(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-21
(45)【発行日】2023-03-02
(54)【発明の名称】原子力プラント
(51)【国際特許分類】
G21D 1/00 20060101AFI20230222BHJP
G21C 15/18 20060101ALI20230222BHJP
【FI】
G21D1/00 P
G21D1/00 R
G21C15/18 S
(21)【出願番号】P 2019189882
(22)【出願日】2019-10-17
【審査請求日】2022-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 嘉晃
(72)【発明者】
【氏名】平子 靜
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-145398(JP,A)
【文献】特開2014-232059(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21D 1/00
G21C 15/18
G21C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉及び前記原子炉を収容する原子炉建屋を備えた原子力プラントであって、
前記原子炉建屋内に、前記原子炉用の補機を冷却するための原子炉補機冷却系設備、及び、前記原子炉補機冷却系設備の冷却水を冷却する海水を取り込む海水冷却系設備が、配置
され、
前記原子炉建屋は、前記原子炉を内包する原子炉棟を備え、前記原子炉棟が複数の系統区分に区分けされており、複数の前記系統区分に区分けされた前記原子炉棟の各前記系統区分に対して、前記原子炉補機冷却系設備及び前記海水冷却系設備が、それぞれ配置されている
原子力プラント。
【請求項2】
前記原子炉棟が3つの前記系統区分に区分けされ、前記原子炉棟の各前記系統区分に隣接して、それぞれの系統区分に対する前記原子炉補機冷却系設備及び前記海水冷却系設備が配置されている、
請求項1に記載の原子力プラント。
【請求項3】
3つの前記系統区分に対する前記原子炉補機冷却系設備及び前記海水冷却系設備が、前記原子炉建屋の外周の3つの辺のそれぞれの辺に沿って配置されている、
請求項2に記載の原子力プラント。
【請求項4】
各前記系統区分の前記原子炉補機冷却系設備及び前記海水冷却系設備が、耐震壁で囲まれており、前記耐震壁によって別の系統区分の前記原子炉補機冷却系設備及び前記海水冷却系設備とは分離されている、
請求項1に記載の原子力プラント。
【請求項5】
前記原子炉建屋に設置された、各前記系統区分の前記海水冷却系設備のポンプの配置に合わせて設けられた、一体の取水路、又は、前記系統区分ごとに分離した取水路、を有する
請求項1に記載の原子力プラント。
【請求項6】
前記原子炉建屋
の前記原子炉棟の各前記系統区分に設置された、前記海水冷却系設備のポンプが、入れ替えが可能な構成とされた請求項1に記載の原子力プラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉及び原子炉建屋を備えた原子力プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所の立地に関して、原子炉建屋や安全系設備を収納する建屋は、安定した地盤への設置と発電所敷地内にある断層を避けた位置に設置する必要がある。
さらに、日本国内の発電所は、最終的な除熱に海水を利用することから、除熱のための海水冷却設備を、できるだけ海岸線に近い位置に配置する必要がある。
【0003】
従来のBWR(沸騰水型原子炉)のプラントでは、原子炉系設備(建屋)と海水冷却設備が、建屋形状や設備配置の制約などから、分散配置、即ち、それぞれ別の建屋に配置されている(例えば、特許文献1を参照。)。
これらの設備の建屋は、それぞれ最も耐震性のあるもの(Sクラス)として設計する必要があるため、建屋の設計及び建設のコストが大きくなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
原子炉補機冷却系(RCW;Reactor Building Closed Cooling Water System)及び海水冷却系(RSW;Reactor Building Closed Cooling Sea Water System)の設備は、通常運転時及び緊急時に原子炉等から発生する熱を、最終的な逃し場である海へ移送する。
これらRCW及びRSWの各設備は、安全上重要な系統であるため、地震を含めた最も苛酷と考えられる自然事象に対して耐性を求められるとともに、機能を達成できるように多重性を備えた設計とする必要がある。
【0006】
従来の原子力発電所では、保守点検性の観点から、RCWとRSWの各設備のうちの特にRSW設備を、原子炉建屋とは別の建屋に設置していた。
【0007】
しかし、近年の地震動の増大や、火災・溢水による区画分離の厳格化に伴う系統分離の強化の要求から、原子炉建屋以外の建屋の耐震性強化範囲及び系統の分離強化範囲が広くなっている。これに伴い、扉や配管・ケーブル開口の火災や溢水への対策範囲が拡大し、プラントのコスト増大の要因となっている。
【0008】
本発明の目的は、設備の強化を図り、かつ、設備の強化に伴うコストの増大の抑制を実現する原子力プラントを提供することである。
【0009】
また、本発明の上記の目的及びその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面によって、明らかにする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の原子力プラントは、原子炉及びこの原子炉を収容する原子炉建屋を備えた原子力プラントであって、原子炉建屋内に、原子炉用の補機を冷却するための原子炉補機冷却系設備、及び、原子炉補機冷却系設備の冷却水を冷却する海水を取り込む海水冷却系設備が配置され、原子炉建屋は原子炉を内包する原子炉棟を備え、原子炉棟が複数の系統区分に区分けされており、複数の系統区分に区分けされた原子炉棟の各系統区分に対して、原子炉補機冷却系設備及び海水冷却系設備が、それぞれ配置されている構成である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、原子炉建屋内に原子炉補機冷却系設備及び海水冷却系設備を配置したので、原子炉補機冷却系設備及び海水冷却系設備の耐震性を強化しても、必要な建屋の数を減らして集約でき、高い耐震性を有する建屋の分散を抑制できる。
従って、設備の強化を図り、かつ、設備の強化に伴う建屋設計と建屋のコストの増大の抑制を実現することが可能になる。
【0012】
なお、上述した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明が適用された原子力プラントの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る実施の形態及び実施例について、文章もしくは図面を用いて説明する。ただし、本発明に示す構造、材料、その他具体的な各種の構成等は、ここで取り上げた実施の形態や実施例に限定されることはなく、要旨を変更しない範囲で適宜組み合わせや改良が可能である。また、本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0015】
本発明の原子力プラントは、原子炉及びこの原子炉を収容する原子炉建屋を備え、原子炉建屋内に、原子炉用の補機を冷却するための原子炉補機冷却系設備、及び、原子炉補機冷却系設備の冷却水を冷却する海水を取り込む海水冷却系設備を、配置した構成である。
【0016】
原子炉建屋は、内部に原子炉を収容する建屋である。
上記の原子力プラントでは、原子炉建屋内に、原子炉に加えて、原子炉補機冷却系設備及び海水冷却系設備を配置している。
原子炉補機冷却系(RCW)設備は、原子炉用の補機(ポンプ、冷却器、熱交換器、等)を冷却するための設備である。
海水冷却系(RSW)設備は、原子炉補機冷却系設備の冷却水を冷却する海水を取り込む設備である。
【0017】
上記の原子力プラントにおいて、さらに、原子炉を内包する原子炉棟が複数の系統区分に区分けされ、その原子炉棟の各系統区分に対して、原子炉補機冷却系設備及び海水冷却系設備が、それぞれ配置されている構成とすることができる。
【0018】
上記の原子力プラントにおいて、さらに、原子炉棟が3つの系統区分に区分けされ、原子炉棟の各系統区分に隣接して、それぞれの系統区分に対する原子炉補機冷却系設備及び海水冷却系設備が配置されている構成とすることができる。
この原子力プラントの構成において、さらに、3つの系統区分に対する原子炉補機冷却系設備及び海水冷却系設備が、原子炉建屋の外周の3つの辺のそれぞれの辺に沿って配置されている構成とすることができる。
【0019】
上記の原子力プラントにおいて、さらに、各系統区分の原子炉補機冷却系設備及び海水冷却系設備が、耐震壁で囲まれており、この耐震壁によって別の系統区分の原子炉補機冷却系設備及び海水冷却系設備とは分離されている構成とすることができる。
【0020】
上記の原子力プラントにおいて、さらに、原子炉建屋に設置された、各系統区分の海水冷却系設備のポンプの配置に合わせて設けられた、一体の取水路、又は、系統区分ごとに分離した取水路、を有する構成とすることができる。
【0021】
上記の原子力プラントにおいて、さらに、原子炉建屋に設置された、海水冷却系設備のポンプが、入れ替えが可能である構成とすることができる。
【0022】
本発明の原子力プラントは、沸騰水型原子炉(BWR)等の各種の原子炉に適用することができる。
【0023】
上述した構成の原子力プラントによれば、従来は原子炉建屋とは別の建屋に設置されていた、原子炉補機冷却系設備及び海水冷却系設備を、原子炉建屋内に設置している。
これにより、原子炉補機冷却系設備及び海水冷却系設備用の別の建屋を設ける必要がないため、以下に挙げる利点を有する。
(1)原子炉補機冷却系設備及び海水冷却系設備の耐震性を強化しても、必要な建屋の数を減らして集約できる。このため、立地条件が厳しい狭隘な場所であっても、原子力発電所を建設することが可能になる。
(2)原子炉補機冷却系設備及び海水冷却系設備の耐震性を強化しても、高い耐震性を有する(前述したSクラス等)建屋の分散を抑制できるので、合理的な建屋設計と建屋のコストの低減が可能になる。そして、原子炉建屋以外の建屋(例えばタービン建屋等)においては、必要以上の高い耐震性の必要がなくなり、その建屋の耐震クラスに応じた設計が可能となる。
(3)同じ原子炉建屋内に、原子炉と原子炉補機冷却系設備及び海水冷却系設備を設置するので、従来の構成において、原子炉補機冷却系設備及び海水冷却系設備用に必要であった、別の建屋の間の渡り配管が不要になる。このため、地震時等の相対変位による配管(渡り配管等)の破断要因を回避できる。
(4)同じ原子炉建屋内に、原子炉と原子炉補機冷却系設備及び海水冷却系設備を設置するので、原子炉補機冷却系設備及び海水冷却系設備用の配管長を大幅に短縮できる。このため、配管破断リスクを最小限にすることができる。
(5)原子炉補機冷却系設備の点検を、原子炉建屋内で行うことができるので、狭隘な場所であっても原子炉補機冷却系設備の保守点検性を確保でき、また定期検査にかかる時間の短縮が可能になる。
【0024】
また、原子炉を内包する原子炉棟が複数の系統区分に区分けされ、原子炉棟の各系統区分に対して、原子炉補機冷却系設備及び海水冷却系設備がそれぞれ配置されている構成としたときには、系統区分ごとに独立して冷却を行うことができる。従って、設備の整備あるいは故障等により、1つの系統区分が停止していても、他の系統区分によって冷却できる。
【0025】
さらにまた、各系統区分の原子炉補機冷却系設備及び海水冷却系設備が、耐震壁で囲まれ、耐震壁によって別の系統区分の原子炉補機冷却系設備及び海水冷却系設備とは分離されている構成としたときには、安全系設備と海水系設備を完全に分離できる。また、安全系設備の各系統の分離独立を図ることができるので、さらなる安全性の向上を図ることができる。そして、耐震壁により、各系統区分を、内部溢水による水圧を受け止める頑強な躯体で区画することができる。
【0026】
さらに、原子炉建屋に設置された、各系統区分の海水冷却系設備のポンプの配置に合わせて、系統区分ごとに分離した取水路を有する構成としたときには、取水路の多重性を確保できる。また、系統区分の最上流から最末端までを徹底して分離することが可能になる。
一方、原子炉建屋に設置された、各系統区分の海水冷却系設備のポンプの配置に合わせて、一体の取水路を有する構成としたときには、系統区分を分離しても取水路が一体であるので、取水路が占める面積を低減することができる。これにより、地形的に狭隘な場所であっても、取水路とその取水口を配置することができる。
【実施例】
【0027】
以下、本発明の実施例による原子力プラントを、図面を用いて説明する。
【0028】
(実施例1)
本発明の原子力プラントの実施例として、本発明が適用された原子力プラントの平面図を、
図1に示す。
【0029】
図1に示す原子力プラントは、原子炉建屋1と、タービン建屋5とを備えている。
原子炉建屋1及びタービン建屋5は、隣接して配置されている。
【0030】
原子炉建屋1は、主として原子炉2を内包する原子炉棟3と、原子炉棟3を囲むように設置された付属棟4から構成される。
【0031】
原子炉2は、平面形状が円形の耐震壁に囲まれており、図示しないが、燃料が収容される原子炉圧力容器、原子炉圧力容器や圧力抑制プールや再循環ポンプを格納した原子炉格納容器、等を備えている。
【0032】
原子炉棟3は、原子炉2の円形の耐震壁よりも外側にある区画が、A系区分3aとB系区分3bとC系区分3cの、3つの系統区分に分離されている。A系区分3aは原子炉2の図中右上に配置され、B系区分3bは原子炉2の図中右下に配置され、C系区分3cは原子炉2の図中左に配置されている。
【0033】
付属棟4内の機器は、上記の原子炉棟3の系統区分3a,3b,3cに近接するように設置され、近接する原子炉棟3の系統区分3a,3b,3cに従って付属棟4内の系統区分が決められる。
図1では、付属棟4内の機器として、具体的に、RSWポンプ6a,6b,6cと、RSW配管7a,7b,7cと、RCW熱交換器8a,8b,8bとを示している。
【0034】
A系RSWポンプ6a及びA系RCW熱交換器8aは、原子炉建屋1の図中右側の辺に沿って設けられ、原子炉棟3内のA系区分3aの外側に隣接している、付属棟4のA系区分内に設置される。
A系RSWポンプ6aとA系RCW熱交換器8aは、海水系配管の破断リスクや海水の漏洩ポテンシャルを低減するために、近接して配置されており、A系RSW配管7aによって接続されている。
A系RCW熱交換器8aは、付属棟4内に設置されるA系のディーゼル発電機の補機(図示せず)と、原子炉棟3内のA系の残留熱除去系(RHR;Residual Heat Removal System)熱交換器(図示せず)を冷却している。
A系RCW熱交換器8aと原子炉棟3のA系区分3a内のA系残留熱除去系(RHR)熱交換器とは、A系RCW配管9aで接続される。
A系RSWポンプ6aとA系RCW熱交換器8aの間には耐震壁を設けており、A系RSW配管7aはその耐震壁に開口された貫通孔に配置されている。
A系RCW熱交換器8aと原子炉棟3のA系区分3aとの間には耐震壁を設けており、その耐震壁に開口された貫通孔にA系RCW配管9aが配置されている。
また、A系RSWポンプ6aとA系RCW熱交換器8aの外側の壁(原子炉建屋1の外壁を兼ねる)も、耐震壁とされている。
【0035】
原子炉建屋1の図中下側の辺に沿って設けられ、原子炉棟3内のB系区分3bの外側に隣接している、付属棟4のB系区分内に、B系RSWポンプ6b、B系RSW配管7b、B系RCW熱交換器8bが設置される。そして、B系RCW配管9bが、B系RCW熱交換器8bと原子炉棟3のB系区分3b内のB系残留熱除去系(RHR)熱交換器(図示せず)を接続している。
B系RSWポンプ6bとB系RCW熱交換器8bの間の壁、B系RCW熱交換器8bと原子炉棟3のB系区分3bとの間の壁、B系RSWポンプ6bとB系RCW熱交換器8bの外側の壁(原子炉建屋1の外壁を兼ねる)は、それぞれ耐震壁とされている。
【0036】
原子炉建屋1の図中左側の辺に沿って設けられ、原子炉棟3内のC系区分3cの外側に隣接している、付属棟4のC系区分内に、C系RSWポンプ6c、C系RSW配管7c、C系RCW熱交換器8cが設置される。そして、C系RCW配管9cが、C系RCW熱交換器8cと原子炉棟3のC系区分3c内のC系残留熱除去系(RHR)熱交換器(図示せず)を接続している。
C系RSWポンプ6cとC系RCW熱交換器8cの間の壁、C系RCW熱交換器8cと原子炉棟3のC系区分3cとの間の壁、C系RSWポンプ6cとC系RCW熱交換器8cの外側の壁(原子炉建屋1の外壁を兼ねる)は、それぞれ耐震壁とされている。
【0037】
RSWポンプ6a,6b,6c、RSW配管7a,7b,7c、RCW熱交換器8a,8b,8c、RCW配管9a,9b,9cは、それぞれA系、B系、C系で回転対称の同様の配置としており、これにより配管レイアウトが標準化されている。
【0038】
原子炉建屋1の図中太実線で示す壁は、それぞれ耐震壁とされており、原子炉2や、RSW及びRCWの各設備において、十分な耐震性が確保される。
【0039】
図1に示す原子力プラントでは、取水路が系統ごとに設置されている。
具体的には、海11からの海水をRSWポンプ6aに引き込むA系取水路10aと、海11からの海水をRSWポンプ6bに引き込むB系取水路10bと、海11からの海水をRSWポンプ6cに引き込むC系取水路10cが、それぞれ独立して設けられている。
【0040】
定期検査を行う際には、原子炉棟3及び付属棟4内のすべての機器の運転を停止して、検査を行う。
また、RSWポンプ6a,6b,6cのいずれかを交換する際には、定期検査と同様に原子炉棟3及び付属棟4内のすべての機器の運転を停止して、交換するRSWポンプ(例えば、A系RSWポンプ6a)を、新しいRSWポンプと交換する。
RSWポンプ6a,6b,6cの交換や点検を行うために、RSWポンプ6a,6b,6cを囲む耐震壁に、ポンプの出し入れを可能にする扉等を設ける。
【0041】
上述の本実施例の構成によれば、RSWポンプ6a,6b,6c、RSW配管7a,7b,7c、RCW熱交換器8a,8b,8c、RCW配管9a,9b,9cを、原子炉建屋1内に配置している。即ち、原子炉補機冷却系(RCW)設備及び海水冷却系(RSW)設備を、原子炉建屋1内に配置している。
これにより、原子炉補機冷却系(RCW)設備及び海水冷却系(RSW)設備用の別の建屋を設ける必要がない。
従って、必要な建屋の数を減らして集約できるので、立地条件が厳しい狭隘な場所であっても、原子力発電所を建設することが可能になる。
また、高い耐震性を有する建屋の分散を抑制でき、合理的な建屋設計と建屋のコストの低減が可能になる。タービン建屋5等の原子炉建屋1以外の建屋においては、その建屋の耐震クラスに応じた設計が可能となる。
また、従来の構成において必要であった、別の建屋の間の渡り配管が不要になる。このため、地震時等の相対変位による渡り配管等の破断要因を回避できる。
また、RSW配管7a,7b,7cやRCW配管9a,9b,9cの配管長を大幅に短縮できる。このため、配管破断リスクを最小限にすることができる。
また、RCW設備の点検を、原子炉建屋1内で行うことができるので、狭隘な場所であってもRCW設備の保守点検性を確保でき、また定期検査にかかる時間の短縮が可能になる。
【0042】
上述の本実施例の構成によれば、原子炉棟3が3つの系統区分3a,3b,3cに区分けされ、原子炉棟3の各系統区分3a,3b,3cに対して、RCW設備及びRSW設備がそれぞれ配置されている、
これにより、系統区分ごとに独立して冷却を行うことができる。従って、設備の整備あるいは故障等により、1つの系統区分が停止していても、他の系統区分によって冷却できる。
【0043】
上述の本実施例の構成によれば、RSWポンプ6a,6b,6cやRCW熱交換器8a,8b,8cの周囲の壁が耐震壁とされている。
これにより、RCW設備及びRCW設備の耐震性を強化することができる。
【0044】
上述の本実施例の構成によれば、さらに、A系とB系とC系の各系統区分のRCW設備及びRSW設備が、耐震壁により別の系統区分のRCW設備及びRSW設備とは分離されている。
これにより、安全系設備と海水系設備を完全に分離できる。また、安全系設備の各系統の分離独立を図ることができるので、さらなる安全性の向上を図ることができる。そして、耐震壁により、各系統区分を、内部溢水による水圧を受け止める頑強な躯体で区画することができる。
【0045】
上述の本実施例の構成によれば、原子炉建屋1に設置された、各系統区分のRSWポンプ6a,6b,6cの配置に合わせて、系統区分ごとに分離した取水路10a,10b,10cを有する。
これにより、取水路の多重性を確保でき、また、系統区分の最上流から最末端までを徹底して分離することが可能になる。
【0046】
(変形例)
実施例1では、取水路10a,10b,10cが系統ごとに独立して設けられ、各取水路10a,10b,10cの海11からの取水口が別々に設けられていた。
これに対して、2つ以上の系統の取水口を共通として、かつ取水路が途中で分岐して系統ごとに別れる構成とすることも可能である。このように取水口を共通とすれば、海岸の地形の制約等によって、各系統で別々に取水口を設けることが難しい場合でも、各系統の取水路を設けることができる。
【0047】
実施例1では3つの系統(A系、B系、C系)を設けていたが、系統は3つに限定されず、複数(2つ以上)の系統を設ければよい。
複数の系統を設けることにより、1つの系統が何らかの理由で停止したときでも、他の系統で運転を行うことができる。
【0048】
なお、本発明は、上述した実施の形態及び実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した実施例は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0049】
1…原子炉建屋、2…原子炉、3…原子炉棟、3a…A系区分、3b…B系区分、3c…C系区分、4…付属棟、5…タービン建屋、6a…A系RSWポンプ、6b…B系RSWポンプ、6c…C系RSWポンプ、7a…A系RSW配管、7b…B系RSW配管、7c…C系RSW配管、8a…A系RCW熱交換器、8b…B系RCW熱交換器、8c…C系RCW熱交換器、9a…A系RCW配管、9b…B系RCW配管、9c…C系RCW配管、10a…A系取水路、10b…B系取水路、10c…C系取水路、11…海