(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-21
(45)【発行日】2023-03-02
(54)【発明の名称】置棚
(51)【国際特許分類】
A47B 96/02 20060101AFI20230222BHJP
【FI】
A47B96/02 G
A47B96/02 A
A47B96/02 K
(21)【出願番号】P 2020031237
(22)【出願日】2020-02-27
【審査請求日】2021-10-08
(73)【特許権者】
【識別番号】591092523
【氏名又は名称】株式会社伸晃
(74)【代理人】
【識別番号】100095647
【氏名又は名称】濱田 俊明
(72)【発明者】
【氏名】藤田 淳
【審査官】広瀬 杏奈
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3031710(JP,U)
【文献】実開昭52-127912(JP,U)
【文献】特開2002-238669(JP,A)
【文献】登録実用新案第3004815(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 96/02
A47J 47/20
A47B 43/00-47/05
F16B 12/00-12/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対の支脚間に前後一対の横枠を固定したうえで、当該前後一対の横枠上に棚材を架設する置棚において、
前記左右一対の支脚それぞれは、他方の支脚と対向する内面に互いに向き合うように突出するネジ部を有し、
前記横枠それぞれは、内管と外管とを相対的に伸縮且つ回動自在とすると共に、前記内管と外管のそれぞれ端部には前記支脚のネジ部と螺合するネジ部を有してなり、
挿入状態にある前記内管と前記外管それぞれを回転させることで前記ネジ部同士の螺合により前記横枠を前記左右一対の支脚の内面側から固定可能とし
、
前記支脚のネジ部は、雌ネジを切ったボスであり、前記横枠のネジ部は前記雌ネジに螺合する雄ネジであって、
前記横枠のネジ部は、内管及び外管の端部に挿入固定する軸部に雄ネジを一体に設けた樹脂製の雄ネジ部材であると共に、
当該雄ねじ部材は、外管の外径よりも大径のフランジ部を介して軸部とネジ部とを一体に設けてなることを特徴とする置棚。
【請求項2】
支脚は、側板部の周囲に縁リブを周設すると共に、前記側板部の少なくとも上部にネジ部を前記縁リブと同じ向きに突設してなる請求項
1記載の置棚。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、洗面台や流し台のシンク下キャビネットなどの収納空間を有効利用する置棚に係り、狭小な収納空間内でも簡単に組み立てられるように改良した置棚に関するものである。
【背景技術】
【0002】
洗面台や流し台のシンク下キャビネット内には排水トラップ等の縦配管が存在し、当該縦配管周辺がデッドスペース化しやすいことに鑑み、本出願人は、左右の両側支脚間の前および後方にパイプ等からなる横枠を係着固定し、前後両端に鉤部を形成した棚材を前記横枠に着脱可能に架設する置棚を開示した(特許文献1)。
【0003】
この置棚によれば、排水トラップを避けて棚材を架設することができるため、排水トラップ周辺のデッドスペースを最小限とすることができる。また、棚材によってキャビネット内が二段以上、上下に区画されるため、各段の棚材に物品を整然と載置することが可能となり、キャビネット内の収納効率を大幅に向上させることができる。
【0004】
さらに、横枠を外管に内管を挿通した伸縮自在に構成することで、キャビネットの内寸に応じて支脚間の距離を簡単に調整することができるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通常、この種の置棚は各部材が分解された状態で梱包され、これを消費者が組み立てて使用するため、できるだけ簡単に組み立てられることが要求される。特許文献1の置棚に関していえば、
図8に示すように、支脚20の透孔21に横枠22を差し込み、横枠22の端部に形成されたネジ部に止めナット23を締め込んで横枠を支脚に固定すれば全体のフレームが構成され、前後の横枠22間の任意箇所に棚材24を架設することで置棚が完成するが、当該置棚を洗面台等のシンク下キャビネットC内に設置する場合は、前後の横枠22を排水トラップTの前方と後方それぞれに配置することになるため、少なくとも排水トラップTの後方側の横枠については、キャビネットC内での固定作業が不可避である。
【0007】
しかしながら、横枠22を上述した止めナット23によって支脚20に固定する方法では、片手で横枠22を持ちながら、もう片方の手で止めナット23を回さなければならない。この間、支脚20のぐらつきにも留意しなければならないため、こうした固定作業を狭く暗いキャビネットC内で行うのは必ずしも容易ではなかった。特に、横枠22の両端の左右何れかについては、利き手ではない手で止めナット23を回さなければならないという不便も伴う。
【0008】
また、横枠22の固定後、止めナット23は、
図9に示すように、支脚20の外側に突出するため、支脚20をキャビネットCの内壁C1に密着させることができず、止めナット23の突出分だけ支脚20とキャビネットCの内壁C1との間にデッドスペースDSが生じることなる。
【0009】
さらに、置棚をキャビネットに設置した後は、定期的に止めナット23を締め直すことが好ましいが、止めナット23による上述した支脚20とキャビネットCの内壁C1間のデッドスペースDSには、手を差し入れて止めナット23を締め直すほどのスペースがない。このため、止めナット23を締め直すには、いったん棚材24から物品を降ろし、置棚の全長を短縮することで作業スペースを確保しなければならず、非常に手間である。これは、キャビネットC内で、棚の高さを変えたり、棚数を増やしたりするなど、止めナット23を操作する作業全般に共通する。
【0010】
この他、止めネジ23は一段につき4個を必要とするが、こうした独立した部材を採用することは部品点数の増加につながるだけでなく、紛失するおそれも生ずる。
【0011】
本発明は上述した課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、洗面台下のキャビネットなど。狭小な空間でも簡単に組み立て等ができると同時に、さらなるデッドスペースの解消と、部品点数の削減を図った置棚を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した目的を達成するために本発明では、左右一対の支脚間に前後一対の横枠を固定したうえで、当該前後一対の横枠上に棚材を架設する置棚において、前記左右一対の支脚それぞれは、他方の支脚と対向する内面に互いに向き合うように突出するネジ部を有し、前記横枠それぞれは、内管と外管とを相対的に伸縮且つ回動自在とすると共に、前記内管と外管のそれぞれ端部には前記支脚のネジ部と螺合するネジ部を有してなり、挿入状態にある前記内管と前記外管それぞれを回転させることで前記ネジ部同士の螺合により前記横枠を前記左右一対の支脚の内面側から固定可能とするという手段を用いた。
【0013】
上記手段では、横枠の支脚への固定作業は、互いのネジ部の位置を合わせた状態で、実質的に内管及び外管を回すだけで済む。そして、内管及び外管は左右の支脚の内側で回すことができるため、設置先が狭い空間であっても、当該空間の側壁に全く干渉せず、簡単に横枠を支脚に固定することができる。こうした良好な作業性は、置棚を設置した後の横枠の締め直し、棚の高さ変更、棚数の増加にも共通するものであり、横枠を締め直すにしても、支脚の間隔を狭めることなく、常に内管及び外管を回すだけでよくなる。
【0014】
また、上記手段では、支脚の外側に横枠が突き出ることがないため、左右の支脚をキャビネットの内壁等に密着して設置することができ、この部分がデッドスペース化することがない。
【0015】
さらに、上記手段では、支脚と横枠それぞれに予めネジ部を設けているため、両者を繋ぎ止める止めナット等の部品を省略でき、全体の部品点数を減少させることができる。
【0016】
なお、横枠のネジ部と支脚のネジ部とは、一方が雄ネジで構成され、他方は雌ネジで構成されることになるが、支脚のネジ部は、雌ネジを切ったボス(いわゆるボスネジ)であり、横枠のネジ部は前記雌ネジに螺合する雄ネジであることが好ましい。横枠を構成する内管及び外管のそれぞれ端部に雌ネジを切るよりも、支脚にボスネジを設けるほうが、成形上、有利だからである。
【0017】
また、支脚は、側板部の周囲に縁リブを周設すると共に、前記側板部の少なくとも上部にネジ部を前記縁リブと同じ向きに突設してなることで、縁リブによって支脚の自立性と全体の強度を確保しながら、外面は平板部によって完全に平坦となり、当該支脚を隙間なくキャビネットに設置することができる。
【0018】
さらに、横枠のネジ部は、内管及び外管の端部に挿入固定する軸部に雄ネジを一体に設けた樹脂製の雄ネジ部材であることで、横枠を構成する内管や外管の端部に直接雄ネジを形成するよりも、ネジ部を容易に構成することができる。
【0019】
さらにまた、上記雄ネジ部材は、横枠の外径よりも大径のフランジ部を介して軸部とネジ部とを一体に設けてなることで、横枠を支脚にネジ結合する際、フランジ部がストッパとなって横枠の締め込み過ぎを防止することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、部品点数を少なくしつつ、キャビネットなどの狭小な空間でも簡単に組み立て等ができると同時に、デッドスペースをさらに減少した設置が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】同、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は底面図、(d)は右側面図
【
図4】同、
図3のA-A線断面図と横枠とを併記した説明図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好ましい実施の形態を添付した図面に従って説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る置棚の参考斜視図、
図2の(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は底面図、(d)は右側面図である。これらの図において、1は左右一対の支脚、2・3は幅が異なる二種類の棚材であって、棚材(大)2・棚材(小)3とも支脚1・1間に固定された前後一対の横枠4・4上に着脱可能に架設している。なお、図面上、背面図は正面図と対称に表れ、左側面図は右側面図と同一に表れる。
【0023】
上述した基本的な構成は特許文献1のものと共通するため、本願発明の特徴的構成について説明すると、まず、左右一対の支脚1それぞれは、
図3~5に示すように、表裏が平坦で、四角いドーナツ状をなす側板部5の周囲(外周及び内周)に縁リブ6を一体的に周設すると共に、その左右それぞれには上方から4つのボスネジ部7を縁リブ6と同じ側(同じ向き)に一体的に突設している。縁リブ6は、支脚1に強度を付与する他、支脚1にある程度の自立性も付与する。ボスネジ部7は、筒状部7aの内部に雌ネジ7bを刻設したもので、横枠4の両端部に設けた後述の雄ネジ部が螺合する部分である。なお、ボスネジ部7は、少なくとも各支脚1の上部に左右一対あればよく、その数は本実施形態に限定されない。
【0024】
横枠4は、
図6に示すように、内管8と外管9とからなる。内管8の外径は外管9の内径よりもやや小さいため、内管8は外管9に挿入することができる。このため、横枠4は伸縮自在に構成される。しかも、内管8と外管9は互いに相対的に正逆に回動することができる。なお、本実施形態では、内管8を自由に外管9から引き抜くことができる(分離できる)ように構成しているが、上述した回動操作が担保される限り、外管9から内管8が抜け出すことを阻止する抜け止め機構を備えることも可能である。
【0025】
また、横枠4の両端部、即ち内管8と外管9の開放端部には、支脚1のボスネジ部7に螺合する雄ネジ部10を設けている。この雄ネジ部10は、
図7に示すように、内管8や外管9とは別の部材として樹脂成形されたものである。具体的には、内管8・外管9それぞれの内径に見合った外径を有する軸部10aにフランジ部10bを介して雄ネジ10cを樹脂成形により一体成形している。フランジ部10bの外径は外管9の外径よりも大径である(当然、内管8の外径よりも大径である)。そして、この雄ネジ部10は、成形後、軸部10aを内管8・外管9のそれぞれ開放端部に挿入固定する。挿入するだけでは、抜けたり、不用意に回転してしまうため、最終的には内管9・外管9を外部からカシメることで完全に固定する。
【0026】
棚材2・3は、底面側の前後二箇所に横枠4の内管8や外管9に掛止自在なフック部(鉤部)を有しているが、横枠に対する棚材の架設手段は従来公知のものを採用することができるため、さらなる詳説を割愛する。
【0027】
上述した置棚を組み立てるには、まず、左右一対の支脚1をそれぞれのボスネジ部7が互いに向き合うように仮置きする。各支脚1は、同じ構成であるので、どちらを左右とするかに制限はない。次に、仮置きした左右一対の支脚1間に、内管8を外管9に挿入した状態の横枠4を位置させ、内管8と外管9それぞれを手で回転させることで横枠4を左右一対の支脚1に固定でき、全体のフレームが完了する。このとき、挿入状態にある内管8と外管9を両手で水平にもち、片方ずつ順番に回せば各雄ネジ部10が対応位置にあるボスネジ部7に螺合するため、洗面台下の狭いキャビネット内でも横枠4の固定作業を簡単に行うことができる。これは横枠4の分解作業についても同じである。また、横枠4の雄ネジ部10におけるフランジ部10bが支脚1のボスネジ部7の先端部に当接するため、過剰な締め込みを防止することができる。
【0028】
そして、最後に前後横枠4の任意箇所に任意枚数の棚材2・3を架設すれば置棚の組み立てが完了するが、各支脚1の外面は平坦であるため、横枠4を適宜長さに伸縮して左右の支脚1がキャビネットの内側壁にぴったりくっつくようにすれば、本発明の置棚を無駄なスペースが生じることなくキャビネット内に設置することができる。
【0029】
また、設置後に、横枠4にガタつきが生じたときでも、内管8又は/及び外管9を締め直すだけで、横枠4のガタつきを解消することができる。その際、左右の支脚1の間隔を短縮するなどの作業スペースの確保は不要で、左右の支脚1はそのままの状態でよく、また、棚材2・3を全部取り外す必要はなく、締め直す際に邪魔になる分だけを取り外せばよい。
【0030】
なお、上記実施形態では、支脚1を全体として四角形のドーナツ状としたが、その全体形状はこれに限定されない。また、支脚1と横枠4のネジ結合についても、支脚1側を雄ネジ、横枠4側を雌ネジとすることは排除しない。
【符号の説明】
【0031】
1 支脚
2・3 棚材
4 横枠
5 側板部
6 縁リブ
7 ボスネジ部
8 内管
9 外管
10 雄ネジ部