(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】近赤外発光材料および発光デバイス
(51)【国際特許分類】
C09K 11/80 20060101AFI20230221BHJP
H01L 33/50 20100101ALI20230221BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
C09K11/80
H01L33/50
G02B5/20
(21)【出願番号】P 2020572807
(86)(22)【出願日】2019-07-09
(86)【国際出願番号】 CN2019095239
(87)【国際公開番号】W WO2021003665
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2020-12-25
(73)【特許権者】
【識別番号】515330421
【氏名又は名称】有研稀土新材料股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】劉 栄輝
(72)【発明者】
【氏名】劉 元紅
(72)【発明者】
【氏名】陳 暁霞
(72)【発明者】
【氏名】馬 小楽
(72)【発明者】
【氏名】薛 原
(72)【発明者】
【氏名】高 ▲とん▼宇
【審査官】林 建二
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107118770(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110857389(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108148593(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103911147(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106967428(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108913135(CN,A)
【文献】XU,Ke et al.,Research and regulation of long afterglow and Photocatalytic properties of Ga2O3:Cr3+ ,A Dissertation Submitted to Guangdong University of Technology for the Degree of master,中国,2015年,pages1-65
【文献】ZAKHARKO,Ya et al.,Optical and EPR study of Cr-doped β-Ga2-xInxO3 solid solutions,FUNCTIONAL MATERIALS,Vol.10/NO.1,2003年,pages140-144
【文献】PATZKE,Greta et al.,Investigations in the β-GA2O3/In2O3 system: Crystal growth of solid solutions,SOLID STATE SCIENCES,Vol.2,2000年,pages689-699
【文献】ABDUKAYUM,Abdukader et al.,Synthesis and Photoluminescence Properties of β-Ga2O3:Cr3+ Persistent Luminescence Nanoparticles with Near-infrared Afterglow,CHEMICAL JOURNAL OF CHINESE UNIVERSITIES,Vol.37,中国,2016年,pages810-816
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/00-11/89
H01L 33/50
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
近赤外発光材料であって、該発光材料は、分子式xA
2O
3
.yIn
2O
3
.bR
2O
3の化合物を含み、前記A元素はScおよびGa元素であり、前記R元素はCr、Yb、NdまたはEr元素中の1つまたは2つであり、Crを必ず含み、かつ0.001≦x≦1、0.001≦y≦1、0.001≦b≦0.2、且
つ0.001≦b/(x+y)≦0.2であり、前記A元素中Ga元素
とSc元素のモル
比は、Ga:Sc=M:1、1≦M≦3であることを特徴とする近赤外発光材料。
【請求項2】
前記化合物は、β-Ga
2O
3と同じ結晶構造を有することを特徴とする請求項1に記載の近赤外発光材料。
【請求項3】
0.001≦y/x≦0.65であることを特徴とする請求項1または2に記載の近赤外発光材料。
【請求項4】
0.001≦y/x≦0.4であることを特徴とする請求項3に記載の近赤外発光材料。
【請求項5】
励起光源および発光材料を少なくとも含む発光デバイスであって、前記発光材料は少なくとも請求項1~4のいずれか1項に記載の近赤外発光材料を含むことを特徴とする発光デバイス。
【請求項6】
励起光源の発光ピーク波長範囲は、400~500nm、550~700nmであることを特徴とする請求項5に記載の発光デバイス。
【請求項7】
励起光源の発光ピーク波長範囲は、420~470nmであることを特徴とする請求項6に記載の発光デバイス。
【請求項8】
前記発光デバイスは、青色光LEDチップを含み、前記発光材料は、分子式La
3Si
6N
11:Ce、Y
3Al
5O
12:Ce、Ca~α~Sialon:Eu、(Y、Lu)
3(Al、Ga)
5O
12:Ce、(Sr、Ca)
2SiO
4:Eu、β-Sialon:Eu、(Ca、Sr)AlSiN
3:Eu、Sr
2Si
5N
8:Eu、(Sr、Ca)S:Eu中の1つまたは2つ以上の可視光蛍光粉末をさらに含むことを特徴とする請求項6または7に記載の発光デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施例は、発光材料の分野に関し、具体的には、赤色光・近赤外発光材料および発光デバイスに関し、特に、紫色光、青色光、赤色光の励起下で効率の高い発光を生成できる赤色光・近赤外発光の材料および該材料と他の発光材料を混合して製造された白色光および近赤外線統合発光デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、セキュリティ監視、バイオメトリクス、3Dセンシング、食品/医療検査分野での近赤外線の応用が国内外で注目を集めている。例えば、650~1050nmの広域スペクトルは、水素含有基(O―H、N―H、C―H)振動の周波数倍増および結合周波数特性情報をカバーし、食品検査の分野で広く使用され、850~1000nmおよび1400~1700nmの広域スペクトルまたはマルチスペクトルは、医療検査およびバイオメトリクスの分野に応用され得る。特に社会保障要件の継続的な改善に伴い、セキュリティ監視の分野で750~940nm波長LED近赤外線光源の需要が着実に増加している。
【0003】
現在、近赤外線LEDは主に近赤外半導体チップによって実現される。例えば、セキュリティ分野で850nmおよび940nm赤外線チップが応用され、夜間検査時の光補償やカラー表示の効果を実現するために、通常は同時に1つまたは複数の白色光LEDを追加する。該実現方法では、近赤外線LEDチップの価格が高く、複数のチップを同時にパッケージングするために、プロセスが複雑になり、コストが高く、近赤外線LED光学装置の応用および普及が制限される。
【0004】
可視光チップと近赤外発光材料を複合させた近赤外線LEDの場合、該複合パッケージングの実現方法は、作製プロセスが簡単で、コストが低く、発光効率が高いなどの利点を有し、近赤外発光材料は発光波長が豊富で、複数の近赤外用途を実現でき、様々な特定の波長と可視光発光材料を同時に複合することで白色光と近赤外線の統合を容易に実現でき、パッケージングプロセスも相対的に簡単であり、白色光補償工程で発生する複雑なパッケージングプロセスの問題を解決することができる。
【0005】
既存の公開された特許または非特許文献では、近紫外線~可視光源、特に成熟した青色光源で励起されて高強度の広域スペクトルまたはマルチスペクトル発光を生成できる赤色光・近赤外発光の材料や、単一の励起光源でパッケージング形式が簡単でありながら広域スペクトルまたはマルチスペクトル赤色光・近赤外発光を生成できるデバイスおよび単一励起光源、パッケージング形式が簡単でありながら白色光および近赤外線補償を実現できる発光デバイスはまだ見出されていない。
【0006】
従って、さまざまな光源/波長、特に青色光で励起され、高い発光強度を有し広域スペクトルまたはマルチスペクトルの近赤外線発光を生成できる材料、該材料で作製された蛍光変換型LEDデバイス、該材料で作製された白色光および赤外線統合の発光デバイスを開発する必要があり、セキュリティ監視、バイオメトリクス、3Dセンシング、食品/医療検査などの分野に応用でき、且つパッケージングコストを削減し、パッケージングプロセスを簡素化し、表示効果を高め、セキュリティ監視の分野に応用できる。
【発明の概要】
【0007】
(一)発明の目的
本発明の実施例が解決しようとする課題は、上記発光材料の欠陥である。その目的の1つは、従来の近赤外発光材料と比較すると、豊富な波長範囲(紫外線~可視光)のスペクトルで励起され広域スペクトルまたはマルチスペクトルの近赤外発光を生成できる近赤外発光材料を提供することである。さらに、本発明の実施例のもう1つの目的は、成熟したチップに基づいて白色光と近赤外線の統合を実現する発光デバイスを提供することであり、該光学装置はパッケージングプロセスが大幅に簡素化され、パッケージングコストを削減し、セキュリティ監視の新興分野での近赤外線光源の実用的な応用を達成できる。
【0008】
(二)技術的解決策
本発明の実施例の第1の態様は、近赤外発光材料を提供する。該発光材料は、分子式xA2O3
.yIn2O3
.bR2O3の化合物を含み、前記A元素はScおよび/またはGa元素であり、前記R元素はCr、Yb、NdまたはEr元素中の1つまたは2つであり、Crを必ず含み、かつ0.001≦x≦1、0.001≦y≦1、0.001≦b≦0.2、且0.001≦b/(x+y)≦0.2である。
【0009】
さらに、前記化合物は、β-Ga2O3と同じ結晶構造を有する。
【0010】
さらに、A元素はGa元素である。
【0011】
さらに、0.001≦y/x≦0.65である。
【0012】
さらに、A元素はScおよびGa元素であり、かつ0.001≦y/x≦0.65である。
【0013】
さらに、0.001≦y/x≦0.4である。
【0014】
さらに、前記A元素のGa元素およびSc元素のモル比Mは1≦M≦3である。
【0015】
本発明の実施例の第2の態様は、少なくとも励起光源および発光材料を含む発光デバイスを提供し、前記発光材料は少なくとも上記の近赤外発光材料を含む。
【0016】
さらに、励起光源の発光ピーク波長範囲は、400~500nm、550~700nm、好ましくは420~470nmである。
【0017】
さらに、前記発光デバイスは青色光LEDチップを含み、前記発光材料は、分子式La3Si6N11:Ce、Y3Al5O12:Ce、Ca~α~Sialon:Eu、(Y、Lu)3(Al、Ga)5O12:Ce、(Sr、Ca)2SiO4:Eu、β-Sialon:Eu、(Ca、Sr)AlSiN3:Eu、Sr2Si5N8:Eu、(Sr、Ca)S:Eu中の1つまたは2つ以上の可視光蛍光粉末をさらに含む。
【0018】
(三)有益な効果
本発明の実施例の上記技術的解決策は、以下の有益な技術効果を有する。
1、本発明の実施例は、紫外線~可視光で励起されて高強度の広域スペクトルまたはマルチスペクトルの近赤外発光を生成できる材料および発光デバイスを提供し、組成を変えることによってスペクトルを制御および調整でき、該発光材料は、成熟した青色光源で励起され高強度の広域スペクトルまたはマルチスペクトル発光を生成できる。
2、該発光デバイスは、LEDチップを使用して赤外発光材料および可視光発光材料を組み合わせて実現され、同じLEDチップを使用して近赤外および可視光発光を同時に実現し、パッケージングプロセスを大幅に簡素化し、パッケージングコストを削減する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施例1で得られた発光材料のX線回折パターンである。
【
図2】本発明の実施例1で得られた発光材料の発光スペクトル図である。
【
図3】本発明の実施例における発光デバイスの構造概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の目的、技術的解決策および利点をより明確にするために、具体的な実施形態と併せて図面を参照して、本発明を以下でさらに詳細に説明する。これらの説明は単なる例示であり、本発明の範囲を限定することを意図するものではないことを理解されたい。なお、以下の説明では、本発明の概念を不必要に曖昧にすることを避けるために、周知の構造および技術の説明を省略する。
【0021】
本発明の実施例の第1の態様は、近赤外発光材料を提供する。該発光材料は、分子式xA2O3
.yIn2O3
.bR2O3の化合物を含み、前記A元素はScおよび/またはGa元素であり、前記R元素はCr、Yb、NdまたはEr元素中の1つまたは2つであり、Crを必ず含み、かつ0.001≦x≦1、0.001≦y≦1、0.001≦b≦0.2、且0.001≦b/(x+y)≦0.2である。
【0022】
R元素は本発明の実施例の発光材料の発光中心として機能し、発光中心の組成が0.001~0.2の場合、本発明の実施例の発光材料は最も好ましい発光強度を有し、b/(x+y)<0.001の場合、発光中心が少なすぎるため、発光強度が低くなり、b/(x+y)>0.2の場合、発光中心の濃度が高すぎるため濃度消光が発生し、発光強度も低下する。
【0023】
好ましくは、前記のxA2O3
.yIn2O3
.bR2O3の化合物は、β-Ga2O3と同じ結晶構造を有する。Ga2O3にはα、β、γなどの5つのアロトロピック異性体があり、その中で、β-Ga2O3が最も安定しており、単斜晶系構造を有し、化学的特性が安定しており、カチオンを簡単にドープできる特徴を有する。本発明の実施例において、In2O3は遷移金属および希土類金属イオンを導入することにより、近赤外の発光を実現できる。さらに、同じグループの他の元素で置き換えることにより、スペクトルの調整・制御を実現できる。
【0024】
好ましくは、A元素はGa元素であり、Ga元素の半径はInよりも小さく、格子が収縮し、発光中心のイオンおよび酸素イオン間の結合長が短くなり、結晶場強度が強くなり、GaとInの相対含有量が変化するにつれて、発光イオンの発光スペクトルのピーク位置および強度を調整する。より好ましくは、近赤外発光材料において、0.001≦y/x≦0.65であり、この組成範囲内で、本発明の発光材料は最も好ましい発光強度を有する。
【0025】
好ましくは、A元素はGaおよびSc元素であり、0.001≦y/x≦0.65である。
【0026】
さらに好ましくは、0.001≦y/x≦0.4である。
【0027】
より好ましくは、Ga元素およびSc元素のモル比Mは1≦M≦3であり、A元素がGa元素およびSc元素の両方を含む場合、相対含有量を調整することにより、発光イオンスペクトルの位置調整および発光効率の最適化を実現できる。Mが1未満の場合、発光強度が低く、Mが3を超える場合、不純物層が発生する可能性がある。
【0028】
本発明の実施例の近赤外発光材料は、In2O3にScおよび/またはGa元素をドープし、Sc原子の半径はInより大きく、Ga原子の半径はInより小さく、Inカチオンを置換すると、In酸化物の格子を拡張または収縮して、発光中心CrイオンおよびOアニオンの結合長を変化させ、結晶場強度の変化を促進することで、Crイオンの広帯域またはマルチスペクトル発光を実現し、Scおよび/またはGaイオンの含有量が増加するにつれて、スペクトルがシフトし、広域スペクトルの発光ピーク波長は730~870nmで制御および調整でき、そのマルチスペクトル発光の最強の発光位置は1550nmである。
【0029】
従来技術と比較すると、本発明の実施例の発光材料は以下の有益な効果を有する。
【0030】
1、本発明の実施例は、紫外線~可視光で励起され、高強度広域スペクトルまたはマルチスペクトルの近赤外発光を生成できる材料および発光デバイスを提供し、組成を変えることでスペクトルの制御・調整を実現する。
2、該発光材料は、成熟した青色光源で励起され、高強度広域スペクトルまたはマルチスペクトル発光を生成でき、従来材料よりも高い発光強度を有する。
【0031】
本発明の実施例の近赤外発光材料の調製方法は以下の通りである。化学式の化学量論比に従って、A元素、In元素、R元素を含む酸化物、塩、単純物質などの原材料を正確に秤量し、上記原材料を均一に粉砕・混合した後、坩鍋に投入し、高温炉内で、空気または窒素雰囲気下で1300~1500℃で2~10時間焼結し、炉とともに室温まで冷却し、サンプルをボールミル粉砕、水洗およびふるい分けして近赤外発光材料を取得する。
【0032】
本発明の実施例の第2の態様は、励起光源と組み合わせて、本発明の実施例のいずれか1項に記載の近赤外発光材料を使用することによって発光デバイスを実現することができる発光デバイスを提供する。好ましくは、発光デバイスの励起光源の発光ピーク波長範囲は、400~500nm、550~700nm、好ましくは420~470nmである。
【0033】
好ましくは、前記発光デバイスは、青色光LEDチップおよび前記の近赤外発光材料、ならびに分子式La3Si6N11:Ce、Y3Al5O12:Ce、Ca~α~Sialon:Eu、(Y、Lu)3(Al、Ga)5O12:Ce、(Sr、Ca)2SiO4:Eu、β-Sialon:Eu、(Ca、Sr)AlSiN3:Eu、Sr2Si5N8:Eu、(Sr、Ca)S:Eu中の1つまたは2つ以上の可視光蛍光粉末を含む。
従来技術と比較すると、本発明の実施例の発光デバイスの有益な効果は以下の通りである。
【0034】
1、該発光デバイスは、LEDチップを使用して赤外発光材料および可視光発光材料を組み合わせて実現され、同じLEDチップを使用して近赤外および可視光発光を同時に実現し、パッケージングプロセスを大幅に簡素化し、パッケージングコストを削減する。
【0035】
2、該発光デバイスは、高発光効率/優れた信頼性、強い干渉防止能力、白色光補償などの特徴を有し、その広域スペクトルの発光ピーク波長は730~870nmであり、セキュリティ分野での良好な応用が期待されている。
【0036】
本発明をさらに説明するために、以下、実施例を合わせて本発明によって提供される近赤外発光材料および発光デバイスを詳細に説明する。これらの実施例は、本発明の技術的解決策を前提として実施され、本発明の特徴および利点をさらに説明するためにこの実施形態および具体的な操作手順を提示するが、本発明の特許請求の範囲を制限するものではなく、本発明の保護範囲も以下の実施例に限定されないことに留意されたい。
以下の実施例で使用されるデバイスおよび試薬はすべて市販されている。
【0037】
実施例1
化学式Ga
2O
3
.0.3In
2O
3
.0.05Cr
2O
3の化学量論比に従って、原材料Ga
2O
3、In
2O
3およびCr
2O
3を正確に秤量し、上記原材料を均一に粉砕・混合した後、坩鍋に投入し、高温炉内で、空気雰囲気下で、1450℃で8時間焼結し、炉とともに室温まで冷却し、サンプルをボールミル粉砕、水洗およびふるい分けして実施例1の
近赤外発光材料を取得した。実施例1で得られた発光材料をX線回折により分析し、
図1に示すようなX線回折パターンを得た。
【0038】
実施例1で得られた発光材料を蛍光分光計で分析し、青色光460nmで励起し発光スペクトルを取得した。該材料は青色光の励起下で
近赤外線スペクトルの広域スペクトル発光を有し、そのピーク波長は838nmである。その励起スペクトルは、
図2に示すように、838nmの発光を監視することにより得られる。該発光材料は、紫外線、紫色光、青色光および赤色光で効果的に励起され、
近赤外の広域スペクトルを放出できることが分かる。
【0039】
実施例2
化学式Ga2O3
.0.4In2O3
.0.04Cr2O3の化学量論比に従って、原材料Ga(NO3)3、In2O3およびCr2O3を正確に秤量し、上記原材料を均一に粉砕・混合した後、坩鍋に投入し、高温炉内で、空気雰囲気下で、1450℃で8時間焼結し、炉とともに室温まで冷却し、サンプルをボールミル粉砕、水洗およびふるい分けして実施例2の近赤外発光材料を取得した。
【0040】
実施例2で得られた発光材料を蛍光分光計で分析し、青色光460nmで励起し発光スペクトルを取得した。該材料は、青色光の励起下で近赤外線スペクトルの広域スペクトル発光を有し、そのピーク波長は850nmである。該発光材料は、紫色光、青色光および赤色光で効果的に励起され、近赤外の広域スペクトルを放出することができる。
【0041】
実施例3
化学式(Sc0.25Ga0.75)2O3
.0.1In2O3
.0.04Cr2O3の化学量論比に従って、原材料Ga2O3、In2O3およびCr2O3を正確に秤量し、上記原材料を均一に粉砕・混合した後、坩鍋に投入し、高温炉内で、空気雰囲気下で、1450℃で8時間焼結し、炉とともに室温まで冷却し、サンプルをボールミル粉砕、水洗およびふるい分けして実施例3の近赤外発光材料を取得した。
【0042】
実施例3で得られた発光材料を蛍光分光計で分析し、青色光460nmで励起し発光スペクトルを取得した。該材料は青色光の励起下で近赤外線スペクトルの広域スペクトル発光を有し、そのピーク波長は830nmである。該発光材料は、紫色光、青色光および赤色光で効果的に励起され、近赤外の広域スペクトルを放出することができる。
【0043】
実施例4~25に記載の近赤外発光材料について、その化合物の組成式をそれぞれ下記表1に示す。各実施例における材料の調製方法は実施例1と同じであり、各実施例における目標化合物の化学式組成に従って、適切量の化合物を混合・粉砕し、適切な焼結条件を選択して、必要とする近赤外発光材料を取得すればよい。
【0044】
各実施例における発光材料の性能を試験し、実施例1~25の460nmでの励起試験の結果の発光性能を下記表1に示す。
【0045】
【0046】
表1から分かるように、本発明の実施例の発光材料は、青色光の励起下で近赤外線の広域スペクトル発光またはマルチスペクトル発光の特性を有する。
【0047】
本発明の実施例の
近赤外発光材料を使用して発光デバイスを作製し、その構造を
図3に示す。該発光デバイスは、ベース4上に位置する半導体チップ1と、半導体チップ1の周囲に充填された接着剤および発光材料2と、半導体チップ1、接着剤および発光材料2上をカバーするプラスチックレンズ5およびピン3を含む。具体的な実施例は以下の通りである。
実施例26
【0048】
一種の発光デバイスであり、その構成要素は、波長が458nmの青色光LEDチップ、本発明の実施例の分子式Ga2O3
.0.4In2O3
.0.04Cr2O3のハイビームおよび近赤外発光材料であり、本発明の実施例の発光材料をシリカゲルに均一に混合し、さらにLEDチップに塗布して、発光デバイスを得る。
【0049】
実施例27
一種の発光デバイスであり、その構成要素は、波長が458nmの青色光LEDチップ、本発明の実施例の分子式Ga2O3
.0.4In2O3
.0.04Cr2O3のハイビームおよび近赤外発光材料、可視光発光材料はLa3Si6N11:Ce3+の黄色発光材料であり、可視光発光材料と本発明の実施例の近赤外発光材料の質量比は1:1であり、2つの発光材料をシリカゲルに均一に混合し、シリカゲル中の2つの発光材料の重量比は60%であり、さらにLEDチップに塗布して、発光デバイスを得る。
【0050】
実施例28
一種の発光デバイスであり、その構成要素は、青色光LEDチップ波長が458nmで、本発明の実施例の分子式(Sc0.25Ga0.75)2O3
.0.1In2O3
.0.04Cr2O3のハイビームおよび近赤外発光材料、可視光発光材料はLa3Si6N11:Ce3+の黄色発光材料、分子式(Ca、Sr)AlSiN3:Euの赤色発光材料であり、可視光発光材料と本発明の実施例の近赤外発光材料の質量比は1:1であり、2つの発光材料をシリカゲルに均一に混合し、シリカゲル中の2つの発光材料の重量比は70%であり、さらにLEDチップに塗布して、発光デバイスを得る。
【0051】
実施例29~38に記載の発光デバイスについて、その発光材料の構成をそれぞれ下記表2に示す。各実施例における発光デバイスの構造は実施例26~28と同じであり、各実施例における発光材料の分子式に応じて、それぞれの混合割合を選択すればよい。
【0052】
各実施例における発光デバイスの性能を試験し、実施例26~38の試験の結果の発光性能を下記表2に示す。
【0053】
【0054】
表2から分かるように、本発明の実施例の発光デバイスは、1つのブルーチップを介して可視光と近赤外線発光材料を同時に組み合わせて、白色光と近赤外線の発光の同時放出を容易に実現できる。白色光LEDおよび赤外線チップのランプビーズ組み合せのパッケージングにより白色光および赤外線の統合を実現する方式と比較すると、本発明の実施例のパッケージングデバイスパッケージング方式はより簡単で、ブルーチップのコストが赤外線チップの10分の1であるため、コストが大幅に削減される。
【0055】
以上のように、本発明の実施例は、近赤外発光材料ならびに該発光材料を含む発光デバイスを提供し、該近赤外発光材料は、分子式xA2O3
.yIn2O3
.bR2O3の化合物を含み、前記A元素はScおよび/またはGa元素であり、前記R元素はCr、Yb、NdまたはEr元素中の1つまたは2つであり、Crを必ず含み、かつ0.001≦x≦1、0.001≦y≦1、0.001≦b≦0.2、0.001≦b/(x+y)≦0.2である。該発光材料は、成熟した青色光源で励起され高強度の広域スペクトルまたはマルチスペクトル発光を生成でき、従来材料よりも高い発光強度を有し、該発光デバイスは、LEDチップを使用して赤外発光材料および可視光発光材料を組み合わせて実現され、同じLEDチップを使用して近赤外および可視光発光を同時に実現し、パッケージングプロセスを大幅に簡素化し、パッケージングコストを削減する。
【0056】
なお、本発明の上記の具体的な実施形態は、本発明の原理を例示または説明するために使用され、本発明に対する限定を構成しないことを理解されたい。したがって、本発明の精神および範囲から逸脱することなく行われた修正、等価置換、改良なども、すべて本発明の保護範囲に含まれることに理解されたい。なお、本発明の添付の特許請求の範囲は、添付の請求の範囲および境界、またはそのような範囲および境界の同等の形態に含まれるすべての変更および修正を網羅することを意図している。