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特許7231951塩基性物質を用いた豆腐の物性向上方法及びそれによる豆腐
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-21
(45)【発行日】2023-03-02
(54)【発明の名称】塩基性物質を用いた豆腐の物性向上方法及びそれによる豆腐
(51)【国際特許分類】
   A23L 11/45 20210101AFI20230222BHJP
【FI】
A23L11/45 108Z
A23L11/45 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021065898
(22)【出願日】2021-04-08
(65)【公開番号】P2022055297
(43)【公開日】2022-04-07
【審査請求日】2021-04-08
(31)【優先権主張番号】10-2020-0125726
(32)【優先日】2020-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519269536
【氏名又は名称】テジン ジーエヌエス カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】TAEJIN GNS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】(Gojan-dong)3L,114B,Nam-dong Industrial Complex,163,Neungheodae-ro 577beon-gil,Namdong-gu Incheon 21698,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】キム、ビョン ソプ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヨン ウン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ユン ホ
(72)【発明者】
【氏名】イ、ギ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム、テク ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ユン、ヘ ジョン
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ウン ビン
(72)【発明者】
【氏名】キム、タク ヒョン
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-008137(JP,A)
【文献】特許第5311994(JP,B2)
【文献】特開2019-140994(JP,A)
【文献】特許第5968140(JP,B2)
【文献】中国特許出願公開第107467200(CN,A)
【文献】揚げ豆腐ってなんですか? 厚揚げとは違うんですか?見たことがないので…,Yahoo! 知恵袋,2015年,https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12153215132
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 11/45
A23L 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)塩基性軟化溶液を製造する段階と、
2)前記段階1)の塩基性軟化溶液に豆腐を浸漬する段階と、
3)前記段階2)の浸漬した後の豆腐の表面に天ぷら粉を塗布する段階と、
4)前記段階3)の天ぷら粉の塗布された豆腐を油で揚げる段階と、
を含み、
前記塩基性軟化溶液は、クエン酸三ナトリウム、第二リン酸カリウム、第三リン酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、アルギニン及びリシンからなる群から選択されるいずれか1種以上であって、
前記浸漬は塩基性軟化溶液が2~10wt%の濃度で浸漬し、
塩基性軟化溶液の温度が15~30℃で2~3時間浸漬、50~80℃で1~3時間浸漬、または100℃で5分~1時間浸漬し、
前記豆腐は固形分含量が12~18wt%であることを特徴とする、
豆腐の製造方法。
【請求項2】
前記段階1)の塩基性軟化溶液はpH7.6~12.5の軟化溶液であることを特徴とする、請求項1に記載の豆腐の製造方法。
【請求項3】
前記段階3)の天ぷら粉の塗布は、天ぷら粉、チヂミ粉、小麦粉、米粉及び澱粉粉からなる群から選択されるいずれか1種以上を粉末形態で塗布することを特徴とする、請求項1に記載の豆腐の製造方法。
【請求項4】
前記段階4)の油揚げの後、冷蔵又は冷凍保管の後に再加熱する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の豆腐の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塩基性物質を用いた豆腐の物性向上方法及びそれによる豆腐に関するもので、より詳しくは軟化溶液を製造する段階と、軟化溶液に豆腐を浸漬する段階と、浸漬した後、豆腐の表面に天ぷら粉を塗布する段階と、天ぷら粉の塗布された豆腐を油で揚げる段階と、揚げられた豆腐を冷蔵/冷凍保管してから再加熱する段階とを含む製造方法及び前記製造方法によって製造された豆腐に関するものである。
【背景技術】
【0002】
豆(大豆)の構成成分は、およそタンパク質40%、炭水化物30~35%、脂肪20%、脂質12~23%程度の他に、微量のフィチン酸、サポニン、多様なフェノール化合物(代表的に、イソフラボン)である。大豆のタンパク質は量的及び質的な面で植物性タンパク質の中で一番優れたものと知られている。大豆のタンパク質は単純タンパク質(simple protein)に属するアルブミン(albumin)10%及びグロブリン(Globulin)90%からなっており、アルブミンは水溶性であるがグロブリンは水によく溶解せず、中性塩溶液、緩い酸性及び緩い塩基性に溶解する。アルブミンは主に酵素タンパク質(trypsin inhibitor、hemagglutinin、lipoxygenase)であり、FDAによれば、一日に25gの大豆タンパク質を摂取するとき、循環器疾患を予防することができると言う。グロブリンは、分子量によって、グリシニン(11S)、コングリシニン(7S)などに区分される。大豆の主タンパク質であるグリシニンは塩のような中性塩溶液によく溶解し、繊維素軟化が起こりやすいので、0.5~1%の塩水に浸してから加熱すれば大豆の軟化を促進する。塩基性環境では大豆のヘミセルロースとペクチン質が軟化して吸水及び膨潤が促進されるから、0.3%の炭酸水素ナトリウム又は0.2%の炭酸カリウムを添加する場合にも同様である。一方、pH4~5の酸性環境では大部分のタンパク質が不溶性になる。すなわち、軟化しないで凝固する。大豆は浸漬される水の温度にも影響を受ける。温度が高いほど吸収速度が速くなって軟化時間が短くなるが、60~80℃の水に浸せばむしろ豆が軟化しにくい。これは、大豆タンパク質に熱が加われば、その熱エネルギーを吸収して構造に変化が起こり、これは、コングリシニン(7S)は60~73℃で、グリシニン(11S)は80~95℃で変性するからである。
【0003】
大豆タンパク価(Soy protein score)は73で、肉類タンパク質(78~83)より低く、消化率(Digestibility)は動物性タンパク質である卵、牛乳又は牛乳カゼイン、牛肉などより劣るが、大豆タンパク質原料製品の加工処理、例えば加熱処理、非タンパク態窒素化合物(脂肪、繊維質、灰分、炭水化物など)の除去などによって純粋タンパク質の含量が高くなって肉類タンパク質と類似した消化率を有することになる。米国FDA(Food and Drug Administration)のタンパク質の質的評価で、タンパク質の必須アミノ酸形態(Essential amino acid pattern)を人間に必要な必須アミノ酸要求量で割った後、タンパク質の消化率を反映して評価するPDCAAS(Protein Digestability Corrected Amino Acid Score)を導入して測定したとき、肉類タンパク質は0.92、卵及び牛乳タンパク質は1.00、そして大豆タンパク質は0.99である。これは牛乳タンパク質と類似した程度に優れた結果である。
【0004】
豆腐は大豆タンパク質を効率的に摂取することができる食品であり、製造過程中に非水溶性炭水化物と繊維質などはおから形態として除去され、タンパク質が凝固して作られる。豆腐はとっくの昔から多様な種類として消費されて来た。豆腐の種類は、俗に接することができるパック豆腐(木綿豆腐)を始めとして、充填豆腐(おぼろ豆腐)、絹豆腐(絹ごし豆腐)、凍り豆腐(凍結豆腐)の他に、燻製豆腐、乾燥豆腐など、非常に多様であり、全世界的に豆腐関連産業及び大豆タンパク質を用いた産業は非常に大きい。豆腐の種類によって違いはあるが、一般的な製造方法は、大豆の浸漬、磨砕、加熱、おから濾過の後、豆乳に凝固剤を添加して凝固させることである。これを原理的な側面で説明すれば、大豆が水を吸収すれば、大豆のタンパク質と脂肪が吸収された水によって膠質溶液になり、これを磨砕すれば膠質溶液が豆構造の外に出る。膠質溶液が豆腐の形態を有するように固めるためには、二つの方法で凝固させることができる。一番目はpH4~6程度の酸溶液(主にグルコノデルタラクトンを使用)を用いる方法であり、二番目はマグネシウム又はカルシウムイオンが含まれた‘苦汁(主に塩化マグネシウム又は調剤海水塩化マグネシウムを使用)’あるいは‘硫酸カルシウム’を用いる方法である。これは、大豆タンパク質グロブリン(グリシニン、コングリシニン)が等電点又は2価陽イオンによって沈殿する性質を用いたものである。
【0005】
従来、豆腐の食感、質感などを変化させるための多様な技術が知られている。大部分は、豆腐の凝固過程中に豆腐のカードの形成を調節するかあるいは豆腐又は豆乳に他の添加物(牛乳、チーズなど)を混合して豆腐の食感を変形させる技術である。これらの技術の一部は豆腐に分類することが曖昧であるか豆腐固有の食感や質感を改善したものと見なしにくいものが多い。
【0006】
その他に、製造された豆腐を炭酸水素ナトリウムなどの塩基性溶液に浸漬又は塗布して柔らかい質感を有する豆腐を製造する技術があるが、最終形態が塩基性溶液処理前と大きく変わったものがないという限界がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】韓国特許登録第10-0921410公報
【文献】韓国特許登録第10-1865538公報
【文献】韓国特許登録第10-1335119公報
【文献】韓国特許登録第10-1707209公報
【文献】韓国特許登録第10-1692767公報
【文献】韓国特許登録第10-0449008公報
【文献】特開2019-140994号公報
【文献】中国特許公開第110679671公報
【文献】中国特許公開第107467200公報
【文献】中国特許公開第103749738公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、塩基性物質を用いて既に凝固した豆腐の物性を向上させる方法を提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、香ばしいながらも既存の豆腐と差別化して粘い感じの澱粉糊又はどろどろした感じのカスタードクリームのようなテクスチャを得るための製造方法及びそれによる豆腐を提供することである。
本発明のさらに他の目的は、家庭食事代替食(Home Meal Replacement)に適した冷凍保管及び流通の可能な豆腐を提供することである。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、既存の豆腐に拒否感がある消費者層がより手軽く植物性タンパク質を摂取することができるように誘導し、さらに豆腐産業を発展させて多様性を拡大させることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、
本発明は、1)塩基性軟化溶液を製造する段階と、2)前記段階1)の塩基性軟化溶液に豆腐を浸漬する段階と、3)前記段階2)の浸漬した後、豆腐の表面に天ぷら粉を塗布する段階と、4)前記段階3)の天ぷら粉の塗布された豆腐を油で揚げる段階と、を含む豆腐の製造方法を提供する。
【0012】
また、本発明は、前記1)~4)段階を含み、さらに揚げられた豆腐を5)冷蔵又は冷凍の後に再加熱する段階を含む豆腐の製造方法を提供する。
【0013】
また、本発明は、前記本発明による製造方法によって製造され、油揚げ直後に豆腐のテクスチャが粘い感じの澱粉糊やどろどろした感じのカスタードクリームと類似しており、冷めても豆腐本来の形態に復元せずに硬いモツァレラチーズ形態を有する豆腐を提供する。
さらに、本発明は、前記本発明による豆腐から、料理、調味、乾燥、冷凍、又は粉砕などの加工によって製造された食品素材を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、既存の豆腐と差別化する粘い感じの澱粉糊又はどろどろした感じのカスタードクリームのようなテクスチャを有し、豆腐臭が除去され、風味が一層良くなった豆腐の製造が可能である。
前記豆腐は新しい食品又は素材として使うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明によって製造する豆腐の製造方法を示すフローチャートである。
図2】本発明によって製造する豆腐の製造方法に保管及び再加熱過程が付け加わった方法のフローチャートである。
図3】豆腐を塩基性軟化溶液に浸漬した後、表面に天ぷら粉を塗布しないで揚げたときの写真であり、一般的な豆腐は形態を維持するが、物性の改質された豆腐は固相ではない流動性の形態に軟化したことを確認することができる。
図4】豆腐を軟化溶液に浸漬した後、表面に天ぷら粉を塗布して油で揚げたとき、軟化程度によって変化したテクスチャの状態別写真である。
図5】正常に軟化した豆腐を油で揚げてから冷やしたとき(左側)と冷凍の後にエアフライアで再加熱したとき(右側)の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明で使われる用語を定義する。
本発明で使われる用語‘澱粉糊’とは、一般的に知られた澱粉を水に溶いて熱を加えることで得られる粘い粘性物を言う。澱粉は冷たい水には溶けないが、お湯ではゲル状に溶けて糊のように粘くなり、これを糊化(gelatinization)と言う。糊化した澱粉液を冷たい所に長時間放置すれば再び半結晶状態に戻ることを老化(retrogradation)と言う。
【0017】
軟化した豆腐は油揚げ工程によって加熱され、糊化した澱粉糊やどろどろしたカスタードクリームのような質感を有するようになり、これを冷たく冷やせば老化した澱粉糊のように硬くなったモツァレラチーズのような質感に変わる。
【0018】
本発明で使われる用語‘軟化溶液’とは、既存の豆腐の硬い物性をより柔らかくし、油で揚げれば粘い感じの澱粉糊やどろどろした感じのカスタードクリームのようなテクスチャを有するように豆腐を溶かす溶液を意味する。
【0019】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、
1)塩基性軟化溶液を製造する段階と、
2)前記段階1)の塩基性軟化溶液に豆腐を浸漬する段階と、
3)前記段階2)の浸漬した後、豆腐の表面に天ぷら粉を塗布する段階と、
4)前記段階3)の天ぷら粉の塗布された豆腐を油で揚げる段階と、
を含む豆腐の製造方法を提供する。
【0020】
前記製造方法において、前記段階1)の塩基性軟化溶液はpH7.6~12.5の軟化溶液であることが好ましく、豆腐の浸漬後にもその浸漬液の液性が塩基性を維持しなければならない。
【0021】
前記塩基性軟化溶液は、クエン酸三ナトリウム、第二リン酸カリウム、第三リン酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、アルギニン及びリシンからなる群から選択されるいずれか1種以上を含む溶液であることが好ましいが、これに限定されない。
【0022】
前記製造方法において、前記段階2)の浸漬方法はどの方法でも可能であるが、二重的な質感を具現するためには軟化溶液を注射する方法が好ましい。
前記浸漬は次のa)~c)のいずれか一つで浸漬することが好ましいが、これに限定されない。
a)前記塩基性軟化溶液が0.2wt%以上~1wt%以下の濃度の場合、24~48時間浸漬、
b)前記塩基性軟化溶液が1wt%超過~5wt%以下の濃度の場合、3~24時間浸漬、
c)前記塩基性軟化溶液が5wt%超過~10wt%以下の濃度の場合、2~3時間浸漬。
【0023】
前記製造方法において、前記段階3)の天ぷら粉は特定の粉末を限定するものではなく、天ぷら粉、チヂミ粉、小麦粉、米粉及び澱粉粉からなる群から選択されるいずれか1種以上を使うことが好ましい。
【0024】
前記天ぷら粉は粉末形態又は緩いねりこ形態で塗布しても構わなく、豆腐固有の風味と味を一層よく生かすためには粉末形態で塗布することが好ましい。
【0025】
前記製造方法において、前記段階4)で油揚げに使われる食用油脂は純粋オイルであり、熱によく耐え、特有の味や香がないことが好ましい。油揚げ温度は、あまりにも熱い温度(180℃以上)で短時間油揚げするよりは、120~160℃温度でゆっくり油揚げして豆腐が充分に加熱されて粘い感じの澱粉糊やどろどろした感じのカスタードクリームのようなテクスチャを有することができるようにすることが好ましい。
【0026】
前記製造方法において、前記段階4)の油揚げの後、冷蔵又は冷凍保管の後に再加熱する段階をさらに含むことができる。
【0027】
前記再加熱の代表的な方法としては再油揚げがあるが、これに限定されず、電子レンジ、エアフライア、オーブンなどを活用することができる。
【0028】
前記再加熱は120~160℃の温度でゆっくり油揚げすることにより、豆腐が充分に加熱されて流動性ある澱粉糊のようなテクスチャを有するようにしなければならない。
【0029】
前記油揚げ又は再加熱の際、天ぷらころもに亀裂が発生しないようにすることが好ましい。天ぷらころもに亀裂が発生すれば、内部の軟化した豆腐が流失されるおそれがある。
【0030】
また、本発明は、前記本発明による製造方法によって製造された、澱粉糊のようなテクスチャを有する豆腐を提供する。
【0031】
前記豆腐は、油揚げ直後の豆腐のテクスチャが粘い感じの澱粉糊やどろどろした感じのカスタードクリームと類似しており、冷めても豆腐本来の形態に復元せずに硬いモツァレラチーズ形態を有する。
【0032】
また、本発明は前記本発明による豆腐を含む食品素材を提供する。
前記食品素材は、料理、調味、乾燥、冷凍、又は粉砕などの加工によって製造された多様な豆腐食品であることができる。
【0033】
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいて詳細に説明する。
ただ、下記の実施例及び比較例は本発明を例示するものであるだけ、本発明の内容が下記の実施例及び比較例に限定するものではない。
本発明で使用された全ての原料は、食品基準、食品添加物基準の規格に適したものであり、市中のマートで又はオンラインで購買して使った。
【0034】
<実施例1~7及び比較例1~12>軟化物質の種類による軟化溶液の製造
軟化溶液の製造にはタンパク質分解酵素が多く含有されている果汁や菜汁又は市中で得られる肉軟化剤を使った。また、食品添加物基準に登載されている添加物の中で別途の使用基準がない製品を選別して使った。
【0035】
軟化溶液の濃度は製品によって差があり、実施例及び比較例に濃度を明示した。豆腐を浸漬すれば、全体的な濃度は浸漬前より減少する。濃度が2wt%の溶液500gに豆腐200gを浸漬すれば、濃度が約1.4wt%まで減少し、pHは液性が酸性又は塩基性のいずれも浸漬後には数値がもっと中性に近く変化したが、液性自体は変わらなかった。
【0036】
それぞれ製造された軟化溶液に対する評価は、200gの豆腐を製造されたそれぞれの軟化溶液500gに24時間浸漬した後の変化した豆腐の物性評価と、浸漬した後、豆腐の表面に天ぷら粉を塗布し、最終の油揚げ処理を行った後、テクスチャ及び官能の検査とを並行した。結果は下記の表2に示した。
ここで、それぞれの評価方法は次のように遂行した。
【0037】
物性
物性測定はSUN SCIENTIFIC CO., LTD社のRheoMeter COMPAC-100IIを用い、豆腐の大きさを3*3*3cmの正六面体に切断してサンプルを作り、Adapta No.25機器を用いて強度及び硬度テストモードで測定した。
対照群は軟化溶液への浸漬前後の豆腐であり、軟化した豆腐と物性を比較して軟化した程度を評価した。
【0038】
テクスチャ
油揚げ処理された豆腐を切断し、内部を肉眼で観察して流動性及び軟化程度を評価した。
【0039】
官能
10人のパネルが製造された豆腐を摂取した後、食感及び風味を比較して下記の評価表に基づいて官能評価を実施した。
それぞれの評価は便宜上下記の表1の通りに点数化した。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
前記表2を見れば、キウイ、パイナップル、梨、パパイア、大根、タマネギのようなタンパク質分解酵素が多く含まれた果汁や菜汁の場合、豆腐タンパク質の軟化には効果がなかった。これはコラーゲンを分解して肉類のタンパク質を軟化させるものと知られており、タンパク質の種類が違う豆腐には適用されなかった。第一リン酸カリウム(pH4.2~4.7)のような酸性の溶液では豆腐の物性が固くなり、油揚げの後にテクスチャの変化はなかった。また、中性塩溶液である塩水に浸漬した場合にも豆腐の物性は固くなり、油揚げの後にテクスチャの変化も観察されなかった。
【0043】
一方、クエン酸三ナトリウム(pH7.6~9.0)、第二リン酸カリウム(pH8.7~9.3)、第三リン酸カリウム(pH11.5~12.5)、炭酸水素ナトリウム(pH8.0~9.0)の他にも、塩基性アミノ酸であるアルギニン(pH10.5~12.5)、リシン(pH8.5~10.5)のように塩基性溶液の場合、大部分の豆腐の物性が弱くなり、油揚げの後には程度の差はあるが、いずれも粘い感じの澱粉糊やどろどろした感じのカスタードクリームのようなテクスチャに変わった。その中で、第二リン酸カリウム、炭酸水素ナトリウムを使ったとき、物性、テクスチャ及び官能の評価で最も優れた。また、酸性の第一リン酸カリウムと塩基性の第三リン酸カリウムの混合溶液(pH10.5~11.5)の液性が塩基性の場合にも、軟化した豆腐の物性、テクスチャの変化を確認したが、混合溶液の液性が酸性の場合には変化がなかった。これから、製品別に差はあるが、軟化溶液が塩基性の場合、豆腐タンパク質の軟化に効果があることを確認することができた。
【0044】
<実施例8>軟化溶液の濃度による浸漬時間の変化
前記実施例1の第二リン酸カリウム溶液の濃度を異にして浸漬に必要な時間を確認した。この際、変質しやすい豆腐の特性上、浸漬温度は0~15℃に維持した。
実験結果に対する評価方法は最終の油揚げ処理を行った後、テクスチャ及び官能の評価を行って下記の表3に示した。
【0045】
【表3】
【0046】
軟化溶液の濃度によって浸漬に必要な時間が変わる。すなわち、1%以下の濃度では24時間以上の浸漬時間が必要であり、10%以上の濃度では浸漬時間をもっと縮めることができるが、完璧に軟化させるためには2wt%以上の濃度で3時間以上浸漬することが最も好ましいことを確認することができた。
【0047】
一方、官能評価では、濃度2wt%で3時間以上浸漬することが良い評価を受けたが、5wt%以上では浸漬時間が長くなるほど評価点数が落ちた。これは、高濃度の軟化溶液が豆腐の味に影響を及ぼしたことが原因であり、追後の大量生産の際には商業性や官能などを考慮して適切な軟化溶液の濃度を選択することが好ましい。
【0048】
<実施例9>浸漬温度を異にしたときの変化
前記実施例1の第二リン酸カリウム溶液の浸漬温度を異にしたときに現れる軽視変化を確認した。この際、実験に使用した軟化溶液の濃度は2wt%であり、実験結果の評価方法は<実験例1>と同様に行った。
【0049】
【表4】
【0050】
浸漬温度によって浸漬に必要な時間が変わる。高温であるほど浸漬時間が短く、温度が低くなるほど浸漬時間が長くなることを確認することができた。ただ、浸漬温度30℃、50℃では豆腐が変質する可能性が高いので、15℃以下又は80℃以上の浸漬温度が好ましい。追後の大量生産の際には作業時間及び変質などを考慮して適切な浸漬温度と浸漬時間を選択することが好ましいと思われる。
【0051】
また、実施例8及び実施例9の濃度が高いほど又は温度が高いほど浸漬時間が縮まる結果を見れば、一般的な化学反応の反応速度に影響を与える因子と同一であると思われる。したがって、濃度、温度以外の因子(例えば、軟化溶液を撹拌するとか圧力を調節するとか)に変化を与えれば浸漬時間を変化させることができるであろう。
【0052】
<実施例10>浸漬方法を異にしたときの変化
前記実施例及び実験例1で実施した浸漬方法は軟化溶液に豆腐が全体的に浸かるようにすることが最も一般的な浸漬方法である。このような方法は豆腐の表面から軟化し始めて時間が経つにつれて内部まで全体的に均一に軟化するから、油揚げの後にテクスチャの変化も全体的に均一である。
【0053】
より多様なテクスチャを有するための目的で軟化溶液を注射した部分とそうではない部分の変化を時間が経つにつれて比較しながら観察した。具体的に、豆腐の深部に軟化溶液を注射して深部のみ軟化させ、表面側は豆腐の質感を生かして二重的な質感を有するようにすることと、中心部に注射された軟化溶液が一定時間の経過によって豆腐全体に均一に拡散して全体的に均一に軟化するかを観察した。
【0054】
実験は横*縦*高さのそれぞれが3cmずつである正六面体の形態に切断したチヂミ用豆腐約27gに10wt%第二リン酸カリウム溶液5gを注射し、時間帯別に油で揚げてテクスチャの変化を確認した。注射された軟化溶液の濃度を10wt%の高濃度にした理由は、注射量を最小にし、注射後の全体濃度が実施例1の1.4wt%と類似するようにするためであり、該当実験における豆腐を含む全体濃度は約1.5wt%である。観察結果は下記の表5に示した。
【0055】
【表5】
【0056】
前記表5を見れば、軟化溶液を注射して豆腐の物性を軟化させることができ、時間経過によって全体的に均一な澱粉糊のようなテクスチャ又は特定の部分のみ澱粉糊のようなテクスチャを有し残りは豆腐固有の物性を維持して二重的な質感を具現することができることが分かった。これは一般的な浸漬方法とは反対方向に豆腐が軟化するものであり、注射液が触れた中心部から徐々に外側に軟化する原理である。ただ、二重的な質感を具現するためには軟化溶液注射後の特定時間内に油で揚げなければならないなど、製造過程に一部の制限がある。
【0057】
<実施例11>豆腐固形分含量による軟化状態の変化
豆腐の固形分含量が軟化に及ぶ影響を確認するための実験を実施した。実験条件は、前記実施例1の2%第二リン酸カリウムを軟化溶液として使い、それぞれの豆腐200gを製造された軟化溶液500gに24時間浸漬した後に変化した豆腐の物性と最終の油揚げ後のテクスチャ及び官能の評価を行った。実験に使用した豆腐は固形分に対する資料がある豆腐をマートで購入して使い、硬質豆腐の場合、弊社の韓国特許登録第10-1987905号によって製造された豆腐を使った。結果は下記の表6に示した。
【0058】
【表6】
【0059】
前記表6を見れば、一般的な木綿豆腐(チゲ用豆腐、チヂミ用豆腐及びチョダン豆腐)の場合、該当実験条件で全体的に優れた評価を受けた。一方、固形分含量が低い絹豆腐は軟化溶液に浸漬された後に大きく軟化したが、テクスチャや官能で良い評価を受けることができなかった。また、固形分含量が高い硬質豆腐は軟化溶液に浸漬された後に物性の変化がほとんどなく、テクスチャの変化もほとんどなかった。これは軟化溶液の濃度と固形分含量との間に相関関係があるものであり、絹豆腐やおぼろ豆腐のように破砕及び圧搾工程なしに冷豆乳を充填して製造する豆腐には適切でないが、追後に豆腐の固形分含量によって適切な濃度で浸漬すれば、所望の物性、テクスチャ及び官能を具現することができるであろう。
【0060】
<実施例12>油揚げの際に天ぷら粉塗布方法を異にした豆腐の製造及び評価
‘油揚げ’とは加熱された食用油脂で揚げて加工することを意味するが、再加熱は油揚げと同様な方法、又はエアフライア、オーブン及び電子レンジなどの料理器具を用いた加熱を含む。
【0061】
油揚げ工程は本発明の豆腐が粘い感じの澱粉糊やどろどろした感じのカスタードクリームのようなテクスチャを有するための必須工程である。油揚げ工程中に軟化した豆腐が特定の温度以上に加熱されて流動性ある澱粉糊のようなテクスチャが出来上がる。ただ、物性が弱くて水分が多い豆腐を油で揚げるから油揚げの温度及び時間を適宜調節することが重要である。初めからあまりにも熱い温度(180℃以上)で短時間揚げるよりは120~160℃温度でゆっくり揚げることにより、豆腐が充分に加熱されて流動性ある澱粉糊のようなテクスチャを有するようにすることが好ましい。
【0062】
油揚げに使われる食用油脂は純粋オイルであり、熱によく耐え、特有の味や香がないものであればいずれでも良い。ただ、バターとマーガリンは温度が100℃に近くに上がれば分離されるから油揚げ用油として適切でない。
【0063】
油揚げの際に豆腐の表面に天ぷら粉を塗布する理由は、普通の豆腐を油揚げ処理すれば本来の形態を維持しながら揚げられるが、図3のように本発明の豆腐は形態が崩れて流動性の物性を有するから豆腐の表面に天ぷら粉を塗布して形態を維持するためである。
【0064】
天ぷら粉と言って特定の粉末を限定するものではなく、パン粉のように粒子が太くなく、チヂミ粉、小麦粉、米粉、澱粉粉などのように粒子が細かい粉末であればいずれも使用可能である。そして、粉末形態で塗布する方法と粉末を水と混合してねりこ形態で塗布する方法があるが、どの方法を用いても油揚げの後に内部テクスチャは同一である。ただ、塗布方法によってテクスチャ、味、風味、選好度に影響を与える。下記の表7は豆腐の表面に粉末状態で塗布するときと粉末を水に練ってねり状態で塗布するときに対するテクスチャ、官能及び選好度の評価結果である。
【0065】
【表7】
【0066】
塗布方法によってテクスチャに影響を与える理由は、油揚げの温度、時間などに関係があり、ねりこ塗布の場合、粉末塗布に比べて相対的にちょっと高い温度と長い時間が必要であるからである。
【0067】
粉末形態で塗布することが官能及び選好度で高く評価される。これは、ねりこ形態で塗布して油揚げするときより天ぷらころもが薄いから豆腐固有の味をよく感じることができ、ややもすると厚いころもによって脂っこくなることも減少させることができる。
図1
図2
図3
図4
図5