(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-21
(45)【発行日】2023-03-02
(54)【発明の名称】火炎検出システムおよび故障診断方法
(51)【国際特許分類】
G01J 1/42 20060101AFI20230222BHJP
F23N 5/24 20060101ALI20230222BHJP
F23N 5/08 20060101ALI20230222BHJP
【FI】
G01J1/42 C
G01J1/42 A
F23N5/24 113A
F23N5/08 F
(21)【出願番号】P 2019067103
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2021-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 貴司
(72)【発明者】
【氏名】石井 重樹
(72)【発明者】
【氏名】熊澤 雄一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 加代
(72)【発明者】
【氏名】山岸 覚
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-205162(JP,A)
【文献】特開2013-204918(JP,A)
【文献】特開2018-84422(JP,A)
【文献】特開2018-84423(JP,A)
【文献】特開平5-12581(JP,A)
【文献】国際公開第2005/045379(WO,A1)
【文献】特開2002-214036(JP,A)
【文献】山田 哲也ら,燃焼安全技術の開発と燃焼安全ソリューションへの応用,2014年度SICE技術賞受賞紹介記事,2014年12月,第53巻第12号 ,p. 1136-1139
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 1/00-G01J 1/60
G01J 11/00
H01J 40/00-H01J 40/20
G01M 11/00-G01M 11/08
F23N 1/08-F23N 1/10
F23N 5/02-F23N 5/16
F23N 5/20-F23N 5/22
F23N 5/24
G08B 17/00
G08B 17/12
G08B 23/00-G08B 31/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
火炎から生じる紫外線を検出するように構成された火炎センサと、
この火炎センサの電極に駆動電圧を周期的に印加するように構成された印加電圧生成部と、
前記火炎センサの放電を検出するように構成された放電検出部と、
前記放電検出部で検出された放電の回数をカウントするように構成された放電カウント部と、
前記駆動電圧の印加回数と、前記放電カウント部によってカウントされた放電の回数とに基づいて放電確率を算出するように構成された放電確率算出部と、
前記放電確率の基準値を、前記火炎を発生させる機器の燃焼条件毎に予め記憶するように構成された記憶部と、
前記放電確率算出部によって放電確率が算出されたときの燃焼条件に対応する前記基準値を前記記憶部から取得して、この基準値と前記放電確率算出部によって算出された放電確率とを比較することにより、火炎検出システムに異常が発生しているかどうかを判定するように構成された故障判定部とを備える火炎検出システム。
【請求項2】
請求項1記載の火炎検出システムにおいて、
前記火炎と前記火炎センサとの間に設けられた遮光手段と、
この遮光手段を開閉動作させて、前記火炎センサが遮光された状態と前記火炎センサが採光可能な状態とを切り替えるように構成されたシャッター制御部とをさらに備え、
前記故障判定部は、前記火炎センサが採光可能な状態のときに前記放電確率算出部によって算出された放電確率と前記記憶部から取得した基準値とを比較することにより、火炎検出システムに異常が発生しているかどうかを判定することを特徴とする火炎検出システム。
【請求項3】
請求項
2記載の火炎検出システムにおいて、
前記火炎センサの放電電流を検出するように構成された放電電流検出部と、
前記放電電流のレベルに基づいて前記火炎センサの放電の有無を判定するように構成されたレベル判定回路とをさらに備え、
前記シャッター制御部は、前記火炎センサの放電が発生したと前記レベル判定回路が判定したときに前記遮光手段を閉じ、前記火炎センサの放電が停止したと前記レベル判定回路が判定したときに前記遮光手段を開くことを特徴とする火炎検出システム。
【請求項4】
請求項1乃至
3のいずれか1項に記載の火炎検出システムにおいて、
前記故障判定部は、現在の燃焼条件に対応する前記基準値を前記記憶部から取得することを特徴とする火炎検出システム。
【請求項5】
火炎から生じる紫外線を検出する火炎センサの電極に駆動電圧を周期的に印加する第1のステップと、
前記火炎センサの放電を検出する第2のステップと、
前記駆動電圧の印加回数と、前記第2のステップで検出した放電の回数とに基づいて放電確率を算出する第3のステップと、
前記放電確率の基準値を、前記火炎を発生させる機器の燃焼条件毎に予め記憶する記憶部を参照し、前記第3のステップで放電確率を算出したときの燃焼条件に対応する前記基準値を前記記憶部から取得して、この基準値と前記第3のステップで算出した放電確率とを比較することにより、火炎検出システムに異常が発生しているかどうかを判定する第4のステップとを含む火炎検出システムの故障診断方法。
【請求項6】
請求項
5記載の火炎検出システムの故障診断方法において、
前記火炎と前記火炎センサとの間に設けられた遮光手段を制御して、前記火炎センサが遮光された状態と前記火炎センサが採光可能な状態とを切り替える第5のステップをさらに含み、
前記第4のステップは、前記火炎センサが採光可能な状態のときに前記第3のステップで算出した放電確率と前記記憶部から取得した基準値とを比較することにより、火炎検出システムに異常が発生しているかどうかを判定するステップを含むことを特徴とする火炎検出システムの故障診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火炎の有無を検出する火炎検出システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃焼炉等において火炎の有無を検出する火炎センサとして、UV(ultraviolet)センサが知られている。従来の放電原理を利用したUVセンサは、火炎からの紫外線が電極に当たると、放電が行われ、放電電流が流れる。この放電電流を積分して電圧出力に変換して、その電圧をフレーム電圧として表示していた(例えば特許文献1参照)。UVセンサの放電の周期は電源電圧の周波数に依存しており、周波数が50Hzの場合、1秒間に最大50回放電が行われる。1回の放電は数msの期間で行われ、放電電流はパルス状の波形になるため、放電電流を電圧に変換するためには、フィルタを用いて積分している。このため、フレーム電圧の立ち上がりの時定数、立ち下がりの時定数が大きくなる。
【0003】
図12は、UVセンサの放電電流と、放電電流を積分したフレーム電圧の波形を示す図である。なお、
図12では、火炎とUVセンサとの間に配置されるシャッターの開閉動作についても記載している。
フレーム電圧の立ち上がり、立ち下がりには、4~5秒ほど時間がかかっており、炎がなくなってから出力をオフするまでの時間(フレームレスポンス)より遅くなっているので、正常の運転の火炎の紫外線レベルは判断できても、火炎からの紫外線の急峻な変化を捉えることはできず、UVセンサの故障や予知の判断は困難であった。
【0004】
また、商用の電源電圧からUVセンサに印加する電圧を生成するため、電源電圧のレベルの大小で放電電流も増減する。このため、1秒に50回放電していたとしても、常に同じフレーム電圧にならない可能性があった。
図13の例では、電源電圧が100%の場合と110%に上昇した場合のUVセンサの放電電流とフレーム電圧の波形を示す図である。
図13において、I1は電源電圧が100%の場合の放電電流、I2は電源電圧が110%に上昇した場合の放電電流、V1は電源電圧が100%の場合のフレーム電圧、V2は電源電圧が110%に上昇した場合のフレーム電圧である。
【0005】
上記のとおり、フレーム電圧は放電電流を積分回路で積分することにより得られる。このため、フレーム電圧を監視する従来の方法では、放電の変化が分かり難い。さらに、
図13で説明したようにフレーム電圧は電源電圧の変動の影響も受ける。したがって、例えば
図14のCの箇所のように放電電流に変化があったとしても、その放電電流の変化を受けたフレーム電圧の変化が、UVセンサの故障によるものか、UVセンサのレンズなどの汚れによるものか、電源電圧の変動によるものかの見極めが難しいという問題点があった。また、シャッター機構付きの火炎検出システムの場合、シャッターの開閉によってフレーム電圧の変動が大きくなるため、フレーム電圧の変動の原因の見極めが更に困難になるという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、電源電圧の変動の影響をほぼ受けることなく、火炎検出システムに異常が発生しているかどうかを判定することができる火炎検出システムおよび故障診断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の火炎検出システムは、火炎から生じる紫外線を検出するように構成された火炎センサと、この火炎センサの電極に駆動電圧を周期的に印加するように構成された印加電圧生成部と、前記火炎センサの放電を検出するように構成された放電検出部と、前記放電検出部で検出された放電の回数をカウントするように構成された放電カウント部と、
前記駆動電圧の印加回数と、前記放電カウント部によってカウントされた放電の回数とに基づいて放電確率を算出するように構成された放電確率算出部と、前記放電確率の基準値を、前記火炎を発生させる機器の燃焼条件毎に予め記憶するように構成された記憶部と、前記放電確率算出部によって放電確率が算出されたときの燃焼条件に対応する前記基準値を前記記憶部から取得して、この基準値と前記放電確率算出部によって算出された放電確率とを比較することにより、火炎検出システムに異常が発生しているかどうかを判定するように構成された故障判定部とを備えることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の火炎検出システムの1構成例は、前記火炎と前記火炎センサとの間に設けられた遮光手段と、この遮光手段を開閉動作させて、前記火炎センサが遮光された状態と前記火炎センサが採光可能な状態とを切り替えるように構成されたシャッター制御部とをさらに備え、前記故障判定部は、前記火炎センサが採光可能な状態のときに前記放電確率算出部によって算出された放電確率と前記記憶部から取得した基準値とを比較することにより、火炎検出システムに異常が発生しているかどうかを判定することを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の火炎検出システムの1構成例において、前記火炎センサの放電電流を検出するように構成された放電電流検出部と、前記放電電流のレベルに基づいて前記火炎センサの放電の有無を判定するように構成されたレベル判定回路とをさらに備え、前記シャッター制御部は、前記火炎センサの放電が発生したと前記レベル判定回路が判定したときに前記遮光手段を閉じ、前記火炎センサの放電が停止したと前記レベル判定回路が判定したときに前記遮光手段を開くことを特徴とするものである。
また、本発明の火炎検出システムの1構成例において、前記故障判定部は、現在の燃焼条件に対応する前記基準値を前記記憶部から取得することを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の火炎検出システムの故障診断方法は、火炎から生じる紫外線を検出する火炎センサの電極に駆動電圧を周期的に印加する第1のステップと、前記火炎センサの放電を検出する第2のステップと、前記駆動電圧の印加回数と、前記第2のステップで検出した放電の回数とに基づいて放電確率を算出する第3のステップと、前記放電確率の基準値を、前記火炎を発生させる機器の燃焼条件毎に予め記憶する記憶部を参照し、前記第3のステップで放電確率を算出したときの燃焼条件に対応する前記基準値を前記記憶部から取得して、この基準値と前記第3のステップで算出した放電確率とを比較することにより、火炎検出システムに異常が発生しているかどうかを判定する第4のステップとを含むことを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の火炎検出システムの故障診断方法の1構成例は、前記火炎と前記火炎センサとの間に設けられた遮光手段を制御して、前記火炎センサが遮光された状態と前記火炎センサが採光可能な状態とを切り替える第5のステップをさらに含み、前記第4のステップは、前記火炎センサが採光可能な状態のときに前記第3のステップで算出した放電確率と前記記憶部から取得した基準値とを比較することにより、火炎検出システムに異常が発生しているかどうかを判定するステップを含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、放電確率の基準値を、火炎を発生させる機器の燃焼条件毎に予め記憶する記憶部と、故障判定部とを設け、故障判定部が放電確率算出部によって放電確率が算出されたときの燃焼条件に対応する基準値を記憶部から取得して、この基準値と放電確率算出部によって算出された放電確率とを比較することにより、火炎センサの微妙な変動を捉えることができ、電源電圧の変動の影響をほぼ受けることなく、火炎検出システムに異常が発生しているかどうかを判定することができる。
【0018】
また、本発明では、放電の回数の基準値を、火炎を発生させる機器の燃焼条件毎に予め記憶する記憶部と、故障判定部とを設け、故障判定部が放電判定部によって放電の回数が検出されたときの燃焼条件に対応する基準値を記憶部から取得して、この基準値と放電判定部によって検出された放電の回数とを比較することにより、火炎センサの微妙な変動を捉えることができ、電源電圧の変動の影響をほぼ受けることなく、火炎検出システムに異常が発生しているかどうかを判定することができる。
【0019】
また、本発明では、記憶部と故障判定部とを設け、火炎センサが採光可能な状態のときに放電確率算出部によって算出された放電確率と記憶部から取得した基準値とを比較することにより、火炎センサの微妙な変動を捉えることができ、電源電圧の変動の影響および遮光手段の開閉の影響をほぼ受けることなく、火炎検出システムに異常が発生しているかどうかを判定することができる。
【0020】
また、本発明では、記憶部と故障判定部とを設け、火炎センサが採光可能な状態のときに放電判定部によって検出された放電の回数と記憶部から取得した基準値とを比較することにより、火炎センサの微妙な変動を捉えることができ、電源電圧の変動の影響および遮光手段の開閉の影響をほぼ受けることなく、火炎検出システムに異常が発生しているかどうかを判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施例に係る火炎検出システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施例に係る火炎検出システムの動作を説明するフローチャートである。
【
図3】
図3は、本発明の第1の実施例における正常時のUVセンサの放電電流とフレーム電圧と放電確率とを示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の第1の実施例における異常時のUVセンサの放電電流とフレーム電圧と放電確率とを示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の第1の実施例に係る火炎検出システムの別の動作を説明するフローチャートである。
【
図6】
図6は、本発明の第2の実施例に係る火炎検出システムの構成を示すブロック図である。
【
図7】
図7は、本発明の第2の実施例に係る火炎検出システムの動作を説明するフローチャートである。
【
図8】
図8は、本発明の第2の実施例における正常時のUVセンサの放電電流とフレーム電圧と放電確率とを示す図である。
【
図9】
図9は、本発明の第2の実施例における異常時のUVセンサの放電電流とフレーム電圧と放電確率とを示す図である。
【
図10】
図10は、本発明の第2の実施例に係る火炎検出システムの別の動作を説明するフローチャートである。
【
図11】
図11は、本発明の第1、第2の実施例に係る火炎検出システムを実現するコンピュータの構成例を示すブロック図である。
【
図12】
図12は、UVセンサの放電電流とフレーム電圧の波形を示す図である。
【
図13】
図13は、電源電圧が100%の場合と110%に上昇した場合のUVセンサの放電電流とフレーム電圧の波形を示す図である。
【
図14】
図14は、UVセンサの放電電流に変化があった場合のフレーム電圧の波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[発明の原理]
本発明では、UVセンサの放電確率に着目する。具体的には、単位時間あたりの放電回数をカウントして放電確率を求める。例えば、1秒間に放電する機会は、UVセンサの駆動原理から、電源電圧の周波数が50Hzの場合は50回、電源電圧の周波数が60Hzの場合は60回となっている。ここで、1秒間の放電機会が50回で、UVセンサが毎回放電したとすると、1秒あたりの放電確率は50/50=100%である。また、UVセンサが25回放電したとすると、1秒あたりの放電確率は25/50=50%である。すなわち、1秒間の放電機会をN、1秒間の放電回数をnとすると、1秒あたりの放電確率Pは次式となる。
P=n/N×100 ・・・(1)
【0023】
この放電確率Pを、フレーム電圧に代わってUVセンサの出力を監視するパラメータとする。放電確率Pは、電源電圧の変動の影響を受けないので、純粋な放電の状態が反映され、放電の微妙な変化でも検出することができ、応答性良く炎の状態確認を実現することができる。
【0024】
また、本発明では、シャッター開中とシャッター閉中の放電回数(放電確率)を別々にカウントすることが可能であるため、同一の燃焼条件下(例えば、同一燃焼量、同一シーケンス)において、算出した放電確率と正常時の放電確率とを比較することにより、例えばUVセンサの汚れなどの異常の発生を検出可能となる。フレーム電圧の場合、変化が分かり難く、UVセンサの汚れなどが発生していたとしても失火するなどの明確な異常発報があるまで、UVセンサの異常を検出できない可能性が高い。本発明では、放電確率を監視することにより、異常発報の前に火炎検出システムの異常を検出することができ、火炎検出システムのメンテナンスを行うことができる。
【0025】
[第1の実施例]
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。
図1は本発明の第1の実施例に係る火炎検出システムの構成を示すブロック図である。火炎検出システムは、火炎100から生じる光(紫外線)を検出する火炎センサとなるUVセンサ1(UV光電管)と、電源電圧を供給する電源回路2と、UVセンサ1の1対の電極に駆動電圧を周期的に印加する印加電圧生成部3と、UVセンサ1の放電を検出するための放電検出部4と、放電検出部4で検出された放電の回数をカウントする放電カウント部5と、駆動電圧印加回数と放電の回数とに基づいて放電確率を算出する放電確率算出部8と、放電確率算出部8で求められた放電確率に基づいて紫外線強度を確定する紫外線強度確定部6と、紫外線強度確定部6によって確定された紫外線強度を出力する確定結果出力部7と、放電確率の基準値を、火炎を発生させる機器の燃焼条件毎に予め記憶する記憶部9と、紫外線強度確定部6によって確定した放電確率が算出されたときの燃焼条件に対応する基準値を記憶部9から取得して、この基準値と放電確率算出部8によって算出された放電確率とを比較することにより、火炎検出システムに異常が発生しているかどうかを判定する故障判定部12と、故障判定部12の判定結果を出力する判定結果出力部13と、UVセンサ1の放電電流を検出する放電電流検出部10と、放電電流検出部10で検出された放電電流のレベルを判定するレベル判定回路11と、レベル判定回路11で判定された値を火炎信号として入力する火炎信号入力部20とを備えている。
【0026】
図2は本実施例の火炎検出システムの動作を説明するフローチャートである。UVセンサ1は、両端部が塞がれた円筒状の外囲器と、この外囲器を貫通する2本の電極ピンと、外囲器内部において電極ピンにより互いに平行に支持された2枚の電極とを備えた光電管から構成されている。このようなUVセンサ1では、電極支持ピンを介して電極間に所定の電圧を印加した状態において、火炎100に対向配置された一方の電極に紫外線が照射されると、光電効果によりその電極から電子が放出され、電極間に放電電流が流れる。
【0027】
電源回路2は、外部から入力される商用の電源電圧を印加電圧生成部3に供給する。火炎検出動作の開始時に、放電カウント部5は放電回数nを0に初期化し(
図2ステップS100)、放電確率算出部8は駆動電圧の印加回数Nを0に初期化する(
図2ステップS101)。
【0028】
印加電圧生成部3は、電源回路2から供給される交流電圧を所定の値まで昇圧し、UVセンサ1の1対の端子110,111間に印加する。
放電検出部4は、UVセンサ1に流れる放電電流を検出する。例えば、放電検出部4内に発光ダイオードとフォトトランジスタを設けておき、UVセンサ1に流れる放電電流によって発光駆動される発光ダイオードの光をフォトトランジスタを介して検出する(
図2ステップS102)。
放電カウント部5は、放電検出部4で放電電流が検出された場合、放電回数nを1増やす(
図2ステップS103)。
【0029】
こうして、ステップS102~S103の処理が繰り返し実行される。放電確率算出部8は、駆動電圧の印可回数N(放電機会)が所定数Nth(本実施例では例えば50回)に達した場合(
図2ステップS104においてYES)、式(1)により放電確率Pを算出する(
図3ステップS105)。
【0030】
放電確率Pの算出後、放電カウント部5は放電回数nを0に初期化し(
図2ステップS106)、放電確率算出部8は駆動電圧の印加回数Nを0に初期化する(
図2ステップS107)。
【0031】
次に、記憶部9には、UVセンサ1が正常なときに、駆動電圧の印加回数Nが所定数Nthに達したときの放電確率Pref(基準値)が、火炎100を発生させる機器の燃焼条件毎に予め記憶されている。
【0032】
故障判定部12は、故障診断を実行すべき燃焼条件のときに(
図2ステップS108においてYES)、その燃焼条件に対応する放電確率Prefの値を記憶部9から取得する(
図2ステップS109)。そして、故障判定部12は、取得した放電確率Prefと放電確率算出部8によって算出された放電確率Pとを比較することにより、火炎検出システムに異常が発生しているかどうかを判定する(
図2ステップS110)。
【0033】
故障判定部12は、放電確率Prefと放電確率Pとの差の絶対値|Pref-P|が所定の閾値Pthを超える場合(ステップS110においてYES)、火炎検出システムに異常が発生していると判定する(
図2ステップS111)。また、故障判定部12は、放電確率Prefと放電確率Pとの差の絶対値|Pref-P|が閾値Pth以下の場合(ステップS110においてNO)、火炎検出システムは正常と判定する(
図2ステップS112)。
【0034】
判定結果出力部13は、故障判定部12の判定結果を外部に出力する(
図2ステップS114)。判定結果の出力方法としては、例えば判定結果を知らせる内容を表示したり、判定結果を知らせる情報を外部に送信したり、外部から読み出したりする等の方法がある。
【0035】
こうして、本実施例では、燃焼条件が同一の放電確率Prefと放電確率Pとを比較することにより、電源電圧の変動の影響をほぼ受けることなく、火炎検出システムに異常が発生しているかどうかを判定することができる。
【0036】
図3は正常時のUVセンサ1の放電電流とフレーム電圧と放電確率Pとを示す図、
図4は異常時のUVセンサ1の放電電流とフレーム電圧と放電確率Pとを示す図である。
図4の例では、Aに示すような異常な放電が発生したことにより、放電確率Pが正常時の放電確率Pと異なる値になることが分かる。
【0037】
なお、
図2の例では、放電確率Pに基づいて火炎検出システムに異常が発生しているかどうかを判定しているが、放電回数nに基づいて火炎検出システムに異常が発生しているかどうかを判定するようにしてもよい。放電回数nに基づいて火炎検出システムに異常が発生しているかどうかを判定する場合、放電確率算出部8は不要である。この場合の火炎検出システムの動作を
図5に示す。
図5のステップS100~S104,S106~S108の処理は、
図2で説明したとおりである。
【0038】
ここでは、記憶部9には、UVセンサ1が正常なときに、駆動電圧の印加回数Nが所定数Nthに達したときの放電回数nref(基準値)が、火炎100を発生させる機器の燃焼条件毎に予め記憶されている。
【0039】
故障判定部12は、現在の燃焼条件が故障診断すべき条件のときに(
図5ステップS108においてYES)、この燃焼条件に対応する放電回数nrefの値を記憶部9から取得する(
図5ステップS109a)。そして、故障判定部12は、取得した放電回数nrefと放電カウント部5によってカウントされた放電回数nとを比較することにより、火炎検出システムに異常が発生しているかどうかを判定する(
図5ステップS110a)。
【0040】
故障判定部12は、放電回数nrefと放電回数nとの差の絶対値|nref-n|が所定の閾値nthを超える場合(ステップS110aにおいてYES)、火炎検出システムに異常が発生していると判定する(
図5ステップS111)。また、故障判定部12は、放電回数nrefと放電回数nとの差の絶対値|nref-n|が閾値nth以下の場合(ステップS110aにおいてNO)、火炎検出システムは正常と判定する(
図5ステップS112)。
図5のステップS113の処理は、
図2で説明したとおりである。
【0041】
[第2の実施例]
第1の実施例では、シャッター機構無しの火炎検出システムの例で説明しているが、本発明はシャッター機構付きの火炎検出システムに適用することも可能である。
図6は本発明の第2の実施例に係る火炎検出システムの構成を示すブロック図であり、
図1と同一の構成には同一の符号を付してある。
【0042】
本実施例の火炎検出システムは、UVセンサ1と、電源回路2と、印加電圧生成部3と、放電検出部4と、放電カウント部5、紫外線強度確定部6と、確定結果出力部7と、放電確率算出部8aと、放電電流検出部10と、レベル判定部11と、火炎信号入力部20と、記憶部9と、UVセンサ1が採光可能な状態のときに放電確率算出部8aによって算出された放電確率と記憶部9から取得した基準値とを比較することにより、火炎検出システムに異常が発生しているかどうかを判定する故障判定部12aと、判定結果出力部13と、火炎100とUVセンサ1との間に設けられたシャッター15と、シャッター15を駆動するシャッター駆動部16と、シャッター駆動部16を通じてシャッター15を制御するシャッター制御部17とを備えている。シャッター15とシャッター駆動部16とは、遮光手段を構成している。
【0043】
図7は本実施例の火炎検出システムの動作を説明するフローチャートである。シャッター制御部17は、シャッター15を開閉動作させるためのシャッター開信号およびシャッター閉信号を出力する。シャッター制御部17は、レベル判定回路11によって判定された出力に基づいてUVセンサ1の放電が発生したと判定したときにシャッター15を閉じ、UVセンサ1の放電が停止したと判定したときにシャッター15を開く。
【0044】
具体的には、レベル判定回路11は、UVセンサ1の放電電流を示す電圧が所定の放電閾値Ith1を超えたことによりUVセンサ1の放電が発生したと判定し、その判定結果に基づきシャッター制御部17は、シャッター閉信号を出力する。また、レベル判定回路11は、UVセンサ1の放電電流を示す電圧が所定の放電停止閾値Ith2(Ith1>Ith2)を下回ったことによりUVセンサ1の放電が停止したと判定し、シャッター制御部16は、シャッター開信号を出力する。こうして、シャッター15は、開閉動作を繰り返す。
【0045】
なお、シャッター15の頻繁な開閉を回避するため、放電閾値Ith1および放電停止閾値Ith2と比較される電圧は、放電電流検出部10の出力電圧そのものではなく、この電圧に例えば積分処理を施して、立ち上がりおよび立ち下がりを鈍らせた波形となっている。つまり、レベル判定回路11は、所定の時定数を有する電圧波形に変換した上で、放電閾値Ith1および放電停止閾値Ith2と比較し、シャッター制御部17は、その出力によりシャッター開閉信号を出力する。
【0046】
図7のステップS200,S201の処理は、
図2のステップS100,S101と同じである。
シャッター駆動部16は、シャッター制御部17からシャッター開信号が出力されたとき、シャッター15を開く(
図7ステップS202)。シャッター15が開いたことにより、UVセンサ1は採光可能な状態となる。
【0047】
図7のステップS203~S209の処理は、
図2のステップS102~S108と同様である。なお、
図7では、動作を明示するためにステップS203~S204の処理を記載しているが、印加電圧生成部3は、火炎検出システムの動作中に常時印可電圧生成し、放電検出部4は、UVセンサ1の放電の検出を火炎検出システムの動作中に常時行い、放電カウント部5は、UVセンサ1の放電の検出を火炎検出システムの動作中に常時行っている。
【0048】
本実施例では、記憶部9には、UVセンサ1が正常で採光可能な状態のときに、駆動電圧の印加回数Nが所定数Nthに達したときの放電確率Pref(基準値)が、火炎100を発生させる機器の燃焼条件毎に予め記憶されている。
【0049】
故障判定部12aは、シャッター制御部17からシャッター開信号が出力され、シャッター15が開いていて、かつ故障診断を実行すべき燃焼条件のときに(
図7ステップS209においてYES)、この燃焼条件に対応する放電確率Prefの値を記憶部9から取得する(
図7ステップS210)。
【0050】
そして、故障判定部12aは、取得した放電確率Prefと放電確率算出部8によって算出された放電確率Pとを比較することにより、火炎検出システムに異常が発生しているかどうかを判定する(
図7ステップS211)。
図7のステップS212~S214の処理は、
図2のステップS111~S113と同様である。
【0051】
次に、シャッター制御部17は、UVセンサ1の放電が発生したと判定したときに(
図7ステップS215においてYES)、シャッター閉信号を出力する。シャッター駆動部16は、シャッター制御部17からシャッター閉信号が出力されたとき、シャッター15を閉じる(
図7ステップS216)。これにより、火炎100からの紫外線がシャッター15によって遮断され、UVセンサ1への紫外線の入射が遮断される。
【0052】
放電確率算出部8aは、シャッター制御部17からシャッター閉信号が出力されたとき、次にシャッター15が開いて放電確率Pを新たに算出するときまで、直前に算出した放電確率Pの値を保持する(
図7ステップS217)。
【0053】
次に、シャッター制御部17は、UVセンサ1の放電が停止したと判定したときに(
図7ステップS218においてYES)、シャッター開信号を出力する。シャッター駆動部16は、シャッター制御部17からシャッター開信号が出力されたとき、シャッター15を開く(
図7ステップS202)。
【0054】
こうして、本実施例では、シャッター機構付きの火炎検出システムにおいて第1の実施例と同様の効果を得ることができる。
図8は正常時のUVセンサ1の放電電流とフレーム電圧と放電確率Pとを示す図、
図9は異常時のUVセンサ1の放電電流とフレーム電圧と放電確率Pとを示す図である。
図13と同様に、I1は電源電圧が100%の場合の放電電流、I2は電源電圧が110%に上昇した場合の放電電流、V1は電源電圧が100%の場合のフレーム電圧、V2は電源電圧が110%に上昇した場合のフレーム電圧である。また、
図8、
図9のP’はシャッター開中のみの放電確率Pを示している。
図9に示した例では、Bに示すような異常な放電が発生したことにより、放電確率Pが正常時の放電確率Pと異なる値になることが分かる。
【0055】
本実施例においても、放電回数nに基づいて火炎検出システムに異常が発生しているかどうかを判定するようにしてもよい。放電回数nに基づいて火炎検出システムに異常が発生しているかどうかを判定する場合、放電確率算出部8aは不要である。この場合の火炎検出システムの動作を
図10に示す。
図10のステップS200~S205,S207,S208の処理は、
図7で説明したとおりである。
【0056】
ここでは、記憶部9には、UVセンサ1が正常で採光可能な状態のときに、駆動電圧の印加回数Nが所定数Nthに達したときの放電回数nref(基準値)が、火炎100を発生させる機器の燃焼条件毎に予め記憶されている。
【0057】
故障判定部12aは、シャッター制御部17からシャッター開信号が出力され、シャッター15が開いていて、かつ故障診断を実行すべき燃焼条件のときに(
図10ステップS209においてYES)、その燃焼条件に対応する放電回数nrefの値を記憶部9から取得する(
図10ステップS210a)。
【0058】
そして、故障判定部12aは、取得した放電回数nrefと放電判定部6によってカウントされた放電回数nとを比較することにより、火炎検出システムに異常が発生しているかどうかを判定する(
図10ステップS211a)。
図10のステップS212~S214の処理は、
図5のステップS111~S113と同様である。また、
図10のステップS215,S216,S218の処理は、
図7で説明したとおりである。
【0059】
第1、第2の実施例では、記憶部9は、放電確率Pまたは放電回数nの基準値として、火炎検出システムが正常なときの放電確率Prefまたは放電回数nrefを記憶しているが、これに限るものではなく、火炎検出システムの稼働初期の放電確率Pまたは放電回数nを基準値として記憶してもよいし、前回算出した放電確率Pまたは放電回数nを記憶してもよい。
【0060】
この場合、放電確率算出部8,8aは、火炎検出システムの稼働初期または前回算出の放電確率Pの値を、この稼働初期または前回の算出時の燃焼条件情報と共に記憶部9に記憶させる。あるいは、放電カウント部5は、稼働初期または前回算出の放電回数nの値を、この稼働初期または前回の算出時に入力された燃焼条件情報と共に記憶部9に記憶させる。
【0061】
なお、UVセンサの放電確率を劣化指標として、長期的には放電確率が低下していくものとして、UVセンサの現在までの劣化の進行程度を推測する技術として、特開2018-205162号公報に開示された技術が存在するが、この技術は短期間(毎回の判定周期)での異常診断には適応できない。
【0062】
第1、第2の実施例で説明した放電検出部4と放電カウント部5と紫外線強度確定部6と確定結果出力部7と放電確率算出部8a,8aと記憶部9と放電電流検出部10とレベル判定回路11と故障判定部12,12aと判定結果出力部13とシャッター制御部17とは、CPU(Central Processing Unit)、インタフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。
【0063】
このコンピュータの構成例を
図11に示す。コンピュータは、CPU200と、インターフェース装置(以下、I/Fと略する)201とを備えている。I/F201には、放電検出部4(放電検出回路)と確定結果出力部7(通信回路や表示回路など)などが接続される。このようなコンピュータにおいて、本発明の故障診断方法を実現させるためのプログラムは、CPU200内臓のメモリに格納される。CPU200は、メモリに格納されたプログラムに従って第1、第2の実施例で説明した処理を実行する。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、火炎検出システムに適用することができる。
【符号の説明】
【0065】
1…UVセンサ、2…電源回路、3…印加電圧生成部、4…放電検出部、5…放電カウント部、6…紫外線強度確定部、7…確定結果出力部、8,8a…放電確率算出部、9…記憶部、10…放電電流検出部、11…レベル判定回路、12,12a…故障判定部、13…判定結果出力部、15…シャッター、16…シャッター駆動部、17…シャッター制御部、20…火炎信号入力部。