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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-21
(45)【発行日】2023-03-02
(54)【発明の名称】睡眠の質改善剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/105 20160101AFI20230222BHJP
   A23K 10/30 20160101ALI20230222BHJP
   A61K 36/185 20060101ALI20230222BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20230222BHJP
   A61K 131/00 20060101ALN20230222BHJP
【FI】
A23L33/105
A23K10/30
A61K36/185
A61P25/20
A61K131:00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018180831
(22)【出願日】2018-09-26
(65)【公開番号】P2020048481
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-09-03
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 発行者名 UBMジャパン株式会社 刊行物名 健康産業速報 号数 第2267号 発行年月日 平成30年9月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】500081990
【氏名又は名称】ビーエイチエヌ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】加藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】野崎 勉
(72)【発明者】
【氏名】石原 健夫
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-115143(JP,A)
【文献】RSC Advances,2018年9月21日, Vol.8, pp.32814-32822
【文献】Nutrients,2015年, Vol.7, pp.8846-8858
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A61K
A61P
A23K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE/FSTA/AGRICOLA(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛋白質分解酵素によるオクラ種子分解物由来の抽出物を含有してなる睡眠の質改善剤。
【請求項2】
前記オクラ種子が完熟種子である請求項1に記載の睡眠の質改善剤。
【請求項3】
前記分解物がアルカリ性プロテアーゼ及び/ 又は中性プロテアーゼによる加水分解物である請求項1又は2に記載の睡眠の質改善剤。
【請求項4】
前記抽出物が水抽出物である請求項1 ~ 3 のいずれか1 項に記載の睡眠の質改善剤。
【請求項5】
前記睡眠の質が睡眠潜時、睡眠時間及び/ 又は疲労回復である請求項1 ~ 4 のいずれか1 項に記載の睡眠の質改善剤。
【請求項6】
請求項1 ~ 5 のいずれか1項に記載の睡眠の質改善剤を配合してなる睡眠の質改善のための経口用組成物。
【請求項7】
飲食品である請求項6に記載の経口用組成物。
【請求項8】
医薬品、医薬部外品又は飼料である請求項6に記載の経口用組成物。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか1項に記載の剤又は請求項6~8のいずれか一項に記載の組成物を経口摂取又は経口投与することを特徴とする睡眠の質改善方法。(但し、医療行為を除く)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オクラの種子の加工処理物を含有してなる睡眠の質改善剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現代人の5人に1人は慢性的な睡眠不足に悩んでおり(非特許文献1)、約7割の人は睡眠の質の低下や睡眠時間の減少等、睡眠に何かしらの悩みを抱えている(非特許文献2)。その要因は、ストレス、生活リズムの乱れ、運動不足等多岐に渡る。睡眠不足や睡眠の質の低下は、肥満、高血圧、糖尿病、脂質異常症等の生活習慣病、更に、うつ病やアルツハイマー型認知症等の精神疾患の原因となると言われているため、日常生活における睡眠不足の解消・改善が重要である。しかし、現代社会の中で睡眠時間を大幅に増やすことは難しく、睡眠の質を高めることで睡眠不足を解消することが重要である。
【0003】
不眠の症状は、主に入眠障害(寝付きが悪い)、中途覚醒(途中で目が覚める)、早朝覚醒(朝早く目が覚めその後眠れない)、熟眠障害(寝た気がしない)の4つに分類され、睡眠の質を高めるためには、これらの改善が重要である。睡眠不足の解消のため、バルビツール酸系、ベンゾジアゼピン系等の睡眠薬が使用されてきたが、その依存性の高さや筋弛緩作用等の副作用が報告されており、安全な睡眠改善剤や睡眠の質改善剤が望まれている。
【0004】
睡眠の質の改善作用や睡眠改善作用を有する食品成分についてもこれまで研究されており、オリーブエキス(特許文献1)、ラクトバチルス・カゼイの菌体(特許文献2)、DHA(特許文献3)、D-リボース(特許文献4)、清酒酵母(特許文献5)、S-アデノシルメチオニン含有酵母(特許文献6)等が提案されている。
【0005】
なお、オクラ(Abelmoschus esculentus)はアオイ科トロロアオイ属に属する植物であり、世界の熱帯~温帯地域で生育し、野菜として栽培され食用に供されてきた長い歴史がある。通常、白色ないし黄白色の未熟な種子を内包する果実(莢)を生鮮野菜として摂食する。
【0006】
オクラを加工して得られるエキスや成分を産業的に利用する試みとして、オクラを加工して得られるエキスや成分を産業的に利用する試みとして、オクラ種子由来のオリゴペプチド及び特定植物抽出物を含有する老化防止用皮膚外用剤(特許文献7)等が提案されている。
しかしながら、オクラの完熟種子を使用し、酵素処理により、高い睡眠の質改善作用を示す例は見当たらない。
【0007】
【文献】特開2014-24774号公報
【文献】再表2013/051727号公報
【文献】特開2018-43948号公報
【文献】特開2015-218119号公報
【文献】特開2015-214518号公報
【文献】特開2013-82641号公報
【文献】特開2004-51533号公報
【文献】平成28年国民健康・栄養調査
【文献】平成27年国民健康・栄養調査
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
かかる現状に鑑み、本発明者らは、睡眠の質を予防及び/又は改善するための、安全かつ安定な素材を開発し、これを産業上有効活用できる態様の組成物を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明者らは、睡眠の質を改善する素材について鋭意検討を重ねた結果、オクラの種子の酵素分解物から採取する抽出物が有効であり、更には、これを飲食品、医薬品、医薬部外品、飼料等の分野において有効利用できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明によれば、アオイ科トロロアオイ属に属するオクラ(Abelmoschus esculentus)の種子の酵素分解物由来の抽出物を含有してなる睡眠の質改善剤が提供される。
【0011】
本発明の睡眠の質改善剤において、オクラの種子は完熟した種子であることが望ましく、酵素分解物の酵素はアルカリ性プロテアーゼ及び/又は中性プロテアーゼであることが好ましく、アルカリ性プロテアーゼであることがさらに好ましい。また、抽出物は前記酵素分解物の水抽出物であることが望ましい。
【0012】
本発明によれば、前記睡眠の質改善剤において、更に前記オクラの完熟した種子の酵素による酵素分解物の水性成分を抽出した後、加熱し、酵素失活させることが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る前記オクラの完熟種子の酵素加水分解物から得られる抽出物は品質安定性に優れ、睡眠の質を改善し、特に疲労回復、睡眠時間の延長に寄与する効果を奏する。かかる効果は、本発明の睡眠の質改善剤を経口的に摂取又は投与することによって顕著に発現される。
したがって、本発明の前記剤はとりわけ飲食品、医薬品、医薬部外品、飼料等の分野において、前記剤の態様のままで又は前記分野の従来の各種製品に配合した形態で、睡眠の質改善のために有効利用することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明を詳細に説明する。まず、本発明の睡眠の質改善剤は、オクラの種子の酵素分解物から採取される抽出物を含有してなることを特徴とする。
【0015】
オクラは、一般に、莢の形状が五角形、八角形、丸形等の品種があり、色が緑色、紫紅色、白色等の品種がある。本発明に係るオクラは、これらの種類に制限はなく、任意のものを使用することが可能である。
【0016】
本発明では、前記オクラの完熟した種子を原料とすることが望ましい。完熟した種子とは、植物体が成長した果実(莢)から収穫したり自然発生的に飛散する種子を指し、濃緑色~黒褐色で、直径5mm前後のサイズのものであり、播種すれば発芽する能力を有するものである。一方、未熟な種子は、成長途上にある莢の中に包含されており、白色~黄白色の約2~4mm径のものであり、通常は、莢とともに食用に供せられる。オクラの完熟種子は、オクラを栽培するために種苗会社から市販されており、本発明ではこれを用いるのが簡便である。
【0017】
オクラ種子の酵素分解物は、次のように加工処理して製造することができる。すなわち、オクラ種子を粉砕して水分散液とし、これに対種子当たり約0.1~約5質量%、より好ましくは約0.5~約2質量%の蛋白質加水分解酵素を添加して、常温ないしは加温(約30~約90℃、より好ましくは約40~約60℃)下、静置又は適宜に撹拌して、約10分~数日間、より好ましくは30分~数時間、加水分解処理を行わせる。該処理後、常法により酵素を加熱失活、次いで遠心分離又は&#27818;過処理して不溶物を分離し、望ましくは常温ないしはそれ以下の低温で濃縮、乾燥処理あるいは凍結乾燥処理することによって製造することができる。なお、本発明では、前記水分散液に代えて、前述のように処理して得られるオクラ種子の抽出物又は抽出残渣を水で溶解ないしは分散させたものを用いて、同様に酵素処理してもよい。
【0018】
前記蛋白質加水分解酵素は、いかなる種類やタイプのものでも使用することが可能であるが、本発明においては、アルカリ性プロテアーゼ及び/又は中性プロテアーゼが好ましく、アルカリ性プロテアーゼがより一層望ましい。ここで、アルカリ性プロテアーゼは、基質のpHが概ね6.5~12で作用を示すものであれば使用することができ、中性プロテアーゼは、基質のpHが概ね5~8で作用を示すものであれば差し支えない。また、各プロテアーゼは、1種のみならず2種以上を組み合わせて使用してもよく、後述するような市販品を用いるのが簡便である。
【0019】
アルカリ性プロテアーゼとして以下の具体例を挙げることができる。但し、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
「プロチンSD-AY10」、「プロテアーゼP「アマノ」3SD」、「プロレザー(登録商標)FG-F」(以上、天野エンザイム(株)製)、「アルカラーゼ(登録商標)2.4LFG」(ノボザイムズ社製)、「オリエンターゼ(登録商標)22BF」(エイチビィアイ(株)製)、「アロアーゼ(登録商標)XA-10」(ヤクルト薬品工業(株)製)、「スミチーム(登録商標)MP」(新日本化学工業(株)製)、「ビオプラーゼOP、SP-20FG、AL-15FG、30G、APL-30及び30L」(ナガセケムテックス(株)製)、「OPTIMASE(登録商標)PR89L」、「MALTIFECT(登録商標)PR6L」(以上、ダニスコUS社製)、「プロティナーゼK」、「キモトリプシン」(以上、ロシュ社製)等。
【0020】
中性プロテアーゼとして次のものを例示することができるが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
「Flavourzyme(登録商標)」、「PROTAMEX(登録商標)MG」、「Neutrase」(以上、ノボザイムズ社製)、「パンチダーゼ(登録商標)P及びMP」、「アロアーゼ(登録商標)AP-10、NP-10及びNS」(以上、ヤクルト薬品工業(株)製)、「ヌクレイシン(登録商標)」、「オリエンターゼ(登録商標)10NL及び90N」(以上、エイチビィアイ(株)製)、「プロチンP」(大和化成(株)製)、「プロテアーゼA「アマノ」G」、「パパインW40」、「ブロメラインF」(以上、天野エンザイム(株)製)、「スミチーム(登録商標)LP及びLPL」(新日本化学工業(株)製)、「食品用精製パパイン」、「デナチームAP」(以上、ナガセケムテックス(株)製)、「トリプシン」(ロシュ社製)等。
オクラ種子のスプラウトは、公知の方法により種子を発芽、かいわれ型に生育させ、緑葉が生じて茎丈が約5~15cmになるまで栽培したものを収穫し、水洗後、乾燥処理あるいは凍結乾燥処理することによって製造することができる。
【0021】
前述のように処理して得られる前記加工物は、オクラ種子に含まれる蛋白質、多糖蛋白複合体、多糖等及び/又はこれらが加水分解されたペプチド類、アミノ酸類、オリゴ糖類、単糖ないしはオリゴ糖類とペプチド又はアミノ酸との結合体等のさまざまな成分を含有する極めて複雑な組成物であると推察している。
【0022】
本発明の睡眠の質改善剤は、好適な態様として、固体状(粉末や顆粒)、ゲル状(ゼリー)、ペースト状又は液体状(飲料やドリンク)に成形した飲食品、医薬品、動物飼料等の製品とすることが可能である。また、これらの製品を製造するために使用される公知の添加物(界面活性剤、増粘剤、酸化防止剤、着色剤、香料等)や本発明の趣旨に反しない公知の素材(線維芽細胞増殖促進作用、コラーゲンやヒアルロン酸等の細胞外成分産生促進作用、皮膚老化防止作用、美肌促進作用等が公知の動植物由来の素材等)を適宜に併用して常法により前記各種製品とすることが可能である。
【0023】
睡眠の質改善作用が既知の素材として、前記の特許文献に記載のもの以外に、グリシン、トリプトファン、γ-アミノ酪酸、テアニン等のアミノ酸及びその誘導体、ラフマ、アスパラガス、クワンソウ、セイヨウオトギリソウ、セイヨウカノコソウ、カジメ等の植物や藻類の乾燥物又は抽出物、カルシウム、ビタミンB群等を例示できる。尚、本発明はこれらの例示によって何ら限定されるものではない。
【0024】
本発明においては、前述した睡眠の質改善剤をそのままの形態で飲食品、医薬品、医薬部外品、飼料、その他産業分野の様々な製品として利用することができ、あるいは該各種製品の配合原料の一部として使用する態様でも利用できる。とりわけ睡眠の質を改善するための経口組成物となすことが好ましく、この経口組成物の最も好適な態様は飲食品である。この例を以下に述べるが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0025】
飲食品の具体例として、野菜ジュース、果汁飲料、清涼飲料、茶等の飲料類、即席麺、スープ、ゼリー、プリン、ヨーグルト、ケーキプレミックス製品、菓子類、ふりかけ、味噌、醤油、ソース、ドレッシング、マヨネーズ、植物性クリーム、焼肉用たれや麺つゆ等の調味料、麺類、うどん、蕎麦、スパゲッティ、ハムやソーセージ等の畜肉魚肉加工食品、ハンバーグ、コロッケ、ふりかけ、佃煮、ジャム、牛乳、クリーム、バター、スプレッドやチーズ等の粉末状、固形状又は液状の乳製品、マーガリン、パン、ケーキ、クッキー、チョコレート、キャンディー、グミ、ガム、ゼリー等の各種一般加工食品のほか、粉末状、顆粒状、丸剤状、錠剤状、ソフトカプセル状、ハードカプセル状、ペースト状又は液体状の栄養補助食品、特定保健用食品、機能性食品、健康食品、濃厚流動食や嚥下障害用食品の治療食等を挙げることができる。
【0026】
これらの飲食品を製造するには、本発明の睡眠の質改善剤と公知の原材料を用い、あるいは公知の原材料の一部を前記の睡眠の質改善剤で置き換え、常法によって製造すればよい。例えば、本発明の睡眠の質改善剤を、必要に応じてグルコース(ブドウ糖)、デキストリン、乳糖、澱粉又はその加工物、セルロース粉末等の賦形剤、ビタミン、ミネラル、動植物や魚介類の油脂、たん白(動植物や酵母由来の蛋白質、その加水分解物等を含む)、糖質、色素、香料、酸化防止剤、界面活性剤、その他の食用添加物、各種栄養機能成分を含む粉末やエキス類等の食用素材とともに混合して粉末、顆粒、ペレット、錠剤等の形状に加工したり、常法により前記例の一般加工食品に加工処理したり、これらを混合した液状物をゼラチン、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース等の被覆剤で被覆してカプセルに成形したり、飲料(ドリンク類)の形態に加工して、栄養補助食品や健康食品として利用することは好適である。とりわけ錠剤、カプセル剤やドリンク剤が望ましい。
【0027】
本発明の飲食品、医薬品、医薬部外品、飼料を製造するには、前記の公知添加物を適宜選択し、これに本発明に係る前記水性成分を所定量加え、通常の製造法により加工処理すればよい。ここで、本発明に係る前記水性成分の配合量は約0.01重量%~約90重量%、より望ましくは約0.1重量%~約70重量%である。約0.01重量%を下回ると本発明の皮膚外用剤が所望効果を発現しない場合があり、約90重量%を超えると皮膚外用剤、飲食品、医薬品、医薬部外品、飼料としての通常の剤型を加工し難くなることがある。本発明の皮膚外用剤は、その用途目的から、肌の前記トラブルを予防及び/又は改善するために皮膚や毛髪・頭皮に塗布したり接触させる方法で使用することができる。
又、本発明の飲食品、医薬品、医薬部外品、飼料は、これを投与又は経口的に摂取する態様で利用する。経口摂取又は投与する場合の本発明の線維芽細胞増殖促進剤の好適な量の目安は、該剤に含まれる前記水抽出物ベースで、ヒト成人1日あたり約10mg~約1,000mg、望ましくは約30mg~約500mg、更に望ましくは約50mg~約300mgである。
【0028】
又、本発明の睡眠の質改善剤をペットフードや家畜用飼料に適用するには、前記飲食品の場合と同様に、公知の各種飼料や飲用水に配合したり、公知の原材料、添加物とともに錠剤状、顆粒状、カプセル状等の製剤形態のものに加工することができる。これらの場合、本発明の睡眠の質改善剤の配合量及び摂取量は、前記水性成分の含量として約0.01質量%~約90質量%、より望ましくは約1質量%~約50質量%であり、1日あたりの摂取量の目安は、前記水性成分を基準として、適用動物の体重(kg)あたり約0.1mg~約100mg、より望ましくは約0.5mg~約50mgである。
なお、これらの飲食品、医薬品、医薬部外品、飼料の使用にあたっては、本発明の趣旨を考慮して利用することが肝要である。
【実施例
【0029】
次に、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。なお、以下において、特記しない限り部や%は質量基準である。
【0030】
製造例1
鹿児島県指宿産オクラの完熟種子をミルで粗粉砕し、この100部に蒸留水300部を加えて撹拌しながら58℃に加熱して分散液(pH7.5)を調製し、これに蛋白質分解酵素として「オリエンターゼ22BF」(エイチビィアイ(株)製、商品名、アルカリ性プロテアーゼ)1部を添加して5時間ゆるやかに撹拌を続けた。この後、酵素を失活させ(80℃で30分間)、不溶物を遠心分離で除去し、凍結乾燥して抽出物(以下、オクラ種子抽出物という。)を得た。
【0031】
試験例
前記製造例で得たオクラ種子抽出物による睡眠の質への影響を以下に述べる方法で調べた。
【0032】
試験例1:オクラ種子抽出物継続摂取による睡眠の質改善作用(動物試験)
動物への睡眠の質改善作用を調べるためマウスを使用した。6週齢雄性ICRマウス(日本エスエルシー株式会社)を1週間予備飼育した後、1群5匹とし、蒸留水を投与する対照群、オクラ種子抽出物250mg/kg体重/日投与群、オクラ種子抽出物500mg/kg体重/日投与群及びラフマ抽出物500mg/kg体重/日投与群(VENETRON、常磐植物化学研究所社製)(比較試料とする。)に群分けした。共通飼料を自由摂取させ、それぞれの試料を毎日経口投与し、6日目の夜に一晩絶食した。7日目に各試料を経口投与した30分後、ペントバルビタールナトリウム(25mg/kg体重)(共立製薬社製)を腹腔内投与した。ビデオカメラを用いてマウスを撮影し、正向反射を消失した時点を入眠とし、また、正向反射を回復した時点を覚醒とした。入眠までの時間を睡眠潜時、入眠から覚醒までの時間を睡眠時間として評価した。結果は平均値±標準誤差(n=5)で表わした(表4)。
【0033】
この結果を表1に示す。表1のデータから、本発明に係るオクラ種子抽出物の継続摂取により用量依存的に睡眠潜時を短縮することが示された。その効果は、対照群と比較して、オクラ種子抽出物を500mg/kg体重/日で投与した群では約2倍睡眠潜時を短縮していた。睡眠時間については、対照群と比較して、オクラ種子抽出物継続摂取により用量依存的に延長することが示された。その効果は、対照群と比較して、オクラ種子抽出物を500mg/kg体重/日で投与した群では約2倍睡眠時間を延長していた。比較試料についても同様の効果が認められ、この試験の妥当性が示された。又、オクラ種子抽出物と比較試料の睡眠の質に対する効果は、同程度であった。
【0034】
【表1】
【0035】
試験例2:オクラ種子抽出物継続摂取による睡眠の質改善作用(ヒト試験)
試験に参加することに同意が得られた、健常男女42名に対して、PSQI(Pittsburgh Sleep Quality Index)を用いてスクリーニングを実施した。PSQIは、睡眠障害を判定する質問票であり、PSQIスコア5.5以上で睡眠障害の疑いがあるとされている。PSQIスコア5.5以上の方を、睡眠に不満がある方と定義した。PSQIスコア5.5以上の方11名(男性5名、女性6名)を採用し、単盲検クロスオーバー試験プラセボ対照単盲検クロスオーバー試験を実施した。マルトデキストリン(プラセボ)若しくは、前記試料オクラ種子抽出物を250mgを充填したゼラチンカプセルを睡眠1時間前に1日1カプセル摂取してもらい、これを5日間続けた。1週間のウォッシュアウト期間の後、摂取サンプルを変更し、同様に5日間摂取させた。各試料摂取5日後の朝、睡眠の質の評価に使用されるOSA睡眠調査票MA版に回答してもらった。睡眠の質を以下の5因子、因子I(起床時眠気)、因子II(入眠と睡眠維持)、因子III(夢み)、因子IV(疲労回復)、因子V(睡眠時間)及びその平均得点により評価した。データは、平均値±標準誤差(n=11)で表わした(表2)。
【0036】
この結果を表2に示す。表2のデータから、本発明に係るオクラ種子抽出物の継続摂取により、因子IV(疲労回復)及び因子∨(睡眠時間)が有意に改善することが示された。更に、全体的な睡眠の質の改善を示す平均得点は、本発明に係るオクラ種子抽出物の継続摂取により、有意に改善されることが示された。
【0037】
【表2】
【0038】
試作例1
本発明の睡眠の質改善剤として製造例1で得たオクラ種子抽出物をカプセル充填機に供して、常法により1粒あたり内容量が250mgのゼラチン被覆ハードカプセル製剤を試作した。その他の試料についても同様に処理して5種類のゼラチン被覆ハードカプセル製剤を試作した。これらのカプセル製剤は経口摂取が可能な栄養補助食品、医薬品等として使用することができる。
【0039】
試作例2
本発明の睡眠の質改善剤として製造例1で得たオクラ種子抽出物:150部(質量基準。以下同様)、ミツロウ:40部及び月見草油(英国エファモール社製):80部を約50℃に加熱混合して均質にした後、カプセル充填機に供して、常法により1粒あたり内容量が250mgのゼラチン被覆ソフトカプセル製剤を試作した。これらのカプセル製剤は経口摂取可能な栄養補助食品として使用することができる。
【0040】
試作例3
本発明の睡眠の質改善剤として製造例1で得たオクラ種子抽出物:30部、緑茶抽出物(ビーエイチエヌ(株)製):0.5部、コーンスターチ(日本コーンスターチ(株)製):105部、リン酸三カルシウム(米山化学工業(株)製):50部及びリボフラビン(DSMニュートリション・ジャパン(株)製):7部を混合機に仕込み、10分間攪拌混合した。この混合物を直打式打錠機に供して直径7mm、高さ4mm、質量150mg/個の素錠を作成し、ついでコーティング機でシェラック被膜を形成させて錠剤形状の食品を試作した。
【0041】
試作例4
市販の栄養ドリンク100mLに本発明の睡眠の質改善剤として製造例1で得たオクラ種子抽出物:250mg加えて十分に混合し飲料を試作した。これは冷蔵庫で1年間保存しても外観及び風味に異状及び違和感は認められなかった。尚、本品は、睡眠の質の予防及び/又は改善、疲労回復のために使用することができる。
【0042】
試作例5
即席麺の製造工程において、公知の原料に本発明の睡眠の質改善剤として製造例1で得たオクラ種子抽出物を300mg加えて即席麺を試作した。これは常温で6ヵ月間保存しても外観及び風味に異状及び違和感は認められなかった。尚、本品は、睡眠の質の予防及び/又は改善、疲労回復のために使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の、オクラの種子の酵素分解物由来の抽出物を含有してなる睡眠の質改善剤は、これを経口摂取することにより睡眠の質改善作用及び疲労回復作用を有するため、睡眠の質の低下に起因する症状を改善するための飲食品、医薬品、医薬部外品、飼料等に有効利用することができる。