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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-21
(45)【発行日】2023-03-02
(54)【発明の名称】乗客コンベア
(51)【国際特許分類】
   B66B 31/00 20060101AFI20230222BHJP
   B66B 23/22 20060101ALI20230222BHJP
【FI】
B66B31/00 Z
B66B23/22 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021152879
(22)【出願日】2021-09-21
【審査請求日】2021-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114421
【弁理士】
【氏名又は名称】薬丸 誠一
(72)【発明者】
【氏名】井上 祐紀
(72)【発明者】
【氏名】谷口 友宏
(72)【発明者】
【氏名】玉置 亜由美
(72)【発明者】
【氏名】端 宏晃
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第208964359(CN,U)
【文献】特開2007-284255(JP,A)
【文献】特開平06-191782(JP,A)
【文献】特開2016-013882(JP,A)
【文献】特開2016-172603(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 21/00-31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通路に面するとともに、輻射線の反射率よりも輻射線の吸収率又は輻射線の透過率が高い材質で構成される欄干パネルと、
通路と反対側の欄干パネルの外面側に輻射式暖房装置として配置される熱媒体循環式ヒータからなる面状輻射源とを備え
熱媒体循環式ヒータの熱源として、乗客コンベアが備える駆動モータ、インバータ等の構成要素から排出される排熱が利用される
乗客コンベア。
【請求項2】
欄干パネルよりも外側に所定の間隔を有して配置される外装材と、
欄干パネル及び外装材間の内部空間とを備え、
面状輻射源は、内部空間に配置される
請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項3】
通路に面するとともに、輻射線の反射率よりも輻射線の吸収率又は輻射線の透過率が高い材質で構成される欄干パネルと、
欄干パネルよりも外側に所定の間隔を有して配置される外装材と、
欄干パネル及び外装材間の内部空間と、
内部空間に輻射式暖房装置として配置される面状輻射源と、
内部空間において欄干パネルとは反対側の面状輻射源の外面側に構成される断熱材層とを備える
乗客コンベア。
【請求項4】
面状輻射源は、電熱式ヒータ又は熱媒体循環式ヒータである
請求項に記載の乗客コンベア。
【請求項5】
複数の面状輻射源が欄干パネルにおいて長手方向に並ぶように配置される
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の乗客コンベア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、循環駆動される無端搬送体により乗客を搬送する乗客コンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
エスカレータや動く歩道といった乗客コンベアは、屋外に設置されたり、一部が屋外を通るように設置されたりすることがある。このような乗客コンベアは、冬季において外気の冷気に晒されるため、利用者は寒さで不快な思いをすることがある。
【0003】
そこで、乗客コンベアの欄干パネルにおいて全長に亘って長手方向に所定の間隔を有して設けられる複数の吹出し口と、各吹出し口から通路に向かって空調風を吹き出す空調装置とを備える乗客コンベアが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-083576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載された空調装置は、対流式である。そうすると、上述した屋外設置型又は半屋外設置型の乗客コンベアである場合、屋外の部分で風が吹いていると、空調風が拡散して通路から排出されるとともに、冷気が通路に進入し、暖房効率が低下する。このため、特許文献1に記載された対流式の空調装置は、屋外設置型又は半屋外設置型の乗客コンベアには適していない。
【0006】
そこで、本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、空気が流動しやすい環境下であっても、優れた暖房効果を発揮することができる乗客コンベアを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る乗客コンベアは、
通路に面するとともに、輻射線の反射率よりも輻射線の吸収率又は輻射線の透過率が高い材質で構成される欄干パネルと、
通路と反対側の欄干パネルの外面側に輻射式暖房装置として配置される熱媒体循環式ヒータからなる面状輻射源とを備え
熱媒体循環式ヒータの熱源として、乗客コンベアが備える駆動モータ、インバータ等の構成要素から排出される排熱が利用される
乗客コンベアである。
【0008】
ここで、本発明に係る乗客コンベアの一態様として、
欄干パネルよりも外側に所定の間隔を有して配置される外装材と、
欄干パネル及び外装材間の内部空間とを備え、
面状輻射源は、内部空間に配置される
との構成を採用することができる。
【0009】
また、本発明に係る乗客コンベア
通路に面するとともに、輻射線の反射率よりも輻射線の吸収率又は輻射線の透過率が高い材質で構成される欄干パネルと、
欄干パネルよりも外側に所定の間隔を有して配置される外装材と、
欄干パネル及び外装材間の内部空間と、
内部空間に輻射式暖房装置として配置される面状輻射源と、
内部空間において欄干パネルとは反対側の面状輻射源の外面側に構成される断熱材層とを備える
乗客コンベアである。
【0010】
ここで、本発明に係る乗客コンベアの態様として、
面状輻射源は、電熱式ヒータ又は熱媒体循環式ヒータである
との構成を採用することができる。
【0011】
また、本発明に係る乗客コンベアの他態様として
複数の面状輻射源が欄干パネルにおいて長手方向に並ぶように配置される
との構成を採用することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、面状輻射源から放射された輻射線(輻射熱)が欄干パネルを通って乗客に照射され(伝わり)、乗客が暖められる。輻射式は、当然のことながら空気流動の影響を一切受けない。このため、本発明によれば、空気が流動しやすい環境下であっても、優れた暖房効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施形態1に係るエスカレータの概略断面側面図である。
図2図2は、エスカレータの側面図である。
図3図3は、図1のA-A線における垂直断面図である。
図4図4は、半屋外設置型である場合のエスカレータの側面図である。
図5図5は、実施形態2に係るエスカレータの概略断面側面図である。
図6図6は、エスカレータの側面図である。
図7図7は、図5のA-A線における垂直断面図である。
図8図8は、他実施形態1に係るエスカレータであって、図1のA-A線におけるものに相当する垂直断面図である。
図9図9は、他実施形態2に係るエスカレータであって、図1のA-A線におけるものに相当する垂直断面図である。
図10図10は、他実施形態3に係るエスカレータであって、図1のA-A線におけるものに相当する垂直断面図である。
図11図11は、他実施形態4に係るエスカレータであって、図1のA-A線におけるものに相当する垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態1>
以下、本発明に係る実施形態1として、全体が屋外に設置される屋外設置型のエスカレータについて、図1ないし図3を参酌して説明する。
【0015】
図1及び図2に示すように、エスカレータ1は、乗降口3と、搬送部4と、ハンドレール部5とを備える。乗降口3は、乗り口3Aと降り口3Bとからなり、搬送部4の各端部に設けられる。搬送部4は、エスカレータ1の自重及び積載荷重を支える構造体であるトラス2に支持され、踏面が通路に沿って移動することにより、乗客をその位置に立たせたまま歩かせることなく搬送する。ハンドレール部5も、トラス2に支持され、通路の左右に通路に沿って設けられる。
【0016】
搬送部4は、無端搬送体40を備える。無端搬送体40は、複数の踏段(ステップ)41,…が踏段チェーン42を介して無端状に連結されたもので、循環駆動される。無端搬送体40は、駆動モータ43の駆動に伴って踏段チェーン42が循環駆動されることにより、一方向又は反対方向に循環駆動される。
【0017】
ハンドレール部5は、ハンドレール50と、欄干51とを備える。ハンドレール50は、移動手摺とも呼ばれ、可撓性を有する無端状で、無端搬送体40と連動して循環駆動される。欄干51は、下辺部がトラス2に支持され、ハンドレール50を循環移動可能に支持する。ハンドレール50及び欄干51は、通路の左右に通路に沿って一対設けられる。
【0018】
図3に示すように、欄干51は、欄干パネル52と、外装材53と、スカートガード54と、外デッキカバー55と、内デッキカバー56と、柱57とを備える。欄干パネル52は、ハンドレール50の上辺部(往路部分)50A及び下辺部(復路部分)50B間に縦に配置され、通路に面する。外装材53は、欄干パネル52よりも外側に欄干パネル52と所定の間隔を有して縦に配置される。スカートガード54は、欄干パネル52よりも内側に欄干パネル52の下部の高さ位置から下方に縦に配置され、通路に面する。外デッキカバー55は、欄干パネル52及び外装材53間の上部開放部を閉鎖するように脱着自在に取り付けられる。内デッキカバー56は、欄干パネル52及びスカートガード54間の上部開放部を閉鎖するように脱着自在に取り付けられ、通路に面する。このように、欄干51は、内部空間58、より詳しくは、欄干パネル52、外装材53及び外デッキカバー55に囲まれる第1内部空間58Aと、スカートガード54、外装材53及び内デッキカバー56に囲まれる第2内部空間58Bとを有する。ハンドレール50の下辺部(復路部分)50Bは、第2内部空間58Bに収容され、外部から遮蔽される。柱57は、内部空間58に配置され、下端部がトラス2の上弦材20等のフレームに固定される欄干51の構造材である。
【0019】
エスカレータ1は、輻射式暖房装置6を備える。輻射式暖房装置6は、輻射線(輻射熱)を欄干パネル52から通路に向かって放射し、乗客に照射することにより、乗客を暖める輻射式の暖房装置である。輻射線とは、温度が高い物体から低い物体へ熱を伝える電磁波のことをいい、輻射熱とは、温度が高い物体から低い物体へ電磁波によって伝わる熱のことをいう。輻射は放射ともいう。輻射線は、波長780nm以上1mm以下の赤外線である。この中で特に波長3μm以上1mm以下の遠赤外線の輻射作用が大きい。これは、物質の熱振動の波長領域と一致するからである。輻射式暖房装置6は、自身を熱源として赤外線(特に遠赤外線)を放射する。
【0020】
輻射式暖房装置6は、熱源として、面状輻射源60を備える。面状輻射源60は、通路と反対側の欄干パネル52の外面に密着するように配置される。あるいは、面状輻射源60は、欄干パネル52の外面と所定の間隔を有して配置されるようにしてもよい。いずれにせよ、面状輻射源60は、欄干51の内部空間58に配置される。
【0021】
面状輻射源60と通路との間には、欄干パネル52が介在する。このため、欄干パネル52が輻射線を反射するようではいけない。そこで、欄干パネル52は、輻射線の反射率よりも輻射線の吸収率又は輻射線の透過率が高い材質で構成される。具体的には、欄干パネル52は、波長3μm以上25μm以下の波長領域の赤外線の反射率が30%以下、より好ましくは、20%以下、さらに好ましくは、10%以下の低反射率の材質や、同赤外線の吸収率(放射率)が70%以上、より好ましくは、80%以上、さらに好ましくは、90%以上の高吸収率(高放射率)の材質で構成される。本実施形態においては、欄干パネル52は、セラミック又はガラスで構成される。なお、欄干パネル52は、通路に面する部材であることから、万が一通路側から大きな外力を受けたとしてもこれに耐える強度が必要である。このため、欄干パネル52は、8mm以上の厚みを有する。
【0022】
図1及び図2に示すように、面状輻射源60は、定型(たとえば長方形状)であり、複数の面状輻射源60,…が欄干パネル52において全長に亘って長手方向に並ぶように配置される。
【0023】
面状輻射源60は、パネル状の電熱式ヒータ、すなわち、パネルヒータである。パネルの内部には、電熱線が所定の面構成パターンで配線され、通電により電熱線が発熱することにより、輻射線を放射する。各面状輻射源60は、電源61に対して直列的又は並列的に配線接続される。あるいは、いくつかの面状輻射源60,…が1つのグループを構成して電源61に対して直列的に配線接続されるとともに、各グループが電源61に対して並列的に配線接続されるようにしてもよい。図1の例では、全ての面状輻射源60,…が電源61に対して直列的に配線接続される。電源61は、トラス2の内部空間、欄干51の内部空間58、駆動モータ43がある機械室等、乗客が目につかない場所に設定される。あるいは、輻射式暖房装置6が商業電源やエスカレータ1の電源から受電する場合は、電源61は不要である。
【0024】
ところで、エスカレータには、乗客が横並び可能な幅の通路を備える幅広タイプのものと、乗客一人分の幅の通路を備える幅狭タイプのものとがある。いずれのタイプであっても、欄干51は、通路の左右に通路に沿って一対設けられる。そこで、輻射式暖房装置6は、左右両方に設けられる。あるいは、輻射式暖房装置6は、左右のいずれか一方に設けられるようにしてもよい。いずれにしても、欄干パネル52から通路に向かって輻射線が放射され、通路を移動する乗客が暖められる。
【0025】
以上のとおり、本実施形態に係るエスカレータ1によれば、面状輻射源60から放射された輻射線が欄干パネル52を通って乗客に照射され、乗客が暖められる。輻射式は、対流式と異なり、当然のことながら空気流動の影響を一切受けない。このため、本実施形態に係るエスカレータ1によれば、屋外設置型であるために空気が流動しやすい環境下であっても、優れた暖房効果を発揮することができる。そして、これにより、乗客は、屋外設置型のエスカレータ1であっても、冬季において利用中、暖を取ることができ、寒さが緩和されて快適に過ごすことができる。
【0026】
これは、図4に示すように、エスカレータ1が半屋外設置型である場合も同様である。エスカレータ1が屋外ODの部分に輻射式暖房装置6を備えることにより、乗客は、半屋外設置型のエスカレータ1であっても、冬季において利用中、暖を取ることができ、寒さが緩和されて快適に過ごすことができる。なお、エスカレータ1の屋内IDの部分は、建物の空調が効いているため、一般的には輻射式暖房装置6は不要である。ただし、エスカレータ1が屋内IDの部分にも輻射式暖房装置6を備えることを排除するものではない。
【0027】
また、本実施形態に係るエスカレータ1によれば、複数の面状輻射源60,…が欄干パネル52において長手方向に並ぶように配置されることにより、輻射式暖房装置6が構成される。このため、本実施形態に係るエスカレータ1によれば、輻射式暖房装置6を簡単に構成することができるとともに、既設のエスカレータにおいても、輻射式暖房装置6を簡単に構成することができる。しかも、本実施形態に係るエスカレータ1によれば、エスカレータの長さの違いに自由に対応することができる。また、本実施形態に係るエスカレータ1によれば、不要な箇所には面状輻射源60を設置しないことで、半屋外設置型のエスカレータ1においても、輻射式暖房装置6を簡単に構成することができる。
【0028】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2に係るエスカレータについて、図5ないし図7を参酌して説明する。なお、本実施形態に係るエスカレータが実施形態1に係るエスカレータと異なる点は、輻射式暖房装置の構造である。具体的には、実施形態1では、輻射式暖房装置の面状輻射源が電熱式ヒータであるのに対し、本実施形態では、輻射式暖房装置の面状輻射源が熱媒体循環式ヒータである点である。この点以外については、両者は、同じである。そこで、以下においては、異なる点について記載し、同じ点については、実施形態1についての記載と同様であるとして、記載を省略する。
【0029】
面状輻射源60は、パネル状の熱媒体循環式ヒータ、すなわち、パネルヒータである。パネルの内部には、加熱されたオイル、加熱された空気、加熱された水等の流体の熱媒体が流れる配管が所定の面構成パターンで配管され、熱媒体が有する熱により、輻射線を放射する。各面状輻射源60は、加熱器62及び循環ポンプ63に対して直列的又は並列的に配管接続される。あるいは、いくつかの面状輻射源60,…が1つのグループを構成して加熱器62及び循環ポンプ63に対して直列的に配管接続されるとともに、各グループが加熱器62及び循環ポンプ63に対して並列的に配管接続されるようにしてもよい。図5の例では、全ての面状輻射源60,…が加熱器62及び循環ポンプ63に対して直列的に配管接続される。加熱器62及び循環ポンプ63は、トラス2の内部空間、欄干51の内部空間58、駆動モータ43がある機械室等、乗客が目につかない場所に設定される。配管系統の一部が駆動モータ43やその近傍に配置されるインバータ等を通り、これらから排出される排熱(回生エネルギを含む)で熱交換されるようにすると、省電力化ないし加熱器62をダウンサイジングすることができる。あるいは、これらの排熱による熱交換で熱媒体を十分に加熱することができる場合は、加熱器62は不要である。
【0030】
このように、本実施形態に係るエスカレータ1によっても、実施形態1に係るエスカレータ1が奏する作用効果と同様の作用効果を奏する。
【0031】
なお、本発明は、上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0032】
上記各実施形態においては、複数の面状輻射源60,…が欄干パネル52において長手方向に互いに所定の間隔を有して並ぶように配置される。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。複数の面状輻射源が欄干パネルにおいて長手方向に隙間なく並ぶように配置されるようにしてもよい。あるいは、複数の面状輻射源がより広い間隔で配置されるようにしてもよい。
【0033】
また、上記各実施形態においては、たとえば長方形状といった定型の面状輻射源60が用いられる。これは、既製のパネルヒータを使用することも考慮した設計思想によるものである。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。たとえば新設のエスカレータであれば、欄干パネルの全域に面状輻射源が配置されるように設計することも可能である。
【0034】
また、上記各実施形態においては、欄干パネル52は、セラミック又はガラスで構成される。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。欄干パネル52の材質は、面状輻射源60による輻射効果を遮らないものである限り、種々の材質を選択することができる。
【0035】
また、上記各実施形態においては、エスカレータ1は、通路に面する欄干パネル52と、欄干パネル52よりも外側に所定の間隔を有して配置される外装材53と、欄干パネル52及び外装材53間の内部空間58とを備えるタイプのものであり、各面状輻射源60は、内部空間58に配置される。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。たとえば、図8に示すように、通路と反対側の欄干パネル52の外面側には内部空間がなく、欄干パネル52だけがハンドレール50の上辺部(往路部分)50Aを支持するタイプのものであり、各面状輻射源60は、欄干パネル52の外面側に配置されるものであってもよい。本例においては、欄干パネル52は、ガラス又はセラミックで構成される。
【0036】
また、上記各実施形態及び図8に示す例においては、欄干パネル52は、単枚構成である。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。たとえば、図9に示すように、欄干パネル52は、第1欄干パネル52A及び第2欄干パネル52Bの複数枚構成であってもよい。この場合、第1欄干パネル52A及び第2欄干パネル52Bは、接着されるようにしてもよく、あるいは、接着されないようにしてもよい。一例として、第1欄干パネル52A及び第2欄干パネル52Bの一方は、高吸収率(高放射率)及び耐熱性を有するセラミックで構成され、他方は、高吸収率(高放射率)及び高強度を有するガラスで構成される。
【0037】
また、図10に示すように、輻射式暖房装置6は、伝熱部材64,65の少なくとも一方を備えることも可能である。伝熱部材64は、一端部が面状輻射源60の上端部に接触し、他端部がハンドレール50の上辺部(往路部分)50Aの近傍に位置する部材であり、たとえば金属製で熱伝導率が高く、面状輻射源60の熱を一端部から他端部に伝熱する部材である。伝熱部材65は、一端部が面状輻射源60の下端部に接触し、他端部がハンドレール50の下辺部(復路部分)50Bの近傍に位置する部材であり、たとえば金属製で熱伝導率が高く、面状輻射源60の熱を一端部から他端部に伝熱する部材である。伝熱部材65の他端部は、ハンドレール50を囲う形状を有する。伝熱部材64,65は、欄干パネル52において全長に亘って又は一部の区間において長手方向に所定の間隔を有して複数設けられる。これにより、ハンドレール50の上辺部(往路部分)50A及び下辺部(復路部分)50Bの少なくとも一方は、伝熱部材64,65の他端部から熱輻射を受けて加熱され、暖められる。すなわち、輻射式暖房装置6は、伝熱部材64,65の少なくとも一方を備えることにより、ハンドレール50のヒータとしても使用される。
【0038】
また、上記各実施形態においては、内部空間58は空気層である。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。たとえば、図11に示すように、第1内部空間58Aに、面状輻射源60を覆うように断熱材66が設けられ、これにより、欄干パネル52とは反対側の面状輻射源60の外面側に断熱材層が構成されるようにしてもよい。なお、断熱材は、図11に示すように、第1内部空間58Aの一部に設けられるほか、第1内部空間58A全体を埋めるように設けられるようにしてもよい。また、断熱材は、第2内部空間58Bにも設けられるようにしてもよい。
【0039】
また、上記各実施形態においては、乗客コンベアは、エスカレータである。しかし、本発明は、動く歩道にも適用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0040】
1…エスカレータ、2…トラス、20…上弦材、3…乗降口、3A…乗り口、3B…降り口、4…搬送部、40…無端搬送体、41…踏段、42…踏段チェーン、43…駆動モータ、5…ハンドレール部、50…ハンドレール、50A…上辺部(往路部分)、50B…下辺部(復路部分)、51…欄干、52…欄干パネル、52A…第1欄干パネル、52B…第2欄干パネル、53…外装材、54…スカートガード、55…外デッキカバー、56…内デッキカバー、57…柱、58…内部空間、58A…第1内部空間、58B…第2内部空間、6…輻射式暖房装置、60…面状輻射源、61…電源、62…加熱器、63…循環ポンプ、64,65…伝熱部材、66…断熱材、OD…屋外、ID…屋内
【要約】
【課題】空気が流動しやすい環境下であっても、優れた暖房効果を発揮することができる乗客コンベアを提供する。
【解決手段】乗客コンベアは、屋外に設置される又は一部が屋外を通るように設置される乗客コンベアであって、通路に面するとともに、輻射線の反射率よりも輻射線の吸収率又は輻射線の透過率が高い材質で構成される欄干パネル52と、通路と反対側の欄干パネル52の外面側に輻射式暖房装置として配置される面状輻射源60とを備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11