IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダイキン工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-冷媒を含有する組成物 図1
  • 特許-冷媒を含有する組成物 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-21
(45)【発行日】2023-03-02
(54)【発明の名称】冷媒を含有する組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 5/04 20060101AFI20230222BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20230222BHJP
【FI】
C09K5/04 F
C09K5/04 C
C09K5/04 E
C09K5/04 B
C09K5/04 A
F25B1/00 396Z
F25B1/00 396T
F25B1/00 396U
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020217947
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2022063196
(43)【公開日】2022-04-21
【審査請求日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】P 2020171237
(32)【優先日】2020-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 智行
(72)【発明者】
【氏名】吉村 崇
(72)【発明者】
【氏名】臼井 隆
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 裕子
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 結香
(72)【発明者】
【氏名】高倉 陽平
(72)【発明者】
【氏名】岩阪 拓馬
【審査官】長部 喜幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/125884(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/186671(WO,A1)
【文献】特開2019-214720(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 5/04
C10M 107/34
C10M 105/38
C10M 107/24
C10M 107/50
C10M 107/38
C10N 40/30
C10N 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を含有する組成物を貯蔵する方法であって、
前記冷媒は、不均化する冷媒と不均化しない冷媒とを含み、
前記不均化する冷媒は、トランス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))、シス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(Z))、1,1-ジフルオロエチレン(HFO-1132a)、トリフルオロエチレン(HFO-1123)、及びテトラフルオロエチレン(FO-1114)からなる群から選ばれる少なくとも1種の成分を含み、
前記組成物の気相における前記不均化する冷媒の濃度(mol/m3)の常用対数(log)をxとし、
前記組成物に含まれる冷媒全体の熱拡散率(mm2/s)の常用対数(log)をyとする時に、
前記冷媒を、式: y < -1.5761x + 3.9516
で示される範囲とする工程を含む、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
冷媒を含有する組成物を貯蔵する方法であって、
前記冷媒は、不均化する冷媒と不均化しない冷媒とを含み、
前記不均化する冷媒は、トランス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))、シス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(Z))、1,1-ジフルオロエチレン(HFO-1132a)、トリフルオロエチレン(HFO-1123)、及びテトラフルオロエチレン(FO-1114)からなる群から選ばれる少なくとも1種の成分を含み、
前記組成物の気相における前記不均化する冷媒の濃度(mol/m3)の常用対数(log)をxとし、
前記組成物に含まれる冷媒全体の熱拡散率(mm2/s)の常用対数(log)をyとする時に、
前記冷媒を、式: y < -1.4941x + 3.6044
で示される範囲とする工程を含む、ことを特徴とする方法。
【請求項3】
冷媒を混合する方法であって、
前記冷媒として、不均化する冷媒と不均化しない冷媒と混合する工程を含み、
前記不均化する冷媒は、トランス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))、シス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(Z))、1,1-ジフルオロエチレン(HFO-1132a)、トリフルオロエチレン(HFO-1123)、及びテトラフルオロエチレン(FO-1114)からなる群から選ばれる少なくとも1種の成分を含み、
前記混合する工程によって得られる組成物の気相における前記不均化する冷媒の濃度(mol/m3)の常用対数(log)をxとし、
前記混合する工程によって得られる組成物に含まれる冷媒全体の熱拡散率(mm2/s)の常用対数(log)をyとする時に、
前記冷媒を、式: y < -1.5761x + 3.9516
で示される範囲とする、ことを特徴とする方法。
【請求項4】
冷媒を混合する方法であって、
前記冷媒として、不均化する冷媒と不均化しない冷媒と混合する工程を含み、
前記不均化する冷媒は、トランス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))、シス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(Z))、1,1-ジフルオロエチレン(HFO-1132a)、トリフルオロエチレン(HFO-1123)、及びテトラフルオロエチレン(FO-1114)からなる群から選ばれる少なくとも1種の成分を含み、
前記混合する工程によって得られる組成物の気相における前記不均化する冷媒の濃度(mol/m3)の常用対数(log)をxとし、
前記混合する工程によって得られる組成物に含まれる冷媒全体の熱拡散率(mm2/s)の常用対数(log)をyとする時に、
前記冷媒を、式: y < -1.4941x + 3.6044
で示される範囲とする、ことを特徴とする方法。
【請求項5】
冷媒の不均化反応を抑制する方法であって、
前記冷媒として、不均化する冷媒と不均化しない冷媒と混合する工程を含み、
前記不均化する冷媒は、トランス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))、シス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(Z))、1,1-ジフルオロエチレン(HFO-1132a)、トリフルオロエチレン(HFO-1123)、及びテトラフルオロエチレン(FO-1114)からなる群から選ばれる少なくとも1種の成分を含み、
前記混合する工程によって得られる組成物の気相における前記不均化する冷媒の濃度(mol/m3)の常用対数(log)をxとし、
前記混合する工程によって得られる組成物に含まれる冷媒全体の熱拡散率(mm2/s)の常用対数(log)をyとする時に、
前記冷媒を、式: y < -1.5761x + 3.9516
で示される範囲とする、ことを特徴とする方法。
【請求項6】
冷媒の不均化反応を抑制する方法であって、
前記冷媒として、不均化する冷媒と不均化しない冷媒と混合する工程を含み、
前記不均化する冷媒は、トランス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))、シス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(Z))、1,1-ジフルオロエチレン(HFO-1132a)、トリフルオロエチレン(HFO-1123)、及びテトラフルオロエチレン(FO-1114)からなる群から選ばれる少なくとも1種の成分を含み、
前記混合する工程によって得られる組成物の気相における前記不均化する冷媒の濃度(mol/m3)の常用対数(log)をxとし、
前記混合する工程によって得られる組成物に含まれる冷媒全体の熱拡散率(mm2/s)の常用対数(log)をyとする時に、
前記冷媒を、式: y < -1.4941x + 3.6044で示される範囲とする、ことを特徴とする方法。
【請求項7】
前記不均化しない冷媒は、3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1243zf)、トリフルオロヨードメタン(CF3I)、ジフルオロメタン(HFC-32)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze(E))、ヘキサフルオロプロペン(FO-1216)、パーフルオロメタン(PFC-14)、ペンタフルオロエタン(HFC-125)、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134)、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)、1,1,1-トリフルオロエタン(HFC-143a)、1,1-ジフルオロエタン(HFC-152a)、フルオロエタン(HFC-161)、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFC-227ea)、シス-1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye(Z))、トランス-1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye(E))、CF3SCF3、プロパン、シクロプロパン、プロピレン、イソブテン、イソブタン、二酸化炭素、及びアンモニアからなる群から選ばれる少なくとも一種の成分を含む、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記組成物は、更に、冷凍機油を含有し、冷凍機油含有作動流体として用いられる、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記冷凍機油は、ポリアルキレングリコール(PAG)、ポリオールエステル(POE)、及びポリビニルエーテル(PVE)、シリコンオイル、含フッ素オイルからなる群より選択される少なくとも1種のポリマーを含有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
空調システムにおいて用いられる、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載の方法を用いた空調システム。
【請求項12】
請求項1~10のいずれかに記載の方法を用いて、冷凍サイクルを運転する工程を含む冷凍方法。
【請求項13】
請求項1~10のいずれかに記載の方法を用いて、冷凍サイクルを運転する冷凍装置の運転方法。
【請求項14】
請求項1~10のいずれかに記載の方法を用いた冷凍装置。
【請求項15】
空調機器、冷蔵庫、冷凍庫、冷水機、製氷機、冷蔵ショーケース、冷凍ショーケース、冷凍冷蔵ユニット、冷凍冷蔵倉庫用冷凍機、車載用空調機器、ターボ冷凍機、又はスクリュー冷凍機である、請求項14に記載の冷凍装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷媒を含有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、トリフルオロエチレン(HFO-1123)及びジフルオロメタン(HFC-32)からなる共沸様組成物を含む熱サイクル用作動媒体が開示されている。
【0003】
特許文献2には、トリフルオロエチレン(HFO-1123)を含む冷媒を作動流体として用い、ポリビニルエーテル油を圧縮機用潤滑油として用い、鏡板から渦巻き状のラップが立ち上がる固定スクロール及び旋回スクロールを噛み合わせて双方向に形成される圧縮室を備え、前記圧縮室にインジェクション孔を設けたことを特徴とする圧縮機が開示されている。
【0004】
特許文献3には、圧縮機と、第1熱交換器と、膨張機構と、第2熱交換器とが接続され、トリフルオロエチレン(HFO-1123)を40wt%以上含有し高圧になるほど不均化反応の連鎖反応が起きやすい冷媒が循環する冷媒回路と、前記冷媒の不均化反応の連鎖反応によって爆発が発生しないように、前記冷媒回路の前記圧縮機から前記膨張機構までの流路における前記冷媒の圧力が閾値に達すると、前記圧縮機の電動要素の、Y結線により接続された3相の固定子巻線の中性点を遮断することで、前記圧縮機の電動要素と外部電源との間の通電を遮断する自動復帰式の圧力ヒューズを前記圧縮機の容器内に具備する制御機構とを備える冷凍サイクル装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-145452号公報
【文献】特開2015-214927号公報
【文献】特開2018-112396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、冷媒の不均化反応が抑制され、冷媒の安定性に優れる組成物を提供することを目的とする。
【0007】
本開示は、空調システムに有用な冷媒を含む組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
【0009】
項1.
冷媒を含有する組成物であって、
前記冷媒は、不均化する冷媒と不均化しない冷媒とを含み、
前記不均化する冷媒は、トランス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))、シス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(Z))、1,1-ジフルオロエチレン(HFO-1132a)、トリフルオロエチレン(HFO-1123)、及びテトラフルオロエチレン(FO-1114)からなる群から選ばれる少なくとも1種の成分を含み、
前記組成物の気相における前記不均化する冷媒の濃度(mol/m3)の常用対数(log)をxとし、
前記組成物に含まれる冷媒全体の熱拡散率(mm2/s)の常用対数(log)をyとする時に、
前記冷媒が、式: y < -1.5761x + 3.9516
で示される範囲である、ことを特徴とする組成物。
【0010】
項2.
冷媒を含有する組成物であって、
前記冷媒は、不均化する冷媒と不均化しない冷媒とを含み、
前記不均化する冷媒は、トランス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))、シス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(Z))、1,1-ジフルオロエチレン(HFO-1132a)、トリフルオロエチレン(HFO-1123)、及びテトラフルオロエチレン(FO-1114)からなる群から選ばれる少なくとも1種の成分を含み、
前記組成物の気相における前記不均化する冷媒の濃度(mol/m3)の常用対数(log)をxとし、
前記組成物に含まれる冷媒全体の熱拡散率(mm2/s)の常用対数(log)をyとする時に、
前記冷媒が、式: y < -1.4941x + 3.6044
で示される範囲である、ことを特徴とする組成物。
【0011】
項3.
前記不均化しない冷媒は、3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1243zf)、トリフルオロヨードメタン(CF3I)、ジフルオロメタン(HFC-32)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze(E))、ヘキサフルオロプロペン(FO-1216)、パーフルオロメタン(PFC-14)、ペンタフルオロエタン(HFC-125)、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134)、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)、1,1,1-トリフルオロエタン(HFC-143a)、1,1-ジフルオロエタン(HFC-152a)、フルオロエタン(HFC-161)、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFC-227ea)、シス-1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye(Z))、トランス-1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye(E))、CF3SCF3、プロパン、シクロプロパン、プロピレン、イソブテン、イソブタン、二酸化炭素、及びアンモニアからなる群から選ばれる少なくとも一種の成分を含む、前記項1又は2に記載の組成物。
【0012】
項4.
更に、冷凍機油を含有し、冷凍機油含有作動流体として用いられる、前記項1~3のいずれかに記載の組成物。
【0013】
項5.
前記冷凍機油は、ポリアルキレングリコール(PAG)、ポリオールエステル(POE)、及びポリビニルエーテル(PVE)、シリコンオイル、含フッ素オイルからなる群より選択される少なくとも1種のポリマーを含有する、前記項4に記載の組成物。
【0014】
項6.
空調システムにおいて用いられる、前記項1~5のいずれかに記載の組成物。
【0015】
項7.
前記項1~6のいずれかに記載の組成物を用いた空調システム。
【0016】
項8.
前記項1~6のいずれかに記載の組成物を用いて、冷凍サイクルを運転する工程を含む冷凍方法。
【0017】
項9.
前記項1~6のいずれかに記載の組成物を用いて、冷凍サイクルを運転する冷凍装置の運転方法。
【0018】
項10.
前記項1~6のいずれかに記載の組成物を用いた冷凍装置。
【0019】
項11.
空調機器、冷蔵庫、冷凍庫、冷水機、製氷機、冷蔵ショーケース、冷凍ショーケース、冷凍冷蔵ユニット、冷凍冷蔵倉庫用冷凍機、車載用空調機器、ターボ冷凍機、又はスクリュー冷凍機である、前記項10に記載の冷凍装置。
【0020】
項12.
冷媒を含有する組成物を貯蔵する方法であって、
前記冷媒は、不均化する冷媒と不均化しない冷媒とを含み、
前記不均化する冷媒は、トランス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))、シス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(Z))、1,1-ジフルオロエチレン(HFO-1132a)、トリフルオロエチレン(HFO-1123)、及びテトラフルオロエチレン(FO-1114)からなる群から選ばれる少なくとも1種の成分を含み、
前記組成物の気相における前記不均化する冷媒の濃度(mol/m3)の常用対数(log)をxとし、
前記組成物に含まれる冷媒全体の熱拡散率(mm2/s)の常用対数(log)をyとする時に、
前記冷媒を、式: y < -1.5761x + 3.9516
で示される範囲とする工程を含む、ことを特徴とする方法。
【0021】
項13.
冷媒を含有する組成物を貯蔵する方法であって、
前記冷媒は、不均化する冷媒と不均化しない冷媒とを含み、
前記不均化する冷媒は、トランス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))、シス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(Z))、1,1-ジフルオロエチレン(HFO-1132a)、トリフルオロエチレン(HFO-1123)、及びテトラフルオロエチレン(FO-1114)からなる群から選ばれる少なくとも1種の成分を含み、
前記組成物の気相における前記不均化する冷媒の濃度(mol/m3)の常用対数(log)をxとし、
前記組成物に含まれる冷媒全体の熱拡散率(mm2/s)の常用対数(log)をyとする時に、
前記冷媒を、式: y < -1.4941x + 3.6044
で示される範囲とする工程を含む、ことを特徴とする方法。
【0022】
項14.
冷媒を混合する方法であって、
前記冷媒として、不均化する冷媒と不均化しない冷媒と混合する工程を含み、
前記不均化する冷媒は、トランス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))、シス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(Z))、1,1-ジフルオロエチレン(HFO-1132a)、トリフルオロエチレン(HFO-1123)、及びテトラフルオロエチレン(FO-1114)からなる群から選ばれる少なくとも1種の成分を含み、
前記組成物の気相における前記不均化する冷媒の濃度(mol/m3)の常用対数(log)をxとし、
前記組成物に含まれる冷媒全体の熱拡散率(mm2/s)の常用対数(log)をyとする時に、
前記冷媒を、式: y < -1.5761x + 3.9516
で示される範囲とする、ことを特徴とする方法。
【0023】
項15.
冷媒を混合する方法であって、
前記冷媒として、不均化する冷媒と不均化しない冷媒と混合する工程を含み、
前記不均化する冷媒は、トランス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))、シス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(Z))、1,1-ジフルオロエチレン(HFO-1132a)、トリフルオロエチレン(HFO-1123)、及びテトラフルオロエチレン(FO-1114)からなる群から選ばれる少なくとも1種の成分を含み、
前記組成物の気相における前記不均化する冷媒の濃度(mol/m3)の常用対数(log)をxとし、
前記組成物に含まれる冷媒全体の熱拡散率(mm2/s)の常用対数(log)をyとする時に、
前記冷媒を、式: y < -1.4941x + 3.6044
で示される範囲とする、ことを特徴とする方法。
【0024】
項16.
冷媒の不均化反応を抑制する方法であって、
前記冷媒として、不均化する冷媒と不均化しない冷媒と混合する工程を含み、
前記不均化する冷媒は、トランス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))、シス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(Z))、1,1-ジフルオロエチレン(HFO-1132a)、トリフルオロエチレン(HFO-1123)、及びテトラフルオロエチレン(FO-1114)からなる群から選ばれる少なくとも1種の成分を含み、
前記組成物の気相における前記不均化する冷媒の濃度(mol/m3)の常用対数(log)をxとし、
前記組成物に含まれる冷媒全体の熱拡散率(mm2/s)の常用対数(log)をyとする時に、
前記冷媒を、式: y < -1.5761x + 3.9516
で示される範囲とする、ことを特徴とする方法。
【0025】
項17.
冷媒の不均化反応を抑制する方法であって、
前記冷媒として、不均化する冷媒と不均化しない冷媒と混合する工程を含み、
前記不均化する冷媒は、トランス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))、シス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(Z))、1,1-ジフルオロエチレン(HFO-1132a)、トリフルオロエチレン(HFO-1123)、及びテトラフルオロエチレン(FO-1114)からなる群から選ばれる少なくとも1種の成分を含み、
前記組成物の気相における前記不均化する冷媒の濃度(mol/m3)の常用対数(log)をxとし、
前記組成物に含まれる冷媒全体の熱拡散率(mm2/s)の常用対数(log)をyとする時に、
前記冷媒を、式: y < -1.4941x + 3.6044
で示される範囲とする、ことを特徴とする方法。
【発明の効果】
【0026】
本開示の冷媒を含む組成物は、冷媒の不均化反応が抑制されており、冷媒の安定性に優れる。
【0027】
本開示の冷媒を含む組成物は、空調システムに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本開示の冷媒を含む組成物を空調システムにおいて運転する条件を表す図である。
図2】本開示の冷媒を含む組成物を空調システムにおいて運転する条件を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、冷媒を含む組成物を空調システムにおいて使用する時に、冷媒が不均化する冷媒と不均化しない冷媒とを含み、組成物の冷媒全体が特定の関係式に基づく条件の下で運転する時に、空調システムにおいて、使用する冷媒の不均化反応が抑制されていることを見出した。
【0030】
本開示は、かかる知見に基づき、更に研究を重ねた結果完成されたものである。
【0031】
以下、本開示に含まれる実施形態について詳細に説明する。
【0032】
<用語の定義>
本明細書において用語「冷媒」には、ISO817(国際標準化機構)で定められた、冷媒の種類を表すRで始まる冷媒番号(ASHRAE番号)が付された化合物が少なくとも含まれ、さらに冷媒番号が未だ付されていないとしても、それらと同等の冷媒としての特性を有するものが含まれる。
【0033】
冷媒は、化合物の構造の面で、「フルオロカーボン系化合物」と「非フルオロカーボン系化合物」とに大別される。「フルオロカーボン系化合物」には、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)及びハイドロフルオロカーボン(HFC)が含まれる。「非フルオロカーボン系化合物」としては、プロパン(R290)、プロピレン(R1270)、ブタン(R600)、イソブタン(R600a)等が挙げられる。
【0034】
本明細書において、用語「冷媒を含む組成物」には、(1)冷媒そのもの(冷媒の混合物(refrigerant mixtures)を含む)と、(2)その他の成分を更に含み、少なくとも冷凍機油と混合することにより冷凍機用作動流体を得る為に用いることのできる組成物と、(3)冷凍機油を含む冷凍機用作動流体(refrigeration working fluid)とが少なくとも含まれる。
【0035】
本明細書においては、これら三態様のうち、(2)の組成物のことを、冷媒そのもの(冷媒の混合物を含む)と区別して「冷媒組成物(refrigerant composition)」と表記する。
【0036】
本明細書においては、また、(3)の冷凍機用作動流体のことを「冷媒組成物」と区別して「冷凍機油含有作動流体(working fluid containing refrigeration oil)」と表記する。
【0037】
本明細書において、用語「代替」は、第一の冷媒を第二の冷媒で「代替」するという文脈で用いられる場合、第一の類型として、第一の冷媒を使用して運転する為に設計された機器において、必要に応じてわずかな部品(冷凍機油、ガスケット、パッキン、膨張弁、ドライヤその他の部品のうち少なくとも一種)の変更及び機器調整のみを経るだけで、第二の冷媒を使用して、最適条件下で運転することができることを意味する。
【0038】
即ち、この類型は、同一の機器を、冷媒を「代替」して運転することを指す。この類型の「代替」の態様としては、第二の冷媒への置き換えの際に必要とされる変更乃至調整の度合いが小さい順に、「ドロップイン(drop in)代替」、「ニアリー・ドロップイン(nealy drop in)代替」及び「レトロフィット(retrofit)」があり得る。
【0039】
第二の類型として、第二の冷媒を用いて運転する為に設計された機器を、第一の冷媒の既存用途と同一の用途の為に、第二の冷媒を搭載して用いることも、用語「代替」に含まれる。この類型は、同一の用途を、冷媒を「代替」して提供することを指す。
【0040】
本明細書において用語「冷凍機(refrigerator)」とは、物、或は空間の熱を奪い去ることにより、周囲の外気よりも低い温度にし、且つこの低温を維持する装置全般のことをいう。言い換えれば、冷凍機は温度の低い方から高い方へ熱を移動させる為に、外部からエネルギーを得て仕事を行いエネルギー変換する変換装置のことをいう。
【0041】
本明細書において、用語「含有」及び「含む」は、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」、及び「のみからなる」という概念を含む。
【0042】
本明細書において、数値範囲が段階的に記載されている場合、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。
【0043】
本明細書において、記載されている数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値又は実施例から一義的に導き出せる値に置き換えてもよい。
【0044】
本明細書では、次の通り記す。
【0045】
不均化する冷媒の例
トランス-1,2-ジフルオロエチレン:HFO-1132(E)((E)-1,2-ジフルオロエチレン) シス-1,2-ジフルオロエチレン:HFO-1132(Z)((Z)-1,2-ジフルオロエチレン) (E)及び/又は(Z)-1,2-ジフルオロエチレン:HFO-1132(E/Z) 「(E/Z)」は、E体(トランス体)及び/又はZ体(シス体)を含むことを意味する。
【0046】
1,1-ジフルオロエチレン:HFO-1132a
トリフルオロエチレン:HFO-1123
テトラフルオロエチレン:FO-1114
【0047】
不均化しない冷媒の例
3,3,3-トリフルオロプロペン:HFO-1243zf
トリフルオロヨードメタン:CF3I
ジフルオロメタン:HFC-32
2,3,3,3-テトラフルオロプロペン:HFO-1234yf
トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン:HFO-1234ze(E) ヘキサフルオロプロペン:FO-1216
パーフルオロメタン:PFC-14
ペンタフルオロエタン:HFC-125
1,1,2,2-テトラフルオロエタン:HFC-134
1,1,1,2-テトラフルオロエタン:HFC-134a
1,1,1-トリフルオロエタン:HFC-143a
1,1-ジフルオロエタン:HFC-152a
フルオロエタン:HFC-161
1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン:HFC-227ea
トランス-1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン:HFO-1225ye(E) シス-1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン:HFO-1225ye(Z) (E)及び/又は(Z) -1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン:HFO-1225ye(E/Z) 「(E/Z)」は、E体(トランス体)及び/又はZ体(シス体)を含むことを意味する。
【0048】
CF3SCF3
プロパン:R290
シクロプロパン
プロピレン:R1270
イソブテン
イソブタン:R600a
二酸化炭素:R744
アンモニア:R717
【0049】
[1]組成物
(1)冷媒
本開示の組成物は、冷媒を含有し、前記冷媒は、不均化する冷媒と不均化しない冷媒とを含む。
【0050】
前記冷媒の内、不均化する冷媒は、トランス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))、シス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(Z))、1,1-ジフルオロエチレン(HFO-1132a)、トリフルオロエチレン(HFO-1123)、及びテトラフルオロエチレン(FO-1114)からなる群から選ばれる少なくとも1種の成分を含む。
【0051】
前記冷媒の内、不均化しない冷媒は、好ましくは、3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1243zf)、トリフルオロヨードメタン(CF3I)、ジフルオロメタン(HFC-32)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze(E))、ヘキサフルオロプロペン(FO-1216)、パーフルオロメタン(PFC-14)、ペンタフルオロエタン(HFC-125)、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134)、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)、1,1,1-トリフルオロエタン(HFC-143a)、1,1-ジフルオロエタン(HFC-152a)、フルオロエタン(HFC-161)、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFC-227ea)、シス-1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye(Z))、トランス-1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye(E))、CF3SCF3、プロパン、シクロプロパン、プロピレン、イソブテン、イソブタン、二酸化炭素、及びアンモニアからなる群から選ばれる少なくとも一種の成分を含む。
【0052】
本開示の組成物の気相における前記不均化する冷媒の濃度(mol/m3)の常用対数(log)をxとし、前記組成物に含まれる冷媒全体の熱拡散率(mm2/s)の常用対数(log)をyとする時に、
前記冷媒は、式: y < -1.5761x + 3.9516
で示される範囲である。
【0053】
本開示の組成物の気相における前記不均化する冷媒の濃度(mol/m3)の常用対数(log)をxとし、前記組成物に含まれる冷媒全体の熱拡散率(mm2/s)の常用対数(log)をyとする時に、
前記冷媒は、式: y < -1.4941x + 3.6044
で示される範囲である。
【0054】
前記「冷媒全体」は、「不均化する冷媒」と「不均化しない冷媒」との合計を表す。本開示の組成物において、使用される冷媒は、不均化する冷媒と不均化しない冷媒とで構成される。
【0055】
本開示の組成物において、含有させる冷媒の製造方法は特に限定されず、例えば、例えば、公知の製造方法によって各種冷媒を製造することができる。冷媒がHFO-1132(E/Z)である場合、HFO-1132(E/Z)は、1,1,2-トリフルオロエタン(HFC-143)を、脱フッ化水素する反応、(E)及び/又は(Z)-1,2-ジクロロ-1,2-ジフルオロエチレン(CFO-1112(E/Z))を水素化する反応、或は、1-クロロ-1,2-ジフルオロエタン(HCFC-142a)の脱塩化水素する反応によって、を製造することができる。
【0056】
前記組成物において、冷媒の全量は、ガスクロマトグラフにより特定することができる。
【0057】
前記組成物に含まれる冷媒は、好ましくは、実質的に、HFO-1132(E/Z)、HFO-1132a、HFO-1123、及びFO-1114からなる群から選ばれる少なくとも1種の不均化する冷媒と、不均化しない冷媒とで構成される組み合わせであっても良い。
【0058】
本開示の組成物において、前記冷媒の含有割合は、特に限定されず、組成物全体に対して、通常、好ましくは、95質量%以下であり、より好ましくは、90質量%以下であり、更に好ましくは、80質量%以下であり、特に好ましくは、70質量%以下であり、最も好ましくは、60質量%以下である。前記冷媒の含有割合は、組成物全体に対して、好ましくは、5質量%以上であり、より好ましくは、10質量%以上であり、更に好ましくは、20質量%以上であり、特に好ましくは、30質量%以上であり、最も好ましくは、40質量%以上である。
【0059】
その他の冷媒として、前記冷媒の製造時に混入し得る不純物(不可避不純物)を含むことができる。
【0060】
前記不純物として、例えば、HFO-1132(E/Z)である場合、フッ化水素、フルオロエチレン、HFO-1123、1,1,1-トリフルオロエタン、プロピレン、アセチレン、HFC-32、トリフルオロメタン、フルオロメタン、HFO-1123、HFC-152a、HFC-161、HFC-143、2-クロロ-1,1,1-トリフルオロエタン(HCFC-133b)、1-クロロ-1,1,2-トリフルオロエタン(HCFC-133)、1,1-ジクロロ-2,2,2-トリフルオロエタン(HCFC-123)、1-クロロ-1,2-ジフルオロエタン(HCFC-142a)、1,2-ジフルオロエタン(HFC-152)、クロロジフルオロメタン(HCFC-22)、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134)、HFC-125、HFO-1234yf、HFO-1225ye(E/Z)、HFO-1234ze(E/Z)、フルオロエチレン(HFO-1141)、3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1243zf)、HFO-1132a、1-クロロ-2,2-ジフルオロエチレン(HCFO-1122)、1-クロロ-1,2-ジフルオロエチレン(HCFO-1122a)、エチレン等である。
【0061】
本開示の組成物に含まれる冷媒が、前記冷媒の不純物を含む場合、その含有量は特に限定されず、例えば、重量換算で、0.1ppm以上、10,000ppm以下程度含んでも良い。この範囲であれば、組成物中の冷媒の安定化作用が阻害される虞は小さい。
【0062】
組成物が含む冷媒には、地球温暖化係数(Global Warming Potential:GWP)が10未満であること、低毒性であること、及び不燃であることが求められている。
【0063】
冷媒として、HFO系冷媒(HFO-1132(E)、HFO-1132(Z)、HFO-1132a、HFO-1123、FO-1114等)を単独で用いると、GWPは10未満であり、低毒性である点で好ましいが、可燃性を有し、安定性が悪い(例えば、不均化反応性を有する)点で好ましくない面も有る。そして、それら好ましくない点に対して、冷媒組成物において他の冷媒と混ぜること、空調システムの機器側での運転条件や混合、貯蔵等の操作条件を制御することにより、その問題点を解決する試みが有る。
【0064】
HFO系冷媒としてHFO-1132(E)及びHFO-1132(Z)の不均化反応は、次の式で表される。
CHF=CHF → 2C+2HF
【0065】
不均化反応は1.温度2.圧力及び冷媒組成3.着火エネルギーの3つの要素が揃うことで発生する。
【0066】
1.温度
例えば、空調システムの温度が所定の温度を超える時に、脱圧し、温度を制御することで、不均化反応を抑制することが考えられる。
【0067】
図1は、本開示の空調システムにおいて、不均化発生範囲を、例として、不均化する冷媒HFO-1132(E)と不均化しない冷媒HFO-1234yfとの組成比別で表しており、不均化ありとなる温度圧力条件において、着火源があると不均化が発生する。「不均化ありとなる温度圧力条件」は、各グラフの横軸方向に正の側である。
【0068】
2.圧力及び冷媒組成
例えば、空調システムの圧力が所定の圧力になる時に、通電を停止し、圧力を制御することで、不均化反応を抑制することが考えられる。冷媒組成に関しては、例えば、不均化しない冷媒の割合を多くすることで不均化反応を抑制することが考えられる。例えば、不均化しない冷媒としてHFC-32を含む混合物にすることで、不均化反応を抑制することが考えられる。
【0069】
3.着火エネルギー
特に限定されない。
【0070】
着火エネルギー:30Jが想定される条件
例えば、圧縮機内配線のレイヤーショート、ジュール熱による溶断、スパーク、摺動部の摩擦熱、モーターの発熱、配管内での冷媒の断熱圧縮、冷媒と構造物の衝突エネルギー等が考えられる。着火エネルギーの大きさは、様々であり、エネルギー量が大きい程、不均化が生じ易いと考えられる。
【0071】
一般に、冷媒の燃焼評価で用いられる着火エネルギーは、高圧ガス保安法では20J以上与えるようにされており、実測では30Jである。
【0072】
上記説明の通り、不均化反応は1.温度、2.圧力及び冷媒組成、3.着火エネルギーの3つの要素が揃うことで発生することから、30Jの着火エネルギーの下、特定の不均化する冷媒と不均化しない冷媒とを含む組成物において、前記組成物の気相における前記不均化する冷媒の濃度(mol/m3)の常用対数(log)をxとし、前記組成物に含まれる冷媒全体の熱拡散率(mm2/s)の常用対数(log)をyとする時に、前記冷媒が、
式: y <-1.5761x + 3.9516
で示される範囲となる様に、温度、圧力及び/又は冷媒組成を調整又は制御することにより、不均化反応を抑制することが可能である。
【0073】
着火エネルギー:500Jが想定される条件
一般に、摺動部の摩擦熱の着火エネルギーは500Jに達する。
【0074】
着火エネルギーを500Jとした場合には、特定の不均化する冷媒と不均化しない冷媒とを含む組成物において、前記組成物の気相における前記不均化する冷媒の濃度(mol/m3)の常用対数(log)をxとし、前記組成物に含まれる冷媒全体の熱拡散率(mm2/s)の常用対数(log)をyとする時に、
前記冷媒は、式: y < -1.4941x + 3.6044
で示される範囲となる様に、温度、圧力及び/又は冷媒組成を調整又は制御することにより、不均化反応を抑制することが可能である。
【0075】
着火エネルギーを500Jとした場合においても、前記組成物に含まれる冷媒の不均化反応を抑制することが可能である条件(式:y < -1.4941x + 3.6044)は、着火エネルギーを30Jとした場合の条件(式:y <-1.5761x + 3.9516)に比べて、より好ましい条件と言える。
【0076】
(2)一般式の説明
図2は、本開示の組成物が、不均化する冷媒と不均化しない冷媒とを含み、例えば、空調システムで使用される時の冷媒の運転条件を表し、不均化反応が起きない冷媒組成、温度、及び圧力条件を一般式化するグラフである。
【0077】
本開示の組成物が、例えば、空調システムで使用される時に、不均化反応が抑制される冷媒組成、温度、及び圧力の条件を一般式化することで、図2に表す通り、特定の冷媒組成、特定の温度、及び特定の圧力の条件下で、不均化反応が抑制された空調システムの運転が可能となる。
【0078】
本開示の組成物は、例えば、空調システムにおいて、図2に表す通り、「冷媒全体の熱拡散率」と「不均化する冷媒の濃度」とをプロットすることにより、「不均化が抑制された場合」の「○」と「不均化する場合」の「×」とが、グラフを跨いで、グラフの左下(○)とグラフの右上(×)で分かれる。
【0079】
「グラフの左下」は、「○」が占める領域であり、冷媒が、グラフ(直線の式):y = -1.5761x + 3.9516に対して、y軸方向に負の側の位置、つまり、y <-1.5761x + 3.9516で示される範囲に制御されている。
【0080】
「グラフの右上」は、「×」が占める領域であり、冷媒が、グラフ(直線の式):y = -1.5761x + 3.9516に対して、y軸方向に正の側の位置、つまり、y >-1.5761x + 3.9516で示される範囲に制御されている。
【0081】
本開示の組成物は、例えば、空調システムにおいて、図2に表す通り、そのグラフ(直線の式)の境界線より左下(○)になる冷媒組成、温度、及び圧力条件で運転することにより、つまり、冷媒が、y < -1.5761x + 3.9516で示される範囲に制御されていることにより、不均化反応が抑制された空調システムの運転が可能となる。
【0082】
上記説明は、本開示の組成物の気相における前記不均化する冷媒の濃度(mol/m3)の常用対数(log)をxとし、前記組成物に含まれる冷媒全体の熱拡散率(mm2/s)の常用対数(log)をyとする時に、
前記冷媒は、式: y < -1.4941x + 3.6044
で示される範囲とする時にも、適用できる。
【0083】
(2-1)x軸の説明
x軸:log(組成物の気相における不均化する冷媒の濃度(mol/m3))
本開示の組成物は、例えば、空調システムにおいて使用され、組成物の気相における不均化する冷媒の濃度(mol/m3)の常用対数(log)を「x」(x軸)とする。
【0084】
本開示の組成物において、x軸の範囲、即ち、「log(組成物の気相における不均化する冷媒の濃度(mol/m3))」の範囲は、例えば、空調システムで使用される時に、不均化反応が良好に抑制されるという点で、好ましくは、-0.59以上、4.23以下であり、更に好ましくは、2.2以上、3.4以下である。
【0085】
「不均化する冷媒の合計」とは、冷媒組成において、不均化する冷媒の合計であり、不均化する冷媒を1種単独で使用する時は、その1種を指し、不均化する冷媒を2種以上の併用で使用する時は、その併用した2種以上の総計を指す。
【0086】
前記「x」(x軸)の値の常用対数(log)に入る「組成物の気相における不均化する冷媒の濃度(mol/m3)」は、温度、圧力、及び冷媒組成に依存する。
【0087】
(2-2)y軸の説明
y軸:log(組成物に含まれる冷媒全体の熱拡散率(mm2/s))
本開示の組成物は、例えば、空調システムにおいて使用され、冷媒全体の熱拡散率(mm2/s)の常用対数(log)を「y」(y軸)とする。
【0088】
本開示の組成物において、y軸の範囲、即ち、「log(組成物に含まれる冷媒全体の熱拡散率(mm2/s))」の範囲は、式に基づき、上記x軸の範囲に従う。
【0089】
前記「y」(y軸)の値の常用対数(log)に入る「冷媒全体の熱拡散率(mm2/s)」は、次の式で求められる。
【0090】
冷媒全体の熱拡散率(mm2/s)
=熱伝導率[mW/(m K)]÷(密度[kg/(m3)]×比熱[kJ/kg K]) 前記「熱伝導率[mW/(m K)]」は、冷媒組成、温度、及び圧力に依存する。
【0091】
前記「密度[kg/(m3)]」は、冷媒組成、温度、及び圧力に依存する。
【0092】
前記「比熱[kJ/ kg K]」は、冷媒組成、温度、及び圧力に依存する。
【0093】
比熱とは定圧モル比熱を意味する。
【0094】
前記熱伝導率[mW/(m K)]」、「密度[kg/(m3)]」、「比熱[kJ/kg K]は、実測しても良いし、National Institute of Science and Technology(NIST) Reference Fluid Thermodynamic and Transport Properties Database(Refprop)を使い、理論計算を実施して求めても良い。
【0095】
(2-3)xとyとの関係式の説明
y <-1.5761x + 3.9516
x = log(組成物の気相における不均化する冷媒の濃度(mol/m3))
y = log(組成物に含まれる冷媒全体の熱拡散率(mm2/s))
本開示の組成物は、例えば、空調システムにおいて使用される時、
冷媒が、式: y <-1.5761x + 3.9516
で示される範囲に制御されている条件で運転する時に、例えば、30Jの着火エネルギーの下において、不均化反応が抑制された空調システムの運転が可能となる。
【0096】
上記説明は、本開示の組成物の気相における前記不均化する冷媒の濃度(mol/m3)の常用対数(log)をxとし、前記組成物に含まれる冷媒全体の熱拡散率(mm2/s)の常用対数(log)をyとする時に、例えば、500Jの着火エネルギーの下において、
前記冷媒は、式: y < -1.4941x + 3.6044
で示される範囲とする時にも、適用できる。
【0097】
本開示の組成物が、例えば、空調システムで使用される時に、不均化反応が良好に抑制されるという点で、前記xの範囲は、好ましくは、-0.59以上、4.23以下でありであり、前記yの範囲は、式に基づき、上記xの範囲に従う。
【0098】
着火エネルギー500Jにおいて、不均化反応が生じる条件には、着火エネルギー30Jにおいて、不均化反応が抑制される条件を含む。着火エネルギー500Jにおいて、不均化反応が生じる条件は、不均化反応が抑制される許容範囲の条件である。
【0099】
着火エネルギー500Jにおいて、不均化反応が抑制される条件は、着火エネルギー30Jにおいて、不均化反応が抑制される条件に比べて、機器の故障時や非常事態における、より過酷な状況においても、不均化が抑制される点で、安全性がより高く、より好ましい条件と言える。
【0100】
(3)冷媒の説明
「冷媒全体」とは、冷媒組成において、不均化する冷媒と不均化しない冷媒との合計である。
【0101】
不均化する冷媒は、HFO-1132(E/Z)、HFO-1132a、HFO-1123、及びFO-1114からなる群から選ばれる少なくとも1種の成分を含み、1種単独で使用しても良いし、2種以上の併用で使用しても良い。
【0102】
不均化しない冷媒は、好ましくは、HFO-1243zf、CF3I、HFC-32、HFO-1234yf、HFO-1234ze(E)、FO-1216、PFC-14、HFC-125、HFC-134、HFC-134a、HFC-143a、HFC-152a、HFC-161、HFC-227ea、HFO-1225ye(Z)、HFO-1225ye(E)、CF3SCF3、プロパン、シクロプロパン、プ
ロピレン、イソブテン、イソブタン、二酸化炭素、及びアンモニアからなる群から選ばれる少なくとも一種の成分を含み、1種単独で使用しても良いし、2種以上の併用で使用しても良い。
【0103】
本開示の組成物は、例えば、空調システムにおいて使用される時、上述の構成を有することによって、冷媒の不均化反応が抑制された、冷媒を含む空調システムを提供することが可能となる。
【0104】
[2]組成物の具体的使用例
(1)具体的事例1
冷媒組成として、組成物に含まれる冷媒全体中、不均化する冷媒として、HFO-1132(E/Z)を60質量%含み、不均化しない冷媒として、HFO-1234yfを40質量%含む。
【0105】
温度条件として、150℃とする。
【0106】
圧力条件として、3.00MPaとする。
【0107】
前記冷媒組成、温度条件、及び圧力条件において、不均化反応が起きるか検証する。
【0108】
(1-1)式:「y = -1.5761x + 3.9516」の右辺「-1.5761x + 3.9516」の計算
x軸の常用対数(log)に含まれる「組成物の気相における不均化する冷媒の濃度(mol/m3)」を算出する。
【0109】
冷媒全体(HFO-1132(E/Z)+HFO-1234yf=60+40)の「密度」は、150℃、3.00MPaにおいて76.912[kg/m3]である。
【0110】
不均化する冷媒(HFO-1132(E/Z)、Mw:64.035)の濃度は、
76.912[kg/m3]×0.6÷64.035[g/mol]=720.66[mol/m3]と成る。
【0111】
x軸は、log(組成物の気相における不均化する冷媒の濃度(mol/m3))
=log(720.66)
=2.8577と成る。
【0112】
xとyとの関係式:y = -1.5761x + 3.9516において、「x」に「2.857」を代入すると、「y」は「-0.55242」と成る。
【0113】
次に、別途、log(組成物に含まれる冷媒全体の熱拡散率(mm2/s))を算出し、算出された値が、前記の「y」の値「-0.55242」に比べて「低い」時、即ち、xとyとの関係式のグラフを跨いで、そのグラフの境界線より「左下」に成る時(図2)、その空調システムは、前記冷媒組成、温度、及び圧力条件で運転する時に、「不均化反応が抑制される」組成物を用いて、空調システムの運転が可能となる。「グラフの左下」は、「グラフ(直線の式)に対して、y軸方向に負の側の位置」である。
【0114】
或は、log(組成物に含まれる冷媒全体の熱拡散率(mm2/s))を算出し、算出された値が、前記の「y」の値「-0.55242」に比べて「高い」時、即ち、xとyとの関係式のグラフを跨いで、そのグラフの境界線より「右上」に成る時(図2)、その空調システムは、前記冷媒組成、温度、及び圧力条件で運転する時に、「不均化反応が生じる」組成物を用いて、空調システムを運転することと成る。「グラフの右上」は、「グラフ(直線の式)に対して、y軸方向に正の側の位置」である。
【0115】
つまり、冷媒が、y <-1.5761x + 3.9516で示される範囲に制御されていることにより、不均化反応が抑制された空調システムの運転が可能となる。
【0116】
(1-2)式:「y = -1.5761x + 3.9516」の左辺「y」の計算
y軸の常用対数(log)に含まれる「組成物に含まれる冷媒全体の熱拡散率(mm2/s)」を算出する。
【0117】
冷媒全体(HFO-1132(E/Z)+HFO-1234yf=60+40)の「熱伝導率」は、150℃、3.00MPaにおいて28.000 [mW/(m K)]である。
【0118】
冷媒全体(HFO-1132(E/Z)+HFO-1234yf=60+40)の「密度」は、150℃、3.00MPaにおいて76.912 [kg/m3]である。
【0119】
冷媒全体(HFO-1132(E/Z)+HFO-1234yf=60+40)の「比熱」は、150℃、3.00MPaにおいて1.2482 [kJ/kg K]である。
【0120】
冷媒全体(HFO-1132(E/Z)+HFO-1234yf=60+40)の「熱拡散率」は、150℃、3.00MPaにおいて、28.000[mW/(m K)]÷(76.912[kg/m3]×1.2482 [kJ/kg K])=0.29167[mm2/s]と成る。
【0121】
y軸は、log(組成物に含まれる冷媒全体の熱拡散率(mm2/s))
=log(0.29167)
=-0.53511と成る。
【0122】
このy「log(組成物に含まれる冷媒全体の熱拡散率(mm2/s)」の値「-0.53511」は、前記「-1.5761x + 3.9516」(x : log(組成物の気相における不均化する冷媒の濃度(mol/m3)))の値「-0.55242」よりも「高い」時であり、即ち、Xとyとの関係式のグラフを跨いで、そのグラフの境界線より「右上」に成る時、つまり、「グラフ(直線の式)に対して、y軸方向に正の側の位置」である(図2)。
【0123】
(1-3)具体的事例1の説明
冷媒組成として、例えば、空調システムに含まれる冷媒全体中、不均化する冷媒として、HFO-1132(E/Z)を60質量%含み、不均化しない冷媒として、HFO-1234yfを40質量%含み、温度条件として、150℃とし、圧力条件として、3.00MPaとする時は、「不均化反応が起こる」冷媒を含む組成物と成る。
【0124】
(2)具体的事例2
冷媒組成として、組成物に含まれる冷媒全体中、不均化する冷媒として、HFO-1132(E/Z)を60質量%含み、不均化しない冷媒として、HFO-1234yfを40質量%含む。
【0125】
温度条件として、150℃とする。
【0126】
圧力条件として、2.00MPaとする。
【0127】
前記冷媒組成、温度条件、及び圧力条件において、不均化反応が起きるか検証する。
【0128】
(2-1)式:「y = -1.5761x + 3.9516」の右辺「-1.5761x + 3.9516」の計算
x軸の常用対数(log)に含まれる「組成物の気相における不均化する冷媒の濃度(mol/m3)」を算出する。
【0129】
冷媒全体(HFO-1132(E/Z)+HFO-1234yf=60+40)の密度は、130℃、2.00MPaにおいて52.060[kg/m3]である。
【0130】
不均化する冷媒(HFO-1132(E/Z)、Mw:64.035)の濃度は、
48.657[kg/m3]×0.6÷64.035[g/mol]= 455.91[mol/m3]と成る。
【0131】
x軸は、log(組成物の気相における不均化する冷媒の濃度(mol/m3))
=log(455.91)
=2.6589と成る。
【0132】
xとyとの関係式:y = -1.5761x + 3.9516において、「x」に「2.6589」を代入すると、「y」は「-0.23909」と成る。
【0133】
次に、別途、log(組成物に含まれる冷媒全体の熱拡散率(mm2/s))を算出し、算出された値が、前記の「y」の値「-0.23909」に比べて「低い」時、即ち、xとyとの関係式のグラフを跨いで、そのグラフの境界線より「左下」に成る時(図2)、その空調システムは、前記冷媒組成、温度、及び圧力条件で運転する時に、「不均化反応が抑制される」組成物を用いて、空調システムの運転が可能となる。「グラフの左下」は、「グラフ(直線の式)に対して、y軸方向に負の側の位置」である。
【0134】
或は、log(組成物に含まれる冷媒全体の熱拡散率(mm2/s))を算出し、算出された値が、前記の「y」の値「-0.23909」に比べて「高い」時、即ち、xとyとの関係式のグラフを跨いで、そのグラフの境界線より「右上」に成る時(図2)、その空調システムは、前記冷媒組成、温度、及び圧力条件で運転する時に、「不均化反応が生じる」組成物を用いて、空調システムを運転することと成る。「グラフの右上」は、「グラフ(直線の式)に対して、y軸方向に正の側の位置」である。
【0135】
つまり、冷媒が、y <-1.5761x + 3.9516で示される範囲に制御されていることにより、不均化反応が抑制された空調システムの運転が可能となる。
【0136】
(2-2)式:「y = -1.5761x + 3.9516」の左辺「y」の計算
y軸の常用対数(log)に含まれる「組成物に含まれる冷媒全体の熱拡散率(mm2/s)」を算出する。
【0137】
冷媒全体(HFO-1132(E/Z)+HFO-1234yf=60+40)の「熱伝導率」は、150℃、2.00MPaにおいて27.265 [mW/(m K)]である。
【0138】
冷媒全体(HFO-1132(E/Z)+HFO-1234yf=60+40)の「密度」は、150℃、2.00MPaにおいて48.657[kg/m3]である。
【0139】
冷媒全体(HFO-1132(E/Z)+HFO-1234yf=60+40)の「比熱」は、150℃、2.00MPaにおいて1.1962 [kJ/kg K]である。
【0140】
冷媒全体(HFO-1132(E/Z)+HFO-1234yf=60+40)の「熱拡散率」は、150℃、2.00MPaにおいて、27.265 [mW/(m K)]÷(48.657 [kg/m3]×1.1962 [kJ/kg K])=0.46844[mm2/s]と成る。
【0141】
y軸は、log(組成物に含まれる冷媒全体の熱拡散率(mm2/s))
=log(0.46844)
=-0.32935と成る。
【0142】
このy「log(組成物に含まれる冷媒全体の熱拡散率(mm2/s)」の値「-0.32935」は、前記「-1.5761x + 3.9516」(x : log(組成物の気相における不均化する冷媒の濃度(mol/m3)))の値「-0.23909」よりも「低い」時であり、即ち、Xとyとの関係式のグラフを跨いで、そのグラフの境界線より「左下」に成る時、つまり、「グラフ(直線の式)に対して、y軸方向に負の側の位置」である(図2)。
【0143】
(2-3)具体的事例2の説明
冷媒組成として、例えば、空調システムに含まれる冷媒全体中、不均化する冷媒として、HFO-1132(E/Z)を60質量%含み、不均化しない冷媒として、HFO-1234yfを40質量%含み、温度条件として、130℃とし、圧力条件として、2.00MPaとする時は、「不均化反応が抑制された(生じない)」冷媒を含む組成物と成る。
【0144】
(3)具体的事例3
冷媒組成として、組成物に含まれる冷媒全体中、不均化する冷媒として、HFO-1132(E/Z)を50質量%含み、不均化しない冷媒として、HFO-1234yfを50質量%含む。
【0145】
温度条件として、150℃とする。
【0146】
圧力条件として、5.00MPaとする。
【0147】
前記冷媒組成、温度条件、及び圧力条件において、不均化反応が起きるか検証する。
【0148】
(3-1)式:「y = -1.5761x + 3.9516」の右辺「-1.5761x + 3.9516」の計算
x軸の常用対数(log)に含まれる「組成物の気相における不均化する冷媒の濃度(mol/m3)」を算出する。
【0149】
冷媒全体(HFO-1132(E/Z)+HFO-1234yf=50+50)の密度は、150℃、5.00MPaにおいて153.33[kg/m3]である。
【0150】
不均化する冷媒(HFO-1132(E/Z)、Mw:64.035)の濃度は、
153.33 [kg/m3]×0.5÷64.035[g/mol]=1197.2[mol/m3]と成る。
【0151】
x軸は、log(組成物の気相における不均化する冷媒の濃度(mol/m3))
=log(1197.2)
=3.0782と成る。
【0152】
xとyとの関係式:y = -1.5761x + 3.9516において、「x」に「3.0782」を代入すると、「y」は「-0.89995」と成る。
【0153】
次に、別途、log(組成物に含まれる冷媒全体の熱拡散率(mm2/s))を算出し、算出された値が、前記の「y」の値「-0.89995」に比べて「低い」時、即ち、xとyとの関係式のグラフを跨いで、そのグラフの境界線より「左下」に成る時(図2)、その空調システムは、前記冷媒組成、温度、及び圧力条件で運転する時に、「不均化反応が抑制される」組成物を用いて、空調システムの運転が可能となる。「グラフの左下」は、「グラフ(直線の式)に対して、y軸方向に負の側の位置」である。
【0154】
或は、log(組成物に含まれる冷媒全体の熱拡散率(mm2/s))を算出し、算出された値が、前記の「y」の値「-0.89995」に比べて「高い」時、即ち、xとyとの関係式のグラフを跨いで、そのグラフの境界線より「右上」に成る時(図2)、その空調システムは、前記冷媒組成、温度、及び圧力条件で運転する時に、「不均化反応が生じる」組成物を用いて、空調システムを運転することと成る。「グラフの右上」は、「グラフ(直線の式)に対して、y軸方向に正の側の位置」である。
【0155】
つまり、冷媒が、y <-1.5761x + 3.9516で示される範囲に制御されていることにより、不均化反応が抑制された空調システムの運転が可能となる。
【0156】
(3-2)式:「y = -1.5761x + 3.9516」の左辺「y」の計算
y軸の常用対数(log)に含まれる「組成物に含まれる冷媒全体の熱拡散率(mm2/s)」を算出する。
【0157】
冷媒全体(HFO-1132(E/Z)+HFO-1234yf=50+50)の「熱伝導率」は、150℃、5.00MPaにおいて30.660[mW/(m K)]である。
【0158】
冷媒全体(HFO-1132(E/Z)+HFO-1234yf=50+50)の「密度」は、150℃、5.00MPaにおいて153.33[kg/m3]である。
【0159】
冷媒全体(HFO-1132(E/Z)+HFO-1234yf=60+40)の「比熱」は、150℃、5.00MPaにおいて1.4033[kJ/kg K]である。
【0160】
冷媒全体(HFO-1132(E/Z)+HFO-1234yf=50+50)の「熱拡散率」は、150℃、5.00MPaにおいて、30.660[mW/(m K)]÷(153.33[kg/m3]×1.4033[kJ/kg K])=0.14249[mm2/s]と成る。
【0161】
y軸は、log(組成物に含まれる冷媒全体の熱拡散率(mm2/s))
=log(0.14249)
=-0.84622と成る。
【0162】
このy「log(組成物に含まれる冷媒全体の熱拡散率(mm2/s)」の値「-0.84622」は、前記「-1.5761x + 3.9516」(x : log(組成物の気相における不均化する冷媒の濃度(mol/m3)))の値「-0.89995」よりも「高い」時であり、即ち、Xとyとの関係式のグラフを跨いで、そのグラフの境界線より「右上」に成る時、つまり、「グラフ(直線の式)に対して、y軸方向に正の側の位置」である(図2)。
【0163】
(3-3)具体的事例3の説明
冷媒組成として、例えば、空調システムに含まれる冷媒全体中、不均化する冷媒として、HFO-1132(E/Z)を50質量%含み、不均化しない冷媒として、HFO-1234yfを50質量%含み、温度条件として、150℃とし、圧力条件として、5.00MPaとする時は、「不均化反応が起こる」冷媒を含む組成物と成る。
【0164】
(4)具体的事例4
冷媒組成として、組成物に含まれる冷媒全体中、不均化する冷媒として、HFO-1132(E/Z)を50質量%含み、不均化しない冷媒として、HFO-1234yfを50質量%含む。
【0165】
温度条件として、150℃とする。
【0166】
圧力条件として、4.00MPaとする。
【0167】
前記冷媒組成、温度条件、及び圧力条件において、不均化反応が起きるか検証する。
【0168】
(4-1)式:「y = -1.5761x + 3.9516」の右辺「-1.5761x + 3.9516」の計算
x軸の常用対数(log)に含まれる「組成物の気相における不均化する冷媒の濃度(mol/m3)」を算出する。
【0169】
冷媒全体(HFO-1132(E/Z)+HFO-1234yf=50+50)の密度は、150℃、4.00MPaにおいて115.46[kg/m3]である。
【0170】
不均化する冷媒(HFO-1132(E/Z)、Mw:64.035)の濃度は、
115.46[kg/m3]×0.5÷64.035[g/mol]= 901.54[mol/m3]と成る。
【0171】
x軸は、log(組成物の気相における不均化する冷媒の濃度(mol/m3))
=log(901.54)
=2.9550と成る。
【0172】
xとyとの関係式:y = -1.5761x + 3.9516において、「x」に「2.9550」を代入すると、「y」は「-0.70578」と成る。
【0173】
次に、別途、log(組成物に含まれる冷媒全体の熱拡散率(mm2/s))を算出し、算出された値が、前記の「y」の値「-0.70578」に比べて「低い」時、即ち、xとyとの関係式のグラフを跨いで、そのグラフの境界線より「左下」に成る時(図2)、その空調システムは、前記冷媒組成、温度、及び圧力条件で運転する時に、「不均化反応が抑制される」組成物を用いて空調システムの運転が可能となる。「グラフの左下」は、「グラフ(直線の式)に対して、y軸方向に負の側の位置」である。
【0174】
或は、log(組成物に含まれる冷媒全体の熱拡散率(mm2/s))を算出し、算出された値が、前記の「y」の値「-0.70578」に比べて「高い」時、即ち、xとyとの関係式のグラフを跨いで、そのグラフの境界線より「右上」に成る時(図2)、その空調システムは、前記冷媒組成、温度、及び圧力条件で運転する時に、「不均化反応が生じる」組成物を用いて、空調システムを運転することと成る。「グラフの右上」は、「グラフ(直線の式)に対して、y軸方向に正の側の位置」である。
【0175】
つまり、冷媒が、y <-1.5761x + 3.9516で示される範囲に制御されていることにより、不均化反応が抑制された空調システムの運転が可能となる。
【0176】
(4-2)式:「y = -1.5761x + 3.9516」の左辺「y」の計算
y軸の常用対数(log)に含まれる「組成物に含まれる冷媒全体の熱拡散率(mm2/s)」を算出する。
【0177】
冷媒全体(HFO-1132(E/Z)+HFO-1234yf=50+50)の「熱伝導率」は、150℃、4.00MPaにおいて28.922 [mW/(m K)]である。
【0178】
冷媒全体(HFO-1132(E/Z)+HFO-1234yf=50+50)の「密度」は、150℃、4.00MPaにおいて115.46 [kg/m3]である。
【0179】
冷媒全体(HFO-1132(E/Z)+HFO-1234yf=50+50)の「比熱」は、150℃、4.00MPaにおいて1.3162[kJ/kg K]である。
【0180】
冷媒全体(HFO-1132(E/Z)+HFO-1234yf=50+50)の「熱拡散率」は、150℃、4.00MPaにおいて、28.922 [mW/(m K)]÷(115.46 [kg/m3]×1.3162 [kJ/kg K])=0.19031[mm2/s]と成る。
【0181】
y軸は、log(組成物に含まれる冷媒全体の熱拡散率(mm2/s))
=log(0.19031)
=-0.72054と成る。
【0182】
このy「log(組成物に含まれる冷媒全体の熱拡散率(mm2/s)」の値「-0.72054」は、前記「-1.5761x + 3.9516」(x : log(組成物の気相における不均化する冷媒の濃度(mol/m3)))の値「-0.70578」よりも「低い」時であり、即ち、Xとyとの関係式のグラフを跨いで、そのグラフの境界線より「左下」に成る時、つまり、「グラフ(直線の式)に対して、y軸方向に負の側の位置」である(図2)。
【0183】
(4-3)具体的事例4の説明
冷媒組成として、例えば、空調システムに含まれる冷媒全体中、不均化する冷媒として、HFO-1132(E/Z)を50質量%含み、不均化しない冷媒として、HFO-1234yfを50質量%含み、温度条件として、150℃とし、圧力条件として、4.00MPaとする時は、「不均化反応が抑制された(生じない)」冷媒を含む組成物の運転と成る。
【0184】
(5)組成物の具体的使用例の適用
本開示の組成物は、例えば、空調システムにおいて使用される時、上記具体的事例1~4で説明する通り、例えば、30Jの着火エネルギーの下において、
冷媒が、式: y <-1.5761x + 3.9516
x = log(組成物の気相における不均化する冷媒の濃度(mol/m3))
y = log(組成物に含まれる冷媒全体の熱拡散率(mm2/s))
で示される範囲に制御されている条件で運転する時に、不均化反応が抑制された空調システムの運転が可能となる。
【0185】
上記説明は、例えば、500Jの着火エネルギーの下において、
冷媒が、式: y < -1.4941x + 3.6044
で示される範囲とする時にも、適用でき、この範囲に制御されている条件で運転する時に、不均化反応が抑制された空調システムの運転が可能となる。
【0186】
本開示の組成物が、例えば、空調システムで使用される時に、不均化反応が良好に抑制されるという点で、前記xの範囲は、好ましくは、-0.59以上、4.23以下であり、更に好ましくは、2.2以上、3.4以下である。前記yの範囲は、式に基づき、上記xの範囲に従う。
【0187】
着火エネルギー500Jにおいて、不均化反応が生じる条件には、着火エネルギー30Jにおいて、不均化反応が抑制される条件を含む。着火エネルギー500Jにおいて、不均化反応が生じる条件は、不均化反応が抑制される許容範囲の条件である。着火エネルギー500Jにおいて、不均化反応が抑制される条件は、着火エネルギー30Jにおいて、不均化反応が抑制される条件に比べて、より好ましく、不均化反応が抑制される条件と言える。
【0188】
[3]冷凍機油
本開示の組成物は、好ましくは、更に、冷凍機油を含有し、冷凍機における作動流体(冷凍機用作動流体)、或は冷凍機油含有作動流体として用いられる。
【0189】
具体的には、本開示の組成物は、冷凍機の圧縮機において使用される冷凍機油と、冷媒とが互いに混じり合うことにより、冷凍機油含有作動流体として得られる。
【0190】
本開示の組成物は、冷凍機油を含有することにより、冷凍サイクルにおいてその組成が変化する。具体的には、本開示の組成物の冷凍機油含量は、圧縮機内では比較的多く、圧縮機からミスト状となって吐出されて冷凍サイクルを循環し、圧縮機に戻るまでの期間では比較的少ない。例えば、本開示の組成物の冷凍機油含量は、圧縮機内では、30質量%~70質量%であり、圧縮機から吐出されて再び圧縮機に戻ってくるまでの期間では、好ましくは0~20質量%、より好ましくは1質量ppm~10質量%となる。
【0191】
冷凍機油は主に基油であり、潤滑油である。
【0192】
前記冷凍機油は、好ましくは、ポリアルキレングリコール(PAG)、ポリオールエステル(POE)、及びポリビニルエーテル(PVE)、シリコンオイル、含フッ素オイルからなる群より選択される少なくとも1種のポリマーを含有する、前記項3に記載の組成物。
【0193】
ポリアルキレングリコール(PAG)として、例えば、日本サン石油株式会社製「SUNICE P56」等が挙げられる。また、ポリオールエステル(POE)として、例えば、JX日鉱日石エネルギー株式会社製「Ze-GLES RB32」等が挙げられる。
【0194】
冷凍機油は、基油に加えて、好ましくは、更に少なくとも1種の添加剤を含む。添加剤は、好ましくは、相溶化剤、紫外線蛍光染料、安定化剤、重合禁止剤、酸化防止剤、極圧剤、酸捕捉剤、酸素捕捉剤、銅不活性化剤、防錆剤、油性剤及び消泡剤からなる群より選択される少なくとも1種の成分である。
【0195】
前記冷凍機油は、潤滑の点から、好ましくは、40℃における動粘度が5cSt~400cStである。
【0196】
前記冷凍機油は、上記基油に加えて、好ましくは、更に、添加剤を含有する。前記添加剤は、好ましくは、相溶化剤、酸化防止剤、極圧剤、酸捕捉剤、酸素捕捉剤、銅不活性化剤、防錆剤、油性剤及び消泡剤からなる群より選択される少なくとも1種である。
【0197】
前記相溶化剤は、特に限定されず、一般に用いられる相溶化剤の中から適宜選択することができる。前記相溶化剤は、好ましくは、例えば、ポリオキシアルキレングリコールエーテル、アミド、ニトリル、ケトン、クロロカーボン、エステル、ラクトン、アリールエーテル、フルオロエーテル、1,1,1-トリフルオロアルカン等である。これらの中でも、より好ましくは、ポリオキシアルキレングリコールエーテルである。冷凍機油は、好ましくは、相溶化剤を1種単独で含有しても良いし、2種以上を含有しても良い。
【0198】
前記冷凍機油含有作動流体は、好ましくは、微量の水分を含むことにより、冷媒中に含まれ得る不飽和のフルオロカーボン系化合物の分子内二重結合が安定化される。また、前記冷凍機油含有作動流体は、微量の水分を含むことにより、不飽和のフルオロカーボン系化合物の酸化も起こり難くなる為、冷媒の安定性が向上する。
【0199】
前記トレーサーは、冷凍機油含有作動流体が希釈、汚染、その他何らかの変更があった場合、その変更を追跡できるように検出可能な濃度で冷媒に添加される。前記トレーサーは、1種単独で含有しても良いし、2種以上を含有しても良い。
【0200】
前記紫外線蛍光染料は、特に限定されず、一般に用いられる紫外線蛍光染料の中から適宜選択することができる。前記紫外線蛍光染料は、好ましくは、例えば、ナフタルイミド、クマリン、アントラセン、フェナントレン、キサンテン、チオキサンテン、ナフトキサンテン及びフルオレセイン、並びにこれらの誘導体が挙げられる。これらの中でも、ナフタルイミド及びクマリンである。紫外線蛍光染料は、1種単独で含有しても良いし、2種以上を含有しても良い。
【0201】
前記安定剤は、特に限定されず、一般に用いられる安定剤の中から適宜選択することができる。前記安定剤は、好ましくは、例えば、ニトロ化合物、エーテル類、アミン類、ブチルヒドロキシキシレン、ベンゾトリアゾール等である。
【0202】
前記ニトロ化合物は、好ましくは、例えば、ニトロメタン、ニトロエタン等の脂肪族ニトロ化合物、及びニトロベンゼン、ニトロスチレン等の芳香族ニトロ化合物等である。前記エーテル類は、好ましくは、例えば、1,4-ジオキサン等である。前記アミン類は、好ましくは、例えば、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルアミン、ジフェニルアミン等である。安定剤は、1種単独で含有しても良いし、2種以上を含有しても良い。
【0203】
重合禁止剤は、特に限定されず、一般に用いられる重合禁止剤の中から適宜選択することができる。前記重合禁止剤は、好ましくは、例えば、4-メトキシ-1-ナフトール、ヒドロキノン、ヒドロキノンメチルエーテル、ジメチル-t-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、ベンゾトリアゾール等である。重合禁止剤は、1種単独で含有しても良いし、2種以上を含有しても良い。
【0204】
[4]空調システムの運転方法
本開示の組成物は、好ましくは、空調システムの運転に用いられる。
【0205】
本開示の組成物は、好ましくは、冷凍サイクルを運転する工程を含む冷凍方法に用いられる。
【0206】
本開示の組成物は、好ましくは、冷凍サイクルを運転する冷凍装置の運転方法に用いられる。前記冷凍装置は、好ましくは、空調機器、冷蔵庫、冷凍庫、冷水機、製氷機、冷蔵ショーケース、冷凍ショーケース、冷凍冷蔵ユニット、冷凍冷蔵倉庫用冷凍機、車載用空調機器、ターボ冷凍機、又はスクリュー冷凍機である。
【0207】
[5]冷媒を含有する組成物を貯蔵する方法
本開示の冷媒を含有する組成物を貯蔵する方法においては、
前記冷媒は、不均化する冷媒と不均化しない冷媒とを含み、
前記不均化する冷媒は、HFO-1132(E/Z)、HFO-1132a、HFO-1123、及びFO-1114からなる群から選ばれる少なくとも1種の成分を含み、
前記組成物の気相における前記不均化する冷媒の濃度(mol/m3)の常用対数(log)をxとし、
前記組成物に含まれる冷媒全体の熱拡散率(mm2/s)の常用対数(log)をyとする時に、
前記冷媒を、式: y < -1.5761x + 3.9516
で示される範囲とする工程を含む。
【0208】
本開示の冷媒を含有する組成物を貯蔵する方法においては、
前記冷媒は、不均化する冷媒と不均化しない冷媒とを含み、
前記不均化する冷媒は、HFO-1132(E/Z)、HFO-1132a、HFO-1123、及びFO-1114からなる群から選ばれる少なくとも1種の成分を含み、
前記組成物の気相における前記不均化する冷媒の濃度(mol/m3)の常用対数(log)をxとし、
前記組成物に含まれる冷媒全体の熱拡散率(mm2/s)の常用対数(log)をyとする時に、
前記冷媒を、式: y < -1.4941x + 3.6044
で示される範囲とする工程を含む。
【0209】
本開示の冷媒を含有する組成物を貯蔵する方法においては、好ましくは、前記不均化しない冷媒は、好ましくは、HFO-1243zf、CF3I、HFC-32、HFO-1234yf、HFO-1234ze(E)、FO-1216、PFC-14、HFC-125、HFC-134、HFC-134a、HFC-143a、HFC-152a、HFC-161、HFC-227ea、HFO-1225ye(E/Z)、CF3SCF3、プロパン、シクロプロパン、プロピレン、イソブテン、イソブタン、二酸化炭素、及びアンモニアからなる群から選ばれる少なくとも一種の成分を含む。
【0210】
本開示の冷媒を含有する組成物を貯蔵する方法においては、好ましくは、更に、冷凍機油を含有する工程を含む。
【0211】
本開示の冷媒を含有する組成物を貯蔵する方法で使用する、冷媒、冷凍機油等の各成分は、前記組成物の項目で説明した成分を使用することができる。
【0212】
[6]冷媒を混合する方法
本開示の冷媒を混合する方法においては、
前記冷媒として、不均化する冷媒と不均化しない冷媒と混合する工程を含み、
前記不均化する冷媒は、HFO-1132(E/Z)、HFO-1132a、HFO-1123、及びFO-1114からなる群から選ばれる少なくとも1種の成分を含み、
前記組成物の気相における前記不均化する冷媒の濃度(mol/m3)の常用対数(log)をxとし、
前記組成物に含まれる冷媒全体の熱拡散率(mm2/s)の常用対数(log)をyとする時に、
前記冷媒を、式: y < -1.5761x + 3.9516
で示される範囲とする。
【0213】
本開示の冷媒を混合する方法においては、
前記冷媒として、不均化する冷媒と不均化しない冷媒と混合する工程を含み、
前記不均化する冷媒は、HFO-1132(E/Z)、HFO-1132a、HFO-1123、及びFO-1114からなる群から選ばれる少なくとも1種の成分を含み、
前記組成物の気相における前記不均化する冷媒の濃度(mol/m3)の常用対数(log)をxとし、
前記組成物に含まれる冷媒全体の熱拡散率(mm2/s)の常用対数(log)をyとする時に、
前記冷媒を、式: y < -1.4941x + 3.6044
で示される範囲とする。
【0214】
本開示の冷媒を含有する組成物を混合する方法においては、好ましくは、前記不均化しない冷媒は、HFO-1243zf、CF3I、HFC-32、HFO-1234yf、HFO-1234ze(E)、FO-1216、PFC-14、HFC-125、HFC-134、HFC-134a、HFC-143a、HFC-152a、HFC-161、HFC-227ea、HFO-1225ye(E/Z)、CF3SCF3、プロパン、シクロプロパン、プロピレン、イソブテン、イソブタン、二酸化炭素、及びアンモニアからなる群から選ばれる少なくとも一種の成分を含む。
【0215】
本開示の冷媒を含有する組成物を混合する方法においては、好ましくは、更に、冷凍機油を含有する工程を含む。
【0216】
本開示の冷媒を混合する方法で使用する、冷媒、冷凍機油等の各成分は、前記組成物の項目で説明した成分を使用することができる。
【0217】
[7]不均化反応を抑制する方法
本開示の冷媒の不均化反応を抑制する方法においては、
前記冷媒として、不均化する冷媒と不均化しない冷媒と混合する工程を含み、
前記不均化する冷媒は、HFO-1132(E/Z)、HFO-1132a、HFO-1123、及びFO-1114からなる群から選ばれる少なくとも1種の成分を含み、
前記組成物の気相における前記不均化する冷媒の濃度(mol/m3)の常用対数(log)をxとし、
前記組成物に含まれる冷媒全体の熱拡散率(mm2/s)の常用対数(log)をyとする時に、
前記冷媒を、式: y < -1.5761x + 3.9516
で示される範囲とする。
【0218】
本開示の冷媒の不均化反応を抑制する方法においては、
前記冷媒として、不均化する冷媒と不均化しない冷媒と混合する工程を含み、
前記不均化する冷媒は、HFO-1132(E/Z)、HFO-1132a、HFO-1123、及びFO-1114からなる群から選ばれる少なくとも1種の成分を含み、
前記組成物の気相における前記不均化する冷媒の濃度(mol/m3)の常用対数(log)をxとし、
前記組成物に含まれる冷媒全体の熱拡散率(mm2/s)の常用対数(log)をyとする時に、
前記冷媒を、式: y < -1.4941x + 3.6044
で示される範囲とする。
【0219】
不均化とは、同一種類の化学種(HFO-1132(E)等の二重結合を有するエチレン系フッ素化炭化水素の夫々の成分)が2個以上互いに反応して、2種類以上の異なる種類の生成物を与える化学反応のことである。
【0220】
本開示の不均化反応を抑制する方法は、上述の構成を有することによって、HFO-1132(E/Z)、HFO-1132a、HFO-1123、及びFO-1114からなる群から選ばれる少なくとも一種の冷媒の不均化反応を抑制する、という特性を有する。
【0221】
本開示の不均化反応を抑制する方法は、HFO-1132(E/Z)、HFO-1132a、HFO-1123、及びFO-1114からなる群から選ばれる少なくとも一種の冷媒(またはこれら冷媒を含む組成物)と不均化しない冷媒とを、前記組成物の気相における前記不均化する冷媒の濃度(mol/m3)の常用対数(log)をxとし、前記組成物に含まれる冷媒全体の熱拡散率(mm2/s)の常用対数(log)をyとする時に、前記冷媒を、
式: y < -1.5761x + 3.9516
で示される範囲とする条件で、混合することにより、或は、
式: y < -1.4941x + 3.6044
で示される範囲とする条件で、混合することにより、
前記冷媒の不均化反応を抑制することが可能となる。
【0222】
本開示の冷媒の不均化反応を抑制する方法においては、好ましくは、前記不均化しない冷媒は、HFO-1243zf、CF3I、HFC-32、HFO-1234yf、HFO-1234ze(E)、FO-1216、PFC-14、HFC-125、HFC-134、HFC-134a、HFC-143a、HFC-152a、HFC-161、HFC-227ea、HFO-1225ye(E/Z)、CF3SCF3、プロパン、シクロプロパン、プロピレン、イソブテン、イソブタン、二酸化炭素、及びアンモニアからなる群から選ばれる少なくとも一種の成分を含む。
【0223】
本開示の冷媒の不均化反応を抑制する方法においては、好ましくは、更に、冷凍機油を含有する工程を含む。
【0224】
本開示の冷媒の不均化反応を抑制する方法で使用する、冷媒、冷凍機油等の各成分は、前記組成物の項目で説明した成分を使用することができる。
【実施例
【0225】
以下に、実施例を挙げて更に詳細に説明する。ただし、本開示は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0226】
空調システムの運転方法
冷媒を
含む空調システムにおいて、冷媒の冷媒組成は、不均化する冷媒及び不均化しない冷媒を含む混合冷媒とし、冷媒の温度及び圧力の条件を調整した。
【0227】
(1)不均化する冷媒の例
HFO-1132(E):トランス-1,2-ジフルオロエチレン
HFO-1123:トリフルオロエチレン
HFO-1132a:1,1-ジフルオロエチレン
【0228】
(2)不均化しない冷媒の例
HFO-1234yf:2,3,3,3-テトラフルオロプロペン
HFC-32:ジフルオロメタン
HFO-1243zf:3,3,3-トリフルオロプロペン
R13I1:トリフルオロヨードメタン(CF3I)
PFC-14:パーフルオロメタン
R290:プロパン
【0229】
(3)温度及び圧力の条件
温度:25℃~180℃
圧力:0.60MPa~5.34MPa
圧力は、断りの無い場合は、絶対圧を表す。
【0230】
(4)着火エネルギーの条件
着火エネルギー:30J(表1~5)
着火エネルギー:500J(表6)
着火エネルギーは、同じ熱量の下、最も不均化が生じ易くなる様、電圧、電流、時間を調整し最適化を行った。
【0231】
(5)結果
表で表す通り、空調システムにおいて、混合冷媒中の不均化する冷媒と不均化しない冷媒との組成を調整し、混合冷媒が使用される温度及び圧力の条件を調整することにより、不均化反応が抑制される条件(○の結果)と不均化反応が生じる条件(×の結果)とに分かれた。
【0232】
表の結果○:不均化反応が抑制される条件
表の結果×:不均化反応が生じる条件
【0233】
(6)表1~5の着火エネルギー:30J
【0234】
【表1】
【0235】
【表2】
【0236】
【表3】
【0237】
【表4】
【0238】
【表5】
【0239】
表1~5では、着火エネルギー30Jにおいて、不均化反応が抑制される条件を「○」評価と表し、不均化反応が生じる条件を「×」評価と表す。
【0240】
(7)表6の着火エネルギー:500J
【表6】
【0241】
表6では、着火エネルギー500Jにおいて、不均化反応が抑制される条件を「○」評価と表し、不均化反応が抑制されるより好ましい条件を表す。表6では、着火エネルギー500Jにおいて、不均化反応が生じる条件の「△」評価は、着火エネルギー30Jにおいて、不均化反応が抑制される条件の「○」評価に収まる。着火エネルギー500Jにおいて、不均化反応が生じる条件の「△」評価は、本開示において、不均化反応が抑制される許容範囲の条件であるから、「参考例」と表す。
【0242】
結果に基づき、y軸:冷媒全体の熱拡散率及びx軸:組成物の気相における前記不均化する冷媒の濃度として、不均化反応が抑制される条件(○の結果)及び不均化反応が生じる条件(×の結果)を、プロットすることにより(図2)、両者の境界を以下の通り、近似式で表すことができる。
【0243】
(8)結果の考察
結果に基づき、冷媒を含む組成物を、例えば、空調システムで使用する時に、前記冷媒は、HFO-1132(E)、HFO-1132a、HFO-1123等の不均化する冷媒と、HFO-1234yf、HFC-32、HFO-1243zf、トリフルオロヨードメタン(CF3I)、PFC-14、プロパン等の不均化しない冷媒とを含み、
前記組成物の気相における前記不均化する冷媒の濃度(mol/m3)の常用対数(log)をxとし、
前記組成物に含まれる冷媒全体(不均化する冷媒と不均化しない冷媒との合計)の熱拡散率(mm2/s)の常用対数(log)をyとする時に、
前記空調システムを、着火エネルギー30Jを想定して、運転する時に、
式: y <-1.5761x + 3.9516
で得られる直線に対して、或は、
前記空調システムを、着火エネルギー500Jを想定して、運転する時に、
式: y < -1.4941x + 3.6044
で得られる直線に対して、不均化する冷媒と不均化しない冷媒とを、y軸方向に負の側()に位置する条件(「○」が占める領域であり、「グラフの左下」の領域)で運転することにより、空調システムでは冷媒の「不均化が抑制される」と評価できる。
図1
図2