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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-21
(45)【発行日】2023-03-02
(54)【発明の名称】円偏波受信用ガラスアンテナ
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/32 20060101AFI20230222BHJP
【FI】
H01Q1/32 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020521145
(86)(22)【出願日】2019-05-09
(86)【国際出願番号】 JP2019018480
(87)【国際公開番号】W WO2019225321
(87)【国際公開日】2019-11-28
【審査請求日】2022-02-04
(31)【優先権主張番号】P 2018100104
(32)【優先日】2018-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002200
【氏名又は名称】セントラル硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】遠江 一仁
(72)【発明者】
【氏名】平林 幹也
【審査官】岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-198090(JP,A)
【文献】特開平08-181519(JP,A)
【文献】特許第6923826(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用窓ガラスに設けられる、1~2GHzの周波数帯内の任意周波数帯の円偏波を受信するための、車両の金属ボディ部をアンテナエレメントとして含むガラスアンテナであって、
芯線側給電部と、
前記芯線側給電部と隣接して配置されるアース側給電部と、
前記アース側給電部から延伸する第一エレメントと、
第一線条と、前記第一線条と平行又は略平行の第二線条と、前記第一線条と前記第二線条とを結ぶ第三線条とで形成された無給電エレメントと、を備え、
前記無給電エレメントは、前記芯線側給電部と前記アース側給電部に隣接している前記金属ボディ部の縁と前記第三線条との間で、前記芯線側給電部と前記アース側給電部を囲み、
さらには、前記芯線側給電部は、前記第一線条と、前記第三線条と、前記第一エレメントと、前記アース側給電部と、前記金属ボディ部の縁で囲われた領域内に位置し、
前記無給電エレメントと、前記第一エレメントとの間には、前記無給電エレメントと、前記第一エレメントとが前記周波数帯内の任意周波数帯の電波を共振するように空白部が設けられており、
前記窓ガラスが前記車両に設置された際には、
前記第一線条の、前記第三線条と離隔する側の第一先端は、前記金属ボディ部と前記周波数帯内の任意周波数帯の電波を共振する位置関係となるように、前記金属ボディ部の縁と、前記車両用窓ガラスの面内方向に空白部を介して配置され、
前記第二線条の、前記第三線条と離隔する側の第二先端は、前記金属ボディ部の縁と、前記車両用窓ガラスの面内方向に空白部を設けない位置に配置され、または、前記金属ボディ部と前記周波数帯内の任意周波数帯の電波を共振する位置関係となるように、前記金属ボディ部の縁と、前記車両用窓ガラスの面内方向に空白部を介して配置され、
前記アース側給電部は、前記車両の金属ボディ部との間には、前記アース側給電部と前記車両の金属ボディ部とが前記周波数帯内の任意周波数帯の電波を共振するように空白部が設けられていることを特徴とするガラスアンテナ。
【請求項2】
前記第一エレメントは、前記第三線条に向かって延伸し、前記第一エレメントの開放端と無給電エレメントとの間に空白部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のガラスアンテナ。
【請求項3】
前記第一エレメントと、前記無給電エレメントとを、前記周波数帯内の任意周波数帯の電波が共振される位置関係としたことを特徴とする請求項1又は2に記載のガラスアンテナ。
【請求項4】
前記芯線側給電部から延伸する第二エレメントを備え、前記第二エレメントは、前記無給電素子と、前記金属ボディ部とは、前記周波数帯内の電波を共振しない位置関係にあることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のガラスアンテナ。
【請求項5】
前記無給電エレメントにおいて、
前記第一線条と前記三線条とが接続する第一接続点と、前記第二線条と前記三線条とが接続する第二接続点との最短距離(III)が(0.5×λ(2)×α)×Aの±25%であり、
前記第一接続点と前記金属ボディ部との最短距離(I)と、前記第二接続点と前記金属ボディ部との最短距離(II)は、(0.25×λ(2)×α)~(0.5×λ(1)×α)である
(但し、αはガラスの波長短縮率で0.7であり、λ(1)とλ(2)とは、前記周波数帯内の自由空間内の任意波長で、λ(1)>λ(2)、Aは1~3のいずれかの整数とする)
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のガラスアンテナ。
【請求項6】
前記第一接続点と、前記第二接続点との最短距離(III)と、前記第一接続点と前記金属ボディ部との最短距離(I)と、前記第二接続点と前記金属ボディ部との最短距離(II)との関係において、(I)+(II)>(III)であることを特徴とする請求項5に記載のガラスアンテナ。
【請求項7】
前記無給電エレメントは、前記第一線条、第二線条、第三線条内に、屈曲した迂回線条を備え、
前記迂回線条の始点と終点は、前記第一接続点と、前記第二接続点との最短距離(III)と、前記第一接続点と前記第一先端との最短距離(I’)と、前記第二接続点と前記第二先端との最短距離(II’)ルート上にあり、
前記始点と、前記終点とは、最短距離において、前記周波数帯内の任意周波数帯の電波を共振できる位置関係にあることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載のガラスアンテナ。
【請求項8】
前記窓ガラスが前記車両に設置された際には、前記第一先端と、前記第二先端の双方が、前記金属ボディ部と前記周波数帯内の任意周波数帯の電波を共振する位置関係となるように、前記車両用窓ガラスの面内方向に空白部を介して配置されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のガラスアンテナ。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載のガラスアンテナを備える、車両用窓ガラス構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1GHz~2GHzの周波数帯の円偏波を受信するためのガラスアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両には、GPSなどの衛星測位システムが利用されている。当システムでは、GPS衛星からのL1(1.575GHz)の周波数帯域の円偏波を受信できるアンテナが必要となる。そのような円偏波を受信するガラスアンテナ例として、特許文献1に示されているような、ループアンテナと、無給電素子と、これらを取り囲んで配置された導体とからなる、全体形状として矩形状を呈するようなガラスアンテナが知られている。
【0003】
また、近年では、より高精度な測位システムの実現のため、複数の衛星測位システムの利用、すなわち、複数の周波数帯の円偏波の利用がなされている。例えば、特許文献2には、GPS衛星を利用した第1の測位方式と、GLONASS衛星を利用した第2の測位方式とに対応したアンテナを含むシステムが例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-118268号公報
【文献】特開2016-205881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数の周波数帯の円偏波を利用する、衛星測位システムを車両で実現するために、それぞれの周波数帯に対応するアンテナを準備することは、車両内にアンテナを設置できるスペースには限りがあることから現実的ではない。そのため、1GHz~2GHzの周波数帯内で、円偏波を複数受信できるガラスアンテナの提供は、そのような衛星測位システムを車両で実現するのに有用である。
【0006】
よって、本発明は、1GHz~2GHzの周波数帯において、複数の任意周波数帯の円偏波を受信できるように、円偏波の受信帯域幅が改善されたガラスアンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るガラスアンテナは、車両用窓ガラスに設けられる、1~2GHzの周波数帯内の任意周波数帯の円偏波を受信するための、車両の金属ボディ部をアンテナエレメントとして含むガラスアンテナであって、
芯線側給電部と、
前記芯線側給電部と隣接して配置されるアース側給電部と、
前記アース側給電部から延伸する第一エレメントと、
第一線条と、前記第一線条と平行又は略平行の第二線条と、前記第一線条と前記第二線条とを結ぶ第三線条とで形成された無給電エレメントと、を備え、
前記無給電エレメントは、前記芯線側給電部と前記アース側給電部に隣接している前記金属ボディ部の縁と前記第三線条との間で、前記芯線側給電部と前記アース側給電部を囲み、
さらには、前記芯線側給電部は、前記第一線条と、前記第三線条と、前記第一エレメントと、前記アース側給電部と、前記金属ボディ部の縁で囲われた領域内に位置し、
前記無給電エレメントと、前記第一エレメントとの間には、前記無給電エレメントと、前記第一エレメントとが前記周波数帯内の任意周波数帯の電波を共振するように空白部が設けられており、
前記窓ガラスが前記車両に設置された際には、
前記第一線条の、前記第三線条と離隔する側の第一先端は、前記金属ボディ部と前記周波数帯内の任意周波数帯の電波を共振する位置関係となるように、前記金属ボディ部の縁と、前記車両用窓ガラスの面内方向に空白部を介して配置され、
前記第二線条の、前記第三線条と離隔する側の第二先端は、前記金属ボディ部の縁と、前記車両用窓ガラスの面内方向に空白部を設けない位置に配置され、または、前記金属ボディ部と前記周波数帯内の任意周波数帯の電波を共振する位置関係となるように、前記金属ボディ部の縁と、前記車両用窓ガラスの面内方向に空白部を介して配置され、
前記アース側給電部は、前記車両の金属ボディ部との間には、前記アース側給電部と前記車両の金属ボディ部とが前記周波数帯内の任意周波数帯の電波を共振するように空白部が設けられていることを特徴とするものである。
【0008】
前記ガラスアンテナでは、円偏波を受信するルートを、少なくとも3個設けることができる。
第一ルートは、「アース側給電部 → 第一エレメント → 第一エレメントと無給電エレメントとの間の空白部 → 無給電エレメント → 無給電エレメントの第一先端と金属ボディ部との間の空白部 → 金属ボディ部 → 金属ボディ部とアース側給電部との間の空白部 → アース側給電部」である。
また、第二ルートは、「アース側給電部 → 第一エレメント → 第一エレメントと無給電エレメントとの間の空白部 → 無給電エレメント → 無給電エレメントの第二先端 → 金属ボディ部 → 金属ボディ部とアース側給電部との間の空白部 → アース側給電部」である。
そして、第三ルートは、「アース側給電部 → 金属ボディ部とアース側給電部との間の空白部 → 金属ボディ部 → 無給電エレメントの第二先端 → 無給電エレメント → 無給電エレメントの第一先端と金属ボディ部との間の空白部 → 金属ボディ部 → 金属ボディ部とアース側給電部との間の空白部 → アース側給電部」である。
前記の第一から第三ルートにおいて、前記第一先端と前記金属ボディ部との間には空白部があり、前記第二先端と前記金属ボディ部との間には、空白部があるか、直接的に接合するかのルートとなる。
【0009】
各ルートは、円偏波の旋回方向に合せて、前記矢印(→)の順方向、逆方向のいずれかのルートで電気信号が流れる。前記アース側給電部と、前記芯線側給電部とには、コネクターなどを通じて配線が接合される。アンプや、ナビゲーションシステムなどのための機器と接合する芯線側の配線は、前記芯線側給電部と接合される。前記電気信号は、前記コネクター内で、芯線側のエレメントに高周波的に結合される、又は、前記アース側給電部から芯線側給電部に高周波的に結合されるなどによって、前記電気信号は、前記機器へと伝達される。
【0010】
第三ルートは、第一、第二ルートよりも、低い周波数に対応できるので、1~2GHzの周波数帯での低周波数域の電波の受信に奏功する。第一、第二ルートは、第三ルートよりは、高い周波数に対応できるので、1~2GHzの周波数帯での高周波数域の電波の受信に奏功する。
【0011】
また、各ルートでの空白部は、1~2GHzの波数帯内の、所望の電波が共振できる程度の間隔が設けられる。前記間隔は、複数の任意周波数帯の円偏波を受信の設計を容易とするので、複数の任意周波数帯の円偏波の受信感度を高いものとできる。
【0012】
以上から、本発明の一態様に係るガラスアンテナは、複数の周波数帯の円偏波を効率よく受信することができると考えられる。
これを考慮すると、前記第一先端と、前記第二先端の双方が、前記金属ボディ部と前記周波数帯内の任意周波数帯の電波を共振する位置関係となるように配置されていること、すなわち、前記第一先端と前記金属ボディ部との間、前記第二先端と前記金属ボディ部との間の双方は前記車両用窓ガラスの面内方向に空白部を備えていることが好ましい。
【0013】
また、本発明の他の態様は、前記ガラスアンテナを備える、車両用窓ガラス構造である。この車両用窓ガラス構造は、前記車両用窓ガラス、前記金属ボディ部、そして、前記ガラスアンテナを備えるもので、前記窓ガラスの周縁部は、前記金属ボディ部と接着剤で接合されて、該ガラス構造が形成される。
【発明の効果】
【0014】
本発明のガラスアンテナは、1GHz~2GHzの周波数帯において、円偏波の受信帯域幅を改善する。そのため、複数の衛星測位システムを利用しての車両での測位システムに好適に使用できる。さらには、1.575GHzの周波数帯域の円偏波を感度良く受信しやすいので、本発明のガラスアンテナは、特にはGPS衛星からのL1周波数帯域を利用する、複数の衛星測位システムを利用しての車両での測位システムに好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明のガラスアンテナの典型例につき、その要部を説明する図である。
図2】本発明のガラスアンテナが備える空白部の定義を説明するための図である。
図3】無給電エレメントの派生例を示す図である。
図4】実施例2の無給電エレメントの迂回線条の大きさを説明する図である。
図5】実施例1、比較例1、3のガラスアンテナの受信特性を示す図である。
図6】実施例2、比較例2のガラスアンテナの受信特性を示す図である。
図7】実施例1、3のガラスアンテナの受信特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態に係るガラスアンテナ1の詳細を、図面を用いて説明する。図1は、本発明のガラスアンテナ1の典型例につき、その要部を説明する図である。図1は、ガラスアンテナ1をフロントガラスに設けた場合に室外側から目視したときの態様を示すもので、図1の左側の金属ボディ部7の縁の縦辺は、室外側からみて左側のAピラーに相当するものでもある。図1の典型例の他に、前記金属ボディ部7の縁71(図1では縦辺で表されている)は、室外側からみて右側のAピラーが適用されてもよいし、車両用窓ガラス2の上辺又は下辺側に配置される、窓枠部の金属体が適用されてもよい。また、図1のガラスアンテナ1は、室内側からみて、右回りの円偏波を受信するのに好適である。室内側からみて、左回りの円偏波を受信する場合は、図1のガラスアンテナを基準にして、上下反転させるようにしてパターンを形成するとよい。
【0017】
前記ガラスアンテナ1は、車両用窓ガラス2に設けられる、1~2GHzの周波数帯の円偏波を受信するためのものである。前記ガラスアンテナ1は、前記金属ボディ部7をアンテナエレメントとして含み、
芯線側給電部3と、
前記芯線側給電部3と隣接して配置されるアース側給電部4と、
前記アース側給電部4から延伸する第一エレメント5と、
第一線条61と、前記第一線条と平行又は略平行の第二線条62と、前記第一線条61と前記第二線条62とを結ぶ第三線条63とで形成された無給電エレメント6と、を備える。
前記無給電エレメント6は、前記芯線側給電部3と前記アース側給電部4に隣接している前記金属ボディ部7の縁と前記第三線条63との間で、前記芯線側給電部3と前記アース側給電部4を囲み、さらには、前記芯線側給電部は、前記第一線条と、前記第三線条と、前記第一エレメントと、前記アース側給電部と、前記金属ボディ部の縁71で囲われた領域内に位置している。図1においては、無給電エレメント6は室外側から窓ガラス方向を見たときにコ字状に形成されている。
【0018】
前記芯線側給電部3と前記アース側給電部4との関係において、「隣接」とは、コネクターの芯線側端子と、アース側端子とが、それぞれに対応した給電部3、4に接合できる程度の距離、又は、前記ガラスアンテナ1を流れる電気信号が、一方の給電部から、他方の給電部に高周波的に結合できる距離であることが好ましい。例えば、前記芯線側給電部3と前記アース側給電部4の各給電部の面積を15~100mm2とした場合に、その間隔は、3mm~10mmとしてもよい。また、前記芯線側給電部3と前記アース側給電部4の配列方向は、前記縁71と平行または略平行としてもよい。
【0019】
前記無給電エレメント6と、前記第一エレメント5とは、前記周波数帯の任意の電波を共振する位置関係となるように、無給電エレメント6との間には、空白部94が設けられる。前記空白部94は、高周波的に結合するという理由から、第一エレメント5の開放端511と、無給電エレメント6とで形成されることが好ましい。また、前記空白部94の長さは、前記周波数帯の電波を共振できるように、1mm~λ(1)×0.5×α(ここで、λ(1)は、前記周波数帯内の自由空間内の任意波長を表し、αはガラスの波長短縮率を表し、αは0.7として扱われる)の範囲内で調整することができる。
【0020】
尚、本実施形態のガラスアンテナが備える各種空白部の定義を、図2を用いて説明する。図2は、本実施形態のガラスアンテナが備える空白部の定義を説明するための図であり、空白部の典型として、空白部94が用いられている。空白部とは、図2の破線のようにアンテナエレメントと、そのアンテナエレメントと最近接するアンテナエレメントと間のアンテナエレメントが存在しない部位であり、空白部の長さは、図2の破線で示したように、アンテナエレメントと、そのアンテナエレメントと近接するアンテナエレメントとの最短距離となる。尚、本実施形態では、金属ボディ部7もアンテナエレメントとして扱われる。
【0021】
前記第一エレメント5は、前記第三線条63に向かって延伸していることが好ましい。このような構造とすることで、前記第一・第二ルートの距離と、第三ルートの距離との違いを出しやすくでき、1GHz~2GHzの周波数帯において、円偏波の受信帯域幅を改善に寄与することができる。
【0022】
前記窓ガラス2が前記車両に設置された際には、前記芯線側給電部3と前記アース側給電部4とは、これらに隣接する金属ボディ部7の縁71と、前記第三線条63との間となるように配置される。そして、前記アース側給電部4は、前記車両の金属ボディ部7と前記周波数帯内の任意の電波を共振する位置関係となるように、金属ボディ部7と、アース側給電部4との間の空白部93が形成されて配置される。前記空白部93の長さは、前記周波数帯の任意の電波を共振できるように、例えば、5mm~λ(1)×0.5の範囲内で調整することができる。また、円偏波の受信感度向上の観点から、前記第三線条63は、芯線側給電部3とアース側給電部4に隣接する金属ボディ部7の縁71と平行、又は略平行の関係となるように配置されることが好ましい。
【0023】
前記アース側給電部4と、前記芯線側給電部3とは、これら給電部に接続されるコネクターの形状に応じて、その距離や、大きさが設定され、例えば、前記距離は、5mm~30mmとしてもよいし、前記大きさは、25mm2~360mm2としてもよい。また、芯線側給電部3と隣接する金属ボディ部7の縁71と、芯線側給電部3との距離は、前記空白部93と同じとしてもよい。
【0024】
また、図1の例では、前記第一線条61の、前記第三線条63と離隔する側の第一先端611と、前記第二線条62の、前記第三線条63と離隔する側の第二先端621とは、前記窓ガラス2が前記車両に設置された際に、前記金属ボディ部7と前記周波数帯の電波を共振する位置関係となるように、前記金属ボディ部の縁71と、前記車両用窓ガラスの面内方向に空白部を介して配置されている。前記第一先端611と前記金属ボディ部7の縁71との間の空白部91、前記第二先端621と前記金属ボディ部7の縁71との間の空白部92のそれぞれの長さは、前記周波数帯の電波を共振できるように、5mm~λ(1)の範囲内で調整することができる。前記第二先端が、前記金属ボディ部の縁と、前記車両用窓ガラスの面内方向に空白部を設けない位置に配置される場合は、前記車両用窓ガラス2と、前記金属ボディ部7との間には間隔があり、前記間隔に基づいて前記周波数帯の電波が共振される。この間隔は、例えば、3~7mmで設定される。
【0025】
前記ガラスアンテナ1は、前記芯線側給電部3から延伸する第二エレメント8を備えていることが好ましい。前記第二エレメントは、前記無給電素子と、前記金属ボディ部とは、前記周波数帯の電波を共振しない位置関係に設定され、その形状としては、直線状のもの、L字状のものなどを例示することがでる。前記第二エレメント8を備えることで、受信帯域の微調整を行うことができ、例えば、その長さは、5mm~50mm内で調整することができる。
【0026】
前記無給電エレメント6において、
前記第一線条61と前記三線条63とが接続する第一接続点612と、前記第二線条62と前記三線条63とが接続する第二接続点622との最短距離(III)が(0.5×λ(2)×α)×Aの±25%であり、
前記第一接続点612と前記金属ボディ部の縁71との最短距離(I)と、前記第二接続点622と前記金属ボディ部の縁71との最短距離(II)は、(0.25×λ(2)×α)~(0.5×λ(1)×α)である
(ここで、λ(2)は、前記周波数帯内の自由空間内の任意波長で、λ(1)>λ(2)、Aは1~3のいずれかの整数である)
ことが好ましい。前記無給電エレメント6の各エレメントの長さや、金属ボディ部7の縁71との位置関係を、これら条件内とすることで、前記ガラスアンテナ1の外観形状と、1GHz~2GHzの周波数帯において、円偏波の受信帯域幅の改善を図りやすくなる。
【0027】
また、前記第一接続点612と、前記第二接続点622との最短距離(III)と、前記第一接続点612と前記金属ボディ部7の縁71との最短距離(I)と、前記第二接続点622と前記金属ボディ部7の縁71との最短距離(II)との関係は、(I)+(II)>(III)であることが好ましい。このような関係とすることで、ガラスアンテナ1で生じる、円形状の電磁場フィールドの長軸の長さと、短軸の長さとを近いものとでき、円偏波の受信感度向上を図りやすくできる。
【0028】
またさらに、前記無給電エレメント6は、図3に示された無給電エレメントの派生例のように、前記第一線条61、第二線条62、第三線条63内に、少なくとも一つの屈曲した迂回線条64を備えることが好ましい。これによって、円偏波の受信帯域幅の改善を図りやすくなる。
【0029】
前記無給電エレメント6が、前記迂回線状64を備える場合、外観の改善の観点から、前記迂回線状64は、第一線条61、第二線条62、第三線条63のいずれかの始点となる線状と直交する方向で、且つ前記無給電エレメント6で給電部3、4を囲んでいる側に迂回することが好ましい。
【0030】
そして、前記迂回線条の始点951と終点952(接続点612、622に近い方を始点とする)は、前記第一接続点と、前記第二接続点との最短距離(III)と、前記第一接続点と前記第一先端との最短距離(I’)と、前記第二接続点と前記第二先端との最短距離(II’)ルート上にあり、前記迂回線条64の始点951と、終点952とは、最短距離において、前記周波数帯の電波を共振できる位置関係にあることが好ましい。この最短距離における間隔95の長さは、1mm~λ(1)×0.5×αの範囲内で調整することができる。前記無給電エレメント6が、このような構造を備えると、受信帯域の幅を広げることができる。また、接続点612、622と、始点951との距離は外観の観点から近接していることが好ましく、例えば、その距離は、3mm~20mm内で調整してもよい。
【0031】
前述の各エレメントや、各給電部は、車両用窓ガラス2面上に、導電性のセラミックペーストなどによって形成することができる。前記セラミックペーストは、スクリーン印刷などによってガラス面上にパターンを伴って塗布され、その後、加熱炉などで焼き付けられて、前記パターンがガラスアンテナのパターンとしてガラス面上に定着される。また、その他に、アンテナエレメントが形成された、光透過性の樹脂フィルムがガラス面上に貼付されてもよい。ガラスアンテナのエレメント中、線状のエレメントの線幅は、0.5mm~1mm程度で調整されてもよい。
【0032】
また、ガラスアンテナのいずれかのエレメントや、各エレメントは、車両用窓ガラス2の周縁部の黒枠上に形成されていてもよい。
【0033】
車両用窓ガラス2は、湾曲した、台形状又は矩形状のガラス板が使用される。ガラス板は、単板ガラス、合せガラスのどちらでもよく、また、ガラス板は、強化ガラス、非強化ガラスのどちらでもよい。前記ガラス板2としては、車両用のガラス板として汎用されている、フロ-ト法で製造された、ISO16293-1で規定されているようなソーダ石灰ケイ酸塩ガラスからなるガラス板を使用でき、無色のもの、着色されたものが使用される。
【実施例
【0034】
[実施例1]
図1に示されたガラスアンテナ1を準備した。本実施例において、各エレメントの大きさなどは以下のとおりとした。
<芯線側のエレメント>
・芯線側給電部3の大きさ:12mm×10mm
・第二エレメント8:5mmの直線
<アース側のエレメント>
・アース側給電部4の大きさ:12mm×10mm
芯線側給電部3と、アース側給電部4とは、金属ボディ部7の縁71に対して平行の位置関係を維持して配置された。
・空白部93の長さ:10mm
・第一エレメント5:
無給電エレメント6の第三エレメント63に対して45度の角度を形成するように延伸し、その長さを27mmとした。
・空白部94の長さ:4mm
<無給電エレメント>
・第一線条61:長さ25mmの直線
・第二線条62:長さ25mmの直線
・第三線条63:長さ80mmの直線
第一線条61と、第二線条62とは平行に位置し、第三線条63と、金属ボディ部7の縁71とは平行に位置し、第一、第二、第三線条とで芯線側給電部3とアース側給電部4を囲むコ字状のエレメントが形成された。
これより、第一接続点612と第二接続点622との最短距離は80mmとなる。
・空白部91の長さ:20mm
これより、第一接続点612と金属ボディ部7の縁71との最短距離は45mmとなる。
・空白部92の長さ:20mm
これより、第二接続点622と金属ボディ部7の縁71との最短距離は45mmとなる。
【0035】
[実施例2]
第二線条62の長さを45mmとし、空白部92を設けなかったことを除き、他は実施例1と同じ構造のガラスアンテナを準備した。
【0036】
[実施例3]
無給電エレメント6を、図3に示された派生例とし、第一線条61及び第二線条62を35mmとした以外は、実施例1と同じパターンのガラスアンテナを準備した。本実施例での無給電エレメント6の迂回線条64の間隔95の長さ、位置などは図4に示すとおりとした。
【0037】
[比較例1]
第一エレメント5の長さを33mmとし、空白部94を設けなかったことを除き、他は実施例1と同じ構造のガラスアンテナを準備した。
【0038】
[比較例2]
第一線条61の長さを45mmとし、空白部91を設けなかったことを除き、他は実施例1と同じ構造のガラスアンテナを準備した。
【0039】
[比較例3]
第一線条61の長さ及び第二線条62の長さを共に45mmとし、空白部91及び空白部92を設けなかったことを除き、他は実施例1と同じ構造のガラスアンテナを準備した。
【0040】
[各実施例、各比較例の結果]
各実施例、各比較例の、1GHz~2GHz帯で受信した偏波の軸比が図5~7に示された。軸比が4dB以下で受信した帯域幅が0.25GHz以上で、その帯域内に軸比が2dB以下となる帯域を備えている帯域を見ると、実施例1では、4dB以下の帯域が1.54GHz~1.9GHz帯、2dB以下の帯域が1.61GHz~1.85GHz帯、実施例2では、4dB以下の帯域が1.46GHz~1.88GHz帯、2dB以下の帯域が1.54GHz~1.8GHz帯、実施例3では、4dB以下の帯域が1.46GHz~1.72GHz、2dB以下の帯域が1.49GHz~1.54GHz帯に見られた。これに対して、各比較例では、比が4dB以下で受信した帯域幅が0.25GHz以上で、その帯域内に軸比が2dB以下となる帯域を備えているものはなかった。さらには、1.575GHz帯の円偏波に対して、最大放射方向での実施例1の利得は1.2dBic、実施例3の利得は1.7dBicであった。
【0041】
本発明の実施形態に係るガラスアンテナは、1GHz~2GHzの周波数帯において、円偏波の受信帯域幅を改善することがわかる。
【符号の説明】
【0042】
1: ガラスアンテナ
2: 車両用窓ガラス
3: 芯線側給電部
4: アース側給電部
5: 第一エレメント
6: 無給電エレメント
61: 第一線条
611: 第一先端
612: 第一接続点
62: 第二線条
621: 第二先端
622: 第二接続点
63: 第三線条
64: 迂回線条
7: 金属ボディ部
8: 第二エレメント
91: 第一空白部
92: 第二空白部
93: 第三空白部
94: 第四空白部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7