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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-21
(45)【発行日】2023-03-02
(54)【発明の名称】殺菌剤製剤
(51)【国際特許分類】
   A01N 43/10 20060101AFI20230222BHJP
   A01N 43/653 20060101ALI20230222BHJP
   A01N 25/00 20060101ALI20230222BHJP
   A01N 25/02 20060101ALI20230222BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20230222BHJP
【FI】
A01N43/10 F
A01N43/653 C
A01N25/00 102
A01N25/02
A01P3/00
【請求項の数】 6
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018200944
(22)【出願日】2018-10-25
(65)【公開番号】P2019077682
(43)【公開日】2019-05-23
【審査請求日】2021-10-08
(31)【優先権主張番号】62/576,954
(32)【優先日】2017-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/649,415
(32)【優先日】2018-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/154,423
(32)【優先日】2018-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000000354
【氏名又は名称】石原産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000095
【氏名又は名称】弁理士法人T.S.パートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100082887
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 利春
(74)【代理人】
【識別番号】100181331
【弁理士】
【氏名又は名称】金 鎭文
(74)【代理人】
【識別番号】100183597
【弁理士】
【氏名又は名称】比企野 健
(74)【代理人】
【識別番号】100090918
【弁理士】
【氏名又は名称】泉名 謙治
(72)【発明者】
【氏名】サンソン、デール
(72)【発明者】
【氏名】マービン、ジェフ
(72)【発明者】
【氏名】エイナディ、ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】エステス、アラン
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-501899(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0006868(US,A1)
【文献】国際公開第2006/082723(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/090446(WO,A1)
【文献】特表2009-515847(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N
A01P
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テブコナゾールの植生への施用による植物毒性効果を低減させる方法であって、テブコナゾールイソフェタミドとを含有する殺菌剤組成物を植生の場所に施用するステップを含む、方法。
【請求項2】
前記殺菌剤組成物が液体殺菌剤組成物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記テブコナゾールと前記イソフェタミドとの相対重量比が0.5:1~10:1である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記植生への施用が、植生への繰り返し施用である、請求項1~に記載の方法。
【請求項5】
前記植物毒性効果が、植生密度の減少である、請求項1~3に記載の方法。
【請求項6】
前記植生が、芝草である、請求項1~3に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種の脱メチル化阻害剤(demethylation inhibitor:DMI)殺菌剤と少なくとも1種のコハク酸脱水素酵素阻害性(succinate dehydrogenase inhibiting:SDHI)殺菌剤との混合物を含有する液体殺菌剤製剤に関する。当該液体殺菌剤製剤は、DMI殺菌剤の単独施用で観察されるような植物毒性効果を引き起こさずに、数種類の植物、特に芝草への真菌感染を減少させるのに適している。
【背景技術】
【0002】
脱メチル化阻害剤は、1970年代から1980年代初頭にかけて市場に導入されたステロール生合成阻害剤殺菌剤のサブクラスであり、家庭園芸用高級芝草の成長に有害な様々の真菌病原体を広範囲で制御するために、芝草関連産業で広く使用されている。現在、芝草業界で使用するために登録されたDMI殺菌剤として、テブコナゾール、プロピコナゾール、メトコナゾール、フェナリモル、トリチコナゾール、トリアジメホン、及びミクロブタニルが知られている。DMI殺菌剤は世界中で広く使用されているが、著名な芝草研究専門家やゴルフ場管理人等によって、これらの殺菌剤がグリーンの草丈のクリーピングベントグラス(creeping bentgrass)やアニュアルブルーグラス(annual bluegrass)に対して、特に環境ストレスが極端な夏期に、有害なノンターゲット(non-target)効果を与えることが報告されている。ノンターゲット効果は、芝草に対する異常な又は望ましくない負の影響として定義することができる。殺菌剤のクリーピングベントグラスに対するノンターゲット効果には、植物毒性、変色、植物生育調節、及び藻類繁殖増加が含まれる。DMI殺菌剤は、頻繁に、夏期の高温条件下で草冠薄化(又は芝草密度の減少)をもたらす。
【0003】
最初のコハク酸脱水素酵素阻害性(SDHI)殺菌剤であるフルタロニルは、1980年代に市販された。2000年代初頭から、芝草市場で入手可能な多くの病害防除用SDHI殺菌剤が存在している。SDHI殺菌剤の中には広域な制御スペクトルを有するものもあるが、大部分は経済的に重要な一部の病害を制御するように特殊化された製品であった。SDMI殺菌剤は、DMI殺菌剤とは異なり、芝草の品質を損なうことも、低く刈られた芝草の成長に悪影響を及ぼすこともない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一実施形態は、少なくとも1種の脱メチル化阻害剤(DMI)殺菌剤と、少なくとも1種のコハク酸脱水素酵素阻害性(SDHI)殺菌剤とを含有する液体殺菌剤組成物を提供する。
【0005】
本発明の別の実施形態は、植生における真菌感染の発生率を減少させる方法を提供する。この発明の方法は、植生の場所に、少なくとも1種のDMI殺菌剤と少なくとも1種のSDHI殺菌剤とを含有する液体殺菌剤組成物を施用するステップを含む。
【0006】
本発明のさらに別の実施形態は、植生に対するDMI殺菌剤施用の植物毒性効果を低減する方法を提供する。この方法は、植生の場所に、少なくとも1種のDMI殺菌剤と少なくとも1種のSDHI殺菌剤と含有する殺菌剤組成物を施用するステップを含む。
【0007】
本発明のさらに別の実施形態は、植生の場所に液体殺菌剤製剤を施用するステップを含む、液体殺菌剤製剤で植物を処理する方法を提供する。液体殺菌剤製剤は、少なくとも1種のDMI殺菌剤と少なくとも1種のSDHI殺菌剤とを含有する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施形態は、少なくとも1種の脱メチル化阻害剤(DMI)殺菌剤と少なくとも1種のコハク酸脱水素酵素阻害性(SDHI)殺菌剤との混合物を含む殺菌剤組成物、特に液体殺菌剤製剤に関する。本発明の特定の実施形態の目的は、ある種類の殺菌剤、特にDMI殺菌剤の潜在的な負の影響を、他の殺菌剤と、特にSDHI殺菌剤と混合させることによって相殺する殺菌剤組成物を提供することである。得られた組成物は、殺菌剤化合物の有益な殺菌特性を示す一方で、片方又は両方の殺菌剤を用いた際に頻繁に観察される負の影響を示さない。したがって、本発明の特定の実施形態は、各殺菌剤を単独で繰り返し使用した場合と比較して、植生密度の減少、特に芝草の冠部厚さの減少として例示される植物毒性の減少をもたらし、さらに、各殺菌剤を単独で繰り返し施用した場合と比較して、芝草の冠部における真菌感染と藻類繁殖が減少する。特定の実施形態において本発明の殺菌剤組成物は、植物健康状態を維持するという点で化学的により安全であり、真菌感染に対して十分な、場合によってはより良好な制御を提供する。
【0009】
本発明で使用される好ましいDMI殺菌剤には、種々のトリアゾール、イミダゾール、ピペラジン、ピリジン及びピリミジン化合物が含まれる。トリアゾール化合物の例としては、アザコナゾール、ビテルタノール、ブロムコナゾール、シプロコナゾール、ジフェノコナゾール、ジニコナゾール、エポキシコナゾール、フェナリモル、フェンブコナゾール、フルキンコナゾール、フルシラゾール、フルトリアホール、ヘキサコナゾール、イミベンコナゾール、イプコナゾール、メトコナゾール、ミクロブタニル、ペンコナゾール、プロピコナゾール、プロチオコナゾール、シメコナゾール、テブコナゾール、テトラコナゾール、トリアジメホン、トリアジメノール、及びトリチコナゾールが挙げられる。殺菌性イミダゾール化合物の例としては、イマザリル、オキスポコナゾール、ペフラゾエート、プロクロラズ、及びトリフルミゾールが挙げられる。殺菌性ピペラジン化合物の例としては、トリホリンが挙げられる。殺菌性ピリジン化合物の例としては、ピリフェノックスが挙げられる。殺菌性ピリミジン化合物の例としては、フェナリモル、及びヌアリモールが挙げられる。テブコナゾールは、本発明において特に好ましいDMI殺菌剤である。
【0010】
本発明で使用される好ましいSDHI殺菌剤には、種々のフェニル-ベンズアミド、フェニル-オキソ-エチルチオフェンアミド、ピリジニル-エチル-ベンズアミド、フラン-カルボキサミド、オキサチイン-カルボキサミド、チアゾール-カルボキサミド、ピラゾール-カルボキサミド、及びピリジン-カルボキサミド化合物が含まれる。フェニル-ベンズアミド化合物の例としては、ベノダニル、フルトラニル、及びメプロニルが挙げられる。フェニル-オキソ-エチルチオフェンアミド化合物の例としては、イソフェタミドが挙げられる。ピリジニル-エチル-ベンズアミド化合物の例としては、フルオピラムが挙げられる。フラン-カルボキサミド化合物の例としては、フェンフラムが挙げられる。オキサチイン-カルボキサミド化合物の例としては、カルボキシン、及びオキシカルボキシンが挙げられる。チアゾール-カルボキサミド化合物の例としては、チフルザミドが挙げられる。ピラゾール-カルボキサミド化合物の例としては、ベンゾビンジフルピル、ビキサフェン、フルキサピロキサド、フラメトピル、イソピラザム、ペンフルフェン、ペンチオピラド、及びセダキサンが挙げられる。ピリジン-カルボキサミド化合物の例としては、ボスカリドが挙げられる。イソフェタミドは、本発明において特に好ましいSDHI殺菌剤である。本発明においては、テブコナゾールとイソフェタミドとの組み合わせが、好ましい組み合わせである。
【0011】
本発明の特定の実施形態において、少なくとも1種のDMI殺菌剤と少なくとも1種のSDHI殺菌剤とを混合する場合、DMI殺菌剤とSDHI殺菌剤の相対重量比が、約0.5:1~約12:1、約0.5:1~約10:1、約1:1~約6:1、約1:1~約4:1、又は約2:1~約4:1となるように混合される。
【0012】
本発明の特定の実施形態では、各DMI殺菌剤及びSDHI殺菌剤は別々に製剤化されても良く、それぞれの製剤を混合して殺菌剤組成物及び/又は殺菌剤製剤として提供されても良い。DMI又はSDHI殺菌剤製剤は、単品としても入手可能である。たとえば、テブコナゾールの場合はTORQUE又はTebuStar 3.6F、プロピコナゾールの場合はBANNER MAXX、イソフェタミドの場合はKABUTO、ペンチオピラドの場合はVELISTA、ペンチオピラドの場合はXZEMPLAR、トリアジメホンの場合はBAYLETON FLO等が挙げられる。
【0013】
本発明の特定の実施形態では、殺菌剤製剤は、施用直前に水及び/又は他の一般的に使用される混合剤/成分で希釈できる液体プレミックス(premixed)製剤として調製される。このような用途では、液体プレミックス製剤を水で、約1:20~約1:120、約1:35~約1:100、又は約1:50~約1:75の体積比で希釈し、殺菌剤組成物とする。
【0014】
本発明の他の実施形態では、プレミックス殺菌剤製剤を粒状形態で調製することができる。好ましい実施形態では、顆粒は顆粒水和剤(water dispersible granule: WDG)であり、水と混合させることで、スプレーとして標的植生に施用することができる殺菌剤組成物を提供する。特定の実施形態では、DMI殺菌剤、SDHI殺菌剤、1種又は複数種の分散剤、湿潤剤、充填剤、並びに界面活性剤及び尿素等の他の添加剤、の混合物を形成して、本発明のWDGを調製する。これらの成分を所望の比率で混合し、充分な水を加えて生地様物体(a dough-like substance)を調製してから押出ユニットに導入する。押し出された製品を、均一なサイズとなるように加工した後乾燥させて、水分を除去する。WDG組成物としてはさらに、例えば、以下の第2表に記載される組成物が挙げられる。
【0015】
本発明の他の顆粒組成物は、DMI殺菌剤とSDHI殺菌剤との液体混合物を顆粒担体上に塗布及び乾燥することによって調製することができる。顆粒担体としては、肥料顆粒又は不活性顆粒等の工業的に適した任意の顆粒を用いることができ、例えば、Oil Dri Corporation(イリノイ州、シカゴ)によって製造されたモンモリロナイト又はアタパルジャイト組成物の高負荷容量粘土担体、他の粘土、AGSORB(登録商標)(Agsorb Products Group社のミネラルベース製品、イリノイ州、シカゴ)、ドロマイト石灰岩ペレット(オハイオ州、マウミーのThe Andersons社製。DGLite(登録商標)、DGPro(登録商標)、L150、DH46又はDH66の製品名で販売)が挙げられる。トウモロコシ穀粒、トウモロコシ穂軸、並びにピーナッツ及び/又は籾殻等の生物由来担体(Bio-derived carriers)も使用することができる。
【0016】
本発明の殺菌剤製剤は、界面活性剤、懸濁剤、凝固点降下剤、増粘剤、脱イオン水、防腐剤、pH調整剤、及び消泡剤等の様々な不活性成分を任意に含有しても良い。特定の実施形態では、1種又は複数種の非イオン性界面活性剤としてポリメチル メタクリレート-ポリエチレングリコール グラフトコポリマーを、例えばCroda Crop Careから入手可能なATLOX 4913を、含有しても良い。Croda Crop Careからも入手可能なATLAS G5000は、高いHLB値を有するポリアルキレンオキシド ブロックコポリマーであり、懸濁剤、分散剤又は乳化剤として有用である。他の好ましい不活性成分には、凍結防止剤及び/又はゲル化剤又は増粘剤が含まれる。好ましい実施形態では、凍結防止剤は、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、及びそれらの混合物からなる群から選択される分岐鎖又は直鎖状のグリコールである。増粘剤は、キサンタンガム(例えば、CP Kelcoから入手可能なKELZAN)を含んでも良い。本発明の特定の実施形態においてpHは6.2~7.0の範囲に調整されることが望ましいことから、クエン酸をpH調整剤として用いることが好ましい。
【0017】
本発明の例示的な殺菌剤製剤を以下の第1表に表す。以下の製剤は、プレミックスとして調製され、施用前に上記の希釈比で希釈される。
【0018】
【表1】
【0019】
本発明に従って製造されたDMI殺菌剤及びSDHI殺菌剤を含む種々の顆粒水和剤組成物を第2表に記載する。種々の成分を所定量で混合し、十分な水を加えて生地を調製した後、所望の粒子径となるように押出造粒する。粒子の大きさを均一にするために、粒子を篩分け等でさらに処理しても良い。粒子の大きさを均一にした後、粒子を乾燥させて農薬製品を製造する。
【0020】
【表2】
【0021】
本明細書に記載の殺菌剤組成物は、植生内の真菌感染の発生を制御、予防、軽減、及び/又は排除するために植生に施用することができる。本明細書において「予防」とは、殺菌剤組成物を予防的に使用することを含み、真菌感染が観察される前に植物に施用することで、観察可能な真菌感染の発生を防止及び/又は阻害することを含む。これらの方法は、植生の場所に液体殺菌剤組成物を施用することを含んでも良い。上記のように、殺菌剤製剤は、植物に施用する前に希釈されたプレミックス(premixed)又は濃縮(concentrated)殺菌剤製剤として提供されても良い。希釈は、例えば、混合タンク内で行っても良い。希釈製剤によって調製された殺菌剤組成物の植生への施用は、処理すべき植生及び/又はその付近に直接噴霧するなど、当技術分野における通常の手段によって行うことができる。
【0022】
本明細書に記載の殺菌剤組成物は、他の方法を実施する際にも使用することができる。1つの実施形態において殺菌剤組成物は、植生に対するDMI殺菌剤の単回及び繰り返し施用による植物毒性効果を低減するために使用される。前述のように、DMI殺菌剤の繰り返し施用は植生にストレスを与えるので、植生の健康状態と活力を低下させる。少なくとも1種のDMI殺菌剤と少なくとも1種のSDHI殺菌剤との混合物を繰り返し施用することにより、このような有害な影響を緩和し、植物の健康状態と活力を非常に高いレベルで維持できることが発見された。しかし、本発明では、DMI殺菌剤の初期又は単回施用後においても、植物ショックに起因する植物毒性効果の低減と改良された芝草の品質が観察される。植物毒性の低減は、特に芝草において、特に、約0.1~約0.2インチの高さに維持されたゴルフコースのグリーンに使用される芝草において、確認された。
【0023】
特定の実施形態において、殺菌剤組成物を「反復施用」又は「繰り返し施用」することは、殺菌剤組成物を少なくとも1日、少なくとも5日、又は少なくとも7日の間隔を空けて連続的に施用することを含む。他の実施形態では、連続施用は、約7日から約28日の間隔を空けて行われる。
【0024】
殺菌剤は、殺菌剤化合物の量が約0.02~約5.0 ポンド/エーカー(lb/acre)、約0.15~約4.0 lb/acre、又は約0.3~約3.4 lb/acreとなるよう、十分な量を標的植生に施用しても良い。特定の実施形態において、殺菌剤は、1種又は複数種のSDHI殺菌剤の量が0.01~約1.5 lb/acre、約0.05~約1.0 lb/acre、又は約0.1~約0.7 lb/acreになるように施用され、1種又は複数種のDMI殺菌剤の量が約0.01~約3.5 lb/acre、0.1~約3 lb/acre、又は約0.2~約2.7 lb/acreになるように施用される。
特に、SDHI殺菌剤がイソフェタミドである場合、殺菌剤は、イソフェタミドが約0.01~約1.0 lb/acre、約0.2~約0.7 lb/acre、約0.05~約0.54 lb/acre、又は約0.1~約0.4 lb/acreになるように施用される。DMI殺菌剤がテブコナゾールである場合、殺菌剤は、テブコナゾールが約0.01~約1.5 lb/acre、約0.25~約1.5 lb/acre、約0.25~約1.35 lb/acre、又は約0.5~約1.2 lb/acreとなるように施用される。
【0025】
本発明による方法は、芝草、米、小麦、大豆、その他の野菜を含む様々な植生の殺菌剤施用に使用することができるが、これらに限定されない。本発明の実施形態に係る殺菌剤製剤で処理することができる様々な真菌感染には、ダラースポット病(Sclerotinia homoeocarpa);カッパースポット病(Gloeocercospora sorghi);うどんこ病(Blumeria graminis(Erysiphe graminis));さび病(Puccinia spp.); 赤葉腐病(Laetisaria fuciformis);ピンクパッチ病(Limonomyces roseipellis); 褐色リング葉腐病(Waitea circinata var.circinata);葉腐病(Rhizoctonia solani);炭疽病(Colletotrichum cereale);バミューダグラスの減少、テイクオールルートロット(Gaeumannomyces graminis var.graminis);立枯病(Gaeumannomyces graminis var avenae);いもち病(Magnaporthe oryzae);すじ黒穂病(Ustilago striiformis); スプリングデッドスポット(Ophiosphaerella korrae, O. herpotricha, O. narmari); ネクロスティックリングスポット(Ophiosphaerella korrae); フザリウム病(Fusarium roseum);サマーパッチ病(Magnaporthe poae);グレースノーモールド、雪腐小粒菌核病(Typhula spp.);紅色雪腐病(Microdochium nivale);フェアリーリング病(Basidiomycete fungi);及び疑似葉腐病(Rhizoctonia cerealis)、が含まれる。
【実施例
【0026】
以下の第3表に本発明に従って調製された例示的な殺菌性製剤を記載する。これらの実施例は例示のために提供されるものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0027】
【表3】
【0028】
実施例1
本実施例では、いくつかの殺菌剤製剤のクリーピングベントグラスのダラースポット発生に対する効果について試験した。最初に、第一の製品としてPBI-Gordon Corporationから入手可能なイソフェタミドを36.0%含むKABUTO殺菌剤SCを用いて試験を行った。次に、第二の製品としてテブコナゾールを38.8%含むTORQUE殺菌剤(Nufarm社製)を用いて試験を行った。KABUTOとTORQUEはいずれも、各メーカーの単剤を用いた。イソフェタミドとテブコナゾールとのプレミックスを含む上記第3表の製剤1を施用直前に噴霧器タンクで希釈して、第3の製剤として用いた。全ての処置開始した日をDay 1(1日目)とし、所定の施用スケジュールに従って再施用した。試験結果を第4表に記載する。
【0029】
【表4】
【0030】
製剤1は、芝草の品質において、Day 57 (57日目)ではKABUTO及びTORQUEと同程度であったが、Day 85(85日目)ではKABUTO及びTORQUEよりも優れていた。
【0031】
実施例2
本実施例では、数種類のDMI殺菌剤及びSDHI殺菌剤並びにそれらの組み合わせのベントグラスサマーストレスに対する効果について試験した。全ての材料は、14日間の施用スケジュールで試験した。TORQUEとBANNER MAXX(Syngenta)はいずれもDMI殺菌剤であり、KABUTO、VELISTA(Syngenta)、及びXZEMPLAR(BASF)はSDHI殺菌剤である。全ての単剤は、各メーカーから受け取ったものをそのまま試験に用いた。二成分製剤は、個々の有効成分の施用率と同じ有効成分施用率となるように、プレミックスとして調製された。各有効成分の施用率を第5表に記載する。各組成物で処理したベントグラスサンプルのデジタル画像分析により、ライトボックス写真試験を行った。使用したライトボックスの寸法は、24×24×24インチであった。各プロットの中心を評価した。各プロットの1×3メートルを測定した。カメラの高さは、芝の冠部から24インチに設定した。ライトボックスは、デジタル画像に影が映らないようにするために用いられ、各プロットには同じ光を当てた。Fストップとアパーチャを一定にして、すべての画像が同様の色相スペクトルを持つようにした。「パーセントカバー」は、画像内の全ピクセル数と比較した、芝草を示すピクセルの割合を意味する。「平均緑度」は、芝草を示すものとして識別されたピクセルの「緑色度」の分析結果を指す。全ての試験の結果を第6表に記載する。
【0032】
【表5】
【0033】
【表6】
【0034】
BANNER MAXXとSDHI殺菌剤との組み合わせは、BANNER MAXX単独よりも少ない植物毒性を示した。さらに、有効成分としてのテブコナゾールとSDHI殺菌剤との組み合わせは、テブコナゾールのみを有効成分とした場合よりも優れた芝草の品質を示した。ライトボックス写真分析では、TORQUE単独と比較して、製剤1及びXZEMPLAR + TORQUEでパーセントカバーが改善された。また、TORQUE単独と比較して、XZEMPLAR + TORQUE及びVELISTA + TORQUEの組み合わせで平均緑度が高かった。なお、ライトボックスデータ内に含まれるいくつかのデータポイントは、DMI殺菌剤を単独で使用した場合と比較した各組み合わせの安全性を示すものとして決定的ではない。これは、ライトボックスデータを施用サイクル全体ではなく、成長期(147日目)の終期に1度だけ収集することに起因する。芝草は、この時期までに、DMI殺菌剤の繰り返し施用による有害な効果から自然に回復するのに十分な時間を有したと考えられる。この欠点は、以下の実施例3の試験で対処している。また、植物毒性データに含まれるいくつかのデータポイントは、単独で使用されるDMI殺菌剤と比較した各組み合わせの安全性を示すものとして決定的ではない。これは主に、使用された評価尺度に起因すると考えられる。評価者は0と10の間の整数を選択しなければならず、植物の健康状態におけるわずかだが重要な差異を区別することは容易ではなかった。この欠点は、以下の実施例3の試験で0~100の評価尺度を採用することによって対処される。
【0035】
実施例3
本実施例では、様々なDMI殺菌剤及びSDHI殺菌剤並びにそれらの組み合わせのベントグラスのサマーストレスに対する効果について試験した。殺菌剤は、6週間連続して、芝草に毎週施用された。芝草は、品質、カバー、植物毒性、及びデジタル品質に関して毎週評価され、最初の評価は施用開始した週に行われ、最後の評価は施用が終了してから2週間後に行われた。
【0036】
品質は視覚的に評価され、1~9の段階で採点された。9は最良の芝草品質であり、6は商業的に許容可能な最低限の品質である。カバーは、ライトボックスによって撮影されたプロットの写真から決定された。画像は、Turf Analyzerソフトウェアパッケージを用いて分析した(www.turfanalyzer.comを参照)。植物毒性は0~100の段階で視覚的に評価され、植物毒性効果は見られなかった場合は「0」、41~50%の領域で植物毒性効果が見られた場合は「50」、91~100%の領域で植物毒性効果が見られた場合は「100」とした。デジタル品質は、ライトボックス写真及びDGCI(Dark Green Color Index)アナライザを使用して、以下の設定を用いて評価した:Low Sat = 10、High Sat = 100、Low Brightness = 0、High Brightness = 100、Low Hue = 70、及び High Hue = 170。
【0037】
試験した殺菌剤は、イソフェタミド(KABUTO)、トリアジメホン(BAYLETON FLO)、及びテブコナゾールであった。単剤は、各メーカーから受け取ったものをそのまま試験に用いた。二成分製剤は、個々の有効成分の施用率と同じ有効成分施用率となるように、プレミックスとして調製された。各有効成分の施用率を第7表に記載する。
【0038】
【表7】
【0039】
すべての評価の結果は、進行性曲線下面積(Area Under the Progress Curve: AUPC)によって表される単一の値に変換された。AUPCは、特に週単位での植物健康状態変化を推測することが困難な場合に、時間経過に伴う病気の程度(intensity)変化を定量的に分析する標準的なツールである。各処理のAUPC結果を第8表に記載する。
【0040】
【表8】
【0041】
まずAUPC品質データを見ると、一般的にスコアが高いほど芝草の品質が良いことを示す。このデータは、処理4において、芝草の品質がテブコナゾール単独と比較して改善されたことを示している。芝草の品質がSDHI殺菌剤単独の品質に近づいたことから、DMIとSDHI殺菌剤との組み合わせにより、DMI殺菌剤の繰り返し施用による芝草への悪影響が軽減され得ることが示された。
【0042】
次に、カバーに関して、一般的に高いスコアは、芝草によって覆われた試験プロットの表面領域が良好に維持されていることを示す。また、処理4は、テブコナゾール単独と比較してカバーが改善された。処理5は、トリアジメホン単独と比較してわずかに改善していた。処理4は、イソフェタミド単独の安全性に最も近く、処理4及び5の両方で、SDMI殺菌剤を併用することによりDMI殺菌剤の繰り返し施用に対する安全化効果が達成され得ることが示された。
【0043】
植物毒性に関して、低いスコアは、より少ない植物毒性効果が観察されたことを意味する。処理4及び5の両方とも、各DMI殺菌剤を単独で施用した場合と比較して、植物毒性が低減された。また、処理4は、イソフェタミド単独の安全性に最も近似していた。しかしながら、両方の処理で、DMI殺菌剤にSDMI殺菌剤を併用することによる安全化効果が示された。
【0044】
最後に、デジタル品質に関しては、高いスコアは、より良い芝草の品質が観察されたことを示す。処理4及び5の両方とも、各DMI成分よりも高い安全化傾向が観察された。
【0045】
この試験で注目に値することは、本発明によって、最初の殺菌剤施用に関連した「植物ショック」に起因する植物毒性の低減が観察されたことである。植物が水不足、低温、不適切な植え付け等のストレスを受けると、植物ショックが起こる。本実施例でストレスは、DMI殺菌剤のベントグラスへの施用である。データを第9表に記載する。
【0046】
【表9】
【0047】
第9表に見られるように、最初の処理から5日後、処理2及び3(それぞれトリアジメホン及びテブコナゾール)では、試験1日目の初期スコアと比較して、顕著な植物毒性効果及び芝草品質低下が観察された。しかし、DMI殺菌剤及びSDHI殺菌剤の両方を含む組合せの実施例(処理4及び5)では、植物毒性効果は無視できる程度であり、芝草の品質は1日目と比較してわずかに向上した。14日目までに芝草は、最初のDMI殺菌剤施用の植物ショックから大部分回復した。しかし、最初の殺菌剤施用の明確な安全化効果が観察され、芝の品質と健康はこの初期期間において維持された。
【0048】
まとめると、イソフェタミドとテブコナゾールとの組み合わせは、4種の評価すべてにおいて安全化効果が観察され、得られた結果は、SDHI殺菌剤の結果に最も近かった。イソフェタミドとトリアジメホンとの組み合わせは、4種のうちの3種の評価において安全化効果が観察された。また、DMI殺菌剤及びSDHI殺菌剤の組み合わせは、DMI殺菌剤の初期施用に関連した「植物ショック」の低減に有効であることが示された。したがって、このデータは、SDHI殺菌剤がDMI殺菌剤の芝草への単回及び繰り返し施用に安全化効果を有することを示す。
【0049】
上記と同じ処理プロトコールに従って、別の場所でベントグラスに対する第2の試験を行った。ベントグラスを、品質、植物毒性、正規化植生指数(normalized difference vegetative index: NDVI)、刈り芝(clippings)新鮮重量、及び刈り芝(clippings)乾燥重量について評価した。品質及び植物毒性は上記のように評価した。NDVIは植物の冠部で反射される近赤外光の量と可視光の量を評価する指標である。健康で緑色の組織は、主に赤外線と少量の可視光を反射する。植物が退緑するか又は組織が損傷すると、反射される可視光の量が増加する。NDVIの評価が高いほど、植物はより健康的である。NDVI評価は、赤色(660 nm)及び近赤外線(840 nm)のスペクトルバンドを瞬時に測定するハンドヘルドデバイスであるFieldScout CM 1000 NDVIクロロフィルメーター(Spectrum Technologies, Inc.社製)を用いて行った。刈り芝重量評価のために、最初の施用の2週間後に各処理において刈り芝を採取し、残りの試験期間内に2週間間隔で4回採取した。刈り芝を茶色の紙袋に入れた。新鮮な刈り芝重量を測った後、3日間乾燥させてから、刈り芝乾燥重量を測った。
【0050】
本実施例の第1試験と同様に、すべての評価の結果は、進行性曲線下面積(Area Under the Progress Curve: AUPC)によって表される単一の値に変換された。各処理のAUPC結果を第10表に記載する。
【0051】
【表10】
【0052】
品質データを見ると、処理4と処理5の両方とも、各DMI殺菌剤単独と比較して、芝草の品質が改善された。上記の第1試験とは異なり、処理5で安全化効果が観察された。
【0053】
植物毒性に関して、処理4及び処理5の両方とも、各殺菌剤単独と比較して、顕著な安全化効果が観察された。
【0054】
NDVIに関して、種々の処理間で差異は大きくなかったが、処理4及び処理5では各DMI殺菌剤の単独処理と比較してわずかな改善が観察された。
【0055】
刈り芝重量の評価に関しては、一般的に高いスコアは刈り芝が重いことを表し、植物の健康及び/又はカバー範囲が優れていることを表す。刈り芝重量は、処理4及び処理5において、各DMI殺菌剤と比較して改善された。DMI殺菌剤が植物成長調節(PGR)効果を有することが知られているが、驚くべきことに、刈り芝重量は処理4及び処理5において、DMI殺菌剤であるイソフェタミド処理と比較して顕著に高かった。
【0056】
まとめると、DMI殺菌剤及びSDHI殺菌剤の両方を含む殺菌剤処理では、芝草の品質が改善され、植物毒性がDMI単独施用と比較して減少したので、明確な安全化効果が観察された。