IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 信越ポリマー株式会社の特許一覧

特許7231985植物の生長抑制用樹脂成形体、植物の生長の抑制方法及び土壌
<>
  • 特許-植物の生長抑制用樹脂成形体、植物の生長の抑制方法及び土壌 図1
  • 特許-植物の生長抑制用樹脂成形体、植物の生長の抑制方法及び土壌 図2
  • 特許-植物の生長抑制用樹脂成形体、植物の生長の抑制方法及び土壌 図3
  • 特許-植物の生長抑制用樹脂成形体、植物の生長の抑制方法及び土壌 図4
  • 特許-植物の生長抑制用樹脂成形体、植物の生長の抑制方法及び土壌 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-21
(45)【発行日】2023-03-02
(54)【発明の名称】植物の生長抑制用樹脂成形体、植物の生長の抑制方法及び土壌
(51)【国際特許分類】
   A01N 59/16 20060101AFI20230222BHJP
   A01P 21/00 20060101ALI20230222BHJP
   A01N 25/10 20060101ALI20230222BHJP
   A01M 21/00 20060101ALI20230222BHJP
【FI】
A01N59/16 Z
A01P21/00
A01N25/10
A01M21/00 Z
A01M21/00 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018040508
(22)【出願日】2018-03-07
(65)【公開番号】P2019156716
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(72)【発明者】
【氏名】宮田 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】竹村 賢三
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 敬嘉
【審査官】武貞 亜弓
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106519603(CN,A)
【文献】特表2004-513896(JP,A)
【文献】特開平11-335214(JP,A)
【文献】特開平04-145004(JP,A)
【文献】特開2009-196910(JP,A)
【文献】特開昭63-190802(JP,A)
【文献】特開2002-121102(JP,A)
【文献】特開昭59-204101(JP,A)
【文献】国際公開第2019/171512(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 25/00- 65/48
A01P 1/00- 23/00
A01M 21/00
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の生長抑制成分と、樹脂とを含有し、
前記生長抑制成分が金属塩を含有し、
前記樹脂が、熱可塑性樹脂を含有し、
前記熱可塑性樹脂が、生分解性を有する熱可塑性樹脂を含有し、
土壌に挿入可能な形状を有する、植物の生長抑制用樹脂成形体。
【請求項2】
植物の生長抑制成分と、樹脂とを含有し、
前記生長抑制成分が金属塩を含有し、
前記樹脂が、熱可塑性樹脂を含有し、
前記熱可塑性樹脂が、生分解性を有する熱可塑性樹脂を含有し、
土壌に散布可能な形状を有する、植物の生長抑制用樹脂成形体。
【請求項3】
前記生分解性を有する熱可塑性樹脂が、脂肪族ポリエステル、ポリビニルアルコール及びポリアルキレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも一種である、請求項1又は2に記載の樹脂成形体。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂がポリオレフィンを含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の樹脂成形体。
【請求項5】
前記金属塩が有機酸金属塩である、請求項1~のいずれか一項に記載の樹脂成形体。
【請求項6】
前記有機酸金属塩が有機酸と遷移金属との塩である、請求項に記載の樹脂成形体。
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項に記載の樹脂成形体を土壌に施用する、植物の生長の抑制方法。
【請求項8】
請求項1~のいずれか一項に記載の樹脂成形体を含む、土壌。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の生長抑制用樹脂成形体、植物の生長の抑制方法及び土壌に関する。
【背景技術】
【0002】
公園、広場、遊休農地を含む農地、海岸、造成地、道路の法面、路肩又は中央分離帯、空き地等においては、雑草による作物の生育障害の防止、作物の収量の安定化及び環境美化を目的として、人力又は刈り取り機による刈り取り、除草剤、農薬等の散布などにより、人的、化学的又は機械的な除草作業が行われている。
【0003】
除草剤、農薬等の散布による除草は、刈り取りによる除草に比べて人的な負荷が小さい点で優れている一方、人体及び自然環境へ悪影響を及ぼすおそれがある。このような問題に対して、例えば特許文献1には、自然環境下での分解が容易で、且つ人体に対する安全性の高い植物生長抑制効果を有する成分として、所定のシス桂皮酸誘導体化合物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-46631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このような生長抑制成分を単独で施用した場合、生長抑制成分が雨水等で流されてしまい、所望の場所で植物の生長抑制効果が得られないことが懸念される。
【0006】
そこで、本発明は、所望の場所に保持させることが可能な植物の生長抑制用樹脂成形体、及びこの樹脂成形体を用いた植物の生長の抑制方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面は、植物の生長抑制成分と、樹脂とを含有する、植物の生長抑制用樹脂成形体に関する。
【0008】
本発明の他の一側面は、上記の植物の樹脂成形体を土壌に施用する、植物の生長の抑制方法である。本発明の他の一側面は、上記の植物の樹脂成形体を含む、土壌である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、所望の場所に保持させることが可能な植物の生長抑制用樹脂成形体及びこの樹脂成形体を用いた植物の生長の抑制方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係る樹脂成形体(杭状の樹脂成形体)を示す斜視図である。
図2】他の一実施形態に係る樹脂成形体(粒状の樹脂成形体)を示す斜視図である。
図3】他の一実施形態に係る樹脂成形体(シート状の樹脂成形体)を示す斜視図である。
図4】実施例1~4及び比較例1~5における、12日後の植物の生長の様子を示す図である。
図5】実施例1~4及び比較例1~5における、21日後の植物の生長の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を適宜参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されない。
【0012】
図1は、一実施形態に係る樹脂成形体を示す斜視図である。図1(a)に示すように、一実施形態に係る樹脂成形体1は、杭状に成形されている。樹脂成形体1は、例えば、略円盤状の杭頭部2と、杭頭部2の一面から当該面に対して略垂直方向に延びる細長形状の杭本体部3とを備えている。杭本体部3の断面形状は、例えば十字状であってよい。樹脂成形体1は、このような形状に成形されていることにより、図1(b)に示すように、土壌5に挿入可能となっている。杭本体部3の先端(杭頭部2と反対側の端)は、土壌5への挿入が容易となるように尖形状であってよい。
【0013】
杭頭部2の直径(樹脂成形体1の短手方向の長さ)d1は、例えば2.0~4.0cmであってよい。樹脂成形体1の長手方向の長さd2は、例えば5.0~15.0cmであってよい。
【0014】
樹脂成形体1は、植物の生長抑制成分(以下、単に「生長抑制成分」ともいう)と、樹脂とを含有する。樹脂成形体1は、生長抑制成分及び樹脂のそれぞれについて、一種を単独で含有してもよく、二種以上の組合せを含有してもよい。
【0015】
樹脂は、熱可塑性樹脂を含有してもよく、熱硬化性樹脂を含有してもよく、これらの両方を含有してもよい。樹脂は、成形性に優れる観点から、好ましくは熱可塑性樹脂を含有する。
【0016】
熱可塑性樹脂は、生分解性を有する熱可塑性樹脂を含有してもよく、生分解性を有しない熱可塑性樹脂を含有してもよく、これらの両方を含有してもよい。熱可塑性樹脂は、植物の生長抑制効果がより持続的に発揮される(徐放性に優れる)観点から、好ましくは生分解性を有する熱可塑性樹脂を含有する。
【0017】
生分解性を有する熱可塑性樹脂としては、例えば、脂肪族ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリアルキレングリコール等が挙げられる。
【0018】
樹脂の含有量は、樹脂成形体の全量を基準として、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、又は98質量%以上であってよい。樹脂成形体が後述するバインダーを含有する場合、樹脂の含有量は、樹脂成形体の全量を基準として、例えば、60質量%以上であってよく、70質量%以上であってよい。樹脂成形体がバインダーを含有しない場合、樹脂の含有量は、樹脂成形体の全量を基準として、例えば、95質量%以上であってよく、98質量%以上であってよい。
【0019】
熱可塑性樹脂の含有量は、樹脂成形体の全量を基準として、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、又は98質量%以上であってよい。樹脂成形体が後述するバインダーを含有する場合、熱可塑性樹脂の含有量は、樹脂成形体の全量を基準として、例えば、60質量%以上であってよく、70質量%以上であってよい。樹脂成形体がバインダーを含有しない場合、熱可塑性樹脂の含有量は、樹脂成形体の全量を基準として、例えば、95質量%以上であってよく、98質量%以上であってよい。
【0020】
脂肪族ポリエステルとしては、例えば、ポリ乳酸、ポリ(3-ヒドロキシ酪酸)、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリエチレンアジペート、ポリプロピレンサクシネート、ポリプロピレンアジペート、ポリヘキシレンサクシネート、ポリヘキシレンアジペート、ポリヒドロキシブチレート、ポリブチレンサクシネートとポリブチレンアジペートとの共重合体、ポリブチレンサクシネートとポリカーボネートとの共重合体、ポリカプロラクトン、ポリヒドキシ酪酸、ポリヒドロキシ吉草酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリリンゴ酸、ポリグリコール酸、ポリコハク酸エステル、ポリシュウ酸エステル、ポリジグリコール酸ブチレン、ポリジオキサノン等が挙げられる。
【0021】
ポリアルキレングリコールとしては、例えば、メチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール等が挙げられる。
【0022】
生分解性を有しない熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル等が挙げられる。ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリスチレン等が挙げられる。ポリオレフィンは、ポリエチレン、ポリプロピレン等のα-オレフィンの単独重合体若しくは共重合体、又はα-オレフィンと他のコモノマーとの共重合体であってもよい。
【0023】
上記生分解性を有しない熱可塑性樹脂であっても、当該熱可塑性樹脂の低分子化を促進する添加剤等と共に用いられることで生分解性が付与され得る。具体的には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のα-オレフィンの単独重合体若しくは共重合体、又はα-オレフィンと他のコモノマーとの共重合体を含むポリオレフィンは、金属塩、金属酸化物及び金属水酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む金属化合物と共に用いられることで、生分解性が付与される。本明細書においては、単独では生分解性を有しない熱可塑性樹脂であっても、低分子化を促進する添加剤により生分解性が付与された樹脂は生分解性を有する熱可塑性樹脂と定義する。生分解性を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂成形体は、一実施形態において、単独では生分解性を有しない熱可塑性樹脂と、当該熱可塑性樹脂の低分子化を促進する添加剤とを含有し、他の一実施形態において、上記ポリオレフィンと、金属塩、金属酸化物及び金属水酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む金属化合物とを含有する。
【0024】
樹脂成形体1は、天然高分子化合物を更に含有してよい。天然高分子化合物としては、例えば、多糖類等が挙げられる。天然高分子化合物は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。多糖類としては、例えば、セルロース、デンプン、キトサン、デキストラン、酢酸セルロース、デンプン変性樹脂、セルロース変性樹脂等が挙げられる。
【0025】
樹脂成形体1は、バインダーを更に含有していてもよい。バインダーは、例えば食物残渣処理物であってよい。食物残渣処理物としては、例えば、家庭から排出される食物残渣、又は、食品加工場、スーパー、レストラン、コンビニ、ホテル等から排出される、食品加工くず、魚腸骨、食べ残し、賞味期限切れ食品等の有機性廃棄物を主原料とし、微生物の働きで発酵、分解し、塩分濃度を調整してできた堆肥が挙げられる。
【0026】
生長抑制成分は、植物の生長抑制効果を有するものであれば、特に制限されない。生長抑制成分は、例えば、酸化合物、フェノール化合物、ジフェニールエーテル化合物、酸アミド化合物、トリアジン化合物、カーバメイト化合物、フェノキシ化合物等の有機化合物であってよい。
【0027】
酸化合物としては、例えば、ペラルゴン酸、アミプロホスメチル、ブタミホス、ベンズリド等が挙げられる。
【0028】
フェノール化合物としては、例えば、ジカンバ、イマザキン、イマザキンアンモニウム塩、ジチオピル等が挙げられる。
【0029】
ジフェニールエーテル化合物としては、例えば、ビフェノックス等が挙げられる。
【0030】
酸アミド化合物としては、例えば、プロパニル、アラクロール、テニルクロール、ナプロパミド、カフェンストロール、プロピサミド、イソキサベン、アシュラム等が挙げられる。
【0031】
トリアジン化合物としては、例えば、シマジン、アトラジン、シアナジン、トリアジフラム等が挙げられる。
【0032】
カーバメイト化合物としては、例えば、クロルプロファム、オルソベンカーブ、ピリブチカルブ等が挙げられる。
【0033】
フェノキシ化合物としては、例えば、2, 4-ジクロロフェノキシ酢酸ジメチルアミン、4-クロローo-トリルオキシ酢酸イソプロピルアンモニウム、トリクロピル等が挙げられる。
【0034】
生長抑制成分は、一実施形態において、金属塩であってよい。金属塩は、有機アニオンと金属カチオンとの有機塩であってよい。金属塩は、例えば、有機酸金属塩であってよい。
【0035】
有機酸金属塩を構成する有機酸としては、例えば、カルボン酸、スルホン酸等が挙げられる。有機酸は、酸性による土壌への影響度の観点から、好ましくはカルボン酸である。
【0036】
カルボン酸は、例えば、脂肪酸、芳香族カルボン酸、ヒドロキシ酸、オキソカルボン酸、これらの誘導体等が挙げられる。カルボン酸は、カルボキシル基を1つ有するモノカルボン酸、カルボキシル基を2つ有するジカルボン酸、又は、カルボキシル基を3つ有するトリカルボン酸であってよい。カルボン酸は、分解のし易さの観点から、好ましくは脂肪酸である。
【0037】
芳香族カルボン酸としては、例えば、桂皮酸、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、サリチル酸、没食子酸、メリト酸等が挙げられる。
【0038】
脂肪酸は、飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸であり、酸化劣化しにくく安定である観点から、好ましくは飽和脂肪酸である。
【0039】
脂肪酸は、置換基を有していても有していなくてもよい。すなわち、脂肪酸はR-COOHで表され、Rはアルキル基又はアルケニル基であり、当該アルキル基又はアルケニル基の炭素原子又は水素原子は置換されていてもよい。Rで表されるアルキル基又はアルケニル基は、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、アミノ基、エーテル結合、エステル結合、酸無水物基等を有していてよい。
【0040】
脂肪酸の炭素数は、例えば30以下であってよい。脂肪酸の炭素数は、一実施形態において、8以下であってよい。この場合、脂肪酸の炭素数は、例えば、2以上又は3以上であってもよく、7以下、6以下又は5以下であってもよく、2~8、2~7、2~6、2~5、3~8、3~7、3~6又は3~5であってもよい。脂肪酸の炭素数は、他の一実施形態において、10以上であってよい。この場合、脂肪酸の炭素数は、25以下又は21以下であってもよく、13以上、15以上又は17以上であってもよく、10~21、10~25、10~30、13~21、13~25、13~30、15~21、15~25、15~30、17~21、17~25、又は17~30であってもよい。
【0041】
飽和脂肪酸としては、例えば、ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、アラキジン酸、ヘンイコシル酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等が挙げられる。飽和脂肪酸は、酸化劣化しにくく安定である観点から、好ましくは、ステアリン酸又はヒドロキシステアリン酸である。不飽和脂肪酸としては、例えば、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、エルカ酸、ネルボン酸、リノール酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸、トリ不飽和脂肪酸、リノレン酸、ピノレン酸、エレオステアリン酸、ミード酸、ジホモ-γ-リノレン酸、エイコサトリエン酸、ステアリドン酸、アラキドン酸、エイコサテトラエン酸、アドレン酸、ボセオペンタエン酸、エイコサペンタエン酸、オズボンド酸、イワシ酸、テトラコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、ニシン酸等が挙げられる。
【0042】
金属塩を構成する金属としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属等が挙げられる。金属は、熱及び電気の伝導性が大きい観点から、好ましくは遷移金属である。
【0043】
アルカリ金属は、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム又はセシウムであってよく、リチウム、ルビジウム又はセシウムであってもよい。
【0044】
アルカリ土類金属は、例えば、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム又はバリウムであってよく、ベリリウム、ストロンチウム又はバリウムであってもよい。
【0045】
遷移金属は、例えば、マンガン、鉄、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛等であってよく、取りうる酸化数の範囲が広い観点から、好ましくはマンガン又は鉄である。
【0046】
脂肪酸金属塩を構成する金属の価数は、電気伝導率を所望の範囲に制御しやすい観点から、好ましくは1価以上、より好ましくは2価以上である。脂肪酸金属塩を構成する金属の価数は、電気伝導率を所望の範囲に制御しやすい観点から、好ましくは4価以下、より好ましくは3価以下である。脂肪酸金属塩を構成する金属の価数は、電気伝導率を所望の範囲に制御しやすい観点から、好ましくは1~4価、より好ましくは1~3価又は2~4価、更に好ましくは2~3価である。
【0047】
脂肪酸金属塩としては、具体的には、ステアリン酸マンガン、ヒドロキシステアリン酸鉄、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸バリウム、ラウリン酸亜鉛、リシノール酸カルシウム、リシノール酸バリウム、リシノール酸亜鉛、オクチル酸亜鉛等が挙げられる。脂肪酸金属塩は、電気伝導率を所望の範囲に制御しやすい観点から、好ましくはステアリン酸マンガン又はステアリン酸鉄である。
【0048】
脂肪酸金属塩は、一実施形態において、炭素数9の飽和脂肪酸を除く飽和脂肪酸と金属との塩であってよく、飽和脂肪酸と、ナトリウム、カリウム及びカルシウムを除く金属との塩であってよく、炭素数9の飽和脂肪酸を除く飽和脂肪酸と、ナトリウム、カリウム及びカルシウムを除く金属との塩であってもよい。
【0049】
生長抑制成分が2種以上の金属塩を含有する場合、生長抑制成分は、ステアリン酸マンガン及びヒドロキシステアリン酸鉄を含有してよく、ステアリン酸マンガン及びステアリン酸マグネシウム、又は、ヒドロキシステアリン酸鉄及びステアリン酸カルシウムを含有してもよく、電気伝導率を所望の範囲に制御しやすい観点から、好ましくは、ステアリン酸マンガン及びヒドロキシステアリン酸鉄を含有する。
【0050】
生長抑制成分の含有量は、樹脂成形体の全量を基準として、例えば、0.7質量%以上であってよく、1.0質量%以上であってよい。
【0051】
以上説明した樹脂成形体1は、植物の生長抑制成分を含有するため、植物の生長抑制用樹脂成形体として好適に用いられる。樹脂成形体1は、例えば、図1(b)に示すように、杭本体部3の一部又は全部が土壌5内に埋まるように挿入されることによって、土壌5に施用される。これにより、例えば土壌5に雨が降った場合であっても、樹脂成形体1を土壌5の所望の場所に好適に保持させることができる。
【0052】
杭状の樹脂成形体1は、例えば射出成形により成形される。射出成形では、例えば、生長抑制成分と樹脂とを含む原料を樹脂が軟化する温度に加熱し、加熱した原料を金型に流し込み、一定時間冷却することで樹脂を硬化させる。
【0053】
樹脂成形体は、他の実施形態をとり得る。図2は、他の一実施形態に係る樹脂成形体を示す斜視図である。図2に示すように、他の一実施形態に係る樹脂成形体11は、粒状に成形されている。樹脂成形体11は、例えば図2に示すように楕円球状であってよく、球状、円柱状、楕円柱状等の他の定形であっても、不定形であってもよい。樹脂成形体11は、このような形状に成形されていることにより、図2に示すように、土壌15に散布可能となっている。樹脂成形体11の最大長さd3は、例えば0.5~5.0mmであってよい。
【0054】
この樹脂成形体11も、植物の生長抑制用樹脂成形体として好適に用いられ、図2に示すように、土壌15に散布されることによって、土壌15に施用される。この樹脂成形体11も、例えば土壌15に雨が降った場合であっても、土壌15の所望の場所に好適に保持させることができる。
【0055】
粒状の樹脂成形体11は、例えば樹脂ペレット造粒により成型される。樹脂ペレット造粒では、例えば、押出機から押出された生長抑制成分と樹脂とを含む原料を、冷却水で冷却しながら又は冷却した後にペレット状に造粒する。
【0056】
図3は、他の一実施形態に係る樹脂成形体を示す斜視図である。図3(a)に示すように、他の一実施形態に係る樹脂成形体21は、シート状に成形されている。樹脂成形体21は、このような形状に成形されていることにより、図3(b)に示すように、土壌25に敷設可能となっている。
【0057】
樹脂成形体21は、例えば略四角形の平面形状を有している。当該四角形の一辺の長さ(樹脂成形体21の主面方向の最大長さ)d4及びd5は、例えば0.5~50mであってよい。樹脂成形体21の厚みd6は、例えば7~100μmであってよい。
【0058】
この樹脂成形体21も、植物の生長抑制用樹脂成形体として好適に用いられ、図3(b)に示すように、一方の主面が土壌25に接するように敷設されることによって、土壌25に施用される。樹脂成形体21は、一部又は全部が土壌25に埋まっていてもよい。この樹脂成形体21も、例えば土壌25に雨が降った場合であっても、土壌25の所望の場所に好適に保持させることができる。
【0059】
シート状の樹脂成形体は、シートの厚み方向に貫通する空隙(穴)、シートの厚み方向の凹凸等を有していてもよい。シート状の樹脂成形体は、例えば網目構造を有するネット状であってもよい。
【0060】
シート状の樹脂成形体21は、例えば押出成形により成形される。押出成形では、例えば、生長抑制成分と樹脂とを含む原料を押出機で溶融・可塑化した後、ダイから押出して冷却・固化し、所定の形状・寸法を付与する。
【0061】
本発明の一実施形態は、植物の生長の抑制方法であってよい。この方法は、上記の樹脂成形体を土壌に施用する工程を備える。これにより、この土壌に存在する植物の生長を抑制できる。当該工程における樹脂成形体の施用方法は、例えば樹脂成形体の状態及び形状に応じて適宜選択される。当該工程では、樹脂成形体を土壌に挿入してもよく、散布してもよく、敷設してもよい。
【0062】
樹脂成形体の施用量は、一実施形態において、植物の生長をより好適に抑制できる観点から、土壌1平方メートル当たり、好ましくは500g以上、より好ましくは1000g以上である。樹脂成形体の施用量は、例えば、土壌1平方メートル当たり2500g以下であってもよい。
【0063】
樹脂成形体に含まれる生長抑制成分の施用量は、他の一実施形態において、植物の生長をより好適に抑制できる観点から、土壌1平方メートル当たり、好ましくは2.6g以上、より好ましくは5.2g以上となるような量である。樹脂成形体に含まれる生長抑制成分の施用量は、例えば、生長抑制成分の施用量が、土壌1平方メートル当たり10.4g以下となるような量であってもよい。
【0064】
樹脂成形体を施用する(生長を抑制する)対象となる植物は、例えば、スズメノカタビラ、ハコベ、タデ類、シロザ類、タンポポ類、ツユクサ、メヒシバ、アキメヒシバ、オヒシバ、スズメノヒエ、スベリヒユ、ヤハズソウ、コニシキソウ、ヨモギ、オオアレチノギク、ハマスゲ、エノコログサ、カタバミ、カヤツリグサ、クローバー、チドメグサ、ヒメギク、スズメノカタビラ、スズメノテッポウ、ヒメスイバ、ギシギシ類、ノミノフスマ、ツメクサ、ミミナグサ、ハルジオン、ヒメムカシヨモギ、ノゲシ、イヌノフグリ、ナズナ又はイヌガラシであってよい。上記の樹脂成形体及び上記の方法は、植物が雑草(一年生植物及び多年生植物)である場合に特に好適に用いられる。
【0065】
本発明の一実施形態は、図1(b)、図2及び図3(b)に示すように、上記の植物の樹脂成形体1,11,21を含む土壌5,15,25であってよい。樹脂成形体は、図1(b)に示すように土壌5中に存在していてもよく、図2及び図3(b)に示すように土壌15,25表面に存在していてもよい。この土壌5,15,25は、樹脂成形体1,11,21を含むことで、植物の生長を抑制することが可能な土壌となる。したがって、樹脂成形体1,11,21は、植物の生長を抑制できる土壌に改質可能な土壌改質用樹脂成形体ということもできる。
【実施例
【0066】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0067】
<実施例1~4>
[樹脂成形体の作製]
ポリプロピレン系生分解性樹脂(日立化成株式会社製、商品名:デグラレックスBSR-PF-02PP)69.3質量%と、食物残渣処理物(パーパス株式会社製、商品名:パーパス)30質量%と、生長抑制成分としてヒドロキシステアリン酸鉄(III)及びステアリン酸マンガン(II)の混合物(ノボン・ジャパン株式会社製、商品名:S-AW)0.7質量%とを配合し、射出成形機(東洋機械金属製、型締力100t、射出力103cm)により杭状に成形することで、樹脂成形体を得た。
【0068】
[植物の生長抑制効果の評価]
得られた樹脂成形体について、下記に示した評価方法により植物の生長抑制効果の評価を行った。
すなわち、まず、樹脂成形体に含まれる生長抑制成分の土壌1平方メートルあたりの施用量が表1に示す値となるように、樹脂成形体を施用した。次いで、財団法人 上越環境科学センターにおいて、工業汚泥肥料について植物に対する害の有無を調べるための栽培試験(植害試験)で、昭和59年4月18日付59農蚕第1943号農林水産省農蚕園芸局長通知記の4の(2)の別添1に準じて、12日後及び21日後の生長調査成績を評価した。
【0069】
<比較例1>
樹脂成形体を施用しなかったこと以外は、実施例1と同様にして植物の生長抑制効果を評価した。
【0070】
<比較例2~5>
ヒドロキシステアリン酸鉄及びステアリン酸マンガンを配合しなかった以外は、実施例1と同様の組成を有する杭状の比較樹脂成形体を得た。また、土壌1平方メートルあたりの施用量が表1に示す値となるように、比較樹脂成形体を施用した。
【0071】
各実施例及び比較例について、植物の生長抑制効果の評価結果を表1に、12日後の植物の生長の様子を図4に、21日後の植物の生長の様子を図5にそれぞれ示す。
【0072】
【表1】
【0073】
実施例1~4と比較例1~5とを比較すると、発芽時点では違いは見られないが、12日後及び21日後では、実施例1~4において、比較例1~5よりも顕著に植物の生長が抑制されていることが分かる。また、樹脂成形体の施用量が増加すると、植物の生長抑制効果が増大することが分かる。したがって、樹脂成形体の施用量の変更により、植物の生長が制御可能であると推察される。
【符号の説明】
【0074】
1,11,21…樹脂成形体、2…杭頭部、3…杭本体部、5,15,25…土壌。
図1
図2
図3
図4
図5