(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】急速空気硬化用オルガノポリシロキサンクラスターポリマー
(51)【国際特許分類】
C08G 77/50 20060101AFI20230221BHJP
C08L 83/07 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
C08G77/50
C08L83/07
(21)【出願番号】P 2022516277
(86)(22)【出願日】2021-08-30
(86)【国際出願番号】 US2021048163
(87)【国際公開番号】W WO2022051204
(87)【国際公開日】2022-03-10
【審査請求日】2022-04-22
(32)【優先日】2020-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】トーマス、ライアン
(72)【発明者】
【氏名】シェパード、ニック
(72)【発明者】
【氏名】ルー、カン
(72)【発明者】
【氏名】サンダーランド、ジュリア
【審査官】常見 優
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-511784(JP,A)
【文献】国際公開第2020/131367(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/084397(WO,A1)
【文献】特表2016-506992(JP,A)
【文献】国際公開第2020/142443(WO,A1)
【文献】特表2016-512567(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G77/00- 77/62
C08L 1/00-101/16
C08K 3/00- 13/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の平均的な化学構造:
X
3SiO-SiR
2-R’-(R
2SiO)
x-R
2Si-[R
b-(R
2SiO)
y-R
2Si-R
b’-(R
2SiO)
z-R
2Si]
m-R’-R
2SiO-SiX
3を有するクラスターオルガノポリシロキサンを含む組成物であって、
式中、
(a)X=-OSiR
2-R’-R
2SiO-R
2Si-R”-Aであり、
(b)Rは、各出現において、独立して、2~6個の炭素を有するアルキル基およびアリール基からなる基から選択され、
(c)R’、R”、R
b、およびR
b’は、各出現において、独立して、2~6個のメチレン単位の鎖を含む二価の炭化水素基から選択され、
(d)Aは、各出現において、独立して、アクリレート、メタクリレート、およびトリアルコキシシリル基からなる群から選択され、ただし、平均して、前記A基の60~90モルパーセントは、アクリレートおよびメタクリレート基から選択され、
(e)下付き文字mは、0~10の範囲内の平均値を有し、
(f)下付き文字x、y、およびzは、各出現において、各々独立して、0~1200の範囲内の平均値を有し、
ただし、m、x、y、およびzの前記平均値は、x、y、およびzの前記平均値の合計が300~1200の範囲内であり、
かつ、シロキサン単位に対するメチレン単位のモル比が0.15未満
となる値であることを条件とする、組成物。
【請求項2】
各Rがメチルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
m=0であり、各R’は、-(CH
2)
2-であり、各R”は、アクリレートまたはメタクリレートであるA基に連結している場合は、-(CH
2)
3-であり、トリアルコキシシリルであるA基に連結している場合は、-(CH
2)
2-である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記トリアルコキシシリル基のアルコキシ基が、各出現において、独立して、メトキシ、エトキシ、およびプロポキシから選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が、以下の構造:
Si(-OSiR
2-R’-SiR
2OSi(R
2)-R”-A)
4
を有する副生成物をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、熱開始剤をさらに含む硬化性組成物である、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が、湿気硬化触媒をさらに含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
基材の表面上に配置された請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物を含む物品。
【請求項9】
前記組成物が硬化性組成物であり、前記物品の一部として硬化状態にある、請求項8に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オルガノポリシロキサンクラスターポリマー、オルガノポリシロキサンクラスターポリマーを含む硬化性組成物、および硬化または未硬化形態のそのような硬化性組成物を含む物品に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
導入部
アクリレートまたはメタクリレート(「(メタ)アクリレート」)官能性オルガノポリシロキサンは、熱的誘導ラジカル開始剤(「熱開始剤」)の存在下で、(メタ)アクリレート官能性オルガノポリシロキサンを加熱する場合に起こるようなフリーラジカル重合反応に関与するのに有用であり得る。(メタ)アクリレート官能性オルガノポリシロキサンが、アルコキシ官能性も含有する、またはアルコキシ官能性を有する他のオルガノポリシロキサンと組み合わさる場合、(メタ)アクリレート官能性オルガノポリシロキサンは、(メタ)アクリレート基を介するフリーラジカル誘導重合、およびアルコキシ官能性を介する湿気硬化によって、部分的に硬化する二重硬化組成物の一部であり得る。フリーラジカル誘導重合は、多くの場合、組成物の表面の初期硬化を急速に得るために使用される。目的は、乾燥したタックフリー表面を速やかに得て、接触時に組成物または接触物体の損傷または汚染を防止する一方で、組成物の他の部分は、より長い時間をかけて湿気硬化を享受し得ることである。概して、フリーラジカル重合を誘導するための加熱によって硬化させる場合、摂氏100~150度(℃)の温度で、60分未満、好ましくは30分以下で、加熱する(熱硬化させる)ことによって乾燥したタックフリー表面を得ることが望ましい。
【0003】
(メタ)アクリレート官能性オルガノポリシロキサンのフリーラジカル硬化に伴う課題は、酸素阻害である。酸素の存在下で反応を実施する場合、酸素は、(メタ)アクリレートのフリーラジカル重合を妨害する。結果として、空気中での(メタ)アクリレート基のフリーラジカル反応による硬化によって、典型的に、組成物の表面の遅くかつ/または不十分なフリーラジカル硬化に起因する、湿潤性および/または粘着性組成物表面がもたらされる。(メタ)アクリレート基のフリーラジカル重合によって硬化する組成物は、典型的には、酸素が反応を妨害するのを防ぐために、不活性ガスのブランケットまたは他の手段を必要とする。空気中で100~150℃の温度で30分以下の加熱によって、乾燥したタックフリー表面に熱硬化し得、硬化前または硬化中に酸素から保護される必要がない、(メタ)アクリレート官能性オルガノポリシロキサンを特定することは、当技術分野において望ましい進歩であろう。
【0004】
オルガノポリシロキサンは、多くの場合、硬化時に1つまたは1つ以上の基材に接着する硬化性接着剤として機能する。基材に適切に接着するために、ASTM D5289-95(2001年に再承認)に従って移動式ダイレオメーター(MDR)を使用して試験した場合、2枚のプレート間に硬化した接着剤を形成するために、100℃で30分間硬化した場合、オルガノポリシロキサンが、少なくとも0.50ニュートン*メートル(N*m)のトルク弾性率を得ることが望ましい。
【0005】
フリーラジカル重合のための(メタ)アクリレート官能性と、湿気硬化のためのアルコキシ官能性との両方を有し、組成物中で熱および湿気の二重硬化を受けることができ、100℃以上に加熱する前に20分間周囲空気に曝露した後、空気中で100℃以上の温度で30分以内にタックフリー表面まで熱硬化することができ、ASTM D5289-95(2001年に再承認)に従って移動式ダイレオメーターを使用して試験した場合、2枚のプレート間に硬化した接着剤として、少なくとも0.50N*mのトルク弾性率を有する接着剤に、100℃で30分以内に硬化する、オルガノポリシロキサンを見出すことは、望ましく、当技術分野を進歩させるであろう。
【0006】
本発明は、フリーラジカル重合のための(メタ)アクリレート官能性と、湿気硬化のためのアルコキシ官能性との両方を有し、組成物中で熱および湿気の二重硬化を受けることができ、100℃以上に加熱する前に20分間周囲空気に曝露した後、空気中で100℃以上の温度で30分以内にタックフリー表面まで熱硬化することができ、ASTM D5289-95(2001年に再承認)に従って移動式ダイレオメーターを使用して試験した場合、2枚のプレート間に硬化した接着剤として、少なくとも0.50N*mのトルク弾性率を有する接着剤に、100℃で30分以内に硬化する、(メタ)アクリレート官能性オルガノポリシロキサンを提供する。
【0007】
本発明は、60~90モルパーセント(モル%)がアクリレートおよびメタクリレート基から選択され、末端官能性の残りがトリアルコキシシリル基である、末端官能性を含有するクラスターオルガノポリシロキサンを見出した結果である。驚くべきことに、このクラスターオルガノポリシロキサンを熱開始剤と組み合わせて含む組成物は、加熱前に20分間周囲空気に曝露された場合でも、空気中で100℃以上の温度で30分以内にタックフリー表面まで熱硬化し得、ASTM D5289-95(2001年に再承認)に従って移動式ダイレオメーター(MDR)を使用して試験した場合、2枚のプレート間に硬化した接着剤として、少なくとも0.50N*mのトルク弾性率を有する硬化した接着剤に、100℃で30分以内に硬化し得る。
【0008】
第1の態様では、本発明は、以下の平均的な化学構造:
X3SiO-SiR2-R’-(R2SiO)x-R2Si-[Rb-(R2SiO)y-R2Si-Rb’-(R2SiO)z-R2Si]m-R’-R2SiO-SiX3を有するクラスターオルガノポリシロキサンを含む組成物であって、
式中、
(a)X=-OSiR2-R’-R2SiO-R2Si-R”-Aであり、
(b)Rは、各出現において、独立して、2~6個の炭素を有するアルキル基およびアリール基からなる基から選択され、
(c)R’、R”、Rb、およびRb’は、各出現において、独立して、2~6個のメチレン単位の鎖を含む二価の炭化水素基から選択され、
(d)Aは、各出現において、独立して、アクリレート、メタクリレート、およびトリアルコキシシリル基からなる群から選択され、ただし、平均して、A基の60~90モルパーセントは、アクリレートおよびメタクリレート基から選択され、
(e)下付き文字mは、0~10の範囲内の平均値を有し、
(f)下付き文字x、y、およびzは、各出現において、各々独立して、0~1200の範囲内の平均値を有し、
ただし、m、x、y、およびzの平均値は、x、y、およびzの平均値の合計が300~1200の範囲内であり、シロキサン単位に対するメチレン単位のモル比が0.15未満であるようなものである、組成物である。
【0009】
組成物は、熱開始剤をさらに含み得、望ましくはさらに含み、その上湿気硬化触媒をさらに含み得る。ラジカル開始剤および/または湿気硬化触媒を含有する場合、組成物は、硬化性組成物である。
【0010】
第2の態様では、本発明は、基材の表面上に配置された第1の態様に記載の組成物を含む物品である。望ましくは、組成物は、硬化性組成物であり、物品は、硬化状態の組成物を含む。
【発明を実施するための形態】
【0011】
試験方法は、試験方法番号に日付が示されていない場合、本文書の優先日時点の最新の試験方法を指す。試験方法の参照は、試験協会の参照と試験方法番号との両方を含む。本明細書では、以下の試験方法の略語および識別子が適用され、ASTMとは、ASTM International Methodsを指し、ENとは、European Normを指し、DINとは、Deutsches Institut fur Normungを指し、ISOとは、International Organization for Standardsを指し、ULとは、Underwriters Laboratoryを指す。
【0012】
それらの商品名で特定される製品は、本文書の優先日にそれらの商品名で利用可能な組成物を指す。
【0013】
「複数」とは、2つ以上を意味する。「および/または」は、「および、または代替として」を意味する。特に記載がない限り、すべての範囲はエンドポイントを含む。特に明記しない限り、すべての重量パーセント(重量%)値は、組成物の重量に対してであり、すべての体積パーセント(体積%)値は、組成物の体積に対してである。
【0014】
「アクリレート基」とは、以下の構造:-O-C(=O)-CH=CH2を有する基を指す。
【0015】
「アルキル基」とは、1つの水素が欠落し、アルキル基が結合している原子への結合で置換されたアルカンを指す。
【0016】
「周囲空気」とは、23~25℃、50パーセントの相対湿度での空気を指す。
【0017】
「メタクリレート基」とは、以下の構造:-O-C(=O)-C(CH3)=CH2を有する基を指す。
【0018】
「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレートまたはアクリレートを意味する。
【0019】
「メチレン単位」とは、CH2セグメントを指し、これは、より長いアルキレン鎖内にあり得るか、またはメチレンとして単独であり得る。例えば、エチレン(-CH2CH2-)は、2つのメチレン単位を有するアルキレン鎖である。
【0020】
「トリアルコキシシリル基」とは、ケイ素原子に結合している水素が、トリアルコキシシリル基が結合している原子への結合で置換されたトリアルコキシシラン(HSi(OR)3)を指し、-Si(OR)3、式中、Rは、酸素に結合しているアルキル基である。
【0021】
「タックフリー」とは、以下の実施例の項中で、硬化表面湿潤度評価に定義されるようなものである。
【0022】
クラスターオルガノポリシロキサン
本発明は、以下の構造(I):
X3SiO-SiR2-R’-(R2SiO)x-R2Si-[Rb-(R2SiO)y-R2Si-Rb’-(R2SiO)z-R2Si]m-R’-R2SiO-SiX3(I)を有するクラスターオルガノポリシロキサンを含む(かつそれからなり得る)組成物であって、
式中、
(a)X=-OSiR2-R’-R2SiO-R2Si-R”-Aであり、
(b)Rは、各出現において、独立して、2~6個の炭素を有するアルキル基およびアリール基からなる基から選択され、好ましくは、Rは、メチルであり、
(c)R’、R”、Rb、およびRb’は、各出現において、独立して、2~6個のメチレン単位、好ましくは、2個のメチレン単位(-(CH2)2-)または3個のメチレン単位(-(CH2)3)-)の鎖を含む二価の炭化水素基から選択され、
(d)Aは、各出現において、独立して、アクリレート、メタクリレート、およびトリアルコキシシリル基からなる群から選択され、ただし、平均して、A基の60~90モルパーセントは、アクリレートおよびメタクリレート基から選択され、A基の60モルパーセント未満または90モルパーセント超が、アクリレート基およびメタクリレート基から選択される場合、材料は、加熱前に20分間周囲空気に曝露された場合、100℃に30分以内加熱されても、タックフリー表面まで硬化せず、また、a基の60モルパーセント未満が、アクリレート基およびメタクリレート基から選択される場合、組成物は、ASTM D5289-95(2001年に再承認)に従って移動式ダイレオメーター(MDR)を使用して試験した場合、100℃で30分間2枚のプレート間に硬化した接着剤として、0.50N*m超のトルク弾性率を有する接着剤まで硬化せず、
(e)下付き文字mは、0~10の範囲内の平均値を有し、0以上、1以上、2以上、3以上、4以上、さらに5以上であり得ると同時に10以下であり、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、2以下、さらに1以下であり得、
(f)下付き文字x、y、およびzは、各出現において、各々独立して、0~1200の範囲内の平均値を有し、それらのうちのいずれか1つは、0以上、50以上、100以上、150以上、200以上、250以上、300以上、さらに350以上、同時に1200以下であり、1100以下、1000以下、900以下、800以下、700以下、600以下、500以下、400以下、300以下、さらに200以下であり得る平均値を有し得、
ただし、m、x、y、およびzの平均値は、x、y、およびzの平均値の合計が300~1200の範囲内、好ましくは、300以上、400以上、500以上、550以上、600以上、700以上、800以上、さらに900以上、同時に1200以下、1100以下、1000以下、900以下、800以下、700以下、600以下、さらに550以下であり、シロキサン単位に対するメチレン単位のモル比(「p」)が0または0超、同時に0.15未満であり、0.14以下、0.13以下、0.12以下、0.10以下、0.09以下、0.08以下、0.07以下、0.06以下、0.05以下、0.04以下、0.03以下、0.02以下、さらに0.01以下であり得るようなものである、組成物である。オルガノポリシロキサンの試料の1H、13C、および29Si核磁気共鳴(NMR)スペクトルから、m、x、y、z、およびpの値を決定する。
【0023】
望ましくは、R’は、-(CH2)2-であり、その上R”は、アクリレートまたはメタクリレートであるA基に連結している場合は、-(CH2)3-であり、トリアルコキシシリルであるA基に連結している場合は、-(CH2)2-である。トリアルコキシシリル基のアルコキシ基がメトキシであることがさらに望ましい。
【0024】
モル比pが0.15超である場合、得られた組成物は、150℃超の温度でのより低い熱安定性、紫外線照射に対するより低い安定性を被る可能性があり、かつ/または組成物は、-50℃未満の温度に曝露された場合、硬くまたは脆くなり得る。
【0025】
x、y、およびzの合計が300未満である場合、架橋密度は、非常に高くなり、望ましくない低い弾性を伴う脆性組成物をもたらし得る。x、y、およびzの合計が1200超である場合、得られたポリマー粘度は、非常に高くなり、過剰な熱の発生、および材料を吐出またはポンプ輸送するのに必要な過剰な圧力に起因して、有用な組成物を配合することが困難になり得る。
【0026】
mが10超である場合、ポリマーがSiH末端であることを確認するために必要な化学量論的バランスは、工程成長反応の性質に起因して、統計的にも実験的にも得るのが困難となる。
【0027】
ヒドロシリル化化学を使用する場合、2未満のメチレン単位でR’、R”、Rb、またはRb’を得ることは不可能である。それらが6超のメチレン単位を含有する場合、原材料は、過度に高価になり、6を超えて高すぎる場合、モル比pを、0.15以下に維持することは、困難になる。
【0028】
クラスターオルガノポリシロキサンの合成
クラスターオルガノポリシロキサンは、ヒドロシリル化によって合成され得る。本プロセスは、2工程のヒドロシリル化反応プロセスであり得るか、または単一の反応容器内で全成分を混合することによって、工程1および工程2を一緒に行う単一工程のヒドロシリル化反応プロセスであり得る。しかしながら、工程1が完了し、生成物が工程2において別個の反応として使用される、2工程プロセスは、反応の発熱ポテンシャルを低減するために望ましい。
【0029】
第1の工程(工程1)は、白金触媒および熱の存在下で、構造(II)を有する直鎖状水素末端ポリオルガノシロキサンと、構造(III)を有するビニル官能化ネオペンタマーの過剰モル濃度とを反応させて、構造(IV)の官能化直鎖状オルガノポリシロキサンを生成することであり、
H(R2SiO)x-R2Si-[Rb-(R2SiO)y-R2Si-Rb’-(R2SiO)z-R2Si]m-H(II)
(R2Ra’SiO)4Si(III)
(R2Ra’SiO)3SiO-SiR2-R’-SiR2O-(SiR2O)n-OSiR2-R’-SiR2-OSi(OSiRa’R2)3(IV)
式中、R、R’、Rb、Rb’、x、y、z、およびmは、上記のとおりであり、Ra’は、R’の末端炭素に隣接する炭素から水素を除去し、その炭素と末端炭素との間に二重結合を形成することによって形成されるR’の末端不飽和前駆体に相当する。例えば、2つのメチレン単位を含有するR’のRa’は、ビニル基(-CH=CH2)であり、3つのメチレン単位を含有するR’のRa’は、以下の構造:-CH2-CH=CH2を有するアリル基である。
【0030】
望ましくは、mは、0であり、構造(II)は、構造(IIb):
HR2SiO-(SiR2O)x-SiR2H(IIb)のSiH末端ポリジアルキル(好ましくは、ポリジメチル)シロキサンである。
【0031】
mが、0超である場合、アルケニル官能性ポリジアルキル(好ましくは、ポリジメチル)シロキサンおよびSiH末端ポリジアルキル(好ましくは、ポリジメチル)シロキサンから、複数のポリジアルキルシロキサンを連結するヒドロシリル化反応を使用して、直鎖状水素末端ポリオルガノシロキサン(II)を合成することは可能である。本明細書において以下の実施例は、直鎖状水素末端ポリオルガノシロキサン(II)を形成するために、そのような反応を行う方法を例示する。
【0032】
第2の工程(工程2)は、構造(IV)の直鎖状オルガノポリシロキサンを含有する工程1の生成物と、構造(V):
HR2Si-O-SiR2-R”-A(V)の分子構造を有する官能化ジシロキサンとを、白金触媒および熱の存在下で、反応させて、加熱して、
本発明のクラスターオルガノポリシロキサンを生成することであり、式中、R、R”、およびAは、前述のとおりである。
【0033】
副生成物
合成の工程2は、典型的には、構造(IV)の官能化直鎖状オルガノポリシロキサンを単離することなく、工程1と同時に、または2段階ヒドロシリル化反応の工程1に続いて行われる。いずれの場合も、過剰のビニル官能化ネオペンタマーは、構造(IV)の直鎖状オルガノポリシロキサンとともに存在し、工程2の反応中にさらに反応して、副生成物を形成する。合成の工程2の反応生成物は、副生成物とクラスターオルガノポリシロキサンとの合計の重量に対して、最大25重量パーセント(重量%)の副生成物を有することが一般的である。実際、多くの場合、工程2の反応生成物は、副生成物とクラスターオルガノポリシロキサンの合計に対して、5重量%以上、10重量%以上、15重量%以上、さらに20重量%以上の副生成物を含み、同時に、典型的には、25重量%以下の副生成物を含有する。副生成物は、以下の分子構造(VI):
Si(-OSiR2-R’-SiR2OSi(R2)-R”-A)4(VI)を有する化合物を含み、
式中、R、R’、R”、およびAは、前述のとおりである。
【0034】
本発明の組成物は、クラスターオルガノポリシロキサンおよび存在し得る任意の副生成物を含む、クラスターオルガノポリシロキサンを作製するための2工程反応の反応生成物であり得るか、またはそれを含み得る。
【0035】
硬化性組成物
本発明の組成物は、クラスターオルガノポリシロキサンに加えて熱開始剤、任意選択的に湿気硬化触媒、および任意選択的に他の成分を含む硬化性組成物であり得る。組成物が熱開始剤を含む場合、それは熱硬化性組成物である。組成物が熱開始剤および湿気硬化触媒の両方を含む場合、組成物は、熱的および湿気への曝露の両方によって硬化する二重硬化組成物である。
【0036】
好適な熱開始剤の例としては、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,2-ビス(t-ブチルペルオキシブタン)、t-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジ-t-ブチルジペルオキシアゼレート、t-ブチルペルアセテート、t-ブチルペルベンゾエート、ジクミルペルオキシド、アルファ-アルファ’-ビス(t-ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、ジ-t-ブチルペルオキシド、t-ブチルペルオキシピバレート、t-ブチルペルオキシネオデカノエート、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキソエート、ジベンゾイルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、1,1’-アゾ-ビス-クメン、および2,2’-アゾ-ビス-2-メチルバレロニトリルが挙げられる。熱開始剤が存在する場合、それは、典型的には、反応物の総重量に基づいて、0.01重量%以上、0.1重量%以上、またはさらに0.5重量%以上、同時に典型的には、5.0重量%以下、3.0重量%以下、またはさらに2.0重量%以下の濃度で存在する。
【0037】
硬化性組成物は、湿気硬化触媒をさらに含んで、二重硬化組成物を形成し得る。湿気硬化触媒は、クラスターオルガノポリシロキサンのアルコキシシリル基の湿気誘導硬化を促進する。好適な湿気硬化触媒としては、チタン(IV)イソプロポキシド、チタン(IV)n-ブトキシド、チタン(IV)t-ブトキシド、チタン(IV)、チタンジ(イソプロポキシ)ビス(エチルアセトアセテート)、チタンジ(イソプロポキシ)ビス(メチルアセトアセテート)、チタンジ(イソプロポキシ)ビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウム(IV)イソプロポキシド、ジルコニウム(IV)n-ブトキシド、ジルコニウム(IV)t-ブトキシド、ジルコニウムジ(イソプロポキシ)ビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムジ(イソプロポキシ)ビス(メチルアセトアセテート)、ジルコニウムジ(イソプロポキシ)ビス(アセチルアセトネート、ジメチルスズジネオデカノエート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジオクトエート、およびオクタン酸第一スズ、ならびにこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0038】
硬化性組成物は、任意選択的に、熱開始剤および/または湿気硬化触媒に加えて、任意の1つ以上の追加の成分を含み得るか、または含み得ない。好適な追加成分の例としては、充填剤(石英、ヒュームドシリカ、および炭酸カルシウムなど)、顔料(カーボンブラック、および酸化鉄など)、アルコキシシランおよび/またはアルコキシシランの縮合生成物、阻害剤(ブチル化ヒドロキシトルエン(ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)など)、ならびに紫外線トレーサーが挙げられる。
【0039】
硬化性組成物の使用方法
本発明の硬化性組成物は、接着剤、シーラントとして、またはコーティングとして、を含む多くの異なる用途において使用され得る。そのような用途では、組成物の使用は、組成物を基材に塗布し、次いで、組成物を硬化させて、基材上に硬化した組成物を有する物品を形成する工程を含む。例えば、本方法は、硬化性組成物を基材に塗布し、基材上の組成物を熱および任意選択的に湿気に供することを含み得る。
【実施例】
【0040】
表1は、以下の実施例(Exs)および比較例(Comp Exs)において使用される成分を列挙する。表1における分子構造中の「Vi」は、ビニル基(-CH=CH
2)を指す。
【表1】
【0041】
ポリオルガノシロキサンクラスターポリマー(「CP」)の合成
CP1:50/50メタクリレート/ETM官能性CP。Max200スピードミキサーカップに、37.21グラム(g)のSiH末端シロキサン中間体2と、51.73gのビニル末端シロキサン1とを添加し、次いで、動的軸遠心分離機(DACミキサー)を使用して、2000回転/分(RPM)で30秒間2回ブレンドする。0.025gの触媒ソリューションを添加して、デンタルカップ内の混合物の重量に対して、約1.5重量部の白金を提供する。DACミキサーを使用して、2000RPMで30秒間ブレンドする。試料を70℃のオーブン内に30分間置く。得られた材料は、約556の重合度を有し、構造(II)の化学構造を有する直鎖状SiH末端シロキサン1であり、以下の変数値:すべての場合においてR=メチル、Rb=Rb’=「-CH2CH2-」、x=119、y=311、z=119、およびm=1である。
【0042】
直鎖状SiH末端シロキサン1を含む反応混合物に、3.66gのテトラキス-ジメチルビニルシロキシシラン、3.64gのメタクリレートコンバータ、および3.95gのETMコンバータ3.95gを添加する。DACミキサーを使用して、2000RPMで30秒間混合する。0.025gの触媒ソリューションを添加して、デンタルカップ内の混合物の重量に対して、約5.0重量部の白金を提供する。DACミキサーを使用して、2000RPMで30秒間混合する。混合物を70℃のオーブン内に1時間置く。オーブンから混合物を取り出し、23~25℃まで冷却する。0.03gのブチル化ヒドロキシトルエン(Sigma-Aldrich)および0.03gのジアリルマレエート(Sigma-Aldrich)を添加する。得られた混合物を、1H NMR分光法によって分析し、これにより、反応が完了した場合、残留SiHがなく、微量のビニル官能性が残っていることが示される。得られた生成物混合物は、CP1を含み、CP1は、以下の変数値を有する構造(I)の平均的な化学構造を有し、すべての場合においてR=メチル、R’=Rb=Rb’=「-CH2CH2-」、x=119、y=311、z=119、m=1、平均して、X単位の50モルパーセント(モル%)は、A=メタクリレートでR”=「-CH2CH2CH2-」を有し、X単位の50モル%は、A=トリアルコキシシリル基でR”=「-CH2CH2-」を有し、シロキサン単位に対するメチレン単位のモル比は、0.007である。得られた生成物混合物はまた、CP1について記載されたように、R、R’、R”、およびAの値を有する(VI)の化学構造を有する7~9重量%の副生成物も含有する。
【0043】
CP1は、CP-52スピンドルを備えるブルックフィールドDV-IIコーンプレート粘度計を、5RPM、23℃で使用した、93,350ミリパスカル秒(mPa・s)の粘度を有する。
【0044】
CP2:60/40メタクリレート/ETM官能性CP。4.37gのメタクリレートコンバータおよび3.16gのETMコンバータを使用することを除いて、CP1と同様の様式でCP2を調製する。得られた生成物混合物は、CP2を含み、CP2は、以下の変数値を有する構造(I)の平均的な化学構造を有し、すべての場合においてR=メチル、R’=Rb=Rb’=「-CH2CH2-」、x=119、y=311、z=119、m=1、平均して、X単位の60モルパーセント(モル%)は、A=メタクリレートでR”=「-CH2CH2CH2-」を有し、X単位の40モル%は、A=トリアルコキシシリル基でR”=「-CH2CH2-」を有し、シロキサン単位に対するメチレン単位のモル比は、0.007である。得られた生成物混合物はまた、CP2について記載されたように、R、R’、R”、およびAの値を有する(VI)の化学構造を有する7~9重量%の副生成物も含有する。
【0045】
CP2は、CP-52スピンドルを備えるブルックフィールドDV-IIコーンプレート粘度計を、5RPM、23℃で使用した、90,490mPa・sの粘度を有する。
【0046】
CP3:70/30メタクリレート/ETM官能性CP。5.10gのメタクリレートコンバータおよび2.37gのETMコンバータを使用することを除いて、CP1と同様の様式でCP3を調製する。得られた生成物混合物は、CP3を含み、CP3は、以下の変数値を有する構造(I)の平均的な化学構造を有し、すべての場合においてR=メチル、R’=Rb=Rb’=「-CH2CH2-」、x=119、y=311、z=119、m=1、平均して、X単位の70モルパーセント(モル%)は、A=メタクリレートでR”=「-CH2CH2CH2-」を有し、X単位の30モル%は、A=トリアルコキシシリル基でR”=「-CH2CH2-」を有し、シロキサン単位に対するメチレン単位のモル比は、0.007である。得られた生成物混合物はまた、CP3について記載されたように、R、R’、R”、およびAの値を有する(VI)の化学構造を有する7~9重量%の副生成物も含有する。
【0047】
CP3は、CP-52スピンドルを備えるブルックフィールドDV-IIコーンプレート粘度計を、5RPM、23℃で使用した、85,250mPa・sの粘度を有する。
【0048】
CP4:80/20メタクリレート/ETM官能性CP。5.83gのメタクリレートコンバータおよび1.58gのETMコンバータを使用することを除いて、CP1と同様の様式でCP4を調製する。得られた生成物混合物は、CP4を含み、CP4は、以下の変数値を有する構造(I)の平均的な化学構造を有し、すべての場合においてR=メチル、R’=Rb=Rb’=「-CH2CH2-」、x=119、y=311、z=119、m=1、平均して、X単位の80モルパーセント(モル%)は、A=メタクリレートでR”=「-CH2CH2CH2-」を有し、X単位の20モル%は、A=トリアルコキシシリル基でR”=「-CH2CH2-」を有し、シロキサン単位に対するメチレン単位のモル比は、0.007である。得られた生成物混合物はまた、CP4について記載されたように、R、R’、R”、およびAの値を有する(VI)の化学構造を有する7~9重量%の副生成物も含有する。
【0049】
CP4は、CP-52スピンドルを備えるブルックフィールドDV-IIコーンプレート粘度計を、5RPM、23℃で使用した、94,140mPa・sの粘度を有する。
【0050】
CP5:90/10メタクリレート/ETM官能性CP。6.56gのメタクリレートコンバータおよび0.79gのETMコンバータを使用することを除いて、CP1と同様の様式でCP5を調製する。得られた生成物混合物は、CP5を含み、CP5は、以下の変数値を有する構造(I)の平均的な化学構造を有し、すべての場合においてR=メチル、R’=Rb=Rb’=「-CH2CH2-」、x=119、y=311、z=119、m=1、平均して、X単位の90モルパーセント(モル%)は、A=メタクリレートでR”=「-CH2CH2CH2-」を有し、X単位の10モル%は、A=トリアルコキシシリル基でR”=「-CH2CH2-」を有し、シロキサン単位に対するメチレン単位のモル比は、0.007である。得られた生成物混合物はまた、CP5について記載されたように、R、R’、R”、およびAの値を有する(VI)の化学構造を有する7~9重量%の副生成物も含有する。
【0051】
CP5は、CP-52スピンドルを備えるブルックフィールドDV-IIコーンプレート粘度計を、5RPM、23℃で使用した、90,650mPa・sの粘度を有する。
【0052】
CP6:100/0メタクリレート/ETM官能性CP。7.29gのメタクリレートコンバータおよび0.00gのETMコンバータを使用することを除いて、CP1と同様の様式でCP6を調製する。得られた生成物混合物は、CP6を含み、CP6は、以下の変数値を有する構造(I)の平均的な化学構造を有し、すべての場合においてR=メチル、R’=Rb=Rb’=「-CH2CH2-」、x=119、y=311、z=119、m=1、平均して、X単位の100モルパーセント(モル%)は、R”=「-CH2CH2CH2-」およびA=メタクリレートを有し、シロキサン単位に対するメチレン単位のモル比は、0.007である。得られた生成物混合物はまた、CP6について記載されたように、R、R’、R”、およびAの値を有する(VI)の化学構造を有する7~9重量%の副生成物も含有する。
【0053】
CP6は、CP-52スピンドルを備えるブルックフィールドDV-IIコーンプレート粘度計を、5RPM、23℃で使用した、93,820mPa・sの粘度を有する。
【0054】
CP7:80/20メタクリレート/ETM官能性CP。
【0055】
テフロンパドル付きガラス製撹拌棒、水冷式冷却器、窒素パージ、および熱電対付き温度制御器を装備した2リットルの三口丸底フラスコに、以下のもの:2.9gの1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン(MHMH)および997.1gのオクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)を添加する。200rpmで混合し、次いで、シリンジを使用して、0.3mlのトリフルオロメタンスルホン酸を添加する。撹拌速度を250rpmに増加させ、フラスコの内容物を55℃に加熱する。5時間後、温度を25℃に低減し、次いで、10gの重炭酸ナトリウムを添加し、混合物を250rpmで2時間撹拌し続ける。5ミクロンのろ紙を装備した1.5リットルのキャニスターフィルターを使用して、20psiで内容物を濾過し、濾過した生成物を2リットルの三口丸底フラスコに収集する。濾過が完了したら、テフロンパドル付きガラス製撹拌棒、水冷式ガラス製蒸留装置、250mLの丸底収集フラスコ、熱電対付き温度制御器を装備する。250rpmで撹拌を開始し、システムを真空にして、5mmHg未満にし、次いで、フラスコの内容物を150℃に加熱する。ストリップの状態を4時間維持し、次いで、室温まで冷却してから、真空を解除して、材料をデカントする。得られた材料は、1H NMR分光法によって決定されるように、約642の重合度を有する直鎖状SiH末端ポリジメチルシロキサン(「SiH末端シロキサン中間体3」)である。
【0056】
Max200スピードミキサーカップに、89.74gのSiH末端シロキサン中間体3を添加する。3.272gのテトラキス-ジメチルビニルシロキシシラン、5.498gのメタクリレートコンバータ、および1.491gのETMコンバータを添加する。DACミキサーを使用して、2000RPMで30秒間混合する。0.050gの触媒ソリューションを添加して、デンタルカップ内の混合物の重量に対して、約5.0重量部の白金を提供する。DACミキサーを使用して、2000RPMで30秒間混合する。混合物を70℃のオーブン内に1時間置く。オーブンから混合物を取り出し、23~25℃まで冷却する。0.03gのブチル化ヒドロキシトルエン(Sigma-Aldrich)および0.03gのジアリルマレエート(Sigma-Aldrich)を添加する。得られた混合物を、1H NMR分光法によって分析し、これにより、反応が完了した場合、残留SiHがなく、微量のビニル官能性が残っていることが示される。
【0057】
得られた生成物混合物は、CP7を含み、CP7は、以下の変数値を有する構造(I)の平均的な化学構造を有し、すべての場合においてR=メチル、R’=Rb=Rb’=「-CH2CH2-」、x=642、y=0、z=0、m=0、平均して、X単位の80モルパーセント(モル%)は、A=メタクリレートでR”=「-CH2CH2CH2-」を有し、X単位の20モル%は、A=トリアルコキシシリル基でR”=「-CH2CH2-」を有し、シロキサン単位に対するメチレン単位のモル比は、0である。得られた生成物混合物はまた、CP7について記載されたように、R、R’、R”、およびAの値を有する(VI)の化学構造を有する7~9重量%の副生成物も含有する。
【0058】
CP7は、CP-52スピンドルを備えるブルックフィールドDV-IIコーンプレート粘度計を、5RPM、23℃で使用した、42,500ミリパスカル秒(mPa・s)の粘度を有する。
【0059】
アルコキシシリル-末端ポリジメチルシロキサンINTの合成
機械式撹拌機構、加熱マントル、熱電対、および窒素ブランケットを装備した500mLの三口丸底フラスコに、以下の試薬:200.0gのビニル末端シロキサン2および1.88gのメタクリレートコンバータを添加する。内容物をブレンドして、混合物を形成し、次いで、0.16gの触媒ソリューションを添加する。混合物を70℃に1時間加熱し、次いで、23~25℃に冷却する。0.16gのジアリルマレエート(Sigma-Aldrich)を混合物に添加する。得られた混合物を、1H NMRによって分析し、これにより、残留SiHがなく、微量のビニル官能性が残っていることが示され、反応が完了したことが確認される。得られた生成物は、アルコキシシリル-末端ポリジメチルシロキサンであり、アルコキシシリル-末端ポリジメチルシロキサンINTと称される。
【0060】
硬化性配合物
CPの各々を使用して熱硬化性配合物を調製し、次いで、以下に記載されるようにそれらを評価する。
【0061】
Max200スピードミキサーカップ内に、40重量部のCPおよび38重量部の石英充填剤を組み合わせることによって、熱硬化性配合物を調製する。成分を手で混合し、次いで、DACミキサーを使用して、2500RPMで30秒間混合する。混合物が均質なペーストになるまで繰り返す。ペーストを結晶化皿に移し、真空下で120℃で30分間加熱して、ポリマー-充填剤混合物を得る。
【0062】
別個のMax200スピードミキサーカップに、78重量部のポリマー-充填剤混合物および177.7部のアルコキシシリル末端ポリジメチルシロキサンINTを添加する。スパチュラを使用して、成分を手で混合し、次いで、DACミキサーを使用して、2000RPMで30秒間混合する。混合物が均質になるまで混合を繰り返す。0.6重量部の接着促進剤1および1.2重量部の接着促進剤2を添加する。手で混合し、次いで、DACミキサーを使用して、2000RPMで30秒間混合する。均質になるまで混合を繰り返す。2.3重量部のビス(4-メチルベンゾイル)ペルオキシドペースト(United Initiators)50重量部混合物を、シリコーンオイル中に添加し、DACミキサーを使用して、1200RPMで30秒間混合する。0.2重量部の2,5-ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセタノイル)チタン(「TDIDE」、Dorf Ketal)を添加し、DACミキサーを使用して、1200RPMで30秒間混合する。得られた混合物を、177.4ミリリットル(6オンス)のSEMCOチューブに移し、5分間遠心分離し、25℃で48時間平衡化する。
【0063】
硬化性配合物の評価
硬化表面湿潤度評価手順を使用して、硬化性配合物がタックフリー表面まで硬化するかどうかを評価する。移動式ダイレオメーター評価手順を使用して、硬化性配合物のトルク弾性率を決定する。
【0064】
硬化表面湿潤度評価。ドローダウンバーを使用して、1.27ミリメートルの厚さの熱硬化配合物(「試料」)のフィルムを、アルミニウムQパネル(8.89センチメートル×12.7センチメートル)上に塗布する。フィルムを空気(23~25℃、50%の相対湿度)に20分間曝露のままにし、次いで、100℃の空気オーブン内で30分間硬化させる。硬化試料を23~25℃で15分間冷却する。ニトリル手袋をはめた指でフィルムに軽く触れ、手袋をはめた指をフィルムの上に転がす。フィルムのいずれかが手袋に転写された場合、フィルムは試験に不合格であり、タックフリーとは見なされない。手袋にフィルムが残っていない場合、フィルムは試験に合格であり、フィルムはタックフリーと見なされる。
【0065】
移動式ダイレオメーター評価。方法ASTM D5289-95(2001年に再承認)「Standard Test Method for Rubber Property-Vulcanization Using Rotorless Cure Meters」に従って最終トルクを決定する。材料が予熱された平行なプレートの間に配置されたPermier MDR(Alpha Technologies)を使用する。プレート間の材料を100℃で30分間硬化させながら、トルクを監視する。30分での最終トルクを記録する。所望の最終トルクは、0.50ニュートンメートル超である。
【0066】
硬化性配合物の結果
表2は、クラスターポリマーの各々を含有する硬化性配合物の硬化表面湿潤度評価および移動式ダイレオメーター評価を含有する。硬化性配合物は、配合物において使用されるCPによって特定される。CPの比は、エチレントリメトキシシリル(ETM)官能性に対するメタクリレート官能性の平均モル比を示す。
【表2】
【0067】
表2における結果は、エチレントリメトキシシリル(ETM)官能性に対するメタクリレート官能性の平均モル比が、60/40未満または90/10超である場合、フィルムは、タックフリー表面をもたらさないことを示す。加えて、エチレントリメトキシシリル(ETM)官能性に対するメタクリレート官能性の平均モル比が、60/40未満である場合、最終トルクは、0.50N*m未満である。CP7は、目標の重合度を得るために、鎖延長を必要としないことを示す。