(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-21
(45)【発行日】2023-03-02
(54)【発明の名称】コイル付き基板及びコイル付き基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 27/30 20060101AFI20230222BHJP
H01F 27/06 20060101ALI20230222BHJP
H01F 27/29 20060101ALI20230222BHJP
H01F 27/28 20060101ALI20230222BHJP
H01F 41/00 20060101ALI20230222BHJP
【FI】
H01F27/30 101B
H01F27/06 103
H01F27/29 H
H01F27/28 128
H01F27/30 160
H01F41/00 C
(21)【出願番号】P 2018027040
(22)【出願日】2018-02-19
【審査請求日】2020-10-30
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001432
【氏名又は名称】グローリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 涼
(72)【発明者】
【氏名】近森 雅文
【審査官】久保田 昌晴
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-082725(JP,U)
【文献】実開平01-089708(JP,U)
【文献】実開昭50-069250(JP,U)
【文献】実開昭57-163716(JP,U)
【文献】実開平05-048314(JP,U)
【文献】実公平02-034809(JP,Y2)
【文献】実開平05-077906(JP,U)
【文献】特開平06-151176(JP,A)
【文献】実開平06-082834(JP,U)
【文献】実開平03-025211(JP,U)
【文献】実開昭48-029342(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 5/02-5/04、17/00-19/08、27/06
H01F 27/28-27/30、41/00、41/10
H05K 1/18
G01R 33/00-33/26
G07D 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル線が巻回されたコイルボビンが基板に取り付けられたコイル付き基板であって、
前記基板には、前記コイルボビンが取り付けられる取付部と、
前記コイル線の一端部が接続される接点部とが設けられ、
前記基板は、一端部に突出部が設けられた平面形状を有し、
前記取付部は、前記突出部であり、
前記コイルボビンには、前記コイル線の一端部を前記基板の前記接点部の位置に固定する固定部が設けられ、
前記コイルボビンは、前記突出部に挿入されて取り付けられ、
前記固定部は突起部であり、前記突起部の突出方向が前記コイルボビンの挿入方向及び前記基板の面方向に沿っており、
前記突起部は、所定間隔を空けて突出する一対の突起部を有し、
前記接点部は、前記一対の突起部の間に配置されており、
前記コイル線の一端部は、前記一対の突起部に巻回されており、
前記コイル線の一端部は、接合材により前記基板の前記接点部に電気的に接続されることを特徴とするコイル付き基板。
【請求項2】
前記コイル線の一端部は、前記一対の突起部の一方に巻回されて当該一方の突起部の前記基板側から前記一対の突起部の他方に渡され、当該他方の突起部に前記基板側から巻回されることを特徴とする請求項
1記載のコイル付き基板。
【請求項3】
前記コイル線の一端部は、前記一対の突起部に8の字状に巻回されることを特徴とする請求項
1記載のコイル付き基板。
【請求項4】
前記コイル線の一端部は、前記一対の突起部に環状に巻回されることを特徴とする請求項
1記載のコイル付き基板。
【請求項5】
コイル線が巻回されたコイルボビンが基板に取り付けられたコイル付き基板の製造方法であって、
前記基板には、前記コイルボビンが取り付けられる取付部と、
前記コイル線の一端部が接続される接点部とが設けられ、
前記基板は、一端部に突出部が設けられた平面形状を有し、
前記取付部は、前記突出部であり、
前記コイル線を前記コイルボビンに巻回するとともに、前記コイルボビンの固定部に前記コイル線の一端部を固定する工程と、
前記コイルボビンを前記突出部に挿入し、前記コイル線の一端部が前記基板の前記接点部に位置するように、前記コイル線が巻回された前記コイルボビンを前記基板の前記取付部に取り付ける工程と、
前記コイル線の一端部を接合材により前記基板の前記接点部に電気的に接続する工程とを含み、
前記固定部は突起部であり、前記突起部の突出方向が前記コイルボビンの挿入方向及び前記基板の面方向に沿って
おり、
前記突起部は、所定間隔を空けて突出する一対の突起部を有し、
前記接点部を、前記一対の突起部の間に配置し、
前記コイル線の一端部を、前記一対の突起部に巻回することを特徴とするコイル付き基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル付き基板及びコイル付き基板の製造方法に関する。より詳しくは、コイル線が巻回されたコイルボビンを基板に取り付けるのに好適なコイル付き基板及びコイル付き基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種のセンサとして、コイル線が巻回されたコイルボビンが回路基板(プリント基板)に接続された装置が用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、コイルボビンに付属しているL字状の端子ピン(カラゲピン)が回路基板の端子穴に挿入されるとともに、はんだ付けされたコイル装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、L字状の導電性端子(カラゲピン)にコイル引出線が巻回された電磁コイルを備えた近接スイッチが開示されており、導電性端子の先端部が回路基板の端子孔に挿入されるとともに、はんだ付けされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-034339号公報
【文献】特開平8-306285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2に記載のように、カラゲピンを介してコイルを回路基板に接続する方法では、カラゲピンの分だけ部品点数が増加してしまう。また、L字状のカラゲピンを端子穴に挿入する方法は、回路基板の主面法線方向以外の方向からコイルを回路基板に取り付けにくい。また、特許文献1に記載のコイル装置では、カラゲピンがコイルボビンに挿入されているだけで固定されていないため、コイルボビンと回路基板との間の相対的な位置精度を確保することが困難である。
【0007】
他方、
図20に示すように、カラゲピンを用いずにコイルを回路基板に直接はんだ付けして接続する方法も考えられるが、以下の点で改善の余地がある。すなわち、
図20の下側のコイル113のように、回路基板150の接続穴156に挿入したコイル線の各端部141を回路基板150の対応するパッド154上に癖付けしてはんだ付けする方法では、対応するパッド154からコイル線の各端部141が容易に離れてしまうため、安定してはんだ付けすることができない。また、
図20の上側のコイル113のように、接続穴156に挿入したコイル線の各端部141をテープや手で固定してはんだ付けすれば、各端部141が対応するパッド154から離れるのを防げるが、このような方法では安定した状態でコイル線の各端部141の位置を固定できないため、コイルの取り付け及び接続を自動化することができない。
【0008】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、部品点数の削減が可能であり、かつコイル線が巻回されたコイルボビンを安定して容易に基板に取り付け可能なコイル付き基板及びコイル付き基板の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、コイル線が巻回されたコイルボビンが基板に取り付けられたコイル付き基板であって、前記基板には、前記コイルボビンが取り付けられる取付部と、前記コイル線の一端部が接続される接点部とが設けられ、前記コイルボビンには、前記コイル線の一端部を前記基板の前記接点部の位置に固定する固定部が設けられ、前記コイル線の一端部は、接合材により前記基板の前記接点部に電気的に接続されることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上記発明において、前記基板は、一端部に突出部が設けられた平面形状を有し、前記取付部は、前記突出部であり、前記コイルボビンは、前記突出部に挿入されて取り付けられることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上記発明において、前記固定部は、所定間隔を空けて突出する一対の突起部を有し、前記コイル線の一端部は、前記一対の突起部に巻回されることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上記発明において、前記コイル線の一端部は、前記一対の突起部の一方に巻回されて当該一方の突起部の前記基板側から前記一対の突起部の他方に渡され、当該他方の突起部に前記基板側から巻回されることを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上記発明において、前記コイル線の一端部は、前記一対の突起部に8の字状に巻回されることを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、上記発明において、前記コイル線の一端部は、前記一対の突起部に環状に巻回されることを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、上記発明において、前記固定部は、1つの突起部を有し、前記コイル線の一端部は、前記1つの突起部に巻回されることを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、コイル線が巻回されたコイルボビンが基板に取り付けられたコイル付き基板の製造方法であって、前記コイル線を前記コイルボビンに巻回するとともに、前記コイルボビンの固定部に前記コイル線の一端部を固定する工程と、前記コイル線の一端部が前記基板の接点部に位置するように、前記コイル線が巻回された前記コイルボビンを前記基板の取付部に取り付ける工程と、前記コイル線の一端部を接合材により前記基板の前記接点部に電気的に接続する工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明のコイル付き基板及びコイル付き基板の製造方法によれば、部品点数の削減が可能であり、かつコイル線が巻回されたコイルボビンを安定して容易に基板に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態1に係るコイル付き基板に備えられる発振コイル及び受信コイルの斜視模式図である。
【
図2】実施形態1に係るコイル付き基板の斜視模式図であり、発振コイルを回路基板へはんだ付けする前の状態を示す。
【
図3】実施形態1に係るコイル付き基板に備えられるコイルボビンの模式図であり、(a)は平面図であり、(b)は斜視図である。
【
図4】実施形態1に係るコイル付き基板に備えられる発振コイルの平面模式図である。
【
図5】実施形態1に係るコイル付き基板の回路基板の平面模式図であり、(a)は受信コイルが実装された一方の主面を示し、(b)はパッドが形成された他方の主面を示す。
【
図6】実施形態1に係るコイル付き基板の斜視模式図であり、回路基板の端部に発振コイルを挿入する前の状態を示す。
【
図7】実施形態1に係るコイル付き基板の斜視模式図であり、発振コイルを回路基板へはんだ付けした後の状態を示す。
【
図8】実施形態2に係るコイル付き基板に備えられるコイルボビンの模式図であり、(a)は平面図であり、(b)は斜視図である。
【
図9】実施形態2に係るコイル付き基板に備えられる発振コイルの平面模式図である。
【
図10】実施形態2に係るコイル付き基板の平面模式図であり、発振コイルを回路基板へはんだ付けする前の状態を示す。
【
図11】実施形態2に係るコイル付き基板の斜視模式図であり、発振コイルを回路基板へはんだ付けした後の状態を示す。
【
図12】実施形態2に係るコイル付き基板における発振コイルと回路基板との接続部分を示した斜視模式図であり、はんだ付けする前のコイル線の状態を示す。
【
図13】実施形態2に係るコイル付き基板における発振コイルと回路基板との接続部分を示した別の斜視模式図であり、はんだ付けする前のコイル線の状態を示す。
【
図14】実施形態2の変形例に係るコイル付き基板における発振コイルと回路基板との接続部分を示した斜視模式図である。
【
図15】実施形態2の別の変形例に係るコイル付き基板に備えられる発振コイルの断面模式図である。
【
図16】本発明の変形形態に係るコイル付き基板に備えられる発振コイルの平面模式図である。
【
図17】本発明の別の変形形態に係るコイル付き基板に備えられる発振コイルの平面模式図である。
【
図18】本発明の更に別の変形形態に係るコイル付き基板に備えられる発振コイルの平面模式図である。
【
図19】本発明の更に別の変形形態に係るコイル付き基板に備えられる発振コイルの平面模式図である。
【
図20】比較形態に係るコイル付き基板の斜視模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るコイル付き基板及びコイル付き基板の製造方法の好適な実施形態を、図面を参照しながら説明する。本発明に係るコイル付き基板の用途は、特に限定されないが、硬貨の磁気特性を検出する磁気検出装置(磁気センサ)に利用されることが好ましい態様の一つである。以下では本発明に係るコイル付き基板を備える磁気検出装置を例に本発明について説明する。
【0020】
(実施形態1)
本実施形態に係る磁気検出装置は、コイル付き基板を備えている。なお、本実施形態に係る磁気検出装置は、硬貨の金種識別を行うための硬貨識別装置(硬貨識別センサ)に備え付けられるものであり、その硬貨識別装置は、硬貨の計数等の処理を行う硬貨処理機に搭載される。本実施形態に係る磁気検出装置は、硬貨の磁気特性を検出するものであり、硬貨識別装置の搬送路を搬送される硬貨に発振コイルにより磁界を印加し、この磁界により受信コイルに生じた電磁誘導に基づく出力信号を硬貨識別装置に出力する。
【0021】
図1に示すように、本実施形態に係るコイル付き基板1は、一次側が1チャンネルで、二次側が多チャンネルの相互誘導型の複数のコイルを含んで構成され、発振コイル(一次コイル)11と、複数の受信コイル(二次コイル)12と、を備える。発振コイル11及び受信コイル12は、硬貨処理機に設けられた硬貨Cの搬送路Pの上方又は下方(
図1では下方の場合を図示)に配置され、硬貨Cが搬送路Pを搬送されると、発振コイル11が搬送路Pに生成した磁界により誘起された誘起電圧に基づいて、各受信コイル12は出力信号を出力する。
【0022】
硬貨Cは、硬貨処理機の搬送手段(フィンや搬送ベルト等)によって搬送路P上を、一枚ずつ間隔を空けて搬送される。硬貨Cは、搬送路Pの一方端Paに片寄せられた状態で、搬送路Pの硬貨Cの下面を支える搬送面上を摺動する。硬貨Cは、
図1の両矢印で示される何れの搬送方向に搬送されてもよい。
【0023】
複数の受信コイル12は、硬貨Cの搬送方向と交差する方向、好ましくは直交する方向に配置されている。また、受信コイル12は、搬送面と平行に1列又は複数列(
図1では1列の場合を図示)で配列されている。このように、複数の受信コイル12が、搬送路Pの上方又は下方において、硬貨Cの搬送方向と交差する方向に配置されることにより、複数の受信コイル12は、搬送される硬貨Cの磁気特性に関する信号(磁気信号)を、複数のエリア毎に出力することができる。すなわち、硬貨Cの搬送方向と交差する方向における分解能を向上することができる。
【0024】
各受信コイル12は、巻線型チップインダクタであり、コア(図示せず)に巻回されている。発振コイル11は、複数の受信コイル12と、それらのコアとを囲むように巻回されており、各受信コイル12用のコアが発振コイル11のコアとしても機能する。
【0025】
図2に示すように、コイル付き基板1は、コイル線40を巻回した角筒状のコイルボビン20を、受信コイル12を実装した回路基板50の端部に挿入して取り付けた構造を有している。コイル線40の巻き始めと巻き終わりの両端は、それぞれ、固定部30としてのコイルボビン20の突起部31に巻回されている。コイルボビン20に巻回されたコイル線40が発振コイル11として機能する。
【0026】
図3(a)及び(b)に示すように、コイルボビン20は、角筒状の本体部21を有し、本体部21は、軸方向の先端及び後端にそれぞれ設けられた幅の狭いフランジ部22及び23と、フランジ部22及び23で挟まれた帯状の凹部24とを有している。凹部24は、本体部21の周面に環状に(一周分)設けられている。軸方向後端側のフランジ部23には、切り欠き部25が2つ形成される。これらの切り欠き部25から、突起部(ツメ)31が1つずつ軸方向に突設されている。コイルボビン20の本体部21は、軸方向に直交する断面が長方形状であり、2本の突起部31は、本体部21の長手面の軸方向中心線Lに対して対称な位置に、互いに所定の距離だけ離れて設けられている。各突起部31は、軸方向に長い平板状であり、切り欠き部25を介して凹部24と段差なく繋がっている。コイルボビン20は、絶縁性の合成樹脂等の絶縁性材料により一体成型される。
【0027】
図4に示すように、コイル線40をコイルボビン20の凹部24に一定のテンションで巻回することによって、発振コイル11として機能するコイル部42が形成されている。コイル部42の両端に繋がるコイル線40の両端部41は、それぞれ別の切り欠き部25からその先に設けられた突起部31に引き出されて巻き付けられている。このようにしてコイル線40の各端部41は、対応する突起部31に固定されている。各突起部31は、軸方向中間部がくびれており、そのくびれ部にコイル線40が巻き付けられている。
【0028】
本実施形態では、コイル線40は、一端から他端までテンションをかけた状態でコイルボビン20に巻回されており、たるみを設ける必要がない。したがって、コイルボビン20へのコイル線40の巻回作業を自動化することができる。
【0029】
図5(a)及び(b)に示すように、回路基板(プリント基板)50は、矩形状の基板の一辺が凸状に形成され、一端部51に突出部52が設けられた平面形状を有する。回路基板50の両主面には、各種の配線パターン(図示せず)が設けられるとともに、チップインダクタである受信コイル12や、発振回路や信号処理回路等の所定の電子回路を構成する電子部品(受信コイル12以外は図示せず)が実装されている。
図5(a)に示すように、複数の受信コイル12は、回路基板50の突出部52に等間隔で配置されている。
図5(b)に示すように、受信コイル12が設けられていない側の主面には、接点部53として2つのパッド(端子)54が形成されている。2つのパッド54は、コイルボビン20の2つの突起部31に対応する位置に設けられ、2つの突起部31間の間隔と同程度の間隔を空けて設けられている。各パッド54は、はんだレベラー、プリフラックス等で表面処理されている。回路基板50の突出部52は、コイルボビン20が取り付けられる取付部55として機能する。
【0030】
上記構成において、
図6に示すように、突起部31をパッド54側にし、コイル線40が巻回されたコイルボビン20を受信コイル12が実装された突出部52に若干の遊びがある状態で嵌める。そうすると、
図2に示したように、コイルボビン20の各突起部31と、そこに巻き付けられたコイル線40の端部41とが対応するパッド54上に位置することとなる。そして、
図7に示すように、接合材60としてはんだ61を用いて、突起部31に巻回されたコイル線40の両端部41をそれぞれパッド54にはんだ付けして電気的に接続するとともに固定する。また、コイルボビン20と回路基板50との間の隙間に接着剤(図示せず)を注入して更に強固に固定する。これにより、コイル付き基板1が完成する。
【0031】
なお、コイルボビン20を合成樹脂で形成した場合、コイル線40の両端部41をそれぞれパッド54にはんだ付けすると、通常、各突起部31が熱により変形する。しかしながら、コイル線40の回路基板50への電気的接続及び固定について特に問題は発生しない。また、本実施形態では、コイルボビン20の突起部31ごとコイル線40の両端部41を回路基板50にはんだ付けすることから、上述のようにコイルボビン20と回路基板50とを接着剤で固定しなくてもよく、その場合であっても発振コイル11を回路基板50に固定することができる。
【0032】
本実施形態に係るコイル付き基板1の製造方法(組み立て方法)については、既に言及しているが、ここで改めて説明する。
【0033】
まず、上述のように、コイル線40をコイルボビン20に巻回するとともに、コイルボビン20の対応する突起部31(固定部30)にコイル線40の各端部41を固定する。これにより、発振コイル11として機能するコイル部42が形成されるとともに、コイル線40の各端部41が所定の位置に固定される。この工程は、手作業で行うこともできるが、上述のように、自動巻線装置等により自動化することが好ましい。なお、コイル部42の形成と、コイル線40の各端部41の対応する突起部31への固定とを行う順序は、特に限定されず、適宜設定可能である。
【0034】
次に、コイル線40の各端部41が回路基板50の対応するパッド54(接点部53)に位置するように、コイル線40が巻回されたコイルボビン20を回路基板50の突出部52(取付部55)に取り付ける。このとき、コイル線40の各端部41は、対応する突起部31(固定部30)によって、その位置が固定されていることから、比較形態で説明したようなテープや手でコイル線40の各端部41の位置を固定する必要はない。
【0035】
そして、コイル線40の各端部41をはんだ61(接合材60)により対応するパッド54(接点部53)に電気的に接続する。このとき、コイル線40の各端部41は、対応する突起部31(固定部30)によって、その位置が固定されていることから、コイル線40の各端部41を対応するパッド54(接点部53)に安定的かつ容易に接続することができる。また、カラゲピン等の他の導電部材を介さずにコイル線40の各端部41を対応するパッド54(接点部53)に直接接続することができる。そのため、部品点数の削減が可能である。
【0036】
その後、必要に応じて、上述のように接着剤を用いてコイルボビン20を回路基板50に更に強固に固定する。その結果、本実施形態に係るコイル付き基板1が完成する。
【0037】
(実施形態2)
本実施形態では、本実施形態に特有の特徴について主に説明し、実施形態1と重複する内容については説明を省略する。また、本実施形態と実施形態1とにおいて、同一又は同様の機能を有する部材には同一の符号を付し、本実施形態において、その部材の説明は省略する。
【0038】
図8(a)及び(b)に示すように、本実施形態では、各切り欠き部25の両側に位置するフランジ部23の一対の端部から一対の突起部32が突設される。一対の突起部32は、所定の大きさの隙間33を空けて設けられている。各突起部32は、軸方向に長い平板状であり、切り欠き部25を介して凹部24と段差なく繋がっている。
【0039】
図9に示すように、コイル線40の両端部41は、それぞれ切り欠き部25から一対の突起部32に引き出されるとともに、一対の突起部32に環状に巻き付けられて固定されている。各突起部32は、軸方向中間部が隙間33と反対側でくびれており、そのくびれ部にコイル線40が巻き付けられている。
【0040】
上記構成において、突起部32をパッド54側にし、コイル線40が巻回されたコイルボビン20を受信コイル12が実装された突出部52に若干の遊びがある状態で嵌める。そうすると、
図10に示すように、一対の突起部32がパッド54の両側に位置し、一対の突起部32に巻回されたコイル線40の両端部41がパッド54上に位置することとなる。そして、
図11に示すように、接合材60としてはんだ61を用いて、一対の突起部32に巻回されたコイル線40の両端部41をそれぞれパッド54にはんだ付けして電気的に接続するとともに固定する。このとき、コイル線40の各端部41は、突起部32ごとではなく、単独でパッド54にはんだ付けされる。そして、コイルボビン20と回路基板50との間の隙間に接着剤(図示せず)を注入して更に強固に固定する。本実施形態では、各突起部32は、はんだ61で固定されていないため、このように接着剤を用いてコイルボビン20を回路基板50に固定することが好ましい。
【0041】
本実施形態では、コイル線40の両端部41をそれぞれ一対の突起部32に巻回することによって、一対の突起部32の間の隙間33ではんだ付けすることができるため、実施形態1に比べて、発振コイル11をより容易に回路基板50に取り付けることができる。
【0042】
ただし、コイル線40の各端部41を対応する一対の突起部32に環状に巻回し、
図12に示すように、パッド54の正面側からはんだ付けし、パッド54と反対側のコイル線40が
図12で示したような状態でパッド54の方に押されて固定されると、その両側の突起部32が内側に引っ張られてひび割れたり、折れたりすることが懸念される。また、
図13に示すようにパッド54と反対側のコイル線40には常に回路基板50から離れようとする方向へ力が加わるため、はんだ61が剥がれたり、はんだ61にクラックが発生したりすることが懸念される。
【0043】
これに対して、一対の突起部32の間の間隔を充分確保できれば、パッド54側のコイル線40のみをパッド54にはんだ付けすることが可能であり、このような不具合の発生を回避することができる。
【0044】
また、このような不具合の発生を効果的に防止する観点からは、
図14に示すように、コイル線40の各端部41を対応する一対の突起部32の回路基板50側を掛け渡してもよい。より詳細には、コイル線40の各端部41は、対応する一対の突起部32の一方に巻回されて当該一方の突起部32の回路基板50側から当該一対の突起部32の他方に渡され、当該他方の突起部32に回路基板50側から巻回されてもよい。
【0045】
更に、
図15に示すように、コイル線40の各端部41を対応する一対の突起部32に8の字状に巻回してもよい。この場合も、
図14に示した場合程ではないが、コイル線40の各端部41をパッド54に近づけることができるため、上述の不具合の発生を抑制することができる。また、この巻回方法は、各パッド54がはんだレベラーで表面処理された場合に特に好適である。はんだレベラーで表面処理されたパッド54を覆うはんだは、通常、凸状となるため、コイル線40の各端部41を8の字状に巻回することによって、対応するパッド54を覆うはんだに沿って各端部41を配置でき、コイル線40に余分な力が加わらないようにできるためである。
【0046】
上述のように、上記実施形態1、2では、コイルボビン20に設けられた固定部30によって、コイル線40の各端部41が回路基板50の対応する接点部53の位置に固定されることから、コイル線40の各端部41の位置をテープや手で固定する必要がない。そのため、コイル線40が巻回されたコイルボビン20の取り付け作業、好適にははんだ付け作業を安定的かつ容易に行うことができる。また、取り付け作業(はんだ付け作業)を自動化でき、コイル付き基板1の組み立て工数の削減が可能になる。
【0047】
また、上記実施形態1、2では、固定部30によって固定されたコイル線40の各端部41は、接合材60により対応する接点部53に電気的に接続されることから、カラゲピン等の他の導電部材を介さずにコイル線40の各端部41を対応する接点部53に直接接続することができる。そのため、部品点数の削減が可能であるとともに、コイルボビン20の材料に耐熱性材料を使用しなくてもよくなる。
【0048】
また、上記実施形態1、2では、コイルボビン20が取り付けられる回路基板50の取付部55は、回路基板50の一端部51に形成された突出部52であり、コイルボビン20は、突出部52に挿入されて取り付けられることから、コイルボビン20を回路基板50に挿入するだけでコイル線40の各端部41の位置合わせを行うことができ、コイルボビン20の回路基板50への取付をより容易に行うことができる。
【0049】
また、上記実施形態1では、コイル線40の各端部41は、対応する1つの突起部31に巻回されることから、コイル線40の各端部41を突起部31ごと接合材60により対応する接点部53に接続することができる。したがって、接着剤によりコイルボビン20を回路基板50へ固定する作業を省略することができる。
【0050】
また、上記実施形態2では、固定部30は、所定間隔を空けて突出する一対の突起部32を二組有し、コイル線40の各端部41は、対応する一対の突起部32に巻回されることから、コイル線40の各端部41を対応する一対の突起部32間の隙間33で接合材60により対応する接点部53に電気的に接続でき、コイル線40が巻回されたコイルボビン20の取り付け作業、好適にははんだ付け作業をより容易に行うことができる。
【0051】
また、上記実施形態2では、コイル線40の各端部41は、対応する一対の突起部32の一方に巻回されて当該一方の突起部32の回路基板50側からその一対の突起部32の他方に渡され、当該他方の突起部32に回路基板50側から巻回されることから、各突起部32が割れたり折れたりするのを抑制できるとともに、接合材60が剥がれたり、接合材60にクラックが発生したりするのを抑制することができる。
【0052】
また、上記実施形態2では、コイル線40の各端部41は、対応する一対の突起部32に8の字状に巻回されることから、上記の回路基板50側をコイル線40を掛け渡す場合程ではないが、コイル線40の各端部41を対応するパッド54に近づけることができるため、上述の不具合の発生を抑制することができる。
【0053】
以上、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。また、各実施形態の構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜組み合わされてもよいし、変更されてもよい。
【0054】
具体的には、例えば、上記実施形態1、2では、接合材60としてはんだ(軟ろう)61を用いた場合について説明したが、接合材60の種類は特に限定されず、例えば、硬ろうを用いてコイル線40の各端部4を対応する接点部53にろう付けしてもよいし、導電性接着剤によりコイル線40の各端部4を対応する接点部53に電気的に接続するとともに固定してもよい。
【0055】
また、上記実施形態2では、コイル線40の各端部41が、軸方向に突出した一対の突起部32間を、凹部24でのコイル線40の巻回方向と平行に巻回される場合について説明したが、
図16に示すように、軸方向と直交する方向に突出した一対の突起部34を二組設け、コイル線40の各端部41を対応する一対の突起部43間を凹部24でのコイル線40の巻回方向と直交する平行に巻回してもよい。この場合、各組の突起部43の間の隙間35でコイル線40の各端部41を対応するパッド54(
図16では図示せず)にはんだ付けして電気的に接続する。
【0056】
また、上記実施形態2では、コイル線40の各端部41が対応する一対の突起32間の隙間33で対応するパッド54と接続される場合について説明したが、
図17に示すように、凹部24から段差なく軸方向に突出した張出部36をコイルボビン20に設け、張出部36のパッド54に対応する位置にそれぞれ切り欠き部37を設け、コイル線40の各端部41をこれらの切り欠き部37を跨ぐように張出部36に巻回してもよい。この場合、各切り欠き部37でコイル線40の各端部41を対応するパッド54(
図17では図示せず)にはんだ付けして電気的に接続する。更に、
図18に示すように、凹部24から段差なく軸方向に突出した張出部38をコイルボビン20に設け、張出部38のパッド54に対応する位置に貫通孔39を設け、コイル線40の各端部41をこれらの貫通孔39を貫通させながら、それらの周囲の部分に巻回してもよい。この場合、各貫通孔39及び/又はその周囲でコイル線40の各端部41を対応するパッド54(
図18では図示せず)にはんだ付けして電気的に接続する。
【0057】
また、上記実施形態1、2では、コイル線40の両端部41を固定する固定部30の構造が互いに同じ場合について説明したが、それらの構造は互いに異なっていてもよい。更に、コイル線40の一方の端部41を固定する構造のみが上記実施形態のいずれかの構造であり、コイル線40の他方の端部41を固定する構造が、従来公知の構造、例えばカラゲピンを介して回路基板50に固定する構造であってもよい。
【0058】
また、上記実施形態1、2では、固定部30を1つのコイルボビン20に2つ設ける場合について説明したが、1つのコイルボビン20に設けられる固定部30の数は特に限定されず、例えば、3つ以上であってもよい。具体的には、例えば、
図19に示すように、凹部24から対応する切り欠き部25を介して段差なく軸方向に各々突出した3つの突起部31を固定部30として設けてもよい。この場合、左右の突起部31にそれぞれ別のコイル線(
図19では図示せず)の一端部を巻回して固定し、真ん中の突起部31をそれらのコイル線に共通で使用し、各コイル線の他端部を巻回して固定する。
【0059】
更に、上記実施形態1、2では、基板として回路基板(プリント基板)50を用いた場合について説明したが、基板は、コイルボビンを取付可能なものであれば特に限定されず、例えば、樹脂成形されたMID(Molded Interconnect Device)であってもよく、本発明は、このような立体回路部品に適用されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上のように、本発明は、コイル線が巻回されたコイルボビンのプリント基板への取り付けに有用な技術である。
【符号の説明】
【0061】
1:コイル付き基板
11:発振コイル(一次コイル)
12:受信コイル(二次コイル)
20:コイルボビン
21:本体部
22、23:フランジ部
24:凹部
25:切り欠き部
30:固定部
31、32、34:突起部
33、35:隙間
36、38:張出部
37:切り欠き部
39:貫通孔
40:コイル線
41:端部
42:コイル部
50:回路基板
51:回路基板の一端部
52:突出部
53:接点部
54:パッド(端子)
55:取付部
60:接合材
61:はんだ
C:硬貨
P:搬送路
Pa:搬送路の一方端
L:軸方向中心線