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  • 特許-シームレスカプセル及びその製法方法 図1A
  • 特許-シームレスカプセル及びその製法方法 図1B
  • 特許-シームレスカプセル及びその製法方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】シームレスカプセル及びその製法方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/18 20170101AFI20230221BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20230221BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
A61K47/18
A61K47/36
A61K9/48
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022566451
(86)(22)【出願日】2021-12-24
(86)【国際出願番号】 JP2021048197
【審査請求日】2022-10-31
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】598025463
【氏名又は名称】株式会社カマタ
(73)【特許権者】
【識別番号】514190420
【氏名又は名称】株式会社アジア合同
(74)【代理人】
【識別番号】100119301
【弁理士】
【氏名又は名称】蟹田 昌之
(72)【発明者】
【氏名】吉野 達士
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 修
(72)【発明者】
【氏名】江夏 理気
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 哲平
【審査官】福山 則明
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-108958(JP,A)
【文献】特開平10-291928(JP,A)
【文献】特開平09-025228(JP,A)
【文献】国際公開第2000/074720(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/170947(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/210683(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材として寒天を用い、副材としてグリシンを用いた皮膜を有するシームレスカプセルであって、
前記副材として用いるグリシンの量が前記基材として用いる寒天の量よりも多く、
保存液が入った保存容器に保管されている間は前記基材のゲル化が保たれ、前記保存容器外へ取り出すと時間の経過とともに内容物が放出されることを特徴とするシームレスカプセル。
【請求項2】
前記保存容器外へ取り出した直後から前記内容物の放出が開始されることを特徴とする請求項1に記載のシームレスカプセル。
【請求項3】
基材、副材、及び水を混合する工程と、
前記混合した物を加温することにより、前記基材と前記副材を水に溶解させ、皮膜液を作製する工程と、
前記皮膜液を内容物とともに冷却用オイルに滴下し、皮膜で内容物が内包されたシームレスカプセルを作製する工程と、
前記シームレスカプセルを前記基材のゲル化が保たれた状態で保存液中に保管する工程と、を有する請求項1または2に記載のシームレスカプセルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシームレスカプセルに関する。
【背景技術】
【0002】
シームレスカプセルが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-115848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一実施形態は、指や歯等で押し潰す等の外的要因を皮膜に加えなくても、所定の期間内に所望の放出量の内容物が放出されるシームレスカプセルの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、次の一実施形態を含む。
【0006】
基材と副材を含有する皮膜と、
前記皮膜に内包される内容物と、を有するシームレスカプセルであって、
前記基材は、ゲル化する機能を有し、
前記副材は、前記基材のゲル化を弱める機能を有するシームレスカプセル。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一実施形態によれば、指や歯等で押し潰す等の外的要因を皮膜に加えなくても、所定の期間内に所望の放出量の内容物が放出されるシームレスカプセルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】実施例1及び実施例2に係るシームレスカプセルから時間の経過とともに内容物が放出される様子、及び、比較例1に係るシームレスカプセルからは時間が経過しても内容物が放出されない様子を示す写真である。
図1B図1Aに示す写真のうち、保存容器外へ取り出した直後に撮影した写真、保存容器外へ取り出してから30分が経過したときに撮影した写真、保存容器外へ取り出してから60分が経過したときに撮影した写真をそれぞれ拡大して示す図である。
図2】実施例1、実施例2、及び比較例1に係るシームレスカプセルから放出される内容物の合計量(内容物の放出合計量)の時間経過を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施形態に係るシームレスカプセルは、基材と副材を含有する皮膜と、皮膜に内包される内容物と、を有するシームレスカプセルであって、基材は、ゲル化する機能を有し、副材は、基材のゲル化を弱める機能を有するシームレスカプセルである。以下、詳細に説明する。
【0010】
(シームレスカプセル)
シームレスカプセルとは、シームレスなカプセル、すなわち継ぎ目のないカプセルのことをいう。本明細書では、皮膜と皮膜に内包される内容物をまとめて「カプセル」という。本実施形態に係るシームレスカプセルには、ロータリー式ソフトカプセル、ハードカプセル、及び打錠品は含まれない。なお、一例として挙げるシームレスカプセルの直径は、0.5mm以上20.0mm未満であり、好ましくは1.0mm以上8.0mm未満であるが、本実施形態の適用にあたり、シームレスカプセルの直径は特に限定されるものではない。
【0011】
(皮膜)
皮膜は内容物を内包する部材である。皮膜が内容物を包み込むことにより、内容物を皮膜に内包された状態で持ち運んだり収納したりなどすることが可能となる。皮膜は、基材と副材を有している。
【0012】
(基材)
基材にはゲル化する機能を有する部材を用いる。基材は水分を含むことによりゲル化する。ゲル化した基材が内容物を内包する。ゲル化した基材のことを皮膜と称することも可能である。ただし、後述のとおり、本実施形態では、ゲル化した基材よりなる皮膜に、基材のゲル化を弱める副材が含まれている。
【0013】
基材は、例えば、寒天、カラギーナン、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、乳酸カルシウム及びペクチンのうちの少なくとも一種を含むことが好ましい。これらによれば、基材に水分を含有させることにより、基材を容易にゲル化することができる。寒天のみで基材を構成してもよいし、カラギーナンのみで基材を構成してもよいし、ゼラチンのみで基材を構成してもよいし、アルギン酸ナトリウムのみで基材を構成してもよいし、乳酸カルシウムのみで基材を構成してもよいし、ペクチンのみで基材を構成してもよいし、これらのうち二種以上を用いて基材を構成してもよいし、ここで列挙したものとその他の部材を用いて基材を構成してもよい。なお、これら以外の材料であっても、基材に水分を含ませてゲル化することが可能であって、本実施形態の目的を達成することができるものであれば、基材の材料として用いることができる。
【0014】
(副材)
副材には、基材のゲル化を弱める機能を有する部材を用いる。本実施形態は、このように、基材のゲル化を弱める機能を有する部材を、副材としてゲル化した基材(すなわち皮膜)に含ませることを特徴としている。皮膜がこのような副材を含有することにより、指や歯等で押し潰す等の外的要因を皮膜に加えなくても、所定の期間内に所望の放出量の内容物をシームレスカプセルから放出することが可能となる。
【0015】
シームレスカプセルの使用前は、副材が有するゲル化を弱める機能によってシームレスカプセルが崩壊しないように、つまりシームレスカプセルから内容物が放出されないように、基材のゲル化が保持される状態でシームレスカプセルを保管することが好ましい。基材のゲル化が保持される状態での保管の一例には、シームレスカプセルを瓶などの容器に入れた保存液中で保管する、湿った布などで包んで保管する、浸透圧が保たれた状態で保管することなどが含まれる。保存液の一例には水が含まれる。
【0016】
副材は、例えば、アミノ酸及び増粘多糖類のうちの少なくとも一種を含むことが好ましい。これらの材料は、上記した材料を用いた基材に対して、基材のゲル化を弱める機能を有しているため、好ましく用いることができる。アミノ酸のみで副材を構成してもよいし、増粘多糖類のみで副材を構成してもよいし、これらのうち二種以上を用いて副材を構成してもよいし、ここで列挙したものとその他の部材を用いて副材を構成してもよい。なお、これら以外の材料であっても、ゲル化した基材(すなわち皮膜)の副材としてはこれまで用いられておらず、且つ、基材のゲル化を弱める機能を有しており、本実施形態の目的を達成することができるものであれば、副材の材料として用いることができる。
【0017】
アミノ酸とは、カルボキシ基とアミノ基の両方の官能基を持つ有機化合物のことをいう。アミノ酸の一例には、グリシン、グルタミルバリルグリシン、ベタイン、プロリン、ヒドロキシプロリン、グルタミン酸、メチオニン、トリプトファン、ロイシン、バリン、フェニルアラニン、リジン、スレオニン(トレオニン)、イソロイシン、ヒスチジン、アスパラギン、アスパラギン酸、アラニン、アルギニン、グルタミン、システイン、セリン、チロシン、ポリグルタミン酸、シスチン、及びこれらの一種または二種以上を組み合わせたものが含まれる。
【0018】
増粘多糖類の一例には、アセチル化アジピン酸架橋デンプン、アセチル化酸化デンプン、アセチル化リン酸架橋デンプン、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、ガティガム、カードラン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、キサンタンガム、グアーガム、グルコノデルタラクトン、酢酸デンプン、酸化デンプン、ジェランガム、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、タマリンドシードガム、タラガム、デキストリン、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルデンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、プルラン、メチルセルロース、リン酸架橋デンプン、リン酸化デンプン、リン酸モノエステル化リン酸架橋デンプン、ローカストビーンガム、グルコマンナン、キトサン、イヌリン、及びこれらの一種または二種以上を組み合わせたものが含まれる。
【0019】
基材や副材として、食品に添加することが可能なものを用いれば、本実施形態に係るシームレスカプセルを食品用とすることもできる。
【0020】
(内容物)
内容物は、皮膜に内包される部材である。内容物は、液体、粉体、及び固体のいずれであってもよいし、これらの組み合わせであってもよい。内容物は、特に好ましくは油脂及び油溶性物質を含むことが好ましい。この場合、内容物は、油脂と油溶性物質とのみからなるものであってもよいし、油脂と油溶性物質とに加えて他の部材を有していてもよい。油脂の一例には、ヤシ油、植物油、動物油及びこれらを組み合わせたものなどが含まれる。また、油溶性物質の一例には香料、アロマオイル、メントール及びこれらを組み合わせたものなどが含まれる。
【0021】
以上説明した本実施形態によれば、指や歯等で押し潰す等の外的要因を皮膜に加えなくても、所定の期間内に所望の放出量の内容物が放出されるシームレスカプセルを提供することができる。
【0022】
従来のシームレスカプセルは、指や歯等で押し潰す等の外的要因を皮膜に加えない限り、所定の期間内に所望の放出量の内容物がシームレスカプセルから漏れ出ないように構成されている。これに対し、本実施形態のシームレスカプセルは、従来のシームレスカプセルとは異なり、指や歯等で押し潰す等の外的要因を皮膜に加えなくても、所定の期間内に所望の放出量の内容物が放出されるように構成されている。このように、本実施形態のシームレスカプセルは、シームレスカプセルから内容物をどのように放出させるのかという技術的思想が、従来のシームレスカプセルとはまったく異なるものである。
【0023】
本実施形態のシームレスカプセルは、外気に触れることにより崩壊するシームレスカプセル、あるいは外気にふれることにより内容物を放出するシームレスカプセルということもできる。外気も外的要因の一要素として捉えるのであれば、本実施形態のシームレスカプセルは、外気以外の外的要因を加えなくても内容物を放出するシームレスカプセルであるということができる。なお、本実施形態に係るシームレスカプセルの使用に適した外気の温度は、例えばマイナス20度(摂氏)より高くプラス60度(摂氏)より低い温度であるが、本実施形態の適用にあたり外気の温度は特に限定されるものではない。
【0024】
所定の期間内とは、例えばシームレスカプセルの使用期限内のことである。所定の期間は、後述の実施例1と実施例2に示すとおり、基材、基材に含まれる水分、副材、及び内容物等の重量比を変えることによって、適宜変更することが可能である。
【0025】
所望の放出量は、シームレスカプセルの用途により異なり得る。ただし、従来のシームレスカプセルがその使用期限内に放出する内容物の合計量は、多くてもせいぜい内容物の全量の1%未満であると考えられる。これに対し、本実施形態によれば、シームレスカプセルの使用期限内に放出する内容物の合計量が、少なくても内容物の全量の1%以上であるシームレスカプセルを提供することが可能である。
【0026】
[本実施形態に係るシームレスカプセルの製造方法]
実施形態に係るシームレスカプセルは、皮膜の作製に際して副材を用いる点で、公知の製造方法と相違する。換言すると、実施形態に係るシームレスカプセルは、皮膜の作製に際して副材を用いるほかは、公知の方法と同様に作製することができる。一例を挙げると以下のとおりである。
【0027】
(工程1)
まず、基材、副材、及び水を混合する。
【0028】
(工程2)
次に、工程1で作製した混合物を加温する。これにより、基材と副材が水に溶解し、皮膜液が作製される。
【0029】
(工程3)
次に、同芯二重ノズルを用いて工程2で作製した皮膜液を内容物とともに冷却用オイルに滴下し、皮膜で内容物を内包する。
【0030】
(工程4)
次に、工程3で作製されたシームレスカプセルを基材のゲル化が保たれた状態で保管する。例えば、シームレスカプセルを保存液が入った保存容器等に入れて保管する。
【0031】
[実施例1、実施例2、比較例1]
実施例1に係るシームレスカプセルは、皮膜重量35mg(基材0.574mg、水分28.686mg、副材5.740mg)、内容液重量30mgのシームレスカプセルである。また、実施例2に係るシームレスカプセルは、皮膜重量35mg(基材0.92mg、水分27.63mg、副材6.45mg)、内容液重量30mgのシームレスカプセルである。また、比較例1に係るシームレスカプセルは、皮膜重量35mg(基材0.92mg、水分34.08mg)、内容液重量30mgのシームレスカプセルである。実施例1、実施例2、比較例1ともに、基材には寒天を用い、内容物には中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)を用いる。ただし、実施例1、実施例2においては、副材にグリシンを用いるが、比較例1においては、副材を用いない。つまり、実施例1、2は副材を用いる点で、副材を用いない比較例1と異なる。また、実施例1、2は、基材と副材の重量の点で異なるが、その他の点では互いに同じ構成を有する。実施例1、実施例2、比較例1ともに、作製したシームレスカプセルは、作製直後に、基材のゲル化が保たれるよう、水(保存液の一例)が入った保管容器に保管する。
【0032】
実施例1、実施例2、比較例1に係るシームレスカプセルをそれぞれ複数粒作製し、これらを用いて写真撮影及び測定を行ったので、以下で説明する。
【0033】
[写真]
図1Aは、実施例1及び実施例2に係るシームレスカプセルから時間の経過とともに内容物が放出される様子、及び、比較例1に係るシームレスカプセルからは時間が経過しても内容物が放出されない様子を示す写真である。図1A中の向かって左側の列は実施例1に係るシームレスカプセルを撮影した写真の列であり、図1A中の向かって中央の列は実施例2に係るシームレスカプセルを撮影した写真の列であり、図1A中の向かって右側の列は比較例1に係るシームレスカプセルを撮影した写真の列である。左側の列、中央の列、右側の列の各列には、保存容器外へ取り出した直後(より正確には、シームレスカプセルを保存容器外へ取り出した後、シームレスカプセルの表面につく保存液を取り除いた直後)、保存容器外へ取り出してから(より正確には、シームレスカプセルを保存容器外へ取り出した後、シームレスカプセルの表面につく保存液を取り除いてから)、1分が経過したとき、5分が経過したとき、10分が経過したとき、20分が経過したとき、30分が経過したとき、40分が経過したとき、50分が経過したとき、及び60分が経過したときに撮影した写真を示している。写真撮影を行った部屋の温度は22℃であり、湿度は60%である。
【0034】
図1Bは、図1Aに示す写真のうち、保存容器外へ取り出した直後に撮影した写真、保存容器外へ取り出してから30分が経過したときに撮影した写真、保存容器外へ取り出してから60分が経過したときに撮影した写真をそれぞれ拡大して示す図である。
【0035】
図1A図1Bに示すように、皮膜が副材を含有しない比較例1に係るシームレスカプセルからは時間が経過しても内容物が放出されないのに対し、皮膜が副材を含有する実施例1、2に係るシームレスカプセルからは時間の経過とともに内容物が放出される。また、実施例2に係るシームレスカプセルの方が、実施例1に係るシームレスカプセルよりも、時間の経過に伴い放出される内容物の量が多い。
【0036】
(計測)
実施例1、実施例2、及び比較例1に係るシームレスカプセルから放出される内容物の放出量を定量的に評価すべく、内容物を吸収する機能を備えたシートを用いて測定及び計算を行う。具体的には、次の(1)乃至(9)のように内容物の放出量を測定及び計算する。
【0037】
(1)まず、シームレスカプセルを作製し、保存液が入っている保存容器に入れる。
(2)次に、31枚のシートを準備し、それぞれのシートそれ自体の重量を計量する。シートには、キンバリー・クラーク社製のキムワイプ(登録商標)を用いる。個々のシートのサイズは、およそ、縦12.0cm×横10.75cmである。
(3)次に、保存容器から5粒のシームレスカプセルを取り出し、取り出した5粒のシームレスカプセル表面につく保存液を、(2)で用意したシートとは別のシート上に置き、当該別のシートに保存液を吸収させる。保存液を内容物として測定しないよう、シームレスカプセルの表面から保存液を取り除くためである。保存液が取り除かれたかどうかは、目視で確認する。
(4)次に、5粒のシームレスカプセルを1枚目のシート上に置く。
(5)1枚目のシートに置いてから1分が経過した後、5粒のシームレスカプセルを1枚目のシート上から2枚目のシート上に移動させる。
(6)2枚目のシート上に移動させてから9分が経過した後、5粒のシームレスカプセルを2枚目のシート上から3枚目のシート上に移動させる。
(7)3枚目のシート上に移動させてから10分が経過した後、5粒のシームレスカプセルを3枚目のシート上から4枚目のシート上に移動させる。
(8)以降は、新たなシートへの移動を、(3)で保存液を吸収させてから5時間が経過するまでの間、10分間隔で繰り返す。
【0038】
以上により、合計31枚のシートが得られる。1枚目のシートには、1枚目のシートにシームレスカプセルを置いてから1分の間に放出される内容物が吸収される。2枚目のシートには、2枚目のシート上にシームレスカプセルを移動させてから9分の間に放出される内容物が吸収される。3枚目以降のシートには、各シート上にシームレスカプセルを移動させてから10分の間に放出される内容物が吸収される。
【0039】
(9)次に、得られた31枚のシートそれぞれの重量を計量する。
(10)次に、(9)で計量した重量(つまり、内容物を吸収した後のシートの重量)と、(2)で計量したシートそれ自体の重量との差を算出する。この差をシートに吸収されている内容物の重量とみなす。
【0040】
上記の測定を実施例1、実施例2、及び比較例1に係るシームレスカプセルについて行ったので、その結果を以下の表1乃至表3に示す。表1は実施例1に係るシームレスカプセルについての結果を示し、表2は実施例2に係るシームレスカプセルについての結果を示し、表3は比較例1に係るシームレスカプセルについての結果を示す。
【表1】
【表2】
【表3】
【0041】
1行目に記載されている「直後」、「1m」・・・「5H」は、(3)でシームレスカプセルの表面につく保存液を取り除いてから経過した時間を示す。
【0042】
「シートの重さ(計量前)」の行には、(2)で計量したシートそれ自体の重量を記載している。また、「シートの重さ(計量後)」の行には、(9)で計量した内容物吸収後のシートの重量を記載している。いずれも単位はミリグラム(mg)である。「1m」の列は1枚目のシートに対応し、以降の列は2枚目以降のシートに対応している。例えば、「30m」の列における「シートの重さ(計量前)」の行及び「シートの重さ(計量後)」の行には、それぞれ、4枚目のシートそれ自体の重量及び内容物を吸収させた後の4枚目のシートの重量が記載されている。なお、「直後」の列における「シートの重さ(計量前)」には、1枚目のシートそれ自体の重量を記入している。また、内容物を吸収した後の1枚目のシートの重量は、1枚目のシートそれ自体の重量に等しいとみなし、「直後」の列における「シートの重さ(計量後)」の欄への数値の記入は省略した。
【0043】
「放出量」の行には、「シートの重さ(計量後)」と「シートの重さ(計量前)」の差を記載している。単位はミリグラム(mg)である。例えば、「1H」の列における「放出量」は、内容物を吸収させた後の7枚目のシートの重量と7枚目のシートそれ自体の重量の差が記載されている。なお、内容物を吸収した後の1枚目のシートの重量は、1枚目のシートそれ自体の重量に等しいとみなし、「直後」の列における「放出量」の欄への数値の記入は省略した。
【0044】
ある列の「放出合計量」の行には、1つ前の列の「放出合計量」と当該列の「放出量」の和を記載している。単位はミリグラム(mg)である。例えば、「10m」の列における「放出合計量」は、1mの列における「放出合計量」と10mの列における「放出量」の和である。放出合計量は、(3)でシームレスカプセルの表面から保存液を取り除いてから1行目に記載の時間が経過するまでの間における、5粒のシームレスカプセルから放出された内容物の総重量(つまり、放出量の合計値)を意味している。例えば、表1の「20m」の列における放出量は、シームレスカプセルの表面から保存液を取り除いてから20分が経過するまでの間にシームレスカプセルから放出された内容物の合計量を意味している。なお、内容物を吸収した後の1枚目のシートの重量は、1枚目のシートそれ自体の重量に等しいとみなし、「直後」の列における「合計放出量」の欄には0.00mgを記入した。
【0045】
図2は、実施例1、実施例2、及び比較例1に係るシームレスカプセルから放出される内容物の合計量(内容物の放出合計量)の時間経過を示すグラフである。図2の横軸は上記の(3)の工程でシームレスカプセルの表面につく保存液を取り除いてから経過した時間を示し、表1乃至表3における1行目に記載した時間に対応する。また、縦軸は内容物の放出合計量を示し、表1乃至3における「放出合計量」の行に記載した数値に対応する。図1に示すように、皮膜が副材を含有しない比較例1に係るシームレスカプセルからは時間が経過しても内容物が放出されないのに対し、皮膜が副材を含有する実施例1、2に係るシームレスカプセルからは時間の経過とともに内容物が放出される。また、実施例2に係るシームレスカプセルの方が、実施例1に係るシームレスカプセルよりも、時間の経過に伴い放出される内容物の量が多い。
【0046】
(考察)
(1)実施例1、実施例2、比較例1から、次のことが分かる。皮膜に基材のゲル化を弱める機能を有する副材を含有させることにより、指や歯等で押し潰す等の外的要因を皮膜に加えなくても、シームレスカプセルから所定の期間内に所望の放出量の内容物を放出させることが可能である。換言すれば、シームレスカプセルを自然に崩壊させることが可能である。
(2)実施例1と実施例2から、次のことが分かる。シームレスカプセルから内容物が放出される期間(本明細書でいう「所定の期間」のこと。)、及びシームレスカプセルから所定の期間内に放出される内容物の量(本明細書でいう「所望の量」のこと。なお、上記実施例1、2でいう「合計放出量」は「所望の量」の一例である。)は、基材及び/又は副材の量を調整することによりコントロールすることができる。これらの期間や量をコントロールすれば、シームレスカプセルの用途に応じてシームレスカプセルから内容物を様々な態様で放出させることが可能となる。
【0047】
以上、実施形態及び実施例について説明したが、本実施形態及び実施例のカプセルは、外気に触れることにより崩壊するため、本実施形態及び実施例のカプセルを崩壊させるにあたっては、外気以外の外的要因を必要としない。本実施形態及び実施例のカプセルは、自然に崩壊する、あるいは自律的に崩壊する。
【0048】
皮膜はゲル化された基材であるため、本実施形態及び実施例のカプセルは、水や油に溶けない、あるいは溶けにくい。
【0049】
本来、カプセルと呼ばれる物は、医薬品や健康食品に見られる様に、摂取目的の内容液を皮膜(外膜)で包み、服用する事で胃や腸で皮膜が崩壊し内容物を放出する目的としてつくられている。この皮膜の崩壊の方法は体内温度や体内の水分、腸内運動といった外的要因によって引き起こされる。さらに、皮膜の崩壊性を高くした口腔内でのカプセル崩壊を目的としたものもある。これも同様に、体内温度や体内の水分によってカプセルの崩壊を引き起こしている。他には、タバコに使われる様な割れやすい皮膜を形成し、使用時に指でカプセルを潰し内容物を放出させるといった外的圧力を利用し崩壊させるカプセルも存在している。
【0050】
また、カプセルの目的は、飲みやすさや携帯のしやすさ使いやすさを目的としており、例えば内容物が油液の魚油系の物であれば、ソフトカプセルと呼ばれるゼラチンやその他の増粘剤を使い皮膜を形成する。そして、カプセルの成型時に内容物を皮膜で包み、その後、皮膜の水分を乾燥させている。ソフトカプセルにすることにより、本来計量しにくい液体物が粒数でカウントでき携帯性も上がる。また、ソフトカプセルには乳化剤を使用し油と粉体を混ぜカプセル化するものもある。これは口腔内崩壊カプセルも同様である。粉体の服用であればハードカプセルと呼ばれる物があり、もともと形成された鞘に粉体を詰めている物がある。ソフトカプセル同様計量しにくい粉体物が粒数でカウントでき携帯性も上がる。次にタバコ等に使われるカプセルは、内容液にメントール等の清涼感ある物や多種フレーバーオイルを使用し、このカプセルがフィルターに内蔵されている事によりタバコ喫煙時にこのカプセルを指で潰せば喫煙の煙に清涼感や違うフレーバーが楽しめるという物になっている。またカプセルは、酸化防止効果、香りや臭いの包み込みも上げられる。
【0051】
このように、カプセルの使用目的は様々あるが、本実施形態及び実施例のカプセルは、これを崩壊させるにあたり、外気以外の外的要因(例:体内温度、体内の水分、力を加える等)を必要とせず、水溶液・油液に溶けない、あるいは溶けにくい性質を有するものであり、空気中で皮膜が自然崩壊し、皮膜に包まれている内容物が放出されるカプセルである。
【0052】
以上、実施形態及び実施例について説明したが、これらは本発明の一例を説明したものであり、特許請求の範囲に記載された構成は、これらの説明によって何ら限定されるものではない。

【要約】
基材と副材を含有する皮膜と、
前記皮膜に内包される内容物と、を有するシームレスカプセルであって、
前記基材は、ゲル化する機能を有し、
前記副材は、前記基材のゲル化を弱める機能を有するシームレスカプセル。
図1A
図1B
図2