(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】ウレタン系接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09J 175/04 20060101AFI20230221BHJP
C09J 175/12 20060101ALI20230221BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20230221BHJP
C08G 18/10 20060101ALI20230221BHJP
C08G 18/79 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
C09J175/04
C09J175/12
C09J11/06
C08G18/10
C08G18/79 010
(21)【出願番号】P 2020569459
(86)(22)【出願日】2019-12-26
(86)【国際出願番号】 JP2019051280
(87)【国際公開番号】W WO2020158289
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】P 2019013798
(32)【優先日】2019-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】321011088
【氏名又は名称】シーカ・ハマタイト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100181179
【氏名又は名称】町田 洋一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197295
【氏名又は名称】武藤 三千代
(72)【発明者】
【氏名】阿部 愛美
(72)【発明者】
【氏名】松木 裕一
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-218539(JP,A)
【文献】特開2017-82118(JP,A)
【文献】特開2014-31500(JP,A)
【文献】特開2014-25056(JP,A)
【文献】特開2010-144160(JP,A)
【文献】特開平10-259162(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
C08G 18/10
C08G 18/79
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(A)、
イソシアヌレート構造とイソシアネート基とを有するイソシアネート化合物(B)、及び、
下記式(X)で表される化合物とフェノール化合物との付加物を含有する、ウレタン系接着剤組成物。
【化1】
式(X)中、R
11、R
12は、それぞれ独立に、炭化水素基を表す。
【請求項2】
前記付加物が、前記式(X)で表される化合物1分子と前記フェノール化合物1分子との反応生成物である、請求項1に記載のウレタン系接着剤組成物。
【請求項3】
前記イソシアネート化合物(B)が、脂肪族ポリイソシアネートのイソシアヌレート体を含む、請求項1又は2に記載のウレタン系接着剤組成物。
【請求項4】
前記イソシアネート化合物(B)が、ペンタメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のウレタン系接着剤組成物。
【請求項5】
オレフィン樹脂を含む基材を接着するために使用される、請求項1~4のいずれか1項に記載のウレタン系接着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はウレタン系接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車のボディーには、軽量化の観点から、鋼板に代えて、樹脂材料(例えば、オレフィン系樹脂や繊維強化プラスチック(FRP)のマトリックス樹脂など)が使用されるようになっている。
このような樹脂材料と異種材料(例えば、ガラス)との接着には、樹脂材料をフレーム処理した後、プライマーを用いて接着させるのが一般的であった。
しかしながら、プライマーには溶剤を多量に含むため、環境に悪影響を及ぼすという問題があった。
【0003】
このような問題に対して、本出願人は、プライマーを用いずに被着体(特に、オレフィン系樹脂などの樹脂材料)に対して接着性を改善する2液硬化型ウレタン接着剤組成物を提案している。
【0004】
例えば、特許文献1には、ウレタンプレポリマー(A)、イソシアヌレート基含有ポリイソシアネート(B)、および、イソシアネートシラン(C)を含有する主剤と、
1分子中に2個以上の活性水素基を有する化合物(D)、および、式(1)で表される芳香族化合物(E)を含有する硬化剤と、を有する2液硬化型ウレタン接着剤組成物が記載されている。また、特許文献1には、上記2液硬化型ウレタン接着剤組成物が例えばロジン樹脂等の接着付与剤を更に含有できると記載されている。
【化1】
上記式(1)中、nは、1~5の整数であり、Xは、水素原子、水酸基または炭素数1~12のアルコキシ基を表す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようななか、本発明者らは特許文献1を参考にして組成物を調製しこれを評価したところ、このような組成物は、初期接着性又は接着耐久性が低い場合があることが明らかとなった。
そこで、本発明は初期接着性及び接着耐久性に優れるウレタン系接着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、組成物が、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(A)、イソシアヌレート構造とイソシアネート基とを有するイソシアネート化合物(B)、及び、所定の式で表される化合物とフェノール化合物との付加物を含有することによって、所望の効果が得られることを見出し、本発明に至った。
本発明は上記知見等に基づくものであり、具体的には以下の構成により上記課題を解決するものである。
【0008】
[1] イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(A)、
イソシアヌレート構造とイソシアネート基とを有するイソシアネート化合物(B)、及び、
下記式(X)で表される化合物とフェノール化合物との付加物を含有する、ウレタン系接着剤組成物。
【化2】
式(X)中、R
11、R
12は、それぞれ独立に、炭化水素基を表す。
[2] 上記付加物が、上記式(X)で表される化合物1分子と上記フェノール化合物1分子との反応生成物である、[1]に記載のウレタン系接着剤組成物。
[3] 上記イソシアネート化合物(B)が、脂肪族ポリイソシアネートのイソシアヌレート体を含む、[1]又は[2]に記載のウレタン系接着剤組成物。
[4] 上記イソシアネート化合物(B)が、ペンタメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体を含む、[1]~[3]のいずれかに記載のウレタン系接着剤組成物。
[5] オレフィン樹脂を含む基材を接着するために使用される、[1]~[4]のいずれかに記載のウレタン系接着剤組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明のウレタン系接着剤組成物は、初期接着性及び接着耐久性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明について以下詳細に説明する。
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートはアクリレートまたはメタクリレートを表し、(メタ)アクリロイルはアクリロイルまたはメタクリロイルを表し、(メタ)アクリルはアクリルまたはメタクリルを表す。
また、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、特に断りのない限り、各成分はその成分に該当する物質をそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。成分が2種以上の物質を含む場合、成分の含有量は、2種以上の物質の合計の含有量を意味する。
本明細書において、初期接着性及び接着耐久性のうちの少なくとも1つがより優れることを、本発明の効果がより優れるということがある。
【0011】
[ウレタン系接着剤組成物]
本発明のウレタン系接着剤組成物(本発明の組成物)は、
イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(A)、
イソシアヌレート構造とイソシアネート基とを有するイソシアネート化合物(B)、及び、
下記式(X)で表される化合物とフェノール化合物との付加物を含有する、ウレタン系接着剤組成物である。
【化3】
式(X)中、R
11、R
12は、それぞれ独立に、炭化水素基を表す。
以下、本発明の組成物に含有される各成分について詳述する。
【0012】
<ウレタンプレポリマー(A)>
本発明の組成物に含有されるウレタンプレポリマー(A)はイソシアネート基を有するウレタン系化合物である。
ウレタンプレポリマー(A)は、複数のイソシアネート基(好ましくは2個のイソシアネート基)を有することが好ましい態様の1つとして挙げられる。
ウレタンプレポリマー(A)は、イソシアネート基を分子末端に有することが好ましい。
ウレタンプレポリマー(A)としては、従来公知のものを用いることができる。例えば、ポリイソシアネート化合物と1分子中に2個以上の活性水素含有基を有する化合物(以下、「活性水素化合物」と略す。)とを、活性水素含有基に対してイソシアネート基が過剰となるように反応させることにより得られる反応生成物等を用いることができる。
本発明において、活性水素含有基は活性水素を含有する基を意味する。活性水素含有基としては例えば、ヒドロキシ基、アミノ基、イミノ基が挙げられる。
【0013】
(ポリイソシアネート化合物)
ウレタンプレポリマー(A)の製造の際に使用されるポリイソシアネート化合物は、分子内にイソシアネート基を2個以上有するものであれば特に限定されない。
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,4-フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネートのような芳香族ポリイソシアネート化合物;
ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)、トランスシクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)のような、脂肪族(上記脂肪族は、直鎖状、分岐状及び脂環式を含む概念である)ポリイソシアネート;
これらのカルボジイミド変性ポリイソシアネートが挙げられる。
【0014】
ポリイソシアネート化合物は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
これらのうち、硬化性に優れる理由から、芳香族ポリイソシアネートが好ましく、MDIがより好ましい。
【0015】
(活性水素化合物)
ウレタンプレポリマー(A)の製造の際に使用される1分子中に2個以上の活性水素含有基を有する化合物(活性水素化合物)は特に限定されない。活性水素含有基としては、例えば、水酸(OH)基、アミノ基、イミノ基が挙げられる。
【0016】
上記活性水素化合物としては、例えば、1分子中に2個以上の水酸(OH)基を有するポリオール化合物、1分子中に2個以上のアミノ基および/またはイミノ基を有するポリアミン化合物等が好適に挙げられる。中でも、ポリオール化合物であることが好ましい。
【0017】
上記ポリオール化合物は、OH基を2個以上有する化合物であれば特に限定されない。ポリオール化合物の具体例としては、ポリエーテルポリオール;ポリエステルポリオール;(メタ)アクリルポリオール;ポリブタジエンポリオール、水素添加されたポリブタジエンポリオール;低分子多価アルコール類;これらの混合ポリオールが挙げられる。なかでも、ポリエーテルポリオールが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0018】
ポリエーテルポリオールは、主鎖としてポリエーテルを有し、ヒドロキシ基を2個以上有する化合物であれば特に制限されない。ポリエーテルとは、エーテル結合を2以上有する基であり、その具体例としては、例えば、構造単位-Ra-O-Rb-を合計して2個以上有する基が挙げられる。ここで、上記構造単位中、RaおよびRbは、それぞれ独立して、炭化水素基を表す。炭化水素基は特に制限されない。例えば、炭素数1~10の直鎖状のアルキレン基が挙げられる。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリオキシエチレンジオール(ポリエチレングリコール)、ポリオキシプロピレンジオール(ポリプロピレングリコール:PPG)、ポリオキシプロピレントリオール、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド共重合体のポリオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)、ポリテトラエチレングリコール、ソルビトール系ポリオール等が挙げられる。
ポリエーテルポリオールは、ポリイソアネート化合物との相溶性に優れるという観点から、ポリプロピレングリコール、ポリオキシプロピレントリオールが好ましい。
ポリエーテルポリオールの重量平均分子量は、イソシアネート化合物との反応によって得られるウレタンプレポリマー(A)の粘度が常温において適度な流動性を有するという観点から、500~20,000であることが好ましい。本発明において上記重量平均分子量は、GPC法(溶媒:テトラヒドロフラン(THF))により得られたポリスチレン換算値である。
活性水素化合物はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0019】
ウレタンプレポリマー(A)は、接着性、硬化性に優れるという観点から、ポリエーテルポリオールと芳香族ポリイソシアネート化合物とを反応させてなるウレタンプレポリマーであることが好ましい。
ウレタンプレポリマー(A)はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0020】
ウレタンプレポリマー(A)の製造方法は特に制限されない。例えば、活性水素化合物が有する活性水素含有基(例えばヒドロキシ基)1モルに対し、1.5~2.5モルのイソシアネート基が反応するようにポリイソシアネート化合物を使用し、これらを混合して反応させることによってウレタンプレポリマー(A)を製造することができる。
ウレタンプレポリマー(A)はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
なお、上記ウレタンプレポリマー(A)は、後述するイソシアネート化合物(B)を含まない。
【0021】
(ウレタンプレポリマー(A)の含有量)
上記ウレタンプレポリマー(A)の含有量は、本発明の効果により優れるという観点から、本発明の組成物全量に対して、20~80質量%であることが好ましく、30~60質量%であることがより好ましい。
【0022】
<イソシアネート化合物(B)>
本発明の組成物に含有されるイソシアネート化合物(B)は、イソシアヌレート構造とイソシアネート基とを有する化合物である。
【0023】
<イソシアヌレート構造>
イソシアヌレート構造は、下記式(B1)で表される構造である。
上記イソシアネート化合物(B)は1分子当たり、上記イソシアヌレート構造を少なくとも1個有することができ、上記イソシアヌレート構造を1個有することが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【化4】
【0024】
<イソシアネート基>
上記イソシアネート化合物(B)は1分子当たり、イソシアネート基を少なくとも1個有することができ、イソシアネート基を複数有することが好ましく、イソシアネート基を3個以上有することがより好ましい。
【0025】
(連結基)
上記イソシアネート化合物(B)において、上記イソシアヌレート構造と上記イソシアネート基とは直接又は連結基を介して結合することができ、連結基を介して結合することが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0026】
上記連結基としては、例えば、ヘテロ原子を有してもよい炭化水素基が挙げられる。上記炭化水素基は、炭素原子及び水素原子のみで構成されていることが好ましい態様の1つとして挙げられる。
上記炭化水素基は特に制限されないが、具体的には例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらの組み合わせが挙げられる。なかでも、脂肪族炭化水素基が好ましい。
【0027】
上記脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、環状、これらの組み合わせのいずれであってもよい。上記脂肪族炭化水素基の具体例としては例えば、直鎖状または分岐状の脂肪族炭化水素基などが挙げられる。上記脂肪族炭化水素基は、本発明の効果により優れるという観点から、直鎖状の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。
上記脂肪族炭化水素基は、本発明の効果により優れるという観点から、炭素数が1~20であることが好ましく、3~10がより好ましく、4~5が更に好ましい。
上記脂肪族炭化水素基は、本発明の効果により優れるという観点から、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基であることが好ましく、ブチレン基、ペンチレン基がより好ましく、ペンチレン基が更に好ましい。
【0028】
炭化水素基が有してもよいヘテロ原子としては特に制限されないが、具体例としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)などが挙げられる。上記ヘテロ原子は別のヘテロ原子、炭素原子又は水素原子と結合して官能基を形成してもよい。
【0029】
上記イソシアネート化合物(B)は、本発明の効果により優れるという観点から、下記式(B2)で表される化合物が好ましい。
【化5】
式(B2)中、R
41、R
42、R
43は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を有してもよい炭化水素基を表す。
R
41等としてのヘテロ原子を有してもよい炭化水素基は上記と同様である。
【0030】
上記イソシアネート化合物(B)は、本発明の効果により優れるという観点から、後述する脂肪族ポリイソシアネートのイソシアヌレート体を含むことが好ましく、
ペンタメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(下記式(B2-1)で表される化合物)及び/又はヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(下記式(B2-2)で表される化合物)を含むことがより好ましく、
ペンタメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体を含むことが更に好ましい。
【0031】
【0032】
上記イソシアネート化合物(B)は、例えばポリイソシアネート化合物によって構成され得る。上記ポリイソシアネート化合物は、上記連結基にイソシアネート基が複数結合した化合物であれば特に制限されない。なかでも、脂肪族ポリイソシアネート(上記脂肪族炭化水素基にイソシアネート基が複数結合した化合物)が好ましい。
【0033】
上記脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のような脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。
上記イソシアネート化合物(B)を構成しうるポリイソシアネート化合物は、1種又は2種以上の組合わせであってもよい。
【0034】
上記イソシアネート化合物(B)は、本発明の効果(初期接着性及び接着耐久性)により優れ、粘度が低いため組成物中に添加しやすくいという理由から、上記式(B2-1)で表される化合物が好ましい。
【0035】
(イソシアネート化合物(B)の含有量)
上記イソシアネート化合物(B)の含有量は、本発明の効果(特に接着耐久性)により優れるという観点から、本発明の組成物全量に対して、0.10~10.0質量%であることが好ましく、0.50~5.0質量%であることがより好ましい。
【0036】
<付加物>
本発明の組成物に含有される付加物は、式(X)で表される化合物とフェノール化合物との付加による反応物である。
本発明において、上記付加物は、接着付与剤として機能できる。
【0037】
<式(X)で表される化合物>
本発明において、上記付加物を形成する一方の化合物は、式(X)で表される化合物である。
【化7】
式(X)中、R
11、R
12は、それぞれ独立に、炭化水素基を表す。
【0038】
<炭化水素基>
R11、R12としての炭化水素基は、特に制限されない。上記炭化水素基は、ヘテロ原子を有してもよい。炭素原子及び水素原子のみで構成されていることが好ましい態様の1つとして挙げられる。
上記炭化水素基は特に制限されないが、具体的には例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらの組み合わせが挙げられる。なかでも、脂肪族炭化水素基が好ましい。
【0039】
上記脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、環状、これらの組み合わせのいずれであってもよい。上記脂肪族炭化水素基の具体例としては例えば、直鎖状または分岐状の脂肪族炭化水素基などが挙げられる。上記脂肪族炭化水素基は、本発明の効果により優れるという観点から、直鎖状の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。
上記脂肪族炭化水素基は、本発明の効果により優れるという観点から、炭素数が1~20であることが好ましく、1~10がより好ましい。
上記脂肪族炭化水素基は、本発明の効果により優れるという観点から、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基であることが好ましく、メチル基がより好ましい。
【0040】
上記芳香族炭化水素基としては、例えば、アリール基、ナフチル基などが挙げられる。上記アリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基などの炭素数が6~18のアリール基が挙げられる。
【0041】
炭化水素基が有してもよいヘテロ原子としては特に制限されないが、具体例としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)などが挙げられる。上記ヘテロ原子は別のヘテロ原子、炭素原子又は水素原子と結合して官能基を形成してもよい。
【0042】
上記式(X)で表される化合物は、本発明の効果により優れるという観点から、カンフェンが好ましい。カンフェンは下記式(X1)で表される化合物である。
【化8】
【0043】
<フェノール化合物>
本発明において、上記付加物を形成するもう一方の化合物は、フェノール化合物である。
上記フェノール化合物は、ベンゼン環にヒドロキシ基が結合した化合物であれば特に制限されない。
【0044】
上記フェノール化合物は1分子中に、フェノール性ヒドロキシ基(ベンゼン環に直接結合したヒドロキシ基)を、1個以上有することでき、1個有することが好ましい。
上記フェノール化合物としては例えば、下記式(Y)で表される化合物が挙げられる。
【化9】
式(Y)中、R
23は置換基を表し、n2は0又は1~4を表す。
【0045】
式(Y)におけるR23としての置換基としては、例えば、炭化水素基、ヒドロキシ基が挙げられる。
n2は0又は1~4を表し、本発明の効果により優れるという観点から、0が好ましい。
【0046】
上記フェノール化合物は例えば、本発明の効果により優れるという観点から、フェノールが好ましい。
【0047】
上記付加物は、本発明の効果により優れ、臭気が少ないという観点から、上記式(X)で表される化合物1分子と上記フェノール化合物1分子との反応生成物であることが好ましい。
上記付加物は、本発明の効果により優れるという観点から、上記フェノール化合物による、フェノール性ヒドロキシ基又はフェノキシ基(いずれもベンゼン環上に更に上記置換基を有してもよい。)を有することが好ましい。
なお、上記付加物は、上記反応生成物を少なくとも含めばよい。上記付加物は、上記反応生成物以外に、更に、反応副生成物、未反応物を含んでもよい。
【0048】
上記付加物としては、例えば、下記式(Z1)~(Z3)で表される化合物が挙げられる。
【化10】
【0049】
式(Z1)中、R31、R32は、それぞれ独立に、炭化水素基を表し、R33は置換基を表し、n3は0又は1~4を表す。
【0050】
式(Z1)中、R31、R32としての炭化水素基は、式(X)のR11、R12としての炭化水素基と同様である。
R33としての置換基は、式(Y)のR23としての置換基と同様である。
n3は0又は1~4を表し、0が好ましい。
【0051】
【0052】
式(Z2)中、R41、R42は、それぞれ独立に、炭化水素基を表し、R43は置換基を表し、n4は0又は1~4を表す。
【0053】
式(Z2)中、R41、R42としての炭化水素基は、式(X)のR11、R12としての炭化水素基と同様である。
R43としての置換基は、式(Y)のR23としての置換基と同様である。
n4は0又は1~4を表し、0が好ましい。
【0054】
【0055】
式(Z3)中、R51、R52は、それぞれ独立に、炭化水素基を表し、R53は置換基を表し、n5は0又は1~4を表す。
【0056】
式(Z3)中、R51、R52としての炭化水素基は、式(X)のR11、R12としての炭化水素基と同様である。
R53としての置換基は、式(Y)のR23としての置換基と同様である。
n5は0又は1~4を表し、0が好ましい。
【0057】
上記付加物は、本発明の効果により優れ、臭気が少ないという観点から、下記式(Z1-1)で表される化合物1、式(Z1-2)で表される化合物2、式(Z2-1)で表される化合物3、式(Z2-2)で表される化合物4及び式(Z3-1)で表される化合物5からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことが好ましい。
【化13】
【0058】
(製造方法)
上記付加物の製造方法は、上記式(X)で表される化合物と上記フェノール化合物とを反応させる方法であれば特に制限されない。
上記反応における、上記式(X)で表される化合物と上記フェノール化合物との使用量は特に制限されない。
上記式(X)で表される化合物と上記フェノール化合物とを反応させる際の、上記式(X)で表される化合物と上記フェノール化合物との使用量(モル比。(X)で表される化合物:フェノール化合物)は、例えば、1:0.5~2とすることができ、1:0.8~1.2が好ましく、1:1がより好ましい。
上記式(X)で表される化合物と上記フェノール化合物とを触媒の存在下で反応させることができる。上記触媒としては、例えば、三フッ化ホウ素エーテル錯体が挙げられる。
上記式(X)で表される化合物と上記フェノール化合物とを溶媒中で反応させてもよい。上記溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエンのような芳香族系炭化水素;シクロヘキサンのような脂肪族系炭化水素;四塩化炭素のようなハロゲン化炭化水素が挙げられる。
上記式(X)で表される化合物と上記フェノール化合物とを反応させる際の反応温度は、例えば、0~100℃とできる。
【0059】
(付加物の含有量)
上記付加物の含有量は、本発明の効果により優れるという観点から、本発明の組成物全量に対して、0.05~10質量%であることが好ましく、0.1~1.0質量%であることがより好ましい。
【0060】
(イソシアネート化合物(B)/付加物の質量比)
上記付加物の含有量に対する上記イソシアネート化合物(B)の含有量の質量比(イソシアネート化合物(B):付加物の質量比)は、本発明の効果により優れるという観点から、0.1:1~50:1であることが好ましく、10:1~2:1であることがより好ましい。
【0061】
本発明の組成物は1液型又は2液型とすることができる。
(2液型の接着剤組成物)
本発明の組成物が2液型である場合、2液型の接着剤組成物は、主剤と硬化剤(広義の硬化剤)とを有することができる。
・主剤
上記主剤が、上記ウレタンプレポリマー(A)と、上記イソシアネート化合物(B)と、上記付加物とを含むことが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0062】
・硬化剤
上記(広義の)硬化剤が、1分子中に複数の活性水素含有基を有する化合物(狭義の硬化剤)を含むことができる。上記狭義の硬化剤は、上記ウレタンプレポリマー(A)と実質的に反応して接着剤組成物を硬化させる化合物を意味する。上記広義の硬化剤は、上記狭義の硬化剤を少なくとも含めばよい。
上記狭義の硬化剤としては、例えば、上記ウレタンプレポリマー(A)の製造の際に使用できる上記活性水素化合物と同様のものが挙げられる。
狭義の硬化剤は、ポリエーテルポリオール、ポリブタジエンポリオールが好ましい。
ポリエーテルポリオールは上記と同様である。
【0063】
ポリブタジエンポリオールは、ヒドロキシ基を2個以上有し、主鎖がポリブタジエン又はブタジエンの共重合体であるポリマーである。
ポリブタジエンポリオールの主鎖としては、例えば、ブタジエンホモポリマー、ブタジエンと他のモノマー成分との共重合体等が挙げられる。ブタジエンと共重合し得るモノマー成分としては、例えば、スチレン、アクリロニトリルが挙げられる。上記モノマー成分は単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
ポリブタジエンポリオールは、水素添加されていてもよい。
【0064】
ポリブタジエンポリオールが1分子中に有することができるヒドロキシ基の数は、2個以上とできる。なお、ポリブタジエンポリオールが1分子中に有することができるヒドロキシ基の数は平均値であってもよい。
上記ポリブタジエンポリオールにおいて、ヒドロキシ基が結合する位置は特に限定されないが、ヒドロキシ基が末端に結合していることが好ましい。
【0065】
上記ポリブタジエンポリオールは、室温で液状であることが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0066】
上記ポリブタジエンポリオールとしては、例えば、R45HT、R15HT(いずれも出光興産社製)等の市販品を用いることができる。
【0067】
2液型の場合、狭義の硬化剤が有する活性水素含有基(例えばヒドロキシ基)1モルに対するイソシアネート基の量が例えば1.5~2.5モルとなる量でウレタンプレポリマー(A)を使用することができる。
【0068】
(他の任意成分)
本発明の組成物は、必要に応じて本発明の目的を損なわない範囲で、充填剤(例えば、カーボンブラック、炭酸カルシウム)、ウレタンプレポリマー(A)及びイソシアネート化合物(B)以外のイソシアネート化合物、硬化触媒、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、シランカップリング剤、顔料(染料)、上記付加物以外の接着付与剤、ターピネオールのようなテルペン化合物(ただし上記付加物を除く。)、揺変性付与剤、紫外線吸収剤、難燃剤、界面活性剤(レベリング剤を含む)、分散剤、脱水剤、帯電防止剤などの各種添加剤等を更に含有することができる。
なお、上記充填剤は、例えば、脂肪酸、樹脂酸、ウレタン化合物及び脂肪酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の処理剤で表面処理されていてもよい。
また、本発明の組成物が2液型の場合、上記任意成分を主剤又は硬化剤の何れに添加するかは、適宜選択することができる。
【0069】
・カーボンブラック
本発明の組成物は、更にカーボンブラックを含有することが好ましい。
カーボンブラックは特に制限されない。例えば、SAF(Super Abrasion Furnace)、ISAF(Intermediate Super Abrasion Furnace)、HAF(High Abrasion Furnace)、FEF(Fast Extruding Furnace)、GPF(General Purpose Furnace)、SRF(Semi-Reinforcing Furnace)、FT(Fine Thermal)、MT(Medium Thermal)等が挙げられる。
具体的には、上記SAFとしてはシースト9(東海カーボン社製)、ISAFとしてはショウワブラックN220(昭和キャボット社製)、HAFとしてはシースト3(東海カーボン社製)、ニテロン#200(新日化カーボン社製)、FEFとしてはHTC#100(中部カーボン社製)等が例示される。また、GPFとしては旭#55(旭カーボン社製)、シースト5(東海カーボン社製)、SRFとしては旭#50(旭カーボン社製)、三菱#5(三菱化学社製)、FTとしては旭サーマル(旭カーボン社製)、HTC#20(中部カーボン社製)、MTとしては旭#15(旭カーボン社製)等が例示される。
【0070】
カーボンブラックの含有量は、ウレタンプレポリマー(A)100質量部に対して、30~70質量部が好ましく、40~60質量部がより好ましい。
【0071】
・炭酸カルシウム
本発明の組成物は、更に炭酸カルシウムを含有することが好ましい。
炭酸カルシウムは特に制限されない。例えば、重質炭酸カルシウム、沈降性炭酸カルシウム(軽質炭酸カルシウム)、コロイダル炭酸カルシウム等が挙げられる。
【0072】
炭酸カルシウムの含有量は、ウレタンプレポリマー(A)又は狭義の硬化剤100質量部に対して、20~150質量部が好ましく、20~120質量部がより好ましく、30~70質量部が更に好ましい。
【0073】
カーボンブラック、炭酸カルシウム以外の充填剤としては、各種形状の有機または無機の充填剤が挙げられる。具体的には、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカのようなシリカ;ケイソウ土;酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム;炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛;ろう石クレー、カオリンクレー、焼成クレー;これらの脂肪酸処理物、樹脂酸処理物、ウレタン化合物処理物、脂肪酸エステル処理物;等が挙げられる。
【0074】
・硬化触媒
上記硬化触媒は、特に限定されないが、具体的には、例えば、2-エチルヘキサン酸、オレイン酸などカルボン酸類;ポリリン酸、エチルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェートなどのリン酸類;オクチル酸ビスマスなどのビスマス触媒;ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレートなどのスズ触媒;1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(例えば、DMP-30)、ジモルフォリノジエチルエーテル構造を含む化合物などの第三級アミン触媒等が挙げられる。
【0075】
硬化触媒は、所定の接着性により優れるという点で、ジモルフォリノジエチルエーテル構造を含むことが好ましい。
ジモルフォリノジエチルエーテル構造は、ジモルフォリノジエチルエーテルを基本骨格とする構造である。
ジモルフォリノジエチルエーテル構造において、モルフォリン環が有する水素原子が置換基で置換されていてもよい。置換基は特に制限されない。例えば、アルキル基が挙げられる。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基が挙げられる。
【0076】
ジモルフォリノジエチルエーテル構造を含むアミン系触媒としては、例えば、下記式(9)で表される化合物が挙げられる。
【化14】
上記式(9)中、R
1、R
2はそれぞれ独立にアルキル基であり、m、nはそれぞれ独立に0、1又は2である。
ジモルフォリノジエチルエーテル構造を含むアミン系触媒としては、具体的には例えば、ジモルフォリノジエチルエーテル(DMDEE)、ジ(メチルモルフォリノ)ジエチルエーテル、ジ(ジメチルモルフォリノ)ジエチルエーテルが挙げられる。
硬化触媒はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0077】
硬化触媒の含有量は、ウレタンプレポリマー100質量部(A)又は狭義の硬化剤に対して、0.05~2.0質量部が好ましく、0.1~0.5質量部がより好ましい。
【0078】
・可塑剤
上記可塑剤としては、具体的には、例えば、ジイソノニルフタレート(DINP);アジピン酸ジオクチル、コハク酸イソデシル;ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル;オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル;リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル;アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
可塑剤の含有量は、ウレタンプレポリマー100質量部に対して、1~50質量部が好ましく、5~40質量部がより好ましい。
【0079】
(製造方法)
本発明の組成物が1液型である場合、その製造方法は、特に限定されず、例えば、ウレタンプレポリマー(A)と、イソシアネート化合物(B)と、上記付加物と、必要に応じて使用することができる他の任意成分とを混合する方法によって製造することができる。
【0080】
本発明の組成物が2液型の場合、その製造方法は、特に限定されず、例えば、上記主剤、上記硬化剤をそれぞれ別の容器に入れて、各容器内を窒素ガス雰囲気下で混合する方法により製造することができる。
また、2液型の使用方法としては上記主剤と上記硬化剤とを混合して使用すればよい。
【0081】
(基材)
本発明の組成物を適用することができる基材としては、例えば、プラスチック、ガラス、ゴム、金属等が挙げられる。
基材は、オレフィン樹脂を含む基材が好適に挙げられる。
オレフィン樹脂を含む基材は、オレフィン樹脂と、
例えば、炭素繊維、ガラスフィラーのようなガラス、タルク、炭酸カルシウム又はアルミナのような、充填剤との混合物から得られる基材であってもよい。
【0082】
プラスチックは、例えば、単独重合体、共重合体、水素添加物であってもよい。ゴムも同様である。
【0083】
具体的なプラスチックとしては例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレンプロピレン共重合体、COP(シクロオレフィンポリマー)、COC(シクロオレフィンコポリマー)のようなオレフィン樹脂;
ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル樹脂;
ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA樹脂);ポリカーボネート樹脂;ポリスチレン樹脂;アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂;ポリ塩化ビニル樹脂;アセテート樹脂;ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂);ポリアミド樹脂が挙げられる。
上記COCは、例えば、テトラシクロドデセンとエチレン等のオレフィンとの共重合体のようなシクロオレフィンコポリマーを意味する。
また、上記COPは、例えば、ノルボルネン類を開環重合し、水素添加して得られる重合体のようなシクロオレフィンポリマーを意味する。
プラスチックは、難接着性樹脂であってもよい。
【0084】
基材は表面処理がなされていてもよい。表面処理としては、例えば、フレーム処理、コロナ処理、イトロ処理が挙げられる。上記各表面処理の方法は特に制限されない。例えば従来公知の方法が挙げられる。
【0085】
本発明の組成物を基材に適用する方法は特に制限されない。例えば、従来公知の方法が挙げられる。
【0086】
本発明の組成物を用いる場合、基材にプライマーを用いずとも、本発明の効果を優れたレベルで発現させることができる。
【0087】
本発明の組成物は、湿気等によって硬化することができる。例えば、5~90℃、相対湿度(RH)5~95%の条件下で本発明の組成物を硬化させることができる。
【0088】
(用途)
本発明の組成物の用途としては、例えば、ダイレクトグレージング剤、自動車用シーラント、建築部材用シーラントが挙げられる。
【実施例】
【0089】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし本発明はこれらに限定されない。
【0090】
<1液型の接着剤組成物の製造>
下記第1表の主剤欄の各成分を同表に示す組成(質量部)で、撹拌機を用いて混合した。得られた混合物を1液型の接着剤組成物とした。
比較例1~3、5~7、実施例1~5、7が1液型の接着剤組成物である。
【0091】
<2液型の接着剤組成物の製造>
下記第1表の各成分を同表に示す組成(質量部)で、撹拌機を用いて混合し、各主剤、各硬化剤を製造し、2液型の接着剤組成物を得た。
次に、上記のとおり製造された主剤100gと、上記のとおり製造された硬化剤とを第1表に示す主剤/硬化剤欄に示す質量比で混合し、2液型の接着剤組成物の混合物を得た。
比較例4、実施例6が、2液型の接着剤組成物である。
【0092】
<試験体の作製>
(初期試験体)
ポリプロピレン樹脂及びガラスファイバー(GF)を含む組成物(商品名ファンクスター、日本ポリプロ社製)を用いて成形し、片面にフレーム処理を施した基材(幅:25mm、長さ:120mm、厚さ:3mm)を2枚用意した。フレーム処理後、ぬれ張力試験用混合液(和光純薬工業社製)を用いて樹脂表面の濡れ性が45.0mN/m以上であることを確認した。
次いで、一方の基材のフレーム処理を施した面に、上記の1液型の接着剤組成物又は2液型の接着剤組成物の混合物を、幅25mm、長さ10mm、厚さ5mmとなるように塗布した後、他方の基材のフレーム処理を施した面と張り合わせ、圧着させた。
使用された組成物が1液型である場合、23℃、50%RHの条件下で7日間おいて、初期試験体を作製した。
使用された組成物が2液型である場合、23℃、50%RHの条件下で3日間おいて、初期試験体を作製した。
【0093】
(水浸漬老化後試験体)
・水浸漬老化試験
各初期試験体を50℃の温水に2,000時間浸漬する水浸漬老化試験を行い、水浸漬老化後試験体を得た。
【0094】
(熱老化後試験体)
各初期試験体を90℃の条件下に2,000時間置く熱老化試験を行い、熱老化後試験体を得た。
【0095】
<評価>
上記のとおり製造された各試験体について、下記の方法により接着性を評価した。結果を第1表に示す。
(引張試験)
上記のとおり作製した、各試験体について、JIS K6850:1999に準じて引張試験(引張り速度50mm/分、20℃の環境下)を行い、各試験体の破壊状態を目視で確認し、各試験体の剪断強度(MPa)を測定した。
【0096】
・初期接着性の評価基準
上記初期接着試験体の引張試験後の破壊状態について、接着剤が凝集破壊しているものを「CF」と評価し、被着体-接着剤間で界面剥離しているものを「AF」と評価した。「CF/AF」は、凝集破壊と界面剥離とが混在していることを表す。
【0097】
・・「初期接着性に非常に優れる」
本発明において、引張試験後の初期試験体の破壊状態が「CF」かつ初期剪断強度が3MPa以上である場合を「初期接着性に非常に優れる」と評価し、これを「〇」と表示した。
【0098】
・・「初期接着性にやや優れる」
上記破壊状態が「CF」かつ初期剪断強度が3MPa未満である場合、又は
上記破壊状態が「CF/AF」かつ初期剪断強度が2MPa以上である場合を「初期接着性にやや優れる」と評価し、これを「△」と表示した。
【0099】
・・「初期接着性に劣る」
上記破壊状態が「CF/AF」かつ初期剪断強度が2MPa未満である場合、又は、上記破壊状態が「AF」である場合を、「初期接着性に劣る」と評価し、これを「×」と表示した。
【0100】
・・初期接着性の合格基準
初期試験体の評価結果が「△」以上である場合、初期接着性に優れる(合格)とする。
【0101】
・・初期試験体の剪断強度の評価基準
初期試験体の破壊状態の評価結果が同等であった場合、これらのうち剪断強度が高いほうを、初期接着性により優れるものとする。
【0102】
・接着耐久性の評価基準
引張試験後の、水浸漬老化後試験体又は熱老化後試験体の破壊状態についての「CF」、「AF」、「CF/AF」は上記初期接着試験体の引張試験後の破壊状態と同様である。
【0103】
・・「接着耐久性に最も優れる」
本発明において、水浸漬老化後試験体及び熱老化後試験体が、破壊状態が「CF」でありかつ剪断強度が3MPa以上である場合を「接着耐久性に最も優れる」と評価し、これを「◎」と表示した。
【0104】
・・「接着耐久性に非常に優れる」
水浸漬老化後試験体及び熱老化後試験体のうちのいずれか一方が、破壊状態が「CF」でありかつ剪断強度が3MPa以上であり、
残りの試験体が、破壊状態が「CF」でありかつ剪断強度3MPa未満である場合、又は残りの試験体が、破壊状態が「CF/AF」でありかつ剪断強度2MPa以上である場合を、「接着耐久性に非常に優れる」と評価し、これを「〇」と表示した。
【0105】
・・「接着耐久性にやや優れる」
(I)水浸漬老化後試験体及び熱老化後試験体が、破壊状態が「CF」でありかつ剪断強度が3MPa未満である場合、
(II)水浸漬老化後試験体及び熱老化後試験体が、破壊状態が「CF/AF」でありかつ剪断強度が2MPa以上である場合、
(III)水浸漬老化後試験体及び熱老化後試験体のうちのいずれか一方が、破壊状態が「CF」でありかつ剪断強度が3MPa以上であり、残りの試験体が破壊状態が「CF/AF」でありかつ剪断強度が2MPa未満である場合、又は
(IV)水浸漬老化後試験体及び熱老化後試験体のうちのいずれか一方が、破壊状態が「CF」でありかつ剪断強度が3MPa未満であり、残りの試験体が破壊状態が「CF/AF」でありかつ剪断強度が2MPa以上である場合を、「接着耐久性にやや優れる」と評価し、これを「△」と表示した。
【0106】
・・「接着耐久性に劣る」
(V)水浸漬老化後試験体及び熱老化後試験体のうちのいずれか一方が、破壊状態が「CF」でありかつ剪断強度が3MPa未満である、若しくは破壊状態が「CF/AF」でありかつ剪断強度が2MPa以上であり、
残りの試験体が、破壊状態が「CF/AF」でありかつ剪断強度が2MPa未満である場合、
(VI)水浸漬老化後試験体及び熱老化後試験体の両方が、破壊状態が「CF/AF」でありかつ剪断強度が2MPa未満である場合、又は、
(VII)水浸漬老化後試験体及び熱老化後試験体のうちの一方若しくは両方が、破壊状態が「AF」である場合を、「接着耐久性に劣る」と評価し、これを「×」と表示した。
【0107】
・・接着耐久性の合格基準
接着耐久性の評価結果が「△」以上である場合、接着耐久性に優れる(合格)とする。
【0108】
・・接着耐久性における剪断強度の評価基準
なお、水浸漬老化後の試験体の破壊状態の評価結果が同等であった場合、これらのうち剪断強度が高いほうが好ましい。熱老化後の試験体についても同様である。
【0109】
【0110】
第1表に示した各成分の詳細は以下のとおりである。
(主剤:1液型の接着剤組成物、又は、2液型の接着剤組成物の主剤)
・ウレタンプレポリマー1:ポリオキシプロピレンジオール(商品名サンニックスPP2000、三洋化成工業社製、重量平均分子量2,000)70質量部とポリオキシプロピレントリオール(商品名サンニックスGP3000、三洋化成工業社製、重量平均分子量3,000)とMDI(商品名スミジュール44S、住化バイエルウレタン社製)とをNCO/OH(モル比)が2.0となるように混合し、混合物を80℃の条件下で5時間反応させて製造したウレタンプレポリマー
【0111】
・イソシアネート化合物(B)1(PDIヌレート):上記式(B2-1)で表されるペンタメチレンジイソシネートのイソシアヌレート体(三井化学社製)。分子量462
・イソシアネート化合物(B)2(HDIヌレート):上記式(B2-2)で表されるヘキサメチレンジイソシネートのイソシアヌレート体(三井化学社製)。分子量504
【0112】
・(比較)イソシアネート化合物:HDIウレートジオン(ヘキサメチレンジイソシネートの2量体。4員環を有する)。デスモジュールN3400、住化コベストロウレタン社製
【0113】
・付加物:カンフェンとフェノールとの付加物。上記付加物は、下記式(Z1-1)で表される化合物1、式(Z1-2)で表される化合物2、式(Z2-1)で表される化合物3、式(Z2-2)で表される化合物4及び式(Z3-1)で表される化合物5からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む。ヤスハラケミカル社製。
【化15】
【0114】
・(比較)ロジン樹脂:パインクリスタルD6011、荒川化学社製
・(比較)没食子酸オクチル:没食子酸オクチル、コンストゥールケミカル社製
【0115】
・カーボンブラック:商品名200MP、新日化カーボン社製、HAF級カーボンブラック
・炭酸カルシウム1:重質炭酸カルシウム、商品名スーパーS、丸尾カルシウム社製
【0116】
・可塑剤1:ジイソノニルフタレート(DINP)、ジェイプラス社製
・硬化触媒1:ジモルフォリノジエチルエーテル(DMDEE)、商品名UCAT-660M、サンアプロ社製
【0117】
(2液型の接着剤組成物の硬化剤)
・ポリオール化合物1:ポリオキシプロピレントリオール、重量平均分子量1,000、商品名EXCENOL1030、旭硝子社製。狭義の硬化剤に該当する。
・ポリオール化合物2:水酸基を末端に有する液状ポリブタジエンジオール(「poly bd R-45HT」、出光興産社製)。狭義の硬化剤に該当する。室温条件下で液状である。1分子中に平均約2個のヒドロキシ基を有する。
【0118】
・テルペン化合物:ターピネオール(ヤスハラケミカル社製)
【0119】
・炭酸カルシウム2:脂肪酸で表面処理された炭酸カルシウム、カルファイン200、丸尾カルシウム社製
・硬化触媒1:ジモルフォリノジエチルエーテル(DMDEE)、商品名UCAT-660M、サンアプロ社製
【0120】
第1表に示す結果から明らかなように、イソシアネート化合物(B)及び上記付加物を含有しない、比較例1(1液型)及び比較例4(2液型)は、初期接着性及び接着耐久性が劣った。
上記付加物を含有しない比較例2(1液型)は、初期接着性が劣った。
イソシアネート化合物(B)を含有しない比較例3(1液型)は、接着耐久性が劣った。
上記付加物を含有せず、代わりにロジン樹脂を含有する比較例5(1液型)は、接着耐久性が劣った。
上記付加物を含有せず、代わりに没食子酸オクチルのようなエステルを含有する比較例6(1液型)は、接着耐久性が劣った。
イソシアネート化合物(B)を含有せず、代わりにHDIのウレートジオン(イソシアヌレート環(6員環)ではなく4員環を有する)を含有する比較例7(1液型)は、初期接着性が劣った。
【0121】
これに対して、本発明の組成物は、初期接着性、接着耐久性に優れた。
また、本発明の組成物は、プライマーレスでも、初期接着性、接着耐久性に優れた。
本発明の組成物は、特にオレフィン樹脂に対する、初期接着性、耐久接着性に優れた。
本発明の組成物は、1液型、2液型のいずれであっても、初期接着性、耐久接着性に優れた。