IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セントラル硝子株式会社の特許一覧

特許7231851ガラスアンテナエレメントを備えるウィンドシールド
<>
  • 特許-ガラスアンテナエレメントを備えるウィンドシールド 図1
  • 特許-ガラスアンテナエレメントを備えるウィンドシールド 図2
  • 特許-ガラスアンテナエレメントを備えるウィンドシールド 図3
  • 特許-ガラスアンテナエレメントを備えるウィンドシールド 図4
  • 特許-ガラスアンテナエレメントを備えるウィンドシールド 図5
  • 特許-ガラスアンテナエレメントを備えるウィンドシールド 図6
  • 特許-ガラスアンテナエレメントを備えるウィンドシールド 図7
  • 特許-ガラスアンテナエレメントを備えるウィンドシールド 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-21
(45)【発行日】2023-03-02
(54)【発明の名称】ガラスアンテナエレメントを備えるウィンドシールド
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/32 20060101AFI20230222BHJP
   H01Q 1/22 20060101ALI20230222BHJP
【FI】
H01Q1/32 A
H01Q1/22 C
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020513210
(86)(22)【出願日】2019-04-02
(86)【国際出願番号】 JP2019014572
(87)【国際公開番号】W WO2019198561
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2022-02-04
(31)【優先権主張番号】P 2018077579
(32)【優先日】2018-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018178222
(32)【優先日】2018-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002200
【氏名又は名称】セントラル硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】北川 慎
(72)【発明者】
【氏名】野口 明宏
(72)【発明者】
【氏名】遠江 一仁
【審査官】岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-167619(JP,A)
【文献】実開平01-117106(JP,U)
【文献】特開2008-172626(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/32
H01Q 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内空間に内装壁を備える車両の固定窓として設置されたウィンドシールドであって、前記ウィンドシールドは、
周縁部がボディフランジに接合されたガラス板と、
前記ウィンドシールドの周縁部に帯状に形成された可視光遮蔽領域であって、前記ボディフランジに対面しかつ前記内壁によって覆われた第1側部領域と、前記第1側部領域とは反対側となるウィンドシールド内側寄りにあって前記内壁に覆われていない第2側部領域と、前記第1、第2側部領域間にあって前記内壁に覆われた中央領域と、を有する可視光遮蔽領域と、
前記可視光遮蔽領域上に形成されたガラスアンテナエレメントと、
を備え、
前記ガラスアンテナエレメントは、それぞれ導電性材料からなる給電部およびアンテナエレメントを備え、
前記給電部が、ウィンドシールドの車両への設置後に、配線を備えるコネクターの接続が可能なように、前記内壁に覆われていない前記第2側部領域に配置され、
前記アンテナエレメントは、少なくとも一部が前記中央領域上に配置されている、ウィンドシールド。
【請求項2】
前記アンテナエレメントは、一部が前記中央領域上に配置され、一部が前記第2側部領域上に配置されており、
前記中央領域上に配置されているアンテナエレメントは、前記第2側部領域上に配置されているアンテナレメントを介して前記給電部と接合している、請求項1に記載のウィンドシールド。
【請求項3】
前記アンテナエレメントは、一部が前記ガラス板室内側の透視領域上に配置されている、請求項1又は2に記載のウィンドシールド。
【請求項4】
前記アンテナエレメント、前記第1側部領域に配置されていない、請求項1乃至3のいずれかに記載のウィンドシールド。
【請求項5】
前記アンテナエレメントが、芯線側アンテナエレメントと、アース側アンテナエレメントと、を備え、
前記給電部、芯線側アンテナエレメントの給電部と、アース側アンテナエレメントの給電部と、を備える、請求項1乃至4のいずれかに記載のウィンドシールド。
【請求項6】
前記中央領域上には、前記芯線側アンテナエレメントが配置されていない、請求項5に記載のウィンドシールド。
【請求項7】
前記芯線側アンテナエレメントは、前記給電部から、ボディフランジから離隔する方向に延伸する線条を備える、請求項5又は6に記載のウィンドシールド。
【請求項8】
前記中央領域上に、前記アース側アンテナエレメントが配置されている、請求項5乃至7のいずれかに記載のウィンドシールド。
【請求項9】
前記アース側エレメントが矩形状の構造からなり、前記構造内に前記導電性材料からなるベタ塗り領域を備える、請求項5乃至8のいずれかに記載のウィンドシールド。
【請求項10】
電波受信装置の使用方法であって、
請求項1乃至9のいずれかに記載のウィンドシールドを車両に設置した状態で準備する工程(A)と、
前記給電部と前記コネクターとを接合し、前記ガラスアンテナエレメントと、前記内装壁と前記中央領域との間の空間を通る前記配線と、を電気的に接合させる工程(B)と、を含む、電波受信装置の使用方法。
【請求項11】
前記工程(A)と前記工程(B)との間に、車両の使用者の前記電波受信装置の使用意思の有無が確認される工程を含む、請求項10に記載の電波受信装置の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の固定窓として設置されたウィンドシールドを後付け用のアンテナフィルムを用いないでアンテナエレメントとして活用せしめる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に組み込まれている各種の機器や装置には、カーメーカー純正オプションや、ディーラーオプションのように、車両の購入者の意思に応じて、車両の販売店や工場で取り付けられるものや、カー用品の販売店等で取り付けられるものがある。地上波デジタル放送波、GPS、DABなどの電波を受信する電波受信装置も、車両の販売店で取り付けられるものや、カー用品の販売店等で取り付けられるものがある。このような後付けで、前記電波受信装置が車両に取り付けられることとなった場合、特許文献1、2などに示されるように、ガラスアンテナエレメントが形成されたプラスチックフィルムが、ウィンドシールドの視認できる範囲内に貼付されることになる。前記ウィンドシールドは、車両の固定窓として設置されたものとなっているので、貼付けの場合、前記ガラスアンテナエレメントは、図4図5に示すようにアンテナエレメントの全てが視認できる状態とならざるを得ない。
【0003】
他方で、前述のような後付けではなく、電波受信装置が、標準品として、車両が設置される場合がある。この場合、アンテナエレメントと、該アンテナエレメントを機器と接合するためのコネクターとが形成されたガラスアッセンブリーが車両に設置される。この時、該コネクターが接合されるアンテナエレメントの給電部は、前記車両の、トリムと呼ばれる内装壁に覆われる位置となるように設計される。そのため、必然的に、該アンテナエレメントのほとんどは、黒色セラミックの遮蔽膜などからなる帯状の可視光遮蔽領域上に配置されることになる。このような構造では、特許文献3で言及されているように、窓ガラスの車外側から見ると、アンテナエレメントの全部又は一部が車外から見えなくなり、デザインの優れた窓ガラスとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-109811号公報
【文献】特開2007-104142号公報
【文献】特開2017-005711公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ウィンドシールドが車両の固定窓として設置された後に前記電波受信装置が車両に取り付けられる場合(これを、「後付け方式」とする)以下のような問題がある。従来のように、車両の固定窓として設置されたウィンドシールドにフィルム状のアンテナエレメントを貼り付ける方式では、コネクターと、ガラスアンテナエレメントの全体とが視認される状態となる。そのため、美観の観点からは、前記アンテナエレメントは単純で、小さなものとせざるを得ない。その場合、前記アンテナエレメントの受信感度を向上させることは難しくなる。後付け方式で前記電波受信装置が車両に取り付けられる場合においては、前記アンテナエレメントの受信感度に係るアンテナエレメントの設計自由度と、前記アンテナエレメントに係る美観は、トレードオフの関係にあるとも言える。
【0006】
本発明は、後付け方式を伴う、ガラスアンテナエレメントを備えるウィンドシールドにおいて、前記アンテナエレメントの受信感度に係るアンテナエレメントの設計自由度を大きくし、前記アンテナエレメントに係る美観を共に改善しやすい、ウィンドシールドを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のウィンドシールド(1)は、室内空間に内装壁(6)を備える車両の固定窓として設置されたウィンドシールド(1)であって、前記ウィンドシールド(1)は、
ガラス板(2)と、
前記ウィンドシールド(1)の周縁部に形成され、前記ガラス板(2)の端面(21)側の第1側部領域(31)と、前記側部領域(31)とは反対側の第2側部領域(33)と、前記第1、第2側部領域(31、33)間の中央領域(32)とを有する帯状の可視光遮蔽領域(3)と、
前記第1側部領域(31)と、ボディフランジ(5)とを接合する接着ユニット(4)で形成された接合構造部と、
前記可視光遮蔽領域(3)上に形成されたガラスアンテナエレメントと、を備え、
前記接合構造部と前記中央領域(32)とは、前記内装壁(6)に覆われており、
前記ガラスアンテナエレメントは、導電性材料からなる給電部(10)と、前記給電部(10)と結ばれた導電性材料からなるアンテナエレメントと、を備え、
前記給電部(10)が、前記第2側部領域(33)に配置され、
前記アンテナエレメントが、少なくとも前記中央領域(32)上に配置されている、ものである。
【0008】
前記給電部(10)は、前記側部領域(33)にあるので、前記ウィンドシールド(1)が車両の固定窓として設置された状態で、コネクター(8)を取り付けることができる。そして、該コネクター(8)を介して、前記ウィンドシールド(1)を電波受信装置の構成要素とすることができる。また、前記アンテナエレメントは、前記側部領域(33)だけでなく、前記中央領域(32)にも配置されている。従来の後付け方式では、車両に窓として固定されたウィンドシールドにフィルムアンテナなどのアンテナエレメントが取り付けられるので、前記中央領域(32)が活用されずにいた。本発明は、前記中央領域(32)を活用するという新たな着想でなされたので、前記アンテナエレメントの受信感度に係るアンテナエレメントの設計自由度を高くし、前記アンテナエレメントに係る美観を改善しやすいものにすることができる。
【0009】
また本発明は、電波受信装置の使用方法であって、
前記ウィンドシールド(1)を準備する工程(A)と、
前記給電部(10)とコネクター(8)とを接合し、前記ガラスアンテナエレメントと、
前記内装壁(6)と前記中央領域(32)との間の空間(7)を通る配線(9)と、を電気的に接合させる工程(B)と、を含む、ものである。
【発明の効果】
【0010】
ウィンドシールドが車両の固定窓として設置された後に前記電波受信装置が車両に取り付けられる、後付け方式において、本発明のウィンドシールドは、前記アンテナエレメントの受信感度に係るアンテナエレメントの設計自由度を大きくし、かつ前記アンテナエレメントに係る美観を改善しやすい、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明のウィンドシールド(1)の要部の断面を概略的に示す図である。
図2】本発明のウィンドシールド(1)を室外側からみたときの要部を概略的に説明する図である。
図3】本発明のウィンドシールド(1)を室内側からみたときの要部を概略的に説明する図である。
図4】従来例のウィンドシールド(1’)を室外側からみたときの要部を概略的に説明する図である。
図5】従来例のウィンドシールド(1’)を室内側からみたときの要部を概略的に説明する図である。
図6】ガラスアンテナエレメントが占める面積領域の定義方法を説明する図である。
図7】本発明の実施例のアンテナ受信感度を示すグラフである。
図8】ガラスアンテナエレメントの全てが、可視光遮蔽領域3上に配置された場合の態様において、ウィンドシールド(1)を室内側からみたときの要部を概略的に説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を、図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明のウィンドシールド1の要部の断面を概略的に示す図、図2は、本発明のウィンドシールド1を室外側からみたときの要部を概略的に説明する図、図3は本発明のウィンドシールド1を室内側からみたときの要部を概略的に説明する図である。また、図4は、従来例のウィンドシールド1’を室外側からみたときの要部を概略的に説明する図、図5は、従来例のウィンドシールド1’を室内側からみたときの要部を概略的に説明する図である。
【0013】
本発明のウィンドシールド1の典型例は、図1、2、3に示される。前記ウィンドシールド1は、室内空間に内装壁6を備える車両の固定窓として設置されたウィンドシールド1であって、前記ウィンドシールド1は、ガラス板2と、前記ウィンドシールド1の周縁部に形成された帯状の可視光遮蔽領域3と、前記可視光遮蔽領域3において、その前記ガラス板2の端面21側の側部領域31と、ボディフランジ5とを接合する接着ユニット4で形成された接合構造部と、前記可視光遮蔽領域3上に形成されたガラスアンテナエレメントと、を備え、前記接合構造部と、前記可視光遮蔽領域3における前記側部領域31とは反対側の側部領域33と前記側部領域31との間の中央領域32とは、前記内装壁6に覆われており、前記ガラスアンテナエレメントは、導電性材料からなる給電部10と、前記給電部10と結ばれた導電性材料からなるアンテナエレメントと、を備え、前記給電部10が、前記側部領域33に配置され、前記アンテナエレメントが、少なくとも前記中央領域32上に配置されている、
ものである。
【0014】
前記可視光遮蔽領域3は、黒色セラミックからなるものが好適である。前記可視光遮蔽領域3は、典型的には、ペースト状態の、黒色セラミックなどのカラーセラミックがガラス板2の周縁部にスクリーン印刷などで帯状に塗布され、ガラス板2が熱処理によって曲げ加工される際に形成される。前記ウィンドシールド1は、車両に取り付けられるときに、前記ボディフランジ5と接着される。そのため、前記接着ユニット4で形成された接合構造部などがガラス板2の周縁部に設けられる。前記ウィンドシールド1は、その周縁部に前記可視光遮蔽領域3を備えることで、前記ウィンドシールド1を室外側からみたときに、前記接合構造部が視認されないものとすることができる。
【0015】
前記ウィンドシールド1を電波受信装置として作用させるためには、前記給電部10に配線9を備えるコネクター8を接合させ、前記コネクター8を介して、配線9と前記ガラスアンテナエレメントとを電気的に接合させる。前記配線9は、前記中央領域32と内装壁6と間の空間7内を通って、接地面や、アンプ、ラジオ受信機、テレビ受信機、その他通信機器などと接合される(これらについては、図示省略)。前記コネクター8としては、ばね式金属製導通部と、該金属製導通部を覆うプラスチック等からなる枠体とを備える、スプリングコネクターが好適に使用される。前記ばね式金属製導通部を前記給電部10に接触させて前記ばね式金属導通部を圧縮し、その状態にて、前記枠体を両面テープや、接着剤などで前記ウィンドシールド1に固定することで、前記コネクター8と前記給電部10との接合を行うことができる。
【0016】
前記電波受信装置を、車両に設置し、作用させるかどうかは、車両の使用者が決める商売形式である場合を考える。その場合、業者は車両の使用者と相談して前記電波受信装置の使用意思の有無が確認された後、業者は、前記給電部10に配線9を備えるコネクター8を接合させ、前記コネクター8を介して、配線9と前記ガラスアンテナエレメントとを電気的に接合させることが好ましい。
【0017】
図1、2、3の典型例では、前記ガラスアンテナエレメントは、芯線側アンテナエレメント11と、アース側アンテナエレメント12とを備えるものである。前記芯線側アンテナエレメント11は、給電部10hから延伸したもの、前記アース側アンテナエレメント12は給電部10aから延伸したものとなっている。
【0018】
本発明のウィンドシールド1は、図3で示すように、アンテナエレメントが、中央領域32上にも配置される。中央領域32に配置されたアンテナエレメントは、内装壁6によって、車両の使用者から視認されないので、ウィンドシールド1の美観に影響を与えることなく、その領域でのアンテナエレメントの形状や大きさは、電波受信感度向上を優先して設計される。
【0019】
前記アンテナエレメントは、中央領域32にも配置されるので、前記ガラスアンテナエレメントは、内装壁6で覆われる領域を備えることになる。そして、前記中央領域32上に配置されているアンテナエレメントは、前記側部領域33上に配置されているアンテナエレメントを介して前記給電部10と接合していることが好ましい。このような構造とすることで、給電部10を、前記側部領域33と前記中央領域32との境界からずらして配置でき、結果、給電部10へのコネクター8の取り付けをしやすいものにすることができる。さらには、前記ガラスアンテナエレメントの受信感度向上の観点から、前記アンテナエレメントは、前記ガラス板2の室内側の透視領域22上に配置されてもよい。
【0020】
次に前記ガラスアンテナの大きさについて説明する。前記ガラスアンテナエレメントの形成領域に関し、前記アンテナエレメントを形成する給電部、アンテナエレメントにて最外殻にある先端部、頂点部、又は円弧部の各部を結びできあがる面積の内、最大の面積を形成するものを、ガラスアンテナエレメントの領域(B)と定義する。その領域(B)内で、内装壁で覆われる領域が領域(A)となる。例えば、図3に示されたガラスアンテナエレメントの場合、領域(B)は、図6で示すように点線で囲われた領域となる。また、図5では、領域(A)は、点線で囲われた領域中、破線よりも上側の領域ということになる。
【0021】
前記領域(A)の割合を高くするほどウィンドシールド1は美観的に好ましいものとなるが、割合が高すぎると、ボディフランジ5に近くなるアンテナエレメントの量が増える。これらを考慮すると、領域(A)の領域(B)に対する面積の割合は、領域(A)/領域(B)において、15%~30%、好ましくは20%~25%とするとよい。また、前記ボディフランジ5からの電気的な影響を考慮し、前記アンテナエレメントは、ボディフランジと面している前記側部領域(31)に配置されていない、ものとしてもよい。また、ボディフランジ5からの電気的な影響を考慮するという観点から、前記アンテナエレメントにおいて、前記側部領域(31)と最近接する部位と、前記側部領域(31)との最短距離を、5mm~35mmとしてもよい。
【0022】
図1、2、3の典型例で示されたような、芯線側アンテナエレメント11と、アース側アンテナエレメント12と、前記給電部10hから延伸した芯線側アンテナエレメント11と、給電部10aから延伸したアース側アンテナエレメント12とを備える、ガラスアンテナエレメントは、地上デジタルテレビ放送、DAB用の電波受信、GPSや、5G通信や、車車間通信等の電波受信などに好適に使用できるものである。
【0023】
該ガラスアンテナエレメントにおいて、前記芯線側アンテナエレメント11は、前記給電部10hから、ボディフランジ5から離隔する方向に延伸する線条を備える、ものとすることが好ましい。このような線条を備えると、芯線側アンテナエレメントで受信された電波が、ボディフランジ5へリークすることを防ぐことができ、アンテナの受信感度を良好なものとすることができる。前記線条は、可視光遮蔽領域3の辺に対して、垂直又は略垂直となるように延伸する直線状のもので、その先端から、前記可視光遮蔽領域3の辺に対して平行又は略平行となるように延伸し、L字状のものとしてもよい。該線条エレメントの長さは、受信しようとする電波の周波数帯の中心波長のαλ/4(αはガラスの短縮率で、α=0.7とされる)とすることが好ましい。ボディフランジ5から離隔する方向に延伸する線条は、図2、3の例のように、前記ガラスアンテナエレメントの受信感度向上の観点から、前記アンテナエレメントは、可視光遮蔽領域3上と、前記ガラス板2の室内側の透視領域22上とに配置されてもよい。その場合でも、本発明の構成によれば、透視領域22に配置されるエレメントの割合を必要最小限とすることができる。
【0024】
前記アース側アンテナエレメント12は、前記中央領域32上にも配置されていることが好ましい。アンテナエレメントの電波の受信感度を良好なものとするために、アース側エレメント12は、芯線側エレメント11よりも大きな構造をしていることが好ましい。大きな構造は、より視認されやすいものとなる。アース側エレメント12が、前記中央領域32上に配置されることにより、ウィンドシールドとしては、アンテナエレメントの視認領域を小さくできる。
【0025】
また、前記アース側エレメント12が、外観の形状が比較的良好な矩形状の構造からなり、前記構造内に前記導電性材料からなるベタ塗り領域121を備えていてもよい。前記矩形状の構造において、給電部10aは、前記ベタ塗り領域121と一体的な構造となってもよいし、ベタ塗り領域内に含まれるものとしてもよい。地上デジタルテレビ放送の電波として使用できる、例えば、470MHz~710MHzの周波数帯において、前記ベタ塗り領域121の大きさは、受信感度に大きく影響するものではないが、前記ベタ塗り領域121の大きさを調整することで、受信感度の微調整を行うことができる。また、アース側エレメント12が矩形状の構造の場合、470MHz~710MHzの周波数帯の電波を受信するときには、矩形状の構造の面積は、1500mm2~4000mm2、さらには2000mm2~3500mm2とすることが好ましい。
【0026】
図1、2、3の典型例では、前記ガラスアンテナエレメントは、ウィンドシールド1の上辺側領域に形成されているが、前記ガラスアンテナエレメントは、ウィンドシールド1の側辺側領域や下辺側領域に形成されてもよい。
【0027】
次に、前記ガラスアンテナエレメントの全てが、可視光遮蔽領域3上に配置された場合の態様を考える。この構成は、透視領域22に配置されるエレメントが無いので、ウィンドシールド1の外観向上の観点からは好ましいものとなる。その場合でも、前記芯線側アンテナエレメント11は、前記給電部10hから、ボディフランジ5から離隔する方向に延伸する線条を備えるものとし、さらには、その線条の先端から前記可視光遮蔽領域3の辺に対して平行又は略平行となるように延伸した、L字状の線条を備えるものとすることが好ましい。しかしながら、その、ボディフランジ5から離隔する方向に延伸する線条の長さは、該態様では、わずかしかとれないので、芯線側アンテナエレメントで受信された電波が、ボディフランジ5へリークすることを防ぐ、という効果の発生がわずかでなものとなりうる。そのため、前記ウィンドシールド1は、図8に示されるような、アース側アンテナエレメント12が、芯線側アンテナエレメント11と、ボディフランジ5の間に延伸する構造を備えるものとすることが好ましい。このようは構造を備えることで、芯線側アンテナエレメントで受信された電波が、ボディフランジ5へリークすることを防ぎやすくできる。
【0028】
該態様において、前記アース側アンテナエレメント12は、前記ボディフランジ5に向かって、延伸する線条を備えるものとしてよい。そして、アース側アンテナエレメント12は、該線条の先端から、線条エレメントが、芯線側アンテナエレメント11と、ボディフランジ5の間に、好適にはボディフランジ5の縁と平行となる関係で、延伸する構造を備えるものとしてもよい。前記アンテナエレメントにおいて、前記芯線側アンテナエレメント11の線条エレメントの長さと、前記アース側アンテナエレメント12の線条エレメントとの合計長は、インピーダンス調整の観点から、受信しようとする電波の周波数帯の中心波長のαλ(αはガラスの短縮率で、α=0.7とされる)となるように調整されることが好ましい。その際、その各線条エレメントで発生する電界が相殺しないように、各線条の長さは異なっていることが好ましく、例えば、芯線側アンテナエレメント11の線条エレメントの長さは、3/4αλ、アース側アンテナエレメント12の線条エレメントの長さは、1/4αλとしてもよい。
【0029】
図8に示されるような、ガラスアンテナエレメントの全てが、可視光遮蔽領域3上に配置された場合の態様は、地上デジタルテレビ放送、DAB用の電波受信、GPSや、5G通信や、車車間通信等の電波受信などに好適に使用できるものである。また、ガラスアンテナエレメントの全てが、可視光遮蔽領域3上に配置された場合の態様では、そのアンテナエレメントは、ウィンドシールド1の側辺側領域や下辺側領域に形成されてもよい。
【0030】
本発明のウィンドシールド1で使用されるガラス板2は、湾曲した、台形状又は矩形状のものが使用される。ガラス板は、単板ガラス、合せガラスのどちらでもよく、また、ガラス板は、強化ガラス、非強化ガラスのどちらでもよい。前記ガラス板2としては、車両用のガラス板として汎用されている、フロ-ト法で製造された、ISO16293-1で規定されているようなソーダ石灰ケイ酸塩ガラスからなるガラス板を使用でき、無色のもの、着色されたものが使用される。
【0031】
前記ウィンドシールド1の周縁部に形成された帯状の可視光遮蔽領域3は、図1のように、ガラス板の室内面側に形成されたものが使用される。前記ガラス板2が合せガラスである場合、前記可視光遮蔽領域3は、図1のように室内面側にあってもよいし、合せガラスの中間膜面や、前記中間膜と面する各ガラス板のいずれかの主面にあってもよい。前記可視光遮蔽領域3は、例えば、黒色顔料などの着色顔料とガラスフリットを有するカラーセラミックペーストをガラス板の周縁部にスクリーン印刷などの方法で帯状に塗布し、ガラスフリットの軟化点近傍で焼成することで得ることができる。
【0032】
前記可視光遮蔽領域3の帯としての幅は、ウィンドシールド1が設置される車両に応じて、例えば、40mm~100mmとしてよい。可視光遮蔽領域3において、前記側部領域31、前記中央領域32、前記側部領域33は、例えば、それぞれ、35%~50%、20%~35%、残部となるように調整してもよい。
【0033】
前記側部領域31側では、該領域31と、ボディフランジ5とを接合する接着ユニット4で形成された接合構造部が形成される。前記接着ユニット4には、ポリウレタン系の接着剤などが使用され、領域31、ボディフランジ5の各界面には、接着剤の各部材との接着を促進するプライマーが使用されてもよい。前記ボディフランジ5は、鋼板等の金属かなるものが使用され、その厚みは、2mm~5mmのものが好適に使用される。前記接合構造部と、前記可視光遮蔽領域3の、前記側部領域31とは反対側の側部領域33と前記側部領域31との間の中央領域32とを覆う内装壁6には、厚さ2mm~5mm程度のウレタン素材等からなるものが使用される。また、前記ガラスアンテナエレメントは、銀粒子とガラスフリットとを有する銀ペーストをスクリーン印刷などの方法で所望のパターンに塗布し、ガラスフリットの軟化点近傍で焼成することで得ることができる。
【0034】
本発明は、車両の固定窓として設置されたウィンドシールドを電波受信装置として活用しようと車両の使用者が決定したときに、前記ウィンドシールドをアンテナエレメントとして活用せしめることができる。
【0035】
次に、本発明のウィンドシールド1の効果を説明するため、従来のウィンドシールドの例を説明する。図4、5で示されたウィンドシールド1’は、従来のウィンドシールドの典型例で、地上波デジタル放送の電波を受信するためのアンテナとして利用されているものである。該ガラスアンテナエレメントは芯線側アンテナエレメント11と、アース側アンテナエレメント12とを備えるものである。前記芯線側アンテナエレメント11は、給電部10hから延伸したもの、前記アース側アンテナエレメント12は給電部10aから延伸したものとなっている。
【0036】
従来のウィンドシールド1’では、可視光遮蔽領域3の側部領域31と、中央領域32とが内装壁6で覆われた状態で、ガラスアンテナエレメントが形成されたフィルム13が貼付される。従来例では、図5で示されるようにフィルム13は、貼付可能な領域、すなわち、ウィンドシールド1’の内装壁6で覆われていない領域に、貼付されることになる。そのため、ガラスアンテナエレメントのアンテナエレメントを中央領域32に配置することが難しいものとなる。アンテナエレメント11、12の全ては、室内側からは車両の使用者に視認される状態となる(室外側からは図4に示されるように、透視領域22の領域のアンテナエレメント、フィルム13が視認される)ので、美観の観点からは、前記アンテナエレメントは単純で、小さなものとせざるを得ない。そのため、従来例では、前記アンテナエレメントの受信感度を向上させることが難しいものとなる。
【実施例
【0037】
図3で示されるような、アンテナエレメントと、周縁部に45mm幅の黒色の可視光遮蔽領域3とが形成されたガラス板2を準備した。前記可視光領域3において、側部領域31を25mm幅、中央領域32を15mm幅、側部領域33を5mm幅と設定した。前記側部領域31がボディフランジ5と対面し、前記側部領域31と、前記中央領域32とが内装壁6で覆われる領域となる。
【0038】
前記アンテナエレメントにおいて、芯線側アンテナエレメントの給電部10h、アース側アンテナエレメント10aは、前記側部領域33内に、水平(図3において、領域3の辺の方向を水平とする)の位置関係で配置される。各給電部の形状は正方形で、ともに面積は、25mm2とした。給電部10a、10h間の距離を、4mmとし、図3で見て、各給電部の上辺と上辺、下辺と下辺とが水平の位置関係とし、さらに各側辺が平行の位置関係となるようにした。また、各給電部の下辺を可視光遮蔽領域3と透視領域22との境界から、15mmの位置となるようにした。
【0039】
芯線側アンテナエレメント11は、前記給電部10hから、図3でみて、下方側に延伸する線条と、その線条の先端から図3でみて左側に延伸する線条とからなり、下方側に延伸する線条は、20mm、左側に延伸する線条の長さを75mmとした。
【0040】
アース側アンテナエレメント12は、図3に示す矩形状体とし、前記給電部10aを前記矩形状体の内部に含むような構造とした。前記給電部10aは、図3でみて、前記矩形状体の左辺と下辺に接し、前矩形状体の左辺は、前記給電部の上辺から、25mmの長さとし、前記矩形状体の水平方向の長さを90mmとした(この90mmには、前記給電部の下辺の長さ分も含まれる)。以上のアンテナエレメントを基本として、これを実施例1とした。そして、前記矩形状体の全域をベタ塗り領域としたものを、実施例2とした。実施例1、2では、470MHz~710MHzの周波数帯での受信感度に大きな差は無かった。
【0041】
次に実施例2をベースとして、給電部10aとベタ塗り領域121との占有率が100%となる構造の、矩形状のアース側アンテナエレメント12の縦辺(可視光遮蔽領域3と透視領域22との境界に対して垂直関係にある辺)の長さを、25mmとした例を実施例3、5mmとした例を実施例4とした。実施例2、3、4において、矩形状のアース側エレメント12の下辺(可視光遮蔽領域3と透視領域22との境界に対して平行関係にある辺中、該境界に近接する側の辺)の位置は、同じとされた。すなわち、前記実施例2、3、4において、中央領域32に配置されるアース側アンテナエレメント12の割合は、実施例2>実施例3>実施例4の関係となる。
【0042】
図7に実施例2、3、4のアンテナエレメントの70MHz~710MHzの周波数帯での受信感度が示される。これより、アース側エレメント12の面積が大きいほど、受信感度が良くなることがわかる。
【0043】
本発明では、アース側エレメント12の面積を大きくしても、そのエレメントの多くを内装壁6に隠せる位置に配置できるため、電波の受信感度と、外観とのバランスが良いウィンドシールドを提供することができることがわかる。また、この結果を考慮すると、アース側エレメント12が矩形状の構造の場合、470MHz~710MHzの周波数帯の電波を受信するときには、矩形状の構造の面積は、1500mm2~4000mm2、さらには2000mm2~3500mm2、とすることが好ましいことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、車両の固定窓として設置されたウィンドシールドを電波受信装置として活用しようと車両の使用者が決定したときに、前記ウィンドシールドをアンテナエレメントとして活用せしめることができる。そのため、車両の販売店や、カー用品の販売店等で、テレビ、ラジオ、ETC、カーナービゲーションを取り付けるときに、前記ウィンドシールドをこれら機器のための電波受信装置として活用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1: ウィンドシールド
2: ガラス板
3: 可視光遮蔽領域
4: 接着ユニット
5: ボディフランジ
6: 内装壁
7: 中央領域32と内装壁6との間の空間
8: コネクター
9: 配線
10: アンテナエレメントの給電部
10h: 芯線側アンテナエレメントの給電部
10a: アース側アンテナエレメントの給電部
11: 芯線側アンテナエレメント
12: アース側アンテナエレメント
121: ベタ塗り領域
13: ガラス板2に貼付されたフィルム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8