(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-21
(45)【発行日】2023-03-02
(54)【発明の名称】電極基板、測定装置および測定方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/34 20060101AFI20230222BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20230222BHJP
G01N 27/04 20060101ALI20230222BHJP
【FI】
C12M1/34 A
C12Q1/02
G01N27/04 Z
(21)【出願番号】P 2019032505
(22)【出願日】2019-02-26
【審査請求日】2021-12-23
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、「再生医療の産業化に向けた評価基盤技術開発事業(再生医療技術を応用した創薬支援基盤技術の開発)」、「In-vitro 安全性試験・薬物動態試験の高度化を実現するorgan/multi-organs-on-a-chip の開発とその製造技術基盤の確立」委託研究開発、業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】中谷 徳幸
【審査官】西 賢二
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-053753(JP,U)
【文献】特開2006-000541(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0326417(US,A1)
【文献】国際公開第2012/147463(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/012498(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0067015(US,A1)
【文献】SHELLER, Rebecca A. et al.,Comparison of transepithelial resistance measurement techniques: Chopsticks vs. Endohm,Biological Procedures Online,2017年,Vol. 19; 4,pp. 1-5
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00-3/10
G01N 27/00-27/24
C12Q 1/02
MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞または組織の電気抵抗を計測するための電極を有する電極基板であって、
ベース部、前記ベース部から延びる第1延出部および第2延出部を有する基板と、
前記ベース部の表面に設けられた複数の接続端子と、
前記複数の接続端子のいずれかに接続され、かつ前記基板の表面に配線された第1作用電極および第2作用電極と、
前記基板に設けられており、前記複数の接続端子より前記第1延出部側において前記複数の接続端子側を向く掛合面と、
を備え、
前記第1作用電極は前記ベース部から前記第1延出部にかけて配線されており、
前記第2作用電極は前記ベース部から前記第2延出部にかけて配線されている、電極基板。
【請求項2】
請求項1の電極基板において、
前記掛合面は、
前記基板の側端に設けられた凸状または凹状を有する掛合部に設けられている、電極基板。
【請求項3】
請求項2の電極基板において、
前記掛合部は、前記ベース部に設けられている、電極基板。
【請求項4】
請求項2または請求項3の電極基板において、
前記第1延出部は、前記ベース部の側端から第1方向に延びており、
前記掛合部は、前記第1方向に交差する第2方向に突出またはくぼむ形状を有する、電極基板。
【請求項5】
請求項4の電極基板において、
前記複数の接続端子のいずれかに接続され、かつ前記基板の表面に配線された第1参照電極および第2参照電極、
をさらに備える、電極基板。
【請求項6】
請求項5の電極基板において、
前記第1参照電極は、前記ベース部から前記第1延出部にかけて配線されている、電極基板。
【請求項7】
請求項6の電極基板において、
前記第1作用電極は、前記第1延出部の一方主面に配線されており、
前記第1参照電極は、前記第1延出部の他方主面に配線されている、電極基板。
【請求項8】
請求項5から請求項7のいずれか1項の電極基板において、
前記ベース部は、貫通穴を有しており、
前記第1作用電極および前記第1参照電極のうち一方は、前記ベース部の一方主面から前記貫通穴を通って前記ベース部の他方主面に配線されている、電極基板。
【請求項9】
細胞または組織の電気抵抗を計測するための測定装置であって、
電極を有する電極基板と、
前記電極基板が着脱可能に装着される中継部と、
を備え、
前記電極基板は、
ベース部、前記ベース部から延びる第1延出部および第2延出部を有する基板と、
前記ベース部の表面に設けられた複数の接続端子と、
前記複数の接続端子のいずれかに接続され、かつ前記基板の表面に配線された第1作用電極および第2作用電極と、
前記基板に設けられており、前記複数の接続端子より前記第1延出部側において前記複数の接続端子側を向く掛合面と、
を備え、
前記第1作用電極は前記ベース部から前記第1延出部にかけて配線されており、
前記第2作用電極は前記ベース部から前記第2延出部にかけて配線されており、
前記中継部は、
前記複数の接続端子のそれぞれに接触する複数の接点部、
を有する、測定装置。
【請求項10】
請求項9の測定装置において、
前記中継部は、
前記電極基板の前記ベース部が挿入される挿入口、
をさらに有し、
前記複数の接点部は、前記挿入口より奥側に設けられている、測定装置。
【請求項11】
請求項10の測定装置において、
前記電極基板は、
前記中継部の前記挿入口に前記電極基板の前記ベース部が挿入された状態で、前記掛合面が前記挿入口の外側に露出する、測定装置。
【請求項12】
請求項9から請求項11のいずれか1項の測定装置において、
前記中継部が備える前記複数の接点部は、SD標準規格に準拠して設けられている、測定装置。
【請求項13】
請求項9から請求項12のいずれか1項の測定装置
であって、
前記中継部から前記電極基板を取り外すための取外用
具、
をさらに備え、
前記取外用具は、
前記電極基板が挿入される開口部が設けられた抜去部、
を備え、
前記開口部は、
前記電極基板における前記掛合面が設けられた部分より大きく開口する第1開口部と、
前記第1開口部に連続しており、前記電極基板における前記掛合面が設けられた部分より小さく開口する第2開口部と、
を含む、
測定装置。
【請求項14】
測定システムで細胞または組織の電気抵抗を計測する測定方法であって、
前記測定システムは、電極基板と、前記電極基板が装着される中継部と、前記中継部から前記電極基板を取外す取外用具とを含み、
前記電極基板は、
ベース部、前記ベース部から延びる第1延出部および第2延出部を有する基板と、
前記ベース部の表面に設けられた複数の接続端子と、
前記複数の接続端子のいずれかに接続され、かつ前記基板の表面に配線された第1作用電極および第2作用電極と、
前記基板に設けられており、前記複数の接続端子より前記第1延出部側において前記複数の接続端子側を向く掛合面と、
を備え、
前記取外用具は、
前記電極基板が挿入される開口部が設けられた抜去部、
を備え、
前記開口部は、
前記電極基板における前記掛合面が設けられた部分より大きく開口する第1開口部と、
前記第1開口部に連続しており、前記電極基板における前記掛合面が設けられた部分より小さく開口する第2開口部と、
を含み、
a) 前記中継部に装着された前記電極基板における前記掛合面が設けられた部分を、前記第1開口部に挿入する工程と、
b) 前記工程a)の後、前記電極基板を前記第2開口部の内側へ移動させる工程と、
c) 前記工程b)の後、前記電極基板を前記第2開口部から引き抜くことにより、前記第2開口部を前記掛合面に掛合させる工程と、
を含む、測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、細胞または組織の電気抵抗を計測する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞または組織の性質や状態を調べるために、細胞または組織の電気抵抗を計測する技術が知られている。例えば、経上皮電気抵抗(TEER)計測では、培養液中において細胞培養用の膜の一方側と他方側とに電極を配置して電気抵抗を計測することにより、膜状に培養された細胞自体の電気抵抗が計測される。
【0003】
特許文献1には、細長状であるチョップスティック型の電極を培養液に浸漬させることにより、細胞の電気抵抗を測定する技術が開示されている。また、特許文献2には、培養容器の蓋部および容器内部に電極が設けられており、培養環境を維持しながら電気抵抗を計測する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-137307号公報
【文献】特開2009-27928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電気抵抗の計測中に、培養液中に発生した析出物が電極に付着すると、計測結果が不安定になることが知られている。例えば、特許文献2の場合、計測が長時間にわたることによって、電極が汚染されるおそれがあり、正確な計測が困難となるおそれがある。また、特許文献1の場合、電極が汚染されるたびに電極を洗浄するなどの煩雑な作業を要する。
【0006】
本発明は、細胞または組織の電気抵抗の計測を、高効率かつ高精度に行う技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、第1態様は、細胞または組織の電気抵抗を計測するための電極を有する電極基板であって、ベース部、前記ベース部から延びる第1延出部および第2延出部を有する基板と、前記ベース部の表面に設けられた複数の接続端子と、前記複数の接続端子のいずれかに接続され、かつ前記基板の表面に配線された第1作用電極および第2作用電極と、前記基板に設けられており、前記複数の接続端子より前記第1延出部側において前記複数の接続端子側を向く掛合面と、を備え、前記第1作用電極は前記ベース部から前記第1延出部にかけて配線されており、前記第2作用電極は前記ベース部から前記第2延出部にかけて配線されている。
【0008】
第2態様は、第1態様の電極基板において、前記掛合面は、前記基板の側端に設けられた凸状または凹状を有する掛合部に設けられている。
【0009】
第3態様は、第2態様の電極基板において、前記掛合部は、前記ベース部に設けられている。
【0010】
第4態様は、第2態様または第3態様の電極基板において、前記第1延出部は、前記ベース部の側端から第1方向に延びており、前記掛合部は、前記第1方向に交差する第2方向に突出またはくぼむ形状を有する。
【0011】
第5態様は、第4態様の電極基板において、前記複数の接続端子のいずれかに接続され、かつ前記基板の表面に配線された第1参照電極および第2参照電極をさらに備える。
【0012】
第6態様は、第5態様の電極基板において、前記第1参照電極は、前記ベース部から前記第1延出部にかけて配線されている。
【0013】
第7態様は、第6態様の電極基板において、前記第1作用電極は、前記第1延出部の一方主面に配線されており、前記第1参照電極は、前記第1延出部の他方主面に配線されている。
【0014】
第8態様は、第5態様から第7態様のいずれか1つの電極基板において、前記ベース部は、貫通穴を有しており、前記第1作用電極および前記第1参照電極のうち一方は、前記ベース部の一方主面から前記貫通穴を通って前記ベース部の他方主面に配線されている。
【0015】
第9態様は、細胞または組織の電気抵抗を計測するための測定装置であって、電極を有する電極基板と、前記電極基板が着脱可能に装着される中継部と、を備え、前記電極基板は、ベース部、前記ベース部から延びる第1延出部および第2延出部を有する基板と、前記ベース部の表面に設けられた複数の接続端子と、前記複数の接続端子のいずれかに接続され、かつ前記基板の表面に配線された第1作用電極および第2作用電極と、前記基板に設けられており、前記複数の接続端子より前記第1延出部側において前記複数の接続端子側を向く掛合面と、を備え、前記第1作用電極は前記ベース部から前記第1延出部にかけて配線されており、前記第2作用電極は前記ベース部から前記第2延出部にかけて配線されており、前記中継部は、前記複数の接続端子のそれぞれに接触する複数の接点部を有する。
【0016】
第10態様は、第9態様の測定装置において、前記中継部は、前記電極基板の前記ベース部が挿入される挿入口、をさらに有し、前記複数の接点部は、前記挿入口より奥側に設けられている。
【0017】
第11態様は、第10態様の測定装置において、前記電極基板は、前記中継部の前記挿入口に前記電極基板の前記ベース部が挿入された状態で、前記掛合面が前記挿入口の外側に露出する。
【0018】
第12態様は、第9態様から第11態様のいずれか1つの測定装置において、前記中継部が備える前記複数の接点部は、SD標準規格に準拠して設けられている。
【0019】
第13態様は、第9態様から第12態様のいずれか1つの測定装置であって、前記中継部から前記電極基板を取り外すための取外用具、をさらに備え、前記取外用具は、前記電極基板が挿入される開口部が設けられた抜去部、を備え、前記開口部は、前記電極基板における前記掛合面が設けられた部分より大きく開口する第1開口部と、前記第1開口部に連続しており、前記電極基板における前記掛合面が設けられた部分より小さく開口する第2開口部とを含む。
【0020】
第14態様は、測定システムで細胞または組織の電気抵抗を計測する測定方法であって、前記測定システムは、電極基板と、前記電極基板が装着される中継部と、前記中継部から前記電極基板を取外す取外用具とを含み、前記電極基板は、ベース部、前記ベース部から延びる第1延出部および第2延出部を有する基板と、前記ベース部の表面に設けられた複数の接続端子と、前記複数の接続端子のいずれかに接続され、かつ前記基板の表面に配線された第1作用電極および第2作用電極と、前記基板に設けられており、前記複数の接続端子より前記第1延出部側において前記複数の接続端子側を向く掛合面と、を備え、前記取外用具は、前記電極基板が挿入される開口部が設けられた抜去部、を備え、前記開口部は、前記電極基板における前記掛合面が設けられた部分より大きく開口する第1開口部と、前記第1開口部に連続しており、前記電極基板における前記掛合面が設けられた部分より小さく開口する第2開口部と、を含み、a)前記中継部に装着された前記電極基板における前記掛合面が設けられた部分を、前記第1開口部に挿入する工程と、b)前記工程a)の後、前記電極基板を前記第2開口部の内側へ移動させる工程と、c)前記工程b)の後、前記電極基板を前記第2開口部から引き抜くことにより、前記第2開口部を前記掛合面に掛合させる工程とを含む。
【発明の効果】
【0021】
第1態様によると、電極基板が備える複数の接続端子を介して、第1作用電極および第2作用電極を測定装置の中継部に電気的に接続できる。したがって、各電極の交換を、電極基板の交換によって実現できる。また、電極基板に複数の接続端子側を向く掛合面を設けることによって、取外用具を掛合面に引っ掛けつつ、掛合部を複数の接続端子側とは反対の方向へ付勢できる。これにより、中継部に接続された電極基板を容易に取外しできる。したがって、各電極の交換を容易にできるため、細胞または組織の電気抵抗の計測を、高効率かつ高精度に行うことができる。
【0022】
第2態様によると、凸状または凹状の掛合部に取外用具を引っ掛けることによって、中継部から電極基板を容易に取外しできる。
【0023】
第3態様によると、ベース部に掛合部を設けた場合、取外用具を掛合面に引っ掛けて力を加えた際に基板が変形することを軽減できる。
【0024】
第4態様によると、掛合部に取外用具を掛合させて、電極基板を第1方向へ付勢できる。これによって、中継部から電極基板を第1方向に取外しできる。
【0025】
第5態様によると、第1参照電極および第2参照電極間で細胞または組織にかかる電位を計測できる。この測定値から第1作用電極および第2作用電極間にかかる電位を求めることができるため、細胞または組織の電気抵抗を、より正確に計測できる。
【0026】
第6態様によると、第1作用電極および第1参照電極が共通の第1延出部に設けられるため、電極基板を小型化できる。
【0027】
第7態様によると、第1延出部の両側の主面に電極を配することによって、各主面の領域を有効に利用できる。また、第1作用電極と第1参照電極とを第1延出部で絶縁できる。また、第1作用電極と第1参照電極とを接近して配置できる。
【0028】
第8態様によると、ベース部における両側の主面に電極を配線することによって、各主面の領域を有効に利用できる。
【0029】
第9態様によると、電極基板が複数の接続端子を備えるため、中継部に対して電極基板を着脱でき、もって、電極を容易に交換できる。また、電極基板に複数の接続端子側を向く掛合面を設けることによって、取外用具を掛合面に掛合させつつ、電極基板を複数の接続端子側とは反対の方向へ付勢できる。これにより、接続端子を介して中継部に接続された電極基板を容易に取外しできる。電極基板の交換によって、各電極を交換できるため、細胞または組織の電気抵抗の計測を、高効率かつ高精度に行うことができる。
【0030】
第10態様によると、電極基板を中継部の挿入口に挿入することによって、電極基板に設けられた複数の接続端子を中継部の複数の接点部に接触させることができる。このため、電極基板を中継部に容易に装着できる。
【0031】
第11態様によると、挿入口の外側に掛合面が露出するため、中継部の挿入口に挿入された電極基板の掛合面に、取外し用具を掛合させることができる。
【0032】
第12態様によると、SD標準規格に準拠したアダプタを中継部に流用できるため、測定装置の製造コストを軽減できる。
【0033】
第13態様によると、第1開口部の内側に電極基板における掛合面の部分が挿入され、その後、電極基板を第2開口部の内側に移動させてから電極基板を引き抜くことによって、掛合面を抜去部に引っ掛けることができる。これにより、電極基板を中継部から取り外すことができる。
【0034】
第14態様によると、電極基板のうち、掛合面が設けられた部分を第1開口部に挿入し、その電極基板を第2開口部に移動させてから電極基板を引き抜くことによって、第2開口部を掛合面に掛合させることができる。これにより、中継部に接続された電極基板を容易に取外しできる。したがって、各電極の交換を容易にできるため、細胞または組織の電気抵抗の計測を、高効率かつ高精度に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図7】測定装置が適用される培養容器を示す上面図である。
【
図8】測定装置を培養容器に適用した場合の断面図である。
【
図10】複数の電極基板を保持する基板ホルダーを示す概略側面図である。
【
図11】電極基板を支持する基板ホルダーの概略断面図である。
【
図12】第1変形例の電極基板を示す正面図である。
【
図13】第2変形例の電極基板を示す正面図である。
【
図14】第3変形例の電極基板を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、この実施形態に記載されている構成要素はあくまでも例示であり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。図面においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数が誇張または簡略化して図示されている場合がある。「特定の方向に延びる」とは、特に断らない限り、「特定の方向に平行に延びる」ことだけでなく、「特定の方向および当該特定の方向に垂直な方向の合成方向に延びる」ことも含む。
【0037】
<1. 実施形態>
図1は、測定装置1を示す図である。測定装置1は、細胞または組織の電気抵抗の計測に適した構成を有する。具体的に、測定装置1は、中継部2と電極基板3とを含む。中継部2は、ロボットアーム9にネジ止めなどの固定方法で固定される。ロボットアーム9は、不図示のコンピュータの制御下で動作するモータ(駆動部)の駆動力に応じて、3次元空間を移動する。中継部2には、電極基板3が取り付けられている。ここでは、電極基板3は、中継部2が備えるハウジング23の挿入口231に挿入されることによって、中継部2に取り外し可能に装着される。
【0038】
以下の説明では、
図1に示すように、中継部2に電極基板3が装着された状態を基準にして、電極基板3の長手方向であって主面(後述するベース部41の第1主面411)に平行な方向を第1方向D1とし、電極基板3の主面に平行かつ第1方向D1と直交する方向を第2方向D2とする。また、第1方向D1および第2方向D2の双方に直交する方向(電極基板3におけるベース部41の厚さ方向)を第3方向D3とする(
図6参照)。
【0039】
図2は、中継部2を示す図である。中継部2は、中継基板21と、ハウジング23とを備えている。中継基板21は、エポキシ樹脂またはガラスエポキシ樹脂などの絶縁性を有する物質で形成された、平板状の部材である。ハウジング23は、中継基板21の一方主面211の第1方向D1一方側の端部であって、第2方向D2の中央に設けられている。ハウジング23は、第1方向D1の一方側に向けて開口する挿入口231を有する。ハウジング23の内部(すなわち、挿入口231の奥側)は、電極基板3のベース部41が収容可能な大きさを有する。ハウジング23の奥部には、複数(ここでは8個)の接点部25が、第2方向D2に沿って列状に搭載されている。各接点部25は、ケーブル27に接続されている。ケーブル27は、電源装置11または電圧計13など、電気抵抗を計測するための機器に接続される(
図9参照)。
【0040】
ハウジング23内部の各接点部25の搭載数および搭載位置は、例えばMicroSD規格に準拠するアダプタに設けられる接点部の搭載数(8個)および搭載位置と一致する。この場合、MicroSD規格に準拠したカードリーダー向け基板を中継基板21に流用できるため、中継部2の生産コストを軽減できる。
【0041】
図3は、電極基板3を示す平面図である。
図4は、電極基板3を示す平面図である。
図3は基板31の第1主面311側を示す図であり、
図4は基板31の第1主面311側とは反対の第2主面312側を示す図である。
【0042】
電極基板3は、基板31、複数の接続端子33、第1作用電極35、第1参照電極36、第2作用電極37、および第2参照電極38を備えている。以下の説明では、第1作用電極35、第1参照電極36、第2作用電極37および第2参照電極38を、総じて「電極35~38」と称する場合がある。
【0043】
基板31は、エポキシ樹脂またはガラスエポキシ樹脂などの絶縁性を有する物質で形成された、硬質性を有する平板状の部材である。基板31は、ベース部41、第1延出部43、第2延出部45、および2つの凸部47を備えている。ベース部41、第1延出部43、第2延出部45、および2つの凸部47は、一体に形成されており、同一の厚さを有する。ただし、これらのうち一部または全部が、他の要素から独立して設けられた部材とされてもよい。
図1に示すように、電極基板3が中継部2に装着された状態では、第1延出部43、第2延出部45および2つの凸部47は、ハウジング23の外部に露出する。
【0044】
基板31は、第1主面311、および第1主面311とは反対側の第2主面312を有する。主面とは、ここでは最も面積が大きい面をいう。基板31の第1主面311は、ベース部41の第1主面411、第1延出部43の第1主面431(一方主面)および第2延出部45の第1主面451を含む。基板31の第2主面312は、ベース部41の第2主面412、第1延出部43の第2主面432(他方主面)および第2延出部45の第2主面452を含む。
【0045】
平面視におけるベース部41の外形は、一般的なMicroSDカードの外形に相似である。例えば、ベース部41の第2方向D2の一方側には、MicroSDカードと同様に凹凸状を有する係止部410が設けられている。電極基板3のベース部41が中継部2のハウジング23に挿入されると、ベース部41の係止部410の凹状部にハウジング23内の一方側部に設けられたL字状の板バネ233が係合する(
図1参照)。これによって、電極基板3の各電極が中継部2の各接点部25に接触した状態で、電極基板3が中継部2に対して一定位置に固定される。なお、ハウジング23の内部に、電極基板3を第1方向D1の一方へ付勢するバネ機構などが設けられていてもよい。
【0046】
ベース部41の第1方向D1および第2方向D2の中間部には、2つの貫通穴413a,413bが形成されている。貫通穴413a,413bは、ここでは第1作用電極35の配線部と、第2作用電極37の配線部との間の位置に設けられている。貫通穴413aには第1参照電極36の配線部が設けられ、貫通穴413bには第2参照電極38の配線部が設けられる。
【0047】
第1延出部43および第2延出部45は、ベース部41の側端における異なる部分から外方へ延びる板状の部分である。「側端」とは、ここでは、ベース部41の第1主面411および第2主面412の各外周部に挟まれる周端部をいう。各延出部43,45の各基端部はベース部41における第1方向D1一方側の側端部に接続しており、各延出部43,45は第1方向D1に延びる。延出部43,45は、第2方向D2に間隔をあけて設けられている。第1延出部43の第2方向D2の幅W11および第2延出部45の第2方向D2の幅W12は、ベース部41の第2方向D2の幅W21よりも小さい。ここでは、第1延出部43の形状および大きさは、第2延出部45と同一であるが、第1延出部43の形状または大きさは、第2延出部45と異なっていてもよい。
【0048】
ベース部41における第2方向D2の両側のそれぞれには、凸部47が1つずつ設けられている。両側の凸部47は、第1方向D1に関して同一位置に設けられている。凸部47は、ベース部41において、他の部分(例えば、ハウジング23に挿入される部分)よりも第2方向D2に突出する部分である。第2方向D2における各凸部47の先端部どうしの間の幅W1(
図1、
図3参照)は、第2方向D2におけるハウジング23の挿入口231の幅W2(
図1、
図2参照)よりも大きい。電極基板3の幅は、両側に凸部47が設けられている部分において最大となっている。すなわち、幅W1は、電極基板3において最大幅である。
【0049】
ベース部41の両側に設けられた各凸部47は、中継部2に装着された電極基板3を取り外すために使用される。各凸部47は複数の接続端子33側(第1方向の他方側)を向く掛合面471を有する。なお、「掛合面が複数の接続端子側を向く」とは、掛合面の法線方向が、複数の接続端子側に向かう端子側方向と平行か、もしくは少なくともその端子側方向の成分を持つ方向(すなわち、端子側方向と非垂直な方向)であることをいう。後述するように、各掛合面471に取外用具5の蓋部53(抜去部)が引っ掛けられる(掛合する)ことにより、各凸部47を接続端子33側とは反対の側(第1方向D1の一方側)に付勢できる。この付勢力により、電極基板3を中継部2から取り外すことができる。
【0050】
複数(ここでは、8個)の接続端子33は、ベース部41の第1主面311に設けられている。各接続端子33には、電極35~38の各端末部が接続されている。ここでは、隣り合う2つの接続端子33に対して、電極35~38の1つが接続されている。例えば、第1作用電極35は、隣り合う2つの接続端子33に接続されており、ベース部41における途中の位置で合流する配線部を有する。換言すると、第1作用電極35は、ベース部41において、1本の配線部から2本の配線部に分岐しており、これら2本の配線部の各々が、隣り合う2つの接続端子33のどちらかに接続している。この場合、異物の付着などによって2つの接続端子33のうち一方に導通異常が生じた場合に、他方の接続端子33にて導通が確保されておれば、第1作用電極35と中継部2との間の導通を確保できる。他の各電極36,37,38についても、2つの接続端子33に接続することによって、同様の効果が得られる。
【0051】
電極35~38は、基板31の表面に配線されている。電極35~38の配線は、例えば、エッチングや直接描画などの各種方法で、基板31の表面に設けられる。本例では、第2方向D2に沿って、電極35~38がこの順序で配置されている。しかしながら、電極35~38の配置順序はこれに限定されるものではなく、適宜変更可能である。
【0052】
第1作用電極35は、ベース部41から第1延出部43にかけて配線されており、基板31の第1主面311側に設けられている(
図3参照)。詳細には、第1作用電極35は、ベース部41の第1主面411および第1延出部43の第1主面431に設けられている。
【0053】
第1参照電極36は、ベース部41から第1延出部43にかけて配線されている(
図4参照)。詳細には、2つの接続端子33から貫通穴413aまでの配線部は、基板31の第1主面311側に設けられており、貫通穴413aから先の配線部は、基板31の第2主面312側に設けられている。すなわち、第1参照電極36は、第1延出部43の第2主面432に配線されている。
【0054】
第2作用電極37は、ベース部41から第2延出部45にかけて配線されており、基板31の第1主面311側に設けられている(
図3参照)。詳細には、第2作用電極37は、ベース部41の第1主面411および第2延出部45の第1主面451に設けられている。
【0055】
第2参照電極38は、ベース部41から第2延出部45にかけて配線されている(
図4参照)。詳細には、2つの接続端子33から貫通穴413bまでの配線部は、基板31の第1主面311側に設けられており、貫通穴413bから先の配線部は、基板31の第2主面312側に設けられている。すなわち、第2参照電極38は、第2延出部45の第2主面452に配線されている。
【0056】
電極35~38の配線部は、絶縁体であるレジスト49で覆われており、第1延出部43および第2延出部45に設けられた端末部351,361,371,381が外部に露出している。端末部351,361,371,381は、電気抵抗の計測時に培養液に浸漬される部分である。第1延出部43の先端部と第2延出部45の先端部は、第2方向D2に離れている。このため、第1作用電極35の端末部351および第2作用電極37の371は、第2方向D2に離れた位置に配される(
図3参照)。また、参照電極36,38の端末部361,381についても、第2方向D2に離れた位置に配される(
図4参照)。
【0057】
電極基板3では、2つの電極35,36が共通の第1延出部43に設けられているため、電極基板3を小型化できる。同様に、2つ電極37,38が共通の第2延出部45に設けられているため、電極基板3を小型化できる。また、第1延出部43の両側の主面431,432のそれぞれに電極35,36が設けられるため、各主面431,432の領域を有効に利用できる。これにより、例えば電極35,36を幅広にできるため、断線などによる導通不良の発生を軽減できる。第2延出部45における両側の主面451,452についても同様である。
【0058】
<中継部2から電極基板3を取り外す構成について>
図5は、取外用具5を示す斜視図である。
図6は、取外用具5の使用例を示す説明図である。
図6では、取外用具5の上面図と側面図を示しており、ロボットアーム9または中継部2の図示を適宜省略している。取外用具5は、中継部2に装着された電極基板3を取り外すために用いられる部材であって、取外用具5は、測定装置1とともに、測定システムを構成する。取外用具5は、中空の直方体状を有しており、詳細には、回収容器51および蓋部53(抜去部)を含む。回収容器51は、有底筒状に形成された部材であり、矩形状である水平な底板部511と、底板部511の周縁部である四辺から鉛直方向に立設され、かつ互いに連結された4つの側板部513とを含む。蓋部53は、4つの側板部513の上部に設けられており、矩形板状を有する。蓋部53の中央部には開口部55が設けられており、当該開口部55は蓋部53を上下方向に貫通する貫通穴を形成している。
【0059】
開口部55は、第1開口部551と第2開口部553とを含む。第1開口部551は、電極基板3における両側に凸部47(掛合部)が形成された部分よりも大きく開口する。ここでは、第1開口部551の開口幅W551(第2方向D2の幅)は、電極基板3における一方の凸部47の端部から他方の凸部47の端部までの幅W47よりも大きい(
図6参照)。このため、第1開口部551には、電極基板3のうち、第1延出部43および第2延出部45だけでなく、両側の凸部47も挿通できる。
【0060】
第2開口部553は、第1開口部551に連続するように設けられており、電極基板3における両側に凸部47が形成された部分よりも小さく開口している。ここでは、第2開口部553は、第1開口部551における第3方向D3の一方側に設けられている。第2開口部553の開口幅W553(第2方向D2の幅)は、第1開口部551の開口幅W551よりも小さく、かつ電極基板3の幅W47よりも小さく、そしてベース部41の幅W21(
図3参照)よりも大きい(
図6参照)。このため、両側の凸部47は、第2開口部553を通過できなくなっている。
【0061】
図6を参照しつつ、取外用具5を用いて中継部2から電極基板3を取り外す流れを説明する。取外用具5は、例えば側板部513が鉛直方向に平行であり、底板部511および蓋部53が水平となる姿勢で所定の位置に固定される。ロボットアーム9は、電極基板3が装着された中継部2を、この取外用具5が設けられた位置まで移動させる。そして、
図6に示すように、ロボットアーム9が第1方向D1の一方側(蓋部53に接近する方向)に移動することにより、電極基板3における中継部2のハウジング23から露出している部分が取外用具5の第1開口部551に挿入される(挿入工程S11)。この挿入工程S11では、電極基板3のうち、延出部43,45とともに両側の凸部47の全部が、第1開口部551の内側を通じて蓋部53の奥側(回収容器51の内側)に挿入される。
【0062】
挿入工程S11の後、ロボットアーム9が第3方向D3に移動する。これにより、電極基板3が第1開口部551の内側から第2開口部553の内側へ移動される(移動工程S12)。この移動工程S12によって、電極基板3における両側の凸部47が、第2開口部553の下側に配される。これにより、両側の凸部47が、第2開口部553と第1方向D1に重なる状態となる。換言すると、各凸部47の掛合面471における第2方向D2の先端側部分が、第2開口部553に対向した状態となる。
【0063】
移動工程S12の後、ロボットアーム9が第1方向D1の他方側(蓋部53から遠ざかる方向)に移動する。これにより、電極基板3が第2開口部553から引き抜かれる(引抜工程S13)。この引抜工程S13では、電極基板3、両側の凸部47の掛合面471が第2開口部553に引っ掛かる(掛合する)ため、両側の凸部47が中継部2とは反対側に付勢され、もって、電極基板3が中継部2から取り外される。すなわち、電極基板3が中継部2のハウジング23から抜去され、回収容器51内に回収される。このように、電極基板3の取外しに取外用具5を用いることによって、交換対象の電極基板3を容易に取外しできるとともに、取り外された電極基板3を容易に回収できる。したがって、例えば多サンプルを計測する場合やあるいは同一サンプルを長時間計測する場合においても、複数の電極基板3を状況に応じて着脱交換することにより、電極を洗浄する作業などが必要なくなり、計測を高効率かつ高精度に行うことができる。また、ロボットアーム9を備えたロボットシステムに適用することによって、さらに計測を高効率および高精度に行うことができる。特に、本測定システムでは、比較的単純な直線的移動で中継部2に対して電極基板3を着脱できるため、ロボットシステムへの適用において極めて有利である。
【0064】
なお、取外用具5が、蓋部53の開口部55が鉛直上向きに開口する姿勢で使用されている。しかしながら、取外用具5が水平に寝かせた姿勢で使用されてもよい。この場合、蓋部53の開口部55が水平方向に開口する状態となる。このため、ロボットアーム9が水平方向および鉛直方向へ適宜移動することによって、中継部2から電極基板3を取外しできる。
【0065】
<電気抵抗の計測について>
図7は、測定装置1が適用される培養容器6を示す上面図である。
図8は、測定装置1を培養容器6に適用した場合の断面図である。
図9は、測定装置1の電気的接続を示す概略図である。
【0066】
培養容器6は、電極基板3に設けられた各電極35~38で電気抵抗が計測される対象である細胞を培養するための容器である。培養容器6は、複数のウェル61を有する、いわゆるウェルプレートである。
図7および
図8に示すように、ウェル61は、有底筒状に形成されている。培養容器6では、縦2行、横3列の合計6個のウェル61がマトリクス状に配列されている。なお、培養容器6は、6個のウェル61を備えるものに限られず、例えば、12個、24個、96個、384個のウェルを備えてもよい。
【0067】
培養容器6の各ウェル61の内部には、インサートカップ63が配置される。インサートカップ63は、筒部631と、支持部633と、細胞培養部635とを有する。筒部631は絶縁性を有する部材で構成されており、円錐台状(細胞培養部635側に向かって先細りとなる形状)かつ筒状に形成されている。
【0068】
支持部633は、筒部631の上端から外方へと延びる部分である。支持部633が培養容器6の上面に載置されると、ウェル61の内部であって、細胞培養部635がウェル61の底面に接触しない位置に、筒部631および細胞培養部635が配置される。ここでは、1つの筒部631の周方向の3箇所に支持部633が放射状に配置される。なお、支持部633は、筒部631および細胞培養部635を所定の位置に支持できる構成であればどのような形状であってもよい。例えば、支持部633は、インサートカップ63の周方向における2箇所のみに配置されてもよいし、4箇所以上に配置されてもよい。また、支持部633は、インサートカップ63の周方向の一部から外方へ延びるフランジ状であってもよい。
【0069】
細胞培養部635は、筒部631の下方の開口を覆う膜である。細胞培養部635には、好ましくは細胞接着性を有する膜が用いられる。また、細胞培養部635には、好ましくは、微細な貫通穴が多数設けられた板状部材が用いられる。計測対象である細胞の培養時には、ウェル61の内部に、少なくとも細胞培養部635が浸る高さまで培養液が注入される。
【0070】
このような培養容器6に測定装置1を適用した場合、例えば、ロボットアーム9が水平方向に移動することによって、中継部2に装着された電極基板3の延出部43,45が、培養容器6における1つのウェル61上に配置される。
【0071】
続いて、ロボットアーム9が鉛直下向きに移動することによって、電極基板3の延出部43,45の先端部がウェル61の内側に配置される(
図8参照)。詳細には、第1延出部43がインサートカップ63の内側に配置され、第2延出部45がウェル61の内側であってインサートカップ63の外側に配置される。そして、延出部43,45の先端部が、ウェル61内およびインサートカップ63内に貯留された培養液に浸される。すなわち、培養液の液面(
図8中、破線で示す。)よりも下側に、延出部43,45の各主面に設けられた電極35~38の端末部351,361,371,381が配置される。これにより、端末部351,361,371,381が培養液に浸される。
【0072】
図9に示すように、測定装置1は、電源装置11および電圧計13を含む。電源装置11の出力端子は、導線15を介して第1作用電極35および第2作用電極37に接続される。また、電圧計13の入力端子は、導線17を介して、第1参照電極36および第2参照電極38に接続される。
【0073】
図9において、抵抗Rmは、細胞培養部635および細胞培養部635上に培養された細胞(以下、これらを「細胞部」と称する。)の電気抵抗に相当する。抵抗Rw1は、第1作用電極35と細胞部との間における培養液の電気抵抗である。抵抗Rw2は、第2作用電極37と細胞部との間における培養液の電気抵抗である。抵抗Rr1は、第1参照電極36と細胞部との間における培養液の電気抵抗である。抵抗Rr2は、第2参照電極38と細胞部との間における培養液の電気抵抗である。各電極35~38と細胞部との間における各抵抗Rw1,Rr1,Rw2,Rr2と、細胞が培養されていない状態の細胞培養部635の抵抗Rmとの抵抗値はそれぞれ、予めコントロールとして測定される。
【0074】
細胞の電気抵抗を計測する場合、電源装置11を駆動することによって第1作用電極35と第2作用電極37との間に電位がかけられ、これと同時に、電圧計13によって第1参照電極36と第2参照電極38との間の電圧値が計測される。そして、計測した電圧値から、不図示のコンピュータまたは手計算によって、作用電極35,37間の正確な電圧値が算出されるとともに、その電圧値から作用電極35,37間の電気抵抗が算出される。さらに、作用電極35,37間の電気抵抗から、不図示のコンピュータまたは手計算によって、細胞部の抵抗Rmが算出される。これにより、細胞培養部635上に培養された細胞の電気的特性を取得することができる。
【0075】
電源装置11を用いて作用電極35,37間に電位をかけると、各作用電極35,37の電極表面において、培養液の酸化反応および還元反応が起き、これによって電気二重層が形成される場合がある。この場合、電源装置11による出力電位と作用電極35,37間の電圧値とが異なるおそれがある。そこで、作用電極35,37それぞれの近傍に、参照電極36,38が配置され、これら参照電極36,38間の電位が計測される。その計測電位を利用して計算することによって、より正確に細胞部の抵抗Rmを計測できる。
【0076】
特に、本実施形態では、第1延出部43の第1主面431に第1作用電極35の端末部351が、第2主面432に第1参照電極36の端末部361がそれぞれ設けられている。このため、電極35,36の端末部351,361間を近接させることができる。第2延出部45に設けられた第2作用電極37および第2参照電極38についても、同様に端末部371,381を接近させることができる。このため、細胞部の抵抗Rmを正確に計測できる。また、電極35,36間に第1延出部43が介在するため、電極35,36間を絶縁できる。同様に、電極37,38間に第2延出部45が介在するため、電極37,38間を絶縁できる。
【0077】
なお、
図8に示すように、電極基板3では、2つの延出部43,45が第1方向D1において同一の長さとなっているが、例えば第2延出部45を第1延出部43よりも長くしてもよい。この場合、第1延出部43の先端部が細胞培養部635に干渉することを抑制しつつ、第2延出部45の先端部をウェル61の底面に近づけることができる。これにより、第2延出部45に配線される電極37,38の端末部371,381を、ウェル61の底面に近い位置(例えば、細胞培養部635よりも下側の位置)に配することができる。
【0078】
また、1組の電源装置11および電圧計13に対して、複数組の中継部2および電極基板3を設けてもよい。すなわち、1つの電源装置11または1つの電圧計13に対して、複数組の電極35~38が接続されてもよい。
【0079】
<中継部2に電極基板3を装着する構成について>
図10は、複数の電極基板3を保持する基板ホルダー7を示す概略側面図である。
図11は、電極基板3を支持する基板ホルダー7の概略断面図である。基板ホルダー7は、複数の電極基板3を、一列または複数列に並ぶ状態で、かつその列方向に一定間隔をあけつつ保持する。
【0080】
基板ホルダー7は、中空の箱状に形成されており、鉛直上側に配された板状の天井部71と鉛直下側に配された板状の底部73とを有する。天井部71には、貫通穴711,713が一方向に所定間隔をあけて複数組形成されている。各貫通穴711には第1延出部43が挿通され、各貫通穴713には第2延出部45が挿通される。天井部71と底部73の間の距離は、延出部43,45の第1方向D1の長さよりも大きい。
【0081】
基板ホルダー7は、貫通穴711,713に電極基板3の延出部43,45が挿通された状態で、電極基板3を保持する。この状態では、
図11に示すように、電極基板3における両側の凸部47が天井部71によって支持される。また、ベース部41における延出部43,45間にある中間部415が天井部71における貫通穴711,713の間の中間支持部715の上面にて支持される。このように、基板ホルダー7は、延出部43,45が鉛直方向下側に、複数の接続端子33が鉛直方向上側に配した状態で、各電極基板3を保持する。
【0082】
中継部2に電極基板3を装着する場合、ロボットアーム9が、中継部2を、基板ホルダー7に保持された1つの電極基板3の真上からその電極基板3に接近させる。そして、ロボットアーム9が鉛直下向きに移動することによって、電極基板3がハウジング23の挿入口231に進入し、もって電極基板3がハウジング23に固定される。電極基板3が中継部2に装着されると、ロボットアーム9が鉛直上向きに移動することによって、電極基板3が基板ホルダー7から引き抜かれる。
【0083】
このように基板ホルダー7が複数の電極基板3を保持することによって、中継部2への電極基板3の装着を容易にできる。また、取外用具5と基板ホルダー7とを併用することによって、電極基板3の着脱交換を容易にできる。
【0084】
なお、天井部71において、例えば、貫通穴711,713を連結して1つの貫通穴としてもよい。この場合、中間支持部715が省かれるため、天井部71は、中間部415を支持せず、両側の凸部47の下端を支持することによって電極基板3を支持する。また、天井部71が、両側の凸部47を支持せず、電極基板3の中間部415のみを支持するように構成されてもよい。この場合、例えば、天井部71が、1つ以上の中間支持部715のみで構成されてもよい。
【0085】
<2.変型例>
以上、実施形態について説明してきたが、本発明は上記のようなものに限定されるものではなく、様々な変形が可能である。なお、以降の説明において、既に説明した要素と同様の機能を有する要素については、同じ符号またはアルファベット文字を追加した符号を付して、詳細な説明を省略する場合がある。
【0086】
<2-1.第1変形例>
図12は、第1変形例の電極基板3aを示す正面図である。上記実施形態の電極基板3では、両側の凸部47がベース部41に設けられているのに対して、電極基板3aでは、両側の凸部47が第1延出部43および第2延出部45のそれぞれの側部に設けられている。電極基板3aを中継部2に両側の凸部47に取外用具5などの取外用部材を引っ掛けることによって、測定装置1から取り外すことができる。したがって、電極基板3aを採用した場合であっても、電極基板3を採用したときと同様の効果を得ることができる。
【0087】
<2-2.第2変形例>
図13は、第2変形例の電極基板3bを示す正面図である。電極基板3bは、ベース部41の側端から延びる第2延出部45aを備えている。第2延出部45aは、基端部から先端部にかけて、第1延出部43から離れる方向に延びている。このため、第1延出部43と第2延出部45aとの外側の幅は、第1方向D1の一方に向かって次第に大きくなっている。第2延出部45aには、第2延出部45と同様に、第2作用電極37および第2参照電極38が設けられている。また、電極基板3bの第1延出部43には、電極基板3の第1延出部43と同様に、凸部47が形成されている。
【0088】
電極基板3bについても、電極基板3と同様に、中継部2のハウジング23に対する着脱が容易である。例えば、
図5に示す取外用具5を用いて電極基板3を中継部2から取り外す場合、まず、延出部43,45aが開口部55の第1開口部551内に挿通され、そしてこれらが第2開口部553側に移動される。そして、電極基板3を上昇させることによって、第1延出部43に設けられた凸部47と、第2延出部45aの外側面453(第1延出部43とは反対側の面)を、第2開口部553の下面に引っ掛けることができる。すなわち、本変形例では、第2延出部45aの外側面453が、掛合面として機能することにより、電極基板3bを中継部2から取り外すことができる。すなわち、外側面453は、掛合面または掛合部として機能する。このように、電極基板3bを採用した場合であっても、電極基板3を採用したときと同様の効果を得ることができる。
【0089】
なお、第1延出部43についても、第1方向D1の一方側に向けて第2延出部45aから離れる方向に延ばしてもよい。この場合、第1延出部43の外側面を掛合面として機能させることができるときは、凸部47を省いてもよい。
【0090】
<2-3.第3変形例>
図14は、第3変形例の電極基板3cを示す正面図である。上記実施形態の電極基板3では、ベース部41の両側に凸部47が設けられている。これに対して、電極基板3cでは、ベース部41における第2方向D2の両側の側端部に凹部47aが1つずつ設けられている。各凹部47aは、第1方向D1において同一位置に設けられており、両側の凹部47aの最も内側の部分(最奥部)間の幅W1aは、ベース部41の幅W1bよりも小さくなっている。
【0091】
各凹部47aの内面のうち、第2方向D2に最もくぼむ部分より第1方向D1一方側にある面471aの法線方向は、複数の接続端子33側(第1方向D1の他方側)に向かう方向の成分を有する。中継部2から電極基板3を取外しの際、各凹部47aにおける面471aは、掛合面として機能する。
【0092】
中継部2からの電極基板3cの取り外しに、
図5に示すような取外用具5を適用する場合、取外用具5における開口部55の第2開口部553の開口幅W553を、幅W1aよりも大きく、かつ幅W1bよりも小さい値とすればよい。これにより、両側の凹部47aの内側のそれぞれに第2開口部553を進入させることができる。また、第2開口部553を進入させた状態から電極基板3cを第2開口部553から引き抜くことにより、第2開口部553に両側の凹部47aの面471aを引っ掛けることができる。これによって、中継部2に装着された電極基板3cを中継部2から容易に取外しできる。また、本変形例では、凹部47aが、ベース部41に設けられているが、延出部43,45に設けられてもよい。
【0093】
<2-4.その他の変形例>
上記実施形態では、2つの電極35,36が共通の第1延出部に設けられている。しかしながら、第1延出部43の近傍にベース部41から延びる第3延出部を設け、電極35,36のうち、一方を第1延出部43に設け、他方を第3延出部に設けてもよい。同様に、第2延出部45の近傍にベース部41から延びる第4延出部を設け、電極37,38のうち、一方を第2延出部45に設け、他方を第4延出部に一方を設けてもよい。
【0094】
上記実施形態では、第1参照電極36の端末部361が、第1延出部43の第2主面432に設けられているが、第1延出部43の第1主面431に設けられもよい。これと同様に、第2参照電極38の端末部381が、第2延出部45の第1主面451に設けられてもよい。また、上記実施形態では、第1作用電極35の端末部351が第1延出部43の第1主面431に設けられているが、第1延出部43の第2主面432に設けられてもよい。この場合、貫通穴413aと同様にベース部41に貫通穴を設け、当該貫通穴を介して、第1作用電極35が基板31の第2主面312に配線されてもよい。これと同様に、第2作用電極37の端末部371が、第2延出部45の第2主面452に設けられてもよい。
【0095】
上記実施形態では、延出部43,45は、一直線状に延びる形状を有するが、延出部は屈曲または湾曲する形状を有していてもよい。延出部の屈曲または湾曲する形状に応じて、各電極35~38が曲がっていてもよい。また、延出部43,45は、ベース部41における第1方向D1の一方側端部から外方に延びる形状を有する。しかしながら、延出部はベース部41における第2方向D2のどちらか一方の側端部から外方に延びる形状を有していてもよい。また、延出部43,45を、第3方向D3に延ばしてもよい。
【0096】
上記実施形態では、ハウジング23内の複数の接点部25の配列数および配列位置は、MicroSD規格に準拠して設けられているが、その他のSD標準規格に準拠して設けられていてよい。この場合、選択される規格に応じて、電極基板3における各接続端子33の搭載位置または基板31の形状などが変更されてもよい。また、接点部25は、標準規格に準拠しない構成であってもよい。
【0097】
この発明は詳細に説明されたが、上記の説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0098】
1 測定装置
2 中継部
21 中継基板
23 ハウジング
231 挿入口
25 接点部
3,3a,3b,3c 電極基板
31 基板
33 接続端子
35 第1作用電極
36 第1参照電極
37 第2作用電極
38 第2参照電極
351,361,371,381 端末部
41 ベース部
413a,413b 貫通穴
43 第1延出部
431 第1主面(一方主面)
432 第2主面(他方主面)
45,45a 第2延出部
453 外側面(掛合面)
47 凸部(掛合部)
47a 凹部(掛合部)
471 掛合面
5 取外用具
51 回収容器
53 蓋部(抜去部)
55 開口部
551 第1開口部
553 第2開口部
6 培養容器
7 基板ホルダー
9 ロボットアーム
D1 第1方向
D2 第2方向
S11 挿入工程
S12 移動工程
S13 引抜工程(掛合工程)