(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-21
(45)【発行日】2023-03-02
(54)【発明の名称】中子製造方法及び中子製造装置
(51)【国際特許分類】
B22C 9/02 20060101AFI20230222BHJP
B22C 13/08 20060101ALI20230222BHJP
【FI】
B22C9/02 103B
B22C13/08 B
B22C13/08 Z
(21)【出願番号】P 2020045079
(22)【出願日】2020-03-16
【審査請求日】2021-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】517372807
【氏名又は名称】パインパシフィック コーポレーション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100154014
【氏名又は名称】正木 裕士
(74)【代理人】
【識別番号】100154520
【氏名又は名称】三上 祐子
(72)【発明者】
【氏名】中村 信弘
【審査官】祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-039996(JP,A)
【文献】特開2019-123005(JP,A)
【文献】特開平08-300101(JP,A)
【文献】特開2009-178758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 9/02
B22C 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中子形成用金型の上部側に設けた型砂吹き込み口より、型砂が中子形成用金型の中空成形室に吹き込まれて該型砂が中空成形室に充填され、中空成形室に充填された型砂のうち、中空成形室の加熱された内壁に接する外側型砂が熱硬化されて中子外郭層が形成されるとともに、中子外郭層の内側に充填されている内側型砂は未硬化の状態とされ、この状態で上記型砂吹き込み口が下向きになるよう中子形成用金型が回転され、これにともなって中子外郭層の内側に充填されている未硬化の内側型砂が上記下向きになっている型砂吹き込み口から下方外部に排出されて中子外郭層の内側が中空部に形成されるとともに、
流体圧シリンダと、該流体圧シリンダに繋がれて該流体圧シリンダの直道運動を閉塞用金型の回転変位運動に変換するクランクアームと、からなる回動変位手段によって、加熱された閉塞用金型
が閉塞位置に変位することによって該型砂吹き込み口が閉塞され、且つ、該型砂吹き込み口から排出途上にある未硬化の内側型砂が加熱され熱硬化されて熱硬化閉塞層が中子外郭層と一体に形成され、しかして、中子外郭層と中空部と熱硬化閉塞層とによって中空状中子が形成されるようにした中子製造方法。
【請求項2】
型砂吹き込み口が上部側に設けられた中子
形成用金型と、上部側に設けられた型砂吹き込み口を下向きに変位するよう中子
形成用金型を回転させる中子
形成用金型回転手段と、中子
形成用金型加熱手段と、上記中子形成用金型を回転させて上記型砂吹き込み口が下向きに変位した位置で該型砂吹き込み口を閉塞するとともに該型砂吹き込み口から排出途上にある未硬化の内側型砂を熱硬化させ
て中子外郭層と一体の熱硬化閉塞層を形成する閉塞用金型と、該閉塞用金型を加熱する該閉塞用金型加熱手段と、
を備え、
上記閉塞用金型は、回動変位手段によって上記型砂吹き込み口を閉塞する閉塞位置と、該型砂吹き込み口を開口して該型砂吹き込み口から離れて上記閉塞用金型加熱手段に加熱される位置に待避する待避位置とに変位可能に設置され、
上記回動変位手段は、流体圧シリンダと、該流体圧シリンダに繋がれて該流体圧シリンダの直道運動を上記閉塞用金型の回転変位運動に変換するクランクアームと、からなる中子製造装置。
【請求項3】
前記閉塞用金型を加熱する閉塞用金型加熱手段は、該閉塞用金型を加熱するガスバーナーからなる請求項
2に記載の中子製造装置。
【請求項4】
中子形成用金型の上部側に設けた複数の型砂吹き込み口より、型砂が中子形成用金型の中空成形室に吹き込まれて該型砂が中空成形室に充填され、中空成形室に充填された型砂のうち、中空成形室の加熱された内壁に接する外側型砂が熱硬化されて中子外郭層が形成され、中子外郭層の内側に充填されている内側型砂は未硬化の状態とされ、この状態で上記複数の型砂吹き込み口が下向きになるよう中子形成用金型が回転され、これにともなって中子外郭層の内側に充填されている未硬化の内側型砂が上記下向きになっている複数の型砂吹き込み口から下方外部に排出されて中子外郭層の内側が中空部に形成されるとと
もに、
流体圧シリンダと、該流体圧シリンダに繋がれて該流体圧シリンダの直道運動を閉塞用金型の回転変位運動に変換するクランクアームと、からなる回動変位手段によって、加熱された閉塞用金型
が閉塞位置に変位することによって該型砂吹き込み口が閉塞され、且つ、該型砂吹き込み口から排出途上にある未硬化の内側型砂が加熱され熱硬化されて熱硬化閉塞層が中子外郭層と一体に形成され、しかして、中子外郭層と中空部と熱硬化閉塞層によって複雑な形状の中空状中子が形成されるようにした中子製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シェルモールド鋳造法で非鉄鋳物、鉄鋳物等の鋳造品を製造する際に用いる鋳造用中子の製造方法とその製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鋳造用中子の製造にあたり、注湯時における中子の強度を確保することと、注湯後において中子の崩壊性を良くすることとは、一見相反するようではあるが、中子には、強度のと崩壊性の確保が必要とされる。即ち、中子は高強度でなければならないが、中子全体を中実高強度の材料で形成すると、その後のばらし作業、つまり崩壊作業に手間がかかることになる。
【0003】
しかして、造型される中子の全体を中実の高強度の材料のみで形成するのではなく、
図8の(d)に示すように、高強度を確保しうる外層Ltと、良好な崩壊性の確保しうる内層Lsとからなる二層構造の中子LAが、下記特許文献1及び2に提案されている。即ち、この中子LAは、粒度指数の異なる熱硬化性樹脂被覆砂で形成された外層Ltと内層Lsとからなり、外層用熱硬化性樹脂被覆砂が内層用熱硬化性樹脂被覆砂より大きい粒度指数で形成されたものであって、これによれば、注湯時における中子の強度を十分に確保でき、また鋳造不良の発生防止と鋳肌の改善を図ることができと共に、注湯後の鋳型の崩壊性も良好である。
【0004】
しかしながら、この従来技術にあっては、外層と内層との2重構造とするためには、まず
図8の(a)に示すように、外層用の型砂(熱硬化性樹脂被覆砂)Ltを供給する外層用型砂タンク15Aから、型砂Ltを外層用型砂吹き込みユニット(外層用ブローヘッド)16Aを介して上向きの型砂吹き込み口2から中子形成用金型1に吹き込んで(ブローして)、該金型1の中子成形室3の内壁3aに接する部分の型砂Ltを熱硬化させて外層Ltを形成し、次に(b)に示すように金型1を水平回転軸17を中心に矢印R1で示す方向に回転させて上記型砂吹き込み口2を下向きにして、外層Ltの内側に充填されている未硬化の型砂Ltを型砂吹き込み口2から外部に排出し、しかるのちに(c)に示すように、再び水平回転軸17を中心に矢印R2に示すように上記型砂吹き込み口2が上向きになるよう金型1を反転させて、この状態で内層用の型砂Lsを供給する内層用型砂タンク15Bから、型砂Lsを内層用型砂吹き込みユニット(内層用フローヘッド)16Bを介して上向きの型砂吹き込み口2から中子形成用金型1に吹き込んで、該内層用の型砂Lsを熱硬化させ、最後に金型1の可動金型1bを鎖線で示すように開放することによって、(d)に示すように、高強度を確保しうる外層Ltと、良好な崩壊性の確保しうる内層Lsとからなる二層構造の中子LAを製造するようにしていた。これがために当然に製造工程が複雑で、且つ中子形成用型砂を内層用と外層用との2種類の型砂を用意しなければならず、しかも中子を外層用の型砂と内層用の型砂によって中実に形成することから材料費の高騰を招き、更に中子の軽量化を達成することができないという難点があった。
【文献】特開平10-166106号公報
【文献】特開2009-178758号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記特許文献1又は2に示す内外二層構造中子及びその製造方法を払拭し、一層構造の中空状中子の製造方法とその製造装置を提案することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段を、後述する実施形態の参照符号を付して説明すると、請求項1に係る発明は、中子形成用金型1の上部側に設けた型砂吹き込み口2より、型砂Lが中子形成用金型1の中子成形室3に吹き込まれて該型砂Lが中子成形室3に充填され、中子成形室3に充填された型砂Lのうち、中子成形室3の加熱された内壁3aに接する外側型砂L1が熱硬化されて中子外郭層4が形成されるとともに、中子外郭層4の内側に充填されている内側型砂L2は未硬化の状態とされ、この状態で、上記型砂吹き込み口2が下向きになるよう中子形成用金型1が回転され、これにともなって中子外郭層4の内側に充填されている未硬化の内側型砂L2を上記下向きになっている型砂吹き込み口2から下方外部に排出して中子外郭層4の内側が中空部7に形成されるとともに、流体圧シリンダ13aと、該流体圧シリンダ13aに繋がれて該流体圧シリンダ13aの直道運動を閉塞用金型5の回転変位運動に変換するクランクアーム13bと、からなる回動変位手段13によって、加熱された閉塞用金型5が閉塞位置aに変位することによって該型砂吹き込み口2が閉塞され、且つ、該型砂吹き込み口2から排出途上にある未硬化の内側型砂L2が加熱され熱硬化されて熱硬化閉塞層6が中子外郭層4と一体に形成され、しかして、中子外郭層4と中空部7と熱硬化閉塞層6とによって中空状中子8が形成されるようにした中子製造方法に係る。
【0007】
又、請求項2に係る発明は、型砂吹き込み口2が上部側に設けられた中子形成用金型1と、上部側に設けられた型砂吹き込み口2を下向きに変位するよう中子形成用金型1を回転させる中子形成用金型回転手段10と、中子形成用金型加熱手段11と、上記中子形成用金型1を回転させて上記型砂吹き込み口2が下向きに変位した位置で該型砂吹き込み口2を閉塞するとともに該型砂吹き込み口2から排出途上にある未硬化の内側型砂L2を熱硬化させて中子外郭層4と一体の熱硬化閉塞層6を形成する閉塞用金型5と、該閉塞用金型5を加熱する該閉塞用金型加熱手段12と、を備え、
上記閉塞用金型5は、回動変位手段13によって上記型砂吹き込み口2を閉塞する閉塞位置aと、該型砂吹き込み口2を開口して該型砂吹き込み口2から離れて上記閉塞用金型加熱手段12に加熱される位置に待避する待避位置bとに変位可能に設置され、
上記回動変位手段13は、流体圧シリンダ13aと、該流体圧シリンダ13aに繋がれて該流体圧シリンダ13aの直道運動を上記閉塞用金型5の回転変位運動に変換するクランクアーム13bと、からなる中子製造装置に係る。
【0010】
又、請求項3に係る発明は、上記閉塞用金型5を加熱する閉塞用金型加熱手段12は、閉塞用金型5を加熱するガスバーナー14からなる請求項2に記載の中子造装置に係る。
【0011】
又、請求項4に係る発明は、中子形成用金型1の上部側に設けた複数の型砂吹き込み口2より、型砂Lが中子形成用金型1の中空成形室3に吹き込まれて該型砂Lが中空成形室3に充填され、中空成形室3に充填された型砂Lのうち、中空成形室3の加熱された内壁3aに接する外側型砂L1が熱硬化されて中子外郭層4が形成され、中子外郭層4の内側に充填されている内側型砂L2は未硬化の状態とされ、この状態で上記複数の型砂吹き込み口2が下向きになるよう中子形成用金型1が回転され、これにともなって中子外郭層4の内側に充填されている未硬化の内側型砂L2が上記下向きになっている複数の型砂吹き込み口2から下方外部に排出されて中子外郭層4の内側が中空部7に形成されるとともに、流体圧シリンダ13aと、該流体圧シリンダ13aに繋がれて該流体圧シリンダ13aの直道運動を閉塞用金型5の回転変位運動に変換するクランクアーム13bと、からなる回動変位手段13によって、加熱された閉塞用金型5が閉塞位置aに変位することによって該型砂吹き込み口2が閉塞され、且つ、該型砂吹き込み口2から排出途上にある未硬化の内側型砂L2が加熱され熱硬化されて熱硬化閉塞層6が中子外郭層4と一体に形成され、しかして、中子外郭層4と中空部7と熱硬化閉塞層6によって複雑な形状の中空状中子8が形成されるようにした中子製造方法に係る。
【発明の効果】
【0012】
上記解決手段による発明の効果を、後述する実施形態の参照符号を付して説明すると、請求項1に係る発明によれば、
図1に示すように、中子形成用金型1の上部側に設けた型砂吹き込み口2より、型砂Lを中子形成用金型1の中子成形室3に吹き込んで該型砂Lを中子成形室3に充填し、中子成形室3に充填された型砂Lのうち、中子成形室3の加熱された内壁3aに接する外側型砂L1が熱硬化されて該熱硬化外側型砂L1によって中子外郭層4が形成され、中子外郭層4の内側に充填されている内側型砂L2は未硬化の状態とされ、この状態で、
図2に示すように、上記型砂吹き込み口2が下向きになるよう中子形成用金型1を回転させ、これにともなって中子外郭層4の内側に充填されている未硬化の内側型砂L2を上記下向きになっている型砂吹き込み口2及びこれに通して未硬化の内側型砂L2によって適宜形成された型砂排出口2aから下方外部に排出されて、図示のように、中空部7が形成され、しかして、該型砂吹き込み口2から内側型砂L2の排出途上にある型砂排出口2a及び該型砂吹き込み口2を、
図3の(a)に示すように、加熱された閉塞用金型5によって閉塞するとともに、該型砂排出口2a及び型砂吹き込み口2に残存する未硬化の内側型砂L2を熱硬化させて上記中子外郭層4と一体の熱硬化閉塞層6を形成し、
図4に示すように、金型1の可動金型1bを開放することによって、
図5に示すように、中子外郭層4と熱硬化閉塞層6と密封中空部7とによって中空状中子8が形成されるようにした。このため、本発明によれば、従来の内外二層構造の複雑な中子ではなく、一層構造の簡単な密封中空状の中子を製造することができ、これがために製造工程が簡単で、1種類の型砂で製造することができるから,それだ
け材料費が安くつき、更に中子の軽量化を達成することができる。又、中子が密封中空状に形成されるため、鋳造時に注湯時の溶湯が密封中空部に侵入することはなく、更に中子が一種類の型砂によって一層の中空部に形成されてなるため、中子を鋳造用金型から取り出すための中子崩壊性も良好である。
さらに、請求項1に係る発明によれば、回動変位手段13は、流体圧シリンダ13aと、該流体圧シリンダ13aに繋がれて該流体圧シリンダ13aの直道運動を閉塞用金型5の回転変位運動に変換するクランクアーム13bと、からなるため、非常に少ない部品で回動変位手段13を形成することができる。
【0013】
又、請求項2に係る発明によれば、中空状中子を製造するための製造装置は、中子形成用金型1の上方に設置される一種類の型砂吹き込み用ユニット9と、これに繋がれる型砂吹き込み口2が上部側に設けられた中子形成用金型1と、上部側に設けられた型砂吹き込み口2を下向きに変位するよう中子形成用金型1を回転させる中子形成用金型回転手段10と、中子形成用金型加熱手段11と、上記中子形成用金型1を回転させて上記型砂吹き込み口2が下向きに変位した位置に対応して、該型砂吹き込み口2を閉塞するとともに該型砂吹き込み口2に残存する未硬化の内側型砂L2を熱硬化させて上記中子外郭層4と一体の熱硬化閉塞層6を形成する閉塞用金型5と、該閉塞用金型5を加熱する該閉塞用金型加熱手段12と、によって形成されるから簡単な構成からなり、安価な製造装置とするとことができる。
さらに、請求項2に係る発明によれば、閉塞用金型5は、回動変位手段13によって上記型砂吹き込み口2を閉塞する閉塞位置aと該型砂吹き込み口2を開口して該型砂吹き込み口2から離れて待避する待避位置bとに変位可能に設置されてなる構成からなるため、この点においても構造が簡単である。
またさらに、請求項2に係る発明によれば、回動変位手段13は、流体圧シリンダ13aと、該流体圧シリンダ13aに繋がれて該流体圧シリンダ13aの直道運動を閉塞用金型5の回転変位運動に変換するクランクアーム13bと、からなるため、非常に少ない部品で回動変位手段13を形成することができる。
【0016】
又、請求項3に係る発明によれば、閉塞用金型5を加熱する閉塞用金型加熱手段12は、該閉塞用金型5を加熱するガスバーナー14を単に設置するだけでよいから、この点においても構造が簡単である。
【0017】
又、請求項4に係る発明によれば、請求項1と同様の効果を奏すると共に、複数の熱硬化閉塞層が形成される複雑な形状の中空状中子8であっても、簡単な構成によって製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】は本発明に係る中子製造装置の要部の一部縦断正面図である。
【
図2】同中子製造装置の使用状態を示す縦断正面図である。
【
図3】(a)は、同じく中子製造装置の使用状態を示す縦断正面図である。(b)は、
図3の要部の拡大正面図である。
【
図4】中子形成用金型によって中空状中子が形成される状態を示す縦断正面図である。
【
図5】本発明によって中空状中子が製造された状態を示す縦断正面図である。
【
図6】本発明の他の実施形態を示す要部斜視図である。
【
図7】本発明によって複雑な形状の中空状中子が製造された状態の斜視図である。
【
図8】(a)~(d)は、従来装置によって中子を製造するための工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の好適な一実施形態を図面に基づいて説明すると、
図1は、本発明に係る中子製造装置の要部の正面図を示すもので、中子形成用金型1の上部側に外層用型砂タンク15とこれに連携されるブローヘッド16と呼ばれる型砂吹き込み用ユニット9と設けられ、中子形成用金型1の上部側に設けた型砂吹き込み口2より、型砂Lを中子形成用金型1の中子成形室3に吹き込んで該型砂Lを中子成形室3に充填し、中子形成用金型1には、ガスバーナーからなる周知の中子
形成用金型加熱手段11が設けられて加熱され、中子
形成用金型1の中子成形室3に充填された型砂Lのうち、中子成形室3の上記周知の中子
形成用金型加熱手段11であるガスバーナー11aによって加熱されて、該中子成形室3の内壁3aに接する外側型砂L1が熱硬化されて該熱硬化外側型砂L1となって中子形成用金型1の中子成形室3の内壁3aに沿って中子外郭層4が形成されるとともに、中子外郭層4の内側に充填されている内側型砂L2は未硬化の状態としている。
【0020】
このように、中子外郭層4の内側に充填されている内側型砂L2が未硬化にした状態で、
図2に示すように、上記型砂吹き込み口2が下向きになるよう中子形成用金型1をこれに繋がれる水平回転軸17を中心に中子
形成用金型回転手段10によって回転させる。なお、中子
形成用金型回転手段10は、図示しないが、直道シリンダとこれに繋がれるラックとこれに噛み合わされるピニオン等の周知の回転変位構造のものである。
【0021】
中子形成用金型1の回転にともなって、中子外郭層4の内側に充填されている未硬化の内側型砂L2が上記下向きになっている型砂吹き込み口2から、図示のように、下方外部に排出される。
【0022】
中子形成用金型1の型砂吹き込み口2の近傍には、図示のように、閉塞用金型5が設置され、常時は、閉塞用金型5は型砂吹き込み口2から離れて該型砂吹き込み口2を開口して、閉塞用金型5に対応して設けた周知のガスバーナー14などの閉塞用金型加熱手段12に加熱される位置に、回動変位手段13に回動支持されて待避している。回動変位手段13は、流体圧シリンダ13aと、該シリンダ13aに繋がれて該シリンダ13の直道運動を閉塞用金型5の回転変位運動に変換するクランクアーム13bと、からなり、閉塞用金型5と回動変位手段13を構成するクランクアーム13bとは定位置に設けた回動枢軸20に固定されている。又、周知のガスバーナー14などの閉塞用金型加熱手段12は支持枠柱などの支持腕21や支持台21aによって、型砂吹き込み口2から離れて待避位置bにある閉塞用金型5に対応して定位置に配設され、この待避位置で閉塞用金型5は閉塞用金型加熱手段12によって加熱される。
【0023】
図2に示すように、上記型砂吹き込み口2が下向きになるよう中子形成用金型1を回転させ、これにともなって中子外郭層4の内側に充填されている未硬化の内側型砂L2を上記下向きになっている型砂吹き込み口2から、下方外部にその殆どが排出される。これによって、
図3の(a)に示すように、中子外郭層4の内側が中空部7に形成され、しかして、該型砂吹き込み口2から内側型砂L2の排出途上にある該型砂吹き込み口2は、加熱された閉塞用金型5が、
図2の待避位置bから、
図3の(a)に示すように型砂吹き込み口2を閉塞する閉塞位置aに回動して、該型砂吹き込み口2に嵌合されて該型砂吹き込み口2が閉塞される。なお、内側型砂L2の型砂吹き込み口2からの排出される途上の何れの排出時間中に閉塞用金型5によって閉塞されるかは、例えば内側型砂L2の排出が始まると同時に、或いは0.5秒~1秒後に閉塞用金型5によって型砂吹き込み口2が
閉塞されるというように内側型砂L2の種類によって異なるが、これは作動前の数次の実験又は試運転によって決められることになる。回動枢軸20に一体に支持される閉塞用金型5は、回動変位手段13を構成する直道シリンダ13aの伸縮ロッド13cが伸長することによってこれに繋がれるクランクアーム13bを介して、
図3の(b)に示すように、閉塞用金型5のテーパー状の先端部5aが型砂吹き込み口2に嵌合し、型砂吹き込み口2から型砂が漏れないようにして該型砂吹き込み口2に密接して閉塞する。なお、前記実施形態では、クランクアーム13bは略く字状に折曲がる2部材によって形成されているが、1本からなるクランクアーム13bを直道シリンダ13aの伸縮ロッド13cに連結するようにしてもよい。これによればクランクアーム13bの構造が簡単になり、安価に製作することができる。なお又、
図3の(b)にあっては、閉塞用金型5のテーパー先端部5aが型砂吹き込み口2を塞
いでいるが、中子外郭層4と略同じ厚みのところで型砂吹き込み口2に通じて適宜形成された型砂排出口2aに滞留する未硬化の内側型砂L2を硬化させて熱硬化閉塞層6を形成することになる。
【0024】
このように、閉塞用金型5を型砂吹き込み口2に密接に嵌合することによって、該型砂吹き込み口2に残存する未硬化の内側型砂L2は、
図3の(b)に示すように熱硬化されて上記中子外郭層4と一体の熱硬化閉塞層6が形成され、しかして、中子外郭層4の内側に充填されている未硬化の内側型砂L2が上記型砂吹き込み口2から外部に排出されることによって中子外郭層4の内側4aに中空部7に形成され、且つ該未硬化の内側型砂が熱硬化され上記型砂吹き込み口2塞ぐ上記熱硬化閉塞層6が形成され、
図4に示すように中子形成用金型1の固定金型1aから可動金型1bを、2点鎖線に示すように開放することによって、
図5に示すように、中子外郭層4と中空部7と熱硬化閉塞層6とによって中空状中子8が形成されることになる。
【0025】
図6は、本発明の他の実施形態を示す要部斜視図であり、前記実施形態にあっては、中空状中子8に単数の型砂吹き込み口2が設けられたものであるが、例えば
図7に示すように、自動車のインレットマニホールドを鋳造するように複雑な形状の鋳造品のために中空状中子8を製造するにあたっては、型砂吹き込み口2は単数ではなく、複数の例えば4つの型砂吹き込み口2(
図1参照)が設けられ、それぞれの型砂吹き込み口2を熱硬化閉塞層6によって閉塞する必要があり、実際の中子製品では、
図7に示すように複数の熱硬化閉塞層6が設けられた複雑な形状の中空状中子8が殆どである。
【0026】
したがって、このような場合には、
図7に示すように、形成される中空状中子8に複数の型砂吹き込み口2(
図1参照)が設けられており、それぞれの型砂吹き込み口2を閉塞するために、それぞれに熱硬化性閉塞層6が設けられる複雑の形状の中空状中子8にあっては、
図6に示すように、それぞれの熱硬化性
閉塞層6を形成するための閉塞用金型5が設置され、且つそれぞれの閉塞用金型5に対応して
閉塞用金型加熱手段12が配設され、矢印で示すように、前記複数の閉塞用金型5は上記型砂吹き込み口2を閉塞する閉塞位置aと該型砂吹き込み口2を開口するともに該型砂吹き込み口2から離れて前記
閉塞用金型加熱手段12に加熱される位置に待避する待避位置bとに変位可能に設置される。このために、前記複数の閉塞用金型5は、支持支柱21に支持された共通の回転枢軸20で軸方向所要の間隔で一体的に固定して設けられ、前記複数の閉塞用金型5が上記型砂吹き込み口2を閉塞する閉塞位置aと該型砂吹き込み口を開口して該型砂吹き込み口2から離れるとともに前記
閉塞用金型加熱手段12に加熱される位置に待避する待避位置bとに変位可能に回動するよう前記回動変位手段13に繋がれて、前記複数の閉塞用金型5が同時に回動枢軸20に繋がれる回動変位手段13によって回転駆動するようになっている
【0027】
なお、複数の閉塞用金型5は、共通の回動枢軸20にそれぞれ固定具である軸押圧セットねじ25によって固定されているが、各閉塞用金型5の隣接する間隔調整は軸押圧セットねじ25を緩めることによって随時調整が可能である。これによって中空状中子8の型砂吹き込み口2の形成位置に正確に対応して閉塞用金型5を設けることができる。
【0028】
本発明に用いられる熱硬化性樹脂被覆砂は、注湯に耐え得る強度を必要とするため、相対的に高強度、具体的には曲げ強度が30Kgf/cm2 以上に設計される。そして、熱硬化性樹脂の使用量としては、所要強度及びその他の鋳型特性(低熱膨張性など)を考慮して選択された耐火性粒子(種類及び粒度)及び熱硬化性樹脂(種類)に応じて決定されるが、一般的には耐火性粒子に対し1~10重量%の範囲であり、更に熱硬化性樹脂被覆砂の製造し易さ及び品質の安定さを考慮すると、好ましくは2~6重量%の範囲である。
【0029】
また、当該熱硬化性樹脂被覆砂の粒度指数は、一般的には80以上、更に熱硬化性樹脂被覆砂の製造容易さを考慮すると、好ましくは90~160の範囲である。なお、粒度指数が大きいことは細粒を意味し、粒度指数が小さいことは粗粒を意味する。
【0030】
また、当該熱硬化性樹脂被覆砂としては、中子外郭層4の薄肉化の観点から、その硬化時間80秒以上、特に90秒以上である遅硬性熱硬化性樹脂被覆砂が好適である。なお、硬化時間とは、250℃熱板上においた環状金型(50mmΦ×5mm)内に熱硬化性樹脂被覆砂を充満させた時からその表面が針で刺さらなくなるまでの時間をいう。
【0031】
このような当該熱硬化性樹脂被覆砂は、従来慣用の混練被覆法、例えばドライホットコート法、セミホットコート法、コールドコート法及び粉末溶剤法によって耐火性粒子の表面に熱硬化性樹脂を溶融被覆及び/又は付着して製造することができる。中でも、ドライホットコート法によれば生産上及び品質上有利に製造することができる。また、これらの熱硬化性樹脂被覆砂には必要に応じて各種の添加剤、例えば鋳型の崩壊剤、硬化促進剤、固結防止剤、離型剤、消臭剤、ベンガラ、砂鉄、黒鉛等を配合しても差し支えない。
【0032】
前記耐火性粒子は、鋳型の基体をなすものであって、鋳造に耐え得る耐火性と鋳型形成に適した粒径を有する粒子であれば、その種類については特に限定されない。このような耐火性粒子の例としては、ケイ砂、オリビンサンド、ジルコンサンド、クロマイサンド、アルミナサンド等の特殊砂、フェロクロム系スラグ、NEサンド(商品名)のようなフェロニッケル系スラグ、転炉スラグ等のスラグ系粒子、ナイガイセラビーズ♯1700(商品名)のような多孔質粒子、砂鉄、カーボン粒子、ガラス粒子、陶磁器粒子及びこれらの再生粒子又はダストが挙げられる。これらは1種で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
また、前記熱硬化性樹脂は、架橋剤の存在下又は非存在下で熱硬化して耐火性粒子を結合保持する結合剤機能を有するものであれば、その種類については特に限定されない。このような熱硬化性樹脂の例としては、例えばフェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂が挙げられる。これらは1種又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
【符号の説明】
【0034】
L 型砂
1 中子形成用金型
2 型砂吹き込み口
3 中子成形室
3a 内壁
4 中子外郭層
4a 中子外郭層の内側
5 閉塞用金型
6 熱硬化閉塞層
7 密封中空部
8 中空状中子
9 型砂吹き込み用ユニット
10 中子形成用金型回転手段
11 中子形成用金型加熱手段
12 閉塞用金型加熱手段
13 回動変位手段
13a 流体圧シリンダ
13b クランクアーム
14 ガスバーナー