(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】モータ、モータ冷却システム、および電動車両
(51)【国際特許分類】
H02K 9/19 20060101AFI20230221BHJP
H02K 11/33 20160101ALI20230221BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20230221BHJP
H02K 5/20 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
H02K9/19 A
H02K11/33
H02K7/116
H02K5/20
(21)【出願番号】P 2021556569
(86)(22)【出願日】2020-03-25
(86)【国際出願番号】 CN2020081148
(87)【国際公開番号】W WO2020244284
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2021-09-17
(31)【優先権主張番号】201910480166.0
(32)【優先日】2019-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521467113
【氏名又は名称】華為数字能源技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】HUAWEI DIGITAL POWER TECHNOLOGIES CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Office 01, 39th Floor, Block A, Antuoshan Headquarters Towers, 33 Antuoshan 6th Road, Futian District, Shenzhen, 518043, P.R.C.
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133569
【氏名又は名称】野村 進
(72)【発明者】
【氏名】王 健▲剛▼
(72)【発明者】
【氏名】李 泉明
(72)【発明者】
【氏名】▲謝▼ 廷裕
(72)【発明者】
【氏名】汪 一波
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-088287(JP,A)
【文献】実開昭51-018902(JP,U)
【文献】特開2011-083139(JP,A)
【文献】特開2012-157098(JP,A)
【文献】特開2013-215056(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0361649(US,A1)
【文献】中国実用新案第204858766(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/19
H02K 11/33
H02K 7/116
H02K 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータハウジングおよび前記モータハウジングに取り付けられたステータコアを備えるモータであって、
前記モータハウジングには、分配溝、液体流入路、および液体流出路が設けられ、前記分配溝は、前記モータハウジングの内壁に設けられており、
前記分配溝は、第1分配溝および2つの第2分配溝を備え、前記ステータコアの軸方向において、前記第1分配溝は前記2つの第2分配溝の間に位置し、前記ステータコアの周方向において、第1分配溝は、前記2つの第2分配溝から離間して配されており、
前記液体流入路は、前記
第1分配溝および前記モータハウジングの外部空間に連通しており、前記液体流出路は、前記モータハウジングの内部および外部空間に連通しており、
前記ステータコアの外壁には、
離間した2つのステータ溝が設けられており、前記ステータ溝
の少なくとも一部の延在方向は、前記分配溝の
少なくとも一部の延在方向と交差し、各前記ステータ溝の前記延在方向の両端部は共に閉じており、
前記ステータ溝は、前記分配溝および前記液体流出路の両方に連通しており、
前記液体流入路、前記
第1分配溝、前記ステータ溝
の一方、
前記第2分配溝、前記ステータ溝の他方、および前記液体流出路は、連通して、冷却液流路を形成している、
モータ。
【請求項2】
前記分配溝は、2つの第1分配
溝を備え
、
前記液体流入路は、一方の第1分配溝および前記モータハウジングの前記外部空間に連通しており、
前記ステータ溝は、前記ステータコアの前記周方向に沿って順次離間して配された第1、第2、および第3ステータ溝を備え、
前記液体流入路に連通している
一方の第1分配溝は、
前記第1ステータ溝を介して前記2つの第2分配溝に連通して、前記2つの第2分配溝は、
前記第2ステータ溝を介して他方の第1分配溝に連通して、前記他方の第1分配溝は、
前記第3ステータ溝を介して前記液体流出路に連通して、冷却液流路を形成しているので、冷却液は、前記液体流入路、前記
一方の第1分配溝、前記第1ステータ溝、前記2つの第2分配溝、前記第2ステータ溝、前記他方の第1分配溝、前記第3ステータ溝、および前記液体流出路に順次流入する、
請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記ステータコアの前記軸方向において、前記ステータコアの両端部は共に前記モータハウジング内に引っ込んでおり、前記液体流出路の一端部は、前記ステータコアを越えて延在し、前記モータハウジングの前記内壁には、液体戻り溝が設けられ、前記液体戻り溝の延在方向の両端部は共に前記ステータコアを越えて延在し、前記液体戻り溝は、前記液体流出路から流出する冷却液を受け入れ、前記冷却液を熱交換器に送出するための流路として機能するために使用され、前記液体流入路および前記液体流入路に連通する前記第1分配溝は共に前記液体戻り溝から離間して配されている、
請求項2に記載のモータ。
【請求項4】
いくつかの第1分配溝、いくつかの第2分配溝、およびいくつかのステータ溝が存在し、前記いくつかの第1分配溝は、前記ステータコアの前記周方向に沿って離間して配されており、2つの第2分配溝は、各2つの第1分配溝の間に設けられ、各第1分配溝および前記第1分配溝に隣接する2つの第2分配溝は、1つのステータ溝を介して連通しており、前記いくつかの第1分配溝内の前記2つの第
1分配溝は、前記液体戻り溝の前記両端部にそれぞれ位置しており、一方の第1分配溝は、前記液体戻り溝から離間して配され、他方の第1分配溝は、前記液体戻り溝に連通している、
請求項3に記載のモータ。
【請求項5】
前記モータは、2つの流路を備え、一方の流路に連通する前記液体流入路および前記第1分配溝は、他方の流路に連通する前記液体流入路および前記第1分配溝から離間して配されており、前記2つの流路は、前記第3ステータ溝および前記液体流出路を共有するので、前記モータハウジングの前記内壁を流れる前記冷却液は、反対方向に沿って2つの経路に流れる、
請求項2に記載のモータ。
【請求項6】
前記ステータコアの前記軸方向において、前記ステータコアの両端部は共に前記モータハウジング内に引っ込んでおり、前記液体流出路の一端部は、前記ステータコアを越えて延在し、前記モータハウジングの前記内壁には、液体戻り溝が設けられ、前記液体戻り溝の延在方向の両端部は共に前記ステータコアを越えて延在し、前記液体戻り溝は、前記液体流出路から流出する冷却液を受け入れ、前記冷却液を熱交換器に送出するための流路として機能するために使用され、一方の流路に連通している前記液体流入路および前記第1分配溝は、前記液体戻り溝の一方側に離間して配され、他方の流路に連通している前記液体流入路および前記第1分配溝は、前記液体戻り溝の他方側に離間して配されている、
請求項5に記載のモータ。
【請求項7】
モータハウジングおよび前記モータハウジングに取り付けられたステータコアを備えるモータであって、
前記モータハウジングには、分配溝、液体流入路、および液体流出路が設けられ、前記液体流入路および前記液体流出路は、前記モータハウジングの内部および外部空間に連通しており、
前記分配溝は、前記モータハウジングの内壁に設けられており、前記分配溝は、第1分配溝および第2分配溝を備え、前記第1分配溝および前記第2分配溝は共に前記ステータコアの軸の周りに、軸方向に沿って前記内壁の両端部に離間して配されており、
前記ステータコアの外壁には、ステータ溝が設けられており、前記ステータ溝の延在方向の両端部は共に閉じており、前記第1分配溝は、前記ステータ溝を介して前記第2分配溝に連通しており、前記ステータ溝の前記延在方向は、前記第1分配溝および前記第2分配溝のうちの少なくとも1つの延在方向と交差しており、
前記液体流入路は、前記第1分配溝の一端部および前記モータハウジングの前記外部空間に連通しているので、
前記液体流入路、前記第1分配溝、前記ステータ溝、前記第2分配溝、および前記液体流出路は、連通して、冷却液流路を形成し、冷却液は、前記液体流入路を通って前記第1分配溝に入り、前記第1分配溝を流れながら前記ステータ溝に流入し、前記ステータ溝を通って前記第2分配溝および前記液体流出路に流入
し、
前記ステータコアの軸方向において、前記ステータコアの両端部は共に前記モータハウジング内に引っ込んでおり、前記液体流出路の一端部は、前記ステータコアを越えて延在し、前記モータハウジングの前記内壁には、液体戻り溝が設けられ、前記液体戻り溝の延在方向の両端部は共に前記ステータコアを越えて延在し、前記液体戻り溝は、前記液体流出路から流出する冷却液を受け入れ、前記冷却液を熱交換器に送出するための流路として機能するために使用され、前記第1分配溝は、前記液体流入路の一端部に連通しており、前記液体流入路は、前記液体戻り溝から離間して配されている、モータ。
【請求項8】
前記モータハウジングには、離間して配された2つの隣接する液体流入路が設けられ、
前記第1分配溝は、対向する端部を有する2つの第1分配溝からなり、前記2つの第1分配溝の一方の端部は、前記2つの第1分配溝の他方の端部と対向しており、前記
2つの第1分配溝の延在方向の
対向する端部は、離間して配され、各端部は、一方の液体流入路に連通しているので、前記冷却液は、前記2つの液体流入路から前記
2つの第1分配溝に入り、前記第1分配溝を反対方向に沿って流れながら前記ステータ溝に流入する、
請求項7に記載のモータ。
【請求項9】
前記ステータコアの軸方向において、前記ステータコアの両端部は共に前記モータハウジング内に引っ込んでおり、前記液体流出路の一端部は、前記ステータコアを越えて延在し、前記モータハウジングの前記内壁には、液体戻り溝が設けられ、前記液体戻り溝の延在方向の両端部は共に前記ステータコアを越えて延在し、前記液体戻り溝は、前記液体流出路から流出する冷却液を受け入れ、前記冷却液を熱交換器に送出するための流路として機能するために使用され、前記液体戻り溝は、前記2つの液体流入路の間および
前記2つの第1分配溝の前記対向する端部の間を通り、前記2つの液体流入路および
前記2つの第1分配溝の前記対向する端部の両方から離間して配されている、
請求項
8に記載のモータ。
【請求項10】
前記分配溝の前記延在方向は、前記ステータコアの前記周方向であり、前記ステータ溝の前記延在方向は、前記ステータコアの前記軸方向である、
請求項1から
9のいずれか一項に記載のモータ。
【請求項11】
前記ステータコアは、順次積層されたいくつかの鉄片を備え、各鉄片の周囲には、ノッチが設けられ、前記ステータコアの前記軸方向の2つの端部の前記鉄片上であって、前記ノッチが設けられていない部分は、前記軸方向の前記2つの端部の前記鉄片に隣接する前記鉄片の前記ノッチに位置合わせされ、前記軸方向の前記2つの端部の前記鉄片間の残りの前記鉄片上の全ての前記ノッチは、前記ステータ溝を形成するために順次連通する、
請求項1に記載のモータ。
【請求項12】
熱交換器と、送出装置と、請求項1から
11のいずれか一項に記載の前記モータと、を備えるモータ冷却システムであって、前記熱交換器は、液体流出路から流出する冷却液を受け入れて、冷却するように構成され、前記送出装置は、前記熱交換器および液体流入路に連通しており、前記冷却された冷却液を前記液体流入路から前記分配溝に送出し、流路を流れるように前記冷却液を駆動するように構成される、
モータ冷却システム。
【請求項13】
モータコントローラと、ギアボックスと、請求項
12に記載の前記モータ冷却システムと、を備える電動車両であって、前記モータコントローラは、前記モータに接続されて、前記モータを動作するように制御し、前記ギアボックスは、前記モータのモータシャフトに接続される、
電動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、電動車両技術の分野に関し、特に、モータ、モータ冷却システム、および電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
電動車両のモータの小型化の鍵となる技術の1つに放熱技術がある。モータが十分に放熱できるかどうかは、モータの動作信頼性および車両性能に直接影響する。モータは、ステータを備え、そのステータに対して、一般的には、対応する放熱設計が必要となる。しかしながら、従来のモータのステータは、放熱効率が比較的低い。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本出願の実施形態は、モータのステータの放熱効率を向上させるためのモータ、モータ冷却システム、および電動車両を提供する。
【0004】
第1の態様によれば、本出願の一実施形態は、モータハウジングと、モータハウジング内に取り付けられたステータコアとを備えるモータを提供する。モータハウジングには、分配溝、液体流入路、および液体流出路が設けられ、分配溝は、モータハウジングの内壁に設けられており、液体流入路は、分配溝およびモータハウジングの外部空間に連通しており、液体流出路は、モータハウジングの内部および外部空間に連通しており、ステータコアの外壁には、ステータ溝が設けられており、ステータ溝の延在方向は、分配溝の延在方向と交差し、ステータ溝の延在方向の両端部は共に閉じており、ステータ溝は、分配溝および液体流出路の両方に連通しており、液体流入路、分配溝、ステータ溝、および液体流出路は、連通して、冷却液流路を形成している。
【0005】
この実施形態では、分配溝、液体流入路、および液体流出路は、モータハウジングに設けられ、ステータコアの外壁には、ステータ溝が設けられることで、液体流入路、分配溝、ステータ溝、および液体流出路は、互いに連通して、冷却液流路を形成する。ステータコアの外壁にはステータ溝が設けられているので、冷却液とステータコアとの接触面積が大きくなり、その結果、冷却液がステータコアに十分に接触することができ、冷却液とステータコアとの接触熱抵抗が小さくなり、ステータコアの放熱効率が向上する。ステータ溝の延在方向の両端部は共に閉じられているので、冷却液は、ステータ溝の両端部から流出するのではなく、液体流出路を通ってのみ流出することができ、ステータコア上であって、放熱が必要な領域は、十分に放熱されることが保証され、ステータ溝の両端部を通る冷却液の急速な損失の(特にステータ溝が複数ある場合、各ステータ溝の両端部が開口していると、冷却液が前のステータ溝を流れる際に失われ続け、後続のステータ溝に冷却液が分配されず、ステータコア上であって、ステータ溝が位置する領域で放熱不良が発生するおそれがある)ためにステータコアから均等に放熱されないという欠点が回避され、大量の冷却液がステータ溝の両端部から流出し、ロータに接触することでロータの運動エネルギーが失われことによってモータからの動力出力が影響を受けることを回避することができる。また、冷却液流路は、分配溝の延在方向とステータ溝の延在方向が交差することで格子状に構成されており、製品の製造プロセスを十分に考慮した流路構造設計となっており、モータの製造要求を満たしている。特に、分配溝は、周方向に沿って延在するように設計されており、周方向の分配溝は、鋳造等のプロセスによってモータハウジングの内壁に容易に加工することができる。ステータ溝は、軸方向に沿って延在するように設計され、単一の鉄片の縁部にノッチを設けるだけでよく、組み立て時にいくつかのそのような鉄片が順次積層され、ノッチが位置合わせさせることでステータ溝が得られるので、いくつかの鉄片は、同じ設計構造を有し、同じ機械加工プロセスを採用することができ、それによって設計および製造コストが大幅に単純化される。また、流路がモータハウジングに集約されるのではなく、ステータコアおよびモータハウジングに分散されるので、モータハウジングに設けられる流路の数が多いことに起因してモータハウジングの厚さが大きく増加する欠点(流路を設けながらモータハウジングの強度を確保するためには、それに応じてモータハウジングの厚さを増加させる必要があること)を回避することができ、モータハウジングは、可能な限り薄くすることができ、コストが低減される。
【0006】
第1の実施態様では、分配溝は、2つの第1分配溝および2つの第2分配溝を備え、ステータコアの軸方向において、2つの第1分配溝は共に2つの第2分配溝の間に位置し、2つの第2分配溝は、離間して配されており、ステータコアの周方向において、各第1分配溝は、2つの第2分配溝から離間して配されており、液体流入路は、一方の第1分配溝およびモータハウジングの外部空間に連通しており、3つのステータ溝は、周方向に沿って順次離間して配されており、ステータ溝の少なくとも一部の延在方向は、分配溝の少なくとも一部の延在方向と交差しており、液体流入路に連通している第1分配溝は、1つのステータ溝を介して2つの第2分配溝に連通して、2つの第2分配溝は、1つのステータ溝を介して他方の第1分配溝に連通して、他方の第1分配溝は、1つのステータ溝を介して液体流出路に連通して、冷却液流路を形成しているので、冷却液は、液体流入路、第1分配溝、第1ステータ溝、2つの第2分配溝、第2ステータ溝、他方の第1分配溝、第3ステータ溝、および液体流出路に順次流入する。
【0007】
この第1の実施態様では、液体流入路、一方の第1分配溝、第1ステータ溝、2つの第2分配溝、第2ステータ溝、他方の第1分配溝、第3ステータ溝、および2つの液体流出路は、順次連通して、流路を形成する。冷却液は、液体流入路からモータハウジングの内部キャビティに流入し、一方の第1分配溝、第1ステータ溝、2つの第2分配溝、第2ステータ溝、他方の第1分配溝、第3ステータ溝に順次流入し、最後に2つの液体流出路を通ってステータコアから流出する。異なる数の第1分配溝、第2分配溝、およびステータ溝が存在する場合、第1分配溝、ステータ溝、第2分配溝、ステータ溝、第1分配溝、・・・の流れ順序に基づいて、冷却液が循環する。全体的な流れの傾向から、冷却液は、モータハウジングの内壁上を一方向に(例えば、時計回りまたは反時計回り)流れる。冷却液がステータ溝を流れる際、ステータコアは、熱交換によって冷却されてもよい。2つの液体流出路を通ってステータコアから流出した後、冷却液は、ステータ巻線の両端部に噴霧されて、ステータ巻線の熱をさらに放散することができる。第1分配溝は、ステータ溝の2つの端部の間に位置しているので、第1分配溝からステータ溝に流入した冷却液は、ステータ溝の中間部からステータ溝の2つの端部に流れてもよい。2つの第2分配溝は、ステータ溝の両端部に位置しているので、2つの第2分配溝からステータ溝に流入した冷却液は、ステータ溝の2つの端部からステータ溝の中間部に流れてもよい。その流路設計によって、冷却液がモータハウジングの内壁とステータコアの外壁との間に滑らかに連結され、冷却液がステータコアの外壁を完全に覆うことができ、それによって、放熱効率を確保される。また、冷却液が1つの流入口から集中的に流入するように、1つの液体流入路が設計されることで、モータハウジングの液体流入路の設計が簡素化され、冷却液の流れ方向の正確な制御が容易となり、期待される放熱効果が得られる。
【0008】
第2の実施態様では、ステータコアの軸方向において、ステータコアの両端部は共にモータハウジング内に引っ込んでおり、液体流出路の一端部は、ステータコアからはみ出ており、モータハウジングの内壁には、液体戻り溝が設けられ、液体戻り溝の延在方向の両端部は共にステータコアからはみ出ており、液体戻り溝は、液体流出路から流出する冷却液を受け入れ、冷却液を熱交換器に送出するための流路として機能するために使用され、
液体流入路および液体流入路に連通する第1分配溝は共に前記液体戻り溝から離間して配されている。液体戻り溝を設けることにより、冷却液を熱交換器に送出して、冷却することができる。冷却された冷却液の温度は低下し、冷却液は放熱のために再利用されてもよい。また、液体流入路および液体流入路に連通する第1分配溝は共に液体戻り溝から離間して配されているので、液体戻り溝に収容された高温の冷却液が、液体流入路および液体流入路に連通する分配溝内の低温の冷却液と混合されることによる放熱への影響を回避することができる。
【0009】
第3の実施態様では、いくつかの第1分配溝、いくつかの第2分配溝、およびいくつかのステータ溝が存在し、いくつかの第1分配溝は、ステータコアの周方向に沿って離間して配されており、2つの第2分配溝は、各2つの第1分配溝の間に設けられ、各第1分配溝および第1分配溝に隣接する2つの第2分配溝は、1つのステータ溝を介して連通しており、いくつかの第1分配溝内の2つの第1分配溝は、液体戻り溝の両端部にそれぞれ位置しており、一方の第1分配溝は、液体戻り溝から離間して配され、他方の第1分配溝は、液体戻り溝に連通している。この実施態様では、冷却液は、液体流入路から液体流入路に連通する第1分配溝に入り、ステータ溝、2つの第2分配溝、ステータ溝、第1分配溝、ステータ溝、2つの第2分配溝、・・・に順次流入する。これにより、冷却液が液体流出路に連通するステータ溝に流入するまで循環する。この場合、冷却液は、2つの経路に分けられ、一方の経路は、液体流出路を通ってステータコアから流出し、液体戻り溝に入り、他方の経路は、液体戻り溝に連通する第1分配溝に流入するまで、ステータ溝から元の流れ方向および流れ順に沿って後続の第1分配溝または後続の第2分配溝に流れ続け、液体戻り溝に合流する。この実施態様では、液体流入路に連通する第1分配溝が液体戻り溝から離間して配されているため、モータハウジングに入った低温の冷却液が液体戻り溝内の高温の冷却液と混合されることがなく、それによって、放熱効果が確保される。また、モータハウジングの内壁を冷却液が一方向に流れるため、モータハウジングの流路設計が簡素化され、冷却液の流れ方向の正確な制御が容易になり、期待される放熱効果が得られる。
【0010】
第4の実施態様では、モータは、2つの流路を備え、一方の流路に連通する液体流入路および第1分配溝は、他方の流路に連通する液体流入路および第1分配溝から離間して配されており、2つの流路は、第3ステータ溝および液体流出路を共有するので、モータハウジングの内壁を流れる冷却液は、反対方向に沿って2つの経路に流れる。
【0011】
この実施形態では、モータハウジングの内壁において、液体流入路に連通する第1分配溝から、2つの流路はそれぞれ、反対方向に沿って延在し、最終的に合流する。冷却液は、2つの液体流入路からモータハウジングに流入する。モータハウジングの内壁を流れる2つの冷却液の経路はそれぞれ、反対方向(一方が時計回り、他方が反時計回り)に沿って流れ、最終的に第3ステータ溝に合流し、2つの液体流出路から流出する。2つの流路の各々について、冷却液は、第1の実施態様で説明した流れの順序で流れる。具体的には、冷却液は、液体流入路、一方の第1分配溝、第1ステータ溝、2つの第2分配溝、第2ステータ溝、他方の第1分配溝、および第3ステータ溝に順次流入し、最後に2つの液体流出路を通ってステータコアから流出する。モータハウジングに2つの並列流路(本明細書における「流路」とは、第1分配溝および第2分配溝によって形成される流路を指す)を設計することによって、冷却液は、2つの並列流路内を反対方向に沿って流れるので、冷却液は、ステータ溝により迅速に分配され、ステータコアの迅速な放熱を実現することができる。
【0012】
第5の実施態様では、モータの2つの流路は、依然として合流はするが、異なる構成を有する。具体的には、一方の流路は、第3の実施態様における流路と同一であってもよいが、他方の流路は、1つの液体流入路、1つの第1分配溝、1つのステータ溝、および2つの第2分配溝を備え、2つの第2分配溝は、前の流路の第3ステータ溝に連通する。この実施態様では、モータの流路設計ソリューションが開発され、異なる構造を有するモータの放熱要件を満たすことができる。
【0013】
第6の実施態様では、ステータコアの軸方向において、ステータコアの両端部は共にモータハウジング内に引っ込んでおり、液体流出路の一端部は、ステータコアからはみ出ており、モータハウジングの内壁には、液体戻り溝が設けられ、液体戻り溝の延在方向の両端部は共にステータコアからはみ出ており、液体戻り溝は、液体流出路から流出する冷却液を受け入れ、冷却液を熱交換器に送出するための流路として機能するために使用され、一方の流路に連通している液体流入路および第1分配溝は、液体戻り溝の一方側に離間して配され、他方の流路に連通している液体流入路および第1分配溝は、液体戻り溝の他方側に離間して配されている。液体戻り溝を設けることにより、冷却液を熱交換器に送出して、冷却することができる。冷却された冷却液の温度は低下し、冷却液は放熱のために再利用されてもよい。また、液体流入路および液体流入路に連通する第1分配溝は共に液体戻り溝から離間して配されているので、液体戻り溝に収容された高温の冷却液が、液体流入路および液体流入路に連通する分配溝内の低温の冷却液と混合されることによる放熱への影響を回避することができる。
【0014】
第7の実施態様では、分配溝は、第1分配溝および第2分配溝を備え、第1分配溝および第2分配溝は共にステータコアの軸を中心とし、軸方向に沿って内壁の両端部に離間して配されており、第1分配溝は、ステータ溝を介して第2分配溝に連通しており、ステータ溝の延在方向は、第1分配溝および第2分配溝のうちの少なくとも1つの延在方向と交差しており、液体流入路は、第1分配溝の一端部およびモータハウジングの外部空間に連通しているので、冷却液は、液体流入路を通って第1分配溝に入り、第1分配溝を流れながらステータ溝に流入し、ステータ溝を通って第2分配溝および液体流出路に流入する。
【0015】
この第7の実施態様では、液体流入路、第1分配溝、ステータ溝、第2分配溝、および液体流出路は、順次連通して、冷却液流路を形成する。冷却液は、液体流入路から第1分配溝に流入すると、第1分配溝を流れながら各ステータ溝に流入し、各ステータ溝を通って第2分配溝に流入する。第1分配溝および第2分配溝では、冷却液は、一端部から他端部まで一方向に流れる。冷却液は、液体流出路に連通したステータ溝に流入すると、液体流出路を通ってステータコアから流出する。冷却液がステータ溝を流れる際、ステータコアは、熱交換によって冷却されてもよい。冷却液は、ステータコアから液体流出路を通って流出した後、ステータ巻線の端部に噴霧されて、ステータ巻線の熱をさらに放散することができる。この実施態様では、新しい流路設計ソリューションが開発され、これは、前述の実施態様の技術的効果を有するだけでなく、異なる構造を有するモータの放熱要件を満たすこともできる。
【0016】
第8の実施態様では、ステータコアの軸方向において、ステータコアの両端部は共にモータハウジング内に引っ込んでおり、液体流出路の一端部は、ステータコアからはみ出ており、モータハウジングの内壁には、液体戻り溝が設けられ、液体戻り溝の延在方向の両端部は共にステータコアからはみ出ており、液体戻り溝は、液体流出路から流出する冷却液を受け入れ、冷却液を熱交換器に送出するための流路として機能するために使用され、第1分配溝は、液体流入路の一端部に連通しており、液体流入路は、液体戻り溝から離間して配されている。液体戻り溝を設けることにより、冷却液を熱交換器に送出して、冷却することができる。冷却された冷却液の温度は低下し、冷却液は放熱のために再利用されてもよい。また、液体流入路および液体流入路に連通する第1分配溝は共に液体戻り溝から離間して配されているので、液体戻り溝に収容された高温の冷却液が、液体流入路および液体流入路に連通する分配溝内の低温の冷却液と混合されることによる放熱への影響を回避することができる。
【0017】
第9の実施態様では、モータハウジングには、離間して配された2つの隣接する液体流入路が設けられ、第1分配溝の延在方向の両端部は、離間して配され、各端部は、一方の液体流入路に連通しているので、冷却液は、2つの液体流入路から第1分配溝に入り、第1分配溝を反対方向に沿って流れながらステータ溝に流入する。第1分配溝および第2分配溝の2つの冷却液の経路が液体流出路に連通するステータ溝に流入する場合、冷却液は、液体流出溝を通ってステータコアから流出してもよい。この実施態様では、第1分配溝および第2分配溝は共に、並列流路として機能し、冷却液は、並列流路を反対方向に沿って流れるので、より迅速にステータ溝に分配され、ステータコアの迅速な放熱を実現することができる。
【0018】
第10の実施態様では、ステータコアの軸方向において、ステータコアの両端部は共にモータハウジング内に引っ込んでおり、液体流出路の一端部は、ステータコアからはみ出ており、モータハウジングの内壁には、液体戻り溝が設けられ、液体戻り溝の延在方向の両端部は共にステータコアからはみ出ており、液体戻り溝は、液体流出路から流出する冷却液を受け入れ、冷却液を熱交換器に送出するための流路として機能するために使用され、液体戻り溝は、2つの液体流入路の間および両端部の間を通り、2つの液体流入路および両端部の両方から離間して配されている。
【0019】
この第10の実施態様では、液体流出路から流出する冷却液は、液体戻り溝に自由に落下してもよい。換言すれば、液体流出溝および液体戻り溝がステータコアの径方向の両端部にそれぞれ位置し、モータが装着位置に位置する場合、液体出口溝は、モータの上部に位置し、液体戻り溝は、モータの下部に位置する。あるいは、液体流出路は、配管を介して液体戻り溝に連通してもよく、液体流出路から流出する冷却液は、配管を通って液体戻り溝に流入してもよい。この場合、上述したように、液体流出路と液体戻り溝との相対位置は限定されない。
【0020】
また、2つの液体流入路、第1分配溝の両端部、および第2分配溝の両端部の全てが液体戻り溝から離間して配されているため、液体戻り溝に収容された高温の冷却液が、液体流入路、第1分配溝、および第2分配溝内で低温の冷却液と混合されることによる放熱への影響を回避することができる。
【0021】
本出願のこの実施形態では、分配溝の延在方向は、ステータコアの周方向であり、ステータ溝の延在方向は、ステータコアの軸方向である。
【0022】
本出願のこの実施形態では、ステータコアは、順次積層されたいくつかの鉄片を備え、各鉄片の周囲には、ノッチが設けられ、ステータコアの軸方向の2つの端部の鉄片上であって、ノッチが設けられていない部分は、軸方向の2つの端部の鉄片に隣接する鉄片のノッチに位置合わせされ、軸方向の2つの端部の鉄片間の残りの鉄片上の全てのノッチは、ステータ溝を形成するために順次連通する。本実施態様のソリューションによれば、単一の鉄片の縁部にノッチを設けるだけでよく、組み立て時にいくつかのそのような鉄片が順次積層されるので、鉄片の対応する位置にあるノッチが順次連通し、最も外側に位置する鉄片を特定の角度だけ回転させ、鉄片上であって、ノッチが設けられていない位置を隣接する鉄片のノッチに位置合わせすることによって、ステータコアを得ることができる。ステータコアを構成する全ての鉄片は、同じ構造であり、同じプロセスを用いて製造され得るので、設計および製造コストが大幅に低減される。
【0023】
第2の態様によれば、本出願の一実施形態は、熱交換器と、送出装置と、第1態様によるモータとを備えるモータ冷却システムを提供する。熱交換器は、液体流出路から流出する冷却液を受け入れて、冷却するように構成され、送出装置は、熱交換器および液体流入路に連通しており、冷却された冷却液を液体流入路から分配溝に送出し、流路を流れるように冷却液を駆動するように構成される。本実施形態のモータ冷却システムは、モータのステータの熱を効果的に放散できるだけでなく、冷却液の循環利用を実現できる。
【0024】
一実施態様では、熱交換器と送出装置との間にフィルタが配置されるので、送出装置に流入する低温の冷却液が濾過され、不純物が送出装置に入るのを防ぐことができる。フィルタは、濾過機能を有する電気機器であってもよいし、単に機械部品(例えば、フィルタスクリーンまたはフィルタ要素)であってもよい。当然ながら、熱交換器に入る高温の冷却液を濾過するために、モータと熱交換器との間にフィルタが代替的に配置されてもよく、および/または分配溝に入る低温の冷却液を濾過するために、送出装置とモータとの間にフィルタが代替的に配置されてもよい。
【0025】
第3の態様によれば、本出願の一実施形態は、モータコントローラと、ギアボックスと、第2態様によるモータ冷却システムとを備える電動車両を提供する。モータコントローラは、モータに接続され、モータを制御して動作させる。ギアボックスは、モータのモータシャフトに接続され、モータによって出力されたトルクを別の機械装置に伝達するように構成される。電動車両は、電動自動車、電動バス、および電動二輪車などの車両を含むが、これらに限定されない。本実施形態の電動車両において、モータのステータは、効果的かつ連続的な放熱を実現することができ、動作信頼性が高い。したがって、車両性能が確保される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本出願の一実施形態によるモータの概略断面構造図であり、断面図の切断面は、ステータコアの軸を通過する。
【
図2】
図1に示すモータのステータコアの概略三次元構造図である。
【
図3】
図1に示すモータのモータハウジングおよびステータコアの周方向展開の概略図である。
【
図4】
図1に示すモータのステータコアの別の概略三次元構造図である。
【
図5】本出願の一実施形態による第1の実施態様におけるモータハウジングの概略三次元構造図である。
【
図6】本出願の一実施形態による第1の実施態様におけるモータハウジングの別の概略三次元構造図である。
【
図7】本出願の一実施形態による第1の実施態様におけるモータハウジングおよびステータコアの周方向展開の概略図である。
【
図8】本出願の一実施形態による第2の実施態様におけるモータハウジングの概略三次元構造図である。
【
図9】本出願の一実施形態による第2の実施態様におけるモータハウジングおよびステータコアの周方向展開の概略図である。
【
図10】本出願の一実施形態による第3の実施態様におけるモータハウジングの概略三次元構造図である。
【
図11】本出願の一実施形態による第3の実施態様におけるモータハウジングおよびステータコアの周方向展開の概略図である。
【
図12】本出願の一実施形態による第4の実施態様におけるモータハウジングの概略三次元構造図である。
【
図13】本出願の一実施形態による第4の実施態様におけるモータハウジングおよびステータコアの周方向展開の概略図である。
【
図14】本出願の一実施形態による第5の実施態様におけるモータハウジングおよびステータコアの周方向展開の概略図である。
【
図15】本出願の一実施形態による別の実施態様におけるモータハウジングおよびステータコアの周方向展開の概略図である。
【
図16】本出願の一実施形態による別の実施態様におけるモータハウジングおよびステータコアの周方向展開の概略図である。
【
図17】本出願の一実施形態による第6の実施態様におけるモータハウジングの概略三次元構造図である。
【
図18】本出願の一実施形態による第6の実施態様におけるモータハウジングおよびステータコアの周方向展開の概略図である。
【
図19】本出願の一実施形態による第7の実施態様におけるモータハウジングの概略三次元構造図である。
【
図20】本出願の一実施形態による第7の実施態様におけるモータハウジングおよびステータコアの周方向展開の概略図である。
【
図21】本出願の一実施形態による第8の実施態様におけるモータハウジングの概略三次元構造図である。
【
図22】本出願の一実施形態による第8の実施態様におけるモータハウジングおよびステータコアの周方向展開の概略図である。
【
図23】本出願の一実施形態による別の実施態様におけるモータハウジングの概略三次元構造図である。
【
図24】
図23に示す実施態様におけるモータハウジングおよびステータコアの周方向展開の概略図である。
【
図25】本出願の一実施形態による第9の実施態様におけるモータハウジングの概略三次元構造図である。
【
図26】本出願の一実施形態による第9の実施態様におけるモータハウジングおよびステータコアの周方向展開の概略図である。
【
図27】本出願の一実施形態による第10の実施態様におけるモータハウジングの概略三次元構造図である。
【
図28】本出願の一実施形態による第10の実施態様におけるモータハウジングおよびステータコアの周方向展開の概略図である。
【
図29】本出願の一実施形態による第11の実施態様におけるモータハウジングおよびステータコアの周方向展開の概略図である。
【
図30】本出願の一実施形態によるモータ冷却システムの概略構造図である。
【
図31】本出願の一実施形態による電動車両の全体構造の概略図である。
【
図32】
図31に示す電動車両のモータコントローラ、ギアボックス、およびモータ冷却システムの間の接続関係を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本出願の実施形態は、モータおよびモータを備えるモータ冷却システムを提供する。モータ冷却システムは、機械設備に適用されてもよい。機械設備は、電動車両を含むが、これに限定されず、例えば、加工機または工業機械などの任意の機械装置であってもよい。モータ冷却システムは、熱交換媒体として冷却液を使用してもよく、モータ冷却システムには、流路が設けられる。冷却液は、流路を流れる際、モータで発生した熱を奪って、モータの放熱および冷却を実現する。モータ冷却システムは、熱交換器および送出装置を備えてもよい。熱交換器は、モータの熱が伝わる冷却液に対して熱交換を行って、冷却液を冷却するように構成されているため、冷却液を再利用することができる。送出装置は、冷却液が流路を流れるように駆動するための冷却液のための動力を提供するように構成される。以下では、添付図面を参照して、本出願の実施形態におけるソリューションについて詳細に説明する。
【0028】
図1および
図2に示すように、本実施形態のモータ10は、モータハウジング12と、第1エンドキャップ11と、第2エンドキャップ15と、ステータコア13と、ステータ巻線14と、ロータ16とを備えてもよい。モータハウジング12、第1エンドキャップ11、第2エンドキャップ15、ステータコア13およびステータ巻線14は、いずれもモータ10のステータ部に属する。ステータコア13は、円筒状であり、ステータコア13の軸方向(すなわち、ステータコア13の中心軸が位置する方向)および周方向(すなわち、ステータコア13の中心軸を中心とし、軸方向に垂直な周方向)が規定されてもよい。モータハウジング12は、ステータコア13の外側を覆い、周方向に沿ってステータコア13を包む。軸方向において、ステータコア13の長さは、モータハウジング12の長さより短くてもよく、ステータコア13の両端部は、モータハウジング12内に引っ込んでいる。第1エンドキャップ11および第2エンドキャップ15はそれぞれ、モータハウジング12の軸方向の両端部に取り付けられ、モータハウジング12と閉キャビティを形成する。ステータコア13、ステータ巻線14、およびロータ16は、いずれも閉キャビティ内に取り付けられる。ロータ16の両端部は、ベアリングを介して第1エンドキャップ11および第2エンドキャップ15に取り付けられてもよい。ステータコア13は、ロータ16の外周を覆い、径方向においてステータコア13とロータ16との間には、エアギャップが残される。ステータコア13は、ティース部13bとヨーク部13aとを備えてもよい。ティース部13bは、周方向に沿って間隔をあけて配置された複数のティースからなり、ティース部13bの外周にヨーク部13aが巻き付けられている。すなわち、ティース部13bは、ステータコア13の内側に形成されており、ステータコア13の内壁にステータコア13の中心軸に向かって複数の溝が設けられて形成されている。ヨーク部13aは、ステータコア13の外側に形成される。ステータコア13は、ステータコア13の軸方向に沿って複数の鉄片(珪素鋼板を含むがこれに限定されない)を順次積層して形成されてもよい。ステータ巻線14は、ティース部13bにおける隣接するティース間の溝に巻き付けられてもよい。軸方向に沿ったステータ巻線14の両端部は共にステータコア13からはみ出てもよいが、モータハウジング12内に引っ込んでいる。
【0029】
図1および
図3を参照すると、モータハウジング12には、分配溝12b、液体流入路12a、および液体流出路12cが設けられ、分配溝12b、液体流入路12a、および液体流出路12cはいずれも、いくつかの冷却液流路として機能する。
【0030】
分配溝12bは、モータハウジング12の内壁に設けられ、液体流入路12aを通ってモータハウジング12に流入する冷却液を収容し、ステータコア13の外壁に冷却液を分配するために使用される(詳細は後述する)。内壁とは、モータハウジング12の、ステータコア13に面する内面であり、内面における分配溝12bの幅(分配溝12bは、隙間のようなものであり、隙間の幅とほぼ同等)は、分配溝12bの長さ(隙間の長さとほぼ同等)よりも短く、長さ寸法における両端部の接続線が位置する方向を延在方向と呼んでもよい。この実施形態では、分配溝12bの延在方向は、要求に応じて設計されてもよく、例えば、
図3に示す周方向Y1であってもよい。当然ながら、延在方向は、周方向Y1に平行でなくてもよく、代わりに、例えば、周方向Y1に対して鋭角であってもよい。また、分配溝12bは、
図3に示す直線溝であってもよい。具体的には、モータハウジング12の内壁が周方向Y1に沿って展開された場合、分配溝12bは、直線に沿って延在する(すなわち、分配溝12bは、1つの延在方向のみを有する)。あるいは、分配溝12bは、非直線溝であってもよい。具体的には、モータハウジング12の内壁が周方向Y1に沿って展開された場合、分配溝12bは、非直線方向(例えば、曲線または少なくとも2つの直線によって形成されたポリライン)に沿って延在する(すなわち、分配溝12bの位置は、異なる延在方向を有する)。分配溝12bの位置は、要求に応じて設計されてもよい。例えば、
図3に示すように、分配溝12bの中心は、モータハウジング12の内壁の軸方向Y2の中間部に位置してもよい。周方向Y1において、分配溝12bの中心位置は、要求に応じて設定されてもよい。少なくとも1つの分配溝12bが存在する。当然ながら、放熱効果を向上させるためにより多くの冷却液を送出するためには、2つ以上の分配溝12bが存在してもよい。分配溝12bが複数存在する場合、分配溝12bの延在方向は、同じであってもよく、または完全に異なっていてもよく、分配溝12bは、基本的にモータハウジング12の内壁を覆っていてもよい。
【0031】
液体流入路12aは、分配溝12bおよびモータハウジング12の外部空間に連通し、モータハウジング12の外部の冷却液を分配溝12bに流入させるために用いられる。
図3に示すように、一実施態様では、液体流入路12aは、モータハウジング12の内壁と外壁との間を通ってもよく、液体流入路12aの両端部はそれぞれ、分配溝12bの溝壁(底壁および/または側壁)およびモータハウジング12の軸方向端面(第1エンドキャップ11または第2エンドキャップ15と嵌合してもよく、その法線方向がステータコア13の軸方向である表面を指す)に開口部を形成してもよい。この場合、液体流入路12aは、(例えば、液体流入路12aの一端部が分配溝12bの底壁に開口部を形成している場合)屈曲していてもよいし、(例えば、液体流入路12aの一端部が分配溝12bの側壁に開口部を形成している場合)直線状であってもよい。あるいは、別の実施態様では、液体流入路12aの一端部が分配溝12bの溝壁(底壁および/または側壁)に開口部を形成してもよく、反対側の他端部が厚さ方向に沿ってモータハウジング12を貫通してもよい。この場合、液体流入路12aは、(例えば、液体流入路12aの一端部が分配溝12bの側壁に開口部を形成している場合)屈曲していてもよいし、(例えば、液体流入路12aの一端部が分配溝12bの底壁に開口部を形成している場合)直線状であってもよい。液体流入路12aの位置は、要求に応じて設計されてもよい。分配溝12bおよびモータハウジング12に連通する外部空間に基づいて、液体流入路12aの位置は、冷却液の流入を容易にするための設計要件を参照してさらに決定されてもよい。少なくとも1つの液体流入路12a(例えば、
図3は、1つの液体流入路12aを示す)が存在する。当然ながら、放熱効率を向上させるために冷却液をより迅速に投入するためには、2つ以上の液体流入路12aが存在してもよく、1つの分配溝12bが1つの液体流入路12aに対応していてもよい。各液体流入路12aの形状や開口位置は、要求に応じて柔軟に設定されてもよい。
【0032】
液体流出路12cは、モータハウジング12の内部キャビティおよび外部空間に連通しており、ステータコア13の外壁(モータハウジング12の内壁に対応)を流れる冷却液は、液体流出路12cを通ってステータコア13から流出してもよい。
図3に示すように、一実施態様では、液体流出路12cの両端部はそれぞれ、モータハウジング12の内壁および軸方向端面に開口部を形成する。この場合、液体流出路12cは、屈曲していてもよい。あるいは、別の実施態様では、液体流出路12cは、モータハウジング12の厚さ方向に沿ってモータハウジング12を貫通して、モータハウジング12の内壁および外壁に開口部を形成してもよい。この場合、液体流出路12cは、直線状であってもよい。液体流出路12cの位置は、要求に応じて設計されてもよい。モータハウジング12に連通する内部および外部空間に基づいて、液体流出路12cの位置は、冷却液の流入を容易にするための設計要件を参照してさらに決定されてもよい。少なくとも1つの液体流出路12cが存在する。当然ながら、放熱効率を向上させるために冷却液をステータコア13の異なる位置から流出させるためには、2つ以上の液体流出路12c(例えば、
図3は、モータハウジング12の軸方向Y2の両端部に位置する2つの液体流出路12cを示す)が存在してもよい。各液体流出路12cの形状や開口位置は、要求に応じて柔軟に設定されてもよい。
【0033】
図2に示すように、ステータコア13の外壁にはステータ溝13cが設けられ、ステータ溝13cは、分配溝12bから冷却液を受け入れ、ステータコア13上の冷却液用流路として機能してもよい(詳細は後述する)。外壁とは、ステータコア13の、モータハウジング12の内壁に面する外面、すなわちヨーク部13aの外面である。本実施形態では、ステータ溝13cの延在方向(延在方向の意味は上記と同じ)は、分配溝12bの延在方向と交差する。すなわち、ステータ溝13cと分配溝12bの延在方向は平行ではなく、交差して角度をなしている。例えば、
図3に示すように、一実施態様では、ステータ溝13cの延在方向は、軸方向Y2であってもよく、分配溝12bの延在方向は、周方向Y1であってもよく、軸方向Y2は、周方向Y1に対して垂直である。他の実施態様では、ステータ溝13cの延在方向は、分配溝12bと交差する別の方向であってもよく、例えば、軸方向Y2に対して鋭角な方向であってもよい。分配溝12bと同様に、ステータ溝13cは、
図2および
図3に示す直線溝であってもよく、または非直線溝であってもよい。ステータ溝13cの位置は、分配溝12bが液体流出路12cに連通している限り、要求に応じて設計されてもよい。ステータ溝13cは、少なくとも1つ存在する。当然ながら、放熱効果を向上させるためにより多くの冷却液をステータコア13に接触させるためには、ステータ溝13cが2つ以上存在してもよい。ステータ溝13cが複数存在する場合、ステータ溝13cの延在方向は同じであってもよいし、または完全に異なっていてもよい。ステータ溝13cの少なくとも一部の延在方向を第1方向とし、分配溝12bの少なくとも一部の延在方向を第2方向とする。第1方向は、第2方向と交差する。1つのステータ溝13cは、いくつかの液体流出路12c(例えば、
図3は、2つの液体流出路12cに連通する1つのステータ溝13cを示す)に連通してもよく、またはいくつかのステータ溝13cは、いくつかの分配路およびいくつかの液体流出路12cに一対一で連通してもよい。
【0034】
本実施形態では、ステータ溝13cの延在方向の両端部は共に閉じており、すなわち、ステータ溝13cの両端部はいずれもステータコア13の軸方向端面を貫通していない。具体的には、
図4に示すように、一実施態様では、ステータコア13を構成する各鉄片の周囲にノッチが設けられている。ステータコア13の軸方向の2つの端部の鉄片131および鉄片132(各端部の少なくとも1つの鉄片)において、鉄片131上であって、ノッチ131bが設けられていない部分131aは、鉄片131に隣接する鉄片のノッチに位置合わせされている。同様に、鉄片132上であって、ノッチ132bが設けられていない部分132aは、鉄片132に隣接する鉄片のノッチに位置合わせされている。(換言すれば、各端部の鉄片上であって、ノッチが設けられていない部分は、鉄片に隣接する鉄片のノッチに位置合わせされており、)鉄片131と鉄片132との間の残りの鉄片上の全てのノッチが順次連通して、2つの端部で閉じられた1つのステータ溝13cを形成する(
図4では、図面を簡略にするために、軸方向の2つの端部の間の鉄片は細分されていない)。本実施態様では、いくつかのノッチは、各鉄片の周囲に離間して配されてもよく、軸方向の2つの端部の間の鉄片上の対応する位置にあるいくつかのノッチは、順次連通して、いくつかのステータ溝13cを形成する。また、軸方向の2つの端部の間の鉄片上の対応する位置にあるいくつかのノッチは、順次位置合わせされ、それによって、形成されたステータ溝13cが軸方向に沿って延在する。当然ながら、軸方向の2つの端部の間の鉄片上の対応する位置にあるいくつかのノッチは、代替的に、周方向に沿って順次位置を変えて配置されてもよく、それによって、形成されたステータ溝13cが軸方向に対して鋭角な方向に沿って延在する。本実施態様のソリューションによれば、単一の鉄片の縁部にノッチを設けるだけでよく、組み立て時にいくつかのそのような鉄片が順次積層されるので、鉄片の対応する位置にあるノッチが順次連通し、最も外側に位置する鉄片を特定の角度だけ回転させ、鉄片上であって、ノッチが設けられていない位置を隣接する鉄片のノッチに位置合わせすることによって、ステータコア13を得ることができる。ステータコア13を構成する全ての鉄片は、同じ構造であり、同じプロセスを用いて製造されるので、設計および製造コストが大幅に低減される。当然ながら、ステータコア13は、他の方法で製造されてもよい。例えば、2種類の鉄片、すなわち、周囲にノッチが設けられていない鉄片と、周囲にノッチが設けられた鉄片とを別々に設計、加工し、ノッチが設けられていない鉄片を最も外側に組み付け、ノッチが設けられた鉄片を中間に組み付けるようにしてもよい。
【0035】
本実施形態では、液体流入路12a、分配溝12b、ステータ溝13c、および液体流出路12cは、互いに連通して、冷却液流路を形成する。
図3に示すように、一実施態様では、冷却液は、液体流入路12aを通ってモータハウジング12の内部キャビティに入り、分配溝12b、ステータ溝13c、および液体流出路12cに順次流入し、最後に液体流出路12cを通ってステータコア13から流出してもよい。冷却液が分配溝12bからステータ溝13cに入ると、分配溝12bは、ステータ溝13cの軸方向の中間部に位置してもよいため、冷却液は、ステータ溝13cの中間部からステータ溝13cの2つの端部に流れ、ステータ溝13cの2つの端部の2つの液体流出路12cから流出してもよい。他の実施態様では、分配溝12bおよびステータ溝13c内の冷却液の流れの順序は、分配溝12bおよびステータ溝13cの分布に基づいてもよく、分配溝12bから順次ステータ溝13cに流入することに限定されない(以下の実施態様で説明する)。冷却液がステータ溝13cを流れる際、ステータコア13は、熱交換によって冷却されてもよい。
図1および
図3を参照すると、冷却液は、ステータコア13から液体流出路12cを通って流出した後、(液体流出路12cが
図1おける上部に位置する場合)ステータ巻線14の端部に噴霧されて、ステータ巻線14の熱をさらに放散してもよい。
【0036】
本実施形態のソリューションによれば、分配溝12b、液体流入路12a、および液体流出路12cがモータハウジング12に設けられ、ステータコア13の外壁にはステータ溝13cが設けられることで、液体流入路12a、分配溝12b、ステータ溝13c、および液体流出路12cは、互いに連通して、冷却液流路を形成する。ステータコア13の外壁にはステータ溝13cが設けられているので、冷却液とステータコア13との接触面積が大きくなり、冷却液がステータコア13に十分に接触することができ、それによって、冷却液とステータコア13との接触熱抵抗が小さくなり、ステータコア13の放熱効率が向上する。延在方向におけるステータ溝13cの両端部は共に閉じられているので、冷却液は、ステータ溝13cの両端部から流出するのではなく、液体流出路12cを通ってのみ流出することができ、ステータコア13上であって、放熱を必要とする領域が十分に放熱されることが保証され、ステータ溝13cの両端部を通る冷却液の急速な損失(特にステータ溝13cが複数ある場合、各ステータ溝13cの両端部が開口していると、冷却液が前のステータ溝13cを流れる際に失われ続け、後続のステータ溝13cに冷却液が分配されず、ステータコア13上であって、ステータ溝13cが位置する領域で放熱不良が発生するおそれがある)のためにステータコア13の熱が均等に放散されないという欠点が回避され、大量の冷却液がステータ溝13cの両端部から流出し、ロータ16に接触することでロータ16の運動エネルギーが失われることよってモータ10からの動力出力が影響を受けることを回避することができる。また、冷却液流路は、分配溝12bの延在方向とステータ溝13cの延在方向が交差することで格子状に構成されており、製品の製造プロセスを十分に考慮した流路構造設計となっており、モータ10の製造要求を満たしている。特に、分配溝12bは、周方向に沿って延在するように設計されており、鋳造等のプロセスによってモータハウジング12の内壁に周方向の分配溝12bを容易に加工することができる。ステータ溝13cは、軸方向に沿って延在するように設計され、単一の鉄片の縁部にノッチを設けるだけでよく、組み立て時にいくつかのそのような鉄片が順次積層され、ノッチが位置合わせされることでステータ溝13cが得られるので、いくつかの鉄片は、同じ設計構造を有し、同じ機械加工プロセスを採用することができ、それによって、設計および製造コストが大幅に単純化される。また、流路がモータハウジング12に集約されるのではなく、ステータコア13およびモータハウジング12に分散されることで、モータハウジング12に設けられる流路の数が多いことに起因してモータハウジング12の厚さが大きく増加する欠点(流路を設けながらモータハウジング12の強度を確保するためには、それに応じてモータハウジング12の厚さを増加させる必要がある)を回避することができ、モータハウジング12は、可能な限り薄くすることができ、コストが低減される。
【0037】
以下では、いくつかの具体的な実施態様における、本実施形態のソリューションを十分かつ詳細に説明する。
【0038】
図5および
図6に示すように、具体的には、第1の実施態様では、分配溝は、2つの第1分配溝12b1および2つの第2分配溝12b2を備えてもよい。ステータコア13の軸方向において、2つの第1分配溝12b1は、2つの第2分配溝12b2の間に位置し、2つの第2分配溝12b2は、離間して配され、モータハウジング12の軸方向の2つの端面にそれぞれ近接している。各第1分配溝12b1は、ステータコア13の周方向において、2つの第2分配溝12b2から離間して配されている。液体流入路12aは、第1分配溝12b1およびモータハウジング12の外部空間に連通している。
図6を参照すると、3つのステータ溝13cが周方向に沿って離間して配され、液体流入路12aに連通する第1分配溝12b1は、第1ステータ溝13cを介して2つの第2分配溝12b2に連通し、2つの第2分配溝12b2は、第2ステータ溝13cを介して他方の第1分配溝12b1に連通し、他方の第1分配溝12b1の両端部は、それぞれ第2ステータ溝13cおよび第3ステータ溝13cに連通し、第3ステータ溝13cは、2つの液体流出路12cに連通し、2つの液体流出路12cはそれぞれ、第3ステータ溝13cの両端部に位置する。
【0039】
この第1の実施態様では、2つのステータ溝13cの延在方向は共に、軸延在方向であってもよく、2つの第1分配溝12b1および2つの第2分配溝12b2は共に、周方向に沿って延在してもよい。他の実施態様では、ステータ溝13cの少なくとも一部の延在方向が分配溝の少なくとも一部の延在方向と交差する(すなわち、少なくとも1つのステータ溝13cは、1つの分配溝の延在方向と交差する)ことを前提として、ステータ溝13cおよび分配溝の延在方向は、要求に応じて設計されてもよい。例えば、2つの第2分配溝12b2は、延在方向が異なっていてもよく、1つのステータ溝13cは、1つの第2分配溝12b2の延在方向とのみ交差してもよく、または2つの第2分配溝12b2の延在方向の両方と交差してもよい。この第1の実施態様の
図4から
図6は、2つの第1分配溝12b1、2つの第2分配溝12b2、および3つのステータ溝13cのみを示しており、これは簡略化された表現であることを理解されたい。実際には、第1分配溝12b1、第2分配溝12b2、およびステータ溝13cの数は、要求に応じて設定されてもよい。例えば、少なくとも1つの第1分配溝12b1が存在してもよく、少なくとも2 * N(N=1、2、3、・・・)の第2分配溝12b2が存在してもよく、少なくとも2つのステータ溝13cが存在してもよい(ステータ溝13cが2つ存在する場合、第1分配溝12b1は1つ、第2分配溝12b2は2つ存在する)。
【0040】
図7に示すように、この第1の実施態様では、液体流入路12a、一方の第1分配溝12b1、第1ステータ溝13c、2つの第2分配溝12b2、第2ステータ溝13c、他方の第1分配溝12b1、第3ステータ溝13c、および2つの液体流出路12cは、順次連通して、流路を形成する。冷却液は、液体流入路12aからモータハウジング12の内部キャビティに流入し、一方の第1分配溝12b1、第1ステータ溝13c、2つの第2分配溝12b2、第2ステータ溝13c、他方の第1分配溝12b1、第3ステータ溝13cに順次流入し、最後に2つの液体流出路12cを介してステータコア13から流出する。異なる数の第1分配溝12b1、第2分配溝12b2、およびステータ溝13cが存在する場合、第1分配溝12b1、ステータ溝13c、第2分配溝12b2、ステータ溝13c、第1分配溝12b1、・・・の流れ順序に基づいて、冷却液が循環する。全体的な流れの傾向から、冷却液は、モータハウジング12の内壁上を一方向に(例えば、時計回りまたは反時計回り)流れる。冷却液がステータ溝13cを流れる際、ステータコア13は、熱交換によって冷却されてもよい。
図1および
図7を参照すると、冷却液は、2つの液体流出路12cを通ってステータコア13から流出した後、(液体流出路12cが
図1おける上部に位置する場合)ステータ巻線14の両端部に噴霧されて、ステータ巻線14の熱をさらに放散してもよい。第1分配溝12b1は、ステータ溝13cの2つの端部の間に位置しているため、第1分配溝12b1からステータ溝13cに入った冷却液は、ステータ溝13cの中間部からステータ溝13cの2つの端部に流れてもよい。2つの第2分配溝12b2は、ステータ溝13cの両端部に位置しているため、2つの第2分配溝12b2からステータ溝13cに入った冷却液は、ステータ溝13cの2つの端部からステータ溝13cの中間部に流れてもよい。その流路設計によって、冷却液がモータハウジング12の内壁とステータコア13の外壁との間で滑らかに連結され、ステータコア13の外壁を完全に覆うことができ、それによって、放熱効率が確保される。また、冷却液が1つの流入口から集中的に流入するように、1つの液体流入路12aが設計されることで、モータハウジング12の液体流入路12aの設計が簡素化され、冷却液の流れ方向の正確な制御が容易となり、期待される放熱効果が得られる。他の実施態様では、異なる数の液体流入路12aおよび液体流出路12cが存在してもよい。例えば、少なくとも2つの液体流入路12aが存在し、1つまたは3つ以上の液体流出路12cが存在する。
【0041】
図8および
図9に示すように、第2の実施態様では、第1の実施態様に基づいて、モータハウジング12の内壁に、液体戻り溝12dがさらに設けられてもよく、液体戻り溝12dの延在方向の両端部は、ステータコア13からはみ出ている。この実施態様では、液体戻り溝12dの両端部は共に、モータハウジング12の軸方向端面を貫通してもよいが、当然ながら、少なくとも一方の端部は、モータハウジング12の軸方向端面を貫通しなくてもよい。液体戻り溝12dの延在方向は、ステータコア13の軸方向であるが、当然ながら、他の適切な方向、例えば軸方向に対して鋭角な方向でもよい。液体戻り溝12dは、直線状の溝であってもよいし、非直線状の溝であってもよい。液体戻り溝12dは、熱交換器に連通していてもよく、液体戻り溝12dは、液体流出路12cから流出する冷却液を受け入れ、冷却液を熱交換器に送出して、冷却する。冷却された冷却液の温度は低下し、冷却液は放熱のために再利用されてもよい。この実施態様では、液体流出路12cから流出する冷却液は、液体戻り溝12dに自由に落下してもよい。換言すれば、液体流出溝および液体戻り溝12dがステータコア13の径方向両端部にそれぞれ位置し、モータ10が装着位置に位置する場合、液体出口溝は、モータ10の上部に位置し、液体戻り溝12dは、モータ10の下部に位置する。あるいは、液体流出路12cは、配管を介して液体戻り溝12dに連通してもよく、液体流出路12cから流出する冷却液は、配管を通って液体戻り溝12dに流入してもよい。この場合、上述したように、液体流出路12cと液体戻り溝12dとの相対位置は限定されない。この実施態様では、液体戻り溝12dは、高温の冷却液を収容するが、低温の冷却液は、液体流入路12aおよび液体流入路12aに連通する分配溝を流れるので、放熱が、高温の冷却液と低温の冷却液との遭遇および混合による影響を受けないようにするために、液体流入路12aおよび液体流入路12aに連通する第1分配溝12b1は共に、液体戻り溝12dから離間して配されてもよい。
【0042】
図10および
図11に示すように、第3の実施態様では、第2の実施態様に基づいて、モータハウジング12の内壁に、いくつかの第1分配溝12b1およびいくつかの第2分配溝12b2が設けられる。いくつかの第1分配溝12b1は、ステータコア13の周方向に沿って離間して配されており、2つの第2分配溝12b2は、各2つの第1分配溝12b1の間に設けられている。いくつかの第1分配溝12b1は、液体戻り溝12dに隣接し、液体戻り溝12dの延在方向の両側にそれぞれ位置する2つの第1分配溝12b1を備える。一方の第1分配溝12b1は、液体流入路12aに連通し、液体戻り溝12dから離間して配されており、他方の第1分配溝12b1は、液体戻り溝12dに連通している。冷却液は、液体流入路12aから液体流入路12aに連通した第1分配溝12b1に入り、ステータ溝13c、2つの第2分配溝12b2、ステータ溝13c、第1分配溝12b1、ステータ溝13c、2つの第2分配溝12b2、・・・に順次流入する。これにより、冷却液が液体流出路12cと連通するステータ溝13cに流入するまで循環する。この場合、冷却液は、2つの経路に分けられ、一方の経路は、液体流出路12cを通ってステータコア13流出し、液体戻り溝12dに入り、他方の経路は、液体戻り溝12dに連通する第1分配溝12b1に流入するまで、ステータ溝13cから元の流れ方向および流れ順に沿って後続の第1分配溝12b1または後続の第2分配溝12b2に流れ続け、液体戻り溝12dに合流する。この実施態様では、液体流入路12aに連通する第1分配溝12b1が液体戻り溝12dから離間して配されているため、モータハウジング12に入った低温の冷却液が液体戻り溝12d内の高温の冷却液と混合されることがなく、それによって、放熱効果が確保される。また、モータハウジング12の内壁を冷却液が一方向に流れるため、モータハウジング12の流路設計が簡素化され、冷却液の流れ方向の正確な制御が容易になり、期待される放熱効果が得られる。
【0043】
図12および
図13に示すように、第4の実施態様では、第1の実施態様とは異なり、冷却液がモータハウジング12の2つの流入口から流入するので、モータハウジング12の内壁上の冷却液は、双方向に流れる全体的な流れの傾向を有する。具体的には、モータ10は、流路Aおよび流路Bを備え、流路Aおよび流路Bはそれぞれ、1つの液体流入路12aと、一方の第1分配溝12b1と、第1ステータ溝13cと、2つの第2分配溝12b2と、第2ステータ溝13cと、他方の第1分配溝12b1と、第3ステータ溝13cと、2つの液体流出路12cとを備えてもよい。流路Aおよび流路B内の2つの液体流入路12aは、離間して配されており、2つの液体流入路12aに連通する2つの第1分配溝12b1からもそれぞれ離間して配されており、流路Aおよび流路Bは、第3ステータ溝13cおよび2つの液体流出路12cを共有している(すなわち、第3ステータ溝13cと2つの液体流出路12cは、流路Aおよび流路Bによって共有されてもよい)。
図12は、モータハウジング12およびステータコア13の周方向展開の概略図である。最上部の第3ステータ溝13cおよび2つの液体流出路12cは、流路Aおよび流路Bによって共有されてもよく、最下部の第1分配溝は、実際には最上部の第3ステータ溝13cに連通している。モータハウジング12の内壁において、流路Aおよび流路Bは、液体流入路12aに連通する第1分配溝12b1からそれぞれ反対方向に沿って延在し、最終的に合流する。冷却液は、2つの液体流入路12aからモータハウジング12に流入する。モータハウジング12の内壁を流れる2つの冷却液の経路はそれぞれ、反対方向(一方が時計回り、他方が反時計回り)に沿って流れ、最終的に第3ステータ溝13cに合流し、2つの液体流出路12cから流出する。流路Aおよび流路Bの各々について、冷却液は、第1の実施態様で説明した流れの順序で流れる。具体的には、冷却液は、液体流入路12a、一方の第1分配溝12b1、第1ステータ溝13c、2つの第2分配溝12b2、第2ステータ溝13c、他方の第1分配溝12b1、第3ステータ溝13cに順次流入し、最後に2つの液体流出路12cを通ってステータコア13から流出する。この第4の実施態様は、第1の実施態様の技術的効果を有するだけでなく、モータハウジング12上に2つの並列流路(本明細書における「流路」とは、第1分配溝12b1および第2分配溝12b2によって形成される流路を指す)を設計することによって、冷却液は、2つの並列流路内を反対方向に沿って流れるので、ステータ溝13cにより迅速に分配され、ステータコア13の迅速な放熱を実現することができる。
【0044】
あるいは、
図14に示すように、第5の実施態様では、第4の実施態様とは異なり、モータ10の流路Aおよび流路Bは、依然として合流するが、異なる構成を有する。具体的には、流路Aは、第3の実施態様の流路Aと同じであってもよいが、流路Bは、1つの液体流入路12a、1つの第1分配溝12b1、1つのステータ溝13c、および2つの第2分配溝12b2を備え、2つの第2分配溝12b2は、前の流路(
図13は、モータハウジング12およびステータコア13の周方向展開の概略図であり、最下部の2つの第2分配溝は、実際には最上部の第3ステータ溝13cに連通している)の第3ステータ溝13cに連通する。この実施態様では、モータ10の流路設計ソリューションが開発され、異なる構造を有するモータ10の放熱要件を満たすことができる。
【0045】
あるいは、
図15および
図16に示すように、他の実施態様では、第4の実施形態とは異なり、モータ10の流路Aおよび流路Bは互いに独立しており、合流しない。具体的には、流路Aおよび流路Bはそれぞれ、液体流入路12a、第1分配溝12b1、ステータ溝13c、第2分配溝12b2、および液体流出路12cを備えてもよい。流路A内の冷却液および流路B内の冷却液は、分離されており、合流しない。
図14に示す実施態様では、2つの流路は、同じ構成を有し、流路Aと流路Bは、構造が対称である。
図15に示す実施態様では、2つの流路は、異なる構成を有し、流路Aおよび流路Bは、構造が非対称である。この実施態様では、モータ10の流路設計ソリューションが開発され、異なる構造を有するモータ10の放熱要件を満たすことができる。
【0046】
図17および
図18に示すように、第6の実施態様では、第4の実施態様に基づいて、モータハウジング12の内壁に、液体戻り溝12dがさらに設けられてもよく、液体戻り溝12dの延在方向の両端部は、ステータコア13からはみ出ている。この実施態様では、液体戻り溝12dの両端部は、モータハウジング12の軸方向端面を貫通してもよいが、当然ながら、少なくとも一方の端部は、モータハウジング12の軸方向端面を貫通しなくてもよい。液体戻り溝12dの延在方向は、ステータコア13の軸方向であるが、当然ながら、他の適切な方向、例えば軸方向に対して鋭角な方向でもよい。液体戻り溝12dは、直線状の溝であってもよいし、非直線状の溝であってもよい。液体戻り溝12dは、熱交換器に連通していてもよく、液体戻り溝12dは、液体流出路12cから流出する冷却液を受け入れ、冷却液を熱交換器に送出して、冷却する。冷却された冷却液の温度は低下し、冷却液は放熱のために再利用されてもよい。この実施態様では、液体流出路12cから流出する冷却液は、液体戻り溝12dに自由に落下してもよい。換言すれば、液体流出溝および液体戻り溝12dがステータコア13の径方向両端部にそれぞれ位置し、モータ10が装着位置に位置する場合、液体出口溝は、モータ10の上部に位置し、液体戻り溝12dは、モータ10の下部に位置する。あるいは、液体流出路12cは、配管を介して液体戻り溝12dに連通してもよく、液体流出路12cから流出する冷却液は、配管を通って液体戻り溝12dに流入してもよい。この場合、上述したように、液体流出路12cと液体戻り溝12dとの相対位置は限定されない。この実施態様では、液体戻り溝12dは、高温の冷却液を収容するが、低温の冷却液は、流路Aおよび流路Bの液体流入路12aならびに液体流入路12aに連通する第1分配溝12b1を流れ、放熱が、高温の冷却液と低温の冷却液との遭遇および混合による影響を受けないようにするために、流路Aの液体流入路12aおよび液体流入路12aに連通する第1分配溝12b1は、液体戻り溝12dの一方側に液体戻り溝12dから離間して設けられてもよく、流路Bの液体流入路12aおよび液体流入路12aに連通する第1分配溝12b1は、液体戻り溝12dの他方側に液体戻り溝12dから離間して設けられている。
【0047】
図19および
図20に示すように、第7の実施態様では、前述の実施態様とは異なり、分配溝は、第1分配溝12b3および第2分配溝12b4を備えてもよい。第1分配溝12b3および第2分配溝12b4は共に、ステータコア13の軸心回りに延在しており、第1分配溝12b3および第2分配溝12b4の両端部は、延在方向に離間して配される(すなわち、閉ループを形成するように囲わない)。第1分配溝12b3と第2分配溝12b4は、内壁の軸方向の両端部に離間して配される。液体流入路12aは、第1分配溝12b3およびモータハウジング12の外部空間に連通し、液体流入路12aは、第1分配溝12b3の一端部に位置してもよい。いくつかのステータ溝13c(例えば、
図20に示す3つ)は、離間して配され、いずれも第1分配溝12b3と第2分配溝12b4との間に位置し、第1分配溝12b3および第2分配溝12b4に連通している。1つのステータ溝13cは、液体流出路12cに連通している。ステータ溝13cの少なくとも一部の延在方向は、第1分配溝12b3および第2分配溝12b4の少なくとも一方の延在方向と交差する。例えば、第1分配溝12b3および第2分配溝12b4は共に、ステータコア13の周方向に沿って延在してもよい。ステータ溝13cの延在方向は、ステータコア13の軸方向であってもよく、ステータ溝13cは、第1分配溝12b3および第2分配溝12b4の延在方向と交差する。他の実施態様では、第1分配溝12b3および/または第2分配溝12b4は、別の適切な方向に沿って延在してもよい。例えば、第1分配溝12b3および/または第2分配溝12b4は、モータハウジング12の内壁を螺旋状に延在してもよい。ステータ溝13cは、ステータ溝13cに適合する延在方向を有してもよい。例えば、少なくとも1つのステータ溝13cは、軸方向に対して鋭角な方向に沿って延在してもよい。あるいは、第1分配溝12b3および/または第2分配溝12b4は、閉ループを形成するように囲ってもよい。ステータコア13は1つでもよい。
【0048】
図20に示すように、この第7の実施態様では、液体流入路12a、第1分配溝12b3、ステータ溝13c、第2分配溝12b4、および液体流出路12cは、順次連通して、冷却液流路を形成する。冷却液は、液体流入路12aから第1分配溝12b3に入ると、第1分配溝12b3を流れながら各ステータ溝13cに流入し、各ステータ溝13cを通って第2分配溝12b4に流入する。第1分配溝12b3および第2分配溝12b4では、冷却液が一端部から他端部まで一方向に流れる。冷却液は、液体流出路12cに連通したステータ溝13cに流入すると、液体流出路12cを通ってステータコア13から流出する。他の実施態様では、第1分配溝12b3または第2分配溝12b4、あるいはその両方が閉ループを形成するように囲っている場合、冷却液は、閉ループ内を双方向に流れてもよい。冷却液がステータ溝13cを流れる際、ステータコア13は、熱交換によって冷却されてもよい。
図1および
図20を参照すると、冷却液は、液体流出路12cを通ってステータコア13から流出した後、(液体流出路12cが
図1おける上部に位置する場合)ステータ巻線14の端部に噴霧されて、ステータ巻線14の熱をさらに放散してもよい。この実施態様では、新しい流路設計ソリューションが開発され、これは、前述の実施態様の技術的効果を有するだけでなく、異なる構造を有するモータ10の放熱要件を満たすこともできる。他の実施態様では、第2分配溝12b4は設けられなくてもよいが、第1分配溝12b3に連通する各ステータ溝13cは、液体流出路12cに連通する必要があるので、冷却液が第1分配溝12b3から各ステータ溝13cに分配され、各ステータ溝13cに対応する液体流出路12cを通って流出する。
【0049】
図21および
図22に示すように、第8の実施態様では、第7の実施態様に基づいて、モータハウジング12の内壁に、液体戻り溝12dがさらに設けられてもよく、液体戻り溝12dの延在方向の両端部は、ステータコア13からはみ出ている。この実施態様では、液体戻り溝12dの両端部は共に、モータハウジング12の軸方向端面を貫通してもよいが、当然ながら、少なくとも一方の端部は、モータハウジング12の軸方向端面を貫通しなくてもよい。液体戻り溝12dの延在方向は、ステータコア13の軸方向であるが、当然ながら、他の適切な方向、例えば軸方向に対して鋭角な方向でもよい。液体戻り溝12dは、直線状の溝であってもよいし、非直線状の溝であってもよい。液体戻り溝12dは、熱交換器に連通していてもよく、液体戻り溝12dは、液体流出路12cから流出する冷却液を受け入れ、冷却液を熱交換器に送出して、冷却する。冷却された冷却液の温度は低下し、冷却液は放熱のために再利用されてもよい。この実施態様では、液体流出路12cから流出する冷却液は、液体戻り溝12dに自由に落下してもよい。換言すれば、液体流出溝および液体戻り溝12dがステータコア13の径方向両端部にそれぞれ位置し、モータ10が装着位置に位置する場合、液体出口溝は、モータ10の上部に位置し、液体戻り溝12dは、モータ10の下部に位置する。あるいは、液体流出路12cは、配管を介して液体戻り溝12dに連通してもよく、液体流出路12cから流出する冷却液は、配管を通って液体戻り溝12dに流入してもよい。この場合、上述したように、液体流出路12cと液体戻り溝12dとの相対位置は限定されない。この実施態様では、液体戻り溝12dは、高温の冷却液を収容するが、低温の冷却液は、第1分配溝12b3および第2分配溝12b4を流れるので、放熱が、高温の冷却液と低温の冷却液との遭遇および混合による影響を受けないようにするために、液体戻り溝12dは、第1分配溝12b3の両端部と第2分配溝12b4の両端部との間を通過してもよく、第1分配溝12b3の両端部は、液体戻り溝12dから離間して配されたままとなり、第2分配溝12b4の両端部も液体戻り溝12dから離間して配される。
【0050】
あるいは、
図23および
図24に示すように、他の実施態様では、第8の実施態様とは異なり、第1分配溝12b3および第2分配溝12b4は、基本的にステータコア13の軸を中心としており、第1分配溝12b3と第2分配溝12b4の両端部間の間隔は、比較的小さい。第1分配溝12b3の、液体流入路12aが設けられていない一端は、液体戻り溝12dに連通しており、第2分配溝12b4の一端も液体戻り溝12dに連通している。第1分配溝12b3の端部と第2分配溝12b4の端部は、液体戻り溝12dの同じ側に位置している。このように、冷却液は、液体流出路12cで2つの経路に分割され、一方の経路は、液体流出路12cを通ってステータコア13から流出し、液体戻り溝12dに入り、他方の経路は、元の流れ方向に沿って第1分配溝12b3を流れ続け、ステータ溝13cを通って第2分配溝12b4に流入し、最終的に液体戻り溝12dに合流する。この実施態様では、新しい流路設計ソリューションが開発され、異なる構造を有するモータ10の放熱要件を満たすことができる。当然ながら、第1分配溝12b3の、液体流入路12aが設けられていない一端部が液体戻り溝12dに連通し、液体流入路12aの一端部が液体戻り溝12dから離間して配されていることを前提として、第2分配溝12b4の両端部も液体戻り溝12dに連通してもよい。
【0051】
図25および
図26に示すように、第9の実施態様では、第7の実施態様とは異なり、モータハウジング12には、離間して配された2つの液体流入路12aが設けられ、第1分配溝12b3の延在方向における両端部は、離間して配され、各端部は、1つの液体流入路12aに連通している。第1分配溝12b3および第2分配溝12b4では、冷却液が2つの端部から中間部に向かって双方向に流れる。具体的には、2つの冷却液の経路が2つの液体流入路12aからそれぞれ第1分配溝12b3の両端部に入り、一方の経路が第1分配溝12b3を時計回りに流れ、他方の経路が第1分配溝12b3を反時計回りに流れる。第1分配溝12b3の冷却液の2つの経路は、ステータ溝13cを通って第2分配溝12b4に流入し、第2分配溝12b4を2つの端部から中間部に流れてもよい。第1分配溝12b3および第2分配溝12b4の2つの冷却液の経路が液体流出路12cに連通するステータ溝13cに流入する場合、冷却液は、液体流出溝を通ってステータコア13から流出してもよい。この実施態様では、第1分配溝12b3および第2分配溝12b4は共に、並列流路として機能し、冷却液は、並列流路を反対方向に沿って流れるので、より迅速にステータ溝13cに分配され、ステータコア13の迅速な放熱を実現することができる。
【0052】
図27および
図28に示すように、第10の実施態様では、第9の実施態様に基づき、モータハウジング12の内壁に、液体戻り溝12dがさらに設けられてもよく、液体戻り溝12dの延在方向の両端部は、ステータコア13からはみ出ている。この実施態様では、液体戻り溝12dの両端部は、モータハウジング12の軸方向端面を貫通してもよいが、当然ながら、少なくとも一方の端部は、モータハウジング12の軸方向端面を貫通しなくてもよい。液体戻り溝12dの延在方向は、ステータコア13の軸方向であるが、当然ながら、他の適切な方向、例えば軸方向に対して鋭角な方向でもよい。液体戻り溝12dは、直線状の溝であってもよいし、非直線状の溝であってもよい。液体戻り溝12dは、熱交換器に連通していてもよく、液体戻り溝12dは、液体流出路12cから流出する冷却液を受け入れ、冷却液を熱交換器に送出して、冷却する。冷却された冷却液の温度は低下し、冷却液は放熱のために再利用されてもよい。この実施態様では、液体流出路12cから流出する冷却液は、液体戻り溝12dに自由に落下してもよい。換言すれば、液体流出溝および液体戻り溝12dがステータコア13の径方向両端部にそれぞれ位置し、モータ10が装着位置に位置する場合、液体出口溝は、モータ10の上部に位置し、液体戻り溝12dは、モータ10の下部に位置する。あるいは、液体流出路12cは、配管を介して液体戻り溝12dに連通してもよく、液体流出路12cから流出する冷却液は、配管を通って液体戻り溝12dに流入してもよい。この場合、上述したように、液体流出路12cと液体戻り溝12dとの相対位置は限定されない。この実施態様では、液体戻り溝12dは、高温の冷却液を収容するが、低温の冷却液は、第1分配溝12b3および第2分配溝12b4を流れるので、放熱が、高温の冷却液と低温の冷却液との遭遇および混合による影響を受けないようにするために、液体戻り溝12dは、第1分配溝12b3の両端部と第2分配溝12b4の両端部との間を通過してもよく、第1分配溝12b3の両端部は、液体戻り溝12dから離間して配されたままとなり、2つの液体流入路12aは共に液体戻り溝12dから離間して配され、第2分配溝12b4の両端部も液体戻り溝12dから離間して配される。当然ながら、第2分配溝12b4の少なくとも一端部も液体戻り溝12dに連通してもよい。
【0053】
図29に示すように、第11の実施態様では、前述の実施態様とは異なり、モータハウジング12の内壁に、第1の組の分配溝および第2の組の分配溝が設けられる。第1の組の分配溝は、複数の第1分配溝12b5を含み、モータハウジング12の内壁の軸方向の一端部に配される。第2の組の分配溝は、複数の第2分配溝12b6を含み、モータハウジング12の内壁の軸方向Y2の他端部に配される。第1の組の分配溝の第1分配溝12b5は、ステータコア13の軸の周りに順次離間して配され、第2の組の分配溝の第2分配溝12b6も、ステータコア13の軸の周りに順次離間して配される。また、第1分配溝12b5および第2分配溝12b6は、ステータコア13の周方向Y1に交互に配される。すなわち、各2つの隣接する第1分配溝12b5の間に1つの第2分配溝12b6が設けられ、第2分配溝12b6は、2つの第1分配溝12b5の両方から離間して配され、各2つの隣接する第2分配溝12b6の間に1つ第1分配溝12b5が設けられ、第1分配溝12b5は、2つの第2分配溝12b6の両方から離間して配される。液体流入路12aは、少なくとも1つあればよく、1つの液体流入路12aは、1つの第1分配溝12b5に対応して連通する。ステータ溝13cもいくつか存在し、各隣接する第1分配溝12b5と第2分配溝12b6との間に1つのステータ溝13cが配される。ステータ溝13cは、第1分配溝12b5および第2分配溝12b6の両方に連通する。ステータ溝13cの少なくとも一部の延在方向は、第1分配溝12b5の少なくとも一部の延在方向と交差し、および/またはステータ溝13cの少なくとも一部の延在方向は、第2分配溝12b6の少なくとも一部の延在方向と交差する。例えば、第1分配溝12b5および第2分配溝12b6は共に、ステータコア13の周方向に沿って延在してもよく、ステータ溝13cの延在方向は、ステータコア13の軸方向であってもよく、ステータ溝13cは、第1分配溝12b5および第2分配溝12b6の延在方向と交差する。他の実施態様では、単一の第1分配溝12b5および/または単一の第2分配溝12b6は、別の適切な方向に沿って延在してもよい。例えば、単一の第1分配溝12b5および/または単一の第2分配溝12b6は、モータハウジング12の内壁を螺旋状に延在してもよい。単一のステータ溝13cは、単一のステータ溝13cに適合する延在方向を有してもよい。例えば、単一のステータ溝13cは、軸方向に対して鋭角の方向に沿って延在してもよい。液体流出路12cは、少なくとも1つあればよく、液体流出路12cは全て1つのステータ溝13cに連通してもよい。
【0054】
図29に示すように、この第11の実施態様では、冷却液は、液体流入路12aから第1分配溝12b5に入った後にステータ溝13cに分配され、ステータ溝13cの一端部から他端部に流れて第2分配溝12b6に入り、次いで第2分配溝12b6を通ってステータ溝13cに再び入り、前のステータ溝13cの流れ方向とは反対の方向に沿って流れて、第1分配溝12b5に再び入る。これにより、冷却液が液体流出路12cに流入するまで循環し、液体流出路12cを通ってステータコア13から流出する。冷却液がステータ溝13cを流れる際、ステータコア13は、熱交換によって冷却されてもよい。
図1および
図29を参照すると、冷却液は、液体流出路12cを通ってステータコア13から流出した後、(液体流出路12cが
図1おける上部に位置する場合)ステータ巻線14の端部に噴霧されて、ステータ巻線14の熱をさらに放散してもよい。この実施態様では、新しい流路設計ソリューションが開発され、これは、前述の実施態様の技術的効果を有するだけでなく、異なる構造を有するモータ10の放熱要件を満たすこともできる。
【0055】
以上、本実施形態のモータ10について詳細に説明したが、以下では、モータ10を備えるモータ冷却システムについて説明する。
【0056】
図30に示すように、本実施形態のモータ冷却システム20は、前述の実施態様のいずれかに1つにおける熱交換器23、送出装置21、およびモータ10を備えてもよい。熱交換器23は、モータ10の液体流出路12cから流出する冷却液を受け入れて、冷却するように構成される。液体戻り溝12dが設けられていないソリューションの場合、熱交換器23は、液体流出路12cから冷却液を直接受け入れてもよい。液体戻り溝12dが設けられているソリューションの場合、熱交換器23は、液体戻り溝12dから冷却液を受け入れてもよい。熱交換器23は、流動する冷たい流体を有し、冷たい流体が熱交換を介して高温の冷却液の熱を吸収することで、冷却液の熱交換および冷却が実現されるので、冷却液を再利用することができる。熱交換器23は、油水熱交換器を含むが、これに限定されない。具体的には、冷却油を熱交換および冷却するための冷たい流体として水が使用される。送出装置21は、熱交換器23および液体流入路12aに連通しており、熱交換を介して、熱交換器23によって冷却された冷却液を受け入れ、冷却液を液体流入路12aを介して分配溝に再送出するように構成される。送出装置21は、モータ10内の流路を流れるように冷却液を駆動するための動力をさらに供給することができる。送出装置21は、電子オイルポンプを含むが、これに限定されない。本実施形態のモータ冷却システムは、モータ10のステータの熱を効果的に放散できるだけでなく、冷却液の循環利用を実現できる。
図30の目的は、熱交換器23、送出装置21、およびモータ10の間の接続関係を概略的に説明することにすぎず、装置の接続位置、具体的な構成、および数量を特に限定するものではないことを理解されたい。
【0057】
図30に示すように、送出装置21に流入する低温の冷却液を濾過し、不純物が送出装置21に入るのを防ぐために、フィルタ22が熱交換器23と送出装置21との間にさらに配置されてもよい。フィルタ22は、濾過機能を有する電気機器であってもよいし、単に機械部品(例えば、フィルタスクリーンまたはフィルタ要素)であってもよい。当然ながら、熱交換器23に入る高温の冷却液を濾過するために、モータ10と熱交換器23との間にフィルタ22が代替的に配置されてもよく、および/または分配溝に入る低温の冷却液を濾過するために、送出装置21とモータ10との間にフィルタ22が代替的に配置されてもよい。当然ながら、本実施形態では、フィルタ22は不要となる。
【0058】
本実施形態は、電動車両をさらに提供する。電動車両は、電動自動車、電動バス、および電動二輪車などの車両を含むが、これらに限定されない。例えば、
図31は、電動SUV(Sport Utility Vehicle、スポーツ・ユーティリティ・ビークル)30を示す。
図32を参照すると、電動車両は、モータコントローラ31、ギアボックス32、および上述のモータ冷却システム20を備えてもよい。モータコントローラ31は、モータ10に接続され、モータ10を制御して動作させるように構成される。ギアボックス32は、モータ10のモータシャフト161に接続され、モータ10によって出力されたトルクを別の機械装置に伝達するように構成される。本実施形態の電動車両において、モータ10のステータコアは、効果的かつ連続的な放熱を実現することができ、動作信頼性が高い。したがって、車両性能が確保される。
【0059】
以上の説明は、本出願の単なる特定の実施態様にすぎず、本出願の保護範囲を限定しようとするものではない。本出願で開示される技術的範囲内で当業者が容易に想到する変形または置換は、本出願の保護範囲内に含まれるものとする。したがって、本出願の保護範囲は、特許請求の範囲の保護範囲に従うものとする。
【符号の説明】
【0060】
10 モータ
11 第1エンドキャップ
12 モータハウジング
12a 液体流入路
12b 分配溝
12b1 第1分配溝
12b2 第2分配溝
12b3 第1分配溝
12b4 第2分配溝
12b5 第1分配溝
12b6 第2分配溝
12c 液体流出路
12d 液体戻り溝
13 ステータコア
13a ヨーク部
13b ティース部
13c ステータ溝
14 ステータ巻線
15 第2エンドキャップ
16 ロータ
20 モータ冷却システム
21 送出装置
22 フィルタ
23 熱交換器
30 電動SUV
31 モータコントローラ
32 ギアボックス
131 鉄片
131a 部分
131b ノッチ
132 鉄片
132b 部分
132b ノッチ
161 モータシャフト
A 流路
B 流路
Y1 周方向
Y2 軸方向