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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-21
(45)【発行日】2023-03-02
(54)【発明の名称】セラミック応用電子機器及びコネクタ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/409 20060101AFI20230222BHJP
   H01R 13/66 20060101ALI20230222BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20230222BHJP
【FI】
G01N27/409 100
H01R13/66
G01N27/416 331
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019197327
(22)【出願日】2019-10-30
(65)【公開番号】P2021071347
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000231073
【氏名又は名称】日本航空電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121706
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128705
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147773
【弁理士】
【氏名又は名称】義村 宗洋
(72)【発明者】
【氏名】橋口 徹
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第07563118(US,B1)
【文献】国際公開第2011/090064(WO,A1)
【文献】特開2008-298731(JP,A)
【文献】特開2004-093306(JP,A)
【文献】米国特許第5246562(US,A)
【文献】特開2009-115784(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26-27/49
H01R 13/56-13/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子電極を基端部に有するセラミック素子を内蔵し、外部接続用のリード線が引き出されているセラミック応用電子機器であって、
前記リード線と接続されたコンタクトを保持し、前記基端部の両面に配置された2つのインシュレータと、
前記2つのインシュレータの互いの外側面に位置し、前記外側面と平行な平板部と、前記平板部に支持されたばね部とを有する2つのばね部品と、
筒状のスリーブとを備え、
前記2つのばね部品の前記ばね部は前記スリーブのスライド移動による前記ばね部への被せによって弾性変形しており、
前記2つのインシュレータは前記ばね部が弾性変形した前記2つのばね部品の前記平板部によって押されて前記基端部を挟み込んで保持し、前記コンタクトは前記端子電極に押し付けられて接触しており、
前記2つのばね部品の前記ばね部は前記スリーブがスライド移動してくる方向に傾斜した前記スリーブの誘い込み用の傾斜面を有することを特徴とするセラミック応用電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載のセラミック応用電子機器において、
前記ばね部は前記平板部の一端から前記スリーブがスライド移動してくる方向に折り返されて前記平板部の他端に至る折り返し片によって構成されていることを特徴とするセラミック応用電子機器。
【請求項3】
請求項2に記載のセラミック応用電子機器において、
前記折り返し片は屈曲部を有し、前記屈曲部が前記平板部から遠ざかるV字型をなし、
前記折り返し片の先端は前記平板部の他端に押し付けられて接触していることを特徴とするセラミック応用電子機器。
【請求項4】
請求項1に記載のセラミック応用電子機器において、
前記ばね部は前記平板部の、前記スリーブがスライド移動してくる方向の前後両端から先端が互いに近づく方向に折り返された一対の折り返し片によって構成されていることを特徴とするセラミック応用電子機器。
【請求項5】
請求項1に記載のセラミック応用電子機器において、
前記ばね部は前記平板部の、前記スリーブがスライド移動してくる方向に沿う両端から先端が互いに近づく方向に折り返された一対の折り返し片によって構成され、
前記一対の折り返し片の先端部に、前記スリーブがスライド移動してくる方向に突出して前記傾斜面を構成する突出部が形成されていることを特徴とするセラミック応用電子機器。
【請求項6】
セラミック素子の基端部に形成されている端子電極とリード線とを接続するためのコネクタであって、
前記リード線と接続されるコンタクトを保持し、前記基端部の両面に配置される2つのインシュレータと、
前記2つのインシュレータの互いの外側面に位置し、前記外側面と平行な平板部と、前記平板部に支持されたばね部とを有する2つのばね部品と、
筒状のスリーブとを備え、
前記2つのばね部品の前記ばね部は前記スリーブのスライド移動による前記ばね部への被せによって弾性変形する構成とされ、
前記2つのインシュレータは前記スリーブの被せによって前記ばね部が弾性変形した前記2つのばね部品の前記平板部によって押されて前記基端部を挟み込んで保持すると共に前記コンタクトを前記端子電極に押し付けて接触させる構成とされており、
前記2つのばね部品の前記ばね部は前記スリーブがスライド移動してくる方向に傾斜した前記スリーブの誘い込み用の傾斜面を有することを特徴とするコネクタ。
【請求項7】
請求項6に記載のコネクタにおいて、
前記ばね部は前記平板部の一端から前記スリーブがスライド移動してくる方向に折り返されて前記平板部の他端に至る折り返し片によって構成されていることを特徴とするコネクタ。
【請求項8】
請求項7に記載のコネクタにおいて、
前記折り返し片は屈曲部を有し、前記屈曲部が前記平板部から遠ざかるV字型をなし、
前記折り返し片は前記スリーブの被せによって弾性変形した際、先端が前記平板部の他端と接触する構成とされていることを特徴とするコネクタ。
【請求項9】
請求項6に記載のコネクタにおいて、
前記ばね部は前記平板部の、前記スリーブがスライド移動してくる方向の前後両端から先端が互いに近づく方向に折り返された一対の折り返し片によって構成されていることを特徴とするコネクタ。
【請求項10】
請求項6に記載のコネクタにおいて、
前記ばね部は前記平板部の、前記スリーブがスライド移動してくる方向に沿う両端から先端が互いに近づく方向に折り返された一対の折り返し片によって構成され、
前記一対の折り返し片の先端部に、前記スリーブがスライド移動してくる方向に突出して前記傾斜面を構成する突出部が形成されていることを特徴とするコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はセラミック素子を内蔵したNOxセンサや酸素センサ等のセラミック応用電子機器に関し、さらにそのセラミック応用電子機器内で用いるコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
図18はこの種のセラミック応用電子機器の従来例として特許文献1に記載されている車両排気ガスの酸素濃度を検出する酸素センサを示したものであり、図19図18におけるA部分のアセンブリを示したものである。
【0003】
酸素センサはセラミック素子11を備え、セラミック素子11は主体金具12内にガラスシール13や外筒金具14等によって固定されている。主体金具12の先端外周にはセラミック素子11の突出部分を覆うカバー15が固着され、カバー15には排気管内を流れる排気ガスをカバー15内に導く開口15aが形成されている。
【0004】
セラミック素子11は方形状断面を有する長手のもので、一端部の一方の外面及び他方の外面にはそれぞれ2極の電極端子部16が形成されている。各電極端子部16には導線(長手状金属薄板)17が接続され、それら導線17はコネクタ部18を介してリード線19に接続されている。4本のリード線19はグロメット21を貫通して外部に延び、それらの先端にはコネクタプラグ22が連結されている。図18中、23はリード線19を保護する保護チューブを示す。
【0005】
セラミック素子11の電極端子部16と導線17との接続は、この例では図19に示すように、各電極端子部16に導線17を重ね、さらにその外側に2枚の絶縁板24を配置したセラミック素子11と導線17と絶縁板24とよりなる結合ユニット25を構成し、その結合ユニット25の外側にリング金具26を圧入して締まりばめ嵌合することによって行われている。
【0006】
これにより結合ユニット25はリング金具26によって強固に保持されて一体化され、各導線17はセラミック素子11の電極端子部16に強く圧着されて電気的に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平10-253579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、従来においてはセラミック素子11の電極端子部16と導線17との接続は、セラミック素子11の両面に導線17及び絶縁板24を配置した結合ユニット25の外側にリング金具26を圧入して嵌めることで、導線17をセラミック素子11の電極端子部16に圧着させることによって行われている。
【0009】
しかるに、このような接続構造では、結合ユニット25を構成するセラミック素子11や絶縁板24の寸法ばらつきによって接触力が変動し、導線17と電極端子部16との安定した接触力が得られないといった問題がある。
【0010】
また、寸法ばらつきがあっても十分な接触力を確保し、リング金具26の圧入嵌合によって結合ユニット25を強固に保持するためには、結合ユニット25の寸法が小さい場合に備えてリング金具26の寸法も小さめに設計せざるを得ず、リング金具26の圧入に際し、大きな力が必要であり、その点で組立作業に難があるものとなっていた。
【0011】
この発明の目的はこのような問題に鑑み、セラミック応用電子機器におけるセラミック素子の電気的接続を信頼性良く、かつ作業性良く行えるようにしたコネクタを提供することにあり、さらにそのコネクタを具備したセラミック応用電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の発明によれば、端子電極を基端部に有するセラミック素子を内蔵し、外部接続用のリード線が引き出されているセラミック応用電子機器は、リード線と接続されたコンタクトを保持し、前記基端部の両面に配置された2つのインシュレータと、2つのインシュレータの互いの外側面に位置し、外側面と平行な平板部と、平板部に支持されたばね部とを有する2つのばね部品と、筒状のスリーブとを備え、2つのばね部品のばね部はスリーブのスライド移動によるばね部への被せによって弾性変形しており、2つのインシュレータはばね部が弾性変形した2つのばね部品の平板部によって押されて前記基端部を挟み込んで保持し、コンタクトは端子電極に押し付けられて接触しており、2つのばね部品のばね部はスリーブがスライド移動してくる方向に傾斜したスリーブの誘い込み用の傾斜面を有するものとされる。
【0013】
請求項2の発明では請求項1の発明において、ばね部は平板部の一端からスリーブがスライド移動してくる方向に折り返されて平板部の他端に至る折り返し片によって構成される。
【0014】
請求項3の発明では請求項2の発明において、折り返し片は屈曲部を有し、屈曲部が平板部から遠ざかるV字型をなし、折り返し片の先端は平板部の他端に押し付けられて接触しているものとされる。
【0015】
請求項4の発明では請求項1の発明において、ばね部は平板部の、スリーブがスライド移動してくる方向の前後両端から先端が互いに近づく方向に折り返された一対の折り返し片によって構成される。
【0016】
請求項5の発明では請求項1の発明において、ばね部は平板部の、スリーブがスライド移動してくる方向に沿う両端から先端が互いに近づく方向に折り返された一対の折り返し片によって構成され、一対の折り返し片の先端部に、スリーブがスライド移動してくる方向に突出して前記傾斜面を構成する突出部が形成されているものとされる。
【0017】
請求項6の発明によれば、セラミック素子の基端部に形成されている端子電極とリード線とを接続するためのコネクタは、リード線と接続されるコンタクトを保持し、前記基端部の両面に配置される2つのインシュレータと、2つのインシュレータの互いの外側面に位置し、外側面と平行な平板部と、平板部に支持されたばね部とを有する2つのばね部品と、筒状のスリーブとを備え、2つのばね部品のばね部はスリーブのスライド移動によるばね部への被せによって弾性変形する構成とされ、2つのインシュレータはスリーブの被せによってばね部が弾性変形した2つのばね部品の平板部によって押されて前記基端部を挟み込んで保持すると共にコンタクトを端子電極に押し付けて接触させる構成とされ、2つのばね部品のばね部はスリーブがスライド移動してくる方向に傾斜したスリーブの誘い込み用の傾斜面を有するものとされる。
【0018】
請求項7の発明では請求項6の発明において、ばね部は平板部の一端からスリーブがスライド移動してくる方向に折り返されて平板部の他端に至る折り返し片によって構成される。
【0019】
請求項8の発明では請求項7の発明において、折り返し片は屈曲部を有し、屈曲部が平板部から遠ざかるV字型をなし、折り返し片はスリーブの被せによって弾性変形した際、先端が平板部の他端と接触する構成とされる。
【0020】
請求項9の発明では請求項6の発明において、ばね部は平板部の、スリーブがスライド移動してくる方向の前後両端から先端が互いに近づく方向に折り返された一対の折り返し片によって構成される。
【0021】
請求項10の発明では請求項6の発明において、ばね部は平板部の、スリーブがスライド移動してくる方向に沿う両端から先端が互いに近づく方向に折り返された一対の折り返し片によって構成され、一対の折り返し片の先端部に、スリーブがスライド移動してくる方向に突出して前記傾斜面を構成する突出部が形成されているものとされる。
【発明の効果】
【0022】
この発明によるコネクタによれば、セラミック応用電子機器におけるセラミック素子の電気的接続を安定かつ信頼性良く行うことができ、また接続作業はスリーブをスライド移動してばね部品のばね部を弾性変形させるといった簡単な作業で行うことができる。加えて、スリーブのスライド移動により、スリーブが被せられるばね部にはスリーブを誘い込むための傾斜面が設けられているため、スリーブを容易にスライド移動してばね部に被せることができ、かつばね部を良好に弾性変形させることができる。
【0023】
さらに、この発明によれば、このようなコネクタを具備したセラミック応用電子機器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】Aはこの発明によるコネクタの実施例1とセラミック素子の接続状態を示す平面図、Bはその左側面図、Cはその正面図、Dはその右側面図。
図2】Aはこの発明によるコネクタの実施例1とセラミック素子の接続状態を示す斜視図、Bはその拡大断面図。
図3図1に示したコネクタを一部分解した斜視図。
図4】Aは図3におけるインシュレータの斜視図、BはAを上下反転させた斜視図。
図5】Aは図1に示したコネクタとセラミック素子の接続前の状態を示す平面図、Bはその断面図。
図6図1に示したコネクタとセラミック素子の接続前の状態を示す斜視図。
図7図1に示したコネクタとセラミック素子の接続途中の状態を示す斜視図。
図8】この発明によるセラミック応用電子機器の一実施例を示す断面図。
図9】Aはこの発明によるコネクタの実施例2とセラミック素子の接続状態を示す斜視図、Bはその拡大断面図。
図10図9に示したコネクタを一部分解した斜視図。
図11】Aは図10におけるインシュレータの斜視図、BはAを上下反転させた斜視図。
図12】Aは図9に示したコネクタとセラミック素子の接続前の状態を示す斜視図、Bはその拡大断面図。
図13】Aはこの発明によるコネクタの実施例3とセラミック素子の接続状態を示す平面図、Bはその正面図、Cはその右側面図、Dはその斜視図。
図14】Aは図13AのE-E線拡大断面図、Bは図13BのF-F線拡大断面図。
図15図13に示したコネクタを一部分解した斜視図。
図16】Aは図15におけるインシュレータの斜視図、BはAを上下反転させた斜視図。
図17】Aは図13に示したコネクタとセラミック素子の接続前の状態を示す断面図、BはAのC-C線における断面図。
図18】セラミック応用電子機器の従来例を示す断面図。
図19図18におけるA部分の詳細を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
この発明の実施形態を図面を参照して実施例により説明する。
【0026】
[実施例1]
図1及び2はこの発明によるコネクタの実施例1の構成を示したものであり、このコネクタ100はセラミック応用電子機器において内蔵されているセラミック素子と外部接続用のリード線とを接続するために用いられる。なお、図1及び2はコネクタ100にセラミック素子30が接続された状態として示している。
【0027】
コネクタ100はこの例では2つのインシュレータ40と、8本のコンタクト50と、2つのばね部品60と、空洞の断面形状が四角形をなす筒状のスリーブ70とよりなる。図3はコネクタ100を一部分解して示したものであり、図4はインシュレータ40の詳細を示したものである。また、図5及び6はコネクタ100にセラミック素子30が接続される前の状態を示したものである。
【0028】
2つのインシュレータ40は下面40aが互いに対向されて配置されるもので、この例では下面40aに4本のコンタクト50をそれぞれ整列保持するものとなっている。インシュレータ40には図4に示したように、コンタクト50の先端を収容して引っ掛けるための4つの溝41と、コンタクト50の一部が挿入される4つの穴42と、穴42内に位置してコンタクト50を止める止め部43(図5B参照)が形成されている。
【0029】
また、インシュレータ40の下面40aの幅方向(溝41の配列方向)一端には突出部44が形成され、他端には規制部45,46が突出形成されている。これら突出部44と規制部45,46は2つのインシュレータ40を下面40a同士を対向させて配置した時に、突出部44が対向するインシュレータ40の規制部45と46との間に位置するように形成されている。
【0030】
さらに、インシュレータ40の下面40aの溝41が形成されている部分の幅方向両端の角部には凹部47がそれぞれ形成され、インシュレータ40の上面40bには下面40aの凹部47の位置とそれぞれほぼ対応して一対の突起48が形成されている。
【0031】
このような構成を有するインシュレータ40は例えばアルミナ焼結体などのセラミック製とされる。
【0032】
コンタクト50は図3及び5に示したように、インシュレータ40に保持されている。コンタクト50はインシュレータ40の溝41に収容され、引っ掛けられて止められる湾曲した形状をなす先端部51と、屈曲されてセラミック素子30の端子電極との接点をなす接点部52,53と、インシュレータ40の穴42内に挿入される立ち上げ部54と、立ち上げ部54の先端に形成されてインシュレータ40の止め部43に止められるフック部55と、インシュレータ40から引き出された接続部56とを備えている。
【0033】
ばね部品60は図3及び5に示したように、方形状をなす平板部61と、平板部61の一端から折り返されて平板部61の他端に至る折り返し片62を有し、さらに折り返し片62の先端の幅方向両端部から突出形成された一対のフック部63を有する。フック部63はコの字形状をなすように折り曲げられている。
【0034】
平板部61に支持されている折り返し片62はばね部(ばね片)として機能し、この例では延伸方向中間に屈曲部62aが設けられている。屈曲部62aを有する折り返し片62は屈曲部62aが平板部61から遠ざかるV字型をなす。
【0035】
上記のような構成を有するばね部品60は例えばステンレス材によって形成され、筒状をなすスリーブ70もステンレス材によって形成される。
【0036】
コンタクト50を保持した2つのインシュレータ40にはそれぞればね部品60が取り付けられる。ばね部品60はインシュレータ40の上面40bに平板部61が配置され、一対のフック部63の先端がインシュレータ40の下面40aの凹部47に位置して一対のフック部63がインシュレータ40に引っ掛けられて取り付けられる。なお、ばね部品60はインシュレータ40の上面40bに形成されている一対の突起48に平板部61が突き当たることによってインシュレータ40から抜け止めされる。
【0037】
ばね部品60が上面40bに、即ち互いの外側面に取り付けられた2つのインシュレータ40は図5及び6に示したように下面40aが互いに対向するように配置され、治具(図示せず)によって2つのインシュレータ40は対向するコンタクト50の接点部52(53)間の間隔がd1となるように位置決め保持される。
【0038】
コネクタ100によって外部接続用のリード線と接続されるセラミック素子30は図5及び6に示した状態の2つのインシュレータ40間に基端部31が挿入される。基端部31の表面には図5A及び6に示したように端子電極32が4つ配列形成されており、裏面にも同様に端子電極32が4つ配列形成されている。なお、図5B及び図1B,2Bでは端子電極32の詳細図示は省略している。
【0039】
2つのインシュレータ40間への基端部31の挿入に際し、スリーブ70は予めセラミック素子30の回りに通され、この状態でセラミック素子30の基端部31は2つのインシュレータ40間に図7に示したように挿入される。そして、挿入後、スリーブ70をスライド移動させ、図1及び2に示した位置にスリーブ70を位置させることによってコネクタ100とセラミック素子30の接続が完了する。なお、スリーブ70をスライド移動させて図1及び2に示した位置に位置させる際、2つのインシュレータ40はそれらを位置決め保持していた治具から解放される。
【0040】
ここで、セラミック素子30の厚みを図5Bに示したようにtとすると、対向するコンタクト50の接点部52(53)間の間隔d1とtは下記の関係となっている。
【0041】
d1≧t
【0042】
よって、この例では挿入力を必要とせず、2つのインシュレータ40間にセラミック素子30を挿入することができ、つまりZIF(Zero Insertion Force)でセラミック素子30の挿入が可能となっている。なお、d1はtよりやや小さくしてもよく、この場合においてもわずかな挿入力でセラミック素子30を挿入することができ、つまりLIF(Low Insertion Force)でセラミック素子30の挿入を可能とすることができる。
【0043】
また、平板部61の一端からスリーブ70がスライド移動してくる方向に折り返されている折り返し片62は前述したように屈曲部62aが平板部61から遠ざかるV字型をなし、これにより屈曲部62aとフック部63との間はフック部63から屈曲部62aに向かって徐々にインシュレータ40の上面40bから遠ざかる傾斜面62bが形成されている。このスリーブ70がスライド移動してくる方向に傾斜した傾斜面62bはスリーブ70がスライド移動してくる際、スリーブ70を誘い込むように機能するため、スリーブ70のスライド移動を容易に行うことができる。
【0044】
スリーブ70がスライド移動してコネクタ100とセラミック素子30の接続が完了した状態では、スリーブ70は2つのばね部品60のばね部として機能する折り返し片62に被さり、屈曲部62aを押して屈曲部62aが互いに近づく方向に2つの折り返し片62を弾性変形させる。これにより、セラミック素子30の基端部31の両面に位置する2つのインシュレータ40は2つのばね部品60の平板部61によって押されて基端部31を挟み込んで保持すると共に、インシュレータ40に保持されているコンタクト50はそれぞれ基端部31に形成されている端子電極32に接点部52,53が押し付けられて接触し、コンタクト50と端子電極32とが電気的に接続される。
【0045】
なお、この例ではインシュレータ40の上面40bに配置されてインシュレータ40の上面40bと平行なばね部品60の平板部61は折り返し片62が弾性変形した際、折り返し片62が設けられている一端と反対側の他端も図2Bに示したように折り返し片62の先端によって押さえ込まれるものとなっており、よって平板部61はインシュレータ40の上面40bと良好に面接触してインシュレータ40をバランス良く押すことができるものとなっている。このように、折り返し片62の屈曲部62aを挟む両側を、つまり折り返し片62の全長をばねとして機能させることにより、接触力を増大させることができる。
【0046】
以上説明したように、この例では2つのばね部品60の折り返し片62が弾性変形して2つのインシュレータ40及びセラミック素子30の基端部31を挟み込む構造のため、例えばインシュレータ40やセラミック素子30の寸法ばらつきがあったとしても、その寸法ばらつきを吸収することができ、よって安定した接触力を得ることができ、セラミック素子30との接続信頼性に優れ、かつ接続操作性に優れたコネクタ100を得ることができる。
【0047】
また、前述したようにインシュレータ40はばね部品60の平板部61の広い面で押されるため、セラミック製のインシュレータ40が例えば局部的に押されてわれてしまうといったような不具合は発生しない。
【0048】
なお、図5Bの状態での2つのインシュレータ40の上面40b間の寸法をm1とし、図2Bの状態での2つのインシュレータ40の上面40b間の寸法をm2とすると、
【0049】
m2<m1
となっている。
【0050】
以上、コネクタ100の構成及びコネクタ100とセラミック素子30との接続について説明したが、コネクタ100のコンタクト50の接続部56には外部接続用のリード線がそれぞれ接続され、コネクタ100によってセラミック素子30の端子電極32とリード線とが接続される。
【0051】
次に、上述したコネクタ100を具備するセラミック応用電子機器について説明する。
【0052】
図8はこの発明によるセラミック応用電子機器の一実施例として、ガスセンサを示したものであり、ガスセンサは被測定ガスから所定のガス成分を測定する前述したセラミック素子30と、セラミック素子30の先端部を保護する保護カバー80と、セラミック素子30と接続されたコネクタ100を含むセンサ組立体90とを備えている。
【0053】
セラミック素子30は細長な長尺の板状体形状をなし、ジルコニア等の酸素イオン伝導性固体電解質層からなる例えば6枚のセラミック基板を積層して形成されている。
【0054】
保護カバー80はセラミック素子30の先端を覆う内側保護カバー81と、この内側保護カバー81を覆う外側保護カバー82とを備えている。内側保護カバー81はセラミック素子30の先端に被測定ガスを導入するための穴81aを備えており、外側保護カバー82は側面に被測定ガスを導入するための穴82aを備えている。
【0055】
センサ組立体90は主体金具91と、主体金具91に溶接固定された内筒92及び外筒93と、セラミック素子30の基端部31に接続されたコネクタ100とを備えている。図8中、91aは詳細図示を省略しているが、主体金具91に形成されている取り付け用のねじ部を示す。
【0056】
内筒92の内部には複数のセラミックサポータ94a~94cと、セラミックサポータ94a,94b間及びセラミックサポータ94b,94c間に充填されたセラミック粉体95a,95bが封入されている。外筒93は内筒92、セラミック素子30、コネクタ100の周囲を覆っており、コネクタ100のコンタクト50に接続されたリード線96が外部に引き出されている。リード線96はコネクタ100を介してセラミック素子30の各端子電極32と接続されている。外筒93とリード線96との隙間はゴム栓97によって封止されている。
【0057】
上記のような構成を有するガスセンサは、例えば車両の排ガス管に取り付けられて排気ガスに含まれるNOxやO等のガス成分の測定に使用され、セラミック素子30とリード線96との接続にコネクタ100を用いているため、セラミック素子30の電気的接続を信頼性良く、かつ作業性良く行えるものとなっている。
【0058】
[実施例2]
次にこの発明によるセラミック素子の端子電極とリード線とを接続するためのコネクタの実施例2の構成について説明する。
【0059】
図9は前述した図2と同様、コネクタ200にセラミック素子30が接続された状態を示したものであり、図10はコネクタ200を一部分解して示したものである。また、図11はインシュレータ40’の詳細を示したものであり、図12はコネクタ200にセラミック素子30が接続される前の状態を示したものである。これら図9~12において図1~7と対応する部分には同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0060】
コネクタ200は2つのばね部品60’の形状と2つのインシュレータ40’の形状がコネクタ100と異なるものとなっている。
【0061】
ばね部品60’はこの例では図10及び12に示したように、方形状をなす平板部61と、一対の折り返し片64と、一対の取り付け片65とを有する。一対の折り返し片64はばね部(ばね片)として機能するもので、平板部61の、スリーブ70がスライド移動してくる方向の前後両端(対向2辺)から先端64aが互いに近づく方向に折り返されて形成されている。折り返し片64の先端64aはわずかに内側(平板部61側)に曲げられている。
【0062】
一対の取り付け片65は平板部61の、スリーブ70がスライド移動してくる方向に沿う両端(残る対向2辺)から平板部61に対し、折り返し片64と反対側に位置するように折り曲げられて形成されており、一対の取り付け片65には窓66がそれぞれ形成されている。
【0063】
インシュレータ40’にはインシュレータ40と同様に、各4つの溝41、穴42及び穴42内に位置する止め部43が形成され、さらに突出部44及び規制部45,46が形成されているものの、凹部47及び突起48は形成されておらず、4つの溝41の配列方向両端に位置するインシュレータ40’の側面40c、40dには凹部49がそれぞれ形成され、さらに凹部49にランス部49aが突出形成された形状となっている。このインシュレータ40’もアルミナ焼結体などのセラミック製とされる。
【0064】
インシュレータ40’へのばね部品60’の取り付けは、図12に示したようにインシュレータ40’の上面40bに平板部61を搭載し、一対の取り付け片65の窓66をそれぞれインシュレータ40’のランス部49aに引っ掛けることによって行われる。
【0065】
このようにばね部品60’が取り付けられた2つのインシュレータ40’は図12に示したようにコンタクト50を整列保持する下面40aが互いに対向するように実施例1と同様にして配置され、この図12に示した状態の2つのインシュレータ40’間にセラミック素子30の基端部31を挿入し、挿入後、実施例1と同様にスリーブ70をスライド移動させ、図9に示した位置にスリーブ70を位置させることによってコネクタ200とセラミック素子30の接続が完了する。
【0066】
スリーブ70がスライド移動してコネクタ200とセラミック素子30の接続が完了した状態では、スリーブ70は2つのばね部品60’の折り返し片64に被さり、折り返し片64の先端64aを押して弾性変形させる。これにより、セラミック素子30の基端部31の両面に位置する2つのインシュレータ40’は2つのばね部品60’の平板部61によって押され、基端部31を挟み込んで保持し、コンタクト50と基端部31に形成されている端子電極32とが電気的に接続される。
【0067】
なお、この例においても実施例1と同様、ばね部品60’の平板部61の広い面でインシュレータ40’を押すことができるものとなっており、また2つのばね部品60’の各一対の折り返し片64のうち、スリーブ70がスライド移動してくる側にそれぞれ位置する折り返し片64がなす傾斜面64bはスリーブ70を誘い込むように機能するため、実施例1と同様、スリーブ70のスライド移動を容易とすることができる。
【0068】
[実施例3]
以下、この発明によるセラミック素子の端子電極とリード線とを接続するためのコネクタの実施例3の構成について説明する。
【0069】
図13及び14は実施例3のコネクタ300にセラミック素子30が接続された状態を示したものであり、図15はコネクタ300を一部分解して示したものである。また、図16はインシュレータ40”の詳細を示したものであり、図17はコネクタ300にセラミック素子30が接続される前の状態を示したものである。これら図13~17において図1~7と対応する部分には同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0070】
ばね部品60”はこの例では図15及び17に示したように、方形状をなす平板部61と、一対の折り返し片67とを有する。一対の折り返し片67はばね部(ばね片)として機能するもので、平板部61の、スリーブ70’がスライド移動してくる方向に沿う両端(対向2辺)から先端67aが互いに近づく方向に折り返されて形成されている。折り返し片67の先端67aはこの例では平板部61とほぼ平行となるように内側に曲げられている。
【0071】
一対の折り返し片67の先端部にはスリーブ70’がスライド移動してくる方向に突出する突出部68がそれぞれ形成されており、突出部68はスライド移動してくるスリーブ70’を誘い込む傾斜面を構成している。なお、平板部61の、折り返し片67が形成されていない対向2辺の各中央部にはわずかな切欠き69(図17A参照)が形成されている。
【0072】
インシュレータ40”にはインシュレータ40と同様に、各4つの溝41、穴42及び穴42内に位置する止め部43が形成され、さらに突出部44及び規制部45,46が形成されているものの、凹部47及び突起48は形成されておらず、上面40bの中間部が幅方向(4つの溝41の配列方向)に、全幅に渡って切り欠かれて凹部40eが形成された形状となっている。このインシュレータ40”もアルミナ焼結体などのセラミック製とされる。
【0073】
ばね部品60”は、この例では金具75を介してインシュレータ40”に取り付けられる。金具75は金属板が断面方形をなすように折り曲げられてなるもので、2つのインシュレータ40”の凹部40eに位置して2つのインシュレータ40”を挟み込むように取り付けられる。
【0074】
金具75の、インシュレータ40”の凹部40eに位置する部分におけるスリーブ70’がスライド移動してくる方向の前後両端には、ばね部品60”の平板部61に形成されている切欠き69の位置に対応してそれぞれ固定片76が突出形成されており、固定片76が図14Aに示したように切欠き69を通って曲げられて平板部61が固定されることによってばね部品60”は金具75に取り付けられる。
【0075】
コンタクト50を整列保持する2つのインシュレータ40”にはこのようにして金具75及び2つのばね部品60”が取り付けられ、図17に示した状態の2つのインシュレータ40”間にセラミック素子30の基端部31を挿入し、挿入後、スリーブ70’をスライド移動させ、図13及び14に示した位置にスリーブ70’を位置させることによってコネクタ300とセラミック素子30の接続が完了する。なお、スリーブ70’はこの例では円筒形状をなすものとされている。
【0076】
スリーブ70’がスライド移動してコネクタ300とセラミック素子30の接続が完了した状態では、スリーブ70’は2つのばね部品60”の折り返し片67に被さり、折り返し片67の先端67aを押して弾性変形させる。これにより、セラミック素子30の基端部31の両面に位置する2つのインシュレータ40”は金具75を介して2つのばね部品60”の平板部61によって押され、基端部31を挟み込んで保持し、コンタクト50と基端部31に形成されている端子電極32とが電気的に接続される。
【0077】
この例においてもスリーブ70’はばね部品60”の傾斜面を構成する突出部68によって誘い込まれるものとなっており、スリーブ70’を容易にスライド移動して折り返し片67に被せることができる。
【0078】
なお、金具75の、2つのインシュレータ40”の側面40c、40dの一方に位置する連続部分(中間部分)には大きな開口77が設けられており、これによりばね部品60”に押された際、この部分が変形して2つのインシュレータ40”の凹部40eに位置する部分が良好に変位できるようにされている。
【0079】
上述した実施例2,3のコネクタ200,300も実施例1のコネクタ100と同様、セラミック応用電子機器においてセラミック素子30とリード線96との接続に用いることができ、セラミック素子30の電気的接続を信頼性良く、かつ作業性良く行うことができる。
【0080】
なお、実施例1及び2ではスリーブ70は空洞の断面形状が四角形をなす筒状とし、実施例3ではスリーブ70’は円筒形状をなすものとしているが、スリーブ70,70’の形状は限定されるものではなく、円筒形状及び空洞の断面形状が多角形をなす筒状から選択される。
【符号の説明】
【0081】
11 セラミック素子 12 主体金具
13 ガラスシール 14 外筒金具
15 カバー 15a 開口
16 電極端子部 17 導線
18 コネクタ部 19 リード線
21 グロメット 22 コネクタプラグ
23 保護チューブ 24 絶縁板
25 結合ユニット 26 リング金具
30 セラミック素子 31 基端部
32 端子電極 40,40’,40” インシュレータ
40a 下面 40b 上面
40c,40d 側面 40e 凹部
41 溝 42 穴
43 止め部 44 突出部
45,46 規制部 47 凹部
48 突起 49 凹部
49a ランス部 50 コンタクト
51 先端部 52,53 接点部
54 立ち上げ部 55 フック部
56 接続部 60,60’,60” ばね部品
61 平板部 62 折り返し片
62a 屈曲部 62b 傾斜面
63 フック部 64 折り返し片
64a 先端 64b 傾斜面
65 取り付け片 66 窓
67 折り返し片 67a 先端
68 突出部 69 切欠き
70,70’ スリーブ 75 金具
76 固定片 77 開口
80 保護カバー 81 内側保護カバー
81a 穴 82 外側保護カバー
82a 穴 90 センサ組立体
91 主体金具 91a ネジ部
92 内筒 93 外筒
94a~94c セラミックサポータ 95a,95b セラミック粉体
96 リード線 97 ゴム栓
100,200,300 コネクタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
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