(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-21
(45)【発行日】2023-03-02
(54)【発明の名称】両方向引き出し型スライドレール
(51)【国際特許分類】
A47B 88/493 20170101AFI20230222BHJP
【FI】
A47B88/493
(21)【出願番号】P 2019031925
(22)【出願日】2019-02-25
【審査請求日】2021-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】390002255
【氏名又は名称】日本アキュライド株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 正彦
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0152503(US,A1)
【文献】特開2000-342365(JP,A)
【文献】米国特許第04662761(US,A)
【文献】独国実用新案第202012101928(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 88/493
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1アウターメンバーと第2アウターメンバーと、第1アウターメンバーにボールにて摺動自在に保持される第1インナーメンバーと、第2アウターメンバーにボールにて摺動自在に保持される第2インナーメンバーと、第1アウターメンバー側のボールを回転自在に保持する第1ボールリテーナと、第2アウターメンバー側のボールを回転自在に保持する第2ボールリテーナとを有し、第1インナーメンバーと第2インナーメンバーを一体的に形成し、該インナーメンバーに対して、第1アウターメンバーと第2アウターメンバーのそれぞれが前後方向両側に摺動可能とされる両方向引き出し型スライドレールにおいて、スライドレールの収縮状態でインナーメンバーの単独での移動を防止するとともに、伸長移動するアウターメンバーによって、該伸長移動側と反対方向側に、インナーメンバーの最収縮状態を越えてインナーメンバーが伸長することを防止するストッパー機構が作動する移動防止ストッパーを有し、移動防止ストッパーは、インナーメンバー側に固定され
る固定部と、少なくとも該固定部からスライドレールの伸長側に延伸する
弾性部と、
弾性部先端で第1アウターメンバーあるいは第2アウターメンバーの端部に係止する係止体を有し、スライドレールの伸長時に、第1アウターメンバーと第2アウターメンバーの互いに向かい合う側の屈折縁であって、かつ、互いに上下方向で向かい合う側の面で押圧される受圧部を備え、該受圧部の押圧によって、ストッパー機構が作動するもので、該受圧部は、スライドレールの収縮状態で、屈折縁の内、受圧部を押圧する面に対向する反対面側よりも、押圧面の対向側向かって突出していることを特徴とする両方向引き出し型スライドレール。
【請求項2】
第1アウターメンバーと第2アウターメンバーがそれぞれ上下方向に離れて配置され、第1インナーメンバーと第2インナーメンバーが、該アウターメンバーの配置に合わせて上下方向に配置された状態で一体移動可能に連結されスライドレールが形成されるとともに、移動防止ストッパーが、上下方向に配置される第1インナーメンバーと第2インナーメンバーの上下間に設けられる請求項1に記載の両方向引き出し型スライドレール。
【請求項3】
移動防止ストッパーの受圧部を押圧する第1アウターメンバー、第2アウターメンバーの押圧面は、ボール摺動溝と対向するアウターメンバーの屈折縁の外面側としたことを特徴とする請求項1、あるいは、請求項2に記載の両方向引き出し型スライドレール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1アウターメンバーと第2アウターメンバーと、第1アウターメンバーにボールにて摺動自在に保持される第1インナーメンバーと、同様に第2アウターメンバーにボールにて摺動自在に保持される第2インナーメンバーと、第1アウターメンバー側のボールを回転自在に保持する第1ボールリテーナと、第2アウターメンバー側のボールを回転自在に保持する第2ボールリテーナとを有し、第1インナーメンバーと第2インナーメンバーを連結することにより、スライドレールを2段階に伸長させ、スライド量を大きくしたダブルスライドレールであって、前後方向の両方向に引き出し(伸長・収縮)可能なスライドレールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上記のスライド量を大きくしたダブルスライドレールで前後方向の両方向に引き出し(伸長・収縮)可能なスライドレールが本願の出願人によって実施されている(特許文献1参照)。このスライドレールには、スライドレールが引き出された伸長状態からスライドレールを収縮させた場合に発生するインナーメンバーが伸長側と反対側に突き出る現象を前後端に取り付けられた突出防止ストッパーで規制する機能が装備されている。
しかしながら、該機能は、インナーレールの突出を防止するだけのものであるため、スライドレールの最収縮状態を維持できないため、スライドレールとは別に、スライドレールを使用する物品に最収縮状態を維持するストッパーを設ける必要があった。また、スライドレールの伸長状態から収縮時に、スライドレールの最収縮状態を越え、スライドレールが反対側に伸長してしまうといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記問題に鑑み、収縮状態を維持可能な両方向引き出し型のスライドレールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する為、本発明が第1の手段として構成したところは、第1アウターメンバーと第2アウターメンバーと、第1アウターメンバーにボールにて摺動自在に保持される第1インナーメンバーと、第2アウターメンバーにボールにて摺動自在に保持される第2インナーメンバーと、第1アウターメンバー側のボールを回転自在に保持する第1ボールリテーナと、第2アウターメンバー側のボールを回転自在に保持する第2ボールリテーナとを有し、第1インナーメンバーと第2インナーメンバーを一体的に形成し、該インナーメンバーに対して、第1アウターメンバーと第2アウターメンバーのそれぞれが前後方向両側に摺動可能とされる両方向引き出し型スライドレールにおいて、スライドレールの収縮状態でインナーメンバーの単独での移動を防止するとともに、伸長移動するアウターメンバーによって、該伸長移動側と反対方向側に、インナーメンバーの最収縮状態を越えてインナーメンバーが伸長することを防止するストッパー機構が作動する移動防止ストッパーを有し、移動防止ストッパーは、インナーメンバー側に固定される固定部と、少なくとも該固定部からスライドレールの伸長側に延伸する弾性部と、弾性部先端で第1アウターメンバーあるいは第2アウターメンバーの端部に係止する係止体を有し、スライドレールの伸長時に、第1アウターメンバーと第2アウターメンバーの互いに向かい合う側の屈折縁であって、かつ、互いに上下方向で向かい合う側の面で押圧される受圧部を備え、該受圧部の押圧によって、ストッパー機構が作動するもので、該受圧部は、スライドレールの収縮状態で、屈折縁の内、受圧部を押圧する面に対向する反対面側よりも、押圧面の対向側向かって突出しているものである。
【0006】
上記課題を解決する為、本発明が第2の手段として構成したところは、第1の手段に加え、第1アウターメンバーと第2アウターメンバーがそれぞれ上下方向に離れて配置され、第1インナーメンバーと第2インナーメンバーが、該アウターメンバーの配置に合わせて上下方向に配置された状態で一体移動可能に連結されスライドレールが形成されるとともに、移動防止ストッパーが、上下方向に配置される第1インナーメンバーと第2インナーメンバーの上下間に設けられるものである。
【0007】
上記課題を解決する為、本発明が第3の手段として構成したところは、第1の手段、あるいは、第2の手段に加え、移動防止ストッパー受圧部を押圧する第1アウターメンバー、第2アウターメンバーの押圧面は、ボール摺動溝と対向するアウターメンバーの屈折縁の外面側としたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の第1の手段として構成したところによると、スライドレールの収縮状態の維持と、伸長したスライドレールが収縮した時にスライドレールの収縮状態で一旦停止させることが可能となる。
【0009】
本発明の第2の手段として構成したところによると、第1の手段として構成したところに加え、第1アウターメンバーとインナーメンバー体と第2アウターメンバーの上下間に移動防止ストッパーを納めることができるので、移動防止ストッパーの水平(左右)方向の寸法を薄くすることができるので、スライドレール全体として水平(左右)方向の寸法を薄くすることができる。
【0010】
本発明の第3の手段として構成したところによると、第1の手段、あるいは、第2の手段として構成したところに加え、簡単な構成で、上下方向に離間して配置された第1インナーメンバーと第2インナーメンバー間に移動防止ストッパーを配置できる。
また、ボール摺動面を使用しないので、ボール摺動面を傷つけることや、ボール摺動面に塗布されたグリスが除去されることなどを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図11】スライドレールの第2実施例を示す側面図。
【
図12】スライドレールの第3の実施例を示す側面図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
第1アウターメンバーと第2アウターメンバーと、第1アウターメンバーにボールにて摺動自在に保持される第1インナーメンバーと、第2アウターメンバーにボールにて摺動自在に保持される第2インナーメンバーと、第1アウターメンバー側のボールを回転自在に保持する第1ボールリテーナと、第2アウターメンバー側のボールを回転自在に保持する第2ボールリテーナとを有し、第1インナーメンバーと第2インナーメンバーとを連結する連結部材にて第1インナーメンバーと第2インナーメンバーを一体的に形成し、該インナーメンバーに対して、第1アウターメンバーと第2アウターメンバーのそれぞれが前後方向両側に摺動可能とされる両方向引き出し型スライドレールにおいて、第1アウターメンバーと第2アウターメンバーをそれぞれ上下方向に離して配置し、第1インナーメンバーと第2インナーメンバーを、該アウターメンバーの配置に合わせて上下方向に配置した状態で一体移動可能に連結しスライドレールを形成し、スライドレールの収縮状態でインナーメンバーの単独での移動を防止するとともに、伸長移動するアウターメンバーによって、該伸長移動側と反対方向側に、インナーメンバーの最収縮状態を越えてインナーメンバーが伸長することを防止するストッパー機構が作動する移動防止ストッパーを上下方向に配置される第1インナーメンバーと第2インナーメンバーの上下間に固定部で固定し、移動防止ストッパーに、該固定部からスライドレールの伸長側に延伸する弾性部と、弾性部先端で第1アウターメンバーあるいは第2アウターメンバーの端部に係止する係止体設け、さらに、スライドレールの伸長時に、第1アウターメンバーと第2アウターメンバーの互いに向かい合う側の屈折縁であって、かつ、互いに上下方向で向かい合う側の面で押圧される受圧部を設け、該受圧部の押圧によって、ストッパー機構が作動するものとし、該受圧部を、スライドレールの収縮状態で、屈折縁の内、受圧部を押圧する面に対向する反対面側よりも、押圧面の対向側向かって突出させ、移動防止ストッパーの受圧部を押圧する第1アウターメンバー、第2アウターメンバーの押圧面を、ボール摺動溝と対向するアウターメンバーの屈折縁の外面側とする。
【実施例】
【0013】
以下、本発明を添付図面に基づいて説明する。 尚、便宜的に
図7における左右方向、すなわち摺動方向を前後方向、
図3における上下方向を高さ方向とし、
図3における左右方向を水平方向として説明する。
図1において、符号100は、本発明のスライドレールを示し、スライドレール100は、第1アウターメンバー1と、第1アウターメンバー1から上下方向に離間して設けられた第2アウターメンバー2と、第1アウターメンバー1に嵌挿自在に設けられた第1インナーメンバー3と、第2アウターメンバー2に嵌挿自在に設けられた第2インナーメンバー4と、第1アウターメンバー1と第1インナーメンバー3間に設けられた第1ボールリテーナ5と、第2アウターメンバー2と第2インナーメンバー4間に設けられた第2ボールリテーナ6と、第1アウターメンバー1と第1インナーメンバー3間で第1ボールリテーナ5に回転自在に保持されたボール5A・・・と、第2インナーメンバー4と第2アウターメンバー2間で、第2ボールリテーナ6に回転自在に保持されたボール6A・・・と、第1インナーメンバー3と第2インナーメンバー4を連結して構成されるインナーメンバー体7とインナーメンバー体7の前後端部に設けられた第1移動防止ストッパー8、第2移動防止ストッパー9より構成されている。
【0014】
第1アウターメンバー1は、帯状金属板からなる基板11と、該基板11の短手側両端部を内向き円弧状に湾曲して形成された内面長手方向にボール摺動溝12、12を有する屈折縁13、13より断面略C字形に形成されている。そして、基板11の前後端部に、基板11の一部を内方に折り曲げた、第1インナーメンバー3のストッパー14、14が設けられている。
【0015】
第2アウターメンバー2は、帯状金属板からなる基板21と、該基板21の短手側両端部を内向き円弧状に湾曲して形成された内面長手方向にボール摺動溝22、22を有する屈折縁23、23より断面略C字形に形成されている。そして、基板21の前後端部に、基板21の一部を内方に折り曲げた、第2インナーメンバー4のストッパー24、24が設けられている。
尚、実施例においては、第2アウターメンバー2は、第1アウターメンバー1と同型であるが、スライドレールを使用する物品の仕様により、長さや上下高さが変更されることがある。
【0016】
第1インナーメンバー3は、第1アウターメンバー1より短い長さで、第1アウターメンバー1に挿入可能な大きさの帯状金属板よりなる基板31と、基板31の短手側の両端部を外向き円弧状に湾曲して形成された、外面長手方向にボール摺動溝32、32を有する屈折縁33、33より、断面C字形に形成されている。
そして、基板31の前後端が折り曲げられて、第1ボールリテーナ5の伸長側端部と接触するストッパー部34、34が形成される。
【0017】
第2インナーメンバー4は、第2アウターメンバー2より短い長さで、第2アウターメンバー2に挿入可能な大きさの帯状金属板よりなる基板41と、基板41の短手側の両端部を外向き円弧状に湾曲して形成された、外面長手方向にボール摺動溝42、42を有する屈折縁43、43より、断面C字形に形成されている。
そして、基板41の前後端が折り曲げられて、第2ボールリテーナ6の伸長側端部と接触するストッパー部44、44が形成される
尚、実施例においては、第2インナーメンバー4は、第1インナーメンバー3と同型であるが、スライドレールを使用する物品の仕様により、アウターメンバーに合わせて、長さや上下高さが変更されることがある。
【0018】
そして、第1インナーメンバー3と第2インナーメンバー4は、インナーメンバー連結部材70に固定されることにより一体的に形成されて、インナーメンバー体7とされる。
インナーメンバー連結部材70は、鋼板製で第1インナーメンバー3の摺動方向長さより若干短い長さに形成される板状長方形の第1インナーメンバー連結部701と、第1インナーメンバー連結部701の下端部を水平に折り曲げ形成されるインナーメンバー体補強部702と、インナーメンバー体補強部702の第1インナーメンバー連結部701側端の他方端で下方に折り曲げられ形成される第2インナーメンバー4の摺動方向長さより若干短い長さに形成される板状長方形の第2インナーメンバー連結部703で形成される(
図4参照)。
【0019】
インナーメンバー体7は
図3、
図4に示されるように、インナーメンバー連結部材70の第1インナーメンバー連結部701のインナーメンバー体補強部702側の上端寄りに第1インナーメンバー3が基板31部で固定され、第2インナーメンバー連結部703のインナーメンバー体補強部702側の下端寄りに第2インナーメンバー4が基板41部で固定され構成される。
すなわち、第1インナーメンバー3と第2インナーメンバー4は、インナーメンバー連結部材70を介して上下方向に並んで配置されることとなる。
【0020】
第1ボールリテーナ5は、帯状金属板にて、上記第1アウターメンバー1、第1インナーメンバー3間に挿入可能な大きさで、かつ、第1アウターメンバー1の3分1程度の長さとされ、基板51と、屈折縁52、52より断面コ字状に形成され、屈折縁52、52の長手方向数箇所にそれぞれ複数個のボール5A・・・が回転自在に保持される。
【0021】
第2ボールリテーナ6は、帯状金属板にて、上記第2アウターメンバー2、第2インナーメンバー4間に挿入可能な大きさで、かつ、第2アウターメンバー2の3分1程度の長さとされ、基板61と、屈折縁62、62より断面コ字状に形成され、屈折縁62、62の長手方向数箇所にそれぞれ複数個のボール6A・・・が回転自在に保持される。
尚、実施例においては、第2ボールリテーナ6は、第1ボールリテーナ5と同型であるが、スライドレールを使用する物品の仕様により、アウターメンバーに合わせて、長さや上下高さが変更されることがある。
【0022】
第1移動防止ストッパー8と第2移動防止ストッパー9は同型であるので第1移動防止ストッパー8についてのみ説明する。
第1移動防止ストッパー8は、ストッパー本体80とストッパー本体80に回転軸802、802を介して回転自在に軸支されるローラー801、801で構成される。
【0023】
ストッパー本体80は、
図6で示されるように、固定貫通孔811a、811aを有し、上下方向に離間して配置する脚部811、811と、脚部811、811の離間部によって形成される切り欠き812を有したコ字状を成す固定部81と、固定部81からスライドレールの引き出し方向に延伸する角型棒状の弾性部82と、弾性部82の先端部で左右方向に離間して配置され、それぞれが上下方向に延伸する腕部831、831と、腕部831、831に水平方向に貫通して設けられる固定軸孔831a、831aと、同じく腕部831、831にローラー801、801が挿入可能な凹部832が形成されるローラー保持部83が合成樹脂にて一体的に形成されているものである。
【0024】
ローラー801は、合成樹脂性で中心に貫通軸孔801aを有した円筒状に形成されるものである。
そして、ストッパー本体80の凹部832の所定の位置に、ローラー801、801を挿入し、固定軸孔831a、831aから回転軸802を差込み、ローラー801の貫通軸孔801aを貫通させ、対向側の固定軸孔831a、831aまで差込み、回転軸802の先端を回転軸802が腕部831、831から脱落しないようにつぶして固定する。この状態で、ローラー81は、水平軸を中心軸として回転可能にストッパー本体80に取り付けられる。
【0025】
第1アウターメンバー1に複数のボール5Aを保持した第1ボールリテーナ5が、第1アウターメンバー1内を摺動可能に取り付けられ、第1アウターメンバー1のストッパー14が切り起こされる。ストッパー14と第1ボールリテーナ5の端面が接触することにより第1ボールリテーナ5が第1アウターメンバー1の端面から脱落することを防止している。
【0026】
そして、上下で対向配置される複数のボール5A間にインナーメンバー体7の第1インナーメンバー3を第1ボールリテーナ5の端部からスライドさせながら挿入する。
そして、第1インナーメンバー3の端部のストッパー34を折り曲げる。前述のとおり、第1ボールリテーナ5が第1アウターメンバー1の端面から脱落することを防止しているから、ストッパー34と第1ボールリテーナ5の端面が接触することにより第1インナーメンバー3が第1アウターメンバー1の端面から脱落することを防止できる。
このようなボールリテーナでボールを保持したスライドレールの場合、アウターメンバーあるいはインナーメンバーの摺動移動量の約半分の移動量でボールリテーナもボールを転動させながら移動する。
【0027】
この状態で、インナーメンバー体7を固定側とした場合、第1アウターメンバー1は、第1インナーメンバー3の前後方向いずれにも突き出し摺動可能となる。
そして、第1ボールリテーナ5の摺動方向の端面が第1インナーメンバー3の摺動方向のストッパー34と接触し、第1ボールリテーナ5の移動が停止し、第1アウターメンバー1の摺動方向と反対側のストッパー14が第1ボールリテーナ5の摺動方向と反対側の端面に接触し、第1アウターメンバー1の移動が停止し、第1アウターメンバー1は第1インナーメンバー3に対して最大伸長状態となる。
当然ながら、第1アウターメンバー1を固定側とした場合、第1インナーメンバー3は、第1アウターメンバー1の前後方向いずれにも突き出し摺動可能となる。
尚、第1インナーメンバー3のストッパー34を無くして、第1インナーメンバー連結部701の端部も折り曲げ縁を設け、ストッパー34と同じ機能を持たせてもよい。
【0028】
そして、第2アウターメンバー2、第2ボールリテーナ6、第2インナーメンバー4も同様に組み付けられる。
前述のとおり、第1インナーメンバー3と第2インナーメンバー4は、インナーメンバー連結部材70を介して上下方向に並んで配置されているから、各インナーメンバーに合わせて第1アウターメンバー1と第2アウターメンバー2も上下方向に並んで配置される。
【0029】
そして、
図7に示すように第1アウターメンバー1とインナーメンバー体7と第2アウターメンバー2のそれぞれの前後方向の中心が一致した状態がスライドレール100の最収縮状態である。
この状態で、第1アウターメンバー1を固定側として、第2アウターメンバー2を移動側とした場合、第2アウターメンバー2を伸長させると前述の通り、第2インナーメンバー4に対して、第2アウターメンバー2が最伸長状態となる(
図8に示す状態)。そして、さらに第2アウターメンバー2を伸長させると、第2アウターメンバー2の収縮側のストッパー24によって第2インナーメンバー4(インナーメンバー体7)が伸長側に押し出される。第2インナーメンバー4(インナーメンバー体7)が伸長側に押し出されると第1インナーメンバー3が、固定側の第1アウターメンバー2に対して伸長側に摺動する。
そして、前述のとおり、第1インナーメンバー3が第1アウターメンバー1に対して最大伸長状態になり、スライドレール100は最大伸長状態となる(
図9に示す状態)。
第2アウターメンバー2を反対側に伸長させても同様の作用によってスライドレール100は反対側で最大伸長状態となるので、スライドレール100は両方に引き出すことが可能となる。
【0030】
スライドレール100を、このスライドレール100の最大伸長状態から収縮させていくと、インナーメンバー体7が最収縮状態を超えて収縮方向側に突き出してしまうことがあるので、このインナーメンバー体7の突き出しを第1移動防止ストッパー8と第2移動防止ストッパー9で防止する。
【0031】
第1移動防止ストッパー8を、固定部81の切り欠き812にインナーメンバー連結部材70のインナーメンバー体補強部702の端部が差し込まれるようにインナーメンバー連結部材70の前方端面から差し込む。この状態で、脚部811、811でインナーメンバー体補強部702を上下から挟み込んだ状態で、かつ、脚部811、811と第1インナーメンバー連結部701と、第2インナーメンバー連結部703のそれぞれのインナーメンバーの取り付け面側が面接触した状態となる。
そして、第1インナーメンバー連結部701と、第2インナーメンバー連結部にそれぞれ設けられた取り付け孔と、脚部811の固定貫通孔811aを使用して、適宜、リベットやネジなどでインナーメンバー体7とストッパー本体の固定部81は固定される。
【0032】
すなわち、脚部811、811でインナーメンバー体補強部702を上下方向から挟み込むので、第1移動防止ストッパー8の固定部81の上下方向の振れを防止でき、かつ、インナーメンバー体補強部702の水平方向の第1インナーメンバー連結部701の第1インナーメンバー3の取り付け側面と第2インナーメンバー連結部703の第2インナーメンバー4の取り付け側面間の寸法と、第1移動防止ストッパー8の脚部811の水平方向の厚み寸法は同じに設定され、第1インナーメンバー連結部701と第2インナーメンバー連結部703に脚部811、811が挟まれるように作用するから、第1移動防止ストッパー8の固定部81の水平方向の振れも防止できる。
【0033】
また、第1移動防止ストッパー8のローラー801、801は、固定部からそれぞれ上下方向に突出した状態となる。そして、ローラー801はアウターメンバーの端部に係止する係止体であって、スライドレール100が最収縮状態で、上側のローラー801の一部が第1アウターメンバー1の下側の屈折縁13の端面のすぐ前方に位置し、下側のローラー801の一部が第2アウターメンバー2の上側の屈折縁13の端面のすぐ前方に位置する。
このため、それぞれのアウターメンバーは、伸長するとローラー801に接触するので、アウターメンバーは容易には伸長できない。
【0034】
そして、インナーメンバー体7の前後方向の対向端側にも第1移動防止ストッパー8と同形の第2移動防止ストッパー9が第1移動防止ストッパー8と対称に取り付けられる。
この状態でスライドレール100は、第1アウターメンバー1と第2アウターメンバー2が上下方向に配置される。そのため、第1アウターメンバー1と第2アウターメンバー2が水平方向(左右方向)で重合することがないからスライドレールの水平方向(左右方向)の厚みを抑えることが可能である。合わせて、第1移動防止ストッパー8と第2移動防止ストッパー9の水平方向の厚みも、スライドレールの厚み寸法内に納まる寸法に設定される。
したがって、第1アウターメンバー1や第2アウターメンバー2に取り付けられる物品は、第1アウターメンバー1と第2アウターメンバー2が水平方向で重合する場合に比べおおよそ半分の厚みを考慮するだけでよく水平方向の寸法を大きく(広く)することが可能となる。
【0035】
第1移動防止ストッパー8と第2移動防止ストッパー9が取り付けられると、それぞれのローラー801、801が、第1アウターメンバー1の下側の屈折縁13の端面と第2アウターメンバー2の上側の屈折縁13の端面の伸長側に位置するから、アウターメンバーは容易には伸長できないとともに、インナーメンバー体7もアウターメンバーに対して容易には伸長できない。このインナーメンバー体7の場合、伸長すると伸長側と反対側のローラー801、801がアウターメンバーの端面に接触して、容易に伸長することを防止する。
また、本実施例では、上側のローラー801、801の最上点は、第1アウターメンバー1の屈折縁13のボール摺動溝12側より上方に飛び出し、下側のローラー801、801の最下点は、第2アウターメンバー2の屈折縁23のボール摺動溝22側より下方に飛び出すように設定されている。
【0036】
このように取り付けられた第1移動防止ストッパー8、第2移動防止ストッパー9は次のように作用する。
まず、第1アウターメンバー1を固定側として、第2アウターメンバー2を移動側とした場合、スライドレール100の最収縮状態(
図7に示す状態)で、インナーメンバー体7と第2アウターメンバー2が、ローラー801、801によって容易に移動できないようになっているのは前述の通りである。
そして、第2アウターメンバー2を伸長させると、第2アウターメンバー2の屈折縁23の端面が下側のローラー801に接触する。さらに移動させると、ローラー801は回転しながら上側に押し上げられ、ストッパー本体80の弾性部82が該押し上げ力に抗しながら上方に曲がるように弾性変形し、ローラー801が第2アウターメンバー2の屈折縁23の端面を乗り越え、ローラー801が第2アウターメンバー2の屈折縁23の端面から外れるため第2アウターメンバー2は伸長可能となる。
そして、弾性部82は弾性力によって元の状態に復元する力が働くので、該復元力によってローラー801は第2アウターメンバー2の屈折縁23に上面に押し付けられる(
図8に示す状態)。
【0037】
この下側のローラーが押し上げられた状態で、上側のローラー801は、第1アウターメンバー1の屈折縁13の伸長側端面の前方にさらに飛び出している。
したがって、インナーメンバー体7は、伸長側には摺動可能ではあるが、収縮側には、上側のローラー801が第1アウターメンバー1の屈折縁13の伸長側端面に接触し、かつ、下側ローラー801が、屈折縁23に上面に押し付けられていることから、上側のローラー801は下方に移動できないことから、移動できない。
そのため、第2アウターメンバー2を収縮させたとしても、インナーメンバー体7が最収縮状態を超えて収縮方向側に突き出してしまうことがない。
【0038】
そして、さらに第2アウターメンバー2を伸長させると、屈折縁23の上面でローラー801を転動させながら、第2アウターメンバー2は伸長していく。第2アウターメンバー2が最伸長し第2インナーメンバー4(インナーメンバー体7)が伸長側に押し出される(引っ張られる)と、収縮側の上側のローラー801が、第1アウターメンバー1の屈折縁13の端面に接触し、前述の伸長側の移動防止ストッパー8とは逆に下側に押し下げられる。そして、伸長側の移動防止ストッパー8と同様に弾性部82が弾性変形し、該ローラー801は、屈折縁13を下側でのり越え、弾性部82の復元力によって屈折縁13下面に押し付けられた状態となりインナーメンバー体7は伸長可能となる。
この状態から最伸長している第2アウターメンバー2を伸長させると、屈折縁13の下面でローラー801を転動させながら、インナーメンバー体7が伸長方向に摺動し、スライドレール100は最大伸長状態となる。
【0039】
このように、第1アウターメンバー1と第2アウターメンバー2の向かい会う側の屈折縁によってローラーは押圧される。本実施例の場合は、第1アウターメンバー1の下側の屈折縁と向かい合う第2アウターメンバー2の上側の屈折縁がローラーの押圧部であるが、
図11に示す第2実施例の場合は、第1アウターメンバー1の上側の屈折縁と向かい合う第2アウターメンバー2の下側の屈折縁が押圧面として設定される。
図12に示す第3実施例の場合は、第1インナーメンバー3と第2インナーメンバー4は背中合わせで対称に配置、連結されており、第1アウターメンバー1の上側の屈折縁と対角方向に向かい合う第2アウターメンバー2の下側の屈折縁が押圧面として設定され、スライドレールの前後方向の対向側では、第1アウターメンバー1の下側の屈折縁と対角方向に向かい合う第2アウターメンバー2の上側の屈折縁が押圧面として設定される。
【0040】
次に、スライドレール100の最大伸長状態から、第2アウターメンバー2を収縮させると、インナーメンバー体7に対して第2アウターメンバー2が収縮し、第1アウターメンバー1に対してインナーメンバー体7も収縮する。
これらの収縮時の動きは、スライドレールにかかっている負荷、荷重などにより一定な動きにならず、先に第2アウターメンバー2が収縮することや、インナーメンバー体7が先に収縮することや、第2アウターメンバー2とインナーメンバー体7が同時に収縮する場合がある。
【0041】
インナーメンバー体7に対して第2アウターメンバー2が最収縮状態となると、第2アウターメンバー2の屈折縁23の収縮側の端面が、収縮側の下側のローラー801に接触する。この時、インナーメンバー体7が第1アウターメンバー1に対して最収縮状態になっていないと、収縮側の第2移動防止ストッパー9は下方に押し下げられているので、第2アウターメンバー2は、収縮側の下側のローラー801を押し上げることが出来ず、第2アウターメンバー2はインナーメンバー体7に対して最収縮状態で停止する(
図10に示す状態)。
【0042】
インナーメンバー体7が第1アウターメンバー1に対して最収縮状態になっている場合は、収縮側の下側のローラー801を押し上げることが可能となるが、下側のローラー801の最下点は、第2アウターメンバー2の上側の屈折縁23のボール摺動溝22側より下方に飛び出しているから、最収縮状態から前記の伸長方向と逆方向に第2アウターメンバー2を伸長させるには、改めて第2移動防止ストッパー9のローラー801を上方に退避させる力が必要となるので、スライドレール100の伸長状態から収縮の過程で、最収縮状態となった時に屈折縁23の収縮側の端面が、収縮側の下側のローラー801に接触することにより一旦停止させることができる。
【0043】
一方、第1アウターメンバー1に対してインナーメンバー体7が最収縮状態となると、第1アウターメンバー1の屈折縁13の伸長側の端面が、伸長側の上側のローラー801に接触する。この時、第2アウターメンバー2がインナーメンバー体7に対して最収縮状態になっていないと、伸長側の移動防止ストッパー8は上方に押し上げられているので、
図8に示す状態と同じく、第1アウターメンバー1は、伸長側の上側のローラー801を押し下げることが出来ず、インナーメンバー体7は第1アウターメンバー1に対して最収縮状態で停止する。したがって、インナーメンバー体7は、前記伸長方向と逆方向側に突出することがない。
第2アウターメンバー2がインナーメンバー体7に対して最収縮状態になっている場合は、伸長側の上側のローラー801を押し下げること可能となるが、上側のローラー801の最上点は、第1アウターメンバー1の下側の屈折縁23のボール摺動溝22側より上方に飛び出しているから、最収縮状態から前記の伸長方向と逆方向にインナーメンバー体7を伸長させるには、改めて移動防止ストッパー8のローラー801を下方に退避させる力が必要となるので、スライドレール100の伸長状態から収縮の過程で、最収縮状態となった時に屈折縁13の伸長側の端面が、伸長側の上側のローラー801に接触することにより一旦停止させることができる。
【0044】
このように、ローラー801のアウターメンバーの屈折縁によって押し上げられる、または、押し下げられる部分である受圧部の最頂部を、屈折縁の押圧面の対向面側に飛び出すように設定すると、ローラー801の第1アウターメンバー1あるいは第2アウターメンバー2の屈折縁の端面との係止状態を解除させるためには、屈折縁の端面でローラー801の受圧部の最頂部を押圧し、屈折縁の端面から移動防止ストッパー8、9の係止体、すなわちローラー801を退避させる必要があるから、移動防止ストッパー8、9の弾性部82の弾性力に抗して弾性変形させる力が大きく必要となり、前述のようにインナーメンバー体7がアウターメンバーに対して容易には伸長することを防止することが可能となる。
そのため、伸長したスライドレールを収縮させた場合、スライドレールの最収縮状態で一旦停止させることができることになり、例えば、スライドレールに取り付けられた引き出しなど、引き出して開いた状態から収納する場合、収納する時の勢いで反対側に容易に開いてしまうことを防止することが可能となる。
また、最収縮状態に近づいた際、弾性変形していた移動防止ストッパー8、9(弾性部82)が復元するときの、振動の感触などでスライドレールが最収縮した状態がわかりやすいといった効果もある。
【0045】
第1移動防止ストッパー8、第2移動防止ストッパー9の弾性部82の弾性力やローラー801の前記の突出量によって、移動防止ストッパーのローラーを退避させる力を変化させることができる。当然ながら弾性力やローラーの突出量を大きくすると、スライドレール100の最収縮状態からアウターメンバーを伸長させるための力、あるいは、インナーメンバーを伸長させるために力は大きくなり、スライドレール100の伸長状態から収縮の過程での、最収縮状態となった時の一旦停止させる力は大きくなる。
反対に、弾性力やローラーの突出量を小さくすると、スライドレール100の最収縮状態からアウターメンバーを伸長させるための力、あるいは、インナーメンバーを伸長させるために力は小さくなり、スライドレール100の伸長状態から収縮の過程での、最収縮状態となった時の一旦停止させる力も小さくさせることができるので、最収縮状態となった時に一旦停止させることなく反対側に伸長できるようにすることも可能である。
【0046】
前述の本発明の詳細においては、第1アウターメンバー1を固定側、第2アウターメンバー2を移動側としているが、当然ながら第2アウターメンバー2を固定側、第1アウターメンバー1を移動側とすることもできる。
また、インナーメンバー体7を固定側とすることも可能であり、インナーメンバー体7を固定側とした場合、第1アウターメンバー1、第2アウターメンバー2はそれぞれが別個に前後方向に摺動可能となるが、この場合、いずれかのアウターメンバーが伸長すると移動防止ストッパーが作動し、他方側のアウターメンバーの同方向側の伸長を阻止することになるので、一方側のアウターメンバーしか伸長できない。
そのため、例えば、第1アウターメンバー1と、第2アウターメンバー2にそれぞれに別個の引き出しを取り付けた場合、二つの引き出しが同じ方向に同時に引き出されることを防止するといった使い方が可能となる。
【符号の説明】
【0047】
100 スライドレール
1 第1アウターメンバー
12 ボール摺動溝
13 屈折縁
2 第2アウターメンバー
21 基板
22 ボール摺動溝
23 屈折縁
3 第1インナーメンバー
4 第2インナーメンバー
5 第1ボールリテーナ
6 第2ボールリテーナ
7 インナーメンバー体
70 インナーメンバー連結部材
701 第1インナーメンバー連結部
702 インナーメンバー体補強部
703 第2インナーメンバー連結部
8 第1移動防止ストッパー
80 ストッパー本体
801 ローラー
801a 貫通軸孔
802 回転軸
81 固定部
811 脚部
811a 固定貫通孔
812 切り欠き
82 弾性部
83 ローラー保持部
831 腕部
831a 固定軸孔
832 凹部
9 第2移動防止ストッパー