮されたと考えられる。cqsSおよびhapRが示されている。毒素共調整線毛生合成コンポーネント(丸)、ならびに関連した転写制御因子toxRおよびtoxS(アスタリスク)を含むコロニー形成因子のサブセットもまた示されている。
【
図9】
図9A、9B、9C、および9Dは、逐次的接種試料についてのCon-ARTIST分析の結果を示す。x軸は、インビボでの遺伝子あたりの挿入変異体の相対的存在量の変化を示し、y軸は、各遺伝子内の独立した挿入変異体の一致を示す。複数の変異体に渡る2倍より大きい倍数変化(Log
2(平均倍数変化)<-1または>1)を示す遺伝子(平均逆P値>10
2)は、枯渇した/濃縮されたと考えられる。cqsSおよびhapRが示されている。毒素共調整線毛生合成コンポーネント(丸)、ならびに関連した転写制御因子toxRおよびtoxS(アスタリスク)を含むコロニー形成因子のサブセットもまた示されている。
【
図10】
図10Aは、遅延性ワクチン効果に関するSEIRコレラ伝播モデルの概観を描く図である。円は、モデルの亜集団(感受性亜集団(Susceptible)、曝露された亜集団(Exposed)、感染性亜集団(Infectious)、回復した亜集団(Recovered)、下付き文字U:ワクチン接種されていない、V:ワクチン接種されたが、まだ保護されていない、およびP:保護された)を示し、一方、矢印は、亜集団間の移行を示す。
図10Bはモデル化に用いられたパラメータのリストである。
【
図11】
図11Aおよび11Bは、ワクチン接種キャンペーンの伝播能力(R
0)およびロールアウト率(
図11A)または発動閾値(
図11B)のいずれかの、遅効性ワクチンに対する速効性ワクチンの相対的保護(症例における低下率)への影響を示す図である。
【
図12】
図12A、12B、12C、および
図12Dは、HaitiVまたはCVD103-HgR
*を接種されたマウス由来の血清の殺ビブリオ性活性を描くグラフである。
図12Aは、血清型Inabaコレラ菌(V. cholerae)株に対する、HaitiVを接種されたC57BL/6マウス由来の血清の殺ビブリオ性応答を描くグラフである。
図12Bは、血清型Inabaコレラ菌(V. cholerae)株に対する、HaitiV(黒塗り丸)かまたはCVD103-HgR
*(白抜き四角形および点線)のいずれかを接種されたSwiss-Websterマウス由来の血清の殺ビブリオ性応答を描くグラフである。
図12Cは、血清型Ogawaコレラ菌(V. cholerae)株に対する、HaitiVを接種されたC57BL/6マウス由来の血清の殺ビブリオ性応答を描くグラフである。
図12Dは、血清型Ogawaコレラ菌(V. cholerae)株に対する、HaitiV(黒塗り丸)またはCVD103-HgR
*(白抜き四角形および点線)のいずれかを接種されたSwiss-Websterマウス由来の血清の殺ビブリオ性応答を描くグラフである。x軸より上の肉太の黒色ダッシュ記号は、動物がHaitiVまたはCVD103-HgR
*を経口胃的に接種された時点を示す。y軸に沿った点線はアッセイの検出限界を示す。
【
図13】
図13A、13B、13C、および13Dは、HaitiVまたはCVD103-HgR
*を接種されたマウスにおける経時的な、血清型Ogawaコレラ菌(V. cholerae)株由来のO抗原特異的多糖(OSP)に対するIgAおよびIgG応答を描くグラフである。
図13Aは、血清型Ogawaコレラ菌(V. cholerae)株由来のOSPに対する、HaitiVを接種されたC57BL/6マウスにおける抗OSP IgA応答を描くグラフである。
図13Bは、血清型Ogawaコレラ菌(V. cholerae)株由来のOSPに対する、HaitiV(黒塗り丸)またはCVD103-HgR
*(白抜き四角形および点線)のいずれかを接種されたSwiss-Websterマウスにおける抗OSP IgA応答を描くグラフである。
図13Cは、血清型Ogawaコレラ菌(V. cholerae)株由来のOSPに対する、HaitiVを接種されたC57BL/6マウスにおける抗OSP IgG応答を描くグラフである。
図13Dは、血清型Ogawaコレラ菌(V. cholerae)株由来のOSPに対する、HaitiV(黒塗り丸)またはCVD103-HgR
*(白抜き四角形および点線)のいずれかを接種されたSwiss-Websterマウスにおける抗OSP IgG応答を描くグラフである。x軸より上の肉太の黒色ダッシュ記号は、動物がHaitiVまたはCVD103-HgR
*を経口胃的に接種された時点を示す。
【
図14】
図14A、14B、14C、および14Dは、HaitiVまたはCVD103-HgR
*を接種されたマウスにおける経時的な、血清型Inabaコレラ菌(V. cholerae)株由来のO抗原特異的多糖(OSP)に対するIgAおよびIgG応答を描くグラフである。
図14Aは、血清型Inabaコレラ菌(V. cholerae)株由来のOSPに対する、HaitiVを接種されたC57BL/6マウスにおける抗OSP IgA応答を描くグラフである。
図14Bは、血清型Inabaコレラ菌(V. cholerae)株由来のOSPに対する、HaitiV(黒塗り丸)またはCVD103-HgR
*(白抜き四角形および点線)のいずれかを接種されたSwiss-Websterマウスにおける抗OSP IgA応答を描くグラフである。
図14Cは、血清型Inabaコレラ菌(V. cholerae)株由来のOSPに対する、HaitiVを接種されたC57BL/6マウスにおける抗OSP IgG応答を描くグラフである。
図14Dは、血清型Inabaコレラ菌(V. cholerae)株由来のOSPに対する、HaitiV(黒塗り丸)またはCVD103-HgR
*(白抜き四角形および点線)のいずれかを接種されたSwiss-Websterマウスにおける抗OSP IgG応答を描くグラフである。x軸より上の肉太の黒色ダッシュ記号は、動物がHaitiVまたはCVD103-HgR
*を経口胃的に接種された時点を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
遺伝子組換え型細菌
対象への投与から24時間以内に毒性コレラ菌(Vibrio cholerae)からの保護を誘導するために用いられ得る遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌が、本明細書で提供される。弱毒生コレラ菌(V. cholerae)細菌株でのワクチン接種は、その細菌に対する防御免疫応答を誘導するための有望なストラテジーである。コレラ菌(V. cholerae)における主要な毒性因子、コレラ毒素(CT)をコードする遺伝子(ctxAおよびctxB)は、多くの弱毒生コレラ菌(V. cholerae)ワクチン候補から欠失しているが、CTXΦ(コレラ菌(V. cholerae)に感染し、それのゲノムをコレラ菌(V. cholerae)染色体へ組み込み、および/またはプラスミドとして染色体外で複製する糸状バクテリオファージ)により運ばれる。したがって、コレラ菌(V. cholerae)の弱毒株のCTXΦ感染が、その株を毒性状態に復帰変異するように誘導し得る重大なリスクがある;自然形質転換を含む、遺伝子獲得の他の手段もまた、復帰変異を媒介することができる。例えば、弱毒コレラ菌(V. cholerae)細菌株によるCTXΦ感染または形質転換により、コレラ毒素の獲得の可能性を防止および/または軽減する方法は、弱毒コレラ菌(V. cholerae)株を含むワクチンのバイオセーフティを保証するために非常に望ましい。
【0041】
いくつかの実施形態において、細菌は、弱毒化されている(すなわち、それが由来した親株と比較して毒性が低下している)。細菌は、弱毒化状態を達成するために、本明細書に記載された遺伝子改変の1つまたは複数を含み得る。遺伝子改変には、遺伝子の完全なまたは部分的な欠失、およびその遺伝子を発現する細菌の能力を変化させる(例えば、それを作動不能にするプロモーターエレメントへの変化)遺伝子改変が挙げられるが、それらに限定されない。
【0042】
いくつかの実施形態において、細菌はビブリオ属である。いくつかの実施形態において、細菌は、コレラ菌(Vibrio cholerae)種である。臨床分離株を含む任意のコレラ菌(V. cholerae)株が本明細書に記載されているように用いることができる。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、O1血清型に属する。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、O1血清型に属し、古典的バイオタイプである。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、O1血清型に属し、El Torバイオタイプである。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、O1血清型に属し、バリアントEl Torバイオタイプである。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、O139血清型に属する。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、Inaba血清型に属する。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、Ogawa血清型に属する。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、Hikojima血清型に属する。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、Haitian臨床分離株に由来する。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、O395、N16961、B33、IB4122、IB4642、およびIB4755からなる群から選択される株に由来する。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、H1株(KW3株としても知られている(NCBI Ref.Seq. GCF_000275645.1およびRef.Seq. GCF_001318185.1参照))に由来する。毒性コレラ菌(V. cholerae)株は、以下の2つの主要な毒性因子をコードする:溶原性バクテリオファージCTXΦおよび染色体病原性島、によりそれぞれコードされる、コレラ毒素(CT)および毒素共調整線毛(TCP)。バクテリオファージCTXΦは、コレラ菌(V. cholerae)の非病原性株を病原性株へ、ファージ感染(ファージゲノムが、宿主ゲノムへ統合され、またはプラスミドとして維持される過程であり、それらのどちらも宿主細菌に毒性遺伝子を提供する)を通して、変えることができる。
【0043】
CTXΦゲノムは、サイズがおよそ6.9kbであり、2つの機能的に別個の領域へと組織化される(例えば、McLeod et al. (2005) Mol. Microbiol. 57(2): 347-56;およびKim et al. (2014) J. Microbiol. Biotechnol. 24(6): 725-31参照)。第1の領域、リピート配列2(RS2)は、3つの遺伝子:rstR、rstA、およびrstBを含む。rstAおよびrstBは、タンパク質RstAおよびRstB、それぞれをコードし、それらのタンパク質は、CTXΦ DNA複製および細菌染色体への組込みに必要とされる。rstRは、レプレッサータンパク質RstRをコードする。コア領域と呼ばれる第2の領域は、遺伝子psh、cep、orfU(gIII)、ace、zot、およびctxABを含む。psh、cep、orfU、ace、およびzot遺伝子は、タンパク質Psh、Cep、OrfU(pIIICTX)、Ace、およびZot、をそれぞれコードし、それらのタンパク質は、ファージパッケージングおよび分泌に必要とされる。ctxABは、コレラ毒素のタンパク質サブユニット、CtxAおよびCtxB、をそれぞれコードするctxAおよびctxB遺伝子を含むオペロンである。一緒になって、ctxAおよびctxBは、1つのCT-Aサブユニットおよび5つのCT-Bサブユニットからなるコレラ毒素(CT)毒性因子をコードする。
【0044】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されたコレラ菌(V. cholerae)細菌は、その細菌の毒性を低下させるために、細菌ゲノムに組み込まれる1つまたは複数のCTXΦゲノム遺伝子の発現を低下させ、阻害し、および/または変化させるための1つまたは複数の遺伝子変化を含む。遺伝子変化には、遺伝子産物の発現および機能を変化させるためのCTXΦゲノム遺伝子のオープンリーディングフレームにおける、または遺伝子の発現を阻害するためのプロモーターもしくは転写制御エレメントにおける欠失、変異、挿入が挙げられるが、それらに限定されない。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、組み込まれたCTXΦゲノムおよび隣接した(および関連した)RS1エレメント(CTXΦによりパッケージングされ得るサテライトファージ)の全コピーの欠失を含む。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、組み込まれたCTXΦゲノム遺伝子の核酸配列における欠失を含む。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、細菌染色体へ組み入れられたCTXΦゲノムを含み、またはそれからなる核酸配列を完全に欠失させるように遺伝子改変されている。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、細菌染色体へ組み入れられたCTXΦゲノムを含む核酸配列を部分的に欠失させるように遺伝子改変されている。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、細菌染色体へ組み入れられたCTXΦゲノムのRS2領域を含み、またはそれからなる核酸配列を欠失させるように遺伝子改変されている。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、細菌染色体へ組み入れられたCTXΦゲノムのコア領域を含み、またはそれからなる核酸配列を欠失させるように遺伝子改変されている。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、rstR、rstA、rstB、psh、cep、orfU(gIII)、ace、zot、ctxA、およびctxBからなる群から選択される遺伝子を含み、またはそれからなる核酸配列を欠失させるように遺伝子改変されている。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、ctxA遺伝子を含み、またはそれからなる核酸配列を欠失させるように遺伝子改変されている。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、ctxB遺伝子を含み、またはそれからなる核酸配列を欠失させるように遺伝子改変されている。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、ctxABオペロンを含み、またはそれからなる核酸配列を欠失させるように遺伝子改変されている。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、CTXΦファージが統合されるattB(付着)部位を欠失させるように遺伝子改変されている。
【0045】
いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、細菌ゲノムに組み込まれる1つもしくは複数のRS1サテライトファージ遺伝子および/または1つもしくは複数のTCLサテライトファージ遺伝子の発現を低下させ、阻害し、および/または変化させるための1つまたは複数の遺伝子変化を含む。CTXΦプロファージゲノムの組み込まれたコピーに、RS1サテライトファージおよびTLCサテライトファージのコピーが隣接している場合が多い。TLCサテライトファージは、コレラ菌(V. cholerae)ゲノムを、CTXΦおよびRS1ファージの組込みを増強するように変化させることに関与し、一方、RS1ファージは、パッケージングおよび分泌のためにCTXΦコードタンパク質の一部を用いる(例えば、Samruzzaman et al. (2014) Infect. Immun. 82(9): 3636-43参照)。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、RS1ファージゲノムの組み込まれたコピーの部分的欠失を含む。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、RS1ファージゲノムの組み込まれたコピーの完全な欠失を含む。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、RS1ファージ遺伝子の組み込まれたコピーの部分的欠失を含む。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、RS1ファージ遺伝子の組み込まれたコピーの完全な欠失を含む。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、TLCファージゲノムの組み込まれたコピーの部分的欠失を含む。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、TLCファージゲノムの組み込まれたコピーの完全な欠失を含む。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、TLCファージ遺伝子の組み込まれたコピーの部分的欠失を含む。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、TLCファージ遺伝子の組み込まれたコピーの完全な欠失を含む。
【0046】
いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、その細菌を、CTXΦの複製を促進する能力がないようにする遺伝子改変を含む。例えば、DNA結合タンパク質HUβは、コレラ菌(V. cholerae)においてプラスミド型のCTXΦの複製を促す(Martinez et al. (2015) PLoS Genetics 11(5): e1005256参照、その全内容は参照により本明細書に明確に組み入れられている)。コレラ菌(V. cholerae)において、HUβはhupB(VC1919としても知られている)によりコードされる。したがって、いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、hupBの機能および/または発現を変化させる遺伝子変化を含む。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、hupB遺伝子の部分的欠失を含む。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、hupB遺伝子の完全な欠失を含む。
【0047】
いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、その細菌を、多機能性自己プロセシング毒素内リピート(MARTX)毒素を産生および/または分泌する能力がないようにする遺伝子改変を含む。コレラ菌(V. cholerae)におけるMARTX毒素rtx遺伝子座は、2つの、異なって転写されるオペロン、rtxHCAおよびrtxBDEからなる。コレラ菌(V. cholerae)において、MARTX毒素、RtxAは、遺伝子rtxAによりコードされ、腸の細菌コロニー形成を促進する(例えば、Satchell et al. (2015) Microbiol. Spectr. 3(3)、Fullner et al. (2002) J. Exp. Med. 195(11): 1455-62;およびOlivier et al. (2009) PLoS One 4(10): e7352参照、それらのそれぞれの全内容は参照により本明細書に組み入れられている)。隣接遺伝子rtxCは、推定上のアシルトランスフェラーゼrtxCをコードし、一方、rtxHは、特徴付けられていない機能を有する仮定上のタンパク質をコードする(Gavin and Satchell (2015) Pathog. Dis. 73(9): ftv092参照、その全内容は参照により本明細書に組み入れられている)。rtxBDEオペロンの遺伝子は、専用のMARTX毒素1型分泌装置(T1SS)をコードし、それにより、rtxBおよびrtxEは、ATPアーゼタンパク質RtxBおよびRtxE、をそれぞれコードし、rtxDは、膜貫通タンパク質RtxDをコードし、そのRtxDは、外膜ポリンTolCと協力して、RtxAを細菌細胞質から細胞外環境へ分泌するように働く(Gavin and Satchell (2015)参照)。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、MARTX毒素の機能を変化させる遺伝子変化を含む。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、rtxA遺伝子の部分的欠失を含む。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、rtxA遺伝子の完全な欠失を含む。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、rtxB遺伝子の部分的欠失を含む。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、rtxB遺伝子の完全な欠失を含む。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、rtxC遺伝子の部分的欠失を含む。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、rtxC遺伝子の完全な欠失を含む。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、rtxD遺伝子の部分的欠失を含む。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、rtxD遺伝子の完全な欠失を含む。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、rtxE遺伝子の部分的欠失を含む。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、rtxE遺伝子の完全な欠失を含む。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、rtxH遺伝子の部分的欠失を含む。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、rtxH遺伝子の完全な欠失を含む。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、rtxHCAオペロンの部分的欠失を含む。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、rtxHCAオペロンの完全な欠失を含む。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、rtxBDEオペロンの部分的欠失を含む。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、rtxBDEオペロンの完全な欠失を含む。
【0048】
いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、対象(例えば、ヒト対象)への投与後のその細菌の反応源性を低下させるための遺伝子改変を含む。いくつかの弱毒経口コレラ菌(V. cholerae)ワクチン株は、非コレラ性下痢および腹部仙痛を含む反応源性症状を引き起こしている;しかしながら、フラゲリンコード遺伝子を欠くコレラ菌(V. cholerae)株は、動物モデルにおいて反応源性の低下を示すことが実証されている(例えば、Rui et al. (2010) Proc. Nat’l. Acad. Sci. USA 107(9): 4359-64参照、その全内容は参照により本明細書に明確に組み入れられている)。コレラ菌(V. cholerae)は、5つのフラゲリンコード遺伝子を含む、2つのオペロン、flaACおよびflaDBEを含む。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、フラゲリンをコードする少なくとも1つの遺伝子の機能を変化させる遺伝子変化を含む。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、フラゲリンをコードする遺伝子における部分的欠失を含む。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、フラゲリンをコードする遺伝子における完全な欠失を含む。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、flaA、flaB、flaC、flaD、およびflaEからなる群から選択されるフラゲリン遺伝子における完全なまたは部分的な欠失を含む。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、flaACオペロンの完全なまたは部分的な欠失を含む。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、flaBDEオペロンの完全なまたは部分的な欠失を含む。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、flaACオペロンとflaBDEオペロンの両方の完全なまたは部分的な欠失を含む。
【0049】
いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、抗生物質抵抗性遺伝子の他の細菌への分散を防止するために抗生物質抵抗性遺伝子における欠失を含む。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、抗生物質抵抗性遺伝子における部分的欠失を含む。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、抗生物質抵抗性遺伝子における完全な欠失を含む。いくつかの実施形態において、抗生物質抵抗性遺伝子は、floR(クロラムフェニコールに対する抵抗性を与える)、strAB(ストレプトマイシンに対する抵抗性を与える)、sul2(スルフィソキサゾールおよびスルファメトキサゾールに対する抵抗性を与える)、およびdfrA(トリメトプリムに対する抵抗性を与える)からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、以下の抗生物質抵抗性遺伝子のそれぞれの完全な欠失を含む:floR、strAB、dfrA、およびsul2。
【0050】
いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、その細菌を、RecAを産生する能力がないようにする遺伝子改変を含む。遺伝子recAは、相同組換え、DNA修復、およびSOS応答に関与する多機能タンパク質RecAをコードする(例えば、Thompson et al. (2004) Int. J. Syst. Evol. Microbiol. 54 (Pt. 3): 919-24参照、その全内容は参照により本明細書に明確に組み入れられている)。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、recA遺伝子における欠失を含む。いくつかの実施形態において、その欠失は部分的欠失である。いくつかの実施形態において、その欠失は完全な欠失である。いかなる特定の理論にも縛られるつもりはないが、recAの欠失は、コレラ菌(V. cholerae)細菌による相同組換え依存性遺伝子獲得およびUV光などの環境的曝露から生じる変異を回復させるそれの能力を阻止する。
【0051】
いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、異種性核酸または異種性遺伝子を含む。用語「異種性核酸」または「異種性遺伝子」は、天然で所定の細胞に通常見出されない核酸(例えば、所定の細胞へ外因的に導入される核酸、または対応する天然核酸とは異なる形で宿主細胞へ導入されている核酸)を指す。異種性核酸が、本明細書に記載されたコレラ菌(V. cholerae)細菌における使用のためにコドン最適化されている遺伝子を含み得ることは当業者により容易に理解されるだろう。
【0052】
いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、抗原ポリペプチドをコードする異種性核酸を含む。いくつかの実施形態において、抗原ポリペプチドをコードする核酸の発現は、構成的プロモーターに作動可能に連結している。いくつかの実施形態において、抗原ポリペプチドをコードする核酸は、誘導性プロモーターに作動可能に連結している。いくつかの実施形態において、抗原ポリペプチドをコードする異種性核酸は、細菌ゲノムに組み込まれている。いくつかの実施形態において、抗原ポリペプチドをコードする異種性核酸は、プラスミド上に存在する。いくつかの実施形態において、抗原ポリペプチドはコレラ毒素サブユニットCtxBである。本明細書に記載されたコレラ菌(V. cholerae)細菌によるコレラ毒素CtxBサブユニットの発現は、その細菌が投与される対象において抗CtxB免疫応答の誘導を促して、それによりコレラ菌(V. cholerae)および腸内毒素原性大腸菌(E. coli)(ETEC)に対する免疫防御を生じ得るので、特に有利であり得る(例えば、Kauffman et al. (2016) mBio 7(6): e02021-16参照、その全内容は参照により本明細書に明確に組み入れられている)。したがって、いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、コレラ菌(V. cholerae)ctxB遺伝子を含む異種性核酸を含む。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、誘導性プロモーター(例えば、Phtpgプロモーター)に作動可能に連結しているコレラ菌(V. cholerae)ctxB遺伝子を含む異種性核酸を含む。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、誘導性プロモーターに作動可能に連結しているコレラ菌(V. cholerae)ctxB遺伝子を含む異種性核酸を含む。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)ctxB遺伝子を含む異種性核酸は、細菌染色体上に存在する。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、変異N900_11550::Phtpg-ctxBを含む。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、その染色体へ、HaitiWT(Bioprojectアクセッション番号PRJNA215281;Biosampleアクセッション番号SAMN04191514)のN900_11550遺伝子座と相同な遺伝子座において組み込まれたCtxBをコードする異種性核酸を含む。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、その染色体へ、HaitiWTのN900_RS07040遺伝子座と相同な遺伝子座において組み込まれたCtxBをコードする異種性核酸を含む。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、その染色体へ、HaitiWTのN900_RS07045遺伝子座と相同な遺伝子座において組み込まれたCtxBをコードする異種性核酸を含む。
【0053】
いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、配列番号7の核酸配列を含み、またはそれからなる細菌染色体を含む。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、配列番号51の核酸配列を含み、またはそれからなる細菌染色体を含む。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、第1の細菌染色体および第2の細菌染色体を含み、前記第1の細菌染色体が配列番号7の核酸配列を含み、またはそれからなり、および前記第2の細菌染色体が配列番号51の核酸配列を含み、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、コレラ菌(V. cholerae)細菌は、それの親株と比べて、ATCC寄託番号PTA-125138を有する株と同じ遺伝子における変異を有する。いくつかの実施形態において、コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌は、ATCC寄託番号PTA-125138を有するコレラ菌(V. cholerae)株(本明細書でHaitiVとして記載される)である。
【0054】
プログラム可能なRNAガイドヌクレアーゼシステム
本開示はさらに、事前に細菌株から除去された遺伝子(例えば、毒性遺伝子)を特異的にターゲットするプログラム可能なRNAガイドヌクレアーゼシステムを含む組換え細菌株を提供する。細菌株から除去された遺伝子をターゲットすることにより、組換え細菌による毒性表現型の復帰変異が、(例えば、前記遺伝子の再獲得を防止することにより)防止および/または改善され得る。本明細書に記載されているようなプログラム可能なRNAガイドヌクレアーゼシステムの使用は、弱毒生ワクチン細菌株において、その株の弱毒表現型を維持するために、特に有用である。
【0055】
任意の弱毒細菌株は、プログラム可能なRNAガイドヌクレアーゼシステムを発現して、毒性表現型への復帰変異を防止および/または改善するように改変することができる。例えば、コレラ菌(V. cholerae)、サルモネラ・エンテリカ(Salmonella enterica)、シゲラ・フレクスネリ(Shigella flexneri)、シゲラ・ソンネイ(Shigella sonnei)、志賀赤痢菌(Shigella dysenteriae)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、およびクロストリディオイデス・ディフィシル(Clostridioides difficile)(以前はクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile))の種の弱毒生細菌株が、その株において欠失している遺伝子(すなわち、その弱毒細菌株が由来した株と比較して)をターゲットするプログラム可能なRNAガイドヌクレアーゼシステムを発現するように遺伝子操作することができる。例示的な弱毒生細菌株、およびその株において欠失する毒性遺伝子の説明は、表1に提供されている。これらの弱毒生細菌株において欠失する毒性遺伝子の例示的な配列は表2に提供されている。表1に提供された細菌株のそれぞれは、その株において欠失している遺伝子の少なくとも1つを特異的にターゲットするRNAガイドヌクレアーゼシステムを含むように、本明細書に記載されているように遺伝子改変することができる。例えば、いくつかの実施形態において、細菌株は、ctxA遺伝子における欠失、加えて、ctxA遺伝子をターゲットするプログラム可能なRNAガイドヌクレアーゼシステム(例えば、Cas9ヌクレアーゼ分子をコードする異種性核酸配列およびガイドRNA(gRNA)をコードする異種性核酸配列)を含むコレラ菌(V. cholerae)株である。いくつかの実施形態において、細菌株は、aroC、aroD、htrA、ssaV、cya、crp、phoP、phoQ、guaB、guaA、clpX、およびclpPから選択される少なくとも1つの毒性遺伝子における欠失、加えて、その欠失した毒性遺伝子(例えば、aroC、aroD、htrA、ssaV、cya、crp、phoP、phoQ、guaB、guaA、clpX、およびclpP)の少なくとも1つをターゲットするプログラム可能なRNAガイドヌクレアーゼシステムを含むS.エンテリカ(S. enterica)株である。いくつかの実施形態において、細菌株は、guaB、guaA、set、sen、virG/icsA、luc、aroA、およびmsbB2から選択される少なくとも1つの毒性遺伝子における欠失、加えて、その欠失した毒性遺伝子(例えば、guaB、guaA、set、sen、virG/icsA、luc、aroA、およびmsbB2)の少なくとも1つをターゲットするプログラム可能なRNAガイドヌクレアーゼシステムを含むS.フレクスネリ(S. flexneri)株である。いくつかの実施形態において、細菌株は、guaB、guaA、sen、stxA、stxB、およびmsbB2から選択される少なくとも1つの毒性遺伝子における欠失、加えて、その欠失した毒性遺伝子(例えば、guaB、guaA、sen、stxA、stxB、およびmsbB2)の少なくとも1つをターゲットするプログラム可能なRNAガイドヌクレアーゼシステムを含む志賀赤痢菌(S. dysenteriae)株である。いくつかの実施形態において、細菌株は、stxA遺伝子および/またはstxB遺伝子における欠失、加えて、その欠失した毒性遺伝子(例えば、stxAおよび/またはstxB)をターゲットするプログラム可能なRNAガイドヌクレアーゼシステムを含むS.ソンネイ(S. sonnei)株である。いくつかの実施形態において、細菌株は、dnt遺伝子、aroA遺伝子および/またはaroQ遺伝子における欠失、加えて、その欠失した毒性遺伝子(例えば、dnt、aroA、および/またはaroQ)をターゲットするプログラム可能なRNAガイドヌクレアーゼシステムを含む百日咳菌(B. pertussis)株である。いくつかの実施形態において、細菌株は、tcdA遺伝子および/またはtcdB遺伝子における欠失、加えて、その欠失した毒性遺伝子(例えば、tcdAおよび/またはtcdB)をターゲットするプログラム可能なRNAガイドヌクレアーゼシステムを含むC.ディフィシル(C. difficile)株である。
【0056】
いくつかの実施形態において、細菌は、CTXΦ核酸を特異的にターゲットし、それにより、以下の過程:CTXΦ遺伝子材料の細菌ゲノムへの挿入、CTXΦの複製、CTXΦのアセンブリー、および/もしくはCTXΦの細菌からの放出の1つもしくは複数を防止もしくは中断し、またはCTXΦゲノムの組み込まれたコピーを含む細菌を死滅させる、プログラム可能なRNAガイドヌクレアーゼシステムを有するコレラ菌(V. cholerae)細菌である。いくつかの実施形態において、プログラム可能なRNAガイドヌクレアーゼシステムはctxA遺伝子をターゲットする。
【0057】
用いられ得る関連ヌクレアーゼシステムには、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、転写活性因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALENs)、プレボテラ属およびフランシセラ属由来のCRISPR1(CRISPR from Prevotella and Francisella 1:Cpf1)ヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、およびCRISPR/Cas9ヌクレアーゼシステムが挙げられるが、それらに限定されない。本明細書で用いられる場合、プログラム可能なRNAガイドヌクレアーゼシステムに関する用語「編集」は、標的核酸における点変異、挿入、欠失、フレームシフト、またはミスセンス変異などの変異を含む。RNAガイドヌクレアーゼシステムは、毒性遺伝子(例えば、ctxAなどのCTXΦゲノムに存在する遺伝子)における核酸の配列に相補的である配列(すなわち、ターゲティングドメイン)、およびヌクレアーゼ分子(例えば、Cas9ヌクレアーゼ分子)によりターゲット可能である配列(例えば、PAM配列またはダイレクトリピート配列)を含むガイドRNAを含む。本明細書で用いられる場合、ガイドRNA(「gRNA」)という用語は、ヌクレアーゼ分子を標的核酸へガイドする任意のRNA分子(例えば、gRNA、crRNA、tracrRNA、sgRNAなど)を含む。ターゲティングに成功すると、ヌクレアーゼ分子は、毒性遺伝子(例えば、ctxA)における核酸を切断する。毒性遺伝子をプログラム可能なRNAガイドヌクレアーゼシステムで特異的にターゲットすることにより、弱毒細菌(例えば、弱毒サルモネラ・エンテリカ(Salmonella enterica)またはコレラ菌(V. cholerae)細菌)の毒性細菌への復帰変異は、防止および/または改善され得る。用語「防止」は、弱毒細菌が毒性型へ復帰変異し得るリスクの、どんなにわずかであろうと(例えば、100%低下である必要はない)、任意の低下を指す。
【0058】
いくつかの実施形態において、細菌は、Cas9ヌクレアーゼ分子をコードする異種性核酸を含む。本例は、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)Cas9ヌクレアーゼ分子(SpCas9)の使用を例示するが、下記で論じられているような、他の種由来の他のCas9ヌクレアーゼ分子(例えば、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)Cas9ヌクレアーゼ分子(SaCas9))もまた用いることができる。複数のCas9ヌクレアーゼ分子の配列、加えて、それらのそれぞれのPAM配列は、当技術分野において知られている(例えば、Kleinstiver et al. (2015) Nature 523 (7561): 481-5;Hou et al. (2013) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.;Fonfara et al. (2014) Nucleic Acids Res. 42: 2577-90;Esvelt et al. (2013) Nat. Methods 10: 1116-21;Cong et al. (2013) Science 339: 819-23;およびHorvath et al. (2008) J. Bacteriol. 190: 1401-12;国際公開第2016/141224号パンフレット、国際公開第2014/204578号パンフレット、および国際公開第2014/144761号パンフレット;米国特許第9,512,446号明細書;および米国特許出願公開第2014/0295557号明細書参照;それらのそれぞれの全内容は参照により本明細書に組み入れられている)。SpCas9システムのバリアントもまた用いることができる(例えば、切断型sgRNA(Tsai et al. (2015) Nat. Biotechnol. 33: 187-97;Fu et al. (2014) Nat. Biotechnol. 32: 279-84)、ニッカーゼ変異(Mali et al. (2013) Nat. Biotechnol. 31: 833-8 (2013);Ran et al. (2013) Cell 154: 1380-9)、FokI-dCas9融合体(Guilinger et al. (2014) Nat. Biotechnol. 32: 577-82;Tsai et al. (2014) Nat. Biotechnol. 32: 569-76;および国際公開第2014/144288号パンフレット;それらのそれぞれの全内容は参照により本明細書に組み入れられている)。ヌクレアーゼには、SpCas9 D1135Eバリアント;SpCas9 VRERバリアント;SpCas9 EQRバリアント;SpCas9 VQRバリアント;ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)Cas9ヌクレアーゼ分子(StCas9);トレポネーマ・デンティコラ(Treponema denticola)Cas9ヌクレアーゼ分子(TdCas9);または髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)Cas9ヌクレアーゼ分子(NmCas9)の1つまたは複数、加えて、由来する酵素の少なくとも1つの機能、例えば、gRNAと複合体形成し、そのgRNAにより特定化された標的DNAと結合し、その標的DNAの配列を変化させる(例えば、切断する)能力を保持する、それらと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるそれらのバリアントを含み得る。
【0059】
いくつかの実施形態において、細菌(例えば、コレラ菌(V. cholerae)細菌)は、Cpf1ヌクレアーゼ分子をコードする異種性核酸を含む。Cpf1は、標的DNA配列を切断するようにプログラムすることができるCasタンパク質である(Zetsche et al. (2015) Cell 163: 759-71; Schunder et al. (2013) Int. J. Med. Microbiol. 303: 51-60;Makarova et al. (2015) Nat. Rev. Microbiol. 13: 722-36;Fagerlund et al. (2015) Genome Biol. 16: 251)。いくつかの実施形態において、Cpf1ヌクレアーゼ分子は、アシダミノコッカス種(Acidaminococcus sp.)BV3L6(AsCpf1;NCBI参照配列:WP_021736722.1)、またはそのバリアントである。いくつかの実施形態において、Cpf1ヌクレアーゼ分子は、ラクノスピラ科(Lachnospiraceae)細菌ND2006(LbCpf1;GenBankアクセッション番号WP_051666128.1)またはそのバリアントである。SpCas9と違って、Cpf1は、標的DNA配列のプロトスペーサーに相補的である23ntを3’末端に有する、単一の42-nt crRNAのみを必要とする(Zetsche et al. (2015))。さらに、SpCas9は、プロトスペーサーの3’側にあるNGG PAM配列を認識するが、AsCpf1およびLbCp1は、プロトスペーサーの5’側に見出されるTTTN PAMを認識する(Zetsche et al. (2015))。いくつかの実施形態において、Cpf1ヌクレアーゼ分子は、野生型Cpf1ヌクレアーゼ分子と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である、野生型Cpf1分子のバリアントであり、それが由来した酵素の少なくとも1つの機能、例えば、gRNAと複合体形成し、そのgRNAにより特定化された標的DNAと結合し、その標的DNAの配列を変化させる(例えば、切断する)能力を保持する。
【0060】
2つの配列のパーセント同一性を決定するために、それらの配列は、最適な比較を目的としてアラインメントされる(最適なアラインメントに必要とされる場合、第1および第2のアミノ酸または核酸配列の一方または両方においてギャップが導入され、比較を目的として非相同配列が無視され得る)。比較を目的としてアラインメントされる参照配列の長さは、少なくとも80%である(いくつかの実施形態において、参照配列の長さの約85%、90%、95%、または100%がアラインメントされる)。その後、対応する位置におけるヌクレオチドまたは残基が比較される。第1の配列における位置が、第2の配列における対応する位置と同じヌクレオチドまたは残基によって占有されている時、その分子は、その位置において同一である。2つの配列間でのパーセント同一性は、その2つの配列の最適なアラインメントのために導入される必要がある、ギャップの数および各ギャップの長さを考慮した、それらの配列により共有される同一の位置の数の関数である。
【0061】
配列の比較、および2つの配列間のパーセント同一性の決定は、数学的アルゴリズムを用いて達成することができる。例えば、2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性は、12のギャップペナルティ、4のギャップ伸長ペナルティ、および5のフレームシフトギャップペナルティでのBlossum 62スコアリングマトリックスを用いる、GCGソフトウェアパッケージにおけるGAPプログラムへ組み入れられているNeedleman-Wunschアルゴリズム(Needleman and Wunsch (1970) J. Mol. Biol. 48: 444-53参照)を用いて決定することができる。
【0062】
野生型SpCas9のアミノ酸配列は以下の通りである:
【0063】
【0064】
野生型SaCas9のアミノ酸配列は以下の通りである:
【0065】
【0066】
いくつかの実施形態において、細菌は、gRNAをコードする異種性核酸配列を含み、前記gRNAが、毒性遺伝子(例えば、ctxAなどのCTXΦゲノム遺伝子)の標的核酸配列と相補的であるターゲティングドメインを含む。いくつかの実施形態において、gRNA分子は、表2に列挙された毒性遺伝子(例えば、ctxA、aroD、またはhtrA)に存在する標的核酸配列と相補的であるターゲティングドメインを含む。特定の標的に対する特異性を有するgRNAをデザインおよび作製する方法は、当技術分野において知られており、例えば、Prykhozhij et al. (2015) PLos One 10(3):e0119372;Doench et al. (2014) Nat. Biotechnol. 32(12): 1262-7;およびGraham et al. (2015) Genome Biol. 16: 260(それらのそれぞれは、参照により本明細書に明確に組み入れられている)に記載されている。
【0067】
プログラム可能なRNAガイドヌクレアーゼシステムを有するコレラ菌(V. cholerae)
いくつかの実施形態において、毒性遺伝子はCTXΦ遺伝子であり、細菌は、弱毒コレラ菌(V. cholerae)細菌である。いかなる特定の理論にも縛られるつもりはないが、CTXΦゲノムの核酸配列を特異的にターゲットすることにより、CTXΦゲノムのコレラ菌(V. cholerae)細菌ゲノムへの組込みおよび/またはCTXΦゲノムのプラスミドとしての維持(それらのいずれも、細菌を、毒性状態に適応させ、および/または復帰変異させ得る)を防止することが可能である。gRNAは、CTXΦゲノムに存在する標的核酸配列と相補的なターゲティングドメインを含み得る;しかしながら、gRNAがCTXΦゲノムの核酸配列を特異的にターゲットし、および細菌ゲノム核酸配列をターゲットしないことが好ましい。いくつかの実施形態において、gRNAは、CTXΦ遺伝子に存在する標的核酸配列(例えば、rstR、rstA、rstB、psh、cep、orfU(gIII)、ace、zot、ctxA、およびctxB)と相補的なターゲティングドメインを含む。ctxAをターゲットすることが特に望ましい。いくつかの実施形態において、gRNAは、ctxA遺伝子に存在する標的核酸配列と相補的なターゲティングドメインを含む。いくつかの実施形態において、gRNAは、核酸配列:5’-cctgatgaaataaagcagtcgttttagagctagaaatagcaagttaaaataaggctagtccgttatcaacttgaaaaagtggcaccgagtcggtgc-3’(配列番号3;ctxAに特異的なターゲティング配列は下線で強調されている)を含む。いくつかの実施形態において、gRNAは、核酸配列:5’-tttttgtcgattatcttgctgttctagagagcgggagctcaagttagaataaggctagtccgtattcagtgcgggagcacggcaccgattcggtgc-3’(配列番号4;rstAに特異的なターゲティング配列は下線で強調されている)を含む。いくつかの実施形態において、gRNAは、核酸配列:5’-taaacaaagggagcattatagttggagaggcatgagaatgccaagttccaataaggctagtccgtacacacctaggagactaggggcaccgagtcggtgc-3’(配列番号5;ctxAに特異的なターゲティング配列は下線で強調されている)を含む。
【0068】
上で記載されているように、いくつかの実施形態において、遺伝子組換え型コレラ菌(V. cholerae)細菌は、ctxB遺伝子を含む異種性核酸を含み得る。いかなる特定の理論にも縛られるつもりはないが、CtxBの発現は、対象において抗ctxB免疫応答を誘導し得る。この抗ctxB免疫応答は、毒性コレラ菌(V. cholerae)細菌株および/または腸内毒素原性大腸菌(E. coli)(ETEC)のいずれかにより引き起こされる下痢性疾患から保護し得る(例えば、Kauffman et al. (2016) MBio. 7(6): e 02021-16参照)。細菌が、ctxB遺伝子を含む異種性核酸、加えてctxB遺伝子に存在する標的核酸配列と相補的なターゲティングドメインを含むgRNAを含むならば、前記ctxB遺伝子を含む異種性核酸または前記gRNAをコードする核酸のいずれかが、前記gRNAが、前記ctxB遺伝子を含む異種性核酸をターゲットしないように遺伝子組換えされ得ることを、当業者は容易に認識しているだろう。例えば、ctxB遺伝子を含む異種性核酸は、それがgRNAターゲティングドメイン配列に相補的ではないように、コドン配列を同義のコドン配列と置き換えるよう改変され得る。
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
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【0094】
【0095】
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【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
使用方法
さらなる態様は、本明細書に提供された遺伝子組換え型細菌(例えば、遺伝子組換え型コレラ菌(V. cholerae)細菌)を用いる方法を包含する。例えば、いくつかの実施形態において、本明細書に記載された遺伝子組換え型細菌を対象に(例えば、経口で)投与することにより対象の免疫系を調節するための方法が本明細書に提供される。方法は、本明細書に記載された遺伝子組換え型細菌を含む組成物の有効量を対象(例えば、ヒト対象)に投与することを含む。組成物の有効量が、所望の応答(例えば、防御応答、粘膜応答、体液性応答、または細胞応答)を生じるだろう量であることを当業者は認識しているだろう。応答は、当技術分野において知られた方法により定量化することができる。
【0106】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載された遺伝子改変型コレラ菌(V. cholerae)細菌、または本明細書に記載された遺伝子改変型コレラ菌(V. cholerae)細菌を含む薬学的組成物を投与することを含む、対象においてコレラ菌(Vibrio cholerae)の毒性株に対する防御応答を誘導する方法が本明細書に提供される。いくつかの実施形態において、防御応答は、薬学的組成物の遺伝子改変型細菌の対象への投与から約12時間以内、約18時間以内、約24時間以内、約36時間以内、約48時間以内、約60時間以内、約72時間以内、または約84時間以内に発生する。いくつかの実施形態において、防御免疫応答は、薬学的組成物の遺伝子改変型細菌の対象への投与から12時間以内、18時間以内、24時間以内、36時間以内、48時間以内、60時間以内、72時間以内、84時間以内、またはそれ以上の時間内に発生する。
【0107】
さらなる実施形態において、本明細書に記載された遺伝子組換え型コレラ菌(V. cholerae)細菌は、必要としている宿主においてコレラの1つまたは複数の症状を改善するための方法に用いられ得る。コレラ症状には、下痢、悪心、嘔吐、および脱水症状が挙げられる。方法は、本明細書に記載された遺伝子組換え型コレラ菌(V. cholerae)細菌を含む組成物の有効量を投与することを含む。
【0108】
本明細書に記載された遺伝子組換え型細菌および前記細菌を含む組成物は、任意の対象に投与され得る。遺伝子組換え型細菌を含む例示的なワクチン組成物製剤および投与方法は下記で詳述されている。
【0109】
薬学的組成物
本明細書に記載された遺伝子組換え型細菌を含む薬学的組成物は、任意選択で、担体、保存剤、凍結保護物質(例えば、スクロースおよびトレハロース)、安定剤、アジュバント、および他の物質などの1つまたは複数の可能な薬学的に許容される賦形剤を含み得る。例えば、組成物が、生きている遺伝子組換え型細菌を含む場合、賦形剤は、その生細菌が死滅しないように、または対象に効果的にコロニー形成する細菌の能力が賦形剤の使用により損なわれないように、選択される。適切な薬学的担体は、当技術分野において知られており、例えば、それには、生理食塩水および生理的濃度での、またはそれに近い他の無毒性塩などの液体担体、ならびにタルクおよびスクロースなどの固体担体が挙げられる。いくつかの実施形態において、薬学的組成物はアジュバントを含む。いくつかの実施形態において、薬学的組成物は、対象へのエアロゾル化投与に適した形をとり得る。いくつかの実施形態において、薬学的製剤は、フリーズドライの形(すなわち、凍結乾燥した形)をとる。いくつかの実施形態において、薬学的製剤はゼラチンカプセルである。適切な薬学的担体およびアジュバントおよび剤形の調製は、参照により本明細書に組み入れられている、Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th Edition, (Gennaro, Ed., Mack Publishing Co., Easton, Pa., 1985)に記載されている。
【0110】
本明細書に記載された遺伝子組換え型細菌の対象への投与は、任意の公知の技術によることができ、その技術には、経口投与、直腸投与、腟内投与、または経鼻投与が挙げられるが、それらに限定されない。
【0111】
対象に投与される遺伝子組換え型細菌の投薬量は、当業者により認識されているように、遺伝子組換え型細菌、投与経路、および意図される対象に依存して異なる。一般的に言えば、投薬量は、対象において防御的宿主応答を誘発するのに十分であることのみを必要とする。例えば、経口投与についての典型的な投薬量は、その細菌が投与される対象の年齢によって、約1×107~1×1010のコロニー形成単位(CFU)であり得る。遺伝子組換え型細菌の複数回の投薬量を投与することもまた、所望のレベルの保護を提供するのに必要とされる場合、用いられ得る。
【0112】
本明細書に記載された遺伝子組換え型細菌または薬学的組成物を含むキットもまた提供される。いくつかの実施形態において、キットはさらに、使用説明書を含む。いくつかの実施形態において、薬学的組成物は凍結乾燥されており、それゆえに、水和剤(例えば、緩衝食塩水)の添加により組成物が再構成されて、対象への(例えば、経口での)投与に適した薬学的組成物を生じる。
【0113】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を実証するために含まれる。以下に続く実施例に開示された技術は、本発明の実施においてよく機能し得る、本発明者らにより発見された技術を代表することは、当業者により認識されているはずである。しかしながら、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、開示されている特定の実施形態において多くの変化がなされ得、かつなお同様のまたは類似した結果を獲得し得ることを、当業者は、本開示を鑑みれば、認識するはずであり、それゆえに、記述されまたは添付の図面に示された全ての事柄は、例証として解釈されるべきであり、限定する意味に解釈されるべきではない。
【実施例】
【0114】
本発明はさらに以下の実施例において記載され、その実施例は、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を限定しない。
【0115】
[実施例1]
遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌株は、投与から1日以内にコレラ菌(V. cholerae)の毒性株に対する抵抗性を与える
イエメンおよびハイチにおける大規模かつ進行中のコレラの流行は、この古代からの下痢性疾患が未だに公衆衛生にとっての重大な脅威であることを示している(Balakrishnan (2017) Lancet Infect. Dis. 17, 700-1;およびAli et al. (2015) PLoS Negl. Trop Dis. 9, e0003832)。コレラは、グラム陰性細菌病原体である、コレラ菌(Vibrio cholerae)により汚染された水または食物の摂取に起因する。コレラ菌(V. cholerae)は、小腸でコロニー形成し、そこで、それは、コレラ毒素を産生し、そのコレラ毒素が、激しい水様性下痢および結果としての脱水症状を引き起こし、それは、補水治療がなければ、速やかに死に至り得る(Clemens et al. (2017) Lancet 390(10101): 1539-49)。コレラ伝播を制限する公衆衛生介入は重要であり、そうでなければコレラ流行の激しい拡散が、特に、衛生インフラおよび給水における崩壊を伴って、起こるからである。死滅したコレラ菌(V. cholerae)細胞全体からなる経口コレラワクチン(OCV)は、流行地において穏やかな防御効力を生じ(Qadri et al. (2015) Lancet 386(10001): 1362-71)、これらのワクチンは最近、コレラの拡散をブロックすることを目指した「受け身的ワクチン接種」プログラムの一部として非流行区域において、大発生中に配備された(例えば、Luquero et al. (2014) N. Engl. J. Med. 370(22): 2111-20参照)。しかしながら、死滅型OCVの最適な効力は、14日間離して投与される2回分の冷蔵用量を必要とし(例えば、Kabir (2014) Clin. Vaccine Immunol. 21(9): 1195-1205参照)、これらの特徴は、不安定な、または資源の乏しい設定において、進行中の大発生を迅速に抑制する死滅型OCVの能力を制限し得る。単回投与の弱毒生OCVは、曝露研究(例えば、Chen et al. (2016) Clin. Infect. Dis. 62(11): 1329-35参照)および流行地における初期臨床試験(Qadri et al. (2007) Vaccine 25(2): 231-8)において効力を示し、弱毒生OCVでの受け身的ワクチン接種が、大発生中のコレラの発生率の減少に寄与した可能性がある(Calain et al. (2004) Vaccine 22(19): 2444-51参照)。しかしながら、2010年のハイチコレラ大発生の原因である株のような、世界的に優勢な「バリアント」El Tor株に基づいた生OCVはない(Chin et al. (2011) N. Engl. J. Med. 364(1): 33-42参照)。さらに、コレラからの迅速な(例えば、投与から24時間以内の)保護を媒介することが示されている、死滅型OCVも弱毒生OCVもなく、それどころか、現在のワクチンは、コレラからの保護を生じ得る、防御的適応免疫応答を誘発するのに必要な時間(最低1週間)を必要とすると考えられている。この実施例は、投与から1日以内に、乳児ウサギを致死性コレラ様疾患から迅速に保護することが見出された、ハイチの大発生株に基づいた新しい弱毒生コレラワクチンの作製を記載する。
【0116】
材料および方法
以下の材料および方法を、この実施例で用いた。
研究デザイン
この研究の目的は、新しい弱毒生コレラワクチン候補をデザインし、腸に安全にコロニー形成するその株の能力を評価し、その株が、それの投与後すぐにコレラ様疾患から動物を保護することができるかどうかを決定し、観察される保護パラメータの、流行中コレラ感染の発生率への潜在的影響を定量化することであった。ワクチン候補を、世界的に優勢なコレラ菌(V. cholerae)株の分離株から、連続的アレル交換ステップ(遺伝子操作参照)によって導き出し、変異を、全ゲノムシーケンシング(全ゲノムシーケンシング参照)により検証した。腸管定着およびコレラ様疾患の研究を、研究における動物の使用に関する連邦政府および機関のガイドラインに従って、乳児ウサギの感染モデルを用いて行った(乳児ウサギ感染研究参照)。日齢1~2日の動物を、処置群へランダムに割り当て、同腹仔内(すなわち、同時飼育され、かつ同年齢)の対照を用いて、同腹仔間の変動の影響を最小限にした。疾患進行の研究について、評価者は、各群に投与された処置を知らず、曝露から10時間以内に死亡が見出された動物は、母親の拒絶と一致した身体外傷が原因として、排除された。トランスポゾン挿入シーケンシング研究を、ARTISTパイプラインを用いて行い、そのARTISTパイプラインは、実験ノイズをモデル化し、それを補い、効果サイズ閾値の設定についての推奨を提供する(トランスポゾン挿入シーケンシング分析を参照)。最後に、疾患伝播についての以前に発表されたパラメータのセットへワクチン保護までの可変時間を組み入れるモデル化を実施した(コレラ大発生のモデル化参照)。
【0117】
統計的解析
2つの試料の比較を、t検定の両側検定(α=0.05)(液体貯留比)、ノンパラメトリックなデータについてのマン-ホイットニーU検定(細菌負荷量)、またはログランク検定(生存曲線)を用いて実施した。3つの試料の比較を、クラスカル-ウォリス検定、続いて、Dunnの多重比較検定を用いて実施した(細菌負荷量)。
【0118】
株、培地、および培養条件
表3は、この研究に用いられる株のリストを含有する。特に断りのない限り、コレラ菌(V. cholerae)および大腸菌(E. coli)を、溶原性ブロス(LB:10g/Lトリプトン、5g/L酵母抽出物、5g/L NaCl)中、37℃で振盪(250RPM)させながら増殖させた。ファージ形質導入アッセイにおけるレシピエント株を、AKI培地(15g/Lペプトン、4g/L酵母抽出物、5g/L NaCl、オートクレーブし、その後、新鮮に作製されて、滅菌濾過された0.3%NaHCO3を追加した)中で増殖させた。
【0119】
抗生物質および基質を、特に断りのない限り、以下の濃度で用いた:ストレプトマイシン(Sm)(200μg/mL)、カルベニシリン(50μg/mL)、クロラムフェニコール(20μg/mL)、SXT(160μg/mLスルファメトキサゾール、32μg/mLトリメトプリム)、カナマイシン(Kn)(50μg/mL)、および5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルβ-D-ガラクトピラノシド(X-Gal 60mg/mL)。
【0120】
【0121】
【0122】
遺伝子操作
全ての遺伝子欠失および置換を、自殺ベクターpCVD442、DH5α-λpir、およびドナー株MFD-λpir(Ferrieres et al. (2010) J. Bacteriol. 192(24): 6418-27参照)またはSM10-λpir(表3)を用いて、相同組換えによって構築した。全ての欠失について、それぞれのORFの上流および下流のおよそ500~700bp相同領域を、下記のプライマー組合せを用いて増幅し、XbaIにより消化されたpCVD442へ等温アセンブリーを用いてクローニングした。
【0123】
HaitiWT株からのHaitiVの誘導について、まず、CTXΦプロファージおよび周囲配列を、プライマーTDPsCTX1/TDPsCTX2およびTDPsCTX3/TDPsCTX4を用いて欠失させて、この領域の5’末端におけるrtx毒素トランスポーターの上流および3’末端上の推定デヒドロゲナーゼの上流の相同領域を増幅した。これは、結果として、ctxABを含むCTXΦプロファージ全体、CTX付着部位、RS1およびTLCサテライトプロファージ、ならびにMARTX毒素遺伝子rtxABCDEを含む42,650bp断片の欠失を生じる。そのノックアウトを、プライマーTD1027/TDP1028を用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって確証した。
【0124】
次に、flaBDEオペロンを、以前、Millet et al. (2014) PLoS Pathog. 10(10): e1004405に記載されているように欠失させた。flaACオペロン欠失プラスミドを、プライマーTDP1172/1174(上流相同)およびTDP1173a/TDP1173(下流相同)を用いて構築した。その後、SXT ICEコード抗生物質抵抗性遺伝子座、dfrA、sul2、strAB、およびfloRを、プライマーTDP1193/TDP1194+TDP1195/1196(dfrA、トリメトプリム抵抗性)およびTDP1287/TDP1288+TDP1291/TDP1292(スルファメトキサゾール、ストレプトマイシン、およびクロラムフェニコール抵抗性遺伝子座)を用いて欠失させた。全ゲノムシーケンシングにより、アレル交換過程における第2のクロスオーバーは、自殺プラスミドに含まれる相同領域間で起こらず、むしろ染色体のflor/sul領域に隣接する重複配列(N900_11210とN900_11260)間で起こったことが明らかにされた。ワクチン前駆体株のSmR変異体を、ストレプトマイシン(1000μg/mL)上にプレーティングすることにより単離し、rpsLK43R SNVを、サンガーシーケンシングにより確認した。
【0125】
CtxB過剰発現について、htpGプロモーターを、Peru-15(Kenner et al. (1995) J. Infect. Dis. 172(4): 1126-9参照)からプライマーFD54/FD103を用いて、(強いリボソーム結合部位AGGAGG(配列番号6)を付加して)増幅し、ctxBを、(ctxBアレルを含有する)HaitiWTからプライマーFD33/FD34を用いて増幅した。確証された天然遺伝子座の遺伝子間領域に隣接する相同領域vc0610/N900_11550(Abel et al. (2015) Nat. Methods 12(3): 223-6参照)を、プライマーペアFD30/FD31およびFD73/FD74で増幅した。その後、これらの断片を、pCVD442へ一段階等温アセンブリー反応でクローニングした。CtxB過剰発現を、上記のAKI条件で増殖した培養物由来の無細胞上清においてウェスタンブロットにより確認した。(Abcam ab123129、抗コレラ毒素;
図7)。
【0126】
次に、hupB欠失プラスミドを、プライマーペアVc-hupB5-F1/Vc-hupB5-R1およびVC-hupB3-F1/Vc-hupB3-R1を用いて構築した。その欠失を、プライマーVC-hupB-SF2/Bc-hupB-SR2で検証した。
【0127】
cas9-sgRNAモジュールについて、cas9を、プラスミドDS_SpCas9(addgene.org/48645/)からプライマーTDP1747/TDP1748で増幅した。sgRNA領域を、gBlock「VC_3x_sgRNA_gBlock」(表4)からプライマーTDP1761/TDP1762で増幅した。両方の断片を、組み合わせて、pJL1のStuI部位(Butterton (1995) Infect Immun 63: 2689-96)へ等温アセンブリーによってクローニングした。シーケンシングにより、アセンブリー中の組換え事象が、3個のsgRNAのうちの2個を除去して、ctxAをターゲットする単一のガイドを残したことが明らかにされた。この自殺ベクターを、ワクチン株へ、ヘルパープラスミドpRK600との三親接合によって導入した。
【0128】
【0129】
【0130】
【0131】
最後に、recA欠失プラスミドを、プライマーペアVc-recA5- F1/Vc-recA5-R1およびVc-recA3-F1/Vc-recA3-R1を用いて構築した;欠失を、プライマーVc-recA-SF2/Vc-recA-SR2で検証した。
【0132】
全ゲノムシーケンシング
HaitiWTおよびHaitiV由来のゲノムDNAを、Nextera XTライブラリー調製キット(ILLUMINA)を用いて調製し、MiSeq(試薬キットv2、2×250)においてシーケンシングした。HaitiVの細菌染色体のゲノム配列は、本明細書で配列番号7および51として提供されている。HaitiV株は、10801 University Boulevard、Manassas、VA 20110、USAにあるアメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC)に2018年6月22日、ブダペスト条約の条件の下、寄託され、ATCC Patent Deposit Designation PTA-125138を付与された。各試料を、GATK3.6を用いて同定されたそれの推定ゲノムおよびバリアントへマッピングした。
【0133】
CTXΦ形質導入アッセイ
CTXΦ-IGKn(ゲノムがctxAを含むファージ(例えば、Lazar and Walder (1998) Infect. lmmun. 66: 394-7参照)またはCTX-KnΦ(ゲノムがctxAを欠損するファージ(例えば、Waldor and Mekalanos (1996) Science 272(5270): 1910-4参照)を有するコレラ菌(Vibrio cholerae)O395株(LB中、1.0のOD600まで30℃で増殖させた)由来の上清を濃縮し(およそ50倍;Ultracel-100K遠心フィルター、MILLIPORE)、濾過して(0.22μmフィルター、MILLIPORE)、無細胞ファージ上清を得た。CTXΦ感受性についてアッセイすることになっている株においてTCP(ファージ受容体)の発現を誘導するために、一晩のLB培養物を、16×150mmガラス培養チューブ中10mL AKIへ逆に1:100希釈し、振盪なしで37℃、4時間、インキュベートした。その後、培養物の1mLを除いた全部を捨て、その培養物を、37℃でさらに2時間の好気培養のために振盪機(250rpm)に移した。レシピエント培養物を、遠心分離により1回、洗浄し、ファージ上清と2:1に混合し、室温で20分間、インキュベートした。その後、段階希釈物を、LB寒天プレートおよびLB+カナマイシン(100μg/mL)寒天プレート上にプレーティングし、形質導入効率を、(CFU/mL)Kan100/(CFU/mL)LBとして計算した。
【0134】
HaitiWT-Tnライブラリーの作製
pir依存性HimarトランスポゾンベクターpSC189を有する大腸菌(E. coli)SM10λpir(Chiang and Rubin (2002) Gene 296(1-2): 179-85)を、レシピエントHaitiWTと接合させて、トランスポゾン挿入ライブラリーを作製した。各株の一晩の培養物を、37℃で好気的に増殖させ、その後、37℃で培地中、1:100希釈した。4時間の増殖後、各培養物の4mLをペレット化し、LBで1回、洗浄した。その後、培養物を1:1比で混合し、ペレット化し、800μL LB中に再懸濁した。その混合物の50μLを、LB寒天プレート上の0.45μmフィルター上へ、合計16個の接合反応として、スポットした。反応物を37℃で4時間、インキュベートし、その後、フィルターをLB(1mL/フィルター)中、ボルテックスして、付着細菌を再懸濁した。懸濁液を、245mm2 LB+Sm/Kan寒天プレート上へプレーティングして、コレラ菌(V. cholerae)接合完了体について選択した(2mL懸濁液/プレート)。細菌コロニーを数え上げるために、プレートを30℃で一晩、インキュベートした。ライブラリーは、約300,000個のコロニーからなり、それを掻爬してLB+25%グリセロール中へ入れた。OD600をおよそ10に調整し、アリコートを下流での使用のために-80℃で保存した。
【0135】
乳児ウサギ感染研究
乳児ウサギ研究を、Brigham and Women’s Hospital Committee on Animalsにより認可されたプロトコール(Institutional Animal Care and Use Committeeプロトコール番号2016N000334、Animal Welfare Assurance of Compliance番号A4752-01)により、かつ米国国立衛生研究所の実験動物の管理と使用に関する指針および米国農務省の動物福祉法における推奨に従って、行った。
【0136】
接種のための細菌を調製するために、一晩の培養物を、100mL LB中、1:100に希釈し、対数期の後期(OD600 0.5~0.9)まで37℃で通気培養した。およそ2×1010 CFUを、6,000rpmでの遠心分離によりペレット化し、上清を除去し、細胞ペレットを、10mLの2.5%炭酸水素ナトリウム溶液(100mL水中2.5g;pH 9.0)中におよそ2×109 CFU/mLの最終細胞密度に再懸濁した。同時感染研究について、およそ1×1010 CFUを、6,000rpmでの遠心分離によりペレット化し、上清を除去し、細胞ペレットを、5mL 2.5%炭酸水素ナトリウム溶液中に再懸濁し、生じた懸濁液を組み合わせて、およそ2×109 CFU/mLの細胞密度での1:1混合物を得た。HaitiWTトランスポゾンライブラリーを用いる研究について、ライブラリーの1mL凍結ストック(OD600=10)を、100mL LBへ0.1の初期OD600まで移した。その後、ライブラリーを、OD600 0.8まで37℃で通気培養し(およそ2時間)、2.5%炭酸水素ナトリウム溶液中およそ2×109 CFU/mL細胞懸濁液を上記のように調製した。ホルマリン死滅型ワクチンの調製は、以下の追加のステップを必要とした:細胞ペレットを、8mLの10%ホルマリン中に再懸濁し、ホルマリン懸濁液を、6,000rpmで遠心分離し、上清を除去し、細胞を、5体積の1×リン酸緩衝食塩水(40mL 1×PBS)中に再懸濁して、過剰なホルマリンを洗い流し、PBS懸濁液を、6,000rpmで遠心分離し、上清を除去し、細胞を、10mLの2.5%炭酸水素ナトリウム溶液中に再懸濁した。この手順は、全ての生存可能なコレラ菌(V. cholerae)を排除した。全ての実験について、最終の細胞懸濁液を、1×PBS中に段階希釈し、LB+Sm/X-Gal上に3連でプレーティングし、正確な用量を数え上げるために30℃で一晩、インキュベートした。同時感染研究について、HaitiVにおけるlacZの破壊により、HaitiWT CFUおよびHaitiV CFU、それぞれ、青色コロニーおよび白色コロニーの数え上げが可能になった。HaitiWTトランスポゾンライブラリーを用いる研究について、ライブラリー接種材料のおよそ2×1010 CFUを、LB+Sm200/Kan50上にプレーティングし、30℃で一晩、インキュベートして、その後の統計的比較に用いられるライブラリー接種材料のそれぞれの試料を作製した。
【0137】
乳児ウサギ感染を、以前に記載されているように(Ritchie et al. (2010) MBio. 1(1): e00047-10)、下記に詳述されたわずかな改変を加えて、実施した。全ての実験を、日齢1~4日のニュージーランドホワイトウサギを用いて行い、動物を、全研究の期間(評価される表現型に基づいて長さが異なる)の間、同腹仔および授乳中の母親と共に同時飼育した。動物は、Pine Acre Rabbitry(Norton、MA、USA)またはCharles River Canadaのいずれかから入手され、表現型は、両方のベンダーからの動物に渡って一致した。動物研究は常に、同腹仔間の変動の影響を最小限にするために同腹仔内の対照を用いて行われた。HaitiWTおよびHaitiVコロニー形成の最初の研究(
図4A~C)を、胃の酸性度を低下させるために塩酸ラニチジン(2μg/g体重)の腹腔内注射後、行ったが、この処理を、全てのその後の研究から省略し、それが、HaitiWTコロニー形成にもHaitiVコロニー形成にも識別可能な影響を生じなかったからである。動物に、およそ10
9 CFU(500μLの2×10
9 CFU/mL細菌懸濁液)をサイズ5のFrenchカテーテル(Arrow International、Reading、PA、USA)を用いて経口胃的に接種した。単一接種および同時接種研究のために日齢1日の動物を用いた。これらの動物を、典型的には、接種からおよそ18時間後、安楽死させた;しかしながら、HaitiVコロニー形成の縦断的研究を、日齢1日の動物に接種し、接種後およそ90時間の間、それらの状態をモニターすることにより、行った。逐次的接種研究について、日齢1日の動物に以下の3つの処置のうちの1つを接種した:「モック」 - 500μL 2.5%炭酸水素ナトリウム溶液、「死滅型ワクチン」 - ホルマリン死滅型HaitiVの2×10
9 CFU/mL懸濁液の500μL、または「生ワクチン」 - HaitiVの2×10
9 CFU/mL懸濁液の500μL。24時間後、同じ動物に、およそ10
9 CFU(曝露株:HaitiWT:
図5A、5B、6A~C;N16961:
図5C;またはHaitiTn:
図5Dおよび5Fの2×10
9 CFU/mL懸濁液の500μL)を接種した。細菌負荷量を報告する逐次的接種研究について、動物を、
図6Cを除いて、曝露からおよそ18時間後、安楽死させた。
【0138】
剖検において、腸管全体を取り出し、26-1/2ゲージ針を用いて盲腸液を抽出し、事前に計量したEppendorfチューブに移した。盲腸全体と共に、遠位小腸の2~3cm切片を、1mL無菌PBSおよび2個の3.2mmステンレススチールビーズ(BioSpec Products Inc.、Bartlesville、OK、USA)を含有する、事前に計量したホモジナイゼーションチューブ内に置き、全ての充填されたチューブの重量を計量した。盲腸から回収された液体の質量を、盲腸の質量で割り算して、液体貯留比(FAR)を得た。組織を含有するチューブを、mini-beadbeater-16(BioSpec Products Inc.、Bartlesville、OK、USA)において2分間、ホモジナイズし、1×PBS中に段階希釈し、プレーティングした。プレートを30℃で一晩、インキュベートし、観察されたコロニーの数を、適切な希釈率と対応する組織/液体試料の質量で割り算して、CFU/g組織の測定値を得た。ホモジネートを、総負荷量(すなわち、HaitiWT+HaitiV)を数え上げるためにLB+Sm200/X-Gal60上に、HaitiWT負荷量のみを数え上げるためにLB+SXT上にプレーティングした。同時接種または逐次的接種研究について、HaitiV特異的な選択マーカーがないことにより、HaitiVの負荷量がHaitiWTと同等(すなわち、100倍以内)ではない限り、HaitiV CFUの数え上げが回避された。同様に、SXTに感受性があるN16961 WT株を利用する研究について、LB+Sm200/X-Gal60上での青色コロニーの数が、WT負荷量を数え上げるのに用いられた。同時接種研究について、競争力指数を以下として計算した:
【0139】
【数1】
HaitiWTトランスポゾンライブラリーを用いる研究について、遠位小腸の末端10cmを剖検時に取得し、重量を測定し、上記のようにホモジナイズした。ホモジネートを、1×PBS中に段階希釈し、総負荷量を数え上げるためにLB+Sm200/X-Gal60上に、HaitiTnの負荷量を数え上げるためにLB+Sm200/Kan50上にプレーティングした。その後のトランスポゾン挿入の部位の分析に用いられるインビボ継代されたHaitiTnライブラリーの代表的な試料を回収するために、希釈されていない組織ホモジネートの残りの900μLを、LB+Sm200/Kan50上にプレーティングした。
【0140】
コロニー形成データは、疾患進行の研究において疾患の瀕死状態に達した動物については報告されておらず、これは、これらの研究において実質的に様々である、接種と安楽死の間の間隔が細菌負荷量に影響をする可能性が高いからである。その代わり、目に見える下痢(腹側表面の汚れ)、脱水症状(スキンテンティング)、体重減少、嗜眠(最小の動作)、および体温低下(触ってみると冷たい)の組合せにより特徴付けられる瀕死状態の評価により、動物を安楽死させた。これらの評価は、動物が死滅型ワクチンを受けたか生ワクチンを受けたかに関して盲検様式で行われた。1匹の動物が、目に見える下痢を発症することなしに瀕死状態へ進行し、そのことが
図6Aと
図6Bの試料サイズの差の説明となる。
【0141】
トランスポゾン挿入シーケンシング分析
トランスポゾン挿入ライブラリーは、大量並行シーケンシングにより特徴付けられた;以前記載されているように(Pritchard et al. (2014) PLoS Genet. 10(11): e1004782参照)、配列データを処理し、コレラ菌(V. cholerae)H1ゲノム(例えば、Bashir et al. (2012) Nat. Biotechnol. 30(7): 701-7参照)へマッピングした。より複雑度が高いライブラリー(>30,000個の固有遺伝子型)を、ARTISTパイプラインを用いて、インプットライブラリーと比較した。データを、100,000bpウィンドウのLOESS補正を用いて開始点近接について補正した。接種データセットを、Con-ARTISTの多項分布に基づいたランダムサンプリング(n=100)を用いて、腸データセットに対して独立的に正規化した。Con-ARTISTのマン-ホイットニーU関数の改変バージョンを用いて、腸データセットをそれらの100個の類似した対照データセットと比較した。平均情報部位の閾値>5|Log2(平均倍数変化)|>1、平均逆P値>100を課して、接種材料に比べて、腸データセットにおいて、対応する挿入変異体が有意に濃縮され、または枯渇している、遺伝子座を同定した。
【0142】
コレラ大発生のモデル化
以前の研究(Azman (2015) PLoS Med. 12: e1001867)から適応させた本発明者らのモデルは、
図10Aに概略的に描かれている。疾患伝播についてのパラメータは以前に発表されている(
図10B)。ワクチンロールアウトを、総集団の70%がワクチン接種されるまで、キャンペーンの期間(
図6D、11Bにおいては7日間;11Aにおいては様々である)に渡って1日あたり一定数の投薬で進行するものとしてモデル化した。キャンペーンは、症候性の症例の数(すでに感受性のある集団における総感染者の25%と推定される;Jackson et al. (2013) Am. J. Trop. Med. Hyg. 89: 654-64参照)が閾値(
図6D、11Aにおいて1,000人;
図11Bにおいては様々)を超えた時、発動された。シミュレーションに用いられる伝播速度(β)を、R
0=β/γを用いて、基本再生産数(R
0)を以前のコレラ大発生と一致した1~5の範囲内と仮定して計算した。以前のモデル化研究(Azman et al. (2013) J. Infect. 66: 432-8)と一致して、家庭内伝播研究において推定された平均感染力期間(1/γ)が想定された(Weil et al. (2009) Clin. Infect. Dis. 49: 1473-9)。感染に対する同等の効力をもつより遅効性の代替物に対して、HaitiVなどの速効性ワクチンを用いることの影響を比較するために、単一用量の受入後1日間対10日間の保護の発生までの平均時間(1/τ)が想定された。獲得率を70%、低下させるワクチン作用の「リーキーな(leaky)」モード(θ)をモデル化した。常微分方程式を、そうでなければ感受性集団における単回曝露された個体の初期条件を以て、ode45関数を用いるMATLAB R2016b(Mathworks, Natick, MA)において解いた。このモデルについて、微分方程式のシステムは以下である:
【0143】
【0144】
結果
弱毒生ワクチンとして用いる、遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌株HaitiVの作製
新しいワクチン、HaitiVを導くために9つの異なる改変を生じさせ(表5)、全ゲノムシーケンシングを用いて、変異が存在することを確認した。野生型コレラ菌(V. cholerae)およびいくつかの以前試験された生ワクチン候補(Cohen et al. (2002) Infect. Immun. 70: 1965-70; and Chen et al. (2016) Clin. Infect. Dis. 62(11): 1329-35)と同様に、単回経口投与後長期間免疫を与える可能性が高いように、腸管定着するHaitiVの能力を維持しながら、コレラワクチンの間で前例のない程度まで、バイオセーフティを保証するために、変異を企てた。HaitiVの安全性を保証するために、本発明者らは、病原体の主要な毒性因子である、コレラ毒素(CT)をコードするバクテリオファージ(CTXΦ)を除去し(Waldor and Mekalanos (1996) Science 272(5270): 1910-4)(
図1)、かつ毒素産生性復帰変異に対する厳しい妨害を施した。CTXΦの境界の欠失は、それの染色体組込みに必要な配列、加えて、多機能MARTX毒素、rtxAをコードする遺伝子(Fullner et al. (2002) J. Exp. Med. 195(11): 1455-62参照)の除去を生じる。さらに、HaitiVは、CTXΦのエピソーム維持に必要な遺伝子である、hupB(Martinez et al. (2015) PLoS Genet. 11(5): e1005256参照)を欠く。HaitiVはまた、毒素遺伝子ctxAを特異的にターゲットするCRISPR/Cas9システムをコードする。無傷ctxAを有するCTXΦは、このシステムを有するワクチンに感染することができなかったが、ctxAを欠くCTXΦバリアントは感染に対するそのような障害を示さなかった(
図3A~3C)。追加のワクチン操作は、1)コレラ菌(V. cholera)の5つのフラゲリンを欠失させることにより潜在的ワクチン反応源性を低下させるためのステップ(Rui et al. (2010) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 107(9): 4359-64参照);2)SXT組込み接合エレメント(Integrative Conjugative Element:ICE)内にある、抗生物質に対する抵抗性を与える遺伝子を移動させるワクチンの能力を排除するためのステップ(
図2);3)腸内毒素原性大腸菌(E. coli)およびコレラ菌(V. cholerae)により引き起こされる下痢性疾患からの保護を誘発し得る、CT(
図7)の無毒性Bサブユニット(Kauffman et al. (2016) MBio. 7(6): e 02021-16)をワクチンが産生するのを可能にするステップ;ならびに4)recAを欠失させて、それによりDNA組換えを行う株の能力を著しく低下させることにより、潜在的遺伝子獲得を最小限にするためのステップを含んだ。HaitiV弱毒生コレラワクチンにおける遺伝子変化は表5に要約されている。
【0145】
【0146】
HaitiVは弱毒コレラ菌(V. cholerae)細菌株である
経口胃的に接種されたHaitiVの、それが由来した野生型コレラ菌(V. cholerae)分離株(本明細書ではHaitiWTと呼ばれる)と比較しての比較研究を、乳児ウサギ(急速な死亡率を含むヒトコレラの多くの側面を再現する小動物モデル)において実施した(Ritchie et al. (2010) MBio. 1(1): e00047-10参照)。HaitiWTを接種された全ての動物は、接種後18時間目(18HPI)までに瀕死状態へ進行した。剖検において、これらの動物の盲腸は、ctxAB依存性コレラ下痢に似ていることが以前見出されている液体で満たされた(
図4A)(Ritchie et al. (2010)参照)。著しく対照的に、HaitiVを接種された同腹仔の盲腸において、18HPIまでに、微量の液体が蓄積され、または全く蓄積されなかった(
図4A)。HaitiVを接種された動物は、90HPIに及ぶ観察期間の間、コレラ様疾患を示さなかったが、稀な場合として、動物は、軽度かつ自己限定性の非コレラ性下痢を示した。HaitiVを接種された動物は、90HPIまで体重が増加し続け、HaitiV接種がその動物の健康全般または発育に有害ではないというさらなるしるしを提供した(
図4B)。
【0147】
HaitiWTまたはHaitiV接種に対する異なる応答は、その2つの株による腸管定着の間での差とは関連付けられなかった。18HPIにおいて、HaitiVまたはHaitiWTを接種された同腹仔間の遠位小腸のコレラ菌(V. cholerae)コロニー形成における有意な差はなかった(
図4C)。HaitiV負荷量は、90HPIまでに低下を示さず(
図4C)、HaitiVによる長期腸管定着が疾患を引き起こさないことを示した。HaitiVおよびHaitiWTによる腸管定着のレベルは、単一接種実験において統計的に識別できなかったが、動物にHaitiWTとHaitiVの1:1混合物を同時接種した場合、野生型株は、そのワクチン株を打ち負かした(
図4D)。HaitiVのコロニー形成は、Peru-15の近縁株(Rui et al. (2010)参照)(安全であること、および単回投与で防御免疫を与えることが見出された初期の生コレラワクチン候補)のそれに匹敵する(Cohen et al. (2002)参照);したがって、HaitiVの単回投与が、防御適応免疫を促進することが予想される。
【0148】
HaitiVの接種は、毒性コレラ菌(V. cholerae)細菌株HaitiWTに対する防御応答を誘導する
HaitiVのロバストかつ長期の腸の占有を前提として、HaitiVコロニー形成した動物が、適応免疫応答の発生前さえも、例えば、病原体の腸内適所の変化による、HaitiWTによるコロニー形成に対する抵抗性を示し得るかどうかを決定するために実験を実施した。動物を、HaitiV(生ワクチン)、ホルマリン死滅型HaitiV(死滅型ワクチン)またはバッファー対照(モック)のいずれかを接種し、その後、24時間後、致死量のHaitiWTに曝露させた。バッファーおよびホルマリン群における動物は、HaitiWT曝露後、重度のコレラ様疾患を発症し、これらの動物におけるHaitiWTの腸内負荷量は、前処置なしの動物に似ていた(
図5A、5B、および4C)。逆に、生ワクチンを受けたいずれの動物も、HaitiWT曝露から18時間以内に重篤な疾患の徴候を示さず、死滅型ワクチンを接種された動物と対比して、生ワクチンを前もって接種された動物の腸から、より低いレベルのHaitiWTが回収された(
図5B)。HaitiWT負荷量の低下は、生ワクチンを前もって接種された動物に渡って振幅が様々であり、2匹の動物においては検出限界を下回った。生ワクチンのHaitiWTコロニー形成の拮抗作用(すなわち、コロニー形成抵抗性)は、HaitiVの事前接種に依存するように思われた;逐次的というよりむしろ同時にその2つの株を接種された動物においてHaitiWTの通常の負荷量が観察された(
図4E対
図5B)。
【0149】
コロニー形成抵抗性の特異性を評価するために、コレラ菌(V. cholerae)N16961(コレラワクチン効力の研究においてヒトボランティアに投与された初期のEl Tor株)(Chen et al. (2016) Clin. Infect. Dis. 62(11): 1329-35参照)に曝露させるワクチン研究を繰り返した。重要なことには、ハイチ株およびN16961株は、独立して単離され、異なる血清型である(Chin et al. (2011) N. Engl. J. Med. 364(1): 33-42参照)。生HaitiVを接種された動物はまた、N16961 WT曝露に対してコロニー形成抵抗性を示したが、死滅型HaitiVは示さず、HaitiV媒介性コロニー形成抵抗性が株特異的でも血清型特異的でもないことを実証した(
図5C)。
【0150】
HaitiVを接種された動物におけるHaitiWT負荷量の低レベルを考慮すれば、ワクチンの腸の占有が、曝露株によるコロニー形成に必要とされる過程に干渉することが考えられる。したがって、HaitiWTがワクチン媒介性拮抗作用に抵抗し、または逃れるのを可能にする変異を同定する順遺伝学的スクリーニングを実施した。そのような変異は、HaitiVがコロニー形成抵抗性を媒介する機構に関する洞察を提供し得、特にHaitiVコロニー形成された腸において、HaitiWTに適応度優位性を与えることが予想された。前処置の非存在下(単一接種、
図5Dおよび5E)、または生ワクチンでの接種から24時間後(逐次的接種、
図5Fおよび5G)、プールされたHaitiWTトランスポゾン挿入ライブラリー(HaitiTn)に動物を曝露させた。前処置の非存在下でのHaitiTnコロニー形成は、モック処置または死滅型ワクチンを前もって接種された動物のHaitiWTコロニー形成と識別できなかった(
図5D対
図5Aおよび5B)。さらに、ワクチン前処置された動物におけるHaitiTnコロニー形成の範囲は、HaitiVおよびHaitiWTの逐次的接種で観察された、ばらつきが大きいHaitiWT負荷量を再現した(
図5F対
図5B)。
【0151】
濃縮された変異体を同定するために、遠位小腸から回収されたHaitiTn由来のトランスポゾン接合部をシーケンシングし、前処置なし(
図5)またはHaitiV接種後(
図5G)のHaitiTn曝露に供された動物における変異体存在量のゲノムワイド比較を実施した。必要な統計的検出力を保証するために、遺伝子あたり複数の独立した破壊を包含する十分に多様なHaitiTn集団によりコロニー形成された動物に分析を制限した(単一接種についてウサギr3~r6、逐次的接種についてウサギr4~r7)。注目すべきことには、ビブリオ特異的クオラムセンシング(QS)経路のコンポーネントである、cqsSおよびhapRを破壊する挿入が、前処置とは無関係に、複数の動物において濃縮された(
図5Eおよび5G、
図8A~9D)。QSが、高い細胞密度における毒性因子およびコロニー形成因子の発現を下方制御し(Rutherford and Bassler (2012) Cold Spring Harb. Perspect. Med. 2(11): pii: a012427;Zhu et al. (2002) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 99: 3129-34;Duan and March (2010) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 107: 11260-4;およびHsiao et al. (2014) Nature 515: 423-6)、この阻害に左右されないcqsSおよびhapR変異体の濃縮は、QS経路が腸におけるHaitiWT増殖を抑圧することを示唆している。対応するQS変異体の濃縮は、近縁コレラ菌(V. cholerae)分離株の類似した分析において同定されず(Kamp et al. (2013) PLoS Pathog. 9: e1003800)、QSが、バリアントEl Tor株の病変形成において異なる役割を果たし得ることを示唆している。ゲノムワイドスクリーニングは、ワクチンコロニー形成された動物において一貫的かつ特異的に濃縮されたいかなる変異体も同定することができず、単一の機能喪失変異体が、HaitiWTがワクチン媒介性拮抗作用に抵抗し、または逃れるのを可能にする可能性が低いことを示している。
【0152】
上記の実験に利用されたHaitiTnライブラリーに内在する遺伝的多様性は、HaitiV媒介性コロニー形成抵抗性が、コレラ菌(V. cholerae)がインビボで遭遇する感染ボトルネックの厳しさの変化に関連しているかどうかに関する評価を可能にした(Abel et al. (2015) Nat. Methods 12: 223-6;Abel et al. (2015) PLoS Pathog. 11: e1004823)。腸から回収されたコレラ菌(V. cholerae)は、細菌接種材料の確率論的収縮後に持続する生物体の創始集団から生じる(Abel et al. (2015) Nat. Methods 12: 223-6)。この感染ボトルネックの厳しさは、腸から回収された固有のトランスポゾン挿入変異体の数から推定することができる(Chao et al. (2016) Nat. Rev. Microbiol. 14: 119-28)。生ワクチンを前もって接種された動物のサブセットは、相対的に少数の固有の挿入変異体によってコロニー形成され、低いHaitiTn負荷量を示し(
図5F、ウサギr1~r3)、HaitiV媒介性コロニー形成抵抗性が、場合によっては、高度に制限的な感染ボトルネックと関連していることを示唆している。重要なことには、多様性が低い動物から回収された変異体において重複はなく、いくつかのHaitiV接種された動物において観察された制限的な感染ボトルネックが、確率論的であり、遺伝子型に依存しないことを示している。ワクチンがボトルネックを課すようには見えなかった動物において、コロニー形成の低下もまた観察された(
図5F、ウサギr4~7)。ワクチン拮抗作用に対して抵抗性である変異体を同定することができないことと共に、ワクチンコロニー形成された動物において観察された様々なボトルネックは、コロニー形成抵抗性の根底にある機構が複雑および/または多因子性であり得ることの可能性を浮き彫りにしている。しかしながら、ワクチンコロニー形成された動物の、曝露後のHaitiWTのより低い負荷量および重篤な疾患の欠如は、HaitiVの接種が、コレラ様疾患から保護するのに十分であり得ることを示唆している。
【0153】
HaitiVは、投与から24時間以内に毒性コレラ菌(Vibrio cholerae)株HaitiWTからの保護を誘導する
コレラ様疾患からのHaitiV依存性保護を定量化するために、乳児ウサギに、生ワクチンまたは死滅型ワクチンを接種し、24時間後、HaitiWTに曝露させ、それらの状態を評価するために定期的にモニターした。死滅型ワクチンを接種された全ての動物は、下痢を発症し(発生中央値15時間)、HaitiWT接種から29時間以内に瀕死状態へ進行した(中央値18.8時間)(
図6A)。著しく対照的に、生ワクチンを接種された動物は、下痢を発症するのが有意により遅く(中央値28.3時間;1匹の動物は目に見える下痢を発症しなかった)、致死性曝露後の生存時間(中央値>41.3時間;
図6A)および下痢発生後の生存率(対照動物における5時間に対して>13時間;
図6B)における顕著な増加を示した。さらに、生ワクチンを接種された4匹の動物は、研究が致死性曝露から40時間後に終了した時、全ての動物において検出可能なHaitiWTコロニー形成があったにも関わらず、瀕死状態に達していなかった(
図6Aおよび6C)。したがって、HaitiVは、絶対的なコロニー形成抵抗性ではない場合でさえも、疾患から保護し得る。HaitiV誘導性コロニー形成抵抗性および疾患防御の迅速性、ならびに新生仔の感染モデルにおけるこれらの表現型の観察は、ワクチン誘発性適応免疫防御と一致しない。それどころか、データは、HaitiVが、腸にコロニー形成し、かつコレラからの生存能依存性保護を媒介すること(プロバイオティクス剤の定義と一致する性質)を示している(Hill et al. (2014) Nat. Rev. Gastroenetrol. Hepatol. 11: 506-514参照)。
【0154】
HaitiVの迅速な保護がどのように受け身的ワクチン接種キャンペーンに影響し得るかを調べるために、以前発表された、感受性集団におけるコレラ大発生の数学的モデル(受け身的OCV介入について優先される流行的状況)を改変した(Azman (2015) PLoS Med. 12: e1001867; Reyburn et al. (2011) PLoS Negl. Trop. Dis. 5: e952)。数学的モデルの改変(
図10A)は、1日間(速効性ワクチン -
図5A~5G、6A、および6Bにおける観察に基づいて)または10日間(遅効性ワクチン - 死滅型OCVのいく人かのレシピエントが殺ビブリオ性力価を顕在化する場合(Matias et al. (2016) PLoS Negl. Trop. Dis. 10: e0004753))で同程度の保護を与えるワクチンの効果の算出を可能にした。異なるモデルパラメータを変化させることにより、遅効性ワクチンに対して速効性ワクチンの最大の恩恵は、最近の大発生(R0:1.5~3)および迅速なワクチン投与(
図10B、11A、および11B)と一致した伝播動態下で生じることが明らかにされた。これらのシミュレーションにより、遅効性ワクチンと比較して、同等の効力がある速効性ワクチンが、遅効性ワクチンの投与と防御免疫の出現の間の空白時間において獲得され得る感染を防止することにより、100,000人の集団においてさらなる20,000人の感染を防ぐことができる(
図6D)ことが明らかにされた。
【0155】
新しい弱毒生コレラワクチン候補、HaitiVのデザインおよび特徴づけが本明細書に提供される。上記の研究は、HaitiVが毒素産生性復帰変異に対して抵抗性であること、およびそれが、コレラ様疾患も他の悪影響も引き起こすことなく、コレラの動物モデルにコロニー形成することを示している。乳児ウサギモデルは、上記で報告された腸管定着および疾患進行研究によく適している。研究は、ウサギ新生仔のあまり特徴付けられていない腸内微生物叢および適応免疫能力(それらは、この系におけるHaitiVの作用機構および免疫原性のさらなる研究を制限する)により制限される。コレラに対する適応免疫を調べるためのロバストな動物モデルがない;以前のコレラワクチンと同様に、HaitiVにより誘発された適応免疫応答を評価することは、ヒトボランティア研究を必要とするだろう。励まされることには、HaitiVのコロニー形成が、同じモデルにおいて、Peru-15の近縁株(Rui et al. (2010) Proc. Nat’l. Acad. Sci. USA 107(9): 4359-64)(死滅型OCVにより保護されない5歳未満の子どもにおいてさえも、ヒトにおいて安全であること(Qadri (2007) Vaccine 25: 231-8)、および単回投与で保護を与えること(Cohen et al. (2002) Infect. Immun. 70: 1965-70)が見出された初期の生コレラワクチン候補)のそれと同等であった。驚くべきことに、HaitiVは、投与から24時間以内(適応免疫に一致せず、かつ既存のワクチンの中では前例のない間隔)に保護を与えることが見出された。注目すべきことには、これらの効果は、生存可能なHaitiVの使用を必要とした;ホルマリン死滅型HaitiVは、疾患からの急性保護を提供せず、迅速な保護は、死滅型OCVにより誘発される可能性が低いプロバイオティクス効果を必要とすることを示唆している。ヒト曝露研究は、OCVにより誘発される適応免疫防御を評価するための十分確立された系である(Chen et al. (2016) Clin. Infect. Dis. 62(11): 1329-35 and Cohen et al. (2002) Infect. Immun. 70: 1965-70)。追加の急性曝露(例えば、ワクチン接種後24時間以内)を組み入れることは、OCV保護の発生および持続期間を明らかにし、それにより、乳児ウサギモデルにおいて観察されたように、HaitiVまたは他のOCVが適応免疫応答前に保護を誘発するかどうかを評価するだろう。
【0156】
HaitiVの急性保護の根底にある機構は、複雑である可能性が高く、さらなる解明を必要とするが、この研究において記載された数学的モデル化により、HaitiVの迅速な保護の公衆衛生上の影響が、コレラ流行中の受け身的ワクチン接種の関連において変革の力があり得ることが示されている。対照と比べて、致死量のHaitiWTに曝露されたHaitiV接種動物は、下痢発生後、より長く生存し、より低いレベルのHaitiWTコロニー形成を示し、場合によっては、コレラから完全に保護された。HaitiV誘導性の疾患進行の遅延は、HaitiVを接種された後に病原性コレラ菌(V. cholerae)に感染する個体が、症状の発生後に救命処置を利用する、より長い時間があり得ることを示唆している。症状の発生と処置の投与の間に経過する時間は、コレラ大発生中の致死率の決定因子である場合が多く、補水療法が、事実上全ての症候性個体において死を防止するのに十分であるからである(Farmer et al. (2011) PLoS Negl. Trop. Dis. 5: e1145)。さらに、ホルマリン死滅型HaitiVによっては媒介されないが、HaitiVにより媒介されるコロニー形成抵抗性は、HaitiVの接種が、大発生を持続させる伝播経路である、毒性コレラ菌(V. cholerae)の環境への脱粒を低下させ得ることを示唆している。HaitiVの伝播への潜在的効果は、モデル化研究へ組み入れられなかったが、伝播の低下は、HaitiVが生じ得る大発生管理へのただでさえ劇的な影響を強化する可能性が高い。全体的に見て、上記研究は、適応免疫を誘発すると同時に、疾患からの迅速な保護を媒介するプロバイオティクスワクチンは、大発生管理への変革的影響をもつ、新しいクラスの治療用物質を構成し得ることを示唆している。
【0157】
[実施例2]
HaitiVは、マウスにおいて殺ビブリオ性抗体応答および抗OSP抗体を誘導する
HaitiVはマウスにおいて殺ビブリオ性抗体応答を誘導する
HaitiVの接種が、殺ビブリオ性抗体応答を誘導するかどうかを決定するために、C57BL/6およびSwiss-WebsterマウスにHaitiVか、CVD103-HgR
*と本明細書で呼ばれるコレラ菌(V. cholerae)細菌株CVD103-HgRに由来した自発性ストレプトマイシン抵抗性変異体(対照)のいずれかを接種した。CVD-103HgR(Vaxchora(商標);PaxVax,Inc.、Redwood City、CA、USA)は、成人旅行者においてコレラ菌(V. cholerae)O1により引き起こされるコレラの予防として現在、認可されている。血清殺ビブリオ性活性を、コレラ菌(V. cholerae) PIC018(Inaba血清型)またはPIC158(Ogawa血清型)の補体媒介性細胞溶解を評価するインビトロの微量希釈アッセイを用いて分析した。
図12A~12Dに示されているように、HaitiVまたはCVD103-HgR
*のいずれも初回接種から7日後、マウスから収集された血清中に、ロバストな殺ビブリオ性応答が観察された。
【0158】
HaitiVを接種されたマウスにおいて時間と共に抗OSP IgAおよびIgG力価が増加する
HaitiVの接種が、O抗原特異的多糖(OSP)に対する抗体応答を誘導するかどうかを決定するために、C57BL/6およびSwiss-Websterマウスに、HaitiVかまたはCVD103-HgR
*(対照)のいずれかを接種し、Ogawa由来かまたはInaba由来かのいずれかのOSPに対する抗OSP IgAおよび抗OSP IgG抗体の存在量を、ELISAを用いて測定した。
図13A~13Dおよび14A~14Dに示されているように、抗OSP IgAおよびIgG抗体の存在量は時間と共に増加した。HaitiVを接種されたマウスは、CVD103-HgR
*を接種されたマウスよりOgawa由来OSPに対するより顕著なIgG応答を示した。
【0159】
材料および方法
以下の材料および方法がこの実施例に用いられた。
CVD-103HgR(Vaxchora(商標);PaxVax,Inc.、Redwood City、CA、USA)のストレプトマイシン抵抗性株を作製するために、その細菌株を、5mLのLBブロスへ接種し、通気しながら(250rpm)、37℃で一晩、培養した。1mLの一晩培養物を、LB寒天+ストレプトマイシン(1000μg/mL)上にプレーティングし、37℃で一晩、インキュベートした。LB寒天+ストレプトマイシン(1000μg/mL)上に生じたコロニーは、CVD-103HgRの自発性ストレプトマイシン抵抗性変異体と考えられ、以後、CVD103-HgR*と呼ばれた。
【0160】
HaitiV免疫原性研究を、研究の期間中、BL-2動物施設において飼育された雌、無菌C57BL/6マウス(n=7、Massachusetts Host-Microbiome Center)および雌、無菌Swiss-Websterマウス(n=6、Taconic Farms)を用いて行った。HaitiVまたはCVD103-HgR*細菌を、2.5%炭酸水素ナトリウム溶液(pH9.0)中に1mLあたり1010コロニー形成単位(CFU/mL)の最終濃度に再懸濁した。マウスを、イソフルラン吸入により麻酔し、100μLの細菌懸濁液(マウスあたり109CFU)を強制経口投与した。この手順を、初回免疫化後2日目、4日目、6日目、14日目、28日目、および42日目に繰り返した。マウスを、疾患の徴候について毎日、モニターし、4~5日ごと、各免疫化前に体重測定した。各体重測定時点において糞便ペレットを入手し、ペレットを、1×リン酸緩衝食塩水(PBS)中にホモジナイズし、段階希釈溶液を、LB+ストレプトマイシン(200μg/mL)上にプレーティングして、HaitiVの糞便負荷量を数え上げた。C57BL/6コホートについて、免疫化後7日目、14日目、28日目、および42日目に、尾静脈切り込みにより血液試料を採取した。Swiss-Websterコホートについて、免疫化後1日目、7日目、14日目、28日目、および42日目に、尾静脈切り込みにより血液試料を採取した。血液を、室温で1時間、凝血させておき、13,000rpmで5分間、遠心分離し、上清(血清)を収集し、次の分析のために-20℃で保存した。
【0161】
殺ビブリオ性抗体定量化を、以前に記載されているように(Rollenhagen et al. (2009) Vaccine 27(36): 4917-22、およびTarique et al. (2012) Clin. Vaccine Immunol. 19(4): 594-60、それらのそれぞれは、参照により本明細書に組み入れられている)、コレラ菌(V. cholerae) PIC018(Inaba)またはPIC158(Ogawa)の補体媒介性細胞溶解のインビトロの微量希釈アッセイにより実施した。殺ビブリオ性応答は、血清が加えられていないウェルと比較してコレラ菌(V. cholerae)光学密度における50%低下を引き起こす力価(すなわち、血清の希釈度)として報告されている。参照により本明細書に組み入れられたAktar et al. (2016) Clin. Vaccine Immunol. 23(5): 427-35に記載されているように、InabaかまたはOgawaのいずれかのO抗原特異的多糖(OSP)に対する抗体応答を、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)により評価した。データは、各プレート上に含まれる血清の標準化プールに対する、試験試料についてのELISAシグナルの比である、正規化された応答として表されている。
【0162】
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【0163】
他の実施形態
本発明はその詳細な説明と共に記載されているが、前述の説明は、本発明を例証することを意図され、本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲の範囲により定義されることは、理解されるべきである。他の態様、利点、および改変は、以下の特許請求の範囲の範囲内である。
本発明の様々な実施形態を以下に示す。
1.(a)コレラ毒素サブユニットAをコードする核酸配列における欠失;
(b)Cas9ヌクレアーゼ分子をコードする異種性核酸配列;および
(c)ガイドRNA(gRNA)をコードする異種性核酸配列であって、前記gRNAがctxAの標的核酸配列と相補的であるターゲティングドメインを含む、異種性核酸配列を含む遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌。
2.前記コレラ毒素サブユニットAをコードする核酸配列における欠失が、前記細菌のゲノムへ組み込まれたctxA遺伝子内に位置する、上記1に記載の遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌。
3.前記細菌のゲノムへ組み込まれたCTXΦゲノムのコア領域の核酸配列における欠失を含む、上記1または2に記載の遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌。
4.前記細菌のゲノムへ組み込まれたCTXΦゲノムのRS2領域の核酸配列における欠失を含む、上記1~3のいずれかに記載の遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌。
5.前記細菌のゲノムへ組み込まれたCTXΦゲノムの完全な欠失を含む、上記1~4のいずれかに記載の遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌。
6.(a)Cas9ヌクレアーゼ分子をコードする異種性核酸配列;および
(b)ガイドRNA(gRNA)をコードする異種性核酸配列であって、前記gRNAがCTXΦの標的核酸配列と相補的であるターゲティングドメインを含む、異種性核酸配列を含む遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌。
7.前記細菌ゲノムへ組み込まれたCTXΦゲノムのコピーを事前に含んでいない、上記6に記載の遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌。
8.前記CTXΦゲノムの標的核酸配列が、rstR、rstA、rstB、psh、cep、orfU、ace、zot、ctxA、およびctxBからなる群から選択される遺伝子内に位置する、上記6または7に記載の遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌。
9.前記CTXΦゲノムの標的核酸配列が、ctxA遺伝子内に位置する、上記6~8のいずれかに記載の遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌。
10.前記gRNAが、核酸配列5’-cctgatgaaataaagcagtcgttttagagctagaaatagcaagttaaaataaggctagtccgttatcaacttgaaaaagtggcaccgagtcggtgc-3’(配列番号3)を含む、上記9に記載の遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌。
11.多機能性自己プロセシング毒素内リピート(MARTX)毒素をコードする核酸配列における欠失を含む、上記1~10のいずれかに記載の遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌。
12.前記MARTX毒素をコードする核酸配列が、rtxA、rtxB、rtxC、rtxD、およびrtxEからなる群から選択される、上記11に記載の遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌。
13.DNA結合タンパク質HU-ベータをコードする核酸配列における欠失をさらに含む、上記1~12のいずれかに記載の遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌。
14.前記DNA結合タンパク質HU-ベータをコードする核酸配列が、hupB遺伝子である、上記13に記載の遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌。
15.フラゲリンをコードする核酸における欠失をさらに含む、上記1~14のいずれかに記載の遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌。
16.前記フラゲリンをコードする核酸配列がflaA、flaB、flaC、flaD、およびFlaEからなる群から選択される、上記15に記載の遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌。
17.前記細菌が異種性核酸を含み、前記異種性核酸が、プロモーターに作動可能に連結しているコレラ毒素サブユニットBをコードする遺伝子を含む、上記1~16のいずれかに記載の遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌。
18.前記コレラ毒素サブユニットBをコードする遺伝子がctxB遺伝子である、上記17に記載の遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌。
19.前記プロモーターが誘導性プロモーターである、上記17または18に記載の遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌。
20.前記プロモーターがP
htpg
プロモーターである、上記17~19のいずれかに記載の遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌。
21.RecAタンパク質をコードする核酸配列における欠失を含む、上記1~20のいずれかに記載の遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌。
22.前記RecAタンパク質をコードする核酸配列がrecA遺伝子である、上記21に記載の遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌。
23.(a)rtxA、rtxB、rtxC、rtxD、rtxE、およびrtxHからなる群から選択されるMARTX毒素をコードする1つまたは複数の核酸配列における欠失;(b)flaA、flaB、flaC、flaD、およびFlaEからなる群から選択される1つまたは複数のフラゲリン遺伝子における欠失;
(c)recA遺伝子における欠失;ならびに
(d)前記異種性核酸が構成的プロモーターに作動可能に連結したctxB遺伝子を含む、異種性核酸
を含む遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌。
24.前記細菌のゲノムへ組み込まれたCTXΦゲノムの完全な欠失を含む、上記23に記載の遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌。
25.前記細菌ゲノムへ組み込まれたCTXΦプロファージゲノムのコピーを事前に含んでいない、上記23に記載の遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌。
26.(a)Cas9ヌクレアーゼ分子をコードする異種性核酸配列;および
(b)ガイドRNA(gRNA)をコードする異種性核酸配列であって、前記gRNAが、ctxAの標的核酸配列と相補的であるターゲティングドメインを含む、異種性核酸配列
をさらに含む、上記23に記載の遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌。
27.前記CTXΦの標的核酸配列がctxA遺伝子内に位置する、上記26に記載の遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌。
28.前記gRNAが核酸配列5’-cctgatgaaataaagcagtcgttttagagctagaaatagcaagttaaaataaggctagtccgttatcaacttgaaaaagtggcaccgagtcggtgc-3’(配列番号3)を含む、上記27に記載の遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌。
29.トリメトプリムに対する抵抗性を与える産物をコードする核酸配列、スルファメトキサゾールに対する抵抗性を与える産物をコードする核酸配列、ストレプトマイシンに対する抵抗性を与える産物をコードする核酸配列、およびクロラムフェニコールに対する抵抗性を与える産物をコードする核酸配列のうちの1つまたは複数における欠失を含む、上記1~28のいずれかに記載の遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌。
30.前記トリメトプリムに対する抵抗性を与える産物をコードする遺伝子がdfrAである、上記29に記載の遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌。
31.前記スルファメトキサゾールに対する抵抗性を与える産物をコードする遺伝子がsul2である、上記29に記載の遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌。
32.前記ストレプトマイシンに対する抵抗性を与える産物をコードする遺伝子がstrABである、上記29に記載の遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌。
33.前記クロラムフェニコールに対する抵抗性を与える産物をコードする遺伝子がfloRである、上記29に記載の遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌。
34.El Torバイオタイプに属する親株に由来する、上記1~33のいずれかに記載の遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌。
35.Haiti親株に由来する、上記1~34のいずれかに記載の遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌。
36.配列番号7の核酸配列を含む第1の細菌染色体を含む、遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌。
37.配列番号51の核酸配列を含む第2の細菌染色体を含む、上記36に記載の遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌。
38.細菌が、それの親株と比べて、ATCC寄託番号PTA-125138を有する株と同じ遺伝子における変異を有する、遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌。
39.ATCC寄託番号PTA-125138を有するコレラ菌(V. cholerae)株である、遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌。
40.上記1~39のいずれかに記載の遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌および薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的組成物。
41.対象においてコレラ菌(Vibrio cholerae)の毒性株に対する防御応答を誘導する方法であって、上記1~39のいずれかに記載の遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌、または上記40に記載の薬学的組成物を前記対象に投与して、それにより、前記対象において前記コレラ菌(Vibrio cholerae)の毒性株に対する防御応答を誘導することを含む、方法。
42.前記対象がヒト対象である、上記41に記載の方法。
43.前記防御応答が、前記遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌または前記薬学的組成物を対象へ投与してから24時間以内に誘導される、上記41または42に記載の方法。
44.(a)少なくとも1つの毒性遺伝子の欠失;
(b)Cas9ヌクレアーゼ分子をコードする異種性核酸配列;および
(c)ガイドRNA(gRNA)をコードする1つまたは複数の異種性核酸であって、前記gRNAが前記欠失した毒性遺伝子の標的核酸配列と相補的であるターゲティングドメインを含む、異種性核酸
を含む遺伝子組換え型細菌であって、前記Cas9ヌクレアーゼ分子が前記gRNAと結合して、それにより複合体を形成する能力があり、前記複合体が、前記欠失した毒性遺伝子の核酸配列をターゲットして、切断する能力がある、遺伝子組換え型細菌。
45.コレラ菌(Vibrio cholerae)、サルモネラ・エンテリカ(Salmonella enterica)、シゲラ・フレクスネリ(Shigella flexneri)、シゲラ・ソンネイ(Shigella sonnei)、志賀赤痢菌(Shigella dysenteriae)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、およびクロストリディオイデス・ディフィシル(Clostridioides difficile)からなる群から選択される種である、上記44に記載の遺伝子組換え型細菌。
46.前記毒性遺伝子が、ctxA、aroA、aroQ、aroC、aroD、htrA、ssaV、cya、crp、phoP、phoQ、guaB、guaA、clpX、clpP、set、sen、virG/icsA、luc、aroA、msbB2、stxA、stxB、ampG、dnt、tcdA、およびtcdBからなる群から選択される、上記44または45に記載の遺伝子組換え型細菌。
47.上記44~46のいずれかに記載の遺伝子組換え型細菌および薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的組成物。
48.対象においてコレラ菌(Vibrio cholerae)の毒性株に対する防御応答を誘導する方法における使用のための、上記1~39のいずれかに記載の遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌。
49.コレラ菌(Vibrio cholerae)の毒性株を有する対象を処置する方法における使用のための、上記1~39のいずれかに記載の遺伝子組換え型コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌。
【配列表】