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特許7231970具材として野菜を含む冷凍寿司の製造方法及び具材として野菜を含む冷凍寿司
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-21
(45)【発行日】2023-03-02
(54)【発明の名称】具材として野菜を含む冷凍寿司の製造方法及び具材として野菜を含む冷凍寿司
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/10 20160101AFI20230222BHJP
   A23L 3/36 20060101ALI20230222BHJP
   A23L 19/00 20160101ALI20230222BHJP
【FI】
A23L7/10 F
A23L3/36 A
A23L19/00 A
A23L19/00 C
A23L19/00 Z
A23L19/00 E
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022096869
(22)【出願日】2022-06-15
【審査請求日】2022-06-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518219321
【氏名又は名称】株式会社土佐料理司
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 範昭
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-188137(JP,A)
【文献】特開2004-136975(JP,A)
【文献】特開平07-322816(JP,A)
【文献】特開2009-045023(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A23B
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
具材として野菜を含む冷凍寿司の製造方法であって、
寿司米を炊き、炊き上がった米飯に合わせ酢を加え、空気を送りながら撹拌し冷却して寿司飯を製造する寿司飯製造工程と、
野菜を含む寿司具を調理する寿司具調理工程と、
前記寿司飯及び前記寿司具を用いて、前記野菜を含む寿司を製造する寿司製造工程と、
前記野菜を含む寿司を冷凍する冷凍工程と、
を含み、
前記寿司具調理工程は、前記野菜を、酸素と接触しない状態で加熱する熱処理工程を含むことを特徴とする具材として野菜を含む冷凍寿司の製造方法。
【請求項2】
前記熱処理工程は、前記野菜を、酸素と接触しない状態で80℃以上100℃未満の熱水、又は80℃乃至120℃の水蒸気を用いて5分以内の時間で加熱したのち、直ちに冷水で冷却することを特徴とする請求項1に記載の具材として野菜を含む冷凍寿司の製造方法。
【請求項3】
前記熱処理工程は、前記野菜を60℃乃至80℃の、酸素を含まない不活性ガス気流中又は密閉容器中で30分間乃至120分間加熱することを特徴とする請求項1に記載の具材として野菜を含む冷凍寿司の製造方法。
【請求項4】
前記冷凍工程は、一方向に平行な磁力線を有する静磁場内において、前記磁力線の方向に対して直角な方向に伝播する電波を照射しながら前記野菜を含む寿司を冷凍することを特徴とする請求項1に記載の具材として野菜を含む冷凍寿司の製造方法。
【請求項5】
前記一方向に平行な磁力線を有する静磁場の磁束密度は0.01テスラ乃至2.0テスラであり、前記磁力線の方向に対して垂直な方向に伝播する周波数が0.3MHz乃至10.0MHzであることを特徴とする請求項4に記載の具材として野菜を含む冷凍寿司の製造方法。
【請求項6】
前記寿司飯製造工程は、寿司米の全重量100質量%(質量%は以下同じ)に対し40質量%乃至60質量%のミルキークイーン種(農林332号)の米を含むことを特徴とする請求項1に記載の具材として野菜を含む冷凍寿司の製造方法。
【請求項7】
前記寿司飯製造工程は、前記合わせ酢に、2.5質量%乃至5.0質量%のトレハロースを加えることを特徴とする請求項1に記載の具材として野菜を含む冷凍寿司の製造方法。
【請求項8】
前記寿司飯製造工程は、前記合わせ酢に、2.5質量%乃至5.0質量%のトレハロースを加えることを特徴とする請求項6に記載の具材として野菜を含む冷凍寿司の製造方法。
【請求項9】
前記野菜は、根菜類、葉茎菜類、果菜類、果実的野菜、香辛野菜、及び果実類からなる1群のうちから選ばれる1以上であり、
前記根菜類は、大根、人参、馬鈴薯、里芋、蕪、ゴボウ、蓮根、及び山の芋を含み、
前記葉茎菜類は、白菜、キャベツ、ホウレン草、レタス、葱、玉葱、小松菜、チンゲン菜、蕗、ミツバ、春菊、ミズナ、セルリー、アスパラガス、カリフラワー、ブロッコリー、にら、及びニンニクを含み、
前記果菜類は、キュウリ、ナス、トマト、ピーマン、カボチャ、スイートコーン、サヤインゲン、サヤエンドウ、グリーンピース、そら豆、及び枝豆を含み、
前記果実的野菜は、苺、メロン、及び西瓜を含み、
前記香辛野菜は、生姜、ミョウガ、シソ、タデ、及びワサビを含み、
前記果実類は、林檎、蜜柑、夏蜜柑、葡萄、梨、柿、桃、アボガド及びバナナを含むことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の具材として野菜を含む冷凍寿司の製造方法。
【請求項10】
前記野菜が、リュウキュウ、ミョウガ、四方竹、及びタケノコの内から選ばれる1以上を含むことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の具材として野菜を含む冷凍寿司の製造方法。
【請求項11】
前記具材が、調理された野菜、並びに生又は調理された魚、肉、及び卵から選ばれる1以上の食材を更に含むことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の具材として野菜を含む冷凍寿司の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、具材として野菜を含む冷凍寿司の製造方法及び具材として野菜を含む冷凍寿司に係り、より詳しくは、冷凍して長期間保存したのちに解凍しても、萎びることなく冷凍してない野菜と同等の新鮮さ、味、色、香り、及び食感を保つことができる、具材として野菜を含む冷凍寿司の製造方法及び具材として野菜を含む冷凍寿司に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、魚介類だけでなく、野菜・果物等を自由に取り入れた寿司に人気が出ており、特に、健康や美容、そしてメンタルのセルフメンテナンスのためにヴィーガン食を取り入れる食生活が欧米中心にブームとなっている。日本においても、健康意識の高い若者やセレブリティを中心に、野菜や果物を載せた寿司をライフスタイルに取り入れる動きが活発になってきている。
また、日本各地には伝統的に野菜を具材とした寿司があり、昨今のヴィーガン食ブームとの相乗効果により、そのおいしさが見直されている。
【0003】
他方、コロナ禍によって国内旅行の機会や外食の機会が減ったために、宅配便やデリバリーのニーズも高まり、寿司を高品質のまま日持ちをさせて運搬可能にし、宅配便やデリバリーが可能な冷凍寿司を製造する方法を提供することが求められている。
そして、寿司を高品質のまま冷凍できる装置として、静磁場及びそれと直交する電波を照射する装置を備える冷凍機が開示されている(例えば特許文献1~3を参照)。
【0004】
しかしながら、具材として野菜を含む寿司(以下単に「野菜を含む寿司」と記すことがある)を冷凍した場合には、野菜は短時間で萎れ、変色することにより新鮮さを失い、上記の冷凍機を用いても新鮮さ、味、色、香り、及び食感が著しく低下するいう現象が起こる。このために寿司を冷凍し、宅配便やデリバリーで販売することが難しいという問題がある。
【0005】
かかる状況において、本発明者は、野菜を冷凍保存する場合に起こる新鮮さ、味、色、香り、及び食感が著しく低下する現象の主原因が、ポリフェノールオキシダーゼによる野菜の細胞膜の「ポリフェノール」の酸化分解であるとの知見を得た。
「ポリフェノール」は、植物に含まれ、複数のフェノール性水酸基(ベンゼン環に直結した水酸基、但しその一部はメチル化されていてもよい)を含む化合物群であって、抗酸化作用を有し、動植物の生命を維持するための重要な役割を果たす化合物群の一般名である。
【0006】
また、ポリフェノールオキシダーゼは、酸素(空気)の存在下において、ポリフェノールを酸化分解して褐色ないし黒色の酸化物(ポリフェノール酸化物)を生成させる分解酵素であって、特に植物に多く含まれ、植物の細胞壁を構成する。例えばリンゴの皮をむいた時にリンゴの果肉の表面を酸化して褐変させる酵素もポリフェノールオキシダーゼであり、この時生じる褐色の物質がポリフェノール酸化物であって、強い苦みや渋みを有し、皮をむいたリンゴの味を低下させる原因物質である。
【0007】
植物中のポリフェノールオキシダーゼは、通常は細胞内部に不活性化された状態で取り込まれているが、細胞が傷つけられると細胞外に放出されて活性化され、生体成分や生体組織を酸化分解する。そして、活性化されたポリフェノールオキシダーゼの酸化分解反応は速く強力である。
【0008】
[植物細胞に対するポリフェノールオキシダーゼの作用機構]
一般的な野菜(植物)は、水分含有量が50~98%の幅があるが、野菜の細胞は、この水分の大部分を、細胞壁で取り囲んで自由水として保持して形体を保っている。
また、野菜の細胞壁は、線状のセルロース繊維が、繊維間物質によって平面状に繋ぎ止めてられて形成されている。この細胞間物質の成分の一つとしてリグニンがある。リグニンは、ポリフェノール部分構造を含み、ポリフェノールオキシダーゼによって分解される(例えば、非特許文献1、2を参照)。
【0009】
このような植物の細胞にポリフェノールオキシダーゼが作用すると、植物細胞は、リグニンのポリフェノール部分が分解されて、巨視的な外観は維持されるが細胞膜の構成が緩み、水分が漏出し、細胞の生物活性が低下して、水分や新鮮さを失って、味、色、香り、及び食感が低下し、褐色の酸化物を生じて変色する。
【0010】
このために、野菜を含む寿司は、冷凍し、長期間冷凍保存したのちに解凍しても、具の野菜が短期間で萎びて新鮮さを失い、食した時に具材の味、色、香り、及び食感が低下し、苦みや不味さの原因となるポリフェノール酸化物を生じるという問題があった。
したがって、冷凍した寿司を提供するためには、冷凍、冷凍保存、及び解凍して食した時に、握った直後の寿司と同等の、新鮮さ、味、色、香り、食感を維持した、野菜を含む冷凍寿司の製造方法を提供することが望まれていた。
【0011】
また、冷凍した寿司を製造する場合の問題点として、寿司飯の白蝋化がある。白蝋化とは、炊きあがった米飯を冷凍、冷凍保存、及び解凍する際に、乾燥した冷気等によって水分が徐々に失われて、解凍し終わったときに米飯の水分が減少し白色化してバサバサになり、味や食感が低下する現象である。よって、寿司を製造後に冷凍、冷凍保存、及び解凍したのちでも白蝋化せず、寿司の寿司飯の部分が握りたての寿司のようにふっくらとして美味しい冷凍寿司の製造方法を提供することが望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】WO 01/24647号公報
【文献】実用新案登録第3126049号公報
【文献】特許第5086000号公報
【非特許文献】
【0013】
【文献】出村択ら、化学と生物、P313-318、Vol.53(5)、2015年
【文献】小田祥久ら、化学と生物、P795-801、Vol.51(12)、2013年
【文献】村田容常ら、日本食品化学工学会誌、P177~185、Vol.45(3)1998年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、野菜を含む寿司を、製造したのちに冷凍、冷凍保存、及び解凍しても、握った直後の寿司と同等の新鮮さ、味、色、香り、及び食感を維持した冷凍寿司、特に具材として野菜を含む冷凍寿司でも、具材の新鮮さ、味、色、香り、及び食感を維持した冷凍寿司の製造方法及び冷凍寿司を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
かかる課題を解決するための本発明の具材として野菜を含む冷凍寿司の製造方法は、寿司米を炊き、炊き上がった米飯に合わせ酢を加え、空気を送りながら撹拌し冷却して寿司飯を製造する寿司飯製造工程と、野菜を含む寿司具を調理する寿司具調理工程と、寿司飯及び寿司具を用いて、野菜を含む寿司を製造する寿司製造工程と、野菜を含む寿司を冷凍する冷凍工程と、を含み、寿司具調理工程は、野菜を、酸素と接触しない状態で加熱する熱処理工程を含むことを特徴とする。
【0016】
前記熱処理工程は、野菜を、酸素と接触しない状態で、80℃以上100℃未満の熱水、又は80℃~120℃の水蒸気を用いて5分以内の時間で加熱したのち、直ちに冷水で冷却することを特徴とする。
【0017】
前記熱処理工程は、野菜を60℃~80℃の、酸素を含まない不活性ガス気流中又は密閉容器中で30分間~120分間加熱することを特徴とする。
【0018】
前記冷凍工程は、一方向に平行な磁力線を有する静磁場内において、磁力線の方向に対して直角な方向に伝播する電波を照射しながら野菜を含む寿司を冷凍することを特徴とする。
【0019】
前記一方向に平行な磁力線を有する静磁場の磁束密度は0.01テスラ~2.0テスラであり、磁力線の方向に対して垂直な方向に伝播する、周波数が0.3MHz~10.0MHzであることが好ましい。
【0020】
本発明の寿司飯製造工程は、寿司米の全重量を100質量%(質量%は以下同じ)に対し、40質量%~60質量%のミルキークイーン種(農林332号)の米を含むことを特徴とする。
【0021】
本発明の寿司飯製造工程は、合わせ酢に、2.5質量%~5.0質量%のトレハロースを加えることができる。
本発明の寿司飯製造工程は、寿司米は、40質量%~60質量%のミルキークイーン種(農林332号)の米を含み、合わせ酢に、2.5質量%~5.0質量%のトレハロースを加えることができる。
【0022】
本発明は、野菜が、大根、人参、馬鈴薯、里芋、蕪、ゴボウ、蓮根、山の芋等を含む根菜類、白菜、キャベツ、ホウレン草、レタス、葱、玉葱、小松菜、チンゲン菜、蕗、ミツバ、春菊、ミズナ、セルリー、アスパラガス、カリフラワー、ブロッコリー、にら、ニンニク等を含む葉茎菜類、キュウリ、ナス、トマト、ピーマン、カボチャ、スイートコーン、サヤインゲン、サヤエンドウ、グリーンピース、そら豆、枝豆、バナナ等を含む果菜類、苺、メロン、西瓜等を含む果実的野菜、生姜、ミョウガ、シソ、タデ、ワサビ等を含む香辛野菜、林檎、蜜柑、夏蜜柑、葡萄、梨、柿、桃、アボカド等を含む果実類から選ばれる1以上であることを特徴とする。
【0023】
本発明は、野菜が、リュウキュウ、ミョウガ、四方竹、及びタケノコの内から選ばれる1以上を含むことが好ましい。
本発明の具材は、調理された野菜、並びに生又は調理された魚、肉、及び卵等から選ばれる1以上の食材を更に含むことができる。
【0024】
本発明の具材として野菜を含む冷凍寿司は、炊き上がった米飯に合わせ酢が加えられて冷却された寿司飯と、酸素と接触しない状態で加熱処理されて寿司飯に加えられた野菜と、からなり、一方向に平行な磁力線を有する静磁場内で磁力線の方向に対して直角な方向に伝播する電波を照射しながら冷凍されたことを特徴とする。
【0025】
本発明の具材として野菜を含む冷凍寿司の野菜は、酸素と接触しない状態で80℃以上100℃未満の熱水または80℃~120℃の水蒸気を用いて5分以内の時間加熱されたのち直ちに冷却されたものであることを特徴とする。
【0026】
前記野菜は、酸素と接触しない状態で60℃~80℃の不活性ガス気流中又は密閉容器中で30分間~120分間加熱されたものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
野菜を含む寿司は、握って直ちに食す場合は問題ないが、従来の冷凍、冷凍保存、及び解凍方法では、その過程において野菜の細胞が傷つけられてポリフェノールオキシダーゼが放出され活性化され、細胞が酸化分解され、寿司の新鮮さ、味、色、香り、及び食感が低下することがあったのに対し、本発明は、冷凍する前に具材に含まれている野菜を酸素と接触しない状態で野菜の変化しない温度で加熱する熱処理工程を行って、野菜に含まれるポリフェノールオキシダーゼを選択的に不活性化したのちに寿司を製造し、そののちに冷凍することによって、冷凍寿司がポリフェノールオキシダーゼによって酸化されるのを防ぐことができる。
【0028】
これによって本発明の具材として野菜を含む冷凍寿司は、冷凍、冷凍保存、及び解凍したのちに食しても、握った直後に食した場合と同等の新鮮さ、味、色、香り、及び食感を保つことができる。
【0029】
本発明の、冷凍寿司に用いる寿司米は、寿司米の全重量を100質量%とした場合に、低アミロース米であるミルキークイーン種(農林332号)の米を40質量%~60質量%含み、更に焚き上げた場合に異なった硬さと噛み応えを有する米飯を与える複数種類の米を配合することによって、炊き上げた米飯は良好な粘りと潤いと柔らかさとを有し、更に、合わせ酢はトレハロ-スを含むので、製造した寿司飯を冷凍、冷凍保存、及び解凍しても、水分の蒸散を防ぎ、粘りと潤いと柔らかさを維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】(A)は、本発明の一実施例に係る冷凍装置の、図1(B)のa-a線に沿った切断面を示す断面図であり、(B)は、図(A)の側面図である。
図2】本発明の一実施例に係る具材として野菜を含む冷凍寿司の製造方法を示すブロック工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に、添付図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に記載する。この記載は本発明を説明するためのものであって、この記載によって本発明の技術範囲を限定するものではない。本発明は、本発明の技術的範囲から逸脱しない範囲内で、多様に変更して実施することが可能である。
【0032】
[冷凍装置]
本発明に用いる冷凍装置は、本発明に好適に用いることができるものであれば特に制限されないが、例えば図1に示すような冷凍装置1を用いることができる。
図1(A)は、本発明の一実施例に係る冷凍装置の、図1(B)のa-a線に沿った切断面を示す断面図であり、(B)は、(A)の側面図である。
【0033】
図1(A)に示すように、冷凍装置1は、冷凍機3、送風ファン4及び冷気吐出口5を有する冷気供給管7と、冷気排出口6を有する冷気排出管8と、が連通された冷凍室2、均等な静磁場を形成する磁場生成装置20、並びに静磁場と直交する方向に電波を発信する電波発信アンテナ30を有することが好ましく、寿司載置台11に載置された寿司10を冷凍することができる。
【0034】
図1(B)に示すように、冷凍装置1は、具材として野菜を含む冷凍寿司10を、一方向(X)に平行な磁力線を有する磁束密度が0.01~2.0テスラの静磁場発生装置20の磁場において、電波発信アンテナ30から磁力線の方向(X)に対して垂直な方向(Y)に伝播する周波数が0.3~10.0MHzである電波を照射しながら冷凍することが好ましい。飯は冷凍するときに含まれる遊離水が凍って氷晶を生成するが磁場と電波によって飯に含まれる水の分子を一定方向に整列させて、生成する氷晶のサイズを小さくすることができ、氷晶が大きく成長することによって冷凍品の細胞が氷晶によって破壊されるのを防ぐことができる。
【0035】
静磁場発生装置20の磁場の磁束蜜度が0.01テスラ以下では、水の分子を十分に整列させることができず、生成する氷晶のサイズが大きくなって、冷凍品の細胞が破壊されることがあり、磁束密度が2.0テスラ以上の静磁場を発生する装置は、製造経費が高くなりすぎて経済的に好ましくない。
【0036】
また、冷凍庫2の雰囲気温度は-20℃~-75℃で行うことが好ましい。雰囲気温度が-20℃以上で冷凍すると、冷凍時間が長くなりすぎて氷晶が大きく成長すると共に、水分が分離されて寿司飯の白蝋化が起こる可能性があり、-75℃以下で冷凍することができる装置は、製造経費が高くなりすぎると共に装置の消費エネルギーが大きくなって経済的に好ましくない。
【0037】
本発明は、野菜を含む寿司を冷凍し、長期間冷凍保存したのち解凍しても、握った直後の寿司と同等の新鮮さ、味、色、香り、及び食感を維持することができる、野菜を含む冷凍寿司の製造方法及び冷凍寿司を提供するものである。
以下に、野菜を冷凍する際の問題点とその解決手段を詳細に説明する。
【0038】
[野菜の細胞に関して]
大部分の野菜は、水分が50~95%の範囲であり、野菜の細胞はこの水分の大部分を細胞壁で囲んで自由水として保存し、野菜としての形状を維持する。
ここで、細胞壁には、一次細胞壁と二次細胞壁との2種類がある。一次細胞壁は植物細胞の発生初期から形成され、柔軟性を有し、全体的な形状や機能を制御する。
【0039】
また、二次細胞壁は、一次細胞壁の内側に形成され、水分の通路となり水分の蒸発を防ぎ、細胞に機械的な強度を与え、樹木では細胞の成長後は強固な木質部を形成する。(例えば非特許文献1、2を参照)。そして、食用になる植物は、一次細胞壁の内側に2次細胞壁が薄く形成されたような状態の、食するのに適当な硬さと柔軟性と備えた細胞からなる。
【0040】
そして、一次細胞壁も二次細胞壁も、共に主成分として繊維状のセルロース微繊維が平行に並べられ、その間を細胞壁構成成分で繋ぎ止められて細胞壁が形成されるが、一次細胞壁と二次細胞壁とは異なった細胞壁構成成分からなる。このうち、2次細胞壁は、細胞壁構成成分としてポリフェノールであるリグニンを多量に含む。
【0041】
[ポリフェノール]
ここで、ポリフェノールとは、複数のフェノール性水酸基(但しその一部はメチル化されていてもよい)を含む化合物であって、生体内で抗酸化作用を有し、生物の生命を維持するための重要な役割を果たす化合物の一般名であり、特に植物に多く含まれ、ポリフェノールオキシダーゼによって分解される。
【0042】
[ポリフェノールオキシダーゼ]
一方、ポリフェノールオキシダーゼは、酸素(空気)の存在下においてポリフェノールを酸化分解して褐色ないし黒色の酸化物(ポリフェノール酸化物)を生成させる分解酵素である。例えばリンゴの皮をむいたときに、リンゴの果肉の表面を酸化して褐変させる酵素もポリフェノールオキシダーゼであり、この時生じる褐色の物質がポリフェノール酸化物であって、強い苦みや渋みを有し、例えば皮をむいたリンゴの味を低下させる原因である。
【0043】
そして、植物細胞にポリフェノールオキシダーゼが作用すると、植物細胞は、2次細胞壁のセルロース微繊維を繋ぎとめているリグニンのポリフェノール部分が酸化されて切断され、細胞全体が緩んだ構造になり、巨視的には細胞膜が萎びた形状になり、水分が漏れ、軟化することにより新鮮さが失われ、味、色、香り、及び食感が低下し、生成物は強い苦みを有するとういう現象が起こる。そのうえ、ポリフェノールオキシダーゼの酸化分解反応は、強力で反応速度が速い。
【0044】
更に、ポリフェノールオキシダーゼは、通常は不活性化された状態で植物細胞の内部に取り込まれているが、細胞が傷つくと細胞外に放出され、活性化される。
しかし、ポリフェノールオキシダーゼは、酸素がない状態ではポリフェノールを分解することができない。また60℃~70℃に加熱されると失活する(例えば非特許文献3を参照)。
【0045】
[ポリフェノールオキシダーゼの選択的不活性化]
本発明は、上記のポリフェノールオキシダーゼの性質を利用し、野菜を冷凍する前に野菜を酸素と接触しない状態で、かつ野菜の新鮮さ、味、色、香り、及び食感が変化しないような条件で加熱して、野菜の新鮮さ、味、色、香り、及び食感を維持したままでポリフェノールオキシダーゼを選択的に不活性化することによって、野菜の新鮮さを保ったままで野菜が酸化分解されるのを防ぐことを特徴とする。そして、そののちに野菜を含む寿司を冷凍することによって、長期間冷凍保存した後で解凍し食しても、握った直後の寿司と同様の味及び外観を有する冷凍寿司の製造方法を提供することを特徴とする。
【0046】
図2は、本発明の一実施例に係る具材として野菜を含む冷凍寿司の製造方法を示すブロック工程図である。
図2に示すように、本発明の野菜を含む冷凍寿司の製造方法は、寿司米を炊き、炊き上がった米飯に合わせ酢を加え、撹拌しながら空気を送って冷却して寿司飯を製造する寿司飯製造工程と、野菜を含む寿司具を調理する寿司具調理工程と、野菜を、酸素と接触しない状態で加熱してポリフェノールオキシダーゼを失活させる熱処理工程と、寿司飯と寿司具とから野菜を含む寿司を製造する寿司製造工程と、野菜を含む寿司を冷凍する冷凍工程とをこの順で行うことが好ましい。なお、熱処理工程は、冷凍工程より前に行えばよく、寿司具調理工程のいずれの段階で行うかは任意である。
【0047】
[熱処理工程]
本発明は、野菜を、酸素と接触しない状態で加熱する熱処理工程を行うことによって、野菜の新鮮さ、味、香り、及び食感を維持したままでポリフェノールオキシダーゼを選択的に加熱分解して失活させ、ポリフェノールオキシダーゼによって野菜が酸化されるのを防ぐことができる。
【0048】
[具材に関して]
また本発明の製造方法を用いた野菜を含む冷凍寿司は、具材となる野菜を根菜類、葉茎菜類、果菜類、果実的野菜、香辛野菜、及び果実類等から選ばれる食用植物の1以上とすることによって、野菜や果物を載せた新しい寿司の冷凍寿司として提供することができる。
更に本発明の製造方法を用いた野菜を含む冷凍寿司は、調理された野菜、並びに生又は調理された魚、肉、及び卵から選ばれる1以上を含む食材を寿司飯に載せた新しいジャンルの寿司を冷凍寿司として提供することができる。
【0049】
本発明の野菜を含む冷凍寿司は、具材として、リュウキュウ、ミョウガ、四方竹、及びタケノコの内からから選ばれる1以上を含むことができるので、例えば、高知県の伝統的な特産品である野菜寿司の冷凍寿司を製造し、高品質のまま日持ちをさせて全国的に運搬可能な冷凍寿司として店頭や配送で販売する手段を提供することができる。
【0050】
ここで、熱処理工程の条件は、野菜の種類に対応して決定することが重要である。
たとえば野菜が白菜、キャベツ、ホウレンソウ、レタス、小松菜、チンゲン菜、蕗、ミツバ、春菊、水菜、セルリー、アスパラガス、カリフラワー、ブロッコリー、及びにら等を含む葉茎菜類である場合は、野菜を80℃以上100℃未満の熱水又は80℃~120℃の水蒸気を用いて5分以内の時間で加熱したのち、直ちに冷水で冷却する急速熱処理工程(所謂湯通し工程又はブランチング操作)を用いることが好ましい。ここで熱水または冷却水に1~5%の食塩を加えることができ、また、冷水に氷を加えることができる。
【0051】
また、野菜が大根、人参、馬鈴薯、里芋、蕪、ゴボウ、蓮根、山の芋等を含む根菜類の場合は、野菜を60℃~80℃で、酸素を含まない、不活性ガス気流中又は密閉容器中で30分間~120分間加熱する無酸素加熱工程によって、ポリフェノールオキシダーゼを選択的に失活させることができる。
【0052】
以上のように、本発明は、野菜を含む冷凍寿司の製造工程において、野菜を80℃以上100℃未満の熱水又は80℃~120℃の水蒸気を用いて5分以内の時間、又は60℃~80℃で、酸素を含まない不活性ガス気流中又は密閉容器中で30分間~120分間加熱する熱処理工程を行うことによって、ポリフェノールオキシダーゼを選択的に分解し、冷凍して長期間冷凍保存後に解凍しても、味も外観も冷凍前と変化しないような、野菜を含む冷凍寿司とすることができる。
【0053】
また、本発明は、加熱処理工程を行ってポリフェノールオキシダーゼを選択的に分解してから冷凍するので、従来はポリフェノールオキシダーゼによって具材が酸化分解されていたような場合でも、本発明の方が従来の方法よりおいしく調理することができるという優れた効果を有することができる。
【0054】
[寿司飯に関して]
本発明の他の実施形態は、長期間冷凍保存し解凍して食しても、ふっくらとして美味しく、冷凍してない寿司飯と同等の味及び食感を有するおいしい冷凍寿司飯を製造することである。
従来の冷凍寿司飯は、冷凍保存して解凍した場合に、米飯が乾燥してバサバサになって白蝋化し、味及び食感が低下することがあった。
【0055】
一般的にアミロース含量が低い品種の米は、炊飯した場合に水分を多く含み、白蝋化しにくいことが知られている。
本発明において寿司飯の製造は、寿司米の全重量を100質量%とした場合に、低アミロース米であるミルキークイーン種の米(農林332号)を40質量%~60質量%含むことによって、炊き上げた米飯は良好な粘りと潤いと柔らかさとを有し、炊飯後に合わせ酢を加えてすし飯にした後に、冷凍、冷凍保存、及び解凍しても、粘りと潤いと柔らかさを保持すると共に、更に適当な硬さと噛み応えを備えたを配合して寿司飯を製造することができ、食した際の食感を、握りたての寿司に近づくようにすることができる。
ここで、ミルキークイーン種の米に添加するのに好ましい米として、例えばササニシキ、コシヒカリ種、及び日本晴等の米を挙げることができるが、配合する米はこれらの種類に限られるものではない。
【0056】
また、本発明の寿司飯は、合わせ酢に、寿司米の全重量を100質量%とした場合に2.5質量%~5.0質量%のトレハロースを加えることができる。これによって、トレハロースが米の周りに膜を作り、水分が逃げないようにするので、水分が集まって水滴/氷晶ができにくくなり、また、氷晶が成長して細胞が破壊されるのを防ぎ、冷凍、冷凍保存、及び解凍したのちも、ふっくらとして美味しく、冷凍前と同等の味及び食感を有する寿司飯とすることができる。
【0057】
[製造例1]寿司飯製造工程
米300gを水洗し、水360mLとだし昆布10cmとを入れ30分間浸漬したのち炊飯した。また、酢60mL、上白糖27g、塩6g、ゆず酢15mL、及び任意の量の天然又は化学調味料及びゴマを加えた合わせ酢を製造した。
焚き上げた米飯を寿司桶に移し、上記の合わせ酢を加え撹拌し送風しながら冷却して寿司飯を製造した。
【0058】
[実施例1]
1.寿司具調理工程及び熱処理工程
みょうがを水洗し、窒素気流中において、沸騰している3%の食塩を含む水に10~30秒間漬ける熱処理を行ったのち、冷風で冷却し甘酢に漬けた。
【0059】
2.寿司製造工程
冷却したみょうがを2つ切りにして、握った寿司飯に載せ、みょうが寿しとした。また、みょうがに寿司飯を詰めてもよく、みょうがの芯の部分は刻んで寿司飯と混ぜてもよい。
【0060】
3.冷凍及び解凍工程
寿司を、密封容器中で、一方向に平行な磁力線を有する磁束密度が0.5テスラの静磁場内において、周波数が3MHzであり磁力線の方向に対して垂直な方向に伝播する電波を照射しながら、雰囲気温度-35℃で冷凍し、3か月冷凍庫(-20℃)で保存後、室温に放置して解凍した。
【0061】
[比較例1]
実施例1と同様に、但し熱処理工程を行わず冷凍及び解凍工程をおこなった。
<結果>
寿司具調理工程において熱処理工程を行わなかった比較例1の冷凍みょうが寿司は、具材のみょうがが茶褐色に変色し柔らかくなってシャリ飯にへばりついてしまい、食してもみょうがの独特の辛みと香味が失われて苦くなり、食味が著しく劣化した。しかし、実施例1に係る本発明の冷凍みょうが寿司は、握った直後のみょうが寿司と、新鮮さ、味、色、香り、及び食感に差がなかった。
【0062】
[実施例2]四方竹
1.寿司具調理工程及び熱処理工程
四方竹を水洗し、窒素気流中80℃で30分間加熱処理(熱処理工程)し、だしと調味料で煮て一晩味をしみ込ませたのち空洞の部分にすし飯を詰めて実施例1と同じ条件で冷凍、冷凍保存、及び解凍工程を行った。
【0063】
[比較例2]
実施例2と同様に但し、四方竹の熱処理工程を行わずに、だしと調味料で煮て一晩味をしみ込ませたのち空洞の部分にすし飯を詰めるという、従来の工程で四方竹の冷凍寿司を製造して、冷凍保存、及び解凍工程をおこなった。
[比較例3]
四方竹を水洗し、80℃で30分間加熱処理したのちに、だしと調味料で煮て一晩味をしみ込ませ、空洞の部分にすし飯を詰めるという従来の工程で四方竹の寿司を製造した。
【0064】
<結果>
実施例2の、熱処理工程を行ったのちにだしと調味料で煮て一晩味をしみ込ませ、空洞の部分にすし飯を詰め、冷凍、冷凍保存、及び解凍工程を行った四方竹の冷凍寿司は、食した場合に、比較例3の従来の工程で製造した直後の四方竹の寿司より、味、色、香り及びしゃきしゃき感が優れていた。
比較例2の、熱処理工程を行わずにだしと調味料で煮て一晩味をしみ込ませ、空洞の部分にすし飯を詰め、冷凍、冷凍保存、及び解凍工程を行った四方竹の冷凍寿司は、実施例2の四方竹の冷凍寿司及び比較例3の従来の工程で製造した直後の四方竹の寿司より、味、色、香り及びしゃきしゃき感が劣っていた。
【0065】
[実施例3]
ミルキークイーンとコシヒカリ種の米を質量比で0:100、30:70、40:60、50:50、60:40、70:30、100:0の比率で混合した米を製造し、製造例1の寿司飯製造工程に従って寿司飯を炊き、合わせ酢を加えて寿司飯を製造し、それぞれの寿司飯を雰囲気温度-35℃で冷凍し-20℃で3週間冷凍保存後解凍した。比較結果を表1に示す。表1に示すように、ミルキークイーンとコシヒカリ種の米を重量比で40:60質量%~60:40質量%含む米から製造した寿司飯は、冷凍、冷凍保存、及び解凍後も適当な固さ及び潤いを有し、寿司飯として十分な性質を示した。
【0066】
【表1】
【0067】
[実施例4]
ミルキークイーン種の米50質量%とコシヒカリ種の米50質量%とからなる米300gを水洗し、水360mLとだし昆布10cmとを入れ30分間浸漬したのち炊飯し米飯を製造した。
また、酢60mL、上白糖27g、塩6g、ゆず酢15mL、任意の量の天然又は化学調味料、及びゴマを加えた合わせ酢を製造した。
焚き上げた米飯を寿司桶に移し、上記の合わせ酢を加え撹拌し送風しながら冷却して寿司飯を製造した。
寿司飯を握ってシャリ玉を作り、密封容器中で、一方向に平行な磁力線を有する磁束密度が0.5テスラの静磁場内において、周波数が3MHzであり磁力線の方向に対して垂直な方向に伝播する電波を照射しながら、雰囲気温度-35℃で冷凍し、3か月冷凍庫(-20℃)で保存後、室温に放置して解凍した。
得られた寿司飯は、冷凍及び解凍後食しても、ふっくらとして美味しく、適当な潤い、粘り及び固さを有し、寿司飯として十分な性質を示した。
【0068】
[実施例5]
コシヒカリ300gを水洗し、水360mLとだし昆布10cmとを入れ30分間浸漬したのち炊飯して米飯を製造した。
また、酢60mL、上白糖21g、トレハロース12.0g、塩6g、ゆず酢15mL、任意の量の天然又は化学調味料、及びゴマを加えた合わせ酢を製造した。なお、トレハロースは砂糖の1/2~1/3の甘味を有するので上白糖の量を減らした。
焚き上げた米飯を寿司桶に移し、上記の合わせ酢を加え撹拌し送風しながら冷却して寿司飯を製造した。
寿司飯を握ってシャリ玉を作り、密封容器中で、一方向に平行な磁力線を有する磁束密度が0.5テスラの静磁場内において、周波数が3MHzであり磁力線の方向に対して垂直な方向に伝播する電波を照射しながら、雰囲気温度-35℃で冷凍し、3か月冷凍庫(-20℃)で保存後、室温に放置して解凍した。
得られた寿司飯は、トレハロースが上白糖より高価であり、よりさっぱりした甘味を有するという相違点があるが、トレハロースを加えたことにより、冷凍及び解凍後食しても、ふっくらとして美味しく、適当な潤い、粘り及び固さを有し、寿司飯として十分な性質を示した。
【0069】
[実施例6]
ミルキークイーン50質量%とコシヒカリ50質量%とからなる米300gを水洗し、水360mLとだし昆布10cmとを入れ30分間浸漬したのち炊飯して米飯を製造した。
また、酢60mL、上白糖24g、トレハロース12.0g、塩6g、ゆず酢15mL、及び任意の量の天然又は化学調味料及びゴマを加えた合わせ酢を製造した。
焚き上げた米飯を寿司桶に移し、上記の合わせ酢を加え撹拌し送風しながら冷却して寿司飯を製造した。
寿司飯を握ってシャリ玉を作り、密封容器中で、一方向に平行な磁力線を有する磁束密度が0.5テスラの静磁場内において、周波数が3MHzであり磁力線の方向に対して垂直な方向に伝播する電波を照射しながら、雰囲気温度-35℃で冷凍し、3か月冷凍庫(-20℃)で保存後、室温に放置して解凍した。
得られた寿司飯は、解凍後食しても、ふっくらとして美味しく、適当な潤い、粘り及び固さを有し、白蝋化に対しては強い抵抗性を有すると共に寿司飯として十分な性質を示した。
【0070】
以上、本発明に関する好ましい実施形態を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の属する技術範囲を逸脱しない範囲での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0071】
1 冷凍装置
2 冷凍室
3 冷凍機
4 送風ファン
5 冷気吐出口
6 冷気排出口
7 冷気供給管
8 冷気排出管
10 冷凍寿司
11 寿司載置台
20 磁場発生装置
30 電波発信アンテナ
X 静磁場の方向
Y 電波の伝播方向
【要約】
【課題】具材として野菜を含む寿司を冷凍し、長期間冷凍保孫したのちに解凍して食しても、寿司飯はもとより具の野菜も、握った直後の寿司と同等の味及び外観を維持した、具材として野菜を含む冷凍寿司の製造方法を提供する。
【解決手段】寿司飯製造工程と、寿司具調理工程と、寿司製造工程と、寿司具調理工程と、野菜を、酸素と接触しない状態で60℃~120℃未満で0分~60分間(但し0分は除く)加熱する熱処理工程と、冷凍する冷凍工程と、を含むことを特徴とする。また、寿司飯製造工程は、合わせ酢にトレハロースを加えることを特徴とする。
【選択図】 図1

図1
図2