(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】自動車用の冷却剤バルブ
(51)【国際特許分類】
F01P 11/06 20060101AFI20230221BHJP
F16K 51/00 20060101ALI20230221BHJP
F16K 1/36 20060101ALI20230221BHJP
F01P 11/10 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
F01P11/06 A
F16K51/00 A
F16K1/36 J
F01P11/10 G
(21)【出願番号】P 2021576237
(86)(22)【出願日】2019-06-26
(86)【国際出願番号】 EP2019067033
(87)【国際公開番号】W WO2020259825
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2022-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】521554619
【氏名又は名称】ピアーブルク ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】PIERBURG GMBH
【住所又は居所原語表記】Alfred-Pierburg-Strasse 1, 41460 Neuss, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サディク,ベサート
(72)【発明者】
【氏名】ニーボーグ,ドミニク
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-504564(JP,A)
【文献】特開2018-179025(JP,A)
【文献】特許第6025006(JP,B1)
【文献】国際公開第2018/114644(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/141606(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0301081(US,A1)
【文献】特開2019-065815(JP,A)
【文献】特開2007-071207(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0206388(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0313455(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102016112409(DE,A1)
【文献】国際公開第2020/187673(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01P 11/06
F16K 51/00
F16K 1/36
F01P 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向の入口部(42)と半径方向の出口部(44)とを有するハウジング(10)と、
前記入口部(42)と前記出口部(44)との間に形成され、バルブシート(40)に囲まれる流体断面と、
前記バルブシート(40)上に配置され、アクチュエータ(18)によって前記バルブシート(40)から持ち上げられるように構成される制御体(34)と、
前記制御体(34)内の貫通孔(62)であって、前記貫通孔(62)を介して、前記入口部(42)が、前記制御体(34)において前記入口部(42)と離れて対向する側に設けられたチャンバ(52)と連続的に接続されている、前記貫通孔(62)と、
を備える自動車用の冷却剤バルブにおいて、
前記制御体(34)には、前記バルブシート(40)に向かって軸方向に延在する第1環状突出部(39)であって、前記第1環状突出部(39)介して、前記制御体(34)が前記バルブシート(40)に配置されるよう構成されている前記第1環状突出部(39)が設けられ、前記制御体(34)には、前記第1環状突出部(39)によって外側を、前記第1環状突出部(39)と前記貫通孔(62)との間に半径方向に延在する壁部(64)によって内側を区切られ、周方向に延在する軸方向溝部が形成され
、
前記制御体(34)において、前記入口部(42)に面する側には保護粒子スクリーン(70)が構成され、前記保護粒子スクリーン(70)の投影領域は、前記制御体(34)に対する軸方向において、前記保護粒子スクリーン(70)に面する前記制御体(34)内の前記貫通孔(62)の端部を少なくとも部分的に覆い、前記軸方向溝部(68)を半径方向の内側に区切る前記壁部(64)は、前記保護粒子スクリーン(70)よりも大きな直径を有し、
前記保護粒子スクリーン(70)は、曲面で形成された接近流体領域(72)を備え、
前記制御体(34)が前記バルブシート(40)から持ち上げられている前記冷却剤バルブの開状態では、前記保護粒子スクリーン(70)の前記接近流体領域(72)の半径方向の外縁(74)の点における、前記接近流体領域(72)の曲線の接線は、前記バルブシート(40)と前記第1環状突出部(39)との間に延在する、
ことを特徴とする自動車用の冷却剤バルブ。
【請求項2】
前記壁部(64)は、前記第1環状突出部(39)の半径方向内側に形成された第2環状突出部(66)により構成され、前記軸方向溝部(68)は、前記第1環状突出部(39)と前記第2環状突出部(66)との間に環状に形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の自動車用の冷却剤バルブ。
【請求項3】
前記第2環状突出部(66)は、前記第1環状突出部(39)と同心円状に配置される、
ことを特徴とする請求項2に記載の自動車用の冷却剤バルブ。
【請求項4】
前記軸方向溝部(68)を区切る前記壁部(64)は、軸方向に延在する、
ことを特徴とす
る請求項
1から3のいずれか一項に記載の自動車用の冷却剤バルブ。
【請求項5】
前記第2環状突出部(66)の内径以上の大きさの内径を有し、前記第2環状突出部(66)と同心に配置される軸方向入口分岐部(69)によって、前記入口部(42)が構成される、
ことを特徴とす
る請求項2
または3に記載の自動車用の冷却剤バルブ。
【請求項6】
前記制御体(34)が前記第1環状突出部(39)を介して前記バルブシート(40)上に載置されている前記冷却剤バルブの閉状態において、前記軸方向溝部(68)を半径方向内側に区切る前記壁部(64)は、軸方向において前記バルブシート(40)までに隔たりを有する、
ことを特徴とす
る請求項
1から5のいずれか一項に記載の自動車用の冷却剤バルブ。
【請求項7】
前記軸方向溝部(68)を半径方向の内側に区切る前記壁部(64)の軸方向の延設部は、前記第1環状突出部(39)の軸方向の延設部よりも小さい、
ことを特徴とす
る請求項
1から6のいずれか一項に記載の自動車用の冷却剤バルブ。
【請求項8】
前記保護粒子スクリーン(70)の前記投影領域は、前記保護粒子スクリーン(70)に面する前記制御体(34)内の前記貫通孔(62)の前記端部に対する軸方向において、前記貫通孔(62)の前記端部の少なくとも90%を覆い、前記入口部(42)の前記貫通孔(62)への流体接続部としての流入ギャップ(71)は、前記保護粒子スクリーン(70)と前記軸方向溝部(68)を半径方向の内側に区切る前記壁部(64)との間の半径方向に形成される、
ことを特徴とする請求項
1に記載の自動車用の冷却剤バルブ。
【請求項9】
前記
接近流体領域(72)は、軸方向の膨らみが、中心から半径方向の外側に向かって連続的に減少する回転対称な
曲面で形成されている、
ことを特徴とする請求項
1または
8のいずれか一項に記載の自動車用の冷却剤バルブ。
【請求項10】
前記保護粒子スクリーン(70)の前記接近流体領域(72)は、中心から半径方向の外側に凹状に延在する、
ことを特徴とする請求項
1、8、9のいずれか一項に記載の自動車用の冷却剤バルブ。
【請求項11】
前記アクチュエータ(18)は、前記制御体(34)と共に移動ユニット(35)を構成する電機子(32)を有する電磁アクチュエータであり、前記移動ユニット(35)は、前記冷却剤バルブ
の閉状態には、前記入口部(42)に対向する側において、前記入口部(42)と離れて対向する前記移動ユニット(35)の側と同じ軸方向
で圧力が作用して、前記移動ユニット(35)を圧力均衡状態にするための領域を含む、
ことを特徴とす
る請求項
1から10のいずれか一項に記載の自動車用の冷却剤バルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸方向の入口部と半径方向の出口部とを有するハウジングと、入口部と出口部との間に形成され、バルブシートに囲まれる流体断面と、バルブシート上に配置され、アクチュエータによってバルブシートから持ち上げられるように構成される制御体と、制御体内の貫通孔であって、これを介して入口部が、入口部と離れて対向する制御体側のチャンバと連続的に接続されている貫通孔と、を備える自動車用の冷却剤バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
圧力均衡バルブは、特にガス搬送領域での用途で知られており、圧力均衡によりスイッチング時間を大幅に短縮することができる。このようなバルブは、例えば、自動車のターボチャージャ用のダイバータバルブであり、例えば、DE 10 2012 010 140 A1に記載されている。ここで、バルブの閉状態では、制御体の貫通孔は、制御体においてバルブシートに対向する側と、制御体においてバルブシートと離れて対向する側との間の圧力を均衡させる役割を果たす。このように構成すると、バルブ装置の入口分岐部で圧力全体が増加した場合にも、意図しないバルブの開放が防止され、脈動の影響を受けない。
【0003】
このように圧力を均衡させる冷却剤閉止バルブは公知でない。これは、とりわけ、このようなバルブの場合、例えば粒子のような不純物を含む冷却剤流等の媒体流が、制御体の孔を通って孔の後方のチャンバに流入し、チャンバ内に不純物が堆積してしまうためである。このようなプロセスが進行すると、両方の孔が詰まり、制御体の圧力均衡機能が損なわれる可能性があり、また、誘導スリーブと可動バルブ部品との間の摺動領域に粒子が堆積したり、チャンバに粒子が過度に充填されたりすると、バルブが鈍化してしまう恐れがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、DE 10 2016 112 409 A1では、冷却剤が軸方向に流れるように構成された冷却剤バルブが提案されている。この冷却剤バルブでは、冷却剤の流れの粒子負荷により、出口分岐部に軸方向溝部が形成される。この溝はハウジングに向かって開いて構成され、冷却剤からの汚染を回収するダートポケットを画定している。しかし、上記のように配置された軸方向溝部では、圧力均衡孔の不具合を防止することはできない。
【0005】
従来の構成は、貫通孔または制御体の後方のチャンバ内への不純物の堆積を確実に減少させることができないという点で有効でない。これにより、圧力均衡機能と制御体の正確な機能能力が損なわれる恐れがある。
【0006】
したがって、本発明の目的は、頑丈かつ安価な冷却剤バルブであって、その機能的能力、特に、圧力均衡機能および制御体の可動性が確実に維持される冷却剤バルブを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、主請求項である請求項1に記載の特徴を有するバルブ装置によって達成される。
【0008】
制御体には、バルブシートに向かって軸方向に延在する第1環状突出部であって、これを介して、制御体をバルブシートに配置することができるように構成された第1環状突出部が設けられ、また、制御体には、第1環状突出部によって外側を、および第1環状突出部と貫通孔との間で半径方向に延在する壁部によって内側を区切られ、周方向に延在する軸方向溝部が形成される。これにより、貫通孔内への冷却剤内の不純物の流入、そして、制御体において入口部とは反対の側に設けられたチャンバ内への不純物の流入を、大幅に減少させることができる。ここで、軸方向溝部は、汚染粒子が貫通孔の半径方向外側から貫通孔に向かって流れることを防ぐダートトラップとして作用する。このように構成することにより、粒子が制御体の後方のチャンバ、さらには電機子の摺動領域に到達することはほとんどなくなるため、バルブの機能性をより長い期間にわたって確保することができる。
【0009】
壁部は、第1環状突出部の半径方向内側に形成された第2環状突出部により構成され、軸方向溝部は、第1環状突出部と第2環状突出部との間に環状に形成されることが好ましい。粒子は再び貫通孔の方へ偏向する可能性があるため、壁部を全円周に沿って延在させて、軸方向溝部から軸方向へ流出させないようにする。このような構成においては、主流が常に軸方向溝部内で実現され、そして主流は、貫通孔から離れる方向に向けられる。結果として、チャンバに到達する粒子の量をさらに低減することができる。
【0010】
第2環状突出部を、第1環状突出部と同心円状に配置する構成は特に有効である。形状により生じる軸方向溝部内の圧力差は、貫通孔への不要な流入の原因となり得るが、上記のように構成するにより、圧力差を回避することができる。
【0011】
好ましい実施形態によれば、軸方向溝部を区切る壁部は、軸方向に延在する。このように構成することにより、軸方向溝部からの主流に、貫通孔に向かって進む成分が含まれないことが保証され、制御体の後方への粒子流を減らすことができる。
【0012】
本発明の他の好ましい態様によれば、内径が第2環状突出部の内径以上であり、第2環状突出部と同心に配置される軸方向入口分岐部によって、入口部が構成される。バルブを開くと、第1環状突出部とバルブシートとの間に圧力降下が生じるため、この間隙内に流れが生じる。第2環状突出部は流路内に設けられていないため、ここで生じた流れは、より内側に位置する領域内の第2環状突出部の配置に影響を受けず、あるいは、第2環状突出部には圧力勾配さえも生じる。このように、第2の環状突出部の半径方向内側領域内への流入、さらには貫通孔への流入は、可能な限り回避される。
【0013】
制御体が第1環状突出部を介してバルブシート上に載置されている冷却剤バルブの閉状態において、軸方向溝部を半径方向内側に区切る壁部が、軸方向においてバルブシートまでに隔たりを有する構成や、軸方向溝部を半径方向の内側に区切る壁部の軸方向の延設部が、第1環状突出部の軸方向の延設部よりも小さい構成により、第2環状突出部における圧力降下はさらに防止される。よって、第2環状突出部が、外側に向かって半径方向に相対的に遠い位置に配置されている場合であっても、バルブシートと制御体との間を通る流出に影響を及ぼすことは回避される。
【0014】
本発明の好ましい実施形態によれば、制御体において、入口部に面する側には保護粒子スクリーンが構成され、保護粒子スクリーンの投影領域は、制御体に対する軸方向において、保護粒子スクリーンに面する制御体内の貫通孔の端部を少なくとも部分的に覆い、軸方向溝部を半径方向の内側に区切る壁部は、保護粒子スクリーンよりも大きな直径を有する。直線的な流入が貫流開口部によって可能な限り阻止されるので、制御体における入口部とは反対の側においてハウジング内に形成されたチャンバに流入する粒子の量は、この保護粒子スクリーンを設けることでかなり低減することができる。このように、粒子が制御体の後方に到達することを防止するために必要な粒子の流動抵抗が著しく増大し、その結果、冷却剤バルブの機能的能力は、さらに長い期間維持される。
【0015】
さらなる実施形態によれば、保護粒子スクリーンの投影領域は、保護粒子スクリーンに面する制御体内の貫通孔の端部に対する軸方向において、貫通孔の端部の少なくとも90%を覆い、入口部の貫通孔への流体接続部としての流入ギャップは、保護粒子スクリーンと軸方向溝部を半径方向の内側に区切る壁部との間の半径方向に形成される。このように被覆することで、粒子が制御体の入口部から後方側に向けてチャンバ内に流入しようとすると、その流入方向はほぼ強制的に転換される。結果として、チャンバに到達する粒子を著しく低減することができる。
【0016】
保護粒子スクリーンは、軸方向の膨らみが、中心から半径方向の外側に向かって連続的に減少する回転対称な接近流体領域を備えることが好ましい。このように構成することで、中央から半径方向外側の領域に沿う流体の方向は、出口部に向け直される。このようにして、圧力降下は低減され、貫通孔への直接的な接近流体を減らすことができる。
【0017】
ここで、保護粒子スクリーンの接近流体領域は、軸方向の接近流体が半径方向への流出に変換されるように、中心から半径方向の外側に凹状に延在するため、貫通孔への軸方向の流入は低減する。よって、特に重い汚染粒子は、制御体の後方に到達することがない。
【0018】
制御体がバルブシートから持ち上げられている冷却剤バルブの開状態では、接線は、バルブシートと第1環状突出部との間の保護粒子スクリーンの接近流体領域の半径方向の外縁に延在することが好ましい。これにより、粒子の方向はバルブシートと制御体との間の隙間に向けられ、さらに、粒子は軸方向溝部を通過することになる。よって、貫通孔へ流入させるためには、90°の方向転換を行わなければならない。
【0019】
さらに、アクチュエータは、制御体と共に移動ユニットを構成する電機子を有する電磁アクチュエータであり、移動ユニットは、冷却剤バルブの閉状態には、入口部に対向する側において、入口部と離れて対向する移動ユニットの側と同じ軸方向の圧力有効領域を含むように構成される。貫通孔を介した移動ユニットの圧力均衡だけでなく、アクチュエータの力のみが移動ユニットに作用する力のバランスも存在する。このようなバルブは、圧力変動の影響を受けず、正確な作動力にアシストされて動くめ、比較的小さなアクチュエータを使用することができる。
【0020】
このようにして、製造が容易で安価であり、冷却剤中の汚染や粒子の影響を受けない頑丈な冷却剤バルブが提供される。本発明によれば、貫通孔内への粒子の流入、ひいては制御体において入口部から離れて対向する側への粒子の流入が可能な限り回避されるので、冷却剤バルブの機能的能力は長期にわたって確実に維持される。よって、わずかな粒子のみしか電機子と摺動ブッシュとの間の摺動領域に到達することはない。また、圧力変動時にも、圧力均衡機能および確実な冷却剤バルブスイッチング能力が維持され、制御体の貫通孔の目詰まりを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明による冷却剤バルブの断面側面図である。
【
図2】本発明による、
図1の冷却剤バルブの制御体の断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明による冷却剤バルブの例示的な実施形態を図示し、以下に説明する。
【0023】
図1に示す冷却剤バルブは二部構成のハウジング10からなり、内部に画成された流路14を有する流体ハウジング12と、流体ハウジング12に締結され、電磁アクチュエータ18が配置されたアクチュエータハウジング16とを備えている。
【0024】
電磁アクチュエータ18には、コイルキャリア22に巻回されたコイル20からなり、プラグ24を介して電流が供給される電磁回路が設けられる。さらに、電磁アクチュエータ18には、磁化可能なコア26、還流部28、ヨーク30、移動可能な電機子32が設けられる。コイル20に電流が供給されると、電機子32は、発生した磁力によって公知の方法でコア26に向かって移動する。
【0025】
電機子32は、制御体34と共に移動ユニット35を形成する。移動ユニット35において、電機子32は、結合部材36を介して、制御体34に接続される。結合部材36は、制御体34と一体に形成されて電機子32の孔内に延在し、孔内において電機子32に締結される。バネ38により移動ユニット35がコア26から離れる方向に装填されると、制御体34は、流路14の流体断面を閉じるように、半径方向外側の第1環状突出部39に押圧される。第1環状突出部39は、流体ハウジング12内において軸方向入口部42と半径方向出口部44との間に形成されたバルブシート40に向かって軸方向に延在する。コイル20に電流が供給されると、磁力がばね38の力を超えるため、制御体34の第1環状突出部39がバルブシート40から持ち上げられて、それにより流体断面はクリアされる。
【0026】
電機子32は、コア2に締結されたスリーブ46に誘導される。スリーブ46は、アクチュエータ18の内側で半径方向に延在し、かつアクチュエータハウジング16のハウジング突出部48内に延在している。ハウジング突出部48は、流体ハウジング12内に軸方向に延在している。このハウジング突出部48とスリーブ46の端部領域の間には、Oリング50が配置されている。Oリング50を介して、スリーブ46の半径方向外側領域は冷却剤に対して封止され、冷却剤がコイル20に到達することができないように構成されている。
【0027】
さらに、スリーブ46により、チャンバ52が画定されている。チャンバ52は、入口部42と離れて対向する制御体34側や移動ユニット35側に設けられ、出口部44に対向する閉側面を有するリップシールリング54によって、出口部44に対して封止される。リップシールリング54は、制御体34と共に移動し、その内側脚部56を介して制御体34の半径方向の溝58に締結され、その外側脚部59を介してスリーブ46に当接する。リップシールリング54の閉側面は、制御体34において円周方向の放射状突出部として構成された制御体34の支持面60に対して軸方向に当接する。
【0028】
チャンバ52は、制御体34内に形成された貫通孔62を介して入口部42に連続的に接続されるため、移動ユニット35は圧力均衡状態となる。また、入口部42から離れた側で圧力が作用する領域は、第1環状突出部39の半径方向内側の制御体34の領域にも対応するので、油圧力に関する力も均衡である。したがって、制御体34は、ばね力および電磁力にのみ依存して移動可能となる。
【0029】
この圧力均衡を維持し、また、スリーブ46と電機子32または制御体34との間の汚染を防止するために、制御体34には壁部64が設けられる。例示的な本実施形態では、壁部64は、半径方向に延びる第2環状突出部66として構成される。第2環状突出部66は、半径方向に延びる2つの環状突出部39、66の間で円周方向に延びる軸方向溝部68が形成されるように、第1環状突出部39の内側に同心円状に構成され、例示的な本実施形態では、環状の構成を有する。ここで、第2環状突出部66の軸方向の高さは、第1環状突出部39の軸方向の高さよりもわずかに小さく設けられているため、第2環状突出部66はバルブシート40上に配置されない。例示的な本実施形態では、第2環状突出部66の直径は、基本的には、入口部42を構成する入口分岐部69の内径に対応するが、より小さく設けることもできる。
【0030】
一方で、軸方向に見られるように、貫通孔62の端部は保護粒子スクリーン70により大部分が覆われているため、入口部42は、貫通孔62を介してチャンバ52に対して軸方向に完全に接続されない。保護粒子スクリーン70は、入口部42に面する制御体34の端部の中央に設けられている。よって、流体の貫通孔62への流入は、保護粒子スクリーン70と壁部64との間の第1流入ギャップ71や、保護粒子スクリーン70の直径よりもわずかに大きい直径を有する第2環状突出部66を通じてなされなければならない。ここから流体が貫通孔62へ流入しようとすると、貫通孔62内において、流体の流れを半径方向の内向きに、さらにそこからチャンバ52内に向かって軸方向に、それぞれ向け直さなければならない。しかし、保護粒子スクリーン70には、軸方向の膨らみが、中心からの半径方向外側に向かって連続的に凹状に減少してなる、回転対称な接近流体領域72が設けられるため、冷却剤バルブが開いているときには、バルブシート40と第1環状突出部39との間における、保護粒子スクリーン70の接近流体領域72の半径方向の外縁74を介して主流が実現される。こうして、流れの主要部分、特に不活性粒子は、主に貫通孔62を通って出口部44に誘導される。
【0031】
出口部44には到達せずに、半径方向内側から第1環状突出部39に到着した粒子は、渦流の形態で軸方向溝部68内において向きが変えられ、壁部64に到達し、入口部42および出口部44に向けて貫通孔62から離れるように再び向きが変えられる。圧力勾配により冷却剤の流れは出口部44に向かって半径方向外向きに駆動され、また、壁部46は入口分岐部69の延設部より半径方向内側に配置されているため、チャンバ52に向かうより重い粒子の流れはほとんど生じない。このようにして、貫通孔62の詰まり、およびスリーブ46と移動ユニット35との間の粒子の堆積の両方が確実に防止され、結果として、バルブの鈍りが回避される。
【0032】
本発明によるバルブ装置は、製造が安価であり、作動時おいて頑丈である。また、制御体への不純物の浸透を著しく低減し、機能に関連する要素に対して不純物によるさらなる負荷を与えないように構成されているため、制御体の圧力均衡機能が維持される。結果として、冷却剤バルブの耐用年数が長くなる。
【0033】
なお、本発明の主請求項の保護範囲は、記載された例示的な実施形態に限定されない。例えば、電機子と制御体との間の結合は、異なる方法で実現してもよいし、また、制御体を多部品により構成してもよい。また、特に、連続的な環状の突起の代わりに壁部を用いて、複数の軸方向溝部が円周上に分配されるように、貫通孔の反対側にのみ遮蔽を有効にすることもできる。