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特許7231719楽曲データ編集装置、および楽曲データ編集プログラム
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  • 特許-楽曲データ編集装置、および楽曲データ編集プログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】楽曲データ編集装置、および楽曲データ編集プログラム
(51)【国際特許分類】
   G10L 19/00 20130101AFI20230221BHJP
   G10H 1/00 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
G10L19/00 312Z
G10H1/00 102Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021515342
(86)(22)【出願日】2019-04-23
(86)【国際出願番号】 JP2019017181
(87)【国際公開番号】W WO2020217301
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2021-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】315017409
【氏名又は名称】AlphaTheta株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂内 秀幸
【審査官】佐久 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-069047(JP,A)
【文献】特開平09-062261(JP,A)
【文献】実開平04-011597(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10L 13/00-13/10
19/00-99/00
G10H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
楽曲再生の単位区間が割り付けられた楽曲データを再生する楽曲データ再生手段と、
再生中の前記楽曲データを単位区間ごとに時系列で記録する単位区間記録手段と、
前記単位区間記録手段により記録された単位区間を読み出す単位区間読出手段と、
前記楽曲データの再生中に、再生操作に変化が生じた単位区間を変化区間として検出する変化区間検出手段とを備え、
前記単位区間記録手段は、前記変化区間検出手段により検出された変化区間を記録する
楽曲データ編集装置。
【請求項2】
請求項に記載の楽曲データ編集装置において、
前記変化区間検出手段は、再生中の楽曲の速度変化、音程変化、および音階入力に基づいて、再生操作に変化が生じたと検出する楽曲データ編集装置。
【請求項3】
請求項1または請求項に記載の楽曲データ編集装置において、
前記単位区間読出手段は、前記単位区間記録手段に記録された単位区間に応じた読出操作部を備え、
前記単位区間読出手段は、操作者が前記読出操作部を操作すると、操作に応じた単位区間を読み出す楽曲データ編集装置。
【請求項4】
コンピュータを請求項1から請求項のいずれか一項に記載の楽曲データ編集装置として機能させるコンピュータ読取可能な楽曲データ編集プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、楽曲データ編集装置、および楽曲データ編集プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、楽曲データの編集を行う装置として、ミュージックシーケンサー、DAW(Digital Audio Workstation)等が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
ミュージックシーケンサー、DAW等は、コンピュータの画面上に楽曲の演奏パート別に時間軸に沿って発音位置等を表示して、各演奏パートにおける発音位置、BPM(Beats Per Minute)等を編集することにより、新たな楽曲データを生成することができる。
【0003】
ところで、このような楽曲データ編集装置では、新たなフレーズを小節単位、Aメロ、Bメロ等の楽曲の構成単位で、各演奏パートを実際に試行錯誤で演奏しながら、よいフレーズを発見し、これを用いてフレーズデータを作成することがある。
しかし、このような試行錯誤によって作成されたフレーズデータは偶発的なフレーズデータであるため、再現しようと思っても簡単には再現することができない。
このため、従来の楽曲データ編集装置には、楽曲データに対する操作単位で楽曲データを記録したり、読み出したりするUNDO/REDO機能や、DAWのように試行錯誤で演奏した楽曲データの再生開始位置から終了位置を読み出す機能が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-66336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、UNDO/REDO機能のような場合、音の変化に関係する操作以外の操作も読み出してしまうため、よいフレーズを効率的に探すことが困難であるという課題がある。
また、UNDO/REDO機能は、そもそも演奏自体を復元するものではなく、意図的に行うリアルタイムの記録しかできない。このため、UNDO/REDO機能で行う操作は、楽曲再生の進行タイミングに同期させて記録することができないという課題がある。
さらに、DAWを利用して記録する場合、記録した結果を画面で確認して、再生開始位置と再生終了位置を指定して、該当箇所を再生して確認するという作業を繰り返すこととなるが、よいフレーズがどこに記録されたのかわからないので、同様に効率的によいフレーズを探すことが困難であるという課題がある。
【0006】
本発明の目的は、試行錯誤により演奏を行って発見されたフレーズを簡単に再現することができ、よいフレーズデータを効率的に作成することのできる楽曲データ編集装置、および楽曲データ編集プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の楽曲データ編集装置は、楽曲再生の単位区間が割り付けられた楽曲データを再生する楽曲データ再生手段と、再生中の前記楽曲データを単位区間ごとに時系列で記録する単位区間記録手段と、前記単位区間記録手段により記録された単位区間を読み出す単位区間読出手段と、を備える。
本発明の楽曲データ編集プログラムは、コンピュータを前述した楽曲データ編集装置として機能させる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の考え方を説明するための模式図。
図2】本発明の実施の形態に係るミュージックシーケンサーの操作パネルを示す平面図。
図3】前記実施の形態におけるミュージックシーケンサーの構造を示す機能ブロック図。
図4】前記実施の形態における作用を説明するためのフローチャート。
図5】前記実施の形態における作用を説明するためのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[1]本発明の考え方
本発明は、楽曲のフレーズを作成する際に、自身が行った操作や演奏を記録し、記録した結果を効率よく再現することにより、新たな楽曲のフレーズの作成に資することを目的としている。
本発明で再生する楽曲データは、図1に示すように、楽曲データに単位区間が割り付けられ、単位区間毎に楽曲再生が可能とされる。
単位区間は、たとえば1小節、2小節等の小節単位で構成してもよく、イントロ、Aメロ、Bメロ、サビ等の楽曲構造の特徴的な区間である楽曲構造区間を単位として構成してもよい。
【0010】
本発明は、楽曲データの再生中に単位区間ごとに時系列でメモリ等の記憶装置に保存していく。その際、楽曲データの再生中に操作者(演奏者)が行った操作(演奏)を単位区間ごとに記録していき、操作者がよいフレーズであると感じた操作を行った単位区間を任意にかつ簡単に読み出して再現することにより、新たなフレーズを効率的に作成していく。
本発明における操作は、楽曲データの再生方向、再生速度や、発音のタイミング、強さ、長さや、キー、コード、スケール等を変更する操作を意味する。
【0011】
本発明における単位区間ごとに記録していく方法は、楽曲データを構成する全単位区間を時系列で記録していく方法や、新たな操作が行われ、単位区間に変化が生じた場合のみを記録していく方法等が考えられる。また、記録を常に自動的に行ってもよく、操作者の操作を前提として記録を開始するようにしてもよい。
記録された単位区間を読み出す方法は、FILO(First In Last Out)やFIFO(First In First Out)のように装置側で読み出す順番を設定するように構成してもよいが、記録した単位区間の順番を操作者に認識させ、操作者が任意に選択できるようにしてもよい。
【0012】
本発明では、楽曲データの再生中に、操作者が試行錯誤で行った各種の操作が単位区間ごとに記録されていく。そして、試行錯誤で行った操作を含むフレーズデータを単位区間ごとに読み出すことができる。したがって、操作者は、試行錯誤で行った操作のうち、気に入った操作を単位区間ごとに簡単に読み出して再現することができ、新たなフレーズデータの作成を効率的に行うことができる。
【0013】
[2]本発明の実施の形態
次に、本発明の実施の一形態を図面に基づいて説明する。
図2には、本発明の実施の形態に係るミュージックシーケンサー1が示されている。ミュージックシーケンサー1には、MIDIキーボード、ドラムマシン、シンセサイザ、サウンドモジュール等の電子機器が接続される。ミュージックシーケンサー1は、電子楽器から入力される楽曲データを記録したり、楽曲データに対して、再生方向、再生速度、発音のタイミング・強さ・長さ、キー、コード等を変更するなどの編集を加えたり、編集を加えた楽曲データを接続されている電子楽器に対して出力する楽曲データ編集装置として機能する。
図2は、ミュージックシーケンサー1の操作パネルが示され、操作パネルは、全体設定領域1A、フレーズ編集領域1B、および単位区間編集領域1Cに区画される。
【0014】
全体設定領域1Aは、ミュージックシーケンサー1の全体の設定を行う領域であり、本発明に係る楽曲データ編集機能を呼び出すための操作スイッチ11が設けられている。
フレーズ編集領域1Bは、再生中の楽曲データの再生速度、再生方向などの操作を行う領域である。
【0015】
単位区間編集領域1Cは、2つの機能を有している。単位区間の記録時には、パッドを含む操作子を使って、楽曲データに対して、発音のタイミング・強さ・長さ、キー、コード等の編集を行うことができる。
単位区間の読み出し時には、パッドP1からパッドP16を使用して、記録された単位区間を読み出して再生することができる。パッドP1からパッドP16は、単位区間に応じて設けられ、それぞれのパッドを操作すると、操作されたパッドに応じた単位区間が読み出され、読み出された単位区間の編集を行うことができる。操作により読み出す単位区間は、任意に選択することができ、たとえば、1小節を単位区間とした場合、16小節分の単位区間を読み出すことができる。
【0016】
図3には、本実施の形態のミュージックシーケンサー1の機能ブロック図が示されている。ミュージックシーケンサー1は、楽曲データ再生手段2、単位区間記録手段3、変化区間検出手段5、および単位区間読出手段6を備える。これらの各機能的手段は、コンピュータ上で実行させるコンピュータ読取可能な楽曲データ編集プログラムとして構成される。
【0017】
楽曲データ再生手段2は楽曲データの再生を行う。楽曲データは小節を単位区間として割り付けられた楽曲データであれば、特に制限はない。
楽曲データ再生手段2は、ミュージックシーケンサー1により編集された楽曲データをMIDI信号として外部に出力する。
【0018】
単位区間記録手段3は、楽曲データ再生手段2から出力された楽曲データを、単位区間ごとに時系列で記録する。
具体的には、単位区間記録手段3は、再生された楽曲データを、単位区間ごとにメモリ4に書き込み時系列で記録する。
【0019】
変化区間検出手段5は、楽曲データ再生手段2により再生中の単位区間の再生操作に変化が生じたか否かを検出する。
再生操作の変化は、従前の再生操作とは異なる再生操作が生じたか否かによって検出される。
異なる再生操作は、本実施の形態では、たとえば、再生速度の変化、再生中の楽曲の音程変化、新たな音階入力による変化などが挙げられる。
【0020】
再生速度の変化としては、再生速度の揺らぎ、再生テンポ(BPM)の変化、ループ、ジャンプによる変化等が挙げられる。
再生中の楽曲の音程変化としては、キー、コードの変化、局所的に再生テンポが変化して音程が変化する場合等が挙げられる。
新たな音階入力による変化としては、操作者がMIDIキーボードを操作したことによる新たな音階の入力、前段のミュージックセンサーにより変更された音階の入力等が挙げられる。
変化区間検出手段5は、再生操作に変化が生じたことを検出した場合、変化が生じた単位区間を変化区間として記録するように、単位区間記録手段3に出力する。
【0021】
単位区間読出手段6は、メモリ4に記録された単位区間を読み出して再生する。具体的には、単位区間読出手段6は、図2に示すパッドP1からパッドP16のうち、操作者が操作したパッドに応じた単位区間のデータを読み出して再生する。つまり、パッドP1からパッドP16は、本発明の読出操作部として機能し、操作者がパッドP1からパッドP16のどれを操作するかによって任意に再生することができる。
【0022】
操作スイッチ11を切り換えることで、単位区間記録手段3および変化区間検出手段5の機能と、単位区間読出手段6の機能とを切り換える。
このとき、単位区間編集領域1CのパッドP1からパッドP16は、単位区間記録手段3および変化区間検出手段5の機能が有効な場合には、楽曲データ再生手段2における楽曲データを編集するための操作手段として使用される。
一方、単位区間読出手段6の機能が有効な場合には、単位区間を読み出すための操作手段として使用される。
【0023】
次に、本実施の形態の作用について、図4および図5に示すフローチャートに基づいて説明する。
変化区間検出手段5は、単位区間に再生操作の変化があった場合のみを記録するか否かを判定する(手順S1)。
すべての単位区間の記録を行う場合、単位区間記録手段3は、再生中の楽曲データを、単位区間ごとに時系列で記録していく(手順S4)。
【0024】
変化区間検出手段5は、従前に再生された単位区間と、現在再生中の単位区間とを比較し(手順S2)、再生操作に変化があったか否かを判定する(手順S3)。
再生操作に変化がない場合、変化区間検出手段5は、単位区間の記録を行わずに、手順S1から手順S2を行い、新たな再生箇所の単位区間の比較を行う。
再生操作に変化があった場合、変化区間検出手段5はその旨を単位区間記録手段3に指示し、単位区間記録手段3は、再生操作に変化のあった単位区間を変化区間としてメモリ4に記録し、同様の手順を時系列で継続する(手順S4)。
【0025】
操作スイッチ11を切り換えることで、単位区間読出手段6は、図5に示すように、メモリ4に記録された単位区間を読み出して再生を行う(手順S5)。具体的には、単位区間読出手段6は、メモリ4に時系列で記録された単位区間をFIFOの順番で読み出すこともでき、逆再生となるFILOの順番で読み出すこともできる。この際、再生中の単位区間に応じたパッドP1からパッドP16が点灯するのが好ましい。
また、操作者がパッドP1からパッドP16のうち、任意のパッドを操作することにより、読み出し再生する単位区間を操作者に選択させてもよい。
【0026】
このような本実施の形態によれば、以下のような効果がある。
本実施の形態では、単位区間記録手段3が再生中の楽曲データを単位区間ごとに時系列でメモリ4に記録している。したがって、単位区間読出手段6によりメモリ4に記録された任意の単位区間を読み出して再生することができるため、楽曲データの再生中に操作者が試行錯誤で操作したよいフレーズを簡単かつ効率的に再現することができる。
【0027】
本実施の形態では、変化区間検出手段5が単位区間の再生操作に変化が生じた場合を単位区間として記録することができる。したがって、不必要に同じ単位区間のデータが記録されていくことを防止して、より効率的によいフレーズを再現することができる。
本実施の形態では、単位区間読出手段6がパッドP1からパッドP16なる読出操作部を備えている。したがって、操作者がパッドP1からパッドP16を操作することにより、任意の単位区間を読み出して再生することができるため、より効率的によいフレーズを再生することができる。
【0028】
本発明は前述した実施の形態に限定されるものではなく、以下に示すような変形をも含むものである。
前述の実施の形態では、MIDI規格の電子機器に接続されたミュージックシーケンサー1に本発明を適用していたが、本発明はこれに限られない。楽曲データを入力する電子機器は、USB規格のコネクタにより接続される、たとえばコンピュータのような電子機器であってもよい。
その他、本発明の具体的な構造および形状等は本発明の目的を達成できる範囲で他の構造等としてもよい。
【符号の説明】
【0029】
1…ミュージックシーケンサー、1A…全体設定領域、1B…フレーズ編集領域、1C…単位区間編集領域、2…楽曲データ再生手段、3…単位区間記録手段、4…メモリ、5…変化区間検出手段、6…単位区間読出手段、11…操作スイッチ、P1-P16…パッド。
図1
図2
図3
図4
図5