(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-21
(45)【発行日】2023-03-02
(54)【発明の名称】部材連結構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/24 20060101AFI20230222BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20230222BHJP
【FI】
E04B1/24 L
E04B1/58 508S
(21)【出願番号】P 2019100148
(22)【出願日】2019-05-29
【審査請求日】2021-11-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102141
【氏名又は名称】的場 基憲
(72)【発明者】
【氏名】小山 智
(72)【発明者】
【氏名】林 輝久
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-158490(JP,A)
【文献】特開2001-227070(JP,A)
【文献】特開平09-317002(JP,A)
【文献】特開2006-316611(JP,A)
【文献】実開昭64-018205(JP,U)
【文献】特開2003-105855(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/24
E04B 1/58
F16B 7/00-7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方部材と、一方部材に対して垂直に配置される他方部材と、一方部材と他方部材を連結する連結具を備え、
連結具は、一方部材に固定される第1連結部と、第1連結部と同一面状を成して一方部材に固定される第2連結部と、第1連結部と第2連結部との間から垂直に突出して他方部材に固定される第3連結部と、第1及び第2の連結部と第3連結部との交差部に設けた肉盛部を有し、
第3連結部は、第1連結部及び第2連結部のいずれか片側に偏位しており、
肉盛部は、第3連結部の偏位側の反対側に設けてあり、
他方部材は、第3連結部に固定される被連結部を有し、被連結部の端部が肉盛部に当接することを特徴とする部材連結構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方部材とこれに対して垂直に配置した他方部材とを連結するのに用いられる部材連結構造に関し、例えば、支柱と梁とを連結するのに用いられる部材連結構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の部材連結構造としては、エンドプレートを用いた柱梁接合構造の名称で、特許文献1に記載されたものがある。特許文献1(
図5)に記載の部材連結構造は、エンドプレートを介して、支柱と梁とを連結するものである。支柱は、断面矩形の中空部材である。梁は、上下の梁フランジと、梁フランジの中心同士を連続させるウェブとを長手方向にわたって有する。エンドプレートは、支柱の側面に固定するエンドプレート本体部と、エンドプレート本体部に対して垂直な梁接合部を有する断面T形状の部材である。
【0003】
上記のエンドプレートは、支柱の中心線と梁の中心線とを一致させるために、梁接合部が梁のウェブの厚さ分だけ片側に偏位している。このエンドプレートは、梁接合部の両側に設けた夫々のボルトで、支柱にエンドプレート本体部を固定すると共に、別のボルトで、梁のウェブに梁接合部を固定する。これにより、支柱と梁は、エンドプレートを介して連結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記したような従来の部材連結構造では、単一のエンドプレートで支柱と梁の連結を実現する一方で、支柱及び梁の中心線同士を一致させる都合上、エンドプレートの梁接合部を片側に偏位させざるを得ない。このため、従来の部材連結構造では、梁接合部の両側に配置したボルトに加わる負荷が不均一になるという問題点があり、局所的に増大する負荷を抑制するうえでの改善が要望されていた。
【0006】
本発明は、上記従来の状況に鑑みて成されたもので、一方部材とこれに対して垂直に配置される他方部材とを連結する構造であって、局所的な負荷の増大を抑制して、安定した連結強度を得ることができる部材連結構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係わる部材連結構造は、一方部材と、一方部材に対して垂直に配置される他方部材と、一方部材と他方部材を連結する連結具を備え、連結具は、一方部材に固定される第1連結部と、第1連結部と同一面状を成して一方部材に固定される第2連結部と、第1連結部と第2連結部との間から垂直に突出して他方部材に固定される第3連結部と、第1及び第2の連結部と第3連結部との交差部に設けた肉盛部を有し、第3連結部は、第1連結部及び第2連結部のいずれか片側に偏位しており、肉盛部は、第3連結部の偏位側の反対側に設けてあり、他方部材は、第3連結部に固定される被連結部を有し、被連結部の端部が肉盛部に当接する構成としており、上記構成をもって課題を解決するための手段としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係わる部材連結構造は、連結具の第1及び第2の連結部を一方部材に固定すると共に、連結部の第3連結部を他方部材の被連結部に固定し、これにより、連結具を介して一方部材と他方部材とを連結する。この際、部材連結構造は、第1及び第2の連結部と第3連結部との交差部に肉盛部を有し、第3連結部が、第1連結部及び第2連結部のいずれか片側に偏位しており、肉盛部が、第3連結部の偏位側の反対側に設けてあり、この肉盛部に他方部材の被連結部の端部が当接した状態になっている。これにより、部材連結構造は、一方部材及び他方部材の中心線同士を一致させるために第3連結部が片側に偏位している構造にして、第1及び第2の連結部における夫々の固定具に対する負荷を均一にすることが可能になる。
【0009】
このようにして、本発明の部材連結構造は、一方部材とこれに対して垂直に配置される他方部材とを連結する構造において、局所的な負荷の増大を抑制して、安定した連結強度を得ることができる。また、部材連結構造は、他方部材の被連結部の端部を連結具の肉盛部に当接させることで、凹凸のない良好な外観体裁を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係わる部材連結構造が適用される構造体を説明する斜視図である。
【
図2】本発明に係わる部材連結構造の第1実施形態を説明する断面図である。
【
図3】
図2に示す部材連結構造の連結前の状態を示す斜視図である。
【
図4】
図3に続く連結後の状態を示す斜視図である。
【
図5】本発明に係わる部材連結構造の第2実施形態を説明する断面図である。
【
図6】本発明に係わる部材連結構造の第3実施形態を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に示す構造体1は、四隅に支柱2を配置して、隣接する支柱2,2の上端部間に梁3を連結し、隣接する支柱2,2の下端部間に桁4を連結して、立体的な骨格を構成している。本発明に係わる部材連結構造は、上記構造体1において、支柱2と梁3との連結や、支柱2と桁4との連結に適用することができる。
【0012】
図2~
図4は、部材連結構造の第1実施形態を説明する図である。すなわち、図示の部材連結構造は、一方部材としての支柱2と、支柱2に対して垂直に配置される他方部材としての梁3と、支柱2と梁3を連結する連結具5を備えている。
【0013】
この実施形態の支柱2は、矩形断面を有する中空部材である。梁3は、上下の水平壁3A,3Bと、両水平壁3A,3Bの中心同士を連結する垂直壁3Cを長手方向にわたって有する部材である。この梁3は、垂直壁3Cの端部が、連結具5への被連結部である。
【0014】
連結具5は、支柱(一方部材)2に固定される第1連結部51と、第1連結部51と同一面状を成して支柱2の一側面に固定される第2連結部52とを有している。また、連結具5は、第1連結部51と第2連結部52との間から垂直に突出して梁3(他方部材)の垂直壁3Cに固定される第3連結部53と、第1及び第2の連結部52,52と第3連結部53との交差部に設けた肉盛部54を有している。つまり、連結具5は、平面状に連続する第1及び第2の連結部51,52と、これらに対して垂直な第3連結部53とにより、水平断面上でT形状を成している。
【0015】
第1及び第2の連結部51,52には、夫々上下2個の締結具(ねじやボルト)の貫通孔55が形成してある。第3連結部53には、上下左右に配置した4個の貫通孔55が形成してあり、連結時に梁3の垂直部3Cの反対側になる面に、締結具(ボルトやナット)の回り止めとして機能する複数の突条56が竪方向に沿って形成してある。さらに、梁3は、垂直壁3Cの端部である被連結部に、第3連結部53に対応して、上下左右に配置した4個の貫通孔55が形成してある。なお、締結具は、代表的に、ねじやボルト及びナット等であり、
図2に一部(符号B)を示している。
【0016】
さらに、上記の連結具5は、互いに連結される支柱2及び梁3の中心線同士を一致させる都合上、
図2に示すように、第3連結部53が、梁3の垂直壁3Cの厚さ分だけ、片側に偏位している。この実施形態の連結具5は、第3連結部53が、第2連結部52側に偏位している。
【0017】
そして、連結具51は、第1及び第2の連結部52,52と第3連結部53との交差部において、第3連結部53の偏位側の反対側に肉盛部54が設けてある。図示例の肉盛部54は、機能上、一般的な角部に設けるRとは全く異なる。この肉盛部54は、第1連結部51と第3連結部53との角部を充分に埋めるように、第1連結部51から第3連結部53の方向に至る傾斜面54Aと、傾斜面54Aの端部から第3連結部53に至る段差面54Bとを竪方向にわたって連続的に有している。この肉盛部54の段差面54Bは、梁3の垂直壁3Cの厚さに相当する段差寸法を有している。
【0018】
さらに、この実施形態の連結具5は、一方及び他方の連結具5A,5Bを一体化した構造になっている。一方及び他方の連結具5A,5Bは、一方連結具5Aにおける第2連結部52の竪辺と、他方連結具5Bにおける第1連結部51の竪辺とを、互いに90度を成す配置で互いに連続させて一体化した構造である。これにより、連結具5は、支柱2において隣接する2つの側面に、一方及び他方の連結具5A,5Bを介して、2本の梁3,3の夫々の端部を連結することができる。
【0019】
上記の部材連結構造は、支柱2の一側面に、一方連結具5Aの第1及び第2の連結部51,52を締結具(
図2に示す)Bで連結すると共に、梁3の垂直壁3Cの端部(被連結部)に、一方連結具5Aの第3連結部53を締結具で固定し、同端部の端面を肉盛部54の段差面54Bに当接させる。また、この実施形態の連結具5は、2つの連結具5A,5Bを一体化したものであるから、支柱2の一側面に隣接する他側面においても、他方連結具5Bを介して同様に梁3が連結される。これにより、部材連結構造は、支柱2に連結具5(5A,5B)を介して梁3を連結する。
【0020】
上記の部材連結構造において、梁3は、上下の水平壁3A,3Bの端面が、支柱2の側面に当接し、垂直壁3Cの端面が、肉盛部54の段差面54Bに当接する。このため、梁3において、水平壁3A,3Bは、夫々の端面が上下に揃った位置にあるが、垂直壁3Cは、肉盛部54の分だけ水平壁3A,3Bよりも短くなるように、予め端部が切除されている。これにより、連結具5(5A,5B)は、第1及び第2の連結部51,52の上下面が、梁3の上下の水平壁3A,3Bにより覆われる。
【0021】
上記の部材連結構造は、第1及び第2の連結部51,52と第3連結部53との交差部に肉盛部54を有し、この肉盛部54の段差面54Bに梁3の端部(被連結部)の端面が当接した状態になっている。
【0022】
これにより、部材連結構造は、支柱2及び梁3の中心線同士を一致させるために第3連結部53が片側に偏位しているが、
図2中に複数の小さい矢印で示すように、梁3側から支柱2に加わる負荷が、第3連結部53及び肉盛部54を経て、第1及び第2の連結部51,52の夫々の締結具B側に均一に分散される。このような負荷の分散機能は、一方及び他方の連結具5A,5Bにおいて同様に発揮される。
【0023】
このようにして、部材連結構造は、支柱(一方部材)2とこれに対して垂直に配置される梁(他方部材)3とを連結する構造において、局所的な負荷の増大を抑制して、安定した連結強度を得ることができる。
【0024】
また、部材連結構造は、肉盛部54の段差面54Bに、梁3の垂直壁3Cの端面を隙間無く当接させているので、肉盛部54と垂直壁3Cとを連続させて、凹凸の無い良好な外観体裁を得ることができる。
【0025】
さらに、上記実施形態の連結具5は、支柱2に対して、互いに90度異なる2つの側面に夫々固定される一方及び他方の連結具5A,5Bを一体化したものである。このため、連結具5は、支柱2に対して、一方連結具5Aを固定する複数の締結具Bと、他方連結具5Bを固定する複数の締結具B、すなわち90度異なる方向から取り付けた締結具群により固定してある。
【0026】
ここで、支柱2と梁3の連結構造では、例えば
図2に示す梁3に下方向の負荷が加わると、一方連結具5Aを固定している締結具Bに、引き抜く方向(図中で下方向)の力が発生する。この際、上記の部材連結構造では、引き抜く方向の力に対して、他方連結具5Bの締結具B、すなわち引き抜き方向に対して直交する方向に取り付けた締結具Bがあるので、締結具Bの弛みを防いで、支柱2に対する連結具5及び梁3の連結強度を充分に維持することができる。
【0027】
また、上記の部材連結構造では、他方連結具5Aに連結した梁(図示せず)に下方向の荷重が加わった場合でも、同様の作用により、締結具Bの弛みを防いで、支柱2に対する連結具5及び梁3の連結強度を充分に維持する。このようにして、上記実施形態の部材連結構造は、連結具5の肉盛部54による負荷の分散効果に加えて、支柱2と梁3との連結強度の維持若しくは向上を実現することができる。
【0028】
図5及び
図6は、本発明に係わる部材連結構造の第2及び第3の実施形態を示す図である。以下の実施形態において、第1実施形態と同一の構成部位は、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0029】
第2及び第3の実施形態における一方部材12は、第1実施形態の梁3と同様に、一対の水平壁12A,12Bと、両水平壁12A,12Bの中心同士を連結する垂直壁12Cとを長手方向にわたって有している。また、他方部材13にあっても、同様に、一対の水平壁13A,13Bと、垂直壁13Cとを長手方向にわたって有している。なお、図示例の両部材12,13において、水平壁12A,12B,13A,13B及び垂直壁12C,13Cは、便宜上、第1実施形態と同様の名称にしたが、各部材12,13を配置した際の姿勢により水平及び垂直の方向性が異なる場合がある。
【0030】
連結具5は、第1実施形態と同様に、第1連結部51、第2連結部52、第3連結部53、及び肉盛部54を有する。なお、第2及び第3の実施形態の連結具5は、第1実施形態のように2つを一体化したものではく、第1及び第2の連結部51,52と、これに対して垂直な第3連結部53とで断面T形状を成している。
【0031】
図5に示す第2実施形態では、一方部材12の上側の水平壁12Aの上面に、連結具5を介して、他方部材13の下端部を連結する。このとき、連結具5は、第1及び第2の連結部51,52を一方部材12の上面に固定すると共に、第3連結部53を他方部材13の垂直壁3Cに固定し、この際、他方部材13の被連結部(下端部)の端面を肉盛部54の段差面(
図2の符号54B参照)に当接させる。これにより、部材連結構造は、一方部材12及び他方部材13の中心線同士を一致させた状態にして、連結具5を介して両部材12,13を連結する。
【0032】
上記の部材連結構造は、先の実施形態と同様に、他方部材13側から一方部材12に加わる負荷が、第3連結部53及び肉盛部54を経て、第1及び第2の連結部51,52の夫々の締結具(
図2の符号B参照)に対して均一に分散される。これにより、部材連結構造は、局所的な負荷の増大を抑制して、安定した連結強度を得ることができる。また、部材連結構造は、肉盛部54と他方部材13の垂直壁13Cの端面とを隙間無く当接させて、良好な外観体裁を得ることができる。
【0033】
図6に示す第3実施形態では、一方部材12の垂直壁12Cの側面に、連結具5を介して、他方部材13の端部を連結する。このとき、連結具5は、第1及び第2の連結部51,52を一方部材12の垂直壁12Cに固定すると共に、第3連結部53を他方部材13の垂直壁13Cに固定する。この際、他方部材13は、上下の水平壁13A,12Bの端部を、一方部材12の水平壁12A,12Bの側面に当接させると共に、被連結部(端部)の端面を肉盛部(垂直壁13Cの裏側に位置する)の段差面に当接させる。これにより、部材連結構造は、一方部材12及び他方部材13の中心線同士を一致させた状態にして、連結具5を介して両部材12,13を連結する。
【0034】
上記の部材連結構造は、先の実施形態と同様に、他方部材13側から一方部材12に加わる負荷が、第3連結部53及び肉盛部を経て、第1及び第2の連結部51,52の夫々の締結具(
図2の符号B参照)に対して均一に分散される。これにより、部材連結構造は、局所的な負荷の増大を抑制して、安定した連結強度を得ることができる。また、部材連結構造は、肉盛部54と他方部材13の垂直壁13Cの端面とを隙間無く当接させて、良好な外観体裁を得ることができる。
【0035】
なお、本発明に係わる部材連結構造は、詳細な構成が上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能であり、一方部材とこれに対して垂直に配置した他方部材との様々な組合せに適用することが可能である。
【符号の説明】
【0036】
2 支柱(一方部材)
3 梁(他方部材)
3C 垂直壁(被連結部)
12 一方部材
13 他方部材
13C 被連結部
5 連結具
51 第1連結部
52 第2連結部
53 第3連結部
54 肉盛部