(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】インサイチュ光学及び電気化学の分析方法のための電池セル測定モジュール
(51)【国際特許分類】
G01R 31/378 20190101AFI20230221BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20230221BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20230221BHJP
H01M 10/0585 20100101ALI20230221BHJP
H01M 50/109 20210101ALI20230221BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20230221BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20230221BHJP
G01N 21/65 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
G01R31/378
H01M10/04 Z
H01M10/052
H01M10/0585
H01M50/109
G01N21/27 A
G01N21/64 Z
G01N21/65
(21)【出願番号】P 2021536347
(86)(22)【出願日】2018-12-20
(86)【国際出願番号】 KR2018016377
(87)【国際公開番号】W WO2020130202
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-07-01
(31)【優先権主張番号】10-2018-0165534
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】509242864
【氏名又は名称】コリア・ベーシック・サイエンス・インスティテュート
(73)【特許権者】
【識別番号】512328201
【氏名又は名称】コリア リサーチ インスティチュート オブ スタンダーズ アンド サイエンス
(73)【特許権者】
【識別番号】521394624
【氏名又は名称】ザ インダストリー アンド アカデミック コーぺレーション イン チュンナム ナショナル ユニバーシティ(アイエーシー)
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100111453
【氏名又は名称】櫻井 智
(72)【発明者】
【氏名】ムン ジュンヒ
(72)【発明者】
【氏名】チョン チョルホ
(72)【発明者】
【氏名】イ ジュハン
(72)【発明者】
【氏名】チェ キョンスン
(72)【発明者】
【氏名】キム チェンジュン
(72)【発明者】
【氏名】ソン ジェヨン
(72)【発明者】
【氏名】シン ホソン
(72)【発明者】
【氏名】パク ソンファ
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特許第5661901(JP,B1)
【文献】特開2016-110914(JP,A)
【文献】特開2015-216042(JP,A)
【文献】特開2014-032745(JP,A)
【文献】特開2013-239263(JP,A)
【文献】特表2017-510940(JP,A)
【文献】特開2012-109176(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1705703(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/36-31/396
H01M 10/04
H01M 10/052
H01M 10/0585
H01M 50/109
G01N 21/27
G01N 21/64
G01N 21/65
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インサイチュ光学及び電気化学分析用電池セル測定モジュールであり、
内部に電池セル収容空間を含む下部ハウジングと、
前記下部ハウジングに着脱可能に付着され、透明窓が具備された上部カバーと、
前記電池セル収容空間内に配され、第1電極ベース部、第2電極ベース部、及び前記第1電極ベース部と前記第2電極ベース部との間に配される電池積層体を含む電池セルブロックと、
前記電池セル収容空間内に配され、前記第1電極ベース部、前記電池積層体及び前記第2電極ベース部のいずれとも隣接するように位置するように、前記第1電極ベース部、前記電池積層体及び前記第2電極ベース部の一側部に配される第3電極ベース部と、を含み、
前記電池積層体は、正極活物質が付着された正極集電部と、負極活物質が付着された負極集電部と、前記正極活物質と前記負極活物質との間に配される分離膜と、を含み、
前記電池積層体の厚み方向が、前記透明窓の上面と平行に配されるように、前記第1電極ベース部、前記電池積層体及び前記第2電極ベース部が、前記透明窓の上面に平行な第1方向に沿って順次に配され、
前記電池セルブロックは、前記正極集電部、前記正極活物質、前記分離膜、前記負極活物質及び前記負極集電部のいずれもが、前記透明窓に対面するように配され、
前記第3電極ベース部は、前記正極活物質及び前記負極活物質に係わる基準電圧を提供する基準電極として機能することを特徴とする電池セル測定モジュール。
【請求項2】
前記正極活物質は、前記正極集電部の上面に垂直な方向に第1厚みを有し、
前記負極活物質は、前記負極集電部の上面に垂直な方向に第2厚みを有し、
前記電池セルブロックは、前記正極活物質の前記第1厚み全体と、前記負極活物質の前記第2厚み全体とが前記透明窓によって観察されるように配されることを特徴とする請求項
1に記載の電池セル測定モジュール。
【請求項3】
前記下部ハウジングは、外部供給部材から前記電池セル収容空間内部に、電解液を供給
されるように構成される供給ライン開口部をさらに含み、
前記第1電極ベース部は、
前記第1電極ベース部を貫通する複数の開口部と、
前記第1電極ベース部の上面に平行な方向に、前記第1電極ベース部の全体長に延長されるトレンチと、のうち少なくとも一つを含み、
前記複数の開口部と前記トレンチとのうち少なくとも一つを介し、前記電解液が前記電池積層体まで逹するように構成されることを特徴とする請求項1に記載の電池セル測定モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インサイチュ光学及び電気化学の分析方法、及びそのための電池セル測定モジュールに係り、さらに詳細には、充電及び放電が行われる間の電池セル内部の断面を介する電気化学的挙動分析が可能な電池セル測定モジュールと、それを利用したインサイチュ光学及び電気化学の分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、小型モバイル機器、電気自動車のような多様な応用分野に、リチウムイオン電池を使用するための要求が増大するにつれ、多様な応用分野のための多様な要求条件により、リチウムイオン電池の性能を最適化させる必要性が提起されている。特に、大容量を有して低価である新たな正極活物質候補物質及び負極活物質候補物質に係わる電気化学的特性研究が活発に進められている。しかし、新たな正極活物質及び負極活物質の一部は、充電及び放電による相転移特性と電気化学的性能との関係が明確に究明されておらず、そのような候補物質の性能改善及び商用化が困難であるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の技術的思想がなす技術的課題は、充電及び放電が行われる間の電池セル内部の断面を介する電気化学的挙動の精密な分析が可能な電池セル測定モジュールを提供することである。
【0004】
本発明の技術的思想がなす技術的課題は、前記電池セル測定モジュールを利用し、充電及び放電が行われる間の電池セル内部の断面を介する電気化学的挙動の精密な分析が可能なインサイチュ光学及び電気化学の分析方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前述の技術的課題を達成するための本発明の技術的思想によるインサイチュ光学及び電気化学分析用電池セル測定モジュールは、内部に電池セル収容空間を含む下部ハウジングと、前記下部ハウジングに着脱可能に付着され、透明窓が具備された上部カバーと、前記電池セル収容空間内に配され、第1電極ベース部、第2電極ベース部、及び前記第1電極ベース部と前記第2電極ベース部との間に配される電池積層体を含む電池セルブロックと、を含み、前記電池積層体の厚み方向が、前記透明窓の上面と平行に配されるように、前記第1電極ベース部、前記電池積層体及び前記第2電極ベース部が、前記透明窓の上面に平行な第1方向に沿って順次に配される。
【0006】
例示的な実施形態において、前記電池積層体は、正極活物質が付着された正極集電部、負極活物質が付着された負極集電部、及び前記正極活物質と前記負極活物質との間に配される分離膜(separator)を含み、前記電池セルブロックは、前記正極集電部、前記正極活物質、前記分離膜、前記負極活物質及び前記負極集電部のいずれもが、前記透明窓に対面するようにも配される。
【0007】
例示的な実施形態において、前記正極活物質は、前記正極集電部の上面に垂直な方向に第1厚みを有し、前記負極活物質は、前記負極集電部の上面に垂直な方向に第2厚みを有し、前記電池セルブロックは、前記正極活物質の前記第1厚み全体と、前記負極活物質の前記第2厚み全体とが前記透明窓によって観察されるようにも配される。
【0008】
例示的な実施形態において、前記電池セル収容空間内に配され、前記第1電極ベース部、前記電池積層体及び前記第2電極ベース部のいずれとも隣接するように位置するように、前記第1電極ベース部、前記電池積層体及び前記第2電極ベース部の一側部に配される第3電極ベース部をさらに含み、前記第3電極ベース部は、前記正極活物質及び前記負極活物質に係わる基準電圧を提供する基準電極として機能することができる。
【0009】
例示的な実施形態において、前記下部ハウジングは、外部供給部材から前記電池セル収容空間内部に、電解液を供給されるように構成される供給ライン開口部をさらに含み、前記第1電極ベース部は、前記第1電極ベース部を貫通する複数の開口部と、前記第1電極ベース部の上面に平行な方向に、前記第1電極ベース部の全体長に延長されるトレンチと、のうち少なくとも一つを含み、前記複数の開口部と前記トレンチとのうち少なくとも一つを介し、前記電解液が前記電池積層体まで逹するようにも構成される。
【0010】
前記技術的課題を達成するための本発明の技術的思想による電池セル測定モジュールを使用したインサイチュ光学及び電気化学の分析方法において、前記電池セル測定モジュールは、内部に電池セル収容空間を含む下部ハウジングと、前記下部ハウジングに着脱可能に付着され、透明窓が具備された上部カバーと、前記電池セル収容空間内に配される電池セルブロックと、を含み、前記電池セルブロック内に含まれる第1電極ベース部、電池積層体及び第2電極ベース部が、前記透明窓の上面に平行な第1方向に沿って順次に配され、前記電池セル測定モジュールに充電動作及び放電動作を遂行する段階と、前記電池セル測定モジュールに、光測定サイクルを複数回遂行する段階と、を含み、前記光測定サイクルは、前記透明窓を介して観察される前記電池積層体の第1部分に、第1光を照射する段階と、前記電池積層体から散乱される第1光を検出する段階と、前記透明窓を介して観察される前記電池積層体の前記第1部分に、前記第1光とは異なる波長を有する第2光を照射する段階と、前記電池積層体から散乱される第2光を検出する段階と、を含む。
【0011】
例示的な実施形態において、前記第2光を照射する段階は、前記透明窓を介して観察される前記電池積層体の厚み方向に沿い、第1スキャン幅ほど、連続して前記第2光を照射する段階を含んでもよい。
【0012】
例示的な実施形態において、前記電池積層体は、正極活物質が付着された正極集電部、負極活物質が付着された負極集電部、及び前記正極活物質と前記負極活物質との間に配される分離膜を含み、前記電池セルブロックは、前記正極集電部、前記正極活物質、前記分離膜、前記負極活物質及び前記負極集電部のいずれもが、前記透明窓に対面するように配され、前記第2光を照射する段階は、前記透明窓を介して観察される前記正極活物質の厚み方向に沿い、前記第1スキャン幅ほど、連続して前記第2光を照射する段階、並びに前記透明窓を介して観察される前記負極活物質の厚み方向に沿い、前記第1スキャン幅ほど、連続して前記第2光を照射する段階のうち少なくとも一つを含んでもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明による電池セル測定モジュールは、下部ハウジングの電池セル収容空間内に配される電池積層体の厚み方向が、上部カバーの透明窓の上面と平行に配されるように、第1電極ベース部、電池積層体及び第2電極ベース部が透明窓の上面に平行な第1方向に沿って順次にも配される。前記電池セル測定モジュールに対する充電及び放電を行いながら、電池積層体内の正極活物質、分離膜、負極活物質の厚み方向断面の光学イメージを測定する一方、前記厚み方向断面のラマン分光器を介する組成分析が行われうる。例えば、正極活物質または負極活物質の充電ステップ及び放電ステップにおいて、それぞれの電位における界面移動、活物質の析出及び溶解、活物質の厚み変化を、光学イメージを介して観察することができる。光学イメージ観察と同時に、ラマン分光器を介し、活物質内部の少なくとも1つの固定された位置において、または連続して延長される第1スキャン幅に該当する固定された位置において、活物質内部の物質エネルギー分析、結晶構造分析、相転移分析及び/または組成分析が行われうる。従って、電気化学的挙動が明確に究明されていない新たな正極活物質、及び新たな負極活物質に係わる電気化学的挙動及び反応速度に係わる精密な観察及び分析が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】例示的な実施形態によるインサイチュ光学測定システムを示す概路図である。
【
図2】例示的な実施形態による電池セル測定モジュールを示す平面図である。
【
図3】
図2のIII-III’線に沿った断面図である。
【
図4】例示的な実施形態による電池セル測定モジュールを示す平面図である。
【
図5】例示的な実施形態による電池セル測定モジュールを示す平面図である。
【
図6】例示的な実施形態による電池セル測定モジュールを示す平面図である。
【
図7】電池セル測定モジュール内に含まれる第1電極ベース部を示す斜視図である。
【
図8】電池セル測定モジュール内に含まれる第1電極ベース部を示す斜視図である。
【
図9】例示的な実施形態によるインサイチュ光学及び電気化学の分析方法を示すフローチャートである。
【
図10】ジメチルフェナジン(DMPZ)正極活物質の1回充電及び1回放電における電圧プロファイルを示すグラフである。
【
図11】正極活物質の1回充電の間の互いに異なる電圧における光学イメージである。
【
図12A】正極活物質の第1部分と第2部分とにおける1回充電及び1回放電の間の互いに異なる電圧におけるラマンシフトグラフである。
【
図12B】正極活物質の第1部分と第2部分とにおける1回充電及び1回放電の間の互いに異なる電圧におけるラマンシフトグラフである。
【
図13A】それぞれ第1充電サイクル及び第1放電サイクルにおける電圧による正極活物質の光学イメージである。
【
図13B】第2充電サイクルにおける電圧による正極活物質の光学イメージである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の構成及び効果を十分に理解するために、添付図面を参照し、本発明の望ましい実施形態について説明する。しかし、本発明は、以下で開示される実施形態に限定されるものではなく、さまざまな形態にも具現され、多様な変更を加えることができる。ただし、本実施形態に係わる説明は、本発明の開示を完全なものにし、本発明が属する技術分野の当業者に、発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものである。添付された図面において、構成要素は、説明の便宜のために、その大きさを実際より拡大させて図示されており、各構成要素の比率は、誇張されてもいたり、縮小されてもいる。
【0016】
ある構成要素が他の構成要素の「上」にあるか、あるいは「接して」いると記載された場合、他の構成要素の上に直接当接しているか、あるいは連結されてもいるが、中間に、さらに他の構成要素が存在しうると理解されなければならないであろう。なお、ある構成要素が他の構成要素の「真上」にあるか、あるいは「直接接して」いると記載された場合には、中間に、さらに他の構成要素が存在しないとも理解される。構成要素との関係につ いて説明する他の表現、例えば、「~間に」と「直接~の間に」なども、同様に解釈される。
【0017】
第1、第2のような用語は、多様な構成要素についての説明に使用されうるが、前記構成要素は、前記用語によって限定されるものではない。前記用語は、1つの構成要素を他の構成要素から区別する目的のみに使用されうる。例えば、本発明の権利範囲を外れずに、第1構成要素は、第2構成要素とも命名され、類似して、第2構成要素も、第1構成要素とも命名される。
【0018】
単数の表現は、文脈上、明白に異なるように表現されない限り、複数の表現を含む。「含む」または「有する」というような用語は、明細書上に記載された特徴、数、段階、動作、構成要素、部分品、またはそれらの組み合わせが存在することを指定するためのものであり、1またはそれ以上の他の特徴、数、段階、動作、構成要素、部分品、またはそれらの組み合わせが付加されうるとも解釈される。
【0019】
本発明の実施形態で使用される用語は、そうではないように定義されない限り、当該技術分野で当業者に一般的に知られた意味にも解釈される。
【0020】
以下、添付図面を参照し、本発明の望ましい実施形態について説明することにより、本発明について詳細に説明する。
【0021】
図1は、例示的な実施形態によるインサイチュ光学測定システム1を示す概路図である。
図2は、例示的な実施形態による電池セル測定モジュール100を示す平面図であり、
図3は、
図2のIII-III’線に沿った断面図である。
【0022】
図1ないし
図3を参照すれば、インサイチュ光学測定システム1は、光学分析ユニット(OMU)10、電気化学分析ユニット(ECU)20及び電池セル測定モジュール100を含んでもよい。
【0023】
光学分析ユニット10は、電池セル測定モジュール100内に含まれる電池積層体140につき、光学特性を分析することができる測定装置によっても構成される。例示的な実施形態において、光学分析ユニット10は、光学イメージ分析及びラマンシフト分析を行うようにも構成される。他の実施形態において、光学分析ユニット10は、それぞれ光学イメージ分析、ラマンシフト分析、PL(photoluminescence)特性分析が可能な複数の分析ユニットによっても構成される。
【0024】
例えば、光学分析ユニット10は、レーザを光源にし、電池積層体140に光を照射し、電池積層体140を介して反射される光を受光して感知することができるラマン分光器を含んでもよい。また、光学分析ユニット10は、光学顕微鏡をさらに含んでもよい。該光学顕微鏡は、電池積層体140に光を照射し、電池積層体140を介して反射される光を受光し、CCD(charge coupled device)カメラ(図示省略)を介し、電池積層体140のイメージ情報を保存することができる。
【0025】
例えば、光学分析ユニット10は、光源12、光スプリッタ14、レンズ16及び検出器18を含んでもよい。例えば、光源12は、レーザソースを含んでもよく、光源12からレーザが放出されうる。光スプリッタ14は、光源12から放出された光を反射させ、レンズ16に入射させることができる。レンズ16に入射された光が、電池セル測定モジュール100内の電池積層体140に入射されうる。電池積層体140から散乱される光が、レンズ16及び光スプリッタ14を通過し、検出器18に受光されうる。検出器18は、カメラまたは分光計を含んでもよい。
【0026】
例示的な実施形態において、光学顕微鏡が、電池セル測定モジュール100の測定領域(すなわち、
図3のSCAN WIDTHと表示された領域)に光を照射し、前記測定領域のイメージを保存することができ、ラマン分光器が、前記測定領域内の複数の固定された測定位置に光を照射し、複数の固定された測定位置からのラマンシフト測定結果を獲得することができる。また、該ラマン分光器は、前記測定領域内の第1スキャン幅を有する測定ラインに沿い、連続して配される測定位置に光を照射し、前記測定ラインからのラマンシフト測定結果を獲得することもできる。
【0027】
電気化学分析ユニット20は、電池セル測定モジュール100内に含まれる電池積層体140(
図2)に係わる電気化学的性能を分析することができる測定装置によっても構成される。例えば、電気化学分析ユニット20は、電池積層体140に電気的に連結され、電池積層体140の電圧及び電流を調節するか、あるいは電池積層体140の電圧情報及び電流情報を記録するようにも構成される。
【0028】
例えば、電気化学分析ユニット20は、電池積層体140に対する充電及び放電を含む電気化学サイクルを複数回駆動するようにも構成される。電池積層体140に対する充電サイクルにおいて、電池積層体140に、既定の電流速度で電流を印加することができ、電流印加による電池積層体140の電圧を測定して記録することができる。電池積層体140の電圧が、既定のオフ電圧に逹するとき、電池積層体140に対する放電サイクルが開始され、既定の電流速度で放電電流が流れるときの電池積層体140の電圧を測定し、記録することができる。
【0029】
電池セル測定モジュール100は、透明窓176を含み、透明窓176を介し、電池積層体140に光を照射し、電池積層体140から反射される光を感知するようにも構成される。電池セル測定モジュール100は、透明窓176を介して観察可能な測定領域(すなわち、SCAN WIDTHと表示された領域)内において、透明窓176に平行な第1方向(Y方向)に、電池積層体140の正極集電部142F、正極活物質142AM、分離膜(separator)146、負極活物質144A及び負極集電部144Fが順次に配されるようにも構成される。すなわち、電池積層体140の積層方向が、透明窓176に平行に配され、それにより、電池積層体140の正極集電部142F、正極活物質142AM、分離膜146、負極活物質144AM及び負極集電部144Fのうち、関心ある領域につき、光学イメージ分析及びラマン分析を容易に行うことができる。また、電池積層体140の積層方向が透明窓176に平行に配され、それにより、電池積層体140の正極集電部142F、正極活物質142AM、分離膜146、負極活物質144AM及び負極集電部144Fのうち一部分の領域を連続してスキャンすることにより、測定領域内の複数の固定された位置、または連続した測定ラインにおける光学イメージ分析及びラマン分析を容易に行うことができる。
【0030】
例示的な実施形態によれば、電気化学分析ユニット20を介し、電池積層体140に対する電気化学特性分析を行う間、光学分析ユニット10を介し、電池積層体140の部分に係わるイメージ分析及びラマン分析を同時に行うことができる。それにより、関心の対象である正極活物質142AMまたは負極活物質144AMにつき、充電及び放電の間に生じる前記活物質の電気化学的反応の究明、結晶相(crystalline phase)または結晶構造変化の観察、局所的領域の反応速度分析、活物質の界面移動観察、活物質の局所的厚み変化観察のような、電池積層体140の電気化学的挙動に係わる総合的な分析が可能である。
【0031】
従来のインサイチュ電気化学セルにおいては、上面に開口部が形成されたコインタイプのセル内に、正極活物質と負極活物質とが分離膜を挟んで積層された構造を配し、前記開口部を介し、前記正極活物質の表面のみを観察するか、あるいは負極活物質の表面のみを観察することができた。特に、開口部を介して観察可能な前記表面は、コインタイプのセルの最上部に配される表面であるか、あるいは対応する正極部分が除去された負極部分の表面(または、対応する負極部分が除去された正極部分の表面)でもある。従って、開口部を介して観察可能な前記表面における活物質の電気化学的挙動は、コインタイプセルの内部領域で生じる電気化学的挙動とは、差が大きくなり、それにより、電気化学的挙動に係わる精密な分析が困難となる。
【0032】
しかし、本発明によれば、電池セル測定モジュール100内に、電池積層体140の正極集電部142F、正極活物質142AM、分離膜146、負極活物質144AM及び負極集電部144Fが、透明窓176に平行な方向に積層されることにより、正極集電部142F、正極活物質142AM、分離膜146、負極活物質144AM及び負極集電部144Fを同時に観察したり測定したりすることができる。特に、正極活物質142AMの厚み方向、または負極活物質144AMの厚み方向に固定された位置における物質の組成またはイメージの連続的な観察が可能であり、正極活物質142AMと、それに隣接した正極集電部142Fとの界面、または負極活物質144AMと、それに隣接した負極集電部144Fとの界面の移動などが同時に観察されうる。従って、電池積層体140の充電段階及び放電段階で生じる電池積層体140の電気化学的挙動につき、精密に測定したり分析したりすることができる。
【0033】
以下においては、
図2及び
図3を参照し、電池セル測定モジュール100の細部構造について詳細に説明する。
【0034】
電池セル測定モジュール100は、下部ハウジング110と、下部ハウジング110に脱着可能になるように付着される上部カバー172と、を含んでもよい。下部ハウジング110は、内部に電池積層体140を収容することができる電池セル収容空間110Sが具備されうる。上部カバー172は、電池積層体140の断面が観察されうる透明窓176を具備することができ、カバー固定部174を介し、下部ハウジング110にも付着される。
図2においては、理解の便宜のために、上部カバー172、カバー固定部174と透明窓176とが点線で図示されている。
【0035】
下部ハウジング110は、内部に電池セル収容空間110Sが具備され、電池セル収容空間110S内に、電池積層体140を含む電池セルブロックが配されうる。下部ハウジング110は、剛性を有する金属または絶縁物質を含んでもよい。例えば、下部ハウジング110は、腐食が発生しないように、SUS材質によっても形成されうるが、それに限定されるものではない。
【0036】
前記電池セルブロックは、第1電極ベース部122、第2電極ベース部124と、第1電極ベース部122と第2電極ベース部124との間に配される電池積層体140と、を含んでもよい。第1電極ベース部122、電池積層体140及び第2電極ベース部124は、透明窓176の上面に平行な第1方向(Y方向)に沿って順次にも配される。すなわち、透明窓176により、第1電極ベース部122の少なくとも一部分、電池積層体140の少なくとも一部分、及び第2電極ベース部124の少なくとも一部分が同時に観察されうる。
【0037】
第1電極接続部132は、下部ハウジング110を貫通し、第1電極ベース部122にも電気的に連結される。第1電極接続部132は、第1電極ベース部122を介し、電池積層体140に、電気化学分析ユニット20から電流を供給することができる接続端子でもある。第2電極接続部134は、下部ハウジング110を貫通し、第2電極ベース部124にも電気的に連結される。第2電極接続部134は、第2電極ベース部124を介し、電池積層体140に、電気化学分析ユニット20から電流を供給することができる接続端子でもある。
【0038】
電池積層体140は、正極集電部142F、正極活物質142AM、分離膜146、負極活物質144AM及び負極集電部144Fを含んでもよい。正極集電部142Fは、第1電極ベース部122と接触し、負極集電部144Fが第2電極ベース部124と接触するようにも配される。
【0039】
図示されていないが、正極活物質142AM、分離膜146及び負極活物質144AMは、電解液によって浸された状態でもある。選択的には、充電段階及び放電段階を反復することによる電解液消耗を補充するために、
図6ないし
図8で追って説明されるように、外部の供給ライン190L1,190L2から、電解液が供給されうるように、下部ハウジング110に、供給ライン開口部110SH1,110SH2がさらに形成され、第1電極ベース部122及び第2電極ベース部124のうち少なくとも一つは、電解液が通過することができる複数の開口部122SHまたはトレンチ122SLをさらに含んでもよい。
【0040】
正極集電部142Fは、伝導性物質を含んでもよく、薄い伝導性ホイル、または薄い伝導性メッシュ(mesh)でもある。例えば、正極集電部142Fは、アルミニウム、ニッケル、銅、金、またはそれらの合金を含んでもよい。正極活物質142AMは、リチウムイオンを可逆的に吸蔵/放出することができる物質を含んでもよい。正極活物質142AMは、光学分析ユニット10及び電気化学分析ユニット20により、充電及び放電による相転移特性を分析することが要求される活物質でもある。例示的な実施形態において、正極活物質142AMは、カルボオーガニック系(carboorganic-based)正極活物質、オリビン(olivine)構造のリチウムリン酸化物系正極活物質、バナジウム酸化物系正極活物質、層状構造のリチウム金属酸化物、スピネル(spinel)構造のリチウムマンガン酸化物系正極活物質、硫黄系正極活物質などを含んでもよい。例えば、ジメチルフェナジン(DMPZ)を正極活物質142AMに使用した電池積層体140につき、インサイチュ光学測定システム1を介し、電気化学性能及び相転移特性を分析した結果を、
図10ないし
図13Bを介して詳細に説明する。
【0041】
図示されていないが、正極活物質142AM内部には、バインダまたは導電材がさらに含まれもする。該バインダは、正極活物質142AMの粒子を互いに付着させ、正極活物質142AMを正極集電部142Fに付着させる役割を行うことができる。該導電材は、正極活物質142AMに電気伝導性を提供することができる。
【0042】
負極集電部144Fは、伝導性物質を含んでもよく、薄い伝導性ホイル、または薄い伝導性メッシュでもある。例えば、負極集電部144Fは、銅、ニッケル、アルミニウム、金、またはそれらの合金を含んでもよい。負極活物質144AMは、リチウムイオンを可逆的に吸蔵/放出することができる物質を含んでもよい。負極活物質144AMは、光学分析ユニット10及び電気化学分析ユニット20により、充電及び放電による相転移特性を分析することが要求される活物質でもある。例示的な実施形態において、負極活物質144AMは、カーボン系負極活物質、黒鉛系負極活物質、シリコン系負極活物質、スズ系負極活物質、複合材負極活物質、リチウム金属負極活物質などを含んでもよい。
【0043】
図示されていないが、負極活物質144AM内部には、バインダまたは導電材がさらに含まれもする。該バインダは、負極活物質144AMの粒子を互いに付着させ、負極活物質144AMを負極集電部144Fに付着させる役割を行うことができる。該導電材は、負極活物質144AMに電気伝導性を提供することができる。
【0044】
分離膜146は、多孔性を有することができ、単一膜、または2層以上の多重膜によっても構成される。分離膜146は、ポリマー物質を含んでもよく、例えば、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリフッ化ビニリデン系、ポリオレフィン系ポリマーのような少なくとも一つを含んでもよい。
【0045】
電池セル測定モジュール100は、電池セル収容空間110S内において、第2電極ベース部124と接触するように配される固定プレート150をさらに含んでもよい。加圧固定部152が、下部ハウジング110外部から固定プレート150内部まで延長されて結合されうる。例えば、加圧固定部152は、ねじ方式により、固定プレート150を第1方向(透明窓176の上面に平行な方向)に沿って移動させることができ、固定プレート150を介し、第1電極ベース部122、電池積層体140及び第2電極ベース部124が、所定の圧縮力によって互いに付着されうる。
【0046】
一般的に、円筒状または長方形の金属ケース内に、電池積層体が配される商用電池セル、またはコインタイプの金属容器内に、電池積層体が配されるコインセルの場合、電池積層体内の正極活物質、分離膜、負極活物質が密着して配され、商用電池セルまたはコインセルの総抵抗が相対的に小さくもある。もし集電部と活物質との抵抗、または集電部と外部接続部材との抵抗のような電池セルまたはコインセルの付随的抵抗が大きければ、電池セルまたはコインセルの総抵抗が上昇してしまい、そのような場合、正極活物質と負極活物質との間に印加される電位差(電圧)と、電池セルの正極端子と負極端子との間に印加される電位差(電圧)との偏差が大きくなってしまう。
【0047】
本発明によれば、固定プレート150と加圧固定部152とにより、第1電極ベース部122、電池積層体140及び第2電極ベース部124が密着固定され、電池セル測定モジュール100の抵抗が低減されうる。電池セル測定モジュール100の抵抗が低減されることにより、多様な電流条件(例えば、高い電流速度における充電及び放電)において、所望する電気化学テストを行うことができることにもなったり、商用電池セル内における電気化学的挙動と、電池セル測定モジュール100内における電気化学的挙動との偏差が低減されたりもする(すなわち、商用電池セルにおける電気化学的挙動を精密に模写する(simulate)ことができる)。
【0048】
上部カバー172は、剛性を有する金属または絶縁物質を含んでもよい。例えば、上部カバー172は、腐食が発生しないように、SUS材質によっても形成されるが、それに限定されるものではない。カバー固定部174は、螺合可能な固定部材でもあるが、それに限定されるものではない。透明窓176は、透明な絶縁物質によっても形成される。例えば、透明窓176は、石英またはベリリウムガラスを含んでもよい。図示されていないが、透明窓176のエッジ部分には、Oリング(o-ring)のようなシーリング部材(sealing member)がさらに形成されうる。
【0049】
図3に例示的に図示されているように、正極集電部142F、正極活物質142AM、分離膜146、負極活物質144AM及び負極集電部144Fのいずれもが透明窓176に対面するようにも配される。例えば、正極活物質142AMが、正極集電部142Fの上面に垂直な方向(例えば、第1方向(Y方向))に第1厚みを有し、負極活物質144AMが、負極集電部144Fの上面に垂直な方向(例えば、第1方向(Y方向))に第2厚みを有し、透明窓176により、正極活物質142AMの第1厚み全体と、負極活物質144AMの第2厚み全体とが観察されうる。
【0050】
前述の例示的な実施形態によれば、電池セル測定モジュール100内に、電池積層体140の正極集電部142F、正極活物質142AM、分離膜146、負極活物質144AM及び負極集電部144Fが、透明窓176に平行な方向に積層されることにより、正極集電部142F、正極活物質142AM、分離膜146、負極活物質144AM及び負極集電部144Fを同時に観察したり測定したりすることができる。特に、正極活物質142AMの厚み方向、または負極活物質144AMの厚み方向に固定された位置における物質の組成またはイメージの連続的な観察が可能であり、正極活物質142AMと、それに隣接した正極集電部142Fとの界面、または負極活物質144AMと、それに隣接した負極集電部144Fとの界面の移動などが同時に観察されうる。従って、電池積層体140の充電段階及び放電段階で生じる電池積層体140の電気化学的挙動につき、精密に測定したり分析したりすることができる。
【0051】
図4は、例示的な実施形態による電池セル測定モジュール100Aを示す平面図である。
図4において、
図1ないし
図3と同一参照符号は、同一構成要素を意味する。
【0052】
図4を参照すれば、電池セル測定モジュール100Aは、電池セル収容空間110S内に配される第3電極ベース部126をさらに含んでもよい、第3電極ベース部126は、第1電極ベース部122、電池積層体140及び第2電極ベース部124の一側部に配され、第3電極ベース部126は、第1電極ベース部122、電池積層体140及び第2電極ベース部124のいずれとも隣接するようにも配される。第3電極接続部136は、下部ハウジング110を貫通し、第3電極ベース部126にも電気的に連結される。電池セル測定モジュール100Aは、3電極システムの電池セルに該当しうる。
【0053】
第3電極ベース部126上には、第3電極(図示せず)がさらに配され、前記第3電極は、正極活物質142AM及び負極活物質144AMに係わる基準電圧を提供する基準電極として機能することができる。例えば、正極活物質142AMがジメチルフェナジン(DMPZ)を含み、負極活物質144AMがカーボンを含み、前記第3電極は、リチウムメタルを含んでもよい。そのような場合、第1電極ベース部122と第3電極ベース部126との電圧を測定することにより、基準電圧に係わる正極活物質142AMの電圧データを獲得し、第2電極ベース部124と第3電極ベース部126との電圧を測定することにより、基準電圧に係わる負極活物質144AMの電圧データを獲得することができる。従って、正極活物質142AMと負極活物質144AMとのそれぞれに対する電気化学的挙動を総合的に分析することができる。
【0054】
前述の例示的な実施形態によれば、正極活物質142AMの厚み方向、または負極活物質144AMの厚み方向に固定された位置における物質の組成またはイメージの連続的な観察が可能であり、正極活物質142AMと、それに隣接した正極集電部142Fとの界面、または負極活物質144AMと、それに隣接した負極集電部144Fとの界面の移動などが同時に観察されうる。従って、電池積層体140の充電段階及び放電段階で生じる電池積層体140の電気化学的挙動につき、精密に測定したり分析したりすることができる。また、基準電極として作用する第3電極ベース部136をさらに含むことにより、正極活物質142AMと負極活物質144AMとのそれぞれに対される電気化学的挙動を総合的に分析することができる。
【0055】
図5は、例示的な実施形態による電池セル測定モジュール100Bを示す平面図である。
図5で、
図1ないし
図4と同一参照符号は、同一構成要素を意味する。
【0056】
図5を参照すれば、電池セル測定モジュール100Bは、複数個の加圧固定部152A,152Bを含んでもよい。複数個の加圧固定部152A,152Bが、固定プレート150に対し、固定プレート150を第1方向(透明窓176に平行な方向)に沿って移動させることができ、複数個の加圧固定部152A,152Bによって移動される固定プレート150を介し、第1電極ベース部122、電池積層体140及び第2電極ベース部124が、所定の圧縮力によって互いに付着されうる。
【0057】
複数個の加圧固定部152A,152Bが互いに離隔されて固定プレート150を移動させることができ、それにより、固定プレート150に押力が等しく分散されて印加されうる。従って、電池積層体140の局所的な領域に押力が印加される場合に生じうる正極活物質142AMまたは負極活物質144AMの剥がれ、穴あき(puncture)、短絡(short-circuit)のような電池積層体140の損傷が防止されうる。
【0058】
図5には、2個の加圧固定部152A,152Bが離隔されて配されているところが例示的に図示されているが、加圧固定部152A,152Bの個数及び配置は、それに限定されるものではない。
【0059】
例示的な実施形態によれば、固定プレート150と複数の加圧固定部152A,152Bとにより、第1電極ベース部122、電池積層体140及び第2電極ベース部124が密着固定され、電池セル測定モジュール100Bの抵抗が低減されうる。電池セル測定モジュール100Bの抵抗が低減されることにより、多様な電流条件において、所望する電気化学テストを行ったり、商用電池セルにおける電気化学的挙動を精密に模写したりすることができる。また、電池積層体140の局所的な領域に押力が印加される場合に生じうる正極活物質142AMまたは負極活物質144AMの剥がれ、穴あき、短絡のような電池積層体140の損傷が防止されうる。
【0060】
図6は、例示的な実施形態による電池セル測定モジュール100Cを示す平面図である。
図7は、電池セル測定モジュール100C内に含まれる第1電極ベース部122の代わりに採用されうる第1電極ベース部122Aを示す斜視図である。
図8は、電池セル測定モジュール100C内に含まれる第1電極ベース部122の代わりに採用されうる第1電極ベース部122Bを示す斜視図である。
図6ないし
図8において、
図1ないし
図5と同一参照符号は、同一構成要素を意味する。
【0061】
図6ないし
図8を参照すれば、下部ハウジング110は、電池セル収容空間110Sと連通される供給ライン開口部110SH1,110SH2を含んでもよい。例えば、第1供給ライン開口部110SH1は、下部ハウジング110の左側面を貫通し、第2供給ライン開口部110SH2は、下部ハウジング110の右側面を貫通するようにも配される。
図6に図示されているところと異なり、第1供給ライン開口部110SH1及び第2供給ライン開口部110SH2のいずれもが、下部ハウジング110の一側面(例えば、左側面または右側面)を貫通するように互いに離隔されても配される。
【0062】
供給ライン開口部110SH1,110SH2には、それぞれ供給ライン190L1,190L2が連結されうる。外部の電解液供給ソース(図示せず)から、供給ライン190L1,190L2を経由し、供給ライン開口部110SH1,110SH2を介し、電池セル収容空間110S内に電解液が補充されうる。例えば、
図6の矢印で表示されているように、第1供給ライン190SL1から電池セル収容空間110S内部に電解液が供給され、電池セル収容空間110S内部から第2供給ライン190SL2を介し、電解液が放出されうる。
【0063】
図7に図示されているように、第1電極ベース部122Aは、電解液が通過することができる複数の開口部122SHを含んでもよい。複数の開口部122SHは、第1電極ベース部122Aを貫通し、電池セル収容空間110S内部に補充された電解液が、第1電極ベース部122Aを介し、正極活物質142AM、分離膜146及び負極活物質144AMまで十分に拡散されるように、適切な個数及び間隔によっても配される。
【0064】
図8に図示されているように、第1電極ベース部122Bは、電解液が通過することができるトレンチ122SLを含んでもよい。トレンチ122SLは、第1電極ベース部122Bの上面に平行な方向(例えば、X方向)に、第1電極ベース部122Bの全体長にも延長される。トレンチ122SLは、電池セル収容空間110S内部に補充された電解液が、第1電極ベース部122Bを介し、正極活物質142AM、分離膜146及び負極活物質144AMまで十分に拡散されるように、適切な幅、個数及び間隔にも配される。
【0065】
一方、図示されていないが、第1電極ベース部122A,122Bと共に、第2電極ベース部122も、複数の開口部122SHまたはトレンチ122SLを含むようにも形成される。
【0066】
図9は、例示的な実施形態によるインサイチュ光学及び電気化学の分析方法を示すフローチャートである。
【0067】
図9を参照すれば、正極電極、分離膜及び負極電極を含む電池積層体を準備する(S210段階)。
【0068】
電池積層体140は、正極集電部142F上に、正極活物質142AMをコーティングして乾燥させて形成された正極電極と、負極集電部144F上に、負極活物質144AMをコーティングして乾燥させて形成された負極電極と、前記正極電極と前記負極電極との間に介在された分離膜と、を含んでもよい。電池積層体140は、電解液に、所定時間の間浸される。
【0069】
その後、透明窓に平行な方向に、正極電極、分離膜及び負極電極の断面が配されるように、電池積層体を電池セル測定モジュール内に収容することができる(S220段階)。
【0070】
電池積層体140は、第1電極ベース部122と第2電極ベース部124との間に、臨時固定され、そのような状態の電池積層体140、第1電極ベース部122及び第2電極ベース部124を、電池セルブロックと称することができる。前記電池セルブロックは、電池セル収容空間110S内に、第1方向(Y方向)に沿い、第1電極ベース部122、電池積層体140及び第2電極ベース部124が順次に配されるようにも収容される。
【0071】
その後、固定プレート150と加圧固定部152とを介し、前記電池セルブロックを下部ハウジング110の内壁に固定することができる。透明窓176が電池積層体140の側面とオーバーラップされ、透明窓176により、電池積層体140の側面、すなわち、正極集電部142F、正極活物質142AM、分離膜146、負極活物質144AM及び負極集電部144Fの側面を同時に観察することができるように、上部カバー172を下部ハウジング110上に固定し、電池セル測定モジュール100を組み込むことができる。
【0072】
その後、電池セル測定モジュール内の電池積層体に対する充電動作及び放電動作を遂行することができる(S230段階)。
【0073】
電池セル測定モジュール100に連結された電気化学分析ユニット20により、電池積層体140の容量、電圧、電流及び時間に係わる情報を得ることができる。例えば、電気化学分析ユニット20を介し、電池積層体140に既設定の電流密度を使用した単位充電ステップまたは単位放電ステップが遂行されうる。
【0074】
該透明窓を介し、該電池セル測定モジュール内の電池積層体の断面に、第1光を照射することができる(S240段階)。
【0075】
該電池セル測定モジュールから反射される光(または、散乱される光)を感知し、光学イメージを獲得することができる(S250段階)。
【0076】
該透明窓を介し、電池セル測定モジュール内の電池積層体の断面に、第2光を照射することができる(S260段階)。第2光は、第1光とは異なる波長を有する光でもある。
【0077】
該電池セル測定モジュールから反射される光(または、散乱される光)を感知して分析することができる(S270段階)。
【0078】
例えば、電池積層体140の電圧が既設定の第1測定電圧に逹するとき、第1光を照射するS240段階、第1光の散乱光を感知し、光学イメージを獲得するS250段階、第2光を照射するS260段階、第2光の散乱光を感知して分析するS270段階が順次に遂行されうる。S240段階ないしS270段階を、1つの光測定サイクルと称することができる。光測定サイクルの間、電池積層体140に一定電圧が維持されたり、電流の流れが中断されたりするように、電気化学分析ユニット20がプログラミングされうる。
【0079】
例えば、第2光を照射するS260段階と、第2光の散乱光を感知して分析するS270段階は、ラマンシフト特性またはPL特性を獲得する段階でもある。
【0080】
例示的な実施形態において、第2光を照射するS260段階において、透明窓176を介して観察される電池積層体140の厚み方向に沿い、第1スキャン幅ほど、連続して第2光を照射することができる。例えば、前記第1スキャン幅は、正極活物質142AMの一部分、それに隣接した分離膜、及び負極活物質144AMの一部分のいずれともオーバーラップされるようにも配される。
【0081】
他の実施形態において、第2光を照射するS260段階において、透明窓176を介して観察される電池積層体140の側面につき、複数の測定位置に、第2光を順次に照射することができる。例えば、前記複数の測定位置は、正極活物質142AMの一部分、それに隣接した分離膜、及び負極活物質144AMの一部分のいずれともオーバーラップされるようにも配される。
【0082】
その後、S210段階ないしS270段階を反復することができる。
【0083】
具体的には、1つの光測定サイクルが遂行された後、また電気化学分析ユニット20を介し、電池積層体140に既設定の電流密度を使用した単位充電ステップまたは単位放電ステップが遂行されうる。2回目の光測定サイクルにおいては、最初の光測定サイクルにおいて、第2光を照射した測定位置と同一測定位置に、第2光を照射することができる。それにより、同一測定位置に配される正極活物質142AM及び/または負極活物質144AMの経時的または電圧変化によるラマンシフト情報を提供することができ、それにより、正極活物質142AM及び/または負極活物質144AMの相転移特性、界面特性及び/または結晶構造に係わる精密な分析が行われうる。
【0084】
例えば、S210段階ないしS270段階を順次に遂行することにより、単位充電ステップまたは単位放電ステップを構成することができる。例示的な実施形態によるインサイチュ光学及び電気化学の分析方法は、総5回ないし総数十回の単位充電ステップ、及び/または総5回ないし総数十回の単位放電ステップを含んでもよい。
【0085】
一般的に、従来のインサイチュ電気化学セルにおいては、上面に開口部が形成されたコインタイプのセル内に、正極活物質と負極活物質とが分離膜を挟んで積層された構造を配し、前記開口部を介し、前記正極活物質の表面のみを観察するか、あるいは負極活物質の表面のみを観察することができた。特に、開口部を介して観察可能な前記表面は、コインタイプのセルの最上部に配される表面や、対応する正極部分が除去された負極部分の表面(または、対応する負極部分が除去された正極部分の表面)でもある。従って、開口部を介して観察可能な前記表面における活物質の電気化学的挙動は、コインタイプセルの内部領域で生じる電気化学的挙動とは、差が大きくなり、それにより、電気化学的挙動に係わる精密な分析が困難となる。
【0086】
しかし、本発明によれば、電池積層体140の正極集電部142F、正極活物質142AM、分離膜146、負極活物質144AM及び負極集電部144Fが、透明窓176に平行な方向に積層されることにより、正極集電部142F、正極活物質142AM、分離膜146、負極活物質144AM及び負極集電部144Fを同時に観察したり測定したりすることができる。特に、正極活物質142AMの厚み方向、または負極活物質144AMの厚み方向に固定された位置における物質の組成またはイメージの連続した観察が可能であり、正極活物質142AMと、それに隣接した正極集電部142Fとの界面、または負極活物質144AMと、それに隣接した負極集電部144Fとの界面の移動などが同時に観察されうる。従って、電池積層体140の充電段階及び放電段階で生じる電池積層体140の電気化学的挙動につき、精密に測定したり分析したりすることができる。
【0087】
以下においては、
図10ないし
図13Bを介し、例示的な実施形態による電池セル測定モジュールを使用し、例示的な実施形態によるインサイチュ光学及び電気化学の分析方法を遂行して獲得した分析結果について説明することにする。
図10ないし
図13Bにおいては、正極活物質として、カルボオーガニック正極物質のうち一つであるジメチルフェナジン(DMPZ)を使用し、負極活物質として、リチウムメタルを使用した電池積層体につき、インサイチュ光学及び電気化学の分析方法を行った。
【0088】
図10は、ジメチルフェナジン(DMPZ)正極活物質の、1回充電及び1回放電における電圧プロファイルを示すグラフである。
図10においては、一定電流モードで得られる正極活物質の電圧が図示される。
【0089】
図10を参照すれば、カルボオーガニック正極物質であるジメチルフェナジン(DMPZ)は、2個のプラトー領域(plateau region)R2,R4を示すことができる。具体的には、充電開始後、電圧が上昇する第1領域R1、およそ3.0ないし3.1Vにおいて、一定電圧区間を有する第2領域R2、電圧が上昇する第3領域R3、およそ3.75ないし3.85Vにおいて、一定電圧区間を有する第4領域R4、及び電圧が上昇する第5領域R5が示されることを確認することができる。
【0090】
図11は、正極活物質の1回充電の間の互いに異なる電圧における光学イメージである。
図11においては、ジメチルフェナジン(DMPZ)正極活物質の開放電圧OCV、3.3V、3.7V、3.9V及び4.3Vにおいて、第1光の散乱から得られた光学イメージが図示される。
【0091】
図11を参照すれば、開放電圧OCV(すなわち、
図9の第1領域R1に対応する電圧領域)において、ジメチルフェナジン(DMPZ)粒子が局所的に集まって配されるジメチルフェナジン(DMPZ)リッチ領域が観察される。その後、第1プラトーを経た後、3.3V(すなわち、
図9の第3領域R3の開始地点に対応する電圧領域)において、ジメチルフェナジン(DMPZ)リッチ領域に配されるジメチルフェナジン(DMPZ)粒子の量が多くなり、それは、ジメチルフェナジン(DMPZ)粒子が表面に析出されるためであると見られる。3.7V(すなわち、
図9の第3領域R3の終了地点に対応する電圧領域)において、ジメチルフェナジン(DMPZ)リッチ領域のモルフォロジーに大きい変化はなく、第2プラトーを経た後、3.9V(
図9の第5領域R5に対応する電圧領域)において、ジメチルフェナジン(DMPZ)リッチ領域のジメチルフェナジン(DMPZ)粒子の量が少なく観察される。それは、2回目プラトー段階において、ジメチルフェナジン(DMPZ)が電解液に溶出されるためであると見られる。
【0092】
図12Aと
図12Bは、正極活物質の第1部分と第2部分とにおける1回充電及び1回放電の間の互いに異なる電圧におけるラマンシフトグラフである。
【0093】
図12Aを参照すれば、第1部分においては、充電初期に、開放電圧OCVから3.1Vに逹するまで、ジメチルフェナジン(DMPZ)に由来する第1ピーク(●)及び第2ピーク(○)と、カーボンに由来する第3ピーク(▲)及び第4ピーク(△)とを含む4つのピークが観察される。3.45Vにおいて、第1ピーク(●)及び第2ピーク(○)は、観察されず、3.72Vにおいて、第3ピーク(▲)及び第4ピーク(△)の強度は、大きく低減される。放電段階が始まれば、第3ピーク(▲)及び第4ピーク(△)は、再び観察され始めるが、第1ピーク(●)及び第2ピーク(○)は、観察されない。それは、充電初期に、ジメチルフェナジン(DMPZ)粒子が配された第1部分から第1プラトー区間である3.1V領域までにおいて、ジメチルフェナジン(DMPZ)が電解液に溶出され、電極上の他の部分に移動したためであると推測することができる。
【0094】
図12Bを参照すれば、第2部分においては、充電初期に、開放電圧OCVから3.2Vに逹するまで、カーボンに由来する第3ピーク(▲)及び第4ピーク(△)だけが観察される。3.3Vから3.7Vまでにおける領域において、すなわち、第1プラトー区間を過ぎた後の電圧上昇区間(
図9の第3領域R3に対応する電圧領域)において、ジメチルフェナジン(DMPZ)に由来する第1ピーク(●)、第2ピーク(○)、第5ピーク(■)及び第6ピーク(□)が観察される。それは、充電初期に、第2部分内にジメチルフェナジン(DMPZ)が配されていなかったが、第1プラトー区間である3.1Vを経ながら、電解液に溶出されたジメチルフェナジン(DMPZ)粒子が、第2部分に移動して吸着されたためであると推測することができる。
【0095】
図13Aは、それぞれ第1充電サイクル及び第1放電サイクルにおける電圧による正極活物質の光学イメージであり、
図13Bは、第2充電サイクルにおける電圧による正極活物質の光学イメージである。
【0096】
図13Aを参照すれば、第1充電サイクルにおいては、充電初期から3.3Vを経て、3.76Vまで充電段階が遂行されるとき、ジメチルフェナジン(DMPZ)正極活物質と電解液(または、分離膜)との界面において、ジメチルフェナジン(DMPZ)の表面析出が生じることが分かる。すなわち、ジメチルフェナジン(DMPZ)リッチ領域から電解液に溶出されたジメチルフェナジン(DMPZ)が、正極活物質と電解液との界面で析出されることを確認することができる。その後、第2プラトーを過ぎる区間である3.9Vにおいて、ジメチルフェナジン(DMPZ)がさらに溶解され、正極活物質と電解液との界面が正極活物質方向に後退したところが観察される。4.3Vにおいては、ジメチルフェナジン(DMPZ)の再析出により、正極活物質界面において新たな層が形成され、正極活物質の厚みも増大されたところを確認することができる。
【0097】
第1放電サイクルにおいては、3.6V、3.43V、2.8V及び2.5Vにおいて、電圧が低下されることにより、正極活物質と電解液との界面が漸進的に正極活物質側に後退することと、形成された層階の厚みが低減されることとが観察され、それは、ジメチルフェナジン(DMPZ)の溶解が持続的に生じるためであると推測することができる。
【0098】
図13Bを参照すれば、第2充電サイクルにおいては、3.3Vにおいて、ジメチルフェナジン(DMPZ)の電解液への溶解によって形成された層が消えるところが観察され、4.1Vにおいて、ジメチルフェナジン(DMPZ)再析出により、正極活物質界面に新たな層がさらに形成されるところが観察される。しかし、第1充電サイクルと比較するとき、ジメチルフェナジン(DMPZ)の溶解による界面移動の程度が微々たるものであり、ジメチルフェナジン(DMPZ)の再析出によって形成される新たな層の厚みも厚くないことが分かる。
【0099】
図10ないし
図13Bを参照して詳細に説明したように、本発明による電池セル測定モジュール、並びにインサイチュ光学及び電気化学の分析方法を介し、ジメチルフェナジン(DMPZ)を含むカルボオーガニック系正極活物質の電気化学挙動及び界面特性が明確に観察され、それにより、カルボオーガニック系正極活物質の性能改善及び商用化のための多様なアプローチが導き出されうる。本発明は、カルボオーガニック系正極活物質だけではなく、他の正極活物質及び負極活物質の電気化学的反応の究明、結晶相または結晶構造変化の観察、局所的領域の反応速度分析、活物質の界面移動観察、活物質の局所的厚み変化観察のような電気化学的挙動に係わる総合的な分析に適用されうる。
【0100】
以上、本発明について、望ましい実施形態を挙げて詳細に説明したが、本発明は、前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内及び範囲内において、当分野で当業者によってさまざまな変形及び変更が可能であろう。
【0101】
謝辞(Acknowledgement)
今回の研究は、科学技術情報通信部が支援する国立研究財団を介する基礎科学研究プログラムの支援を受けた(NRF-2017M3A7B4049176)。
【0102】
今回の作業は、韓国基礎科学研究院(KBSI)助成T38606の支援を受けた。
【0103】
今回の作業は、韓国政府が拠出する国家研究財団(NRF)によって支援された(2018R1A5A1025224)。
【0104】
今回の研究は、科学技術情報通信部(科技部)が拠出する国家研究財団(NRF-2017M3D1A1039561)を介する創作資料発掘プログラムの支援を受けた。