(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-21
(45)【発行日】2023-03-02
(54)【発明の名称】加熱調理装置
(51)【国際特許分類】
F24C 3/12 20060101AFI20230222BHJP
A47J 37/06 20060101ALI20230222BHJP
F23N 5/20 20060101ALI20230222BHJP
【FI】
F24C3/12 S
A47J37/06 366
F23N5/20 102Z
(21)【出願番号】P 2019120077
(22)【出願日】2019-06-27
【審査請求日】2022-05-30
(73)【特許権者】
【識別番号】301071893
【氏名又は名称】株式会社ハーマン
(74)【代理人】
【識別番号】100086737
【氏名又は名称】岡田 和秀
(72)【発明者】
【氏名】石川 善克
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-078558(JP,A)
【文献】特開2011-000315(JP,A)
【文献】実開昭59-071054(JP,U)
【文献】特開2016-056994(JP,A)
【文献】実開昭52-006242(JP,U)
【文献】実開昭60-122652(JP,U)
【文献】特開2015-158290(JP,A)
【文献】国際公開第2018/114855(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 3/12
A47J 37/06
F23N 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の調理用加熱バーナと、前記複数の調理用加熱バーナにそれぞれ配設されている複数の点火プラグと、前記複数の点火プラグが電気的に接続されている共用の点火器と、複数の調理用加熱バーナにそれぞれ対応する立ち消え安全装置と、前記複数の調理用加熱バーナの点消火を指令する点消火指令手段と、前記複数の調理用加熱バーナの燃焼を制御すると共に、前記点消火指令手段の指令及び前記立ち消え安全装置の状態に基づいて、前記複数の調理用加熱バーナの点消火を制御する燃焼制御手段とを備え、
前記燃焼制御手段は、前記複数の調理用加熱バーナの内の少なくとも1つの調理用加熱バーナに対応する前記立ち消え安全装置が立ち消えを検出している状態、または、立ち消えを検出する可能性がある状態で、前記少なくとも1つの前記調理用加熱バーナ以外の他の調理用加熱バーナへの点火指令があったときには、その点火指令があった時点から所定時間遅延させて、前記他の調理用加熱バーナの点火を実行する、
ことを特徴とする加熱調理装置。
【請求項2】
複数の調理用加熱バーナと、前記複数の調理用加熱バーナにそれぞれ配設されている複数の点火プラグと、前記複数の点火プラグが電気的に接続されている共用の点火器と、複数の調理用加熱バーナにそれぞれ対応する立ち消え安全装置と、前記複数の調理用加熱バーナの点消火を指令する点消火指令手段と、前記複数の調理用加熱バーナの燃焼を制御すると共に、前記点消火指令手段の指令及び前記立ち消え安全装置の状態に基づいて、複数の調理用加熱バーナの点消火を制御する燃焼制御手段とを備え、
前記燃焼制御手段は、前記複数の調理用加熱バーナの内の少なくとも1つの調理用加熱バーナに対応する前記立ち消え安全装置が立ち消えを検出している状態、または、立ち消えを検出する可能性がある状態で、前記少なくとも1つの前記調理用加熱バーナ以外の他の調理用加熱バーナへの点火指令があったときには、その点火指令にかかわらず、前記他の調理用加熱バーナの点火を実行しない、
ことを特徴とする加熱調理装置。
【請求項3】
前記燃焼制御手段は、立ち消え安全装置が立ち消えを検出する可能性があるとして、前記所定時間遅延させている待機状態で、当該立ち消え安全装置が立ち消えを検出したときには、少なくとも当該立ち消え安全装置の作動が完了するまで、前記他の調理用加熱バーナの点火の実行を遅延させる、
請求項1に記載の加熱調理装置。
【請求項4】
前記点消火指令手段は、操作部の点火操作による第1点火指令、及び、前記調理用加熱バーナの点火状態と消火状態とを繰返す間欠燃焼調理の実行による第2点火指令を指令するものであり、
前記燃焼制御手段は、前記複数の調理用加熱バーナの内の少なくとも1つの調理用加熱バーナに対応する前記立ち消え安全装置が立ち消えを検出している状態、または、立ち消えを検出する可能性がある状態で、前記少なくとも1つの前記調理用加熱バーナ以外の他の調理用加熱バーナへの前記第1点火指令及び前記第2点火指令の内の一方の点火指令があったときには、該一方の点火指令にかかわらず、前記他の調理用加熱バーナの点火を実行せず、前記他の調理用加熱バーナへの前記第1点火指令及び前記第2点火指令の内の他方の点火指令があったときには、該他方の点火指令の時点から所定時間遅延させて、前記他の調理用加熱バーナの点火を実行する、
請求項2に記載の加熱調理装置。
【請求項5】
前記点消火指令手段は、操作部の点火操作による第1点火指令、及び、前記調理用加熱バーナの点火状態と消火状態とを繰返す間欠燃焼調理の実行による第2点火指令を指令するものであり、
前記燃焼制御手段は、前記複数の調理用加熱バーナの内の少なくとも1つの調理用加熱バーナに対応する前記立ち消え安全装置が立ち消えを検出している状態、または、立ち消えを検出する可能性がある状態で、前記少なくとも1つの前記調理用加熱バーナ以外の他の調理用加熱バーナへの前記第1点火指令または前記第2点火指令があったときには、その点火指令があった時点から前記所定時間遅延させて、前記他の調理用加熱バーナの点火を実行する、
請求項1または3に記載の加熱調理装置。
【請求項6】
前記複数の調理用加熱バーナは、コンロバーナとグリルバーナとを含み、
前記立ち消え安全装置は、前記複数の調理用加熱バーナにそれぞれ配設されている複数の炎検出センサと、前記複数の調理用加熱バーナへのガス流路を開閉する安全弁と、前記炎検出センサの出力に基づいて、各調理用加熱バーナの立ち消え、及び、立ち消えの可能性を検出する立ち消え検出部とを備え、
前記立ち消え検出部の検出結果に基づいて、前記安全弁の開閉を制御する、
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の加熱調理装置。
【請求項7】
前記炎検出センサが、熱電対であり、
前記立ち消え検出部は、前記熱電対の起電力が所定値以下になったときに、立ち消えとして検出し、前記起電力の一定時間当りの低下の勾配が、所定の低下の勾配より大きくなったときに、立ち消えの可能性があるとして検出する、
請求項6に記載の加熱調理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱調理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスバーナを備える加熱調理装置では、不着火や立ち消えにより点火動作に失敗している場合には、バーナの内部やその周囲に燃料ガスが滞留するので、その直後に点火スイッチをオンにして点火動作すると、滞留している燃料ガスが爆発的に着火する爆発着火を起こす虞がある。
【0003】
このため、かかる場合には、直ちに点火動作せず、点火スイッチの操作から所定時間遅延させて点火動作を行うようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1では、グリルバーナについて、グリルバーナの点火動作が失敗している場合に、点火スイッチの操作から所定時間遅延させてグリルバーナの点火動作を行うようにしている。
【0006】
しかし、複数のバーナを備える加熱調理装置、例えば、グリルバーナとコンロバーナとを備える加熱調理装置において、複数の各バーナにそれぞれ配設された各点火プラグが、単一の点火器(イグナイタ)に電気的に接続されて点火器が共用されている場合には、例えば、グリルバーナで、点火動作に失敗し、グリルバーナの点火スイッチの操作から所定時間遅延させている待機期間中に、コンロバーナの点火スイッチが操作されると、点火器を共用しているために、グリルバーナにも火花放電が生じ、グリルバーナが爆発着火する虞がある。
【0007】
本発明は、上記のような点に鑑みてなされたものであって、バーナの点火動作時に、当該バーナ以外の他のバーナが爆発着火するのを防止することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明では次のように構成している。
【0009】
(1)本発明に係る加熱調理装置は、複数の調理用加熱バーナと、前記複数の調理用加熱バーナにそれぞれ配設されている複数の点火プラグと、前記複数の点火プラグが電気的に接続されている共用の点火器と、複数の調理用加熱バーナにそれぞれ対応する立ち消え安全装置と、前記複数の調理用加熱バーナの点消火を指令する点消火指令手段と、前記複数の調理用加熱バーナの燃焼を制御すると共に、前記点消火指令手段の指令及び前記立ち消え安全装置の状態に基づいて、前記複数の調理用加熱バーナの点消火を制御する燃焼制御手段とを備え、
前記燃焼制御手段は、前記複数の調理用加熱バーナの内の少なくとも1つの調理用加熱バーナに対応する前記立ち消え安全装置が立ち消えを検出している状態、または、立ち消えを検出する可能性がある状態で、前記少なくとも1つの前記調理用加熱バーナ以外の他の調理用加熱バーナへの点火指令があったときには、その点火指令があった時点から所定時間遅延させて、前記他の調理用加熱バーナの点火を実行する。
【0010】
複数の調理用加熱バーナに配設されている複数の点火プラグが、共用の点火器に電気的に接続されているので、複数の調理用加熱バーナのいずれかのバーナの点火動作を行うために、共用の点火器を駆動(ON)すると、他の調理用加熱バーナの点火プラグにも火花放電が生じる。
【0011】
本発明によると、複数の調理用加熱バーナの内の少なくとも1つの調理用加熱バーナに対応する立ち消え安全装置が立ち消えを検出している状態、または、立ち消えを検出する可能性がある状態で、この立ち消えを検出している、または、立ち消えを検出する可能性がある状態の調理用加熱バーナ以外の他の調理用加熱バーナへの点火指令があったときには、その点火指令があった時点から所定時間遅延させて、前記他の調理用加熱バーナの点火を実行するので、他の調理用加熱バーナの点火を実行する時点では、立ち消えが検出されている状態、または、立ち消えが検出される可能性がある状態の少なくとも1つの調理用加熱バーナの内部や周囲に滞留していた燃料ガスは、既に空気中に拡散して外部に排出されるなどしており、これによって、当該少なくとも1つの調理用加熱バーナが爆発着火するのを回避することができる。
【0012】
(2)本発明に係る加熱調理装置は、複数の調理用加熱バーナと、前記複数の調理用加熱バーナにそれぞれ配設されている複数の点火プラグと、前記複数の点火プラグが電気的に接続されている共用の点火器と、複数の調理用加熱バーナにそれぞれ対応する立ち消え安全装置と、前記複数の調理用加熱バーナの点消火を指令する点消火指令手段と、前記複数の調理用加熱バーナの燃焼を制御すると共に、前記点消火指令手段の指令及び前記立ち消え安全装置の状態に基づいて、複数の調理用加熱バーナの点消火を制御する燃焼制御手段とを備え、
前記燃焼制御手段は、前記複数の調理用加熱バーナの内の少なくとも1つの調理用加熱バーナに対応する前記立ち消え安全装置が立ち消えを検出している状態、または、立ち消えを検出する可能性がある状態で、前記少なくとも1つの前記調理用加熱バーナ以外の他の調理用加熱バーナへの点火指令があったときには、その点火指令にかかわらず、前記他の調理用加熱バーナの点火を実行しない。
【0013】
複数の調理用加熱バーナに配設されている複数の点火プラグが、共用の点火器に電気的に接続されているので、複数の調理用加熱バーナのいずれかのバーナの点火動作を行うために、共用の点火器を駆動すると、他の調理用加熱バーナの点火プラグにも火花放電が生じる。
【0014】
本発明によると、複数の調理用加熱バーナの内の少なくとも1つの調理用加熱バーナに対応する立ち消え安全装置が立ち消えを検出している状態、または、立ち消えを検出する可能性がある状態で、この立ち消えを検出している、または、立ち消えを検出する可能性がある状態の調理用加熱バーナ以外の他の調理用加熱バーナへの点火指令があったときには、その点火指令にかかわらず、前記他の調理用加熱バーナの点火を実行しないので、立ち消えが検出されている状態、または、立ち消えが検出される可能性がある状態の少なくとも1つの調理用加熱バーナの点火プラグに火花放電が生じることもなく、爆発着火が生じることもない。
【0015】
(3)上記(1)の好ましい実施態様では、前記燃焼制御手段は、立ち消え安全装置が立ち消えを検出する可能性があるとして、前記所定時間遅延させている待機状態で、当該立ち消え安全装置が立ち消えを検出したときには、少なくとも当該立ち消え安全装置の作動が完了するまで、前記他の調理用加熱バーナの点火の実行を遅延させる。
【0016】
この実施態様によると、立ち消え安全装置が立ち消えを検出する可能性があるとして、他の調理用加熱バーナへの点火指令の実行を所定時間遅延させている待機期間中に、「立ち消え検出の可能性あり」の状態から「立ち消え検出」の状態に移行したときには、立ち消え安全装置の作動が完了するまで、すなわち、少なくとも立ち消えが検出されている調理用加熱バーナへの燃料ガスの供給が遮断されるまでは、他の調理用加熱バーナの点火の実行が遅延されるので、他の調理用加熱バーナの点火を実行する時点では、立ち消えが検出された調理用加熱バーナへの燃料ガスの供給は既に遮断されており、これによって、立ち消えが検出された調理用加熱バーナの爆発着火の回避を効果的に行うことができる。
【0017】
(4)上記(2)の好ましい実施態様では、前記点消火指令手段は、操作部の点火操作による第1点火指令、及び、前記調理用加熱バーナの点火状態と消火状態とを繰返す間欠燃焼調理の実行による第2点火指令を指令するものであり、前記燃焼制御手段は、前記複数の調理用加熱バーナの内の少なくとも1つの調理用加熱バーナに対応する前記立ち消え安全装置が立ち消えを検出している状態、または、立ち消えを検出する可能性がある状態で、前記少なくとも1つの前記調理用加熱バーナ以外の他の調理用加熱バーナへの前記第1点火指令及び前記第2点火指令の内の一方の点火指令があったときには、該一方の点火指令にかかわらず、前記他の調理用加熱バーナの点火を実行せず、前記他の調理用加熱バーナへの前記第1点火指令及び前記第2点火指令の内の他方の点火指令があったときには、該他方の点火指令の時点から所定時間遅延させて、前記他の調理用加熱バーナの点火を実行する。
【0018】
点消火指令手段の点火指令には、使用者が操作部を点火操作することによる第1点火指令と、調理用加熱バーナの点火状態と消火状態とを繰返す間欠燃焼の調理の実行による内部的な第2点火指令とがある。
【0019】
この実施態様によると、他の調理用加熱バーナへ点火指令が、第1点火指令及び第2点火指令の内の一方の点火指令であるときには、該一方の点火指令にかかわらず、前記他の調理用加熱バーナの点火を実行しないので、立ち消えが検出されている状態、または、立ち消えが検出される可能性がある状態の少なくとも1つの調理用加熱バーナの爆発着火が生じることはない。また、他の調理用加熱バーナへ点火指令が、第1点火指令及び第2点火指令の内の他方の点火指令であるときには、該他方の点火指令の時点から所定時間遅延させて、前記他の調理用加熱バーナの点火を実行するので、立ち消えが検出されている状態、または、立ち消えが検出される可能性がある状態の少なくとも1つの調理用加熱バーナの爆発着火を回避することができる。
【0020】
(5)上記(1)または(3)の他の実施態様では、前記点消火指令手段は、操作部の点火操作による第1点火指令、及び、前記調理用加熱バーナの点火状態と消火状態とを繰返す間欠燃焼調理の実行による第2点火指令を指令するものであり、前記燃焼制御手段は、前記複数の調理用加熱バーナの内の少なくとも1つの調理用加熱バーナに対応する前記立ち消え安全装置が立ち消えを検出している状態、または、立ち消えを検出する可能性がある状態で、前記少なくとも1つの前記調理用加熱バーナ以外の他の調理用加熱バーナへの前記第1点火指令または前記第2点火指令があったときには、その点火指令があった時点から前記所定時間遅延させて、前記他の調理用加熱バーナの点火を実行する。
【0021】
この実施態様によると、他の調理用加熱バーナへ点火指令が、第1点火指令または第2点火指令のいずれの点火指令であっても、点火指令の時点から所定時間遅延させて、前記他の調理用加熱バーナの点火を実行するので、立ち消えが検出されている状態、または、立ち消えが検出される可能性がある状態の少なくとも1つの調理用加熱バーナの爆発着火を回避することができる。
【0022】
(6)本発明の更に他の実施態様では、前記複数の調理用加熱バーナは、コンロバーナとグリルバーナとを含み、前記立ち消え安全装置は、前記複数の調理用加熱バーナにそれぞれ配設されている複数の炎検出センサと、前記複数の調理用加熱バーナへのガス流路を開閉する安全弁と、前記炎検出センサの出力に基づいて、各調理用加熱バーナの立ち消え、及び、立ち消えの可能性を検出する立ち消え検出部とを備え、前記立ち消え検出部の検出結果に基づいて、前記安全弁の開閉を制御する。
【0023】
この実施態様によると、立ち消え安全装置によって、コンロバーナまたはグリルバーナの立ち消えが生じると、立ち消えが生じたバーナへのガス流路の安全弁を閉止して、未燃焼の燃料ガスの放出を防止することができる。
【0024】
(7)上記(6)の他の実施態様では、前記炎検出センサが、熱電対であり、前記立ち消え検出部は、前記熱電対の起電力が所定値以下になったときに、立ち消えとして検出し、前記起電力の一定時間当りの低下の勾配が、所定の低下の勾配より大きくなったときに、立ち消えの可能性があるとして検出する。
【0025】
この実施態様によると、立ち消えの検出のみならず、熱電対の起電力の一定時間当たりの低下の勾配に基づいて、立ち消えの可能性を検出することができる。
【発明の効果】
【0026】
このように、本発明によれば、複数の調理用加熱バーナの内の少なくとも1つの調理用加熱バーナに対応する立ち消え安全装置が立ち消えを検出している状態、または、立ち消えを検出する可能性がある状態で、この立ち消えを検出している、または、立ち消えを検出する可能性がある状態の調理用加熱バーナ以外の他の調理用加熱バーナへの点火指令があったときには、その点火指令があった時点から所定時間遅延させて、前記他の調理用加熱バーナの点火を実行するので、立ち消えが検出されている状態、または、立ち消えが検出される可能性がある状態の少なくとも1つの調理用加熱バーナの爆発着火を回避することができる。
【0027】
あるいは、複数の調理用加熱バーナの内の少なくとも1つの調理用加熱バーナに対応する立ち消え安全装置が立ち消えを検出している状態、または、立ち消えを検出する可能性がある状態で、この立ち消えを検出している、または、立ち消えを検出する可能性がある状態の調理用加熱バーナ以外の他の調理用加熱バーナへの点火指令があったときには、他の調理用加熱バーナへの点火指令にかかわらず、前記他の調理用加熱バーナの点火を実行しないので、立ち消えが検出されている状態、または、立ち消えが検出される可能性がある状態の少なくとも1つの調理用加熱バーナの点火プラグに火花放電が生じることもなく、爆発着火が生じることもない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は本発明の一実施形態に係るグリル付きガスコンロの斜視図である。
【
図2】
図2は
図1のグリル付きガスコンロの概略構成図である。
【
図3】
図3は点火を遅延させる制御を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は
図3に続く点火及び燃焼制御の一例を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は
図3に続く点火及び燃焼制御の他の例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は点火を牽制する制御を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は本発明の他の実施形態のガスコンロの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0030】
この実施形態では、加熱調理装置としてグリル付きガスコンロに適用して説明する。
【0031】
図1は、本発明の一実施形態に係るグリル付きガスコンロAの斜視図である。このグリル付きガスコンロAは、コンロ本体1の上部に、調理用加熱バーナとして最大火力の異なる3つのコンロバーナ2a~2cを備えている。更に、グリル付きガスコンロAは、コンロ本体1の左右中央には、調理用加熱バーナとしてグリルバーナ(図示せず)を内装すると共に、グリル扉3aを前方に備えるグリル皿(図示せず)を前面から出し入れ可能に装着したグリル部3を備えている。
【0032】
この実施形態のグリル付きガスコンロAは、図示しないキッチンキャビネットに落とし込み装着されるビルトインタイプである。
【0033】
コンロ本体1の上部は、天板4で覆われると共に、コンロ奥端の上面にグリル部3の燃焼排ガスを排出するためのグリル排気口5が設けられている。
【0034】
この実施形態では、天板4の手前側の左右に配設したコンロバーナ2a,2bの一方(左側)が、標準火力のコンロバーナ2aとなっており、他方(右側)が、高火力のコンロバーナ2bとなっている。また、奥側の中央部に配設したコンロバーナ2cが、小火力のコンロバーナ2cとなっている。各コンロバーナ2a~2cには、調理容器、例えば鍋の底部の温度を検出するサーミスタ等からなる温度センサ7a~7cがそれぞれ装備されていると共に、対応する五徳6a~6cがそれぞれ載置されている。
【0035】
コンロ本体1の前面の左右上部には、各コンロバーナ2a~2cの点火、消火、火力調節の操作をそれぞれ行うための3つの加熱状態調節部8a~8cが設けられている。この実施形態では、前面の左側に、標準火力のコンロバーナ2aの加熱状態調節部8aを配設し、前面の右側に、高火力のコンロバーナ2bの加熱状態調節部8b及び小火力のコンロバーナ2cの加熱状態調節部8cを配設している。
【0036】
また、前面の右側上部には、各部への通電の入切を行う自動復帰型で押し釦式の電源スイッチ9が設けられている。
【0037】
上記各加熱状態調節部8a~8cは、前後方向に移動自在な押釦により構成され、コンロバーナ2a~2cの使用に当たっては、押釦よりなる加熱状態調節部8a~8cを押圧して点火操作をすることで、後退していた加熱状態調節部8a~8cが前方に突出して器具栓がONとなり、流出するガス燃料に火花放電がなされてコンロバーナ2a~2cに点火される。
【0038】
この押釦よりなる加熱状態調節部8a~8cが前方に突出した状態で加熱状態調節部8a~8cを指で摘んで回動操作すると、コンロバーナ2a~2cの火力が、調節できるようになっている。一方、消火にあたっては、前方に突出している加熱状態調節部8a~8cを後方に押圧操作することで器具栓がOFFとなってコンロバーナ2a~2cが消火される。
【0039】
コンロ本体1の前面の左右の下部には、操作パネル10,11が収納自在に設けられている。右側の操作パネル11には、グリル部3に関する操作を行うためのグリル用調理設定入力部12が設けられ、この操作パネル11がグリル側操作パネルとなっている。また、左側の操作パネル10には、コンロバーナ2a~2cに対する調理設定の入力を行うためのガスコンロ用調理設定入力部13が設けられ、この操作パネル10がコンロ側操作パネルとなっている。
【0040】
このグリル用調理設定入力部12及びガスコンロ用調理設定入力部13では、グリル部及びコンロバーナ2a~2cによる自動調理の設定を行うことができる。この自動調理としては、バーナの火力を切替えて一定の温度範囲に温度制御する自動調理と、バーナの燃焼状態と消火状態とを繰り返す間欠燃焼による低温の自動調理とがある。
【0041】
図2は、
図1のグリル付きガスコンロAの概略構成図であり、
図1に対応する部分には、同一の参照符号を付す。
【0042】
各コンロバーナ2a~2cには、コンロバーナ2a~2cに点火するための点火プラグ14a~14cと、着火を検出する炎検出センサとしての熱電対15a~15cとが設けられている。また、各コンロバーナ2a~2cには、上記のように、調理容器19、例えば鍋の底部の温度を検出する温度センサ7a~7cが設けられている。
【0043】
グリル部3にも同様に、上部及び下部のグリルバーナ16a,16bに点火するための点火プラグ17a,17bと、各グリルバーナ16a,16bの着火を検出する炎検出センサとしての熱電対18a,18bとが設けられる。また、グリル皿20の底部の温度を検出するサーミスタ等からなる温度センサ21が設けられている。
【0044】
この実施形態では、各コンロバーナ2a~2c及び各グリルバーナ16a,16bの点火プラグ14a~14c,17a,17bは、点火器としてのイグナイタ22に電気的に接続されており、イグナイタ22が、各コンロバーナ2a~2c及び各グリルバーナ16a,16bで共用されている。
【0045】
このように全てのバーナ2a~2c,16a,16bの点火プラグ14a~14c,17a,17bで、イグナイタ22を共用しているので、このイグナイタ22を駆動(ON)することで、全てのバーナ2a~2c,16a,16bの点火プラグ14a~14c,17a,17bで火花放電が発生する。
【0046】
各コンロバーナ2a~2c及びグリルバーナ16a,16bには、都市ガス等のガス燃料を供給する燃料供給路23からそれぞれ分岐する分岐供給路24~27が接続されている。
【0047】
燃料供給路23には、元電磁弁28が設けられる。各分岐供給路24~27には、ガス燃料の供給量の調節を行うためステッピングモータにより駆動されて弁体の開度の微調整が可能なモーター弁からなる流量制御弁29~32と、前記弁体の開度を検出する回転角度センサ33~36が設けられている。各流量制御弁29~32は、各バーナ2a~2c,16a,16bが立ち消えしたときに、ガス燃料の供給路を遮断する安全弁としての機能を有している。
【0048】
グリルバーナ16a,16b用の分岐供給路27には、ガス燃料の供給圧力を設定圧に調整するガバナ37が設けられている。
【0049】
マイクロコンピュータからなる制御部40には、各バーナ2a~2c,16a,16bの着火を検出する炎検出センサとしての熱電対15a~15c,18a,18b及び各温度センサ7a~7c,21の出力が与えられると共に、流量制御弁29~32の各回転角度センサ33~36の出力が与えられる。
【0050】
また、制御部40には、上記の加熱状態調節部8a~8c、グリル用調理設定入力部12、及び、ガスコンロ用調理設定入力部13等からなる手動操作部42からの操作入力が与えられる。
【0051】
制御部40は、手動操作部42からの操作入力、熱電対15a~15c,18a,18b、各温度センサ7a~7c,21、及び、各回転角度センサ33~36の出力に基づいて、各バーナ2a~2c,16a,16bの点消火及び燃焼を制御する燃焼制御手段としての機能を有している。
【0052】
また、制御部40は、使用者による点消火の操作に応じてバーナ2a~2c,16a,16bに対する点消火を指令すると共に、低温の自動調理の実行中の間欠燃焼における点消火を指令する点消火指令手段としての機能を有している。
【0053】
制御部40は、基本的には、点火が指令されると、指令されたバーナ2a~2c,16a,16bに対する燃料ガスの供給を行い、対応する熱電対15a~15c,18a,18bによって着火状態であることが検出されるまで、点火動作を行うように、イグナイタ22、元電磁弁28、及び、対応する流量制御弁29~32を制御する点火処理を実行する。また、制御部40は、消火が指令されると、指令されたバーナ2a~2c,16a,16bに対する燃料ガスの供給を停止するように構成されている。
【0054】
バーナ2a~2c,16a,16bの点火指令には、使用者が、加熱状態調節部8a~8c又はグリル用調理設定入力部12を点火操作することによる点火指令である第1点火指令と、バーナ2a~2c,16a,16bの燃焼状態と消火状態とを繰り返す間欠燃焼の低温の自動調理の実行による再点火の指令である第2点火指令とがある。また、消火指令には、使用者が、加熱状態調節部8a~8c又はグリル用調理設定入力部12を消火操作することによる消火指令と、自動調理の設定調理時間の経過による消火指令と、バーナ2a~2c,16a,16bの燃焼状態と消火状態とを繰り返す間欠燃焼の低温の自動調理の実行による消火指令とがある。
【0055】
制御部40は、加熱状態調節部8a~8c及びグリル用調理設定入力部12における手動による点火操作によって、対応するバーナに燃料ガスを供給し、共用のイグナイタ22をONして、点火プラグ14a~14c,17a,17bに火花放電を発生させて、対応するバーナに点火する。また、上記の低温の自動調理では、バーナの燃焼状態と消火状態とを繰り返す間欠燃焼を行うので、この間欠燃焼における内部的な再点火の指令によって、対応するバーナに燃料ガスを供給し、共用のイグナイタ22をONして、点火プラグ14a~14c,17a,17bに火花放電を発生させて、対応するバーナを再点火する。
【0056】
また、制御部40は、各熱電対15a~15c,18a,18b、及び、各流量制御弁29~32と共に、各バーナ2a~2c,16a,16bの立ち消えを検出して、燃料ガスの各供給路24~27を遮断する立ち消え安全装置を構成する。
【0057】
すなわち、制御部40は、燃焼状態のバーナ2a~2c,16a,16bに対応する熱電対15a~15c,18a,18bの起電力を監視し、起電力が、所定値以下になったときに、立ち消えとして検出し、対応する流量制御弁29~32を閉止して燃料ガスの供給を遮断する。
【0058】
また、制御部40は、燃焼状態のバーナ2a~2c,16a,16bに対応する熱電対15a~15c,18a,18bの起電力の一定時間当たりの低下の勾配が、所定の勾配より大きくなったときに、立ち消えの可能性があるとして検出するものであり、立ち消えを検出すると共に、立ち消えの可能性を検出する立ち消え検出部としての機能を備えている。
【0059】
制御部40は、後述するエラー状態等を、図示しない報知部を制御して電子音で報知すると共に、加熱状態調節部8a~8cの周囲の燃焼ランプを点滅させて報知する。
【0060】
この実施形態では、バーナの点火動作時に、当該バーナ以外の他のバーナが爆発着火するのを防止するために、次のようにしている。
【0061】
すなわち、制御部40は、バーナ2a~2c,16a,16b内の少なくとも1つのバーナの立ち消えを検出している状態、または、立ち消えを検出する可能性がある状態で、この立ち消えを検出している、または、立ち消えを検出する可能性がある状態の少なくとも1つの調理用加熱バーナ以外の他のバーナへの点火指令があったときには、その点火指令があった時点から所定時間遅延させて、前記他のバーナの点火を実行するようにしている。
【0062】
次に、この点火を遅延させる制御、及び、それに続く点火処理等について、
図3及び
図4のフローチャートに基づいて説明する。
【0063】
この
図3及び
図4では、手動の調理または間欠燃焼以外の自動調理、すなわち、火力を切替えて一定の温度範囲に温度制御する自動調理の例を示している。
【0064】
先ず、
図3に示すように、使用者の点火操作による点火指令、例えば、標準火力のコンロバーナ2aの点火指令があると(ステップS1)、点火指令のあったバーナ2a以外の他のバーナ2b,2c,16a,16bの燃焼制御を行っているか否か、すなわち、他のバーナ2b,2c,16a,16bの燃焼制御中であるか否かを判断し(ステップS2)、他のバーナの燃焼制御中でないときには、
図4の点火動作の処理(ステップS7)に移行する。
【0065】
ステップS2において、他のバーナの燃焼制御中であるときには、燃焼制御中の他のバーナの内の少なくとも1つのバーナの立ち消え安全装置が作動中であるか否か、すなわち、制御部40が、前記少なくとも1つのバーナの立ち消えを検出して、対応する流量制御弁を閉止して燃料ガスの供給を遮断するための作動中であるか否かを判断する(ステップS3)。
【0066】
ここで、燃焼制御中の他のバーナの内の少なくとも1つのバーナを、例えば、高火力のコンロバーナ2bとすると、ステップS3では、少なくとも1つのバーナ2bの立ち消え安全装置が作動中であるか否かを判断する(ステップS3)。
【0067】
立ち消え安全装置が作動中であるときには、点火指令のあった標準火力のコンロバーナ2aの点火動作を第1所定時間、例えば、10秒間遅延させると共に、制御部40は、例えば、「ピー、ピー、ピー」という電子音や燃焼ランプを点滅させて、点火動作を遅延させている旨の遅延報知を行ってステップS2に戻る(ステップS4)。第1所定時間は、立ち消え安全装置が立ち消えを検出してから対応するバーナへの燃料ガスの供給を遮断するまで時間以上であるのが好ましい。
【0068】
ステップS3において、燃焼制御中の他のバーナの内の少なくとも1つのバーナ2bの立ち消え安全装置が作動中でないと判断したときには、前記少なくとも1つのバーナ2bの立ち消えを検出する可能性があるか否か、具体的には、前記少なくとも1つのバーナ2bの熱電対15bの起電力の一定時間当りの低下の勾配が所定の勾配よりも大きいか否かを判断し(ステップS5)、所定の勾配より大きくないときには、燃焼制御中の他のバーナの内の少なくとも1つのバーナ2bの立ち消え安全装置は作動しておらず、また、立ち消えを検出する可能性はないとして、
図4の点火動作の処理(ステップS7)に移行する。
【0069】
ステップS5において、燃焼制御中の他のバーナの内の少なくとも1つのバーナ2bの熱電対15bの起電力の一定時間当りの低下の勾配が所定の勾配よりも大きいと判断したときには、立ち消えを検出する可能性があるとして、点火動作を第2所定時間、例えば、3秒間遅延させると共に、例えば、「ピー、ピー、ピー」という電子音や燃焼ランプを点滅させて、点火動作を遅延させている旨の遅延報知を行ってステップS2に戻る(ステップS6)。第2所定時間を、ステップS4の第1所定時間に比べて短くしているのは、立ち消えを検出する可能性があるので、その後、立ち消えが検出されることで、立ち消え安全装置が作動を開始して、立ち消え安全装置の作動中に移行するからである。
【0070】
このように、使用者の点火操作による点火指令があった場合に、点火指令のあったバーナ、例えば、標準火力のコンロバーナ2a以外の燃焼制御中の他のバーナの内の少なくとも1つのバーナ、例えば、高火力のコンロバーナ2bの立ち消え安全装置が作動中であるとき、あるいは、立ち消えを検出する可能性があるときには、点火指令のあったバーナ2aの点火動作を所定時間遅延させるので、点火指令のあったバーナ2aの点火を実行する時点では、前記少なくとも1つのバーナ2bの内部や周囲に滞留していた燃料ガスは、既に空気中に拡散し、前記少なくとも1つのバーナ2bの爆発着火を回避することができる。
【0071】
図4は、
図3に続く点火及び燃焼制御のフローチャートである。
【0072】
この
図4に示すように、先ず、点火動作を行う。具体的には、元電磁弁28が閉じているときには、元電磁弁28を開き、点火指令のあったバーナ、例えば、標準火力のコンロバーナ2aの流量制御弁29を点火火力位置にしてイグナイタ22をONして点火し(ステップS7)、ステップS8に移る。
【0073】
このステップS7において、イグナイタ22をONすると、全てのバーナ2a~2c,16a,16bの点火プラグ14a~14c,17a,17bで火花放電が発生するが、
図3に示される上記遅延時間の経過によって、燃焼制御中であって、立ち消え安全装置が作動中、あるいは、立ち消えを検出する可能性がある少なくとも1つのバーナ、例えば、高火力のコンロバーナ2bでは、その内部や周囲に滞留していた燃料ガスは、既に空気中に拡散しており、上記のように高火力のコンロバーナ2bの爆発着火を回避することができる。
【0074】
ステップS8では、点火したバーナ2aの熱電対15aの起電力Vが、所定の起電力Vk以上であるか否か、すなわち、着火を検出したか否かを判断し、着火を検出していないときには、ステップS16に移り、着火が検出されない期間が一定期間、例えば、10秒以上になったか否か、すなわち、タイムアップしたか否かを判断し、タイムアップしていないときには、ステップS8に戻り、タイムアップしたときには、不着火エラーであるとして、例えば、「ピー、ピー、ピー」という電子音や燃焼ランプを点滅させて報知し、ステップS14に移る(ステップS17)。
【0075】
ステップS8において、着火を検出したときには、イグナイタ22をOFFし(ステップS9)、着火したバーナ2aの熱電対15aの起電力Vが、所定の起電力Vk未満になったか否か、すなわち、立ち消えしたか否かを判断し(ステップS10)、立ち消えしたときには、ステップS15に移り、途中消火エラーであるとして、例えば、「ピー、ピー、ピー」という電子音や燃焼ランプを点滅させて報知し、ステップS14に移る。
【0076】
ステップS10において、着火したバーナ2aの熱電対15aの起電力Vが、所定の起電力Vk未満でない、すなわち、立ち消えしていないときには、使用者の手動操作または自動調理による火力切替指令があったか否かを判断し(ステップS11)、火力切替指令がないときには、ステップS13に移る。
【0077】
ステップS11で、火力切替指令があったときには、指令された火力となるように、対応するモーター弁である流量制御弁29の開度を調整し(ステップS12)、ステップS13に移る。
【0078】
ステップS13では、使用者の手動操作または自動調理の設定調理時間の経過による消火指令があったか否かを判断し、消火指令がなかったときには、ステップS10に戻り、消火指令があったときには、消火動作、具体的には、イグナイタ22をOFFしていないときには、イグナイタ22をOFFし、他のバーナの燃焼制御を行っていないときには、元電磁弁28を閉じると共に、流量制御弁29を閉止位置にして終了する(ステップS14)。
【0079】
次に、バーナの燃焼状態と消火状態とを繰返す間欠燃焼の低温の自動調理の場合について、
図5のフローチャートに基づいて説明する。
【0080】
この
図5は、上記の
図3のフローチャートの引き続く点火及び燃焼制御の処理を示している。なお、
図3のステップS1の点火指令には、上記の使用者の点火操作による点火指令に加えて間欠燃焼の自動調理の実行における再点火指令も含まれる。
【0081】
すなわち、間欠燃焼の自動調理の実行による内部的な再点火の指令があった場合にも、上記
図3に示されるように、点火指令のあったバーナ以外の他のバーナが燃焼制御中であって、他のバーナの内の少なくとも1つのバーナの立ち消え安全装置が作動中であるとき、あるいは、立ち消えを検出する可能性があるときには、点火指令のあったバーナの点火動作を所定時間遅延させるので、点火指令のあったバーナ以外の前記少なくとも1つのバーナの爆発着火を回避することができる。
【0082】
図3に引き続く
図5では、先ず、点火動作を行う。具体的には、元電磁弁28が閉じているときには、元電磁弁28を開き、点火指令のあったバーナ、例えば、標準火力のコンロバーナ2aの点火指令があったとすると、標準火力のコンロバーナ2aの流量制御弁29を点火火力位置にしてイグナイタ22をONして点火し(ステップS100)、ステップS101に移る。
【0083】
このステップS100において、イグナイタ22をONすると、全てのバーナ2a~2c,16a,16bの点火プラグ14a~14c,17a,17bで火花放電が発生するが、
図3に示される上記遅延時間の経過によって、燃焼制御中であって、立ち消え安全装置が作動中、あるいは、立ち消えを検出する可能性があるバーナ、例えば、高火力のコンロバーナ2bでは、その内部や周囲に滞留していた燃料ガスは、既に空気中に拡散しており、上記のように高火力のコンロバーナ2bの爆発着火を回避することができる。
【0084】
ステップS101では、点火したバーナ2aの熱電対15aの起電力Vが、所定の起電力Vk以上であるか否か、すなわち、着火を検出したか否かを判断し、着火を検出していないときには、ステップS118に移り、着火が検出されない期間が一定期間以上になったか否か、すなわち、タイムアップしたか否かを判断し、タイムアップしていないときには、ステップS101に戻り、タイムアップしたときには、不着火エラーであるとして、例えば、「ピー、ピー、ピー」という電子音や燃焼ランプを点滅させて報知し、ステップS110に移る(ステップS119)。
【0085】
ステップS101において、着火を検出したときには、イグナイタ22をOFFし(ステップS102)、着火したバーナ2aの熱電対15aの起電力Vが、所定の起電力Vk未満になったか否か、すなわち、立ち消えしたか否かを判断し(ステップS103)、立ち消えしたときには、ステップS120に移り、途中消火エラーであるとして、例えば、「ピー、ピー、ピー」という電子音や燃焼ランプを点滅させて報知し、ステップS110に移る。
【0086】
ステップS103において、着火したバーナ2aの熱電対15aの起電力Vが、所定の起電力Vk未満でない、すなわち、立ち消えしていないときには、着火したバーナ2aに対応する温度センサ7aによる検出温度Tが、低温調理の設定温度Ts、例えば、60℃以上であるか否かを判断し(ステップS104)、設定温度Ts以上でないときには、ステップS106に移り、設定温度Ts以上であるときには、対応するモーター弁である流量制御弁29を閉止して、燃料ガスの供給を停止して消火し、ステップS106に移る(ステップS105)。
【0087】
ステップS106では、温度センサ7aによる検出温度Tが、設定温度Tsより一定温度、例えば、2℃低い温度である58℃未満であるか否かを判断し、58℃未満でないときには、ステップS108に移り、58℃未満であるときには、バーナ2aが燃焼中であるか否かを判断し(ステップS107)、燃焼中であるときには、ステップS108に移り、燃焼中でないときには、ステップS111に移る。
【0088】
ステップS108では、低温調理の調理時間tが、設定調理時間ts、例えば、180分以上になったか否かを判断し、設定調理時間tsになったときには、ステップS110に移行して消火動作、具体的には、イグナイタ22をOFFしていないときには、イグナイタ22をOFFし、他のバーナの燃焼制御を行っていないときには、元電磁弁28を閉じると共に、流量制御弁29を閉止位置にして終了する。
【0089】
ステップS108で、設定調理時間tsになっていないときには、消火指令があったか否かを判断し(ステップS109)、消火指令があったときには、ステップS110に移行し、消火指令がなかったときには、ステップS103に戻る。
【0090】
また、ステップS107でバーナ2aが燃焼中でないと判断されたときには、ステップS111に移行するが、このとき、バーナ2aは消火しており、検出温度Tが、設定温度Ts58℃未満であるので、このステップS111では、バーナ2aに再点火の点火指令があったとして、上記
図3に示される点火遅延制御処理を実行する。
【0091】
この点火遅延制御処理の後、ステップS112では、バーナ2aの点火動作に移行し、元電磁弁28が閉じているときには、元電磁弁28を開き、バーナ2aに対応する流量制御弁29を点火火力位置にしてイグナイタ22をONして点火し、ステップS113に移る。
【0092】
ステップS113では、点火したバーナ2aの熱電対15aの起電力Vが、所定の起電力Vk以上であるか否か、すなわち、着火を検出したか否かを判断し、着火を検出していないときには、ステップS116に移り、着火が検出されない期間が一定期間以上になったか否か、すなわち、タイムアップしたか否かを判断し、タイムアップしていないときには、ステップS113に戻り、タイムアップしたときには、不着火エラーであるとして、例えば、「ピー、ピー、ピー」という電子音や燃焼ランプを点滅させて報知し、ステップS110に移り(ステップS117)、消火動作を行って終了する。
【0093】
ステップS113において、着火を検出したときには、イグナイタ22をOFFし(ステップS114)、モーター弁である流量制御弁29を調整して火力を弱にし(ステップS115)、ステップS103に戻る。
【0094】
このようにバーナの燃焼状態と消火状態とを繰返す間欠燃焼の低温の自動調理においても、低温の自動調理の実行による点火指令があった場合に、点火指令のあったバーナ、例えば、標準火力のコンロバーナ2a以外の他のバーナが燃焼制御中であって、他のバーナの内の少なくとも1つのバーナ、例えば、高火力のコンロバーナ2bの立ち消え安全装置が作動中であるとき、あるいは、立ち消えを検出する可能性があるときには、点火指令のあったバーナ2aの点火動作を所定時間遅延させるので、点火指令のあったバーナ2aの点火を実行する時点では、前記少なくとも1つのバーナ2bの内部や周囲に滞留していた燃料ガスは、空気中に拡散しており、バーナ2bの爆発着火を回避することができる。
【0095】
上記実施形態では、制御部40は、バーナ2a~2c,16a,16b内の少なくとも1つのバーナの立ち消えを検出している状態、または、立ち消えを検出する可能性がある状態で、前記少なくとも1つのバーナ以外の他のバーナへの点火指令があったときには、その点火指令があった時点から所定時間遅延させて、前記他のバーナの点火を実行するようにしたが、本発明の他の実施形態として、バーナ2a~2c,16a,16b内の少なくとも1つのバーナの立ち消えを検出している状態、または、立ち消えを検出する可能性がある状態で、前記少なくとも1つのバーナ以外の他のバーナへの点火指令があったときには、その点火指令にかかわらず、他のバーナへの点火を実行しないようにしてもよい。
【0096】
図6は、この他の実施形態の点火処理を示すフローチャートであって、上記
図3に対応するフローチャートである。
【0097】
この
図6では、バーナ2a~2c,16a,16b内の少なくとも1つのバーナの立ち消えを検出している状態、または、立ち消えを検出する可能性がある状態で、前記少なくとも1つのバーナ以外の他のバーナへの点火指令が、使用者の点火操作による第1点火指令であるときには、その第1点火指令にかかわらず、他のバーナへの点火を実行しない点火牽制処理を行い、他のバーナへの点火指令が、間欠燃焼の低温調理の実行による第2点火指令であるときには、
その第2点火指令があった時点から所定時間遅延させて、前記他のバーナの点火を実行する点火遅延処理を行うようにしている。
【0098】
図6に示されるように、先ず、点火指令があると(ステップS200)、その点火指令が使用者の点火操作による点火指令、すなわち、第1点火指令であるか否かを判断し(ステップS201)、点火指令が、使用者の操作による第1点火指令であるときには、ステップS202に移行し、使用者の操作による点火指令でないとき、すなわち、間欠燃焼による低温の自動調理の実行における再点火指令、すなわち、第2点火指令であるときには、ステップS207に移行する。
【0099】
ステップS202では、点火指令のあったバーナ以外の他のバーナの燃焼制御を行っているか否かを判断し、他のバーナの燃焼制御を行っていないときには、例えば、上記
図5に示される点火及び燃焼制御の処理に移行する。
【0100】
ステップS202において、他のバーナの燃焼制御を行っているときには、燃焼制御中の他のバーナの内の少なくとも1つのバーナの立ち消え安全装置が作動中であるか否かを判断し(ステップS203)、立ち消え安全装置が作動中であるときには、第1点火指令にかかわらず点火処理を実行しない点火牽制処理を行って、例えば、「ピー、ピー、ピー」という電子音や燃焼ランプを点滅させて点火牽制処理である旨を報知し、終了する(ステップS204)。
【0101】
ステップS203において、他のバーナの内の少なくとも1つのバーナの立ち消え安全装置が作動中でないと判断したときには、前記少なくとも1つのバーナの立ち消えを検出する可能性があるか否か、具体的には、前記少なくとも1つのバーナの熱電対の起電力の一定時間当りの低下の勾配が所定の勾配よりも大きいか否かを判断し(ステップS205)、所定の勾配より大きくないときには、前記少なくとも1つのバーナの立ち消え安全装置は作動しておらず、また、立ち消えを検出する可能性がないとして、例えば、上記
図5に示される点火及び燃焼制御の処理に移行する。
【0102】
ステップS205において、前記少なくとも1つのバーナの熱電対の起電力の一定時間当りの低下の勾配が所定の勾配よりも大きいと判断したときには、立ち消えを検出する可能性があるとして、第1点火指令にかかわらず、点火を実行しない点火牽制処理を行って、例えば、「ピー、ピー、ピー」という電子音や燃焼ランプを点滅させて点火牽制処理である旨を報知し、終了する(ステップS206)。
【0103】
ステップS207では、点火指令が、間欠燃焼の低温の自動調理の実行による第2点火指令であって、その第2点火指令のあったバーナ以外の他のバーナの燃焼制御を行っているか否かを判断し、他のバーナの燃焼制御を行っていないときには、例えば、上記
図5の点火及び燃焼制御の処理に移行し、他のバーナの燃焼制御を行っているときには、ステップS208に移る。
【0104】
ステップS208では、燃焼制御中の他のバーナの内の少なくとも1つのバーナの立ち消え安全装置が作動中であるか否かを判断し、立ち消え安全装置が作動中であるときには、点火動作を第1所定時間、例えば、10秒間遅延させると共に、例えば、「ピー、ピー、ピー」という電子音や燃焼ランプを点滅させて、点火動作を遅延させている旨の遅延報知を行ってステップS207に戻る(ステップS209)。
【0105】
ステップS208において、燃焼制御中の他のバーナの内の少なくとも1つのバーナの立ち消え安全装置が作動中でないと判断したときには、前記少なくとも1つのバーナの立ち消えを検出する可能性があるか否か、具体的には、前記少なくとも1つのバーナの熱電対の起電力の一定時間当りの低下の勾配が所定の勾配よりも大きいか否かを判断し(ステップS210)、所定の勾配より大きくないときには、前記少なくとも1つのバーナの立ち消え安全装置は作動しておらず、また、立ち消えを検出する可能性がないとして、例えば、
図5の点火及び燃焼制御の処理に移行する。
【0106】
ステップS210において、燃焼制御中の他のバーナの内の少なくとも1つのバーナの熱電対の起電力の一定時間当りの低下の勾配が所定の勾配よりも大きいと判断したときには、立ち消えを検出する可能性があるとして、点火動作を第2所定時間、例えば、3秒間遅延させると共に、例えば、「ピー、ピー、ピー」という電子音や燃焼ランプを点滅させて、点火動作を遅延させている旨の遅延報知を行ってステップS207に戻る(ステップS211)。
【0107】
このように本実施形態では、使用者の点火操作による第1点火指令があった場合に、その第1点火指令のあったバーナ以外の他のバーナが燃焼制御中であって、他のバーナの内の少なくとも1つの立ち消え安全装置が作動中であるとき、あるいは、立ち消えを検出する可能性があるときには、第1点火指令にかかわらず、第1点火指令のあったバーナの点火を実行しないので、前記少なくとも1つのバーナの爆発着火が生じることはない。
【0108】
また、間欠燃焼の低温の自動調理の実行による第2点火指令があった場合には、その第2点火指令のあったバーナ以外の他のバーナが燃焼制御中であって、他のバーナの内の少なくとも1つのバーナの立ち消え安全装置が作動中であるとき、あるいは、立ち消えを検出する可能性があるときには、第2点火指令のあったバーナの点火動作を所定時間遅延させるので、その間に、前記少なくとも1つバーナの内部や周囲に滞留していた燃料ガスは、空気中に拡散し、第2点火指令のあったバーナ以外の前記少なくとも1つのバーナの爆発着火を回避することができる。
【0109】
上記
図6の実施形態では、使用者の操作による第1点火指令の場合には、第1点火指令にかかわらず、点火を実行しない点火牽制処理を行い、間欠燃焼の低温の自動調理の実行による第2点火指令の場合には、点火動作を遅延させる点火遅延処理を行ったが、本発明の他の実施形態として、使用者の操作による第1点火指令の場合には、点火動作を遅延させる点火遅延処理を行い、間欠燃焼の低温の自動調理の実行による第2点火指令の場合に、点火を実行しない点火牽制処理を行ってもよい。
【0110】
また、本発明の他の実施形態として、点火指令が、使用者の操作による第1点火指令、及び、間欠燃焼の低温の自動調理の実行による第2点火指令のいずれの点火指令の場合も、第1,第2点火指令にかかわらず、点火を実行しない点火牽制処理を行うようにしてもよい。
【0111】
また、別の実施形態として、第1点火指令、及び、第2点火指令の中で、特定のバーナに関する点火指令についてのみ、上記点火遅延処理を実行し、他のバーナに関する点火指令については、上記点火牽制処理を実行するようにしてもよい。具体的には、上記実施形態における奥側の中央部に配設した小火力のコンロバーナ2cや、グリル部3のグリルバーナ16a,16bに関する点火指令についてのみ、上記点火遅延処理を実行し、他のバーナに関する点火指令については、上記点火牽制処理を実行するようにしてもよい。
【0112】
上記各実施形態では、グリル付きガスコンロAに適用して説明したが、本発明は、グリル付きガスコンロAに限らず、例えば、
図7に示すようにグリル部3を備えていないガスコンロに適用してもよい。
【0113】
すなわち、制御部40は、コンロバーナ2a~2cの内の少なくとも1つのコンロバーナの立ち消えを検出している状態、または、立ち消えを検出する可能性がある状態で、前記少なくとも1つのコンロバーナ以外の他のコンロバーナへの点火指令があったときには、その点火指令があった時点から所定時間遅延させて、前記他のコンロバーナの点火を実行する、あるいは、その点火指令にかかわらず、他のコンロバーナへの点火を実行しないようにしてもよい。
【0114】
この実施形態でもコンロバーナ2a~2cの燃焼状態と消火状態とを繰り返す間欠燃焼による低温の自動調理が可能である。
【0115】
その他の構成及び効果は、上記実施形態と同様である。
【0116】
上記の各実施形態では、全てのバーナの点火プラグで、点火器としてのイグナイタを共用したが、イグナイタを共用しない点火プラグが配設されたバーナ、すなわち、別のイグナイタに電気的に接続された点火プラグが配設されたバーナを備える構成であってもよい。
【0117】
上記の各実施形態では、点火状態と消火状態を繰り返す間欠燃焼調理として、低温の自動調理の場合について説明したが、これに限らず、例えば、手動操作部からの入力後、所定時間経過した後に自動的に点消火動作が行われて炊飯調理が実行される、炊飯調理のタイマー予約といった場合であってもよい。
【符号の説明】
【0118】
2a~2c コンロバーナ
3 グリル部
7a~7c,21 温度センサ
8a~8c 加熱状態調節部
12 グリル用調理設定入力部
13 ガスコンロ用調理設定入力部
14a~14c,17a,17b 点火プラグ
15a~15c,18a,18b 熱電対
16a,16b グリルバーナ
22 イグナイタ(点火器)
28 元電磁弁
29~32 流量制御弁
40 制御部(点消火指令手段、燃焼制御手段)
A グリル付きガスコンロ(加熱調理装置)