(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-21
(45)【発行日】2023-03-02
(54)【発明の名称】クロージャの補修方法、及び補修装置
(51)【国際特許分類】
H02G 15/113 20060101AFI20230222BHJP
H02G 15/24 20060101ALI20230222BHJP
【FI】
H02G15/113
H02G15/24
(21)【出願番号】P 2018106141
(22)【出願日】2018-06-01
【審査請求日】2021-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】518241849
【氏名又は名称】コーニング リサーチ アンド ディヴェロップメント コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】桑原 研爾
(72)【発明者】
【氏名】松本 研二
(72)【発明者】
【氏名】小林 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼須 憲吾
(72)【発明者】
【氏名】矢崎 明彦
(72)【発明者】
【氏名】難波 吉昭
(72)【発明者】
【氏名】久木元 浩二
【審査官】和田 財太
(56)【参考文献】
【文献】特公昭57-020766(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 15/113
H02G 15/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルを収容する筒状のスリーブと、前記スリーブの両端に設置された端面板とを備えたクロージャの補修方法であって、
噴射口を有するパイプを前記スリーブに設けられた孔に挿入し、
液状及び粉体状の少なくとも一方の封止材を前記噴射口から噴射して前記クロージャの内面の少なくとも一部に封止部を形成し、
前記封止部を形成した後に前記孔から前記パイプを抜き、
前記パイプを抜いた後で前記孔を閉鎖
し、
前記孔は、バルブコアを内装するバルブステムであり、
前記バルブステムから前記バルブコアを抜いて開放し、
開放された前記バルブステムに前記パイプを挿入し、
前記封止部を形成した後に前記バルブステムから前記パイプを抜き、
前記パイプを抜いた後で前記バルブステムに前記バルブコアを内装して前記バルブステムを閉鎖する、クロージャの補修方法。
【請求項2】
ガスの漏出部が生じた後で、前記封止部を形成してガスの漏出部を塞ぐ、請求項1記載のクロージャの補修方法。
【請求項3】
ガスの漏出部が生じる前に、前記封止部を形成して前記クロージャ内からのガスの漏出を未然に防ぐ、請求項1記載のクロージャの補修方法。
【請求項4】
前記スリーブ内で、前記封止材を前記端面板に向けて噴射して前記端面板の内面に封止部を形成する、請求項1~3のいずれか一項記載のクロージャの補修方法。
【請求項5】
前記封止材は、前記クロージャの内面の少なくとも一方に付着し、且つ硬化して封止部を形成する接着剤である請求項1~3のいずれか一項記載のクロージャの補修方法。
【請求項6】
前記封止材は、ガスの漏出部を埋めて封止部を形成する粉体である請求項1~3のいずれか一項記載のクロージャの補修方法。
【請求項7】
前記封止材は、主剤と硬化剤との混合によって形成される、請求項1~3のいずれか一項記載のクロージャの補修方法。
【請求項8】
クロージャの補修に使用される補修装置であって、
液状及び粉体状の少なくとも一方の封止材を加圧状態で貯留するスプレー缶と、
前記封止材を噴射するノズルユニットと、を備え、
前記スプレー缶は、前記封止材が通過するチューブと、
前記チューブに接続されると共に、押圧を受けると前記封止材の流路が開き、前記押圧を解かれると前記流路が閉じる逆流防止弁と、を備え、
前記ノズルユニットは、前記逆流防止弁に取り付けられたアクチュエータと、
前記アクチュエータに取り付けられ、前記アクチュエータを介して前記逆流防止弁の前記流路に接続されたパイプと、を備え、
前記パイプには、前記封止材が噴射される噴射口が形成されている、補修装置。
【請求項9】
前記パイプは、前記アクチュエータに接続された一方の端部と、閉鎖された他方の端部と、側部に形成された前記噴射口と、を備えている請求項
8記載の補修装置。
【請求項10】
前記パイプは、前記アクチュエータに接続された一方の端部と、前記噴射口として開放された他方の端部と、前記一方の端部と前記他方の端部との間で湾曲した湾曲部とを備え、前記他方の端部を通る軸線は、前記一方の端部を通る軸線に対して交差している、請求項
8記載の補修装置。
【請求項11】
クロージャの補修に使用される補修装置であって、
圧縮空気を噴射すると共に、液状及び粉体状の少なくとも一方の封止材を噴射するノズルユニットと、
前記ノズルユニットに接続され、前記封止材が通過する第1の経路と、
前記ノズルユニットに接続され、前記圧縮空気が通過する第2の経路と、を備え、
前記ノズルユニットは、前記第1の経路に接続された第1のパイプと、前記第2の経路に接続された第2のパイプとを備え、
前記第1のパイプは、前記封止材を噴射する噴射口を備え、
前記第2のパイプは、前記圧縮空気を噴射する噴射口を備え、
前記第1のパイプの前記噴射口の向きは、前記第2のパイプの前記噴射口の向きに対して交差している、補修装置。
【請求項12】
前記封止材が貯留されたタンクと、前記第2のパイプに圧縮空気を供給するコンプレッサとを更に備え、
前記第1の経路は前記第1のパイプと前記タンクとに接続され、前記第2の経路は前記第2のパイプと前記タンクとに接続されている請求項
11記載の補修装置。
【請求項13】
互いに混合されて前記封止材となる主剤と硬化剤のうち、前記主剤が貯留された第1のタンクと、前記硬化剤が貯留された第2のタンクと、前記第1の経路上に配置され、前記主剤と前記硬化剤とを混合するミキサーと、を備え、
前記第1の経路は、前記ミキサーと前記第1のタンクとに接続されて前記主剤が通過する第1の導入管路と、前記ミキサーと前記第2のタンクとに接続されて前記硬化剤が通過する第2の導入管路と、前記ミキサーと第1のパイプとに接続されて前記封止材が通過する合流管路と、を備えた請求項
11記載の補修装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロージャの補修方法、及び補修装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、クロージャを解体すること無く、クロージャのガス漏洩を抑止することができ、その抑止効果を長時間持続させることができるガス漏洩補修工法が開示されている。また、特許文献1の段落「0030」には、「このようなガス漏洩補修具10,10Aを用いたガス漏洩補修工法によると、クロージャ1の外側でケーブル外周封止部材20を通信ケーブルLの外周面に密着して巻き付ける工程と、ケーブル外周封止部材20の外周に密着すると共にクロージャ1の端面の全面を被う全面封止部材21をクロージャ1の端面に配備する工程と、全面封止部材21の外周を囲んで、全面封止部材21をクロージャ1の端面側に押圧する押圧具30を装着し、押圧具30によって全面封止部材21を押圧する工程とを有する。これによって、通信ケーブルLの外周と端面板3との間のシール部や端面板3とスリーブ4との間のシール部などからのガス漏洩をクロージャ1を解体すること無く抑止することができ、通信ケーブルLの外周面がポリエチレン製などで樹脂などに接着しにくいものであっても、ケーブル外周封止部材20と全面封止部材21の密着によって効果的にシール部のガス漏洩を抑止することができる。そして、その抑止効果を長時間持続させることができる。」との記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のガス漏洩補修工法は、クロージャの外側に封止部材を設置している。クロージャの外側に封止部材を設置した場合、漏出するガスの圧力に抵抗すべく、クロージャの外側で封止部材を支持する構造が大型化し易く、省スペースでの施工に不向きだった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面は、ケーブルを収容する筒状のスリーブと、スリーブの両端に設置された端面板とを備えたクロージャの補修方法であって、噴射口を有するパイプをスリーブに設けられた孔に挿入し、液状及び粉体状の少なくとも一方の封止材を噴射口から噴射してクロージャの内面の少なくとも一部に封止部を形成し、封止部を形成した後に孔からパイプを抜き、パイプを抜いた後で孔を閉鎖する。
【0006】
本発明の一側面は、クロージャの補修に使用される補修装置であって、液状及び粉体状の少なくとも一方の封止材を加圧状態で貯留するスプレー缶と、封止材を噴射するノズルユニットと、を備え、スプレー缶は、封止材が通過するチューブと、チューブに接続されると共に、押圧を受けると封止材の流路が開き、押圧を解かれると流路が閉じる逆流防止弁と、を備え、ノズルユニットは、逆流防止弁に取り付けられたアクチュエータと、アクチュエータに取り付けられ、アクチュエータを介して逆流防止弁の流路に接続されたパイプと、を備え、パイプには、封止材が噴射される噴射口が形成されている。
【0007】
本発明の一側面は、クロージャの補修に使用される補修装置であって、圧縮空気を噴射すると共に、液状及び粉体状の少なくとも一方の封止材を噴射するノズルユニットと、ノズルユニットに接続され、封止材が通過する第1の経路と、ノズルユニットに接続され、圧縮空気が通過する第2の経路と、を備え、ノズルユニットは、第1の経路に接続された第1のパイプと、第2の経路に接続された第2のパイプとを備え、第1のパイプは、封止材を噴射する噴射口を備え、第2のパイプは、圧縮空気を噴射する噴射口を備え、第1のパイプの噴射口の向きは、第2のパイプの噴射口の向きに対して交差している。
【発明の効果】
【0008】
省スペースでのクロージャの補修作業に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1はクロージャの一例を示す斜視図である。
【
図2】
図2はクロージャの第1の補修方法を実施している状態を示すクロージャの斜視図である。
【
図3】
図3はクロージャの第1の補修方法を実施している状態を示し、クロージャを一部破断して示す模式的な側面図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係る補修装置を示す断面図である。
【
図5】
図5はノズルユニットの第1の変形例を示す側面図である。
【
図6】
図6はノズルユニットの第2の変形例を示す側面図である。
【
図7】クロージャの第1の補修方法の工程を模式的に示す図である。
【
図8】クロージャの第2の補修方法の工程を模式的に示す図である。
【
図9】第2の実施形態に係る補修装置を示す説明図である。
【
図10】第2の実施形態に係る補修装置を使用した補修方法を示す説明図である。
【
図11】第3の実施形態に係る補修装置を示す説明図である。
【
図12】第4の実施形態に係る補修装置を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施形態の一側面に係るクロージャの補修方法は、ケーブルを収容する筒状のスリーブと、スリーブの両端に設置された端面板とを備えたクロージャの補修方法であって、噴射口を有するパイプをスリーブに設けられた孔に挿入し、液状及び粉体状の少なくとも一方の封止材を噴射口から噴射してクロージャの内面の少なくとも一部に封止部を形成し、封止部を形成した後に孔からパイプを抜き、パイプを抜いた後で孔を閉鎖する。
【0011】
通常、クロージャ内には一定の内圧がかけられており、外部からの水分の侵入を阻止して乾燥状態を維持している。上記の補修方法では、クロージャの外面ではなく、内面に封止部を形成する。クロージャ内の内圧は、封止部をクロージャの内面に押圧するように作用し、封止部はクロージャの内面から剥がれにくくなる。その結果、封止部を保持するための付加的な構造は不要になり、特にクロージャの外側に設置すべき装置や作業が簡略化されるので省スペースでの補修作業に有利である。
【0012】
上記の補修方法において、ガスの漏出部が生じた後で、封止部を形成してガスの漏出部を塞ぐことで、効率よく、且つ安定した状態でガスの漏出を止めることができる。
【0013】
上記の補修方法において、ガスの漏出部が生じる前に、封止部を形成してクロージャ内からのガスの漏出を未然に防ぐことで、ガスの漏出の予防に有効である。
【0014】
上記の補修方法において、スリーブ内で、封止材を端面板に向けて噴射して端面板の内面に封止部を形成することができる。端面板には、ケーブルが挿通された貫通孔が形成されている。この貫通孔は、ケーブルが通された後で閉鎖されるが、クロージャ内の他の箇所に比べてガスの漏出が生じやすい。従って、端面板の内面に封止部を形成することでガスの漏出を効果的に補修できる。
【0015】
上記の補修方法において、孔は、バルブコアを内装するバルブステムであり、バルブステムからバルブコアを抜いて開放し、開放されたバルブステムにパイプを挿入し、封止部を形成した後にバルブステムからパイプを抜き、パイプを抜いた後でバルブステムにバルブコアを内装してバルブステムを閉鎖することができる。バルブステムを利用することで、パイプを挿入する孔を簡単に形成できる。更に、バルブステムの閉鎖もバルブコアを内装することで容易に実現できる。
【0016】
上記の補修方法において、スリーブに孔を形成し、孔にパイプを挿入し、封止部を形成した後に孔からパイプを抜き、パイプを抜いた後で孔を閉鎖することができる。パイプを挿入する孔を形成する場所の自由度が増し、所望の場所を狙って封止部を形成し易くなる。
【0017】
スリーブが平坦部を備えている場合に、上記の補修方法において、パイプを挿入するための孔を平坦部に形成することができる。スリーブの湾曲部や凹凸部ではなく、平坦部に孔を形成することで、パイプを挿入するための適切な孔を容易に形成できる。
【0018】
上記の補修方法の封止材として、クロージャの内面の少なくとも一方に付着し、且つ硬化して封止部を形成する接着剤を使用することができる。クロージャの内面に付着して硬化する接着剤によって封止部を形成することにより、広い範囲に封止部を形成し易くなる。
【0019】
上記の補修方法の封止材として、ガスの漏出部を埋めて封止部を形成する粉体を使用することができる。ガスの漏出部に向けて粉体を噴射すると、粉体が漏出部に吸い込まれてガスの漏出部に埋まるので、封止部を簡単に形成できる。
【0020】
上記の補修方法で使用する封止材を、主剤と硬化剤との混合によって形成してもよい。主剤と硬化剤との混合によって封止材を形成し、その封止材を噴射して封止部を形成することができる。
【0021】
実施形態の一側面に係り、クロージャの補修に使用される補修装置であって、液状及び粉体状の少なくとも一方の封止材を加圧状態で貯留するスプレー缶と、封止材を噴射するノズルユニットと、を備えている。スプレー缶は、封止材が通過するチューブと、チューブに接続されると共に、押圧を受けると封止材の流路が開き、押圧を解かれると流路が閉じる逆流防止弁と、を備えている。ノズルユニットは、逆流防止弁に取り付けられたアクチュエータと、アクチュエータに取り付けられ、アクチュエータを介して逆流防止弁の流路に接続されたパイプと、を備えており、パイプには、封止材が噴射される噴射口が形成されている。
【0022】
この補修装置は、上記のクロージャの補修方法に使用することができる。つまり、ノズルユニットのパイプをスリーブに形成された孔に挿入し、パイプを介して噴射口から封止材を噴射してクロージャの内面の少なくとも一部に封止部を形成し、封止部を形成した後に孔からパイプを抜き、パイプを抜いた後で孔を閉鎖することができる。
【0023】
上記のノズルユニットのパイプは、アクチュエータに接続された一方の端部と、閉鎖された他方の端部と、側部に形成された噴射口と、を備えることができる。噴射口はパイプの側部に形成されているため、封止材はパイプの軸線に対して交差する方向に向けて噴射される。従って、例えば、パイプの軸線方向に対して交差する方向である側方を狙って封止材を噴射し易くなる。
【0024】
上記のノズルユニットのパイプは、アクチュエータに接続された一方の端部と、噴射口として開放された他方の端部と、一方の端部と他方の端部との間で湾曲した湾曲部とを備えている。他方の端部を通る軸線は、一方の端部を通る軸線に対して交差することができる。封止材は、パイプの一方の端部を通る軸線に対して交差する方向に向けて噴射される。従って、例えば、パイプの軸線方向に対して交差する方向である側方を狙って噴射し易くなる。
【0025】
実施形態の一側面に係り、クロージャの補修に使用される補修装置であって、圧縮空気を噴射すると共に、液状及び粉体状の少なくとも一方の封止材を噴射するノズルユニットと、ノズルユニットに接続され、封止材が通過する第1の経路と、ノズルユニットに接続され、圧縮空気が通過する第2の経路と、を備えている。ノズルユニットは、第1の経路に接続された第1のパイプと、第2の経路に接続された第2のパイプとを備えている。第1のパイプは、封止材を噴射する噴射口を備えている。第2のパイプは、圧縮空気を噴射する噴射口を備えている。第1のパイプの噴射口の向きは、第2のパイプの噴射口の向きに対して交差している。
【0026】
この補修装置は、上記のクロージャの補修方法に使用できる。この補修装置を使用する場合、ノズルユニットの第1のパイプと第2のパイプとは、スリーブに形成された孔に挿入される。クロージャ内で、第1のパイプの噴射口から噴射された封止材は、第2のパイプの噴射口から噴射された圧縮空気によって霧状に広がり、クロージャの内面の少なくとも一部に封止部を形成する。第1のパイプと第2のパイプとは、封止部を形成した後に孔から抜かれる。
【0027】
上記の補修装置において、封止材が貯留されたタンクと、第2のパイプに圧縮空気を供給するコンプレッサとを備え、第1の経路は第1のパイプとタンクとに接続され、第2の経路は第2のパイプとタンクとに接続されていてもよい。タンクに貯留された封止材は、第1の経路を通過して第1のパイプに到達し、第1のパイプの噴射口から噴射される。圧縮空気は、コンプレッサによって、第2の経路を通過して第2のパイプに到達し、第2のパイプの噴射口から噴射される。
【0028】
上記の補修装置において、互いに混合されて封止材となる主剤と硬化剤のうち、主剤が貯留された第1のタンクと、硬化剤が貯留された第2のタンクと、第1の経路上に配置され、主剤と硬化剤とを混合するミキサーと、を備え、第1の経路は、ミキサーと第1のタンクとに接続されて主剤が通過する第1の導入管路と、ミキサーと第2のタンクとに接続されて硬化剤が通過する第2の導入管路と、ミキサーと第1のパイプとに接続されて封止材が通過する合流管路と、を備えていてもよい。主剤と硬化剤とはミキサーによって混合された後に第1のパイプに到達し、第1のパイプの噴射口から噴射される。
【0029】
なお、本明細書における用語「補修」は、クロージャからのガス漏れを解消すること、使用上問題が無い程度にまで漏出を低減すること、及びクロージャからのガス漏れを予防することを含んでおり、クロージャからのガスリーク対策も含んでいる。クロージャの種類としては種々のものが挙げられる。具体的には、通信用のケーブルの接続部を保護するクロージャを挙げることができ、クロージャは、例えば地下で延びるケーブルの接続部を保護する。
【0030】
まず、クロージャの構造について説明する。例えばクロージャは、メタル通信ケーブル用のメカニカルクロージャである。
図1に示されるように、クロージャ1は、半円筒状となった2つのハーフスリーブ21を備えており、2つのハーフスリーブ21はネジ3で互いに固定されて筒状のスリーブ2になる。クロージャ1は、全体的に円筒形状を呈しており、スリーブ2はクロージャ1の側面を構成している。スリーブ2は少なくとも2本以上のケーブルCの接続部を収容する。スリーブ2の材料は、例えば、ポリプロピレンである。
【0031】
スリーブ2は、複数のリブ2aを備えている。複数のリブ2aは、クロージャ1の長手方向(クロージャ1の軸線方向、ケーブルCの延在方向)に沿って並設されている。各リブ2aはクロージャ1の周方向に沿って環状に延在している。また、ネジ3は、クロージャ1の長手方向に沿って並設されている。なお、以下の説明において、クロージャ1の軸線方向、クロージャ1の径方向、及びクロージャ1の周方向を、それぞれ単に軸線方向、径方向、及び周方向とすることがある。
【0032】
スリーブ2の外周には、リブ2aを避けて円形の平坦部2bが設けられている。平坦部2bは、スリーブ2の長手方向の両端寄りの二か所に設けられている。一方の平坦部2bには逆止弁6が設けられている。逆止弁6は、スリーブ2の内側と外側とを連通するように設けられた筒状のバルブステム61と、バルブステム61内に着脱自在に収納されるバルブコア62(「プランジャー」ともいう)とを備えている。逆止弁6にチューブを取り付け、チューブを介してクロージャ1内に圧縮空気を供給することができる。
【0033】
クロージャ1の長手方向の両端には円板形の端面板4が設置されており、2個の端面板4によってスリーブ2は封止されている。端面板4は、ケーブルCを通す円形の貫通孔4aを備える。貫通孔4aの径は、ケーブルCの外径よりも大きい。また、端面板4は、2個の半円形状の側壁部材4bがボルト接合されることによって形成されている。
【0034】
2個の側壁部材4bの間にはシーリングテープが介在しており、このシーリングテープによって2個の側壁部材4bの間における気密性が確保されている。このシーリングテープは、例えば、パテ状となっており、シーリングテープの材料としてはブチルゴムが挙げられる。
【0035】
ケーブルCには、端面板4の貫通孔4aとケーブルCとの間の隙間を塞ぐエアタイトテープTが巻き付けられている。エアタイトテープTは、ゴム製であり、例えばエアタイトテープTの材料はEPDM(エチレン・プロピレン・ジエンゴム)である。エアタイトテープTは、過酸化物架橋EPDMで構成されていてもよい。エアタイトテープTはケーブルCの外周に複数層巻き付けられる。そして、最も径方向外側に位置するエアタイトテープTの外周面が貫通孔4aの内周面に密着することによって、ケーブルCと端面板4との間が封止される。
【0036】
クロージャ1から延びるケーブルCの本数またはケーブルCの種類に応じて、端面板4と貫通孔4aの形状及び個数は適宜変更可能である。端面板4の種類は様々である。例えばケーブルの接続部から二股又は三股となってケーブルCが延び出している場合もあり、このような場合、端面板4に設けられる貫通孔4aの数は2つまたは3つとなる。
【0037】
クロージャ1の内部には内圧がかけられている。具体的には、加圧された窒素ガスまたは空気等のガスがケーブルCを通じてスリーブ2内に供給されており、このガスでスリーブ2の内部が大気圧に比べて高い気圧とされている。その結果、スリーブ2の内部への水分の浸入が阻止され、スリーブ2の内部は乾燥状態を維持される。また、スリーブ2と端面板4との間には気密保持を行うガスケットが設けられている。
【0038】
スリーブ2の外周にはバンド部材5が巻き付けられており、複数のバンド部材5がクロージャ1の長手方向に並設されている。複数のバンド部材5は、内部が高い気圧とされたスリーブ2を外側からネジ3で締め付けるために設けられており、例えばステンレスによって構成されている。
【0039】
クロージャ1では、経年劣化等により、クロージャ1内からガスが漏れてしまう場合がある。ここで、ガスの漏出を阻止するために使用されるクロージャ1の補修装置の一例について、
図2、
図3及び
図4を参照して説明する。第1の実施形態に係る補修装置7は、スプレー缶71と、スプレー缶71に取り付けられたノズルユニット72Aとを備えている。
【0040】
スプレー缶71は、封止材Sを貯留する缶本体73と、缶本体73内に配置され、封止材Sが通過するチューブ74と、チューブ74に接続された逆流防止弁75とを備えている。缶本体73には、内容物として、液状及び粉体状の少なくとも一方である封止材Sと、加圧状態で封止材Sを保持するための噴射剤Pとが貯留されている。噴射剤Pは、常温では気体であるが、圧力をかけると液体になるガスであり、例えば、代替フロンやLPG等を使用することができる。また、封止材Sは、ガスの漏出を止める封止部Laを形成可能な材料であり、スプレー缶71からの噴射が可能になる程度に粘性が低い材料を使用することができる。
【0041】
液状の封止材Sは、例えば、反応系接着剤、溶液系接着剤、固形接着剤を使用することができる。反応系接着剤は、例えば1液型または2液型のエポキシ接着剤、アクリル接着剤、ウレタン接着剤である。溶液系接着剤は、例えばエアゾール型接着剤である。固形接着剤は、例えばホットメルト接着剤である。また、粉体状の封止材Sは、例えば、接着性の無い微粒子、例えば、シリカゲル、ガラスビーズ、タルク(滑石)等を使用することができる。
【0042】
逆流防止弁75はチューブ74に接続されている。逆流防止弁75は押圧を受けると封止材Sの流路が開き、押圧を解かれると流路が閉じる。具体的には、逆流防止弁75は、缶本体73に固定された筒状のハウジング75aと、ハウジング75a内に収容され、ステムスプリング75cを介してハウジング75aに固定されたステム75bと、ハウジング75aとステム75bとの間の隙間を塞ぐステムガスケット(図示省略)とを備えている。ハウジング75aの端部(下部)には封止材Sが通過するチューブ74が接続されている。
【0043】
封止材Sは、加圧された状態で缶本体73内に貯留されている。ステムスプリング75cを圧縮するようにステム75bを押し込むと、ステム75bの側面に形成された孔が開放され、封止材Sの流路が開く。その結果、封止材Sはチューブ74、ハウジング75a、及びステム75b内を通過してステム75bの上端から吐出される。また、ステム75bの押圧を解くと、ステム75bは元の位置まで戻って孔は閉鎖され、封止材Sの流路は閉じる。
【0044】
ノズルユニット72Aは、逆流防止弁75のステム75bに取り付けられるアクチュエータ76と、アクチュエータ76に取り付けられたパイプ77とを備える。アクチュエータ76には、ステム75bとパイプ77とを接続する流路76aが形成されている。パイプ77は、アクチュエータ76の流路76aを介して逆流防止弁75に接続されている。アクチュエータ76を押し込むようにしてステム75bに押圧をかけると、逆流防止弁75の流路は開き、押圧を解くと流路は閉じる。
【0045】
パイプ77の一方の端部77aは開放され、アクチュエータ76に嵌め込まれて取り付けられている。パイプ77の他方の端部77bは、一方の端部77aに対して反対側であり、閉鎖されている。なお、以下の説明では、パイプ77の両端部77a,77bのうち、アクチュエータ76に接続された一方の端部77aを基端部といい、他方の端部77bを先端部という場合がある。
【0046】
パイプ77は、基端部77aを通る直線状の軸線Axに沿って延在する。パイプ77の先端部77bの近傍である側面には封止材Sの噴射口Naが形成されている。つまり、パイプ77には、閉鎖された先端部77bの代わりに噴射口Naとなる貫通孔が側部77cに形成されている。噴射口Naの数は単数に限定されず、複数であってもよい。また、
図5に示されるように、先端部77bが噴射口Naとして開放されたパイプ77を備えたノズルユニット72B(第1の変形例)を使用することもできる。
【0047】
また、パイプは、基端部から先端部までの全ての領域が直線状に連続する形態に限定されず、部分的に湾曲していてもよい。例えば、第2の変形例に係るノズルユニット72Cを使用することもできる(
図6参照)。第2の変形例に係るノズルユニット72Cは、部分的に湾曲したパイプ78を備えている。パイプ78は、アクチュエータ76に接続された基端部78aと、噴射口Naとして開放された先端部78bと、を備えている。また、パイプ78は、基端部を通る直線状の軸線(第1の軸線)Axを想定した場合に、基端部78aと先端部78bとの間で、第1の軸線Axに沿って延在する直線部78dと、直線部78dに対して湾曲した湾曲部78f,78gとを備えている。湾曲部78f,78gは、二か所に設けられている。先端部78bの近傍に設けられた第1の湾曲部78fは、直線部78dに対して略L字状となるように湾曲しており、パイプ78の長手方向の中央付近に設けられた第2の湾曲部78gは、直線部78dに対して略U字状となるように湾曲している。
【0048】
ここで、パイプ78の先端部78fを通って直線状に延在する軸線(第2の軸線)Ayを仮定する。第2の軸線Ayは、略L字状の第1の湾曲部78fを設けることにより、第1の軸線Axに対して交差するようになる。その結果、直線部78dを通過する封止材Sの流れの向きは、第1の湾曲部78fで変えられ、先端部78bの噴射口Naから噴射される。
【0049】
第2の湾曲部78gは、直線部78dに対し、封止材Sの噴射方向と同じ方向に向けて突き出すように設けられている。補修作業者は、第2の湾曲部78gを確認することで、直線部78dに対して第2の湾曲部78gが突き出た方向を封止材Sの噴射方向として認識できる。つまり、第2の湾曲部78gは、封止材Sの噴射方向を確認するための目印部として機能する。また、補修作業者は、第2の湾曲部78gを指で摘まみ、直線部78d回りにパイプ78を回転させることで噴射口Naの向きを変えることができる。つまり、第2の湾曲部78gは、補修作業者が噴射口Naの向きを変えるための操作部として機能する。
【0050】
(第1の補修方法)
図2、
図3及び
図7を参照してクロージャ1の補修方法の一例を説明する。クロージャ1では、経年劣化等により、クロージャ1内からガスが漏れてしまう場合がある。ガスの漏出部Lは、ケーブルCと貫通孔4aとの間(エアタイトテープTが設けられる箇所)に生じる可能性が高い。この場合、漏出部Lは、クロージャ1の内面1a,1bのうち、端面板4の内面1aに生じたことになる。なお、漏出部Lは、ケーブルCと貫通孔4aとの間以外の箇所に生じる可能性もある。例えば、スリーブ2の破損等により、ガスが漏れてしまっている場合、漏出部Lは、クロージャ1の内面1a,1bのうち、スリーブ2の内面1bに生じたことになる。
【0051】
漏出部Lからのガス漏れを検知した場合には、漏出部Lを塞いでガス漏れを解消する補修を行う必要がある。漏出部Lを特定する方法としては、例えば、エアタイトテープTに石鹸水等の液体を付着させて発泡するかどうかを確認する方法が挙げられる。ここで、一対の端面板4のうち、クロージャ1に設けた逆止弁6に近い方の端面板4の内面1aに漏出部Lが発見された場合を例に第1の補修方法を説明する。
【0052】
最初に、電話局などの施設に設置されたガス供給設備からケーブルCへのガスの供給を停止し、クロージャ1内の圧力を大気圧にする。この状態で、逆止弁6のバルブコア62をバルブステム61から離脱させ、クロージャ1内を大気開放する。バルブコア62の離脱により、バルブステム61内は開放され、補修装置7のノズルユニット72A,72B,72Cのパイプ77,78が挿通可能な孔が形成される。
【0053】
次に、バルブステム61内にノズルユニット72A,72B,72Cのパイプ77,78を通す。パイプ77,78には噴射口Naが設けられている。噴射口Naは、パイプ77,78の基端部77a,78aを通る直線状の軸線Axに対して側方を向くように設けられている。そして、パイプ77,78は、噴射口Naが漏出部Lに対向するように、バルブステム61内に通される。
【0054】
バルブステム61内へのパイプ77,78の挿入が完了すると、ノズルユニット72A,72Cのアクチュエータ76を押し込み、パイプ77,78の噴射口Naから封止材Sを噴射させる。封止材Sは噴射口Naから霧状に拡散する。例えば、封止材Sとして接着剤を使用した場合、封止材Sは、封止材Sは端面板4の内面1aに付着して層を形成する。この層は、時間の経過に伴って硬化し、封止部Laを形成する。封止部Laは漏出部Lを覆い、ガスの漏れを阻止する。また、封止材Sとして粉体を使用した場合、霧状に拡散した封止材Sは、漏出部Lに入り込んで埋まり、封止部Laを形成して漏出部Lを閉鎖する。その結果、ガスの漏れを阻止する。
【0055】
封止部Laを形成した後、ノズルユニット72Aのパイプ77,78をバルブステム61から抜く。次に、バルブステム61にバルブコア62を取り付けてバルブステム61(孔)を閉鎖し、逆止弁6を復旧する。次に、逆止弁6にチューブ74を取り付け、チューブ74を介してクロージャ1内に圧縮空気を供給して内圧をかける。クロージャ1内に内圧をかけた状態で漏出部Lからのガス漏れの有無を確認する。ガス漏れの有無は、例えば、内圧の変化を検出することで確認できる。ガス漏れが無ければ、ケーブルCへのガス供給を再開する。
【0056】
(第2の補修方法)
次に、
図8を参照し、一対の端面板4のうち、逆止弁6から遠い方の端面板4の内面1aに漏出部Lが発見された場合の補修方法について説明する。
【0057】
第1の補修方法と同様、最初にクロージャ1に接続されたケーブルCへのガスの供給を停止し、クロージャ1内の圧力を大気圧にする。この状態で、逆止弁6が設けられていない平坦部2bにパイプを通すための孔2cを形成する。
【0058】
次に、孔内にノズルユニット72Aのパイプ77,78を通す。パイプ77,78には噴射口Naが設けられている。噴射口Naは、噴射口Naは、パイプ77,78の基端部77a,78aを通る直線状の軸線Axに対して側方を向くように設けられている。そして、パイプ77,78は、噴射口Naが漏出部Lに対向するように、孔2c内に通される。
【0059】
孔2c内へのパイプ77,78の挿入が完了すると、ノズルユニット72A,72Cのアクチュエータ76を押し込み、パイプ77,78の噴射口Naから封止材Sを噴射させる。封止材Sは噴射口Naから霧状に拡散し、封止部Laを形成して漏出部Lを閉鎖する。その結果、ガスの漏れを阻止する。
【0060】
封止部Laを形成した後、ノズルユニット72Aのパイプを孔から抜く。次に、樹脂製の封止材量を孔2cに充填したり、孔2cに螺合する軸部を備えた蓋部材を孔2cに取り付けたりして、孔2cを閉鎖する。次に、逆止弁6にチューブ74を取り付け、チューブ74を介してクロージャ1内に圧縮空気を供給して内圧をかける。クロージャ1内に内圧をかけた状態で漏出部Lからのガス漏れの有無を確認する。ガス漏れが無ければ、ケーブルCへのガス供給を再開する。
【0061】
上記の第2の補修方法では、平坦部2bに孔2cを形成するので、スリーブ2の湾曲部や凹凸部に形成する場合に比べ、パイプ77,78を挿入するための孔2cを容易に形成できる。一方で、パイプ77,78を挿入するための孔2cは、漏出部Lの位置に対応して任意の位置に形成することもできる。例えば、漏出部Lが端面板4の内面1aではなく、スリーブ2の内面1bに生じた場合もある。このような場合、孔2cから挿入されたパイプ77,78から漏出部Lに向けて封止材Sが適切に噴射されるように、孔2cの形成位置を決定することができる。
【0062】
次に、
図9を参照し、第2の実施形態に係る補修装置8について説明する。補修装置8は、圧縮空気を噴射すると共に、封止材Sを噴射するノズルユニット81と、ノズルユニット81に接続され、封止材Sが通過する第1の経路82と、ノズルユニット81に接続され、圧縮空気が通過する第2の経路83と、を備えている。
【0063】
ノズルユニット81は、封止材Sが通過する第1のパイプ84と、第1のパイプ84に隣接して設けられ、圧縮空気が通過する第2のパイプ85と、第1のパイプ84と第2のパイプ85とを連結して保持するコネクタ86とを備えている。コネクタ86には、第1の経路82に連通する第1の流路86aと、第2の経路83に連通する第1の流路86bとが形成されている。
【0064】
第1のパイプ84の一方の端部84aは、第1の流路86aに連通するようにコネクタ86に取り付けられている。第2のパイプ85の一方の端部85aは、第1の流路86bに連通するようにコネクタ86に取り付けられている。つまり、第1のパイプ84は、コネクタ86の第1の流路86aを介して第1の経路82に接続されている。また、第2のパイプ85は、コネクタ86の第1の流路86bを介して第2の経路83に接続されている。
【0065】
第1のパイプ84の他方の端部84b、つまり一方の端部84aに対して反対側の端部は開放されている。第1のパイプ84の他方の端部84bは、封止材Sを噴射する噴射口Naである。第2のパイプ85の他方の端部85b、つまり一方の端部85aに対して反対側の端部は閉鎖されている。以下、第1のパイプ84及び第2のパイプ85の一方の端部84a,85aを基端部、他方の端部84b,85bを先端部という場合もある。
【0066】
第1のパイプ84及び第2のパイプ85は、互いに並んで直線状に延在する。第2のパイプ85は、第1のパイプ84よりも長い。第2のパイプ85の側部85cには、第1のパイプ84の先端部84b(噴射口Na)に近接して噴射口Nbが設けられている。第1のパイプ84の噴射口Naからは、封止材Sが噴射される。第2のパイプ85の噴射口Nbからは圧縮空気が噴射される。第2のパイプ85の噴射口Nbの向きは、第1のパイプ84の噴射口Naの向きに対して交差している。
【0067】
第1のパイプ84の噴射口Naの向きとは、第1のパイプ84の噴射口Naから噴射される封止材Sの噴射方向を意味する。第2のパイプ85の噴射口Nbの向きとは、第2のパイプ85の噴射口Nbから噴射される圧縮空気の噴射方向を意味する。本実施形態では、第2のパイプ85の噴射口Nbの向きと第1のパイプ84の噴射口Naの向きとは実質的に直交している。しかしながら、第2のパイプ85の噴射口Nbの向きと第1のパイプ84の噴射口Naの向きとが交差するとは、互いに直交している態様に限定されず、各噴射口Na,Nbから噴射される封止材Sと圧縮空気とが互いに干渉し合う態様を広く含む。
【0068】
第1のパイプ84はコネクタ86に接続されている。コネクタ86には、第1のパイプ84に接続された第1の流路86aが形成されている。第1の流路86aは、第1の管路82aに接続されており、第1の管路82aは封止材Sが貯留されたタンク87に接続されている。第1の管路82a上には、封止材Sを圧送するためのポンプ88が設置されている。つまり、第1のパイプ84は、コネクタ86の第1の流路86aを介して第1の管路82aに接続されており、第1の管路82aは封止材Sが通過する第1の経路82の一例である。なお、第1のパイプ84はコネクタ86を介在させずに、直接、第1の管路82aに接続されていてもよい。
【0069】
第2のパイプ85はコネクタ86に接続されている。コネクタ86には、第2のパイプ85に接続された第1の流路86bが形成されている。第1の流路86bは、第2の管路83aに接続されており、第2の管路83aはコンプレッサ89に接続されている。つまり、第2のパイプ85は、コネクタ86の第1の流路86bを介して第2の管路83aに接続されている。第2の管路83aは、コンプレッサ89で生成された圧縮空気が通過する第2の経路83の一例である。なお、第2のパイプ85はコネクタ86を介在させずに、直接、第2の管路83aに接続されていてもよい。
【0070】
第1のパイプ84の噴射口Naから封止材Sが噴射される。第2のパイプ85の噴射口Nbから圧縮空気が噴射される。圧縮空気は、封止材Sに干渉して封止材Sを霧状に拡散させる。封止材Sが霧状の拡散する方向(噴霧される方向)は、圧縮空気の噴射方向に依存する。なお、本実施形態では、第1の管路82a上に封止材Sを圧送するためのポンプ88を設けた。しかしながら、第2のパイプ85から噴射される圧縮空気によって負圧が生じ、その負圧によって移送可能になる程度に封止材Sの粘性が低い場合には、ポンプ88を省略することができる。
【0071】
次に、第3の実施形態に係る補修装置9について説明する(
図11参照)。第3の実施形態に係る補修装置9は、第2の実施形態に係る補修装置8と同様の構造や機能的要素を備えている。従って、以下の説明では、相違点を中心に説明し、同様の構造等には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0072】
補修装置9は、ノズルユニット91と、ノズルユニット91に接続され、封止材Sが通過する第1の経路82と、ノズルユニット91に接続され、圧縮空気が通過する第2の経路83と、を備えている。
【0073】
ノズルユニット91は、第1の経路82に接続された第1のパイプ94と、第2の経路83に接続された第2のパイプ95と、第1のパイプ94と第2のパイプ95とを連結して保持するコネクタ96とを備えている。コネクタ96には、第1の経路82に連通する第1の流路96aと、第2の経路83に連通する第2の流路96bとが形成されている。第1のパイプ94の先端部94bは、封止材Sの噴射口Naとして開放されている。第2のパイプ95の先端部95bは、圧縮空気の噴射口Nbとして開放されている。また、第2のパイプ95は、先端部95bの噴射口Nbが第1のパイプ94の先端部94b側を向くように、L字状に湾曲している。
【0074】
第1のパイプ94の噴射口Naである先端部94bを通る直線状の軸線Avを仮定し、第2のパイプ95の噴射口Nbである先端部95bを通る直線状の軸線Awを仮定した場合に、両方の軸線Av,Aw同士は交差している。つまり、第1のパイプ94の噴射口Naの向きは、第2のパイプ95の噴射口Nbの向きに対して交差している。なお、第1のパイプ94の噴射口Naの向きとは、第1のパイプ94の噴射口Naから噴射される封止材Sの噴射方向を意味する。第2のパイプ95の噴射口Nbの向きとは、第2のパイプ95の噴射口Nbから噴射される圧縮空気の噴射方向を意味する。本実施形態では、第1のパイプ94の噴射口Naの向きと第2のパイプ95の噴射口Nbの向きとは実質的に直交している。しかしながら、第1のパイプ94の噴射口Naの向きと第2のパイプ95の噴射口Nbの向きとが交差するとは、互いに直交している態様に限定されず、各噴射口Na,Nbから噴射される封止材Sと圧縮空気とが互いに干渉し合う態様を広く含む。
【0075】
次に、上記の第2の実施形態に係る補修装置8または第3の実施形態に係る補修装置9を使用して実施するクロージャ1の補修方法について説明する(
図9、
図10及び
図11参照)。この補修方法は、上述の第1の補修方法または第2の補修方法と同様である。具体的に説明すると、第1の実施形態に係るノズルユニット72A,72B,72Cのパイプ77,78の代わりに、第1のパイプ84,94及び第2のパイプ85,95をバルブステム61内またはバルブステム61とは別に設けた孔2cに挿入する。次に、第2のパイプ85,95から圧縮空気を噴射させる共に、第1のパイプ84,94から封止材Sを噴射させることで封止材Sを所望の方向に向けて噴霧する。封止材Sの噴霧方向は、漏出部Lに向けられている。漏出部Lは、例えば、端板部の内面1aで生じており、封止材Sの噴霧により、漏出部Lを含む領域には封止部Laが形成される。第1のパイプ94及び第2のパイプ95は、封止部Laを形成した後に、バルブステム61またはバルブステム61とは別に設けられた孔2cから引き抜かれる。その後、バルブステム61またはバルブステム61とは別に設けられた孔2cは閉鎖される。
【0076】
次に、
図12を参照し、第4の実施形態に係る補修装置10について説明する。第4の実施形態に係る補修装置10は、第2の実施形態に係る補修装置8と同様の構造や機能的要素を備えている。したがって、以下の説明では相違点を中心に説明し、同様の構造等には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0077】
本実施形態に係る封止材Sは、主剤Saと硬化剤Sb(開始剤を含む)とを混合し、攪拌することによって生成される。例えば、封止材Sとしては、2液型エポキシ接着剤、2液型アクリル接着剤、2液型ウレタン接着剤などを使用することができる。
【0078】
補修装置10は、ノズルユニット81と、ノズルユニット81に接続され、封止材Sが通過する第1の経路11と、ノズルユニット81に接続され、圧縮空気が通過する第2の経路83と、主剤Saを貯留する第1のタンク13と、硬化剤Sbを駐留する第2のタンク14とを備えている。
【0079】
第1の経路11は、第1のタンク13に接続された第1の導入管路11cと、第2のタンク14に接続された第2の導入管路11bと、第1の導入管路11cと第2の導入管路11bとの合流部に配置されたスタティックミキサー12と、スタティックミキサー12とノズルユニット81のコネクタ86とに接続された合流管路11aとを備えている。また、第1の導入管路11c上には主剤Saを圧送するための第1のポンプ15が配置されており、第2の導入管路11b上には硬化剤Sbを圧送するための第2のポンプ16が配置されている。スタティックミキサー12は主剤Saと硬化剤Sbとを混合し、攪拌するミキサーの一例である。
【0080】
なお、第2の実施形態に係る補修装置10と同様に、第2のパイプ85から噴射される圧縮空気によって負圧が生じる。この負圧により、主剤Saや硬化剤Sbが移送可能になる程度に粘性が低い場合には、第1のポンプ15及び第2のポンプ16の少なくとも一方を省略することができる。また、ノズルユニットについては、第2の実施形態に係るノズルユニット81に代えて、第3の実施形態に係るノズルユニット91を使用することもできる。
【0081】
次に、第4の実施形態に係る補修装置10を使用して実施するクロージャ1の補修方法について説明する。この補修方法は、基本的には、上述の第3の補修方法と同様である。具体的に説明すると、第1のパイプ84及び第2のパイプ85をバルブステム61内またはバルブステム61とは別に設けた孔2cに挿入する。次に、第2のパイプ85から圧縮空気を噴射させる共に、第1のパイプ84から封止材Sを噴射させることで封止材Sを所望の方向に向けて噴霧する。ここで、例えば第1のポンプ15及び第2のポンプ16を駆動させて主剤Sa及び硬化剤Sbをスタティックミキサー12に導入する。主剤Sa及び硬化剤Sbは、スタティックミキサー12内で混合、攪拌され封止材Sになる。封止材Sは第1の経路11を通過してノズルユニット81に供給され、第1のパイプ84の噴射口Naから噴射される。封止材Sの噴霧方向は、漏出部Lに向けられている。封止材Sの噴霧により、漏出部Lを含む領域には封止部Laが形成される。第1のパイプ84及び第2のパイプ85は、封止部Laを形成した後に、バルブステム61またはバルブステム61とは別に設けられた孔2cから引き抜かれる。その後、バルブステム61またはバルブステム61とは別に設けられた孔2cは閉鎖される。
【0082】
上記のクロージャ1の補修方法及び補修装置7,8,9,10の作用、効果について説明する。外部からの水分の侵入を阻止するため、クロージャ1内には、通常、一定の内圧がかけられている。上記の補修方法では、クロージャ1の外面ではなく、内面1a,1bに封止部Laを形成する。クロージャ1内の内圧は、封止部Laをクロージャ1の内面1a,1bに押圧するように作用するため、封止部Laはクロージャ1の内面1a,1bからはがれにくくなる。その結果、封止部Laを保持するための付加的な構造は不要になり、特にクロージャ1の外側に設置すべき装置や作業が簡略化されるので省スペースでの作業に有利である。
【0083】
また、上記の補修方法では、ガスの漏出部Lが生じた後で、封止部Laを形成してガスの漏出部Lを塞いでいる。その結果、漏出部Lを直接的に封止部Laで塞ぐことにより、効率よく、且つ安定した状態でガスの漏出を止めることができる。なお、ガスの漏出部が生じる前に、上記の補修方法を実施し、封止部Laを形成してクロージャ1内からのガスの漏出を未然に防ぐこともできる。その結果、ガスの漏出の予防に有効である。
【0084】
また、上記の補修方法では、スリーブ2内で、封止材Sを端面板4に向けて噴射して、端面板4の内面1aに封止部Laを形成している。端面板4には、ケーブルCが挿通された貫通孔4aが形成されている。この貫通孔4aは、クロージャ1の組み立て時にはケーブルCが通された後で閉鎖されるが、クロージャ1内の他の箇所に比べてガスの漏出が生じやすい。従って、端面板4の内面1aに封止部Laを形成することでガスの漏出を効果的に補修できる。
【0085】
なお、封止部Laを形成する場所は、端面板4の内面1aに限定されず、端面板4及びスリーブ2の内面1a,1bの少なくとも一方であればよい。具体的には、ガスの漏出部Lが形成された場所またはガスの漏出を未然に防ぎたい場所であれば良い。
【0086】
また、上記の第1の補修方法では、スリーブ2に形成された孔2cとして、バルブコア62を内装する既存のバルブステム61を利用している。その結果、パイプ77,78,84,85,94,95を挿入する孔を簡単に形成できる。更に、バルブステム61の閉鎖もバルブコア62を内装することで容易に実現できる。
【0087】
また、上記の第2の補修方法では、パイプ77,78,84,85,94,95を挿入するための孔2cをスリーブ2に形成し、孔2cにパイプ77,78,84,85,94,95を挿入している。その後、封止部Laを形成した後に孔2cからパイプ77,78,84,85,94,95を抜いて孔2cを閉鎖している。第2の補修方法では、パイプを77,78,84,85,94,95挿入する孔2cを形成する場所の自由度が増し、所望の場所を狙って封止部Laを形成し易くなる。
【0088】
また、上記の第2の補修方法では、パイプ77,78,84,85,94,95をスリーブ2の平坦部2bに形成している。スリーブ2の湾曲部や凹凸部ではなく、平坦部2bに孔2cを形成することで、適切な孔2cを容易に形成できる。なお、スリーブ2が平坦部2bを備えていない場合や、平坦部2b以外に孔2cを設けた方が所望の場所に孔2cを形成し易くなる場合には、平坦部2bが設けられていない場所に孔2cを形成することも可能である。
【0089】
上記の補修方法の封止材として、クロージャ1の内面の少なくとも一方に付着し、且つ硬化して封止部Laを形成する接着剤を使用することができる。クロージャ1の内面に付着して硬化する接着剤によって封止部を形成することにより、広い範囲に封止部Laを形成し易くなる。
【0090】
上記の補修方法の封止材として、ガスの漏出部を埋めて封止部を形成する粉体を使用することができる。ガスの漏出部に向けて粉体を噴射すると、粉体が漏出部Lに吸い込まれてガスの漏出部Lに埋まるので、封止部Laを簡単に形成できる。
【0091】
上記の補修方法で使用する封止材Sを、主剤Saと硬化剤Sbとの混合によって形成してもよい。
【0092】
また、上記の各実施形態に係る補修装置7,8,9,10を使用して、適宜に上記の補修方法を実施することができる。
【0093】
なお、第1の実施形態に係る補修装置7では、封止材Sの噴射口Naはパイプ77の側部77cに形成されているため、封止材Sはパイプ77の軸線Axに対して交差する方向に向けて噴射される。従って、例えば、パイプ77の軸線Ax方向に対して交差する方向である側方を狙って封止材Sを噴射し易くなる。
【0094】
また、第2~4の実施形態に係る補修装置8,9,10では、クロージャ1内で、第1のパイプ84,94の噴射口Naから噴射された封止材Sは、第2のパイプ85,95の噴射口Nbから噴射された圧縮空気によって霧状に広がり、クロージャ1の内面1a,1bの少なくとも一部に封止部Laを形成する。
【実施例】
【0095】
以下、実施例を使用して効果の検証を行った結果について説明する。なお、以下の実施例は、効果の検証のために便宜的に使用したものであり、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0096】
(実施例1)
実際のクロージャの代わりに透明な内径77mmのアクリルパイプを用意した。アクリルパイプの側部には、ガスの漏出部として0.7mmの孔を形成した。封止材として3M社製、3M(TM)スプレーのり111を使用し、更に、この封止材を噴射するスプレー缶タイプの補修装置を使用した。3M(TM)スプレーのり111はクロロプレンゴム(chloroprene rubber)を含み、接着性、耐熱性及び疲労耐性が高く、薄い被膜(封止部)を形成するのに適している。
【0097】
補修装置を使用し、アクリルパイプの内面に向けて封止材を噴射した。封止材の噴射により、漏出部を含む内面には封止部が形成された。その結果、漏出部は、封止材によって埋まり、ガスの漏出が阻止された。
【0098】
(実施例2)
実際のクロージャの代わりに透明な内径77mmのアクリルパイプを用意した。アクリルパイプの側部には、ガスの漏出部として0.5mmの孔を形成した。封止材として粒径分布が異なる3種のシリカゲルを混合して使用した。第1のシリカゲルの径は0.84~0.37mmであり、第2のシリカゲルの径は0.55~0.18mmであり、第3のシリカゲルの径は0.18mm未満であった。
【0099】
スプレー缶タイプの補修装置を使用し、アクリルパイプの内面に向けて封止材を噴射した。封止材の噴射により、漏出部内には封止部が形成された。その結果、漏出部は、封止材によって埋まり、ガスの漏出が阻止された。
【符号の説明】
【0100】
1…クロージャ、1a,1b…内面、2…スリーブ、2b…平坦部、2c…孔、4…端面板、11c…第1の導入管路、11b…第2の導入管路、11a…合流管路、12…スタティックミキサー、13…第1のタンク、14…第2のタンク、61…バルブステム(孔)、62…バルブコア、71…スプレー缶、72A,72B,72C,81,91…ノズルユニット、74…チューブ、75…逆流防止弁、76…アクチュエータ、77,78…パイプ、77a,78a…基端部(一方の端部)、77b,78b…先端部(他方の端部)、77c…側部、78f…第1の湾曲部、78g…第2の湾曲部、82,11…第1の経路、83…第2の経路、84,94…第1のパイプ、85,95…第2のパイプ、84a,94a…基端部(一方の端部)、84b,94b…先端部(他方の端部)、87…タンク、89…コンプレッサ、Ax…基端部を通る軸線、Ay…先端部を通る軸線、C…ケーブル、Na…噴射口(封止材)、Nb…噴射口(圧縮空気)、S…封止材、L…封止部、La…封止部、Sa…主剤、Sb…硬化剤。