(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-21
(45)【発行日】2023-03-02
(54)【発明の名称】車両ヘッドライトテスター用の車両正対装置、及び、この車両正対装置に用いるマーカーが表示された基体、及び、上記車両ヘッドライトテスター用の車両正対用演算記憶装置
(51)【国際特許分類】
G01M 11/06 20060101AFI20230222BHJP
【FI】
G01M11/06
(21)【出願番号】P 2018159849
(22)【出願日】2018-08-29
【審査請求日】2021-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000218443
【氏名又は名称】渡辺電機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102749
【氏名又は名称】澤木 紀一
(74)【代理人】
【識別番号】100081787
【氏名又は名称】小山 輝晃
(72)【発明者】
【氏名】原田 陽平
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0155260(US,A1)
【文献】特開平09-329430(JP,A)
【文献】特開2005-300477(JP,A)
【文献】特開平04-212034(JP,A)
【文献】特開2004-340890(JP,A)
【文献】特表2003-508743(JP,A)
【文献】特開平05-087686(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0186244(US,A1)
【文献】実開昭49-102401(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 11/06
B60Q 1/04 - B60Q 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ヘッドライトテスターに設けた、2つの撮像装置と、
該2つの撮像装置により撮像される、前記車両ヘッドライトテスターにより測定される被測定車両の所望の2箇所にそれぞれ設けられる、2つのマーカーと、
車両正対用演算記憶装置とよりなり、
該車両正対用演算記憶装置は、前記各マーカーを、それぞれ前記2つの撮像装置により撮像した画像から、前記車両ヘッドライトテスターの正面に対する前記被測定車両の前面との傾斜角度を演算する車両傾斜角度演算記憶部を有することを特徴とする車両ヘッドライトテスター用の車両正対装置。
【請求項2】
前記ヘッドライトテスターは、集光レンズと、該集光レンズにより集光された配光を受像する配光スクリーンと、該配光スクリーンが受像した配光を検出する配光撮像カメラと、該配光撮像カメラにより撮像された画像を表示する表示装置とよりなり、
前記車両正対用演算記憶装置は、前記配光撮像カメラにより撮像された画像を、前記表示装置に表示される位置から、予め記憶されたヘッドライトテスターと被測定車両との傾斜角度と変位量との関係に従って、前記演算された傾斜角度に対応する変位量だけ変位させて、前記表示装置に表示する画像位置修正演算記憶部を更に有することを特徴とする請求項1に記載の車両ヘッドライトテスター用の車両正対装置。
【請求項3】
前記予め記憶されたヘッドライトテスターと被測定車両との傾斜角度と変位量との関係は、一次関数より表されることを特徴とする請求項2に記載の車両ヘッドライトテスター用の車両正対装置。
【請求項4】
前記マーカーは、被測定車両に設けられる基体上に表示される画像処理用表示であり、
該基体は、被測定車両の凹部に当接して載置可能な形状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載の車両ヘッドライトテスター用の車両正対装置。
【請求項5】
前記基体は、円柱体からなり、前記マーカーは、該円柱体の上面に表示されていることを特徴とする請求項4に記載の車両ヘッドライトテスター用の車両正対装置。
【請求項6】
前記マーカーは、被測定車両に設けられる基体上に表示される画像処理用表示であり、
該基体は、マーカーが表示されたマーカー表示部分と、被測定車両に設けられる本体部分と、前記マーカー表示部分を、前記本体部分に対して傾動自在に連結した連結機構部とよりなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1に記載の車両ヘッドライトテスター用の車両正対装置。
【請求項7】
集光レンズと、該集光レンズにより集光された配光を受像する配光スクリーンと、該配光スクリーンが受像した配光を検出する配光撮像カメラと、該配光撮像カメラにより撮像された画像を表示する表示装置とよりなる車両ヘッドライトテスターに設けられる車両正対用演算記憶装置よりなり、
該車両正対用演算記憶装置は、前記配光撮像カメラにより撮像された画像を、前記表示装置に表示される位置から、予め記憶されたヘッドライトテスターと車両との傾斜角度と変位量との関係に従って、ヘッドライトテスターと被測定車両の傾斜角度に対応する変位量だけ変位させて、前記表示装置に表示する画像位置修正演算記憶部を有することを特徴とする車両ヘッドライトテスター用の車両正対用演算記憶装置。
【請求項8】
前記予め記憶されたヘッドライトテスターと被測定車両との傾斜角度と変位量との関係は、一次関数より表されることを特徴とする請求項7に記載の車両ヘッドライトテスター用の車両正対用演算記憶装置。
【請求項9】
車両ヘッドライトテスターと被測定車両との正対のためのヘッドライト用の車両正対装置に用いられる、該被測定車両に設けられて、撮像装置により撮像されて、演算処理装置により画像処理されて位置が特定されるマーカーが表示された基体であって、
該基体は、前記被測定車両に設けられ、
前記マーカーは、前記基体上に表示される画像処理用表示であり、
前記基体は、マーカーが表示されたマーカー表示部分と、被測定車両に設けられる本体部分と、前記マーカー表示部分を、前記本体部分に対して傾動自在に連結した連結機構部とよりなることを特徴とする車両ヘッドライトテスター用の車両正対装置に用いられるマーカーが表示された基体。
【請求項10】
前記基体は、前記被測定車両の凹部に当接して載置可能な円柱体に形成され、
前記凹部は、被測定車両のフロントウインドウとフロントフードの左又は右の立ち上がりとの間に形成される立ち上がり部に形成される凹部であることを特徴とする請求項
9に記載の車両ヘッドライトテスター用の車両正対装置に用いられるマーカーが表示された基体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両ヘッドライトテスター用の車両正対装置、及びこの車両正対装置に用いるマーカーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のヘッドライトの光軸や配光などを測定するためには、車両ヘッドライトテスターが用いられ、測定の際には、該車両ヘッドライトテスターを、測定される車両(被測定車両)の前面に対して、正面を向くように位置(正対)させる必要がある。
【0003】
そして、従来においては、前記車両ヘッドライトテスターには、正対用のスコープ等が設けられ、測定員が該スコープを覗いて、前記車両ヘッドライトテスターを前記被測定車両の正面を向くように傾動させて、車両の正対を行っていた。
【0004】
図10及び
図11は、一般に使用される車両ヘッドライトテスター1を示し、該車両ヘッドライトテスター1は、
図10に示すように、床面に敷設されたレール上を左右方向に移動する台車2と、該台車2に立設した支柱3と、該支柱3に上下動可能に設けた直方体状の筐体4と、該筺体4に設けた液晶モニタなどの表示装置5及び演算記憶処理装置6とから構成されている。
【0005】
また、前記筐体4は、
図11に示すように、該筐体4の前面(被測定車両を向く側)には、被測定車両のヘッドライト光を受けるためのフレネルレンズなどの集光レンズ7が固定されていると共に、該筐体4の内部後方に、該集光レンズ7からの収束した配光を受像するための配光スクリーン8が固定され、また、前記筐体4内の中間上方に、前記配光スクリーン8が受像した配光を検出するためのCCDカメラなどの配光撮像カメラ9が固定され、該配光撮像カメラ9により撮像された画像が前記表示装置5に表示されるように構成されている。
【0006】
そして、前記車両ヘッドライトテスター1には、該車両ヘッドライトテスター1と被測定車両との正対のために、車両正対用スコープ(図示せず)が別途固定されていると共に、前記筐体4が、前記支柱3を軸として、左右方向に傾動自在に設けられていた。
【0007】
前記車両ヘッドライトテスター1の測定においては、被測定車両を、前記車両ヘッドライトテスター1の正面に、該被測定車両の前面が対向するようにして、所望の距離離間して、位置させる。そして、正対のために、前記車両ヘッドライトテスター1の前面(集光レンズの面)と、前記被測定車両の前面(車両の前面側の仮想された垂直面)とが、左右方向において平行に対向させるために、測定員が、前記車両正対用スコープのファインダを覗いて、該ファインダに表示された垂直基準線上に、前記被測定車両の左右方向において中心となる上下に設定した2点が一致するように、前記筐体4を、前記支柱3の軸を中心にして左右方向に傾動させ、また、必要に応じて、前記筐体4を前記レールに沿って左右方向に移動させていた。
【0008】
例えば、従来の正対装置としては、例えば、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、測定員がスコープを覗きながら、前記車両ヘッドライトテスターを傾動させるのは、手間がかかっていた。
【0011】
また、一般に、被測定車両の左右方向におけて中心となる上側の点は、ルームミラーの中心(左右方向)とし、下側の点は、前記ルームミラーよりも前方に設けられたエンブレムの中心(左右方向)なとどしていたが、それぞれ正確な中心の場所が明らかでない場合があり、スコープの垂直基準線を合わせるのが難しかった。
【0012】
本発明は、前記の欠点を除くようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は前記の目的を達成すべく、本発明の車両ヘッドライトテスター用の車両正対装置は、車両ヘッドライトテスターに設けた、2つの撮像装置と、該2つの撮像装置により撮像される、前記車両ヘッドライトテスターにより測定される被測定車両の所望の2箇所にそれぞれ設けられる、2つのマーカーと、車両正対用演算記憶装置とよりなり、該車両正対用演算記憶装置は、前記各マーカーを、それぞれ前記2つの撮像装置により撮像した画像から、前記車両ヘッドライトテスターの正面に対する前記被測定車両の前面との傾斜角度を演算する車両傾斜角度演算記憶部を有することを特徴とする。
【0014】
また、前記ヘッドライトテスターは、集光レンズと、該集光レンズにより集光された配光を受像する配光スクリーンと、該配光スクリーンが受像した配光を検出する配光撮像カメラと、該配光撮像カメラにより撮像された画像を表示する表示装置とよりなり、前記車両正対用演算記憶装置は、前記配光撮像カメラにより撮像された画像を、前記表示装置に表示される位置から、予め記憶されたヘッドライトテスターと被測定車両との傾斜角度と変位量との関係に従って、前記演算された傾斜角度に対応する変位量だけ変位させて、前記表示装置に表示する画像位置修正演算記憶部を更に有することを特徴とする。
【0015】
また、車両ヘッドライトテスター用の車両正対用演算記憶装置は、集光レンズと、該集光レンズにより集光された配光を受像する配光スクリーンと、該配光スクリーンが受像した配光を検出する配光撮像カメラと、該配光撮像カメラにより撮像された画像を表示する表示装置とよりなる車両ヘッドライトテスターに設けられる車両正対用演算記憶装置よりなり、該車両正対用演算記憶装置は、前記配光撮像カメラにより撮像された画像を、前記表示装置に表示される位置から、予め記憶されたヘッドライトテスターと車両との傾斜角度と変位量との関係に従って、ヘッドライトテスターと被測定車両の傾斜角度に対応する変位量だけ変位させて、前記表示装置に表示する画像位置修正演算記憶部を有することを特徴とする。
【0016】
また、前記予め記憶されたヘッドライトテスターと被測定車両との傾斜角度と変位量との関係は、一次関数より表されることを特徴とする。
【0017】
また、前記マーカーは、被測定車両に設けられる基体上に表示される画像処理用表示であり、該基体は、被測定車両の凹部に当接して載置可能な形状に形成されていることを特徴とする。
【0018】
また、前記基体は、円柱体からなり、前記マーカーは、該円柱体の上面に表示されていることを特徴とする。
【0019】
また、前記マーカーは、被測定車両に設けられる基体上に表示される画像処理用表示であり、該基体は、マーカーが表示されたマーカー表示部分と、被測定車両に設けられる本体部分と、前記マーカー表示部分を、前記本体部分に対して傾動自在に連結した連結機構部とよりなることを特徴とする。
【0020】
車両ヘッドライトテスター用の車両正対装置に用いられるマーカーが表示された基体は、車両ヘッドライトテスターと被測定車両との正対のためのヘッドライト用の車両正対装置に用いられる、該被測定車両に設けられて、撮像装置により撮像されて、演算処理装置により画像処理されて位置が特定されるマーカーが表示された基体であって、該基体は、前記被測定車両の凹部に当接して載置可能な形状に形成され、前記マーカーは、前記基体上に表示される画像処理用表示であることを特徴とする。
【0021】
また、前記基体は、円柱体よりなり、前記凹部は、被測定車両のフロントウインドウとフロントフードの左又は右の立ち上がりとの間に形成される立ち上がり部に形成される凹部であることを特徴とする。
【0022】
また、車両ヘッドライトテスター用の車両正対装置に用いられるマーカーが表示された基体は、車両ヘッドライトテスターと被測定車両との正対のためのヘッドライト用の車両正対装置に用いられる、該被測定車両に設けられて、撮像装置により撮像されて、演算処理装置により画像処理されて位置が特定されるマーカーが表示された基体であって、該基体は、前記被測定車両に設けられ、前記マーカーは、前記基体上に表示される画像処理用表示であり、前記基体は、マーカーが表示されたマーカー表示部分と、被測定車両に設けられる本体部分と、前記マーカー表示部分を、前記本体部分に対して傾動自在に連結した連結機構部とよりなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、車両ヘッドライトテスターを正対のために傾斜させる必要がなく、容易に正対ができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の車両ヘッドライトテスター用の車両正対装置の説明図である。
【
図2】本発明の車両正対装置のマーカーの説明図である。
【
図3】本発明の車両正対装置の基体の説明用斜視図である。
【
図4】本発明の車両正対装置におけるヘッドライトテスターと車両との傾斜角度を求めるための説明図である。
【
図5】本発明の車両正対装置におけるヘッドライトテスターと車両との傾斜角度を求めるための説明図である。
【
図6】本発明の車両正対装置におけるヘッドライトテスターと車両との傾斜角度を求めるための説明図である。
【
図7】本発明の車両正対装置の他の実施例のマーカーの平面図である。
【
図10】車両ヘッドライトテスターの正面図である。
【
図11】該ヘッドライトテスターの筐体の縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面によって本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0026】
本発明の車両ヘッドライトテスター用の車両正対装置は、例えば、
図1に示すように、前記車両ヘッドライトテスター1の筐体4の前面に、互いに左右方向に離間した所望の2箇所に固定して設けられた、ステレオカメラなどの2つの一方及び他方のカメラ等の撮像装置10a、10bと、該撮像装置10a、10bにより撮像される、被測定車両11の前面に、互いに左右方向に離間した所望の2箇所に設けられる、画像処理可能な、2つの一方及び他方のマーカー12a、12bと、例えば、前記車両ヘッドライトテスター1の演算記憶処理装置6に設けられた車両正対用演算記憶装置13とよりなる。
【0027】
なお、前記2つの撮像装置10a、10bは、互いに左右方向に離間していれば良いが、演算処理を簡単にするために、例えば、前記車両ヘッドライトテスター1(又は集光レンズ7)の左右方向における中心から、左右に、設定された距離だけ、等距離離間して、同じ高さ(水平方向)に設置されているのが望ましい。
【0028】
また、前記2つのマーカー12a、12bは、例えば、それぞれ、前記被測定車両11に接着や磁石などで吸着可能なシート体や板体からなる基体14の上面等に表示され、また、該各マーカー12a、12bは、前記撮像装置10a、10bにより撮像した画像を、例えば、前記車両正対用演算記憶装置13に設けた画像認識装置(図示せず)により、認識できる表示であり、例えば、
図2に示すような塗りつぶしの円や、所望の幅の円や、塗りつぶしの矩形などの多角形や、幾何学模様や、これらの組み合わせからなる形状などがある。
【0029】
なお、前記基体14の形状は、被測定車両11に接着や、吸着や、載置等が可能に設けられるのであれば、特に制限はない。
【0030】
また、前記基体14を、例えば、
図3に示すように、前記マーカー12a(12b)が表示された上面部分などのマーカー表示部分14aと、被測定車両に設けられる本体部分14bと、該マーカー表示部分14aを、前記本体部分14bに対して傾動自在に連結する、例えば、ヒンジなどの傾動連結機構部14cとにより構成し、前記基体14を前記被測定車両に取り付けた時、前記マーカー表示部分14aの面が、前記撮像装置10a、10bに対して、例えば、正面に向くように、傾動させることができるようにしてもよい。
【0031】
なお、前記マーカー12a、12bは、被測定車両の左右方向における中心線が演算できれば良いので、左右方向に離間すると共に、前記被測定車両11に対する位置が明確であれば、位置に限定はないが、前記被測定車両11の前面(ヘッドライトテスターを向く側)の左右方向における中心から、左右に、それぞれ等距離離間して、同じ高さ(水平方向)に設置されれば、被測定車両の左右方向における中心線を演算で特定できるので、前記被測定車両11に対する具体的な位置が明確でなくてもよい。
【0032】
また、前記車両正対用演算記憶装置13は、車両傾斜角度演算記憶部13aと、画像位置修正演算記憶部13bとよりなる。
【0033】
該車両傾斜角度演算記憶部13aは、前記車両ヘッドライトテスター1に対する、被測定車両11の傾斜角度を演算する傾斜角度演算装置であり、該装置は、前記一方及び他方の撮像装置10a、10bにより、それぞれ前記一方及び他方のマーカー12a、12bを撮像した撮像画像を取得して、該撮像画像から、前記一方及び他方の撮像装置10a、10b、即ち、前記車両ヘッドライトテスター1に対する前記一方及び他方のマーカー12a、12bの各位置をそれぞれ演算し、該演算された一方及び他方のマーカー12a、12bの位置から、前記ヘッドライトテスターの前面(集光レンズの面)の左右方向(水平方向)と、前記被測定車両11の前面(車両の前面側の仮想された垂直面)の左右方向(水平方向)とのなす角度(傾斜角度)を演算するよう構成される。
【0034】
例えば、
図4に示すように、前記一方の撮像装置10aにより前記一方のマーカー12aを撮像した撮像画像から、前記一方の撮像装置10aに対する前記一方のマーカー12aの方向を演算でき、即ち、前記一方の撮像装置10aと前記一方のマーカー12aとを結ぶ線と前記車両ヘッドライトテスター1の前面に対する角度θ1が演算でき、また、前記他方の撮像装置10bにより前記一方のマーカー12aを撮像した撮像画像から、前記他方の撮像装置10bに対する前記一方のマーカー12aの方向を演算でき、即ち、前記他方の撮像装置10bと前記一方のマーカー12aとを結ぶ線と、前記車両ヘッドライトテスター1の正面に対する角度θ2が演算でき、前記一方及び他方の撮像装置10a、10bの位置は既知であるので、該一方及び他方の撮像装置間の距離Lは既知となり、三角測量より、前記車両ヘッドライトスター1に対する前記一方のマーカー12aの位置を演算することができるようになる。
【0035】
同様に、
図5に示すように、前記一方の撮像装置10aにより前記他方のマーカー12bを撮像した撮像画像から、前記一方の撮像装置10aに対する前記他方のマーカー12bの方向を演算でき、即ち、前記一方の撮像装置10aと前記他方のマーカー12bとを結ぶ線と前記車両ヘッドライトテスター1の前面に対する角度θ3が演算でき、また、前記他方の撮像装置10bにより前記他方のマーカー12bを撮像した撮像画像から、前記他方の撮像装置10bに対する前記他方のマーカー12bの方向を演算でき、即ち、前記他方の撮像装置10bと前記他方のマーカー12bとを結ぶ線と、前記車両ヘッドライトテスター1の正面に対する角度θ4が演算でき、前記一方及び他方の撮像装置10a、10bの位置は既知であるので、該一方及び他方の撮像装置間の距離Lは既知となり、三角測量より、前記車両ヘッドライトテスター1に対する前記他方のマーカー12bの位置を演算することができるようになる。
【0036】
そして、前記演算された前記一方のマーカー12aの位置と、前記他方のマーカー12bの位置とから、前記被測定車両11の前面の左右方向の方向が演算でき、該方向と、前記ヘッドライトテスター1の正面の左右方向とのなす傾斜角度を演算できるようになる。
【0037】
なお、前記一方及び他方のマーカー12a、12bを、前記被測定車両11の前面の中心から、左右に、それぞれ等間隔離間して、同じ高さに設けた場合には、前記一方及び他方のマーカー12a、12bを結ぶ線が、前記被測定車両11の前面の左右方向の方向となるので、
図6に示すように、該方向と、前記車両ヘッドライトテスター1の前面の左右方向とのなす角度θ5が、前記被測定車両11の正面と車両ヘッドライトテスター1の正面との傾斜角度となる。
【0038】
また、前記画像位置修正演算記憶部13bは、車両ヘッドライトテスターに対する被測定車両の傾斜角度から、前記配光撮像カメラ9により撮像された画像の前記表示装置5に表示される位置を修正する画像位置修正装置であり、該装置は、前記配光撮像カメラ9により撮像された前記被測定車両11やヘッドライトなどの撮像画像が、本来、前記表示装置5上に表示される位置から、予め記憶された車両ヘッドライトテスター1と被測定車両11との傾斜角度と変位量との関係に従って、車両ヘッドライトテスター1と被測定車両11との傾斜角度に対応する変位量だけ変位(移動)させて前記表示装置5上に表示させるようにする。
【0039】
前記傾斜角度と変位量との関係とは、車両ヘッドライトテスター1に対する被測定車両11の傾斜角度に応じた、被測定車両11が傾斜していない場合に、前記配光撮像カメラ9により撮像された前記被測定車両11やヘッドライトなどの撮像画像が前記表示装置5に表示される位置と、前記測定車両11が傾斜した場合に、前記配光撮像カメラ9により撮像された該被測定車両11やヘッドライトの撮像画像が前記表示装置5に表示される位置との変位量との関係を示す。
【0040】
なお、前記傾斜した被測定車両11やヘッドライトを、前記車両ヘッドライトテスター1の配光撮像カメラ9で撮像して、該被測定車両11やヘッドライトの画像を前記表示装置5に表示させた場合、傾斜していない被測定車両11やヘッドライトの画像を表示させた場合に対して、傾斜角度の量に応じて、左右方向に移動して表示されるようになる。
【0041】
即ち、例えば、
図6に示すように、被測定車両11が反時計回りに傾斜している場合には、正面を向いている場合に比べて、前記被測定車両11(またはヘッドライト)は、前記表示装置5に対して、所望量左側に移動して表示されるので、前記車両傾斜角度演算記憶部13aにおいては、該画像を、右に所望量だけ移動させて表示させるようにする。
【0042】
従って、前記画像位置修正演算記憶部13bにより、前記表示装置5上に表示される被測定車両の画像を、実際に表示される画像よりも、前記演算された傾斜角度に対応した変位量だけ、左右方向に移動させて、前記表示装置5上に表示させるようにする。
【0043】
このように移動させることにより、実際には傾斜した画像であっても、傾斜していない画像とみなして、前記車両ヘッドライトテスター1を用いて、測定をすることができるようになる。
【0044】
なお、前記傾斜角度と変位量との関係は、前記傾斜角度が小さい場合には、数1の一次関数で近似することができる。
【0045】
(数1)
A=K×θ
Aは表示装置5上の変位量、Kは定数、θは傾斜角度(変数)
【0046】
例えば、被測定車両との距離を10m離間させたものとみなして測定する車両ヘッドライトテスター1の場合には、被測定車両の傾斜角度が1度の場合には、表示装置5上では、左に17.5cm移動することが計算できるので、Kは17.5(cm/度)となる。
【0047】
なお、被測定車両との距離が異なる場合や、表示装置上での表示倍率等により、前記式(1)のKは、修正される。
【0048】
なお、前記車両正対演算記憶装置13は、前記演算記憶処理部6に設けず、別途設けてもよい。
【0049】
また、例えば、画像位置修正演算記憶部13bにおいては、必要に応じて、前記被測定車両11の左右方向における中心位置を演算して、そして、前記表示装置5に表示される被測定車両11画像の中心位置が、前記表示装置5上の中心に表示された基準線(又は、基準点)に一致するように、前記表示装置5に表示される前記被測定車両11画像を移動させて表示するようにしてもよい。
【0050】
即ち、前記傾斜角度演算記憶装置13aにより、前記マーカー12a、12bの位置から、前記車両の左右方向における中心位置が演算できるので、その中心位置が、前記表示装置4の中心に位置するように、被測定車両11の画像を移動するようにする。
【0051】
また、例えば、画像位置修正演算記憶部13bにおいては、必要に応じて、前記被測定車両11の左右方向における中心位置を演算して特定し、そして、前記表示装置5に表示された被測定車両11画像の中心位置に、前記表示装置5の中心に表示された基準線(又は、基準点)を移動して一致させて、前記被測定車両11の中心に前記基準線(又は、基準点)が一致して前記表示装置5に表示するようにしてもよい。
【0052】
次に、本発明の車両正対装置の使用方法及び効果を説明する。
【0053】
まず、被測定車両11を、測定ストールに搬入し、該被測定車両11の前面と前記テスターの正面との距離が、所望の距離、例えば、1mの位置で停止させる。
【0054】
次に、前記一方及び他方のマーカー12a、12bが表示された基体14、14を、前記被測定車両11の前面の中心位置から等距離の左右で、同じ高さに、それぞれを固定する。
【0055】
なお、該固定は、シールや磁石などの接着や吸着以外に、単に載置する場合も含む。
【0056】
そして、前記一方及び他方の撮像装置10a、10bにより、前記一方マーカー12a、12bを撮像して、前記車両傾斜角度演算記憶部13aにより、該得られた2つの撮像画像から、前記一方及び他方のマーカー12a、12bの位置をそれぞれ演算し、そして、該一方及び他方のマーカー12a、12bの位置から、前記ヘッドライトテスター1、即ち、集光レンズ7の面と、前記被測定車両11の左右方向における傾斜角度を演算する。
【0057】
また、例えば、前記画像位置修正演算記憶部部13bにより、前記演算された傾斜角度と、予め記憶された、傾斜角度と変位量の関係とから、前記表示装置5上に表示する被測定車両の画像の変位量を演算し、実際に表示される画像から、該得られた変位量だけ前記被測定車両の画像を移動させて、前記表示装置5上に表示させるようにする。
【0058】
そして、該位置が修正された被測定車両11の画像に基づいて、前記車両ヘッドライトテスター1により各測定を行うようにする。
【0059】
なお、修正される前の画像を、修正後の画像と共に、又は、別途、そのまま前記表示装置5上に表示するようにしてもよい。
【0060】
また、前記画像位置修正演算記憶部13bを用いずに、前記車両傾斜角度演算記憶部13aにより演算された傾斜角度に基づいて、作業者が手動で、又は、別途設けた傾動装置等により自動で、前記車両ヘッドライトテスターを傾斜させるようにしてもよい。
【0061】
本発明によれば、ヘッドライトテスターを傾動させなくても、傾斜角度を演算して、この値に基づいて、表示装置5上に表示される画像を移動させることにより、正対したものとして、測定ができるようになる。
【実施例2】
【0062】
本発明においては、前記マーカー12a、12bを表示した各基体14を、それぞれ被測定車両の凹部の縁部に当接して載置可能な形状の載置体に形成し、該各載置体の上面にマーカー12a、12bをそれぞれ表示するようにする。
【0063】
前記被測定車両の凹部には、例えば、被測定車両11のフロントウインドウ15とフロントフード16の左、右の立ち上がり部との間にそれぞれ形成される凹部17、17や、フロントフード上の左右に形成された左右対称な凹部などがあり、被測定車両の左右に対称に形成され、前記基体14を当接して位置決め可能な凹部であれば、特に、位置に限定はない。
【0064】
また、前記載置体の形状は、前記凹部の縁部に当接して位置決めされて載置される形状であれば、特に限定されないが、例えば、
図7や
図8に示すように、円柱体がある。
【0065】
また、前記基体14に表示される各マーカー12a、12bの形状も画像識別が可能なものであれば、実施例1と同様、特に限定はないが、例えば、円、又は、塗りつぶされた円により形成し、前記円柱体の上面の中央に表示するようにする。
【0066】
そして、例えば、前記円柱体状の基体14、14を、例えば、
図9に示すように、被測定車両11のフロントウインドウ15とフロントフード16の左、右の立ち上がり部との間にそれぞれ形成される凹部17、17内に嵌め込むように載置するようにする。
【0067】
前記凹部17、17は、車両の左右方向の中心から等距離であり、高さも同じであるので、前記円柱体の基体14、14を載置するだけで、被測定車両の左右方向における中心線を境にて、左右対称で、同じ高さに、一方及び他方のマーカー12a、12bを位置できるようになる。
【0068】
これにより、車両の形状を問わず、前記円柱体を載置するだけで、左右方向の位置決めが容易になる。
【0069】
なお、前記基体14は、実施例1で説明したように、前記マーカー12a(12b)が表示された上面部分などのマーカー表示部分14aと、被測定車両に設けられる本体部分14bと、該マーカー表示部分14aを、前記本体部分14bに対して傾動自在に連結する、例えば、ヒンジなどの傾動連結機構部14cとにより構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の車両正対装置は、乗用車その他の自動車の製造工程又は車検整備を行う車両整備工場棟で有用である。
【符号の説明】
【0071】
1 車両ヘッドライトテスター
2 台車
3 支柱
4 筐体
5 表示装置
6 演算記憶処理装置
7 集光レンズ
8 配光スクリーン
9 配光撮像カメラ
10a 撮像装置
10b 撮像装置
11 被測定車両
12a マーカー
12b マーカー
13 車両正対用演算記憶装置
13a 車両傾斜角度演算記憶部
13b 画像位置修正演算記憶部
14 基体
14a マーカー表示部分
14b 本体部分
14c 傾動連結部分
15 フロントウインドウ
16 フロントフード
17 凹部