IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 成都富安納新材料科技有限公司の特許一覧

特許7231777易分散型活性ナノカーボン粉末及びその調製方法
<>
  • 特許-易分散型活性ナノカーボン粉末及びその調製方法 図1
  • 特許-易分散型活性ナノカーボン粉末及びその調製方法 図2
  • 特許-易分散型活性ナノカーボン粉末及びその調製方法 図3
  • 特許-易分散型活性ナノカーボン粉末及びその調製方法 図4
  • 特許-易分散型活性ナノカーボン粉末及びその調製方法 図5
  • 特許-易分散型活性ナノカーボン粉末及びその調製方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】易分散型活性ナノカーボン粉末及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/174 20170101AFI20230221BHJP
   C01B 32/156 20170101ALI20230221BHJP
   C01B 32/194 20170101ALI20230221BHJP
   C01B 32/21 20170101ALI20230221BHJP
   C09C 1/44 20060101ALI20230221BHJP
   C09C 1/48 20060101ALI20230221BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20230221BHJP
【FI】
C01B32/174
C01B32/156
C01B32/194
C01B32/21
C09C1/44
C09C1/48
B82Y40/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022077074
(22)【出願日】2022-05-09
【審査請求日】2022-05-09
(31)【優先権主張番号】202110950344.9
(32)【優先日】2021-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522181979
【氏名又は名称】成都富安納新材料科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】王 延青
(72)【発明者】
【氏名】桑 軍
【審査官】▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104779400(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103500820(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105390721(CN,A)
【文献】国際公開第2020/043590(WO,A1)
【文献】特開2015-147718(JP,A)
【文献】特表2016-517795(JP,A)
【文献】国際公開第2020/090704(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/00-32/991
C09C 1/44
C09C 1/48
B82Y 40/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
易分散型活性ナノカーボン粉末の調製方法であって、
S1.ボールミル粉砕及びナノ粉砕を各々用い、含有量が50~95質量%の範囲のナノカーボンを含有量が5~50質量%の範囲の分散剤と混合し、0~5%の安定剤を加えることで、微細なナノカーボンを含むスラリーを得る工程、
S2.前記行程(S1)で得られた微細なナノカーボンスラリーを乾燥及び二次粉砕させて固体活性ナノカーボン粉末を得る工程、
S3.前記行程(S2)の固体活性ナノカーボン粉末をドーパミンと混合して反応させて、1層のポリドーパミン被覆層を形成し、十分に洗浄して乾燥させた後、前記ナノカーボン粉末の表面を覆う反応活性を有するポリドーパミン被覆層を得る工程、
S4.2-18個の炭素原子を含むメルカプト基を用いてポリドーパミン表面にグラフトして改質することで、改質微細なナノカーボン分散スラリーを得る工程、及び
S5.前記行程(S3、S4)で得られた改質微細なナノカーボン分散スラリーを乾燥させることで、非極性又は低極性溶媒に良く分散できる易分散型活性ナノカーボン粉末を得る工程
を有することを特徴とする、易分散型活性ナノカーボン粉末の調製方法。
【請求項2】
乾燥方法が、低温凍結乾燥、噴霧乾燥、流動床乾燥、真空乾燥、レーキ乾燥のうち1種又は複数種の組み合わせであることを特徴とする、請求項1に記載の易分散型活性ナノカーボン粉末の調製方法。
【請求項3】
前記改質微細なナノカーボン分散スラリーは、ナノカーボン、分散剤及び溶媒を含み、前記溶媒の含有量が80~99質量%、前記分散剤の含有量は0.5~10質量%、前記ナノカーボンの含有量は0.5~10%質量であることを特徴とする、請求項1に記載の易分散型活性ナノカーボン粉末の調製方法。
【請求項4】
前記ナノカーボンとしては、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、二層カーボンナノチューブ(DWCNT)、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)、グラファイト(GR)、フラーレン(C60)、グラフェン(Graphene)又はカーボンブラック材料(CB)のうち1種或いは複数種の混合物が挙げられることを特徴とする、請求項1に記載の易分散型活性ナノカーボン粉末の調製方法。
【請求項5】
前記ポリドーパミン被覆層の厚さは、溶液中のドーパミン濃度に応じて調整することができ、厚さが0~5nmの範囲(0を含まない)にあることを特徴とする、請求項1に記載の易分散型活性ナノカーボン粉末の調製方法。
【請求項6】
前記グラフトは、メルカプト基(-SH)有する低分子又は高分子であり得、グラフト化分子が分散させる溶媒に応じて選択することができるため、水溶性から油溶性への分散の効果的な調整を実現することを特徴とする、請求項1に記載の易分散型活性ナノカーボン粉末の調製方法。
【請求項7】
分散剤としては、リアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、コール酸ナトリウムびその誘導体コール酸、胆汁酸びその誘導体スルホベタイン及びその誘導体、ポリビニルピロリドンびその誘導体、ポリビニルカプロラクタム、ポリビニルアセトアミド及びその誘導体(平均分子量が8000~700000)、ポリオキシエチレン基アニオンポリマー(平均分子量が10000~120000)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、長鎖アルカンステアリルアルコール内のうち1種或いは複数種挙げられることを特徴とする、請求項1又は3に記載の易分散型活性ナノカーボン粉末の調製方法。
【請求項8】
前記安定剤としては、DNA、RNA、セルロース及びその誘導体、カルボキシメチルセルロースナトリウムのうち1種又は複数種が挙げられることを特徴とする、請求項1に記載の易分散型活性ナノカーボン粉末の調製方法。
【請求項9】
前記コール酸ナトリウムとしては、グリココール酸ナトリウム、グリコデオキシコール酸ナトリウム、ケノデオキシコール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム及びデオキシコール酸ナトリウムのうち少なくとも1つ挙げられることを特徴とする、請求項7に記載の易分散型活性ナノカーボン粉末の調製方法。
【請求項10】
前記溶媒は、水、N-メチルピロリドン(NMP)、エタノール、イソプロパノール、トルエン、ベンゼン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ブタノン、n-ブタノール、シクロヘキサン、メチルエチルケトンのうち少なくとも1つであることを特徴とする、請求項3に記載の易分散型活性ナノカーボン粉末の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極性、弱極性及び非極性溶媒に応用されるナノカーボン分散スラリーに関し、特に、易分散型活性ナノカーボン粉末の表面改質技術及びその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微細なナノカーボン粉末の分散は、非常に難しく、従来技術において、製造された微細なナノカーボン粉末を溶媒から成るスラリーに分散させて販売及び輸送しかできず、この方法で得られた微細なナノカーボン粉末のカーボンナノチューブの含有量が少なく、溶媒の含有量が90%を超えていたため、微細なナノカーボン粉末の応用範囲及び分野を極めて大きく制限していた。含有量が90%を超える溶媒も輸送の困難及び顧客の使用コストの増加を招いていた。従来の分散型のナノカーボン粉末は、通常水を溶媒とする媒体内で分散され、特許文献1に開示されている調製結果に似ている。特許文献2は、単分散のカーボンナノチューブ分散液濃度をアップする方法を提供し、従来の分散型の濃度と比較して、1mg/mLにしか達することができず、該方法でも1.5~4mg/mLまでしかアップできず、カーボンナノチューブ活性粉末よりもまだ低い値である。特許文献3は、無溶媒カーボンナノチューブ類流体の応用に関するものであり、該無溶媒カーボンナノチューブ類流体とは、無溶媒カーボンナノチューブ流体とカーボンナノチューブをナノコアとし、超音波処理、シランカップリング剤、及び末端アミノ基ブロック共重合体グラフト化によって得られるものを意味する。ただし、このような分散流体は本質的に末端アミノ基ブロック共重合体分散液で、輸送が困難になっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】中国特許第CN111247095-A号公開公報
【文献】中国特許出願第CN111747400-A号公報
【文献】中国特許出願第CN110591787-A公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術に存在する課題に着目し、本発明は、ナノカーボン粉末と溶媒を別々に輸送し、使用が必要な場合、易分散型活性ナノカーボン粉末を溶媒と混合して導電性スラリーとして調製することから導電性スラリーの輸送及び保管のコストの削減を実現する易分散型活性ナノカーボン粉末を提供することを、その技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
分散及び輸送・保管の目的を達成するため、本発明は、次の構成を有する活性ナノカーボン粉末の調製方法を用いる。すなわち、
S1.ボールミル粉砕及びナノ粉砕の方式を用い、含有量が50~95質量%の範囲のナノカーボンを含有量が5~50質量%の範囲の分散剤と混合し、0~5%の安定剤を加えることで、微細なナノカーボンを含むスラリーを得る工程、
S2.行程(S1)で得られた微細なナノカーボンスラリーを乾燥及び二次粉砕させて固体活性ナノカーボン粉末を得る工程(この時、活性ナノカーボン粉末は高極性溶媒中で良好な分散性を有する)、
S3.非極性又は低極性溶媒に十分に分散できる活性ナノカーボン粉末を得ようとする場合、行程(S2)の固体活性ナノカーボン粉末をドーパミンと混合して反応させて、1層のポリドーパミン被覆層を形成し、十分に洗浄して乾燥させた後、前記ナノカーボン粉末の表面を覆う反応活性を有する1層のポリドーパミン被覆層を得る工程(ポリドーパミンの含有量が5~50質量%の範囲で、洗浄過程でポリドーパミンが部分的に失われるため、実際のナノカーボン粉末の含有率が高くなり(60~95%)、この行程で調製されたナノカーボン粉末は親水性が高く、水に分散しやすい。)
S4.行程(S1、S2、S3)で得られた活性ナノカーボン粉末の油溶性を高めるため、2-18個の炭素原子を含むメルカプト基又はアミノ基含有鎖式炭化水素化合物を用いてポリドーパミン表面にグラフトして改質することで、改質微細な活性ナノカーボン分散スラリーを得る工程、及び、
S5.行程(S3、S4)で得られた改質微細な活性ナノカーボン分散スラリーを乾燥させる工程。
【0006】
さらに、前記活性ナノカーボンスラリーは、ナノカーボン、分散剤及び溶媒を含み、前記溶媒の含有量が80~99質量%、前記分散剤の含有量は0.5~10質量%、前記ナノカーボンの含有量は0.5~10%質量である。
【0007】
さらに、前記ナノカーボンとしては、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、二層カーボンナノチューブ(DWCNT)、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)、グラファイト(GR)、フラーレン(C60)、グラフェン(Graphene)又はカーボンブラック材料(CB)のうち1種或いは複数種の混合物が挙げられる。
【0008】
さらに、分散剤としては、ブランドDisponer 983、FA 196、FX 9086、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、コール酸ナトリウム(及びその誘導体、化学構造が類似した化学物質等)、コール酸、胆汁酸(及びその誘導体、化学構造が類似した化学物質等)、スルホベタイン及びその誘導体、ポリビニルピロリドン(及びその誘導体、異なる分子量)、ポリビニルカプロラクタム、ポリビニルアセトアミド等及びその誘導体(平均分子量が8000~700000)、ポリオキシエレン基アニオンポリマー(平均分子量が10000~120000)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、長鎖アルカンステアリルアルコール内のうち1種或いは複数種が挙げられるが、これらに限定されない。
【0009】
さらに、前記安定剤としては、DNA、RNA、セルロース及びその誘導体、カルボキシメチルセルロースナトリウムのうち1種又は複数種が挙げられる。
【0010】
さらに、前記コール酸ナトリウムとしては、グリココール酸ナトリウム、グリコデオキシコール酸ナトリウム、ケノデオキシコール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム及びデオキシコール酸ナトリウムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0011】
さらに、前記溶媒は、水、N-メチルピロリドン(NMP)、エタノール、イソプロパノール、トルエン、ベンゼン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ブタノン、n-ブタノール、シクロヘキサン、メチルエチルケトンのうち少なくとも1つである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の有利な効果:前記調製方法で調製された活性ナノカーボン粉末を溶媒に再分散する効果が良好であるため、固体炭素粉末の状態で保管・輸送及び販売することができ、大量の液体溶媒で保管及び輸送しなければならない従来の分散型微細なナノカーボンと比較して、保管及び輸送のコストがより低く、安全性もより優れている。
【0013】
ここに明らかにされた添付の図面は、本発明への更なる理解を助けることを意図し、本願の一部を構成する。本発明の例示的な実施例及びこれらの説明は、本発明を解釈することだけに使われており、本発明に対する不当な限定を構成しない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例のフローチャートである。
図2】CNT-PDA-NDM-8で、(A)ボールミル処理に2日、(B)取り出した後細胞を10分間破砕、(C)12000rpmで遠心分離した後の上澄み液である。
図3】ポリドーパミン改質カーボンナノチューブの赤外スペクトルである。
図4】酢酸エチルに再分散した活性カーボンナノチューブのSEM画像である。
図5】n-ブタノールに再分散した活性カーボンナノチューブのSEM画像である。
図6】NMPに再分散した活性カーボンナノチューブのSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
当業者に本発明の技術的手段をよりよく理解させるため、以下に本発明の実施例中の図面を参照して、本発明の実施例中の技術手段を明確かつ完全に説明するが、説明する実施例は、本発明の一部の実施例であり、全ての実施例でないことは言うまでもない。本発明中の実施例に基づいて、当業者が創造性の活動をしない前提で得られたすべての実施例は、いずれも本発明の保護範囲に属する。
【0016】
本発明の明細書と特許請求の範囲及び上記添付の図面内の用語「第1」、「第2」等は、類似の要素を区別するために使用され、必ずしも順番又は時系列順を記述するために使用されているのではないことに留意されたい。そのように使用されている用語は、適切な状況下で交換可能であり、本明細書において記述されている本発明の実施形態は、本明細書に記述又は例示された順序以外の順序で操作できるということを理解されたい。また、用語「含む」と「有する」、及びこれらの他のいかなる変形は、非排他的な包含をカバーすることが意図されている。例えばステップ又は要素の一覧を含むプロセス、方法、システム、物品、又は装置は、必ずしもこれらのステップ又は要素にのみ限定されることはなく、このようなプロセス、方法、物品、又は装置に対して明示的に列挙してない、若しくは固有の他の要素も含むことができる。
【0017】
(実施例1)
まず、10mmol/L濃度の60又は100mLのTris溶液の調製:まず72.6又は121mlを各々60又は100mLの脱イオン水中に溶解させ、pHを測定し、この時pHは10程度で、次に1mol/L塩酸を滴下して、pHを約8.5程度に調整した。更にCNT、ドーパミンをTris溶液内に同時に又は段階的に加え、細胞破砕機で5~10分間超音波処理した後、室温で2~24時間磁気撹拌して、ドーパミン被覆実験を行った。その後、4000rpmで5分間遠心分離した後、上澄みを廃棄し、反応生成物を吸引濾過中で洗浄し、洗浄した反応生成物を留保した。次にグラフト実験を行い、ビーカーに100mLの脱イオン水を加え、2MNaOH溶液でpHを12以上に調整し、洗浄したCNT-PDA生成物を加え、再度細胞破砕機で10分間超音波処理を施してから1-ドデカンチオール(NDM)を添加した。1-ドデカンチオール(NDM)は、油溶性物質であるため、添加すると水面に浮き、磁気撹拌により10時間以上反応させて1-ドデカンチオール(NDM)をグラフトした生成物を得、洗浄・乾燥後の活性カーボンナノチューブ粉末は、油溶性を有し、ここではCNT-PDA-NDM-8と名付け、この時のカーボンナノチューブ粉末は、中低極性溶媒に再分散しやすい活性粉末を有する。
【0018】
分散性試験:図2に示すように、この時の溶媒は酢酸エチルで、改質後のカーボンナノチューブ粉末をボールミルで2日間予備分散させ、取り出した後、左側の群はそれ以上処理されず、右側の群が2秒間オン、2秒間オフのモードに設定した出力20%の細胞破砕機で10分間破砕した。2群の生成物を遠心分離して比較したところ、処理後の改質カーボンナノチューブ粉末は酢酸エチル溶媒中で良好な安定性を有し、回転数12000rpmで5分間遠心分離した後でも高濃度を維持していることが分かる。
【0019】
図3は、ポリドーパミン改質カーボンナノチューブの活性粉末の赤外スペクトルで、図内の3400cm-1と1700cm-1の左右側にヒドロキシル基ピークがあり、対応するポリドーパミンにはより多くのフェノール性のヒドロキシル基があり、2900cm-1と2750cm-1の近くの2つのピークはC-H結合に対応し、1400cm-1と1300cm-1の近くのピークはS=O結合に対応する。このピークの出現は、1-ドデカンチオールをポリドーパミン被覆層の表面にグラフトすることに成功したことを示している。
【0020】
(実施例2)
活性カーボンナノチューブ粉末を酢酸エチルに取り、細胞破砕機で10分間超音波処理を施し、スラリー内の活性カーボンナノチューブ粉末の含有量を1wt%とし、スラリーを取って吸引ろ過し、得られた薄膜を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した結果を図4に示す。吸引ろ過で得られたカーボンナノチューブスラリー薄膜は、表面が比較的平坦で、明らかな塊状や束状の凝集物が現れないことが分かり、カーボンナノチューブ活性粉末から得られたカーボンナノチューブ酢酸エチル分散スラリーは単一分散性を備えている。
【0021】
活性カーボンナノチューブ粉末をn-ブタノールに取り、細胞破砕機で10分間超音波処理を施し、スラリー内の活性カーボンナノチューブ粉末の含有量を1wt%とし、スラリーを取って吸引ろ過し、得られた薄膜を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した結果を図5に示す。吸引ろ過で得られたカーボンナノチューブスラリー薄膜は、表面が比較的平坦で、明らかな塊状や束状の凝集物が現れないことが分かり、カーボンナノチューブ活性粉末から得られたカーボンナノチューブn-ブタノール分散スラリーは単一分散性を備えている。
【0022】
活性カーボンナノチューブ粉末をNMPに取り、細胞破砕機で10分間超音波処理を施し、スラリー内の活性カーボンナノチューブ粉末の含有量を1wt%とし、スラリーを取って吸引ろ過し、得られた薄膜を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した結果を図6に示す。水分散スラリーと同様に、スラリーを吸引ろ過して得られたカーボンナノチューブ薄膜は比較的均一な特性を有し、明らかな凝集物がなく、カーボンナノチューブ活性粉末がNMP体系において単一に分散できることを示している。
【0023】
(実施例3)
類似した方法を使用すると、炭素粉末体系全体に広げることができ、ドーパミンベンゼン環が存在するため、炭素材料とのπ-π相互作用を形成しやすいことから炭素材料の表面に均一な被覆層を形成する。単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、二層カーボンナノチューブ(DWCNT)、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)、グラファイト(GR)、フラーレン(C60)、グラフェン(Graphene)又はカーボンブラック材料(CB)の1種或いは複数種の混合物を含む1gの微細なナノカーボンを250mLビーカーに取り、100mLの脱イオン水又はエタノールを加え、pH値を8.5程度に調整し、0.5~1gの塩酸ドーパミン粉末を加えて10分間超音波処理を施し、空気中で24時間磁気撹拌して自己重合反応させて、ポリドーパミンで被覆された微細なナノカーボンを得、吸引ろ過して3~5回洗浄し、被覆されていない残りのポリドーパミン小粒子とトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを洗い流し、凍結乾燥させて用意しておき、それぞれナノカーボン(SWCNT、DWCNT……)-PDAと名付けた。さらにナノカーボン-PDAを100mL Tris緩衝液(10mM,pH=8.5)内に分散させた。その後1gのpolyPEGMAを混合物に加え、室温で一晩反応させた。これらの合成されたCNT-PDA-PEGMA複合材料は、遠心分離と洗浄を繰り返して未反応のポリマーを除去した。得られた活性微細なナノカーボン粉末は、良好な弱/非極性有機溶媒への分散性及び生体適合性を備える。
【0024】
本明細書に記載の実施例が本発明の原理を読者が理解するのを助けるためであることは、当業者によって理解されよう。本発明の保護範囲は、このような特定の記述及び実施例に限定されないことを理解されたい。当業者であれば、本発明に開示されたこれらの技術的教示に従って、本発明の本質から逸脱することなく、多種多様な他の具体的な変形及び組み合わせを行うことができ、かかる変形及び組み合わせは、やはり本発明の保護範囲内に含まれるものとする。






【要約】
【課題】 易分散型活性ナノカーボン粉末及びその調製方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明は、有機溶媒に分散しやすい活性ナノカーボン粉末及びその調製方法を開示する。この方法で得られたナノカーボン粉末中のナノカーボンの含有量が高く、使用時有機溶媒での再分散効果が良く、特に非極性及び弱極性有機溶媒での再分散効果が良く、調製工程が単純で、活性粉末状態で保管・輸送及び販売が可能で、大量の溶媒で保管及び輸送する従来の液体状態の微細なナノカーボンに比べ、保管及び輸送のコストがより低く、安全性がより高く、より経済的で環境にやさしい。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6