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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-21
(45)【発行日】2023-03-02
(54)【発明の名称】積層セラミック電子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20230222BHJP
【FI】
H01G4/30 311A
H01G4/30 517
H01G4/30 201N
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018195231
(22)【出願日】2018-10-16
(65)【公開番号】P2020064940
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】前田 浩平
(72)【発明者】
【氏名】小川 隆
(72)【発明者】
【氏名】福岡 哲彦
【審査官】北原 昂
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-191409(JP,A)
【文献】特開平07-122455(JP,A)
【文献】米国特許第05800761(US,A)
【文献】特開2002-134352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部電極がセラミックシートを介して第1方向に積層された電極積層領域と、前記電極積層領域を前記第1方向両側からそれぞれ覆う第1カバー領域及び第2カバー領域と、を有するセラミック積層体であって、前記第1カバー領域は、前記電極積層領域上の第1カバー層と、前記第1カバー層の外側の第1外層と、を含前記第1カバー層と前記第1外層とは同一の材料で構成されているセラミック積層体を準備し、
前記第2カバー領域の表面から前記第1外層に達するまで、前記第1外層を分断せずに前記セラミック積層体を切断し、
前記第1外層を除去することで、前記セラミック積層体から積層チップを個片化する
積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の積層セラミック電子部品の製造方法であって、
回転刃によって前記セラミック積層体を切断する
積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の積層セラミック電子部品の製造方法であって、
前記積層チップは、前記内部電極が露出する切断面を有し、
前記積層チップの前記切断面にサイドマージン部を形成する
積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品の製造方法であって、
前記第1外層は、前記第1方向に直交する面全体が、前記第1方向にほぼ均一な厚みで切削されることで除去される
積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品の製造方法であって、
前記第1外層は、50μm以上である
積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品の製造方法であって、
前記第2カバー領域は、前記電極積層領域上の第2カバー層と、前記第2カバー層の外側の第2外層と、を含み、
前記セラミック積層体の切断後、前記第2外層を除去する
積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の積層セラミック電子部品の製造方法であって、
前記第2外層は、前記第1方向に直交する面全体が、前記第1方向にほぼ均一な厚みで切削されることで除去される
積層セラミック電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミックコンデンサ等の積層セラミック電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミックコンデンサ等の積層セラミック電子部品は、一般に、内部電極が積層された大判のセラミック積層体を、切断装置によって積層チップに個片化することで製造される。
【0003】
特許文献1には、積層体を粘着シートに貼り付けて切断し、複数の積層体チップを個片化する積層セラミック電子部品の製造方法が記載されている。同文献の製造方法では、粘着剤屑の発生を防止する観点から、セラミック層と内部導体とが交互に積層された領域を備えた積層体の一方主面側から切削ハーフカット溝を形成し、他方主面に位置決め溝を形成した後、位置決め溝に基づいて切削ハーフカット溝に達するように他方主面を溝状に切削して、積層体を複数の個々の積層体チップに分割する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-143357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、他方主面側の溝が切削ハーフカット溝に対してわずかにずれた場合に、切断面に各溝に起因する段差が形成されることがあった。これにより、形状不良や、切断面に露出した内部電極の短絡不良が発生し、歩留まりが低下しやすかった。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、歩留まりを向上させることが可能な積層セラミック電子部品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る積層セラミック電子部品の製造方法は、内部電極がセラミックシートを介して第1方向に積層された電極積層領域と、上記電極積層領域を上記第1方向両側からそれぞれ覆う第1カバー領域及び第2カバー領域と、を有するセラミック積層体であって、上記第1カバー領域は、上記電極積層領域上の第1カバー層と、上記第1カバー層の外側の第1外層と、を含前記第1カバー層と前記第1外層とは同一の材料で構成されているセラミック積層体を準備する工程を含む。
上記第2カバー領域の表面から上記第1外層に達するまで、上記第1外層を分断せずに上記セラミック積層体が切断される。
上記第1外層を除去することで、上記セラミック積層体から積層チップが個片化される。
【0008】
上記製造方法では、セラミック積層体が第1外層を残した状態で切断された後、第1外層全体が除去されることで積層チップが個片化される。つまり、切断工程では、第1外層によってセラミック積層体が接続された状態であるため、分断された部分の姿勢を安定化できる。したがって、切断刃と積層チップとの接触に起因する切断面の傷の形成を防止できる。さらに、切断工程で切断刃の先端部分が達する第1外層が除去されるので、当該先端部分に起因する段差が形成されず、切断面の傷をより確実に防止できる。これらにより、上記積層セラミック電子部品の製造過程における歩留まりを向上できる。
【0009】
上記製造方法では、回転刃によって上記セラミック積層体を切断してもよい。
回転刃を用いることで、切断面の向きが安定化し、積層チップの形状不良を防止できる。したがって、上記積層セラミック電子部品の製造過程における歩留まりをさらに向上できる。
【0010】
また、上記積層チップは、上記内部電極が露出する切断面を有し、
上記積層チップの上記切断面にサイドマージン部が形成されてもよい。
つまり、サイドマージン部が上記積層チップに後付けされてもよい。これにより、内部電極の交差面積を増大させ、大容量化を実現できる。また、切断面の傷が防止されることで、切断面における内部電極の短絡不良を防止することができ、歩留まりを向上させることができる。
【0011】
上記第1外層は、上記第1方向に直交する面全体が、上記第1方向にほぼ均一な厚みで切削されることで除去されてもよい。
これにより、第1外層全体が除去され、第1カバー領域のうち第1カバー層のみが残ることとなり、積層チップを小型化することができる。
【0012】
上記第1外層は、50μm以上であってもよい。
これにより、第1外層の厚みを十分確保することができ、切断工程において、分断された部分の姿勢をより安定化できる。また、第1外層を除去する際の切断厚みを容易に制御することができる。
【0013】
さらに、上記第2カバー領域は、上記電極積層領域上の第2カバー層と、上記第2カバー層の外側の第2外層と、を含み、
上記セラミック積層体の切断後、上記第2外層を除去してもよい。
これにより、第1カバー領域と第2カバー領域とを同様の厚みで形成することができ、セラミック積層体の形状のバランスを安定化させることができる。
【0014】
上記第2外層は、上記第1方向に直交する面全体が、上記第1方向にほぼ均一な厚みで切削されることで除去されてもよい。
これにより、第2外層全体が除去され、第2カバー領域のうち第2カバー層のみが残ることとなり、積層チップを小型化することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、歩留まりを向上させることが可能な積層セラミック電子部品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの斜視図である。
図2】上記積層セラミックコンデンサのA-A'線に沿った断面図である。
図3】上記積層セラミックコンデンサのB-B'線に沿った断面図である。
図4】上記積層セラミックコンデンサの製造方法を示すフローチャートである。
図5】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す斜視図である。
図6】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す側面図である。
図7】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す側面図である。
図8】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す側面図である。
図9】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す斜視図である。
図10】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す側面図である。
図11】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す側面図である。
図12】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す側面図である。
図13】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す斜視図である。
図14】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す斜視図である。
図15】本実施形態の比較例に係る積層セラミックコンデンサの製造過程を示す模式的な側面図である。
図16】本実施形態の比較例に係る積層チップの側面図である。
図17】本実施形態の積層チップの側面図である。
図18】本発明の他の実施形態に係る積層セラミックコンデンサの製造過程を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
図面には、適宜相互に直交するX軸、Y軸、及びZ軸が示されている。X軸、Y軸、及びZ軸は全図において共通である。
【0018】
[積層セラミックコンデンサ10の構成]
図1~3は、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10を示す図である。図1は、積層セラミックコンデンサ10の斜視図である。図2は、積層セラミックコンデンサ10の図1のA-A'線に沿った断面図である。図3は、積層セラミックコンデンサ10のB-B'線に沿った断面図である。
【0019】
積層セラミックコンデンサ10は、セラミック素体11と、第1外部電極14と、第2外部電極15と、を備える。セラミック素体11は、典型的には、Z軸方向を向いた2つの主面と、X軸方向を向いた2つの端面と、Y軸方向を向いた2つの側面と、を有する。なお、セラミック素体11の各面を接続する稜部は丸みを帯びている。
【0020】
外部電極14,15は、セラミック素体11の端面を覆い、セラミック素体11を挟んでX軸方向に対向している。外部電極14,15は、セラミック素体11の端面から主面及び側面に延出している。これにより、外部電極14,15では、X-Z平面に平行な断面、及びX-Y平面に平行な断面がいずれもU字状となっている。なお、外部電極14,15の形状は、図1に示すものに限定されない。
【0021】
外部電極14,15は、電気の良導体により形成されている。外部電極14,15を形成する電気の良導体としては、例えば、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、金(Au)などを主成分とする金属又は合金が挙げられる。
【0022】
セラミック素体11は、積層チップ16と、サイドマージン部17と、を有する。積層チップ16には、X軸方向を向いた2つの端面16aと、Y軸方向を向いた2つの側面16bと、Z軸方向を向いた2つの主面16cと、が形成されている。サイドマージン部17は、積層チップ16の2つの側面16bをそれぞれ被覆している。
【0023】
積層チップ16は、容量形成部18と、容量形成部18のZ軸方向両側にそれぞれ設けられた第1カバー部19及び第2カバー部20と、を有する。容量形成部18は、Z軸方向にセラミック層を介して積層された内部電極12,13を有する。
【0024】
第1内部電極12及び第2内部電極13は、それぞれ、X-Y平面に沿って延びるシート状に構成される。第1内部電極12は、一方の端面16aまでX軸方向に延び、第1外部電極14に接続される。第2内部電極13は、他方の端面16aまでX軸方向に延び、第2外部電極15に接続される。これにより、第1外部電極14と第2外部電極15との間に電圧が印加されると、第1内部電極12と第2内部電極13との間のセラミック層に電圧が加わり、容量形成部18に当該電圧に応じた電荷が蓄えられる。
【0025】
内部電極12,13は、Y軸方向においては、容量形成部18の全幅にわたって形成され、積層チップ16の両側面16bに露出している。これらの内部電極12,13の端部の位置は、Y軸方向に0.5μmの範囲内に相互に揃っている。
【0026】
内部電極12,13は、電気の良導体により形成されている。内部電極12,13を形成する電気の良導体としては、典型的にはニッケル(Ni)が挙げられ、この他にも銅(Cu)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、金(Au)などを主成分とする金属又は合金が挙げられる。
【0027】
セラミック素体11では、内部電極12,13間の各セラミック層の容量を大きくするため、高誘電率の誘電体セラミックスが用いられる。高誘電率の誘電体セラミックスとしては、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)に代表される、バリウム(Ba)及びチタン(Ti)を含むペロブスカイト構造の材料が挙げられる。
【0028】
なお、セラミック層は、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)系、チタン酸カルシウム(CaTiO)系、チタン酸マグネシウム(MgTiO)系、ジルコン酸カルシウム(CaZrO)系、チタン酸ジルコン酸カルシウム(Ca(Zr,Ti)O)系、ジルコン酸バリウム(BaZrO)系、酸化チタン(TiO)系などで構成してもよい。
【0029】
第1カバー部19及び第2カバー部20並びにサイドマージン部17は、絶縁性セラミックスで形成されるが、例えばセラミック素体11で用いられた誘電体セラミックスを含んでいてもよい。これにより、カバー部19,20及びサイドマージン部17と容量形成部18との間に発生し得る内部応力が抑制される。
【0030】
第1カバー部19及び第2カバー部20は、以下の製造方法に示すように、未焼成のセラミックグリーンシートを焼成後の設計値よりも厚くなるように積層した後、所定の厚みで外層が除去されることで形成される。
【0031】
[積層セラミックコンデンサ10の製造方法]
図4は、積層セラミックコンデンサ10の製造方法を示すフローチャートである。図5~14は積層セラミックコンデンサ10の製造過程を模式的に示す図である。以下、積層セラミックコンデンサ10の製造方法について、図4に沿って、図5~14を適宜参照しながら説明する。
【0032】
(ステップS01:セラミック積層体104の作製)
ステップS01では、容量形成部18を形成するための第1セラミックシート101及び第2セラミックシート102と、カバー部19,20を形成するための第3セラミックシート103と、を積層し、圧着することで、セラミック積層体104を作製する。
【0033】
図5に示すセラミックシート101,102,103は、誘電体セラミックスを主成分とする未焼成の誘電体グリーンシートとして構成される。第1セラミックシート101には、第1内部電極12に対応する未焼成の第1内部電極112が形成される。第2セラミックシート102には、第2内部電極13に対応する未焼成の第2内部電極113が形成される。第3セラミックシート103には、内部電極が形成されていない。
【0034】
各内部電極112,113は、X軸方向に平行な切断線Lxを横切り、かつY軸方向に平行な切断線Lyに沿って延びる複数の帯状の電極パターンを有する。これらの内部電極112,113は、印刷法等により、導電性ペーストをセラミックシート101,102に塗布することで形成される。
【0035】
図5に示すように、セラミックシート101,102がZ軸方向に交互に積層されることで、内部電極112,113がZ軸方向に積層された電極積層領域105が形成される。また、セラミックシート103が電極積層領域105のZ軸方向上下面に積層されることで、電極積層領域105をZ軸方向両側からそれぞれ覆う第1カバー領域106及び第2カバー領域107が形成される。
【0036】
図6は、セラミック積層体104の模式的な側面図である。
第1カバー領域106は、電極積層領域105上の第1カバー層106aと、第1カバー層106aの外側の第1外層106bと、を含む。第1カバー層106aは、焼成後の第1カバー部19に対応する。第1外層106bは、後述する工程において除去される。
【0037】
第1カバー層106aは、例えば、Z軸方向における厚みが20μm以上50μm以下で形成される。また、第1外層106bは、例えば、Z軸方向における厚みが50μm以上200μm以下となるように形成される。これにより、焼成後の積層セラミックコンデンサ10を小型化できるとともに、後述するステップS03の切断工程において、分断された電極積層領域105の姿勢をより確実に安定化させることができる。
【0038】
第1カバー層106a及び第1外層106bのZ軸方向における厚みは、セラミックシート103の積層枚数で調整することができる。つまり、第1カバー層106a及び第1外層106bは、セラミックシート103が異なる枚数で積層された構成を有している。
【0039】
第2カバー領域107は、電極積層領域105上の第2カバー層107aと、第2カバー層107aの外側の第2外層107bと、を含む。第2カバー層107aは、焼成後の第2カバー部20に対応する。第2外層107bは、後述する工程において除去される。第2カバー層107a及び第2外層107bは、いずれもセラミックシート103の積層体で構成される。
【0040】
第2カバー層107a及び第2外層107bは、例えば、第1カバー層106a及び第1外層106bと同様の厚みで構成される。つまり、第2カバー層107aは、例えば、Z軸方向における厚みが20μm以上50μm以下で形成される。また、第2外層107bは、例えば、Z軸方向における厚みが50μm以上200μm以下で形成される。
【0041】
各セラミックシート101,102,103は、一軸加圧等により圧着されて一体化される。本実施形態では、第1カバー領域106及び第2カバー領域107がZ軸方向にほぼ同一の厚みで構成される。このため、圧着時に加熱されセラミックシート103が熱収縮した場合にも、第1カバー領域106及び第2カバー領域107の収縮率が同様となり、セラミック積層体104の反りなどの形状不良を防止できる。
【0042】
(ステップS02:第1テープT1の貼り付け)
ステップS02では、図7に示すように、第1外層106bの表面に、剥離可能な第1テープT1を貼り付ける。第1テープT1は、例えば所定の温度以上に加熱することにより粘着性が消失する発泡剥離テープや、紫外線照射により粘着性が消失するUV剥離テープ等を用いることができる。第1テープT1のZ軸方向における厚みは特に限定されないが、例えば、50μm以上200μm以下とすることができる。第1外層106bに第1テープT1を貼り付けることで、ステップS03の切断工程において、分断された電極積層領域105の姿勢をより安定化させることができる。
【0043】
(ステップS03:セラミック積層体104の切断(ハーフカット))
ステップS03では、図8に示すように、第2カバー領域107の表面から第1外層106bに達するまで、第1外層106bを分断せずにセラミック積層体104を切断する。すなわち、本ステップでは、セラミック積層体104の第2カバー領域107から第1カバー領域106の第1カバー層106aまでをハーフカットする。なお、ここでいうハーフカットとは、第1カバー層106aの少なくとも一部を残して切断する態様をいうものとする。
【0044】
図9に示すように、セラミック積層体104は、本実施形態において、回転刃Pを有する切断装置を用いて、X軸方向及びY軸方向に沿って切断される。このような切断装置は、セラミック積層体104の側面から、セラミック積層体104を切削しながらX軸方向又はY軸方向に回転刃Pを進行させる(図9の白抜き矢印参照)。これにより、回転刃Pの進入によって発生するセラミック積層体104の内部応力を低減させることができる。したがって、この内部応力によって回転刃PがX軸方向及びY軸方向に対して斜めに進行することを防止でき、個片化された積層チップの形状不良を防止できる。
【0045】
回転刃Pの回転方向は限定されないが、例えば進行方向に位置する部分がZ軸方向上方から下方、つまり第2カバー領域107から第1カバー領域106へと回転する方向とすることができる(図9の太線矢印参照)。これにより、切削屑が回転刃Pの進行方向後方へと排出でき、切削屑の散乱を防止することができる。
【0046】
(ステップS04:第2外層107bの除去)
ステップS04では、図10に示すように、Z軸方向上方に向いた第2外層107bを除去する。第2外層107bは、例えば、ステップS03で用いた切断装置や、グラインダ等の切削装置を用いて、Z軸方向に直交するXY平面全体がほぼ均一な厚みで切削されることにより除去される。これにより、第2カバー領域107側のZ軸方向の厚みが、焼成後の第2カバー部20に対応する厚みに調整される。
【0047】
(ステップS05:第2テープT2の貼り付け及び第1テープT1の剥離)
ステップS05では、図11に示すように、第2カバー層107aの表面に、剥離可能な第2テープT2を貼り付けるとともに、第1外層106bから第1テープT1を剥離する。第2テープT2は、例えば所定の温度以上に加熱することにより粘着性が消失する発泡剥離テープや、紫外線照射により粘着性が消失するUV剥離テープ等を用いることができる。第2テープT2として発泡剥離テープを用いる場合は、例えば、第1テープT1よりも高い温度(発泡温度)で粘着力が消失するテープを用いることができる。これにより、第1テープT1の発泡温度以上であって、第2テープT2の発泡温度以下の温度で加熱することで、第1テープT1のみを選択的に剥離することができる。
【0048】
(ステップS06:第1外層106bの除去)
ステップS06では、図12に示すように、第1外層106bを除去する。本ステップでは、例えば第1外層106bがZ軸方向上方に向くようにセラミック積層体104をZ軸方向に反転させた後、ステップS04の第2外層107bの除去と同様に第1外層106b全体を除去する。つまり、第1外層106bは、Z軸方向に直交するXY平面全体がほぼ均一な厚みで切削されることにより除去される。これにより、第1カバー領域106側のZ軸方向の厚みが、焼成後の第1カバー部19に対応する厚みに調整されるとともに、セラミック積層体104から複数の積層チップ116が個片化される。
【0049】
図13は、積層チップ116の斜視図である。積層チップ116は、Y軸方向に向いた切断面である側面116bと、X軸方向に向いた切断面である端面116aと、を有する。側面116bからは、未焼成の内部電極112,113の端部が露出している。
【0050】
(ステップS07:サイドマージン部117の形成)
ステップS07では、積層チップ116の側面116bにサイドマージン部117を形成する。サイドマージン部117は、セラミックシートの貼り付け、セラミックペーストの塗布等によって形成される。これにより、図14に示すような未焼成のセラミック素体111が作製される。
【0051】
(ステップS08:焼成)
ステップS08では、ステップS07で得られたセラミック素体111を焼成することにより、図1~3に示す積層セラミックコンデンサ10のセラミック素体11を作製する。焼成温度は、セラミック素体111の焼結温度に基づいて決定することができる。また、焼成は、例えば、還元雰囲気下、又は低酸素分圧雰囲気下において行うことができる。
【0052】
(ステップS09:外部電極形成)
ステップS09では、ステップS08で得られたセラミック素体11のX軸方向両端部に外部電極14,15を形成する。一例として、まず、導電性ペーストをセラミック素体11のX軸方向両端部に塗布し、この導電性ペーストを焼き付けて下地膜を形成する。次に、下地膜が形成されたセラミック素体11をメッキ液に浸漬させて電解メッキを行うことで、1又は複数のメッキ膜を形成する。
これにより、図1~3に示すような積層セラミックコンデンサ10が形成される。
【0053】
なお、上記のステップS09における処理の一部を、ステップS08の前に行ってもよい。例えば、ステップS08の前に未焼成のセラミック素体111のX軸方向両端面に未焼成の電極材料を塗布し、ステップS08において、未焼成のセラミック素体111を焼成すると同時に、未焼成の電極材料を焼き付けて外部電極14,15の下地層を形成してもよい。また、脱バインダ処理したセラミック素体111に未焼成の電極材料を塗布して、これらを同時に焼成してもよい。
【0054】
以上の製造方法では、セラミック積層体104が、第1カバー層106aの外側に第1外層106bを有し、第1外層106bを分断せずにセラミック積層体104をハーフカットする。つまり、第1外層106bの存在によって、切断中の電極積層領域105を固定し、姿勢を安定化できる。これにより、回転刃Pに接触することによる切断面(側面116b)への傷の形成を防止するとともに、切断位置ずれに伴う積層チップ116の形状不良を防止することができる。
【0055】
図15は、本実施形態の比較例に係るセラミック積層体204を切断する工程を示す模式的な側面図である。セラミック積層体204は、セラミック積層体104と同様の電極積層領域105と、これをZ軸方向両側から覆う第1カバー層206a及び第2カバー層207aと、を有し、第1外層及び第2外層を有さない。セラミック積層体204は、第2カバー層207aをZ軸方向上方に向けて、第1カバー層206aをテープT3に貼り付けられた状態で切断される。
【0056】
テープT3は、例えば剥離可能な発泡テープで構成され、所定以上の温度で発泡する発泡剤を含む粘着層T31と、基材となるフィルム層T32と、を有する。セラミック積層体204の切断時には、粘着層T31に貼り付けられた第1カバー層206aを完全に分断するため、フィルム層T32の途中まで切断刃によって切断される。
【0057】
これにより、積層チップ216が、分断された粘着層T31のみによって支持されることとなる。積層チップ216は、直方体状で重心が高いことに加え、支持部である粘着層T31が柔らかく変形しやすい。このため、切断刃の進入によって積層チップ216の姿勢が不安定になり、切断面が切断刃に接触しやすい。
【0058】
この結果、図16の側面図に示すように、切断面である積層チップ216の側面216bには、切断刃と接触したことによる多数の傷Hが形成される。このような傷Hは、積層チップ216の形状不良を引き起こす。これに加えて、内部電極112,113が側面216bから露出する場合には、短絡不良も引き起こすことがある。したがって、切断工程における歩留まりが低下する。
【0059】
一方、本実施形態によれば、切断時において各積層チップ116の姿勢及び位置が第1外層106bによって完全に固定されるため、切断面が切断刃と接触することを防止できる。これにより、図17に示すように、傷のほとんどない側面116bが実現でき、形状不良や短絡不良に起因する歩留まりの低下を抑制できる。
【0060】
さらに、切断時に回転刃Pの先端部分が達する第1外層が、ステップS06において除去される。これにより、切断面である端面116a及び側面116bに当該先端部分に起因する段差が形成されず、傷をより確実に防止できる。
【0061】
また、本実施形態では、大幅な工数の増加や設備の導入をせずに、切断工程における各積層チップ116を固定することができる。これにより、生産性を維持しつつ、切断工程における歩留まりを容易に向上させることができる。
【0062】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0063】
上述の実施形態では、サイドマージン部117を積層チップ116に後付けする製造方法を示したが、これに限定されない。例えば、図18に示すように、セラミックシート101,102に、複数の矩形パターンを含む内部電極112,113を形成し、内部電極112,113周囲のマージン部分を切断することで、サイドマージン部117を有するセラミック素体111を積層チップとして個片化してもよい。この場合にも、切断面の傷や姿勢の不安定さに起因する積層チップ116の形状不良を防止できる。
【0064】
また、第2カバー領域107は、第2外層を有さなくてもよく、第2カバー層107aを少なくとも有していればよい。この場合は、ステップS04の第2外層107bの除去工程は不要となる。
【0065】
また、ステップS02の第1テープT1の貼り付け工程及びステップS05の第2テープT2の貼り付け及び第1テープT1の剥離工程は必須ではなく、例えばこれらのテープT1,T2を用いずに、切断装置の真空チャック機構等によってセラミック積層体104を固定しつつ切断してもよい。
【0066】
上述のステップS03では、回転刃Pによってセラミック積層体104を切断する態様を示したが、押切刃を用いてもよい。この場合も、切断時にセラミック積層体104を固定できるため、積層チップ116の形状不良を効果的に防止できる。
【0067】
また、上記実施形態では、積層セラミック電子部品の一例として積層セラミックコンデンサについて説明したが、本発明は、相互に対を成す内部電極が交互に配置される積層セラミック電子部品全般に適用可能である。このような積層セラミック電子部品としては、例えば、圧電素子などが挙げられる。
【符号の説明】
【0068】
10…積層セラミックコンデンサ
11…セラミック素体
12,13…内部電極
14,15…外部電極
16…積層チップ
17…サイドマージン部
19…第1カバー部
20…第2カバー部
104…(未焼成の)セラミック積層体
105…電極積層領域
106…第1カバー領域
106a…第1カバー層
106b…第1外層
107…第2カバー領域
107a…第2カバー層
107b…第2外層
116…(未焼成の)積層チップ
117…(未焼成の)サイドマージン部
図1
図2
図3
図4
図5
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