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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-21
(45)【発行日】2023-03-02
(54)【発明の名称】引戸装置の防火構造
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/16 20060101AFI20230222BHJP
   E06B 3/46 20060101ALI20230222BHJP
   E06B 1/12 20060101ALI20230222BHJP
【FI】
E06B5/16
E06B3/46
E06B1/12 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018206505
(22)【出願日】2018-11-01
(65)【公開番号】P2020070656
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】391008582
【氏名又は名称】昭和フロント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100165456
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 佑子
(74)【代理人】
【識別番号】100206106
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】今井 章
(72)【発明者】
【氏名】小山 優貴
(72)【発明者】
【氏名】塩田 容子
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-86526(JP,A)
【文献】特開2006-22589(JP,A)
【文献】特開2010-222942(JP,A)
【文献】特開2009-52333(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/00-5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右方向にスライド移動して開口部を開閉する戸体と、開口部の左右何れか一方側に立設され、戸体が開口部を閉鎖した状態で戸体の戸尻側框と見込み方向に重なり合う召合せ方立とを備えた引戸装置において、
前記戸体の戸尻側框および召合せ方立に、戸尻側框、召合せ方立の素材よりも融点の高い鋼材で形成される戸体煙返し部材、方立煙返し部材を、戸尻側框、召合せ方立の縦方向全長に亘って取付けるにあたり、
前記召合せ方立は、反開口部側半部に、戸体が開口部を開放した状態で戸体と見込み方向に重なり合う壁面を支持する壁面支持部を備えた本体部が形成され、開口部側半部に、本体部よりも戸体側に突出する突出部分を有した中空状の電装品収納部が形成される一方、電装品収納部突出部分の反開口部側見込み面部に方立煙返し部材を取付けたことを特徴とする引戸装置の防火構造。
【請求項2】
請求項1において、方立煙返し部材は、見込み方向を向き、召合せ方立の電装品収納部突出部分の反開口部側見込み面部に取付けられる取付片部と、該取付片部の先端部から見付け方向に折曲形成される煙返し片部とからなるL字形状のものであることを特徴とする引戸装置の防火構造。
【請求項3】
請求項において、戸体煙返し部材は、見込み方向を向き、戸尻側框の見込み面部に取付けられる取付片部と、該取付片部の先端部から見付け方向に折曲形成され、戸体の閉鎖状態において方立煙返し部材の煙返し片部と互いに齟齬状態となって見込み方向にオーバーラップする煙返し片部とからなるL字形状のものであることを特徴とする引戸装置の防火構造。
【請求項4】
請求項において、戸尻側框および召合せ方立の内部には、戸体煙返し部材および方立煙返し部材の煙返し片部と見込み方向にオーバーラップする状態で、鋼材からなる補強材が設けられていることを特徴とする引戸装置の防火構造。
【請求項5】
請求項2から4の何れか一項において、方立煙返し部材を覆う化粧板を設ける一方、方立煙返し部材および前記化粧板は、方立煙返し部材の煙返し片部を覆う化粧板の煙返し片覆蓋部が電装品収納部突出部分の見付け面部と面一状となる状態で、方立煙返し部材の取付片部および該取付片部を覆う化粧板の取付片覆蓋部が電装品収納部突出部分の反開口部側見込み面部に取付けられることを特徴とする引戸装置の防火構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右方向にスライド移動して開口部を開閉する戸体を備えた引戸装置の防火構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、左右方向にスライド移動して開口部を開閉する戸体と、開口部の左右何れか一方側に立設され、戸体が開口部を閉鎖した状態で戸体の戸尻側框に見込み方向に重なり合う召合せ方立とを備えた引戸装置が知られている。このような引戸装置において、戸体の戸尻側框と召合せ方立との間の防火構造として、戸尻側框および召合せ方立に、戸体の閉鎖状態において互いに齟齬状態となって見付け方向にオーバーラップする煙返し片を設けたものが、従来から知られている(例えば、特許文献1参照。)。
ところで、戸体の框や召合せ方立を形成する素材としてはアルミニウム材が広く用いられているが、アルミニウム材は、火災時等において高温に晒されると変形してしまうことがあり、このため、前記戸尻側框や召合せ方立に設けられる煙返し片もアルミニウム材で形成されていると、熱による変形で防火機能が損なわれてしまう惧れがある。尚、前記特許文献1のものでは、煙返し部における隙間を、火災時等に加熱により膨張する加熱発泡材で埋める技術が開示されているが、煙返し自体が熱により変形してしまったような場合には、このような加熱発泡材だけでは対応しきれないことがある。
そこで従来、戸体の戸尻側框に形成される煙返し部に、アルミニウム材よりも融点の高いステンレス製の補強材を設けた技術が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6154341号公報
【文献】特許第6325230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献2のものでは、ステンレス製の補強材は、戸体の戸尻側框の煙返し片(屈曲片)を補強するように設けられているものの、召合せ方立の煙返し片(屈曲片)を補強するようには設けられていない。このため、火災時等に、召合せ方立の煙返し片が熱により変形してしまうと、戸体の戸尻側框の煙返し片だけでは煙や熱の遮断を確実に行うことができず、防火機能が損なわれてしまうという問題がある。
また、ステンレス製の補強板は、意匠性向上のために外部から視認できないように設けることが要求される場合があり、このため前記特許文献2のものでは、戸尻側框(召合せ框枠)の内部側にステンレス製補強材が組み込まれていて、ステンレス製補強材が外部から視認できないように構成されている。しかしながら特許文献2のものは、ステンレス製補強材を戸尻側框(召合せ框枠)の内部側に組み込むにあたり、戸尻側框とは別部材である召合せ補助材を必要とし、しかも、戸尻側框自体もステンレス製補強材との止着部をカバーするために二つ部材を用いて形成している。このため、部材点数が多く施工に手間がかかるという問題もあり、これらに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、左右方向にスライド移動して開口部を開閉する戸体と、開口部の左右何れか一方側に立設され、戸体が開口部を閉鎖した状態で戸体の戸尻側框と見込み方向に重なり合う召合せ方立とを備えた引戸装置において、前記戸体の戸尻側框および召合せ方立に、戸尻側框、召合せ方立の素材よりも融点の高い鋼材で形成される戸体煙返し部材、方立煙返し部材を、戸尻側框、召合せ方立の縦方向全長に亘って取付けるにあたり、前記召合せ方立は、反開口部側半部に、戸体が開口部を開放した状態で戸体と見込み方向に重なり合う壁面を支持する壁面支持部を備えた本体部が形成され、開口部側半部に、本体部よりも戸体側に突出する突出部分を有した中空状の電装品収納部が形成される一方、電装品収納部突出部分の反開口部側見込み面部に方立煙返し部材を取付けたことを特徴とする引戸装置の防火構造である。
請求項2の発明は、請求項1において、方立煙返し部材は、見込み方向を向き、召合せ方立の電装品収納部突出部分の反開口部側見込み面部に取付けられる取付片部と、該取付片部の先端部から見付け方向に折曲形成される煙返し片部とからなるL字形状のものであることを特徴とする引戸装置の防火構造である。
請求項3の発明は、請求項において、戸体煙返し部材は、見込み方向を向き、戸尻側框の見込み面部に取付けられる取付片部と、該取付片部の先端部から見付け方向に折曲形成され、戸体の閉鎖状態において方立煙返し部材の煙返し片部と互いに齟齬状態となって見込み方向にオーバーラップする煙返し片部とからなるL字形状のものであることを特徴とする引戸装置の防火構造である。
請求項4の発明は、請求項において、戸尻側框および召合せ方立の内部には、戸体煙返し部材および方立煙返し部材の煙返し片部と見込み方向にオーバーラップする状態で、鋼材からなる補強材が設けられていることを特徴とする引戸装置の防火構造である。
請求項5の発明は、請求項2から4の何れか一項において、方立煙返し部材を覆う化粧板を設ける一方、方立煙返し部材および前記化粧板は、方立煙返し部材の煙返し片部を覆う化粧板の煙返し片覆蓋部が電装品収納部突出部分の見付け面部と面一状となる状態で、方立煙返し部材の取付片部および該取付片部を覆う化粧板の取付片覆蓋部が電装品収納部突出部分の反開口部側見込み面部に取付けられることを特徴とする引戸装置の防火構造である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明とすることにより、高い防火性能を発揮できるとともに、方立煙返し部材を、召合せ方立に設けられる電装品収納部の突出部分を利用して取り付けることができる。
請求項2の発明とすることにより、方立煙返し部材の形状、構造が簡単であって、施工性に優れる。
請求項3の発明とすることにより、戸体煙返し部材の形状、構造が簡単であって、施工性に優れる。
請求項4の発明とすることにより、さらなる防火性能の向上に貢献できる。
請求項の発明とすることにより、方立煙返し部材および該方立煙返し部材を覆う化粧板を、召合せ方立に設けられる電装品収納部の突出部分を利用して、意匠性に優れた状態で取付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】引戸装置の正面図である。
図2図1のX-X断面図である。
図3図1のY-Y断面図である。
図4図3の要部拡大図である。
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図において、1は本発明の防火構造が実施された引戸装置であって、該引戸装置1は、上枠2aおよび左右の縦枠2b、2cを備えた枠体2、該枠体2の左右方向中間部に立設される召合せ方立3、該召合せ方立3と左右何れか一方の縦枠(本実施の形態では、図1、3において右側の縦枠)2cとのあいだに設けられる開口部S、枠体2内に組み込まれ、左右にスライド移動して開口部Sを開閉する戸体4、召合せ方立3と左右何れか他方の縦枠(本実施の形態では、図1、3において左側の縦枠)2bとのあいだに設けられ、戸体4が開口部Sを開放した状態で戸体4と見込み方向に重なり合うFIX部5等を用いて形成されている。尚、前記左右何れか一方の縦枠は、戸体4の戸先側に位置する縦枠であり、左右何れか他方の縦枠は、戸体4の戸尻側に位置する縦枠であるため、以降、左右何れか一方の縦枠を戸先側縦枠2cと称し、左右何れか他方の縦枠を戸尻側縦枠2bと称する。また、本実施の形態では、戸体4はFIX部5の室内側に位置するように設けられており、以下、戸体4が位置している側を室内側、FIX部5が位置している側を室外側として説明するが、便宜上のものであってこれに限定されるものではない。また、本実施の形態の説明における室内外方向は、本発明の見込み方向に相当する。さらに、召合せ方立3の開口部S側は戸体4にとっては戸先側であり、召合せ方立3の反開口部S側は戸体4にとっては戸尻側であるため、以下の説明では、便宜上、召合せ方立3の開口部S側、反開口部S側をそれぞれ戸先側、戸尻側とする。
【0009】
前記戸体4は、自動式吊戸であって、アルミニウム材からなる上框6、下框7、戸先側框8、および戸尻側框9により四周枠組形成される框体内に、耐熱ガラス等からなるパネル体(本実施の形態では、網入りの透明ガラスから形成されている)10を嵌め込んで形成されるものである。上框6の下部には、パネル体10の上縁部がシーリング固定される一方、上框6の上部には、ドアハンガー12を介してハンガーローラ13が支持されている。該ハンガーローラ13は、上枠2a内に配設された左右方向長尺のハンガーレール14に左右方向転動自在にガイドされるようになっており、さらに上枠2a内には、戸体4を左右移動させるための駆動装置15が配設されている。そして、戸体4は、ハンガーレール14に吊り下げられた状態で、駆動装置15の駆動に基づき左右方向にスライド移動して開口部Sを開閉するようになっている。
【0010】
また、戸体4の下框7の上部には、パネル体10の下縁部がシーリング固定される一方、下框7の下部には、下方に突出する振れ止め体16が取付けられている。該振れ止め体16は、左右の縦枠2b、2cの下端部間に敷設されたガイドレール17に形成のガイド溝17aに方向移動自在にガイドされるようになっており、これにより、スライド移動時における戸体4の下部の室内外方向の振れを抑止できるようになっている。
【0011】
また、戸体4の戸先側框8は、その戸尻側端部に、パネル体10の右側縁部をシーリング固定するための室内側、室外側の押縁18、19が装着される一方、戸先側框8の戸先側端部には、戸先側アダプター20が取付けられている。該戸先側アダプター20は、先端側が先細の台形状をしており、取付けられた戸先側框8の戸先先端よりも戸先方向に突出している。一方、戸先側縦枠2cには、上下方向に亘って凹溝部2fが形成されており、戸体4の閉鎖時に該凹溝部2fに戸先側アダプター20が入り込むことで、戸体4の戸先側端部と戸先側縦枠2cとの間に隙間が生じない防火構造となっている。尚、図中、20aは戸先側アダプター20に装着される緩衝材、21は戸先側框8に内装される鋼材からなる補強材である。
【0012】
また、戸体4の戸尻側框9は、戸先側見込み面部22a、戸尻側見込み面部22b、室内側見付け面部22c、および室外側見付け面部22dにより形成される矩形中空状の本体部22と、該本体部22の戸尻側見込み面部22bから室外側(召合せ方立3側)に向けて延設される煙返し支持部23とを備えて形成されている。本体部22の戸先側見込み面部22aには、パネル体10の左側縁部をシーリング固定するための室内側、室外側の押縁24、25が装着される。また、本体部22の戸尻側見込み面部22bの室内側端部には、後述する化粧板28が係止する係止受部22eが形成されている。
【0013】
前記戸尻側框9の煙返し支持部23は、本体部22の戸尻側見込み面部22bから室外側に向けて直線状に延びる取付片支持部23aと、該取付片支持部23aの先端部から室外側戸先方向に向けて斜めに延びる面取り部23bと、該面取り部23bの先端部から戸先方向に延びる煙返し片支持部23cとから形成されている。
【0014】
一方、26は鋼材からなる戸体煙返し部材であって、該戸体煙返し部材26は、見込み方向を向き、戸尻側框9の本体部22の戸尻側見込み面部22bに取付けられる取付片部26aと、該取付片部26aの先端部(召合せ方立3側端部)から戸先方向に向けて折曲形成されて見付け方向に延びる煙返し片部26bとからなるL字形状のものであり、戸尻側框9の縦方向略全長に亘って設けられる。この場合に戸体煙返し部材26は、取付片部26aが戸尻側框9の本体部22の戸尻側見込み面部22bおよび煙返し支持部23の取付片支持部23aに外方側から面接触状態で当接し、かつ、煙返し片部26bが煙返し支持部23の煙返し片支持部23cに外方側から面接触状態で当接する状態で、取付片部26aから挿入されて本体部22の戸尻側見込み面部22bに螺入される螺子27を介して、戸尻側框9に止着されるようになっている。
【0015】
さらに、28は前記戸体煙返し部材26を外方側から覆う化粧板であって、該化粧板28はアルミニウム材からなり、戸体煙返し部材26の取付片部26a、煙返し片部26bをそれぞれ外方側から覆う取付片覆蓋部28a、煙返し片覆蓋部28bを備えた、戸体煙返し部材26と同形状のL字形状のものである。取付片覆蓋部28aの室内側端部には、前記戸尻側框9の本体部戸尻側見込み面部22bに形成の係止受部22eに係止する係止部28cが形成されており、また、煙返し片覆蓋部28bの先端部には、戸体煙返し部材26の煙返し片部26bの先端部を覆う先端覆蓋部28dが形成されている。そして、化粧板28は、取付片覆蓋部28a、煙返し片覆蓋部28bが戸体煙返し部材26の取付片部26a、煙返し片部26bをそれぞれ外方側から覆い、かつ、係止部28cが戸尻側框9の係止受部22eに係止し、さらに先端覆蓋部28dが煙返し片部26bの先端部を覆う状態で、煙返し片覆蓋部28b側から挿入され煙返し片部26bを貫通して煙返し支持部23の煙返し片支持部23cに螺入される螺子29を介して、戸体煙返し部材26および戸尻側框9に止着されるようになっている。
【0016】
さらに、30は戸尻側框9の本体部22に内装される鋼材からなる補強材であって、該補強材30は、本体部22の戸先側見込み面部22a、室内側見付け面部22c、室外側見付け面部22dにそれぞれ内方側から対向する戸先側見込み面部30a、室内側見付け面部30b、室外側見付け面部30cを有したコ字形状のものであり、本体部22の縦方向全長に亘る状態で設けられるが、該補強材30の室内側見付け面部30bおよび室外側見付け面部30cは、前記戸体煙返し部材26の煙返し片部26bと見込み方向にオーバーラップする状態となるように設けられている。尚、戸尻側框9に内装される補強材30および前記戸先側框8に内装される補強材21は、戸尻側框9、戸先側框8に上框6および下框7を組み付けるための螺子31を介して、上框6および下框7に止着される。
【0017】
一方、前記召合せ方立3は、アルミニウム材から形成されるものであって、戸尻側半部(反開口部S側半部)に、FIX部5を構成するFIXパネル(本発明の壁面に相当するが、本実施の形態では、網入りの透明ガラスから形成されている)5aの右側縁部が嵌合されてシーリング固定されるパネル支持部32a(本発明の壁面支持部に相当する)を備えた本体部32が形成され、戸先側半部(開口部S側半部)に、開口部Sにおける障害物検知のためのセンサ等の電装品34が内装される電装品収納部33が形成されている。本体部32は、戸尻側見込み面部(反開口部側見込み面部)32bと、本体部32と電装品収納部33とを仕切る中間見込み面部32cと、室内側見付け面部32dおよび室外側見付け面部32eとにより矩形中空状に形成されるとともに、戸尻側見込み面部32bから室内側見付け面部32dに亘る状態で、前記パネル支持部32aが形成されている。また、電装品収納部33は、本体部32よりも戸体4側に段差状に突出する突出部分33aを有しており、前記中間見込み面部32cと、該中間見込み面部32cから戸体4側に向けて延設される突出部分戸尻側見込み面部(本発明の電装品突出部分の反開口部側見込み面部に相当する)33bと、戸先側見込み面部(開口部側見込み面部)33cと、本体部32の室内側見付け面部32dよりも戸体4側に突出する突出部分見付け面部(本発明の電装品収納部突出部分の見付け面部に相当する)33dと、本体部32の室外側見付け面部32eと面一状となる室外側見付け面部33eとにより矩形中空状に形成されている。そして、電装品収納部33の戸先側見込み面部33cには、電装品34が取付けられる開口33fが形成されており、また、前記中間見込み面部32cと突出部分戸尻側見込み面部33bとの間には、後述する方立煙返し部材35および該方立煙返し部材35を覆う化粧板36が係止するポケット状の係止溝33gが形成されている。
【0018】
前記方立煙返し部材35は、鋼材からなり、見込み方向を向き、召合せ方立3の電装品収納部33の突出部分戸尻側見込み面部33bに取付けられる取付片部35aと、該取付片部35aの先端部(戸体4側端部)から戸尻方向に向けて折曲形成されて見付け方向に延びる煙返し片部35bとからなるL字形状のものであって、召合せ方立3の縦方向全長に亘って設けられる。該方立煙返し部材35の煙返し片部35bは、戸尻側框9の本体部室外側見付け面部22dと戸体煙返し部材26の煙返し片部26bとの見込み方向中間位置に位置し、また、戸体煙返し部材26の煙返し片部26bは、召合せ方立3の本体部室内側見付け面部32dと方立煙返し部材35の煙返し片部35bとの見込み方向中間位置に位置するように設計されており、これにより戸体煙返し部材26、方立煙返し部材35の煙返し片部26b、35b同士は、戸体4の閉鎖状態において互いに齟齬状態となって見込み方向にオーバーラップして屈曲路を形成するように構成されている。
【0019】
さらに、36は前記方立煙返し部材35を外方側から覆う化粧板であって、該化粧板36はアルミニウム材からなり、方立煙返し部材35の取付片部35a、煙返し片部35bをそれぞれ外方側から覆う取付片覆蓋部36a、煙返し片覆蓋部36bを備えた、方立煙返し部材35と同形状のL字形状のものである。煙返し片覆蓋部36bの先端部には、方立煙返し部材35の煙返し片部35bの先端部を覆う先端覆蓋部36cが形成されている。そして、方立煙返し部材35および化粧板36は、化粧板36の取付片覆蓋部36a、煙返し片覆蓋部36bが方立煙返し部材35の取付片部35a、煙返し片部35bをそれぞれ外方側から覆い、かつ、化粧板36の先端覆蓋部36cが煙返し片部35bの先端部を覆う状態で、化粧板36の取付片覆蓋部36aを召合せ方立3の電装品収納部33の突出部分戸尻側見込み面部33bに当接させるとともに、化粧板36の取付片覆蓋部36aおよび方立煙返し部材35の取付片部35aの室外側端部を、召合せ方立3の中間見込み面部32cと突出部分戸尻側見込み面部33bとの間の係止溝33gに係止させ、この状態で、方立煙返し部材35の取付片部35a側から挿入されて化粧板36の取付片覆蓋部36aを貫通して召合せ方立3の突出部分戸尻側見込み面部33bに螺入される螺子37により、召合せ方立3に止着される。そして、該方立煙返し部材35および化粧板36が召合せ方立3に止着された状態で、化粧板36の煙返し片覆蓋部36bが電装品収納部33の突出部分見付け面部33dと面一状となるように構成されている。
【0020】
さらに、38は召合せ方立3の本体部32に内装される鋼材からなる補強材であって、該補強材38は、本体部32の中間見込み面部32c、室内側見付け面部32d、室外側見付け面部32eにそれぞれ対向する戸先側見込み面部38a、室内側見付け面部38b、室外側見付け面部38cを有したコ字形状のものであり、本体部32の縦方向全長に亘る状態で設けられるが、該補強材38の室内側見付け面部38bおよび室外側見付け面部38cは、前記方立煙返し部材35の煙返し片部35bと見込み方向にオーバーラップする状態となるように設けられている。これにより、召合せ方立3に内装される補強材38、方立煙返し部材35の煙返し片部35b、および前述した戸体煙返し部材26の煙返し片部26b、戸尻側框9に内装される補強材30は、すべて互いに見込み方向にオーバーラップする状態となっている。尚、召合せ方立3に内装される補強材38は、電装品収納部33の戸先側見込み面部33cに形成の開口33fから電装品収納部33内に挿入される螺子39を介して、中間見込み面部32cに止着されるようになっている。
【0021】
叙述の如く構成された本発明の実施の形態において、戸体4の戸尻側框9および召合せ方立3には、これら戸尻側框9、召合せ方立3の素材(アルミニウム材)よりも融点の高い鋼材で形成される戸体煙返し部材26、方立煙返し部材35が、戸尻側框9、召合せ方立3の縦方向全長に亘って取付けられることになるが、これら戸体煙返し部材26、方立煙返し部材35は、見込み方向を向き、戸尻側框9、召合せ方立3の見込み面部(戸尻側框9の本体部22の戸尻側見込み面部22b、召合せ方立3の電装品収納部33の突出部分戸尻側見込み面部33b)に取付けられる取付片部26a、35aと、該取付片部26a、35aの先端部から見付け方向に折曲形成され、戸体4の閉鎖状態において互いに齟齬状態となって見込み方向にオーバーラップする煙返し片部26b、35bとからなるL字形状のものであり、さらに、これら戸体煙返し部材26、方立煙返し部材35は、該戸体煙返し部材26、方立煙返し部材35と同形状をした化粧板28、36によって外方側から覆われることになる。
【0022】
このように、本実施の形態にあっては、鋼材からなる戸体煙返し部材26、方立煙返し部材35が、戸尻側框9、召合せ方立3の縦方向全長に亘って取付けられており、これにより、火災時等において高温に晒されるような場合であっても、戸体煙返し部材26、方立煙返し部材35によって召合せ部における室内外方向の煙や熱の遮断を行うことができて、高い防火性能を発揮できることになるが、この場合に、前記戸体煙返し部材26および方立煙返し部材35は、取付片部26a、35aと煙返し片部26b、35bとからなるL字形状のものであって、形状、構造が簡単であり、さらに、取付片部26a、35aを戸尻側框9、召合せ方立3の見込み面部に取付けるだけの簡単な施工で取付けできることになる。しかも、前記戸体煙返し部材26および方立煙返し部材35は、化粧板28、36によって外方側から覆われており、これによって意匠性向上が図られているが、該化粧板28、36も、戸体煙返し部材26および方立煙返し部材35と同形状のL字形状のものであって、形状、構造が簡単であり、また、同形状であるから戸体煙返し部材26、方立煙返し部材35への取付けも容易であって、施工性の向上に貢献できる。
【0023】
さらにこのものにおいて、戸尻側框9および召合せ方立3の内部には、戸体煙返し部材26および方立煙返し部材35の煙返し片部26a、35aと見込み方向にオーバーラップする状態で、鋼材からなる補強材30、38が設けられている。この結果、戸尻側框9と召合せ方立3との召合せ部においては、鋼材からなる、戸体煙返し部材26および方立煙返し部材35の煙返し片部26a、35a、戸尻側框9および召合せ方立3に内装される補強材30、38が全て見込み方向にオーバーラップする状態で配されることになって、さらなる防火性能の向上に貢献できる。
【0024】
さらにこのものにおいて、召合せ方立3は、戸尻側半部(反開口部側半部)に、戸体4が開口部Sを開放した状態で戸体4と見込み方向に重なり合うFIXパネル5aを支持するパネル支持部32aを備えた本体部32が形成され、戸先側半部(開口部側半部)に、本体部32よりも戸体4側に突出する突出部分33aを有した中空状の電装品収納部33が形成される一方、該電装品収納部33の突出部分戸尻側見込み面部33bには、方立煙返し部材35が取付けられることになる。しかもこの場合、方立煙返し部材35および該方立煙返し部材35を覆う化粧板36は、方立煙返し部材35の煙返し片部35bを覆う化粧板の煙返し片覆蓋部36bが、電装品収納部33の突出部分見付け面部33dと面一状となる状態で、方立煙返し部材35の取付片部35aおよび該取付片部35aを覆う化粧板36の取付片覆蓋部36aが、電装品収納部33の突出部分戸尻側見込み面部33bに取付けられることになる。これにより、方立煙返し部材35および化粧板36を、召合せ方立3に設けられる電装品収納部33の突出部分33aを利用して、方立煙返し部材35の取付片部35aおよび化粧板36の取付片部覆蓋部36bを召合せ方立3に止着するための止着部材(螺子37)が開口部S側に露出することがなく、また、化粧板36の煙返し片覆蓋部36bが電装品収納部33の突出部分見付け面部33dと面一状となる、意匠性に優れた状態で取付けできることになる。
【0025】
尚、本発明は上記実施の形態に限定されないことは勿論であって、上記実施の形態では、戸体が一枚だけ設けられている片開き式の引戸装置を例示したが、これに限定されることなく、例えば両開き式等、戸体が複数設けられている引戸装置であっても、本発明を実施できることは勿論である。また、本実施の形態では、戸体の戸尻側框と召合せ框の煙返し部分に、加熱により膨張する加熱発泡材は設けていないが、必要に応じて加熱発泡材を適宜配設してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、引戸装置の防火構造に利用することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 引戸装置
3 召合せ方立
4 戸体
5a FIXパネル
9 戸尻側框
22b 戸尻側見込み面部
26 戸体煙返し部材
26a 取付片部
26b 煙返し片部
28 化粧板
30 補強材
32 本体部
32a パネル支持部
33 電装品収納部
33a 突出部分
33b 突出部分戸尻側見込み面部
33d 突出部分見付け面部
35 方立煙返し部材
35a 取付片部
35b 煙返し片部
36 化粧板
36a 取付片覆蓋部
36b 煙返し片覆蓋部
38 補強材
図1
図2
図3
図4