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特許7231673液圧ブレーキシステムのための通信システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】液圧ブレーキシステムのための通信システム
(51)【国際特許分類】
   B60T 17/22 20060101AFI20230221BHJP
   B60T 8/88 20060101ALI20230221BHJP
   B60T 13/74 20060101ALI20230221BHJP
   B60T 8/17 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
B60T17/22
B60T8/88
B60T13/74 D
B60T13/74 G
B60T8/17 A
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021113404
(22)【出願日】2021-07-08
(62)【分割の表示】P 2019565498の分割
【原出願日】2018-03-28
(65)【公開番号】P2021167195
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2021-07-08
(31)【優先権主張番号】102017209738.8
(32)【優先日】2017-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】シュワブ,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】グラフ,ヨアヒム
(72)【発明者】
【氏名】ラントゲゼル,ユアゲン
【審査官】山本 健晴
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-522420(JP,A)
【文献】特開2009-227103(JP,A)
【文献】特開2006-222800(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0023644(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 17/22
B60T 8/88
B60T 13/74
B60T 8/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液圧ブレーキシステムのための通信システムであって、
通信バス(10)と、
前記通信バス(10)に接続された第1の制御装置(12)と、
前記通信バス(10)に接続された第2の制御装置(14)と、を有している液圧ブレーキシステムのための通信システムにおいて、
前記第1の制御装置(12)および/または前記第1の制御装置(12)により制御される第1のモータ式の装置(18)が機能性を有している限り前記第1の制御装置(12)は第1の動作モードにあり、前記第2の制御装置(14)および/または前記第2の制御装置(14)により制御される第2のモータ式の装置(20)が機能性を有している限り前記第2の制御装置(1)は第2の動作モードにあり、
第1の動作モードにある前記第1の制御装置(12)と第2の動作モードにある前記第2の制御装置(14)は互いに継続的な通信(22)をするように設計され、前記通信バス(10)に配置された少なくとも1つの別の通信ユニット(16)と継続的な通信(24)をするために第2の動作モードにある前記第2の制御装置(14)は少なくとも1つの前記別の通信ユニット(16)との継続的な通信(24)にもかかわらず前記第1の制御装置(12)との通信(22)が失陥したときに前記第1の制御装置(12)および/または前記第1のモータ式の装置(18)の少なくとも1つの機能障害を認識するように設計され、
前記第2の制御装置(14)は、前記第1の制御装置(12)との通信(22)が失陥したと判定し、かつ、少なくとも1つの前記別の通信ユニット(16)との通信(24)も失陥したと判定したときに、通信バス(10)の機能障害を認識する、
ことを特徴とする液圧ブレーキシステムのための通信システム。
【請求項2】
少なくとも1つの前記別の通信ユニット(16)と継続的に通信(26)をするために第1の動作モードにある第1の制御装置(12)は少なくとも1つの前記別の通信ユニット(16)との継続的な通信(26)にもかかわらず前記第2の制御装置(14)との通信(22)が失陥したときに前記第2の制御装置(14)および/または前記第2のモータ式の装置(20)の少なくとも1つの機能障害を前記第1の制御装置(12)によって認識するように設計され、
前記第1の制御装置(12)は、前記第2の制御装置(14)との通信(22)が失陥したと判定し、かつ、少なくとも1つの前記別の通信ユニット(16)との継続的な通信(26)も失陥したと判定したときに、通信バス(10)の機能障害を認識する、
請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記第2の制御装置(14)は、少なくとも1つの別の前記通信ユニット(16)との継続的な通信(24)にもかかわらず前記第1の制御装置(12)との通信(22)が失陥したときに、前記第1の制御装置(12)および/または前記第1のモータ式の装置(18)の動作を補償する所定の橋渡しプログラムを実行するように設計され、および/または前記第1の制御装置(12)は、少なくとも1つの前記別の通信ユニット(16)との継続的な通信(26)にもかかわらず前記第2の制御装置(14)との通信(22)が失陥したときに、前記第2の制御装置(14)および/または前記第2のモータ式の装置(20)の動作を補償する所定の橋渡しプログラムを実行するように設計される、請求項1または2に記載の通信システム。
【請求項4】
車両のための液圧ブレーキシステムにおいて、
請求項1から3のいずれか1項に記載の通信システムと、
前記第1のモータ式の装置(18)として前記第1の制御装置(12)により制御可能であり、それにより制御される電気機械式のブレーキ倍力装置(18)によってブレーキ液を前記電気機械式のブレーキ倍力装置(18)に後置された前記液圧ブレーキシステムのマスタブレーキシリンダ(30)から前記液圧ブレーキシステムの少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ(32)へ移送可能である電気機械式のブレーキ倍力装置(18)と、
前記第2のモータ式の装置(20)として前記第2の制御装置(14)により制御可能であり、それによりモータ式の液圧装置(20)によってブレーキ液を少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ(32)へ移送可能であるモータ式の液圧装置(20)とを有している液圧ブレーキシステム。
【請求項5】
少なくとも前記第1の制御装置(12)および前記電気機械式のブレーキ倍力装置(18)が機能性を有している限り、前記第1の制御装置(12)は、車両の速度自動制御装置により要求される自律的なブレーキング、車両の運転者により要求される外力ブレーキング、または運転者により要求されるブレーキ力補助に関して提供される目標ブレーキ圧生成信号(36)を考慮したうえで前記電気機械式のブレーキ倍力装置(18)を制御し、それにより前記制御される電気機械式のブレーキ倍力装置(18)によって前記目標ブレーキ圧生成信号(36)に呼応するブレーキ液容積(V)をマスタブレーキシリンダ(30)から少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ(32)へ移送可能であるように設計され、前記第2の制御装置(14)は、制御される前記モータ式の液圧装置(20)によって前記目標ブレーキ圧生成信号(36)に呼応するブレーキ液容積(V)を少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ(32)へ移送可能であるように、前記モータ式の液圧装置(20)を橋渡しプログラムとして制御するように設計される、請求項4に記載の液圧ブレーキシステム。
【請求項6】
通信システムを点検する方法において、次の各ステップを有し、
通信システムの通信バス(10)に接続されている第1の制御装置(12)および/または前記第1の制御装置(12)により制御される第1のモータ式の装置(18)が機能性を有している限り、前記第1の制御装置(12)が第1の動作モードで作動し、
前記通信バス(10)に接続されている第2の制御装置(14)および/または前記第2の制御装置(14)により制御される第2のモータ式の装置(20)が機能性を有している限り、前記第2の制御装置(14)が第2の動作モードで作動し、
第1の動作モードにある前記第1の制御装置(12)と第2の動作モードにある前記第2の制御装置(14)は互いに通信(22)を行い、第2の動作モードにある前記第2の制御装置(14)は前記通信バス(10)に配置された少なくとも1つの別の通信ユニット(16)と通信(24)を行い、
前記第2の制御装置(14)は、少なくとも1つの前記別の通信ユニット(16)との継続的な通信(24)にもかかわらず前記第1の制御装置(12)との通信(22)が失陥しているとき、前記第1の制御装置(12)および/または前記第1のモータ式の装置(18)の少なくとも1つの機能障害を断定し、
前記第2の制御装置(14)は、前記第1の制御装置(12)との通信(22)が失陥したと判定し、かつ、少なくとも1つの前記別の通信ユニット(16)との通信(24)も失陥したと判定したときに、通信バス(10)の機能障害を認識する、
通信システムを点検する方法。
【請求項7】
第1の動作モードにある前記第1の制御装置(12)が少なくとも1つの別の通信ユニット(16)と通信(26)を行い、少なくとも1つの前記別の通信ユニット(16)との継続的な通信(26)にもかかわらず前記第2の制御装置(14)との通信(22)が失陥しているとき、前記第2の制御装置(14)および/または前記第2のモータ式の装置(20)の少なくとも1つの機能障害を断定し、
前記第1の制御装置(12)は、前記第2の制御装置(14)との通信(22)が失陥したと判定し、かつ、少なくとも1つの前記別の通信ユニット(16)との継続的な通信(26)も失陥したと判定したときに、通信バス(10)の機能障害を認識する、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の制御装置(14)は、少なくとも1つの前記別の通信ユニット(16)との継続的な通信(24)にもかかわらず前記第1の制御装置(12)との通信(22)が失陥しているときに、前記第1の制御装置(12)および/または前記第1のモータ式の装置(18)の動作を補償する所定の橋渡しプログラムを実行し、および/または前記第1の制御装置(12)は、少なくとも1つの前記別の通信ユニット(16)との継続的な通信(26)にもかかわらず前記第2の制御装置(14)との通信(22)が失陥しているときに、前記第2の制御装置(14)および/または前記第2のモータ式の装置(20)の動作を補償する所定の橋渡しプログラムを実行する、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
車両の液圧ブレーキシステムを作動させる方法において、次のステップを有し、
請求項6から8のいずれか1項に記載の方法に基づいて前記液圧ブレーキシステムの通信システムが点検され、該液圧ブレーキシステムは、
前記液圧ブレーキシステムの電気機械式のブレーキ倍力装置(18)を第1のモータ式の装置(18)として制御するための第1の制御装置(12)を有し、それにより制御される前記電気機械式のブレーキ倍力装置(18)によってブレーキ液が前記電気機械式のブレーキ倍力装置(18)に後置された前記液圧ブレーキシステムのマスタブレーキシリンダ(30)から前記液圧ブレーキシステムの少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ(32)へ移送され、および、
前記液圧ブレーキシステムの少なくとも1つのモータ式の液圧装置(20)を第2のモータ式の装置(20)として制御するための第2の制御装置(14)を有し、それにより制御される前記モータ式の液圧装置(20)によってブレーキ液が少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ(32)へ移送される、車両の液圧ブレーキシステムを作動させる方法。
【請求項10】
少なくとも1つの前記第1の制御装置(12)と前記電気機械式のブレーキ倍力装置(18)が機能性を有している限り、前記第1の制御装置(12)は、車両の速度自動制御装置により要求される自律的なブレーキング、車両の運転者により要求される外力ブレーキング、または運転者により要求されるブレーキ力補助に関して提供される目標ブレーキ圧生成信号(36)を考慮したうえで前記電気機械式のブレーキ倍力装置(18)を制御するように作動化され、それにより制御される前記電気機械式のブレーキ倍力装置(18)によって前記目標ブレーキ圧生成信号(36)に呼応するブレーキ液容積(V)がマスタブレーキシリンダ(30)から少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ(32)へ移送され(S10)、前記第2の制御装置(14)が橋渡しプログラムとして前記モータ式の液圧装置(20)を制御し、それにより制御される前記モータ式の液圧装置(20)によって前記目標ブレーキ圧生成信号(36)に呼応するブレーキ液容積(V)が少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ(32)へ移送される(S11)、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液圧ブレーキシステムのための通信システムに関し、および、車両のための液圧ブレーキシステムに関する。同様に本発明は、通信システムを点検する方法に関する。さらに本発明は、車両の液圧ブレーキシステムを作動させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ブレーキ倍力装置の制御のために利用される制御装置と、液圧システムの制御のために利用される制御器具とで構成される、ブレーキシステムの通信システムが記載されている。制御装置は信号伝送装置を介して、制御装置と制御器具との間で双方向/二者間の通信が可能であるように、制御器具と接続される。制御器具、液圧システム、および/または信号伝送装置に少なくとも1つの機能障害が生じていることを制御装置が認識すると、ただちに制御装置はブレーキ倍力装置の自律的な作動化のために、ブレーキ倍力装置によってブレーキシステムの少なくとも1つのホイールブレーキシリンダでのブレーキ圧生成を惹起可能であるように設計される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】ドイツ特許出願公開第102015204757A1号明細書
【発明の概要】
【0004】
本発明は、請求項1の構成要件を有する液圧ブレーキシステムのための通信システム、請求項4の構成要件を有する車両のための液圧ブレーキシステム、請求項6の構成要件を有する通信システムを点検する方法、および請求項9の構成要件を有する車両の液圧ブレーキシステムを作動させる方法を提供する。
【0005】
本発明は、通信システムの点検をするため、および、第1のエラー状態「通信バスの機能性があるときの第1の制御装置および/または第1のモータ式の装置の少なくとも1つの機能障害(場合により機能失陥)」と、第2のエラー状態「通信バスの少なくとも1つの機能障害(場合により機能失陥)」とを区別するための手段を提供する。それに伴い、通信バスのみの機能障害/機能失陥に対してすでに、通信バスに接続されている第1の制御装置および/または第1のモータ式の装置が(も)失陥しているかのように対応するという従来の必要性がなくなる。このように本発明を活用することは、そのつど最新に生じているエラー状態に対する的確な対応を可能にする。的確な対応によって、最新のエラー状態に対して改善された対応をすることができる。
【0006】
通信システムの好ましい実施形態では、少なくとも1つの別の通信ユニットと継続的に通信をするために第1の動作モードにある第1の制御装置は、少なくとも1つの別の通信ユニットとの継続的な通信にもかかわらず第2の通信装置との通信が失陥したときに、第2の制御装置および/または第2のモータ式の装置の少なくとも1つの機能障害を第1の制御装置によって認識可能であるように設計される。このように、通信システムのこの実施形態では、第2の制御装置および/または第2のモータ式の装置の機能失陥と、通信バスの機能失陥との間でも区別をすることができる。
【0007】
通信システムの別の好ましい実施形態では、第2の制御装置は、少なくとも1つの別の通信ユニットとの継続的な通信にもかかわらず第1の制御装置との通信が失陥したときに所定の橋渡しプログラムを実行するように設計される。それに伴って、第1の制御装置および/または第1のモータ式の装置の機能障害(ないし機能失陥)を橋渡し可能である。その代替または補足として第1の制御装置は、少なくとも1つの別の通信ユニットとの継続的な通信にもかかわらず第2の制御装置との通信が失陥したときに、別の所定の橋渡しプログラムを実行するように設計されていてもよい。このように、第2の制御装置および/または第2のモータ式の装置の機能障害(ないし機能失陥)も、第1の制御装置(および制御される第1のモータ式の装置)の橋渡しプログラムによって橋渡しされる。
【0008】
本発明は、このような種類の通信システムと、制御される電気機械式のブレーキ倍力装置によってブレーキ液を電気機械式のブレーキ倍力装置に後置された液圧ブレーキシステムのマスタブレーキシリンダから液圧ブレーキシステムの少なくとも1つのホイールブレーキシリンダへと移送可能であるように第1の制御装置によって第1のモータ式の装置として制御可能である電気機械式のブレーキ倍力装置と、モータ式の液圧装置によってブレーキ液を少なくとも1つのホイールブレーキシリンダへ移送可能であるように第2の制御装置によって第2のモータ式の装置として制御可能であるモータ式の液圧装置とを有する、車両のための液圧ブレーキシステムも提供する。このような種類のブレーキシステムでは(上に説明した従来技術とは異なり)、第1のエラー状態「通信バスの機能性があるときの第1の制御装置および/または第1のモータ式の装置の少なくとも1つの機能障害(場合により機能失陥)」と第2のエラー状態「通信バスの少なくとも1つの機能障害(場合により機能失陥)」との間で少なくとも区別をすることができるので、そのつど生じているエラー状態に対していっそう的確に対応することができる。上に説明した従来技術では、通信バスの機能失陥がすでにブレーキ倍力装置の自律的な作動を引き起こすが、それは、作動化されたブレーキ倍力装置による少なくとも1つのホイールブレーキシリンダでのブレーキ圧生成の自律的な惹起が必要であることがまだ明確に認識されていないにもかかわらずである。このような欠点が、ここに記載されている液圧ブレーキシステムでは取り除かれる。
【0009】
たとえば液圧ブレーキシステムは、少なくとも第1の制御装置および電気機械式のブレーキ倍力装置が機能性を有している限り、第1の制御装置が、車両の速度自動制御装置により要求される自律的なブレーキング、車両の運転者により要求される外力ブレーキング、または運転者により要求されるブレーキ力補助に関して提供される目標ブレーキ圧生成信号を考慮したうえで電気機械式のブレーキ倍力装置を制御するように設計され、それにより制御される電気機械式のブレーキ倍力装置によって目標ブレーキ圧生成信号に呼応するブレーキ液容積をマスタブレーキシリンダから少なくとも1つのホイールブレーキシリンダへ移送可能であるように設計されていてよく、第2の制御装置は、制御されるモータ式の液圧装置によって目標ブレーキ圧生成信号に呼応するブレーキ液容積を少なくとも1つのホイールブレーキシリンダへ移送可能であるように、モータ式の液圧装置を橋渡しプログラムとして制御するように設計される。このようにモータ式の液圧装置は、第1の制御装置および/または電気機械式のブレーキ倍力装置の機能失陥が確実に確認されている場合にのみ、機能失陥の橋渡しのために的確に利用される。
【0010】
別案として液圧ブレーキシステムは、少なくとも第2の制御装置およびモータ式の液圧装置が機能性を有している限り、第2の制御装置が、車両の速度自動制御装置により要求される自律的なブレーキング、車両の運転者により要求される外力ブレーキング、または運転者により要求されるブレーキ力補助に関して提供される目標ブレーキ圧生成信号を考慮したうえでモータ式の液圧装置を制御するように設計され、それにより制御されるモータ式の液圧装置によって目標ブレーキ圧生成信号に呼応するブレーキ液容積を少なくとも1つのホイールブレーキシリンダへ移送可能であるように構成されていてもよく、第1の制御装置は、制御される電気機械式のブレーキ倍力装置によって目標ブレーキ圧生成信号に呼応するブレーキ液容積をマスタブレーキシリンダから少なくとも1つのホイールブレーキシリンダへ移送可能であるように、電気機械式のブレーキ倍力装置を橋渡しプログラムとして制御するように設計される。それに伴い、液圧ブレーキシステムのこの実施形態では、第2の制御装置および/またはモータ式の液圧装置の機能失陥が確実に認識されている場合にのみ、電気機械式のブレーキ倍力装置が機能失陥の橋渡しのために利用されることが保証される。
【0011】
通信システムを点検するための対応する方法の実施も、すでに上で説明した利点をもたらす。指摘しておくと、通信システムを点検する方法は、通信システムの上に説明した実施形態に基づいて発展形にすることが可能である。
【0012】
さらに、車両の液圧ブレーキシステムを作動させるための対応する方法の実施も、すでに上で説明した利点をもたらす。車両の液圧ブレーキシステムを作動させる方法も、通信システムおよび/または液圧ブレーキシステムの上に説明した実施形態に基づいて発展形にすることが可能である。
【0013】
本発明のその他の構成要件や利点については、以下に図面を参照しながら説明する。図面は次のものを示す:
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】通信システムないしこれを装備する液圧ブレーキシステムの実施形態を示す模式図である。
図2】通信システムの点検をする方法の実施形態を説明するためのフローチャートである。
図3】車両の液圧ブレーキシステムを作動させる方法の実施形態を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、通信システムないしこれを装備する液圧ブレーキシステムの実施形態の模式図を示している。
【0016】
図1に模式的に示す通信システムは、通信バス10と、通信バス10に接続された第1の制御装置12と、通信バス10に接続された第2の制御装置14とを含んでいる。通信バス10の構成可能性は、特定のバストポロジーだけに限定されるものではない。たとえば、通信バス10のバストポロジーが星形または線形であってよい。
【0017】
通信バス10には、少なくとも1つの(別の)通信ユニット16も配置/接続されている。指摘しておくと、少なくとも1つの別の通信ユニット16には、第1の制御装置12も第2の制御装置14も該当しない。ただし少なくとも1つの通信ユニットとは、それぞれ多数の異なる通信加入者からなるユニットであると理解することができる。少なくとも1つの通信ユニットの構成可能性は、たとえば通信ノードなどの特定の型式だけに限定されるものではない。
【0018】
第1の制御装置12は、第1の制御装置12により制御される第1のモータ式の装置18のサブユニットであってよい。ただし別案として第1の制御装置12は、第1の制御装置12により制御される第1のモータ式の装置18とは別に配置可能/配置されていてもよい。第1の制御装置12および/または第1の制御装置12により制御される第1のモータ式の装置18が機能性を有している限り、第1の制御装置12は第1の動作モード(たとえば完全に機能性のある動作モード)にある。
【0019】
第2の制御装置14は、第2の制御装置14により制御される第2のモータ式の装置20のサブユニットであってよい。ただし第2の制御装置14が(独自のコンポーネントとして)、第2の制御装置14により制御される第2のモータ式の装置20とは別に配置可能である、/配置されている、第2の制御装置14の構成も可能である。さらに、第2の制御装置14および/または第2の制御装置14により制御される第2のモータ式の装置20が機能性を有している限り、第2の制御装置14は第2の動作モード(たとえば完全に機能性のある動作モード)にある。
【0020】
第1の動作モードにある第1の制御装置12と、第2の動作モードにある第2の制御装置14は、互いに継続的に通信22をするために設計されている。このことは、第1の動作モードにある第1の制御装置12と第2の動作モードにある第2の制御装置14が継続的な通信22を互いに継続すると言い換えることもできる。第2の動作モードにある第2の制御装置14と、第1の動作モードにある第1の制御装置12の、通信バス10に配置された少なくとも1つの別の通信ユニット16の継続的な通信22とは、メッセージ信号および/または応答信号の送信および受信(ないし交換)であると理解される。たとえば第1の動作モードにある第1の制御装置12と第2の動作モードにある第2の制御装置14は、継続的に(特に所定の反復頻度をもって)メッセージ信号を互いに送信することができる。別案として、両方の制御装置12および14のうちの一方は、連続して(特に所与のポーリング頻度で)両方の制御装置12および14のうちの他方に照会信号を送信し、これに対して、両方の制御装置12および14のうちの他方が応答信号の即座の送信をもって反応するように設計されていてもよい。このように、第1の動作モードにある第1の制御装置12と、第2の動作モードにある第2の制御装置14との間の周期的な通信22、または恒常的な通信22という表現を使うこともできる。
【0021】
さらに、第2の動作モードにある第2の制御装置14は、通信バス10に配置された少なくとも1つの別の通信ユニット16と継続的に通信24するために設計されている。このように、第2の動作モードにある第2の制御装置14と少なくとも1つの通信ユニット16は互いに継続的な通信24を行う。少なくとも1つの別の通信ユニット16と第2の動作モードにある第2の制御装置14との継続的な通信24も、メッセージ信号および/または応答信号の送信および受信(ないし交換)であると理解することができる。たとえば第2の動作モードにある第2の制御装置14と少なくとも1つの通信装置16は、継続的に(特に所定の反復頻度をもって)メッセージ信号を互いに送信することができる。別案として、第2の動作モードにある第2の制御装置14または少なくとも1つの通信ユニット16も、他方の通信加入者14または16に照会信号を継続的に(特に所定の照会頻度をもって)送信し、これに対して他方の通信加入者14または16が応答信号の即座の送信をもって反応するように設計されていてもよい。このように、第2の動作モードにある第2の制御装置14と少なくとも1つの別の通信ユニット16との間の周期的な通信24または恒常的な通信24という表現を使うこともできる。
【0022】
各コンポーネント12,14および16の好ましい設計に基づき、第2の制御装置14によって、少なくとも1つの別の通信ユニット16との継続的な通信24にもかかわらず第1の制御装置12との通信22が失陥したとき、第1の制御装置12および/または第1のモータ式の装置18そのものの少なくとも1つの機能障害を確実に誤りなく認識可能である。第2の制御装置14によって、継続的な/中断のない通信24にもかかわらず第1の制御装置12との通信22の失陥が確認されている/確認される限りにおいて、通信バス10の機能性の存在を確実に前提とすることができる(そうでなければ、少なくとも1つの別の通信ユニット16と、第2の動作モードにある第2の制御装置14との通信24も同じく失陥するはずである)。このように、継続的な/中断のない通信24にもかかわらず通信22が失陥することは、第1の制御装置12および/または第1のモータ式の装置18の機能障害(場合により機能失陥)に確実に原因を帰することができる。
【0023】
上で説明した(双方向/二者間の通信による)従来技術は、制御装置/制御機器、これにより制御される装置および/または信号伝送装置における少なくとも1つの機能障害を認識できるのにすぎないのに対して、ここで説明している通信システムは、第1のエラー状態「通信バス10の機能性があるときの第1の制御装置12および/または第1のモータ式の装置18の少なくとも1つの機能障害(場合により機能失陥)」と、第2のエラー状態「通信バス10の少なくとも1つの機能障害(場合により機能失陥)」との間の区別をするためにも構成される。この通信システムは(少なくとも1つの別の通信ユニット16を用いて)、改善された通信監視と、現在生じているエラー状態の一義的な認識とを可能にし、それにより、現在生じているエラー状態に対していっそう的確に対応することができる。
【0024】
特に第2の制御装置14は、少なくとも1つの別の通信ユニット16との継続的な通信24にもかかわらず第1の制御装置12との通信22が失陥したとき、所定の橋渡しプログラムを実行するように設計されていてよく、すなわち、第2の制御装置14により制御される第2のモータ式の装置20の適合化された動作によって、第1の制御装置12および/または第1のモータ式の装置18の機能障害/機能失陥を補償/橋渡しする(これについてはあとで例を示してさらに詳しく説明する)。
【0025】
発展例として、第1の動作モードにある第1の制御装置12も、少なくとも1つの別の通信ユニット16と継続的な通信26をするために設計されていてよく、それによって第1の制御装置12により、少なくとも1つの別の通信ユニット16との継続的な通信26にもかかわらず第2の制御装置14との通信22が失陥したとき、第2の制御装置14および/または第2のモータ式の装置20の少なくとも1つの機能障害を認識可能である。少なくとも1つの別の通信ユニット16と、第1の動作モードにある第1の制御装置12との継続的な通信26は、少なくとも1つの別の通信ユニット16と、第2の動作モードにある第2の制御装置14との通信24の上に列挙した構成要件を有することができる。
【0026】
第1の制御装置12により、少なくとも1つの別の通信ユニット16との継続的な通信22にもかかわらず第2の制御装置14との通信26の失陥が確認されている限りにおいて/確認される限りにおいて、通信バス10の機能性の存在を同じく確実に前提とすることができる。このように、継続的な通信26にもかかわらず通信22が失陥することは、第2の制御装置14および/または第2のモータ式の装置20の少なくとも1つの機能障害(場合により機能失陥)に確実に原因を帰することができる。それに伴い、ここで説明している通信システムでは、第2のエラー状態「通信バス10の少なくとも1つの機能障害(場合により機能失陥)」と、第3のエラー状態「通信バス10の機能性があるときの第2の制御装置14および/または第2のモータ式の装置20の少なくとも1つの機能障害(場合により機能失陥)」との間の区別をするためにも構成される。第1の制御装置12も、少なくとも1つの別の通信ユニット16との継続的な通信26にもかかわらず第2の制御装置14との通信22が失陥したとき、(別の)所定の橋渡しプログラムを実行するために設計されていてよく、すなわち、第1の制御装置12により制御される第1のモータ式の装置18の適合化された動作によって、第2の制御装置14および/または第2のモータ式の装置20の機能障害/機能失陥を補償/橋渡しする。
【0027】
指摘しておくと、図1に模式的に掲げるハードウェアは、通常、従来の通信システムにすでに搭載されている。したがって図1に示す通信システムを構成するには、コンポーネント12,14および16の動作の新規設計/プログラミング変更でしばしば十分である。
【0028】
図1の例では、通信システムは車両/自動車の液圧ブレーキシステムの一部である。通信システムの利用可能性は、特定の液圧ブレーキ型式にも特定の車両型式/自動車型式にも限定されない。液圧ブレーキシステムの電気機械式のブレーキ倍力装置18は(第1のモータ式の装置10として)第1の制御装置12により制御されて、制御される電気機械式のブレーキ倍力装置18によってブレーキ液を電気機械式のブレーキ倍力装置18に後置された液圧ブレーキシステムのマスタブレーキシリンダ30から液圧ブレーキシステムの少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ32へ移送可能であり/移送されるようになっている。制御される電気機械式のブレーキ倍力装置18によって、たとえばマスタブレーキシリンダ30の少なくとも1つの位置調節可能なピストンに対してブースタ力34を惹起可能であり、それにより、マスタブレーキシリンダ30の中へ入る少なくとも1つのピストンの圧入運動によって、液圧接続された少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ32へとブレーキ液を押出可能である。
【0029】
図1に模式的に掲げるブレーキシステムは、モータ式の液圧装置20によりブレーキ液を少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ32へ移送可能であり/移送されるように、第2の制御装置14によって制御可能であるモータ式の液圧装置20も(第2のモータ式の装置20として)有している。モータ式の液圧装置20は、たとえばブレーキ液を少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ32へ圧送可能であり/圧送されるように、少なくとも1つのポンプモータによって作動可能である少なくとも1つの液圧ポンプを有するポンプシステムであってよい。その代替または補足として、モータ式の液圧装置20はモータ式のピストン・シリンダ装置(プランジャ装置)を含むこともでき、これによってブレーキ液を少なくとも1つの接続されたホイールブレーキシリンダ32へ押出可能であり/押し出される。
【0030】
図1の液圧ブレーキシステムは、(少なくとも)第1の制御装置12および電気機械式のブレーキ倍力装置18が機能性を有している限り、第1の制御装置12が、提供される目標ブレーキ圧生成信号36を考慮したうえで電気機械式のブレーキ倍力装置18を制御するように設計され、それにより(モータ式の液圧装置20に代えて)制御される電気機械式のブレーキ倍力装置18によって目標ブレーキ圧生成信号に呼応するブレーキ液容積Vをマスタブレーキシリンダ30から少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ32へ移送可能であり/移送されるように設計される。このように、第1の制御装置12、第2の制御装置14、電気機械式のブレーキ倍力装置18、およびモータ式の液圧装置20が機能性を有している限り、第1の制御装置12はマスタステータスにあり(その場合、第1の制御装置12により制御される電気機械式のブレーキ倍力装置18は、目標ブレーキ圧生成信号36によって要求されるブレーキ圧を少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ32で惹起可能である)、それに対して第2の制御装置14はスレーブステータスにある(モータ式の液圧装置20は、第2の制御装置14がスレーブステータスにある間は不作動化されるのが好ましい)。
【0031】
しかし第2の制御装置14は(少なくとも1つの別の通信ユニット16との継続的な通信26にもかかわらず第2の制御装置14との通信22が失陥しているとき)、橋渡しプログラムとしてモータ式の液圧装置20を制御するために設計されており、それにより、制御されるモータ式の液圧装置20によって(電気機械式のブレーキ倍力装置18に代えて)目標ブレーキ圧生成信号36に呼応するブレーキ液容積Vを少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ32へ移送可能であり/移送されるようになっている。このことは、第2の制御装置14が、少なくとも1つの別の通信ユニット16との継続的な通信26にもかかわらず第2の制御装置14との通信22が失陥したときに、スレーブステータスからマスタステータスへと切換可能であると言い換えることもできる。この通信システムにより(上で説明した従来技術とは異なり)、第1のエラー状態「通信バス10の機能性があるときの第1の制御装置12および/または第1のモータ式の装置18の少なくとも1つの機能障害(場合により機能失陥)」と第2のエラー状態「通信バス10の少なくとも1つの機能障害(場合により機能失陥)」との間で確実に区別をすることができるので、第2のエラー状態が生じているときに第2の制御装置14がスレーブステータスからマスタステータスへと切り換えられ、マスタステータスで実行されるその橋渡しプログラムによって車両の過剰ブレーキングを引き起こすというリスクがない。それに伴い、マスタステータスへの切換後に制御されるモータ式の液圧装置20によって、目標ブレーキ圧生成信号36により要求されるブレーキ圧を少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ32で制約なく惹起するために、第2の制御装置14をリスクなしに構成することができる(従来技術では、制御装置による制御機器の橋渡しにあたって「車両の過剰ブレーキング」を防止するために、制御装置が実際に失陥している、または失陥していると考えられる制御機器の部分的補償のためにのみ構成されることが多い)。したがって図1の液圧ブレーキシステムにより、エラー発生時にも、最大の車両減速と良好な走行安定性をいずれも実現することができる。
【0032】
目標ブレーキ圧生成信号36とは、たとえば液圧ブレーキシステムを装備する車両の速度自動制御装置により出力される信号であると理解することができ、この信号によって速度自動制御装置が車両の自律的なブレーキングを要求する。このように図1のブレーキシステムを、車両の自律的なブレーキング(ないし速度の自律的な制御/調節)のために確実に利用することができる。あるいは、その代替または補足として目標ブレーキ圧生成信号36は、車両の運転者により要求される外力ブレーキングを反映することもできる。同様に目標ブレーキ圧生成信号36は、運転者により要求されるブレーキ力補助を表すこともできる。いずれのケースでも目標ブレーキ圧生成信号36は、運転者によるブレーキ操作部材/ブレーキペダルの操作を判定するためのブレーキ操作センサによって出力され得る。このような種類のブレーキ操作センサは、たとえばブレーキペダルセンサ、ロッドストロークセンサ、および/または差異ストロークセンサであり得る。
【0033】
別案の実施形態では、(少なくとも)第2の制御装置14およびモータ式の液圧装置20が機能性を有している限り、第2の制御装置14はモータ式の液圧装置20を制御して、それにより制御されるモータ式の液圧装置20によって目標ブレーキ圧生成信号36に呼応するブレーキ液容積Vを少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ32へ移送可能であるように設計されていてよく、第1の制御装置12は(別の)橋渡しプログラムとして電気機械式のブレーキ倍力装置18を制御して、それにより制御される電気機械式のブレーキ倍力装置18によって目標ブレーキ圧生成信号36に呼応するブレーキ液容積Vをマスタブレーキシリンダ30から少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ32へ移送可能であり/移送される。それに伴い、この実施形態も上に説明した利点をもたらす。
【0034】
図2は、通信システムの点検をする方法の実施形態を説明するためのフローチャートを示している。
【0035】
方法ステップS1で、通信システムの通信バスに接続されている第1の制御装置および/または第1の制御装置により制御される第1のモータ式の装置が機能性を有している限り、第1の制御装置が第1の動作モードで作動する。それと同時に、通信バスに接続されている第2の制御装置および/または第2の制御装置により制御される第2のモータ式の装置が機能性を有している限り、第2の制御装置が第2の動作モードで作動する。第1の動作モードにある第1の制御装置と、第2の動作モードにある第2の制御装置は、互いに(中断のない)通信を行う。さらに、第2の動作モードにある第2の制御装置は、通信バスに配置された少なくとも1つの別の通信ユニットと(中断のない)通信を行う。少なくとも1つの別の通信ユニットおよびここに列記している通信の例は、すでに上に挙げたとおりである。
【0036】
次の方法ステップS2は、第2の制御装置によって、第1の制御装置との通信および/または少なくとも1つの別の通信ユニットとの通信が中断されているか否かを判定するために(好ましくは継続的に)実行される。このようにして第2の制御装置は、少なくとも1つの別の通信ユニットとの継続的な通信にもかかわらず第1の制御装置との通信が失陥しているとき、第1の制御装置および/または第1のモータ式の装置の少なくとも1つの機能障害を断定する。たとえば第2の制御装置は、少なくとも1つの別の通信ユニットとの継続的な通信にもかかわらず第1の制御装置との通信が失陥しているとき、所定の橋渡しプログラムを実行する。
【0037】
さらに任意選択の方法ステップS3として、第1の動作モードにある第1の制御装置が(中断のない)通信を少なくとも1つの別の通信ユニットと行っている限り、少なくとも1つの別の通信ユニットとの継続的な通信にもかかわらず第2の制御装置との通信が失陥しているとき、第2の制御装置および/または第2のモータ式の装置の少なくとも1つの機能障害を断定することができる。第1の制御装置12も、少なくとも1つの別の通信ユニット16との継続的な通信にもかかわらず第2の制御装置14との通信が失陥しているとき、(別の)所定の橋渡しプログラムを実行することができる。
【0038】
それにより、ここで説明している方法の実行も上に挙げた利点をもたらす。
【0039】
図3は、車両の液圧ブレーキシステムを作動させる方法の実施形態を説明するためのフローチャートである。
【0040】
ここで説明する方法は、少なくとも1つの方法ステップ1およびS2を含んでおり、これらによって液圧ブレーキシステムの通信システムが点検され、第1のモータ式の装置は液圧ブレーキシステムの電気機械式のブレーキ倍力装置を(第1のモータ式の装置として)制御するための役目を果たし、それにより、制御される電気機械式のブレーキ倍力装置によってブレーキ液が電気機械式のブレーキ倍力装置に後置された液圧ブレーキシステムのマスタブレーキシリンダから液圧ブレーキシステムの少なくとも1つのホイールブレーキシリンダへ移送される。さらに第2のモータ式の装置は、液圧ブレーキシステムの少なくとも1つの液圧装置を(第2のモータ式の装置として)制御するための役目を果たし、それにより、制御されるモータ式の液圧装置によってブレーキ液が少なくとも1つのホイールブレーキシリンダへ移送される。
【0041】
第1の制御装置と電気機械式のブレーキ倍力装置が機能性を有している限り、第1の制御装置は方法ステップS10で、車両の速度自動制御装置により要求される自律的なブレーキング、車両の運転者により要求される外力ブレーキング、または運転者により要求されるブレーキ力補助に関して提供される目標ブレーキ圧生成信号を考慮したうえで電気機械式のブレーキ倍力装置を制御するように作動化され、それにより制御される電気機械式のブレーキ倍力装置によって目標ブレーキ圧生成信号に呼応するブレーキ液容積がマスタブレーキシリンダから少なくとも1つのホイールブレーキシリンダへ移送される。
【0042】
しかし方法ステップS2で第2の制御装置により、少なくとも1つの別の通信ユニットとの継続的な通信にもかかわらず第1の制御装置との通信の失陥が認識されたとき、このことは橋渡しプログラムとして方法ステップS11をリリースし、そこでは第2の制御装置がモータ式の液圧装置を制御し、それにより制御されるモータ式の液圧装置によって目標ブレーキ圧生成信号に呼応するブレーキ液容積が少なくとも1つのホイールブレーキシリンダへ移送される。このように、第1の制御装置および/または電気機械式のブレーキ倍力装置の確実に認識される機能障害(ないし失陥)を良好に橋渡し/補償することができる。
【0043】
以上に説明した方法の実施可能性は、特定の液圧ブレーキシステム型式にも特定の車両型式/自動車型式にも限定されない。
【符号の説明】
【0044】
10 通信バス
12 第1の制御装置
14 第2の制御装置
16 通信ユニット
18 第1のモータ式の装置
20 第2のモータ式の装置
22 継続的な通信
24 継続的な通信
26 継続的な通信
30 マスタブレーキシリンダ
32 ホイールブレーキシリンダ
36 目標ブレーキ圧生成信号
図1
図2
図3