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特許7232184経皮電気神経刺激(TENS)のためのスマート電極部品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-21
(45)【発行日】2023-03-02
(54)【発明の名称】経皮電気神経刺激(TENS)のためのスマート電極部品
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/36 20060101AFI20230222BHJP
【FI】
A61N1/36
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2019533369
(86)(22)【出願日】2017-12-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-30
(86)【国際出願番号】 US2017068266
(87)【国際公開番号】W WO2018119424
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-11-10
(31)【優先権主張番号】62/438,914
(32)【優先日】2016-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506335938
【氏名又は名称】ニューロメトリックス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100196449
【弁理士】
【氏名又は名称】湯澤 亮
(72)【発明者】
【氏名】ゴザニ,シャイ,エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】クライアン,マーク,ピー.
(72)【発明者】
【氏名】アギーレ,アンドレス
(72)【発明者】
【氏名】ハーブ,グレン
(72)【発明者】
【氏名】コン,シュエン
【審査官】山口 賢一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0371547(US,A1)
【文献】国際公開第2016/201366(WO,A1)
【文献】特開2004-141259(JP,A)
【文献】特開2016-099768(JP,A)
【文献】特表2005-511125(JP,A)
【文献】特表2010-518965(JP,A)
【文献】特表2016-517332(JP,A)
【文献】特表2016-523125(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの経皮電気神経刺激のための装置であって、
一又は複数の強度レベルで電気パルスを用いて少なくとも1つの神経を電気的に刺激する刺激ユニット、
前記刺激ユニットに対して接続可能な電極部品であって、前記ユーザの皮膚に接触して置かれるように構成された、電極部品、
前記刺激ユニットと前記電極部品に接続され、前記刺激ユニットの動作が変更されるか否かを判定するように構成されている制御ユニットであって、前記判定は、前記電極部品が前記ユーザの皮膚に接触した時間に基づいており、前記時間は、前記電極部品を通過する刺激電流の強度レベルによって変更され
前記刺激ユニットの前記動作の変更は、前記電極部品を介して刺激電流を供給することを可能、又は不能にすることを含む、
制御ユニット、
を備えることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記電極部品は、検出ユニットを備える
ことを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記電極部品は、記憶ユニットを備える
ことを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記記憶ユニットは、不揮発性メモリ回路である
ことを特徴とする請求項3記載の装置。
【請求項5】
前記電極部品は、無線アクセス可能回路を備える
ことを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項6】
前記無線アクセス可能回路は、無線周波数IDチップである
ことを特徴とする請求項5記載の装置。
【請求項7】
前記記憶ユニットは、前記電極部品の製造状態に関するデータを格納する
ことを特徴とする請求項3記載の装置。
【請求項8】
前記製造状態に関するデータは、電極材料、電極サイズ、刺激ユニットのタイプに対する互換性、刺激電流で変更された皮膚接触制限時間を含むグループのうち少なくとも1つに関するデータを含む
ことを特徴とする請求項7記載の装置。
【請求項9】
前記記憶ユニットは、前記電極部品が前記ユーザの皮膚に接触した前記時間に関するデータを格納する
ことを特徴とする請求項3記載の装置。
【請求項10】
前記電極部品が前記ユーザの皮膚に接触した前記時間長は、前記電極部品を通過する刺激電流の強度によって変更されながら、前記電極部品が前記ユーザの皮膚に接触した時間である
ことを特徴とする請求項記載の装置。
【請求項11】
前記電極部品が前記ユーザの皮膚に接触した前記時間長は、前記電極部品の初回使用からの経過時間である
ことを特徴とする請求項記載の装置。
【請求項12】
前記検出ユニットは、温度センサ、水分センサ、加速度計、ガルバニック皮膚反応センサ、化学物質センサ、皮膚電極インピーダンスセンサを含むグループのうち少なくとも1つを備える
ことを特徴とする請求項2記載の装置。
【請求項13】
前記記憶ユニットは、前記検出ユニットの検出結果に関するデータを格納する
ことを特徴とする請求項3記載の装置。
【請求項14】
前記データは、所与の時点における前記検出結果を含む
ことを特徴とする請求項13記載の装置。
【請求項15】
前記データは、時間経過にともなう検出結果の履歴を含む
ことを特徴とする請求項13記載の装置。
【請求項16】
前記検出結果は、肌温度、周辺温度、肌水分、周辺温度、汗pHレベル、皮膚電極インピーダンス、肌振動を含むグループのうち少なくとも1つを含む
ことを特徴とする請求項13記載の装置。
【請求項17】
前記電極部品は、無線通信リンクを備える
ことを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項18】
前記無線通信リンクは、1-Wire通信である
ことを特徴とする請求項17記載の装置。
【請求項19】
前記制御ユニットは、前記電極部品が前記ユーザの皮膚に接触した、強度変更された時間が閾値を超えた場合に、前記電極部品を新しい電極部品と交換するための通知を前記ユーザに提供するように更に構成された
ことを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項20】
前記制御ユニットは、前記刺激ユニットの動作が変更される前の予測残時間を前記ユーザに提供するように更に構成された
ことを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項21】
前記動作変更は、任意の電極部品を介して刺激電流を供給することを不能にすることである
ことを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項22】
前記動作変更は、刺激パルス振幅、刺激パルス幅、刺激パルス周波数、治療セッション期間、治療セッション開始
を含むグループのうち少なくとも1つの刺激特性を変更することを含む
ことを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項23】
前記制御ユニットは、前記検出ユニットからの検出結果を用いて前記電極部品が前記ユーザの皮膚に接触した前記時間を変更するように更に構成された
ことを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項24】
前記制御ユニットは、前記検出ユニットからの検出結果を前記ユーザに提供するように更に構成された
ことを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項25】
前記制御ユニットは、前記ユーザが用いることを推奨する電極部品のタイプを前記ユーザに提供するように更に構成された
ことを特徴とする請求項1記載の装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<出願中の先行特許出願への参照>
本特許出願は、Neurometrix,Inc.によるShai N.Gozani等の2016年12月23日出願の先行出願である米国仮出願62/438,914号「SMART ELECTRODE FOR TRANSCUTANEOUS ELECTRICAL NERVE STIMULATION」(代理人整理番号NEURO-85 PROV)の優先権を主張する。同出願は参照により本願に組み込まれる。
【0002】
本発明は一般に、電極を介してユーザの無傷の皮膚を交差して電流を供給し、痛みの症状緩和を提供する、経皮電気神経刺激(TENS)デバイスに関する。より具体的には、本発明は、TENS治療において用いる電極の利用管理および痛み緩和治療を提供する刺激制御のための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
経皮電気神経刺激(TENS)は、ユーザの皮膚の無傷の表面を交差して電気(すなわち電気的刺激)を供給して、知覚神経線維を活性化するものである。TENS治療の最も一般的な用途は、例えば慢性疼痛の緩和のための鎮痛を提供することである。TENS治療のその他用途としては、下肢静止不能症候群の症状抑制、夜間筋痙攣の抑制、全身性掻痒の緩和、などが挙げられるが、これに限らない。電極が皮膚と接触して配置されると、電気刺激が生成され、電極-皮膚インターフェースを介して身体組織に対して供給される。
【0004】
知覚神経刺激がどのように痛みを緩和するのかについての概念モデルは、1965年にMelzackとWallによって提案された。彼らの理論は、知覚神経(Aβ線維)の活性化が脊髄の「痛覚ゲート」を閉じ、これにより侵害受容器(C線維とAδ線維)が脳へ搬送する痛覚信号の伝搬を妨げることを提案している。過去20年において、痛覚ゲートの基盤になっている解剖学的経路と分子メカニズムは、分かっていない。知覚神経刺激(例えばTENSを介して)は、下行疼痛抑制システム(主に中脳に配置されている中脳水道周囲灰白質(PAG)と骨髄(RVM)および脳幹の髄質)を活性化する。PAGはRVMに対して神経投射を有しており、これにより上昇痛覚信号伝搬を阻害する脊髄後角に対する両側面投影を拡散させる。
【0005】
電極が皮膚と接触して配置されると電気刺激が生成され、電極-皮膚インターフェースを介して身体組織に対して供給される。TENSは通常、短時間の個別パルスによって供給され、各パルスは通常、数100マイクロ秒の期間を有し、10~150Hzの周波数を有し、ユーザの皮膚と直接接触して配置されるハイドロゲル電極パッドを介して供給される。
【0006】
有効な刺激を可能とするため、良好な電極-皮膚インターフェース状態を維持する必要がある。多くの要因が、電極-皮膚インターフェース状態に影響し得る。これら要因としては、例えば皮膚の乾燥や皮膚の温度などの肌状態が挙げられる。電極が肌上に接している時間やTENS刺激時間と強度などの要因も、電極-皮膚インターフェース状態の悪化速度に対して影響し得る。電極-皮膚インターフェース状態が悪いと、神経に対して不適切な電気刺激を与え、これによりTENS治療の効果を損ねる可能性がある。
【0007】
適切な電極-皮膚インターフェース状態を確実にするために、TENSユーザはTENS電極を固定時間間隔で交換する場合がある。固定時間間隔でTENS電極を交換するのは大多数のユーザにとって有用だが、皮膚状態が平均よりも乾燥しているユーザにとってまたはTENS電極を特定の期間においてあまり頻繁に使用しないユーザにとっては適切でない可能性がある。したがって、この制約を克服するスマートTENS電極部品に対するニーズがある。
【0008】
またTENS治療は、慢性疼痛を緩和するために提供される。日中と夜間においてTENS治療を受けるのが有用なユーザもいる。慢性疼痛は睡眠を妨げることが知られており、夜間におけるTENS治療は痛みを緩和して睡眠への影響を最小にすることができる。固定TENS治療投与(電気刺激の供与、時間、強度の観点)は、夜間を通して実施するのは適切ではない可能性がある。睡眠品質と睡眠パターンは毎夜異なるからである。したがって、各夜における実際の睡眠パターンに基づき、正確に睡眠をモニタリングしてTENS治療投与を調整する、スマートTENS電極部品に対するニーズがある。
【0009】
さらに、ほとんどの慢性疼痛患者にとってTENS治療の利益を最大限享受するためには、強度は強いが心地よい間隔を呼び起こすレベルで、電気刺激強度をセットする必要があることが分かっている。ターゲット刺激強度レベルI(強いが心地よい間隔をもたらす)は、各ユーザにとって経時変化する。このターゲット刺激強度レベルの変化は、概日リズム(例:時刻または日付)やより長い期間的傾向(例:病状進行)や環境条件(例:天候)などに関連している。ターゲット刺激強度のマニュアル調整は、ユーザによっては不便または非実用的である。したがって、リアルタイムで刺激の効果を測定して自動的にTENS刺激強度を調整し、各TENS治療セッションの効果を最大化することができる、スマートTENS電極部品を開発するニーズがある。
【0010】
上記に加えて、最近の電子工学およびインテリジェントアルゴリズムは、TENS治療設定をより正確かつ個別化できるようにした。TENS電極における任意の変化(例:材料、サイズ、形状、などの観点)は、ユーザに対する電気刺激の供給に対して影響し得る。したがって、電極-皮膚インターフェースを介してユーザの身体に対して伝搬される電流に影響する、製造元、使用材料、サイズ、形状、その他特性を個別識別することができるスマートTENS電極部品に対するニーズがある。なお、本発明に関連する従来技術として、米国特許第8948876号明細書(基本的なTENS動作)、米国特許第10279179号明細書(夜間における睡眠中のTENS動作の変更)、米国特許第11191443号明細書(電極-皮膚インターフェースの完全性の保護)、米国特許出願公開第
2005/0283204号明細書(TENS刺激強度の最適化)、米国特許出願公開第2014/0371547号明細書(アクティグラフデータを介したユーザ睡眠のモニタリング)、米国特許出願公開第2015/0335288号明細書(ユーザ生理学的状態のモニタリング)、及び米国特許出願公開第2015/0306387号明細書(TENS機器の皮膚接触時間のモニタリング)がある。更に、本発明に関連する従来技術として、“OKAMOTO-MIZUNO,K.ET.AL.,Effects of thermal environment on sleep and circadian rhythm,Journal of Physiological Anthropology,2012,Vol.31,No.14,pages 1-9”及び“SANO,A.ET.AL.,Quantitative analysis of wrist
electrodermal activity during sleep,International Journal of Psychophysiology,2014,Vol.94,pages 382-389”がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、支持材料(すなわち基板)の層上に配置された1以上の導電ハイドロゲル電極パッドを備え、これによりスマート電極部品を形成する、新しいスマート電極部品を含む。各ハイドロゲル電極パッドは、コネクタを介してTENS刺激器に対して電気的に接続されている。統合回路(IC)部品は、前記指示材料(すなわち基板)の各(または両)側面に配置されており、前記支持基板は前記導電ハイドロゲル電極パッドを支持する。様々なタイプのセンサ(例:熱センサ、化学物質センサ、水分センサ、力センサ、加速度計、ジャイロスコープ、など)が、前記導電ハイドロゲル電極パッドを支持する前記指示材料の各(または両)側面に配置されている。前記センサからのデータは、前記TENS刺激器に対して直接送信され、またはIC部品(前記支持材料が支持する)に格納されてから後に前記TENS刺激器へ送信される。前記IC部品は、前記スマート電極部品の様々な物理的(例:サイズ、形状、材料組成、など)および時間的(例:製造日、使用期間、など)側面の特徴を記述した情報を格納する。前記IC部品が格納しているその他情報は、規制要件に準拠するため、意図されている使用領域または使用国(例:米国、欧州共同体、中国、など)を格納することもできる。前記IC部品が格納している情報は、TENS刺激器に対して送信される。TENS刺激器は、1以上の上記ソースからの情報を統合し、その情報を用いて刺激設定を変更し、前記センサの挙動を変更し、および/または前記IC部品のメモリ内容を更新する。前記TENS刺激器は、前記オンボードセンサと前記IC部品以外のソースからの情報を用いて、刺激パラメータを変更することもできる。例えば前記TENS刺激器は、ユーザフィードバック、外部情報ソース(天気ステーション予測など)などを用いて、刺激パラメータを変更することもできる。
【0012】
前記TENS刺激器を、前記スマート電極部品の支持材料(すなわち基板)の層上に永続的または着脱可能に取り付け、あるいは、前記スマート電極部品の前記支持材料(すなわち基板)の層を、前記TENS刺激器に対して永続的または着脱可能に取り付けることができる。前記TENS刺激器と前記スマート電極部品が互いに取り付けられる態様によらず、前記TENS刺激器は前記スマート電極部品の前記1以上の導電ハイドロゲル電極パッドに対して電気的に接続されている。また前記TENS刺激器は、読み書き機能により、前記スマート電極部品の支持材料(すなわち基板)の層に取り付けられた部品(例:前記IC部品、前記センサ、など)と通信するように構成されている。通信は、暗号化または非暗号化で実施することができる。
【0013】
本発明の望ましい1形態において、ユーザの経皮電気神経刺激のための装置を提供する。前記装置は:
電気パルスを用いて少なくとも1つの神経を電気的に刺激する刺激ユニット;
前記刺激ユニットに対して接続可能な電極部品であって、検出ユニット、記憶ユニット、および通信ユニットを備えた、電極部品;
前記刺激ユニットと前記通信ユニットに接続され、前記電極部品からの情報に基づき前記刺激ユニットの動作を制御するように構成されている、制御ユニット;
を備える。
【0014】
本発明の望ましい別形態において、ユーザの経皮電気神経刺激のための装置を提供する。前記装置は:
電気パルスを用いて少なくとも1つの神経を電気的に刺激する刺激ユニット;
前記刺激ユニットに対して接続可能な電極部品であって、検出ユニットと通信ユニットを備えた、電極部品;
前記ユーザの睡眠特性を分析するように構成された睡眠判定ユニット;
前記刺激ユニット、前記通信ユニット、および前記睡眠判定ユニットに接続され、前記前記刺激ユニットの動作を制御するように構成されている、制御ユニット;
を備える。
【0015】
本発明の望ましい別形態において、ユーザの経皮電気神経刺激のための方法を提供する。前記方法は:
前記ユーザの身体に対して電極部品を取り付けるステップ;
前記電極部品に対して刺激ユニットを接続するステップ;
前記電極部品と前記ユーザのうち少なくともいずれかの少なくとも1つの特性を測定するステップ;
前記少なくとも1つの測定した特性に基づき刺激パラメータを決定するステップ;
前記刺激パラメータを用いて少なくとも1つの神経を刺激するステップ;
を有する。
【0016】
本発明の望ましい別形態において、ユーザの経皮電気神経刺激のための方法を提供する。前記方法は:
前記ユーザの身体に対して電極部品を取り付けるステップ;
前記電極部品に対して刺激ユニットを接続するステップ;
前記電極部品と前記ユーザのうち少なくともいずれかの少なくとも1つの特性を測定するステップ;
前記電極部品の状態を前記ユーザに対して送信するステップ;
を有する。
【0017】
本発明の望ましい別形態において、ユーザの経皮電気神経刺激のための方法を提供する。前記方法は:
前記ユーザの身体に対して電極部品を取り付けるステップ;
前記電極部品に対して刺激ユニットを接続するステップ;
前記ユーザの少なくとも1つの特性を測定して前記ユーザの睡眠特性を判定するステップ;
前記判定した前記ユーザの睡眠特性に基づき刺激パラメータを決定するステップ;
前記刺激パラメータを用いて少なくとも1つの神経を刺激するステップ;
を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明のこれらおよびその他の目的と特徴は、以下に説明する本発明の望ましい実施形態の詳細説明によって完全に開示されまたは明らかになる。これらは添付する図面とともに考慮され、図面において同様の番号は同様の部品を指している。
図1】本発明にしたがって形成された新しいスマート電極部品を備える新しいTENSデバイスを示す概略図である。新規TENSデバイスは、ユーザのふくらはぎ上部に取り付けられている。
図2図1の新規スマート電極部品を備える新規TENSデバイスを詳細に示す概略図である。
図3図1図2の新規スマート電極部品を詳細に示す概略図である。
図4図1図3の新規TENSデバイスのTENS刺激器と電極-皮膚インターフェースを示す概略図である。
図5図1図4の新規TENSデバイスのTENS刺激器が生成した電気刺激パルス列の例を示す概略図である。
図6図1図5に示すTENSデバイスの皮膚上検出システムとともに、TENSデバイスがユーザの皮膚を着脱するときにおける等価回路を示す概略図である。
図7】データ記憶部およびスマート電極部品とTENS刺激器との間の通信リンクを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<TENSデバイス一般>
本発明は、ユーザのふくらはぎ上部(またはその他の解剖学的位置)に配置するように設計されたTENS刺激器、および、ユーザのふくらはぎ上部(またはその他の解剖学的位置)に配置された少なくとも1つの神経に対してTENS刺激器からの電気刺激を印加するように設計されたスマート電極部品、を備える新規TENSデバイスを提供することおよびその使用方法を含む。本発明の主要特徴は、スマート電極部品が、肌温度、肌状態(例:乾燥)、電極皮膚接触時間、電極使用期間、電極-皮膚インピーダンス、などの要因を測定およびトラッキングすることである。これら要因は、スマート電極部品のハイドロゲル電極パッドの材料組成や形状などの製造仕様とともに、ユーザに対してTENS治療の刺激電流を供給するスマート電極部品の品質と寿命に対して影響し得る。
【0020】
より具体的には、図1を参照して、本発明にしたがって形成された新規TENSデバイス100は、TENS刺激器105、ストラップ110、スマート電極部品120を備える。新規TENSデバイス100は、ユーザのふくらはぎ上部121に装着されている。スマート電極部品120は、TENS刺激器105とストラップ110の裏面に配置されており、これによりスマート電極部品はTENS刺激器とストラップの「下側」となる。ユーザはTENSデバイス100を片足または両足に装着し(1つずつまたは同時に)、あるいはユーザはTENSデバイス100を、片足(または両足)に装着したTENSデバイス100から離れた身体のその他領域に装着しまたはこれに加えて装着する。
【0021】
図2を参照する。TENSデバイス100を詳細に示す。TENSデバイス100は、前述の3つの部品:刺激器105、ストラップ110、スマート電極部品120(以下に説明するように、TENS刺激器105に対して適切に電気的接続された、少なくとも1つのカソード電極と少なくとも1つのアノード電極を備える)を備える。図2に示すように、TENS刺激器105は、3つの機械的および電気的に相互接続された区画101、102、103を備える。区画101、102、103は、ヒンジ機構104(図2においてそのうち1つのみが見えている)によって相互接続されており、これによりTENSデバイス100は、ユーザの足の曲線形状に適合することができる。本発明の望ましい実施形態において、区画102はTENS刺激回路(バッテリを除く)とユーザインターフェース素子106、108を収容している。
【0022】
本発明の望ましい1実施形態において、区画101と103は、TENS刺激回路およびその他回路に対して電力供給するバッテリと、その他補助素子とを収容する小型予備区画である。例えば当該分野において知られている、TENSデバイス100が他の素子(例:図2のハンドヘルド電子デバイス860、例えばスマートフォン)と無線通信できるようにする無線インターフェースユニット(図示せず)を収容する。
【0023】
本発明の別形態において、1または2つの区画のみを用いて、本発明のTENS刺激回路、バッテリ、その他補助素子を収容してもよい。
【0024】
本発明の別形態において、より多くの区画を用いてもよい。これによりTENSデバイス100は例えば、身体に対してより適合し、ユーザの快適性を向上できる。
【0025】
本発明の別形態において、フレキシブル回路基板を用いて、TENS刺激回路とその他回路をユーザの足周りにより均一に取り付け、これによりデバイスの厚さを減らしてもよい。
【0026】
図2を続いて参照する。インターフェース素子106は、TENSデバイス100による電気刺激をユーザが制御するためのプッシュボタンを備え、インターフェース素子108は、刺激状態を示しユーザに対してその他フィードバックを与えるためのLEDを備える。図2は単一のLEDを示しているが、インターフェース素子108は異なる色の複数のLEDを備えてもよい。当該分野において良く知られている無線インターフェースユニット(図示せず)が区画102内に組み込まれ、これによりTENSデバイス100は、ユーザインターフェースの別形態として、他素子(例:スマートフォンなどのハンドヘルド電子デバイス860)と無線通信できる。別のユーザインターフェース素子(例:LCDディスプレイ、ビープや音声出力を介した音声フィードバック、振動素子などの触覚デバイス、など)を組み込むことも、本発明の範囲とみなされる。
【0027】
本発明の望ましい1実施形態において、TENSデバイス100は図1に示すように、ユーザのふくらはぎ上部121に装着するように構成されている。ただしTENSデバイス100はその他の解剖学的位置に装着することもでき、あるいは複数のTENSデバイス100を様々な解剖学的位置に装着してもよいことを理解されたい。TENSデバイス100(上記TENS刺激器105、ストラップ110、スマート電極部品120を備える)は、装置をふくらはぎ上部(またはその他解剖学的位置)に対して配置した後にストラップ110を締めることにより、ユーザのふくらはぎ上部121(またはその他解剖学的位置)に固定される。より具体的には、本発明の望ましい1実施形態において、スマート電極部品120は、ユーザの足上(またはその他解剖学的位置)におけるTENSデバイス100の回転位置によらず、ユーザの適切な生体構造に対して適切な電気刺激を供給するように、サイズと構成を設計されている。
【0028】
図3は、スマート電極部品120の望ましい1実施形態の概略図を示す。スマート電極部品120は、支持材料124の層を備える。支持材料124は、フレキシブル非導電構造であり、スマート電極部品120のその他部品を支持する基板として動作する。支持材料124(すなわち基板)は、例えばMylar(登録商標)のシートを備えるが、これに限るものではない。
【0029】
スマート電極部品120は、支持材料124上に取り付けられた複数のハイドロゲル電極パッドを備える。少なくとも1つのハイドロゲル電極パッドはTENS刺激器105のカソード電極として動作し、少なくとも1つのハイドロゲル電極パッドはTENS刺激器105のアノード電極として動作する。本発明の望ましい1形態において、4つの個別電極152、154、156、158はそれぞれハイドロゲル電極パッドを備え、これらはそれぞれ同じもしくは同様のサイズを有する(すなわち、同じもしくは同様の表面積を有する)。
【0030】
電極152、154、156、158はペア接続され、これにより電極154と156(TENSデバイス100のカソード電極を表す)は互いに電気的接続され(例:コネクタ155を介して)、電極152と158(TENSデバイス100のアノード電極を表す)は互いに電気的接続される(例:コネクタ157を介して)。電極152、154、156、158は適切なサイズを有し、ペア接続され、これによりユーザの足上(またはその他解剖学的位置)におけるTENSデバイス100の回転位置によらず(したがってスマート電極部品120の回転位置によらず)、適切に皮膚をカバーすることを理解されたい。
【0031】
スマート電極部品120は、支持材料124(すなわち基板)に取り付けられた検出ユニット130を備える。検出ユニット130は、温度、水分、ガルバニック皮膚反応、化学物質モニタリングなどを検出する1以上のセンサを備える。
【0032】
スマート電極部品120は、支持材料(すなわち基板)124に取り付けられたデジタルユニット140を備える。デジタルユニット140は、検出ユニット130からのデータを格納する1以上のIC部品を備える。デジタルユニット140のIC部品は、スマート電極部品120の特性を特定する情報を格納する。例えばゲルパッド材料タイプと形状サイズ、製造日、電極識別番号、などの特性である。
【0033】
またスマート電極部品120は、検出ユニット130とデジタルユニット140内のデータをTENS刺激器105に対して送信可能にする(必要であれば、TENS刺激器105が命令、新データ、などを検出ユニット130および/またはデジタルユニット140に対して送信可能にする)電子部品を有する通信ユニット135を備える。
【0034】
本発明の望ましい1形態において、検出ユニット130は通信リンク146を介して通信ユニット135と通信し、デジタルユニット140は通信リンク145を介して通信ユニット135と通信する。検出ユニット130とデジタルユニット140との間の通信は、通信リンク147を介して実施できる。
【0035】
通信リンク145、146、147は図3においてライン接続として示しているが、接続されている部品間の実際の通信リンクは必要であれば無線であってもよい。
【0036】
デジタルユニット140はオプションとして、パワーソース149(例えばボタンバッテリ)を備え、これにより、スマート電極部品120がTENS刺激器105と接続されていないときデジタルユニット140と検出ユニット130を動作可能とする。
【0037】
図3に示す望ましい実施形態において、検出ユニット130とデジタルユニット140は、1以上のハイドロゲル電極パッド(すなわち電極)152、154、156、158と同様に、支持材料(すなわち基板)124の同じ側に配置されている。ただし検出ユニット130とデジタルユニット140は、必要であれば支持材料124の対向面に配置できることを理解されたい。通信ユニット135は、TENS刺激器105と接続することができるその他素子と同様に支持材料124の同じ側に配置することができる。
【0038】
本発明の望ましい形態において、電極152、154、156、158はインターリーブ接続されていないが、2つの内側電極154と156が相互接続され、2つの外側電極152と158が相互接続されていることを理解されたい。この電極接続パターンにより、2つの外側電極151と158が誤って接触した場合、カソードからアノードへ直接流れる刺激電流の短絡は生じない(すなわち、電極接続パターンにより、治療TENS電流は常にユーザの組織に対して向けられる)。
【0039】
電流(すなわち組織に対する治療電気刺激)は、コネクタ160と162(図3)によって、電極ペア154、156と152、158に対して供給される。コネクタ160と162は、TENS刺激器105上で補助コネクタ210、212(図4)とそれぞれ嵌合する。TENS刺激器105は電流を生成し、電流はコネクタ160、162を介して電極154、156と電極152、158を通過する。
【0040】
本発明の望ましい1実施形態において、電極152、154、156、158の皮膚接触導電材料は、電極152、154、156、158に対して「組み込まれた」ハイドロゲル材料である。換言すると本発明の望ましい1形態において、電極152、154、156、158はそれぞれ、ハイドロゲル電極パッドを備える。電極におけるハイドロゲル材料の機能は、電極152、154、156、158とユーザの皮膚との間のインターフェースとして作用することである(すなわち、刺激を与える知覚神経が存在している、ユーザの身体の部分の内部、隣、または近傍)。例えば乾燥電極や非接触刺激電極などのようなその他タイプの電極も、本発明の範囲内に含まれる。
【0041】
図4は、TENSデバイス100とユーザとの間の電流の概略図である。図4が概略的に示すように、定電流源410からの刺激電流415は、アノード電極420(アノード電極420は上記電極152と158を含む)を介してユーザの組織430(例:ユーザのふくらはぎ上部)に対して流れ込む。アノード電極420は、導電支持部442(例:銀ハッチ)とハイドロゲル444を備え、導電支持部とハイドロゲルは支持材料(すなわち基板)124上に配置されている。換言すると、電極152と158はそれぞれ、支持材料(すなわち基板)124上に配置されたハイドロゲル電極パッドを備える。電流はユーザの組織430を通過し、カソード電極432(カソード電極432は上記電極154と156を含む)を介して定電流源410に戻る。カソード電極432は、導電支持部442とハイドロゲル444を備え、導電支持部とハイドロゲルは支持材料(すなわち基板)124上に配置されている。換言すると、電極154と156はそれぞれ、支持材料(すなわち基板)124上に配置されたハイドロゲル電極パッドを備える。定電流源410は、TENS治療の分野においてよく知られている適切な2相波形(すなわち2相刺激パルス)を提供する。この点について、「アノード」「カソード」電極の割り当ては、2相波形の意味において形式的なものであることを理解されたい(すなわち、2相TENS刺激の第2フェーズにおいて2相刺激パルスが極性反転すると、電流はユーザの身体に対して「カソード」電極432を介して流れ込み、「アノード」電極420を介してユーザの身体から出て行く)。
【0042】
図5は、TENS治療セッション482においてTENS刺激器105が提供するパルス列480、および2つの個々の2相パルスの波形490を示す概略図である。各2相パルスは、第1フェーズ491と第2フェーズ492を有する。本発明の1形態において、各パルス波形は2相パルスの2つのフェーズ491と492の間で電荷がバランスしており、これによりスマート電極部品120の電極下方でイオン導入が生じることを防ぐ。これは皮膚炎症や皮膚ダメージにつながるものである。本発明の別形態において、各パルスは2相パルスの2つのフェーズ間でバランスしていないが、複数の連続2相パルス間では電荷をバランスさせている。固定またはランダム変化周波数のパルスを、治療セッション482を通じて供給する。刺激強度(すなわちTENS刺激器105が供給する電流の振幅493)は、ユーザ入力に応じて、慣れ補償のために調整される。これについては以下詳述する。
【0043】
昼夜にわたってユーザに対して常時快適かつ効果的な痛み緩和を提供するためには、固定TENS刺激レベルを供給するのは適切ではない。概日リズムその他経時変化リズムの効果により、TENS刺激の有用性が弱まるからである。TENS刺激の効果に影響するパラメータとしては、以下が挙げられるがこれに限らない:刺激パルス振幅493とパルス幅494、パルス周波数495、治療セッション期間482。例えば振幅を大きくしてパルス長を長くすれば(すなわちパルスチャージ大)、ユーザに対する刺激は増え(すなわち刺激「投与」が増え)、治療セッションを短くすればユーザに対する刺激は減る(すなわち刺激「投与」が減る)が、これに限らない。臨床研究によれば、パルス電荷(すなわちパルス振幅とパルス幅)と治療セッション期間は、ユーザに対して供給する治療刺激(すなわち治療刺激「投与」)に対して最も影響が大きい。
【0044】
図6を参照する。皮膚接触検出器265をTENSデバイス100に組み込んで、スマート電極部品が皮膚に接触している時間を判定できる。皮膚接触時間は、スマート電極部品が皮膚と接触している時間長として定義され、これにより治療刺激電流が電極を介してユーザに対して供給されるか否かが変わる。より具体的には、スイッチ220を閉じることにより、電圧源204からの20ボルトの電圧が、TENS刺激器105のアノード端子(コネクタ212)に対して印加される。ユーザがTENSデバイスを装着すると、ユーザ組織430(アノード電極420とカソード電極432との間に配置されている)は閉回路を形成し、抵抗208と206が形成する分圧回路に対して電圧を印加する。より具体的には、TENSデバイス100がユーザの皮膚上にあるとき、図6に示す等価回路260は実世界のシステムを表し、等価回路260において、アノード電圧Va(電圧源204からのもの)は分圧抵抗206と208を介して検出される。TENSデバイス100がユーザの皮膚に固定されているとき、増幅器207から測定されるカソード電圧は非ゼロであり、アノード電圧(電圧源204からのもの)に近い。一方でTENSデバイス100がユーザの皮膚に固定されていないとき、等価回路270は実世界システムを表し、増幅器207からのカソード電圧はゼロである。
【0045】
<スマート電極部品とTENS刺激器との間の通信>
図7を参照する。TENS刺激器105は、制御ユニット171と刺激ユニット172を備える。制御ユニット171は、適切にプログラムされたマイクロプロセッサを備える。マイクロプロセッサは刺激ユニット171の動作を制御し、これによりTENS刺激器105がユーザに対して与える刺激電流をレギュレートする。制御ユニット171はTENSデバイス100の様々な部品と通信し、これにより適切なTENS治療をユーザに対して提供することを理解されたい。例えば制御ユニット171は、ユーザインターフェース素子106と108、ハンドヘルド電子デバイス860、皮膚接触検出器265などと通信する。
【0046】
本発明にしたがって、以下に説明するように、制御ユニット171はスマート電極部品120の通信ユニット135と通信し、これにより制御ユニット171は検出ユニット130およびデジタルユニット140と通信することができる。
【0047】
より具体的には、スマート電極部品120についての情報(例えば電極タイプと製造元)は、デジタルユニット140のデジタル記憶ユニット142上においてスマート電極部品120に格納される。デジタル記憶ユニット142は、例えばROM(すなわち読取専用メモリ)などの不揮発性メモリ回路を備える。検出ユニット130からのデータ(例えば温度センサからのデータ)は、デジタルユニット140のデジタル記憶ユニット141上においてスマート電極部品120に格納される。デジタル記憶ユニット141は例えばフラッシュメモリを備える。使用データ(例えばスマート電極部品120の初回使用の「タイムスタンプ」)は、デジタルユニット140のデジタル記憶ユニット143上においてスマート電極部品120に格納される。デジタル記憶ユニット143は例えば、RFID(無線周波数ID)タグと1-Wireデバイスを備える。
【0048】
デジタルユニット140が格納する情報は、通信ユニット135を介して、スマート電極部品120と制御ユニット171との間で送信される。より具体的には、本発明の望ましい1形態において、通信リンク145(例えばデジタルユニット140の特定のデジタル記憶ユニット141、142、143のために開発された業界標準通信プロトコルを実装したもの)は、共通インターフェース(またはバス)144を介してデジタル記憶ユニット141、142、143と通信し、通信リンク145は通信ユニット135と通信する。
【0049】
これに加えておよび/またはこれに代えて、TENS刺激器105の刺激ユニット172は、通信チャネル148を介して直接、デジタルユニット140のデジタル記憶ユニット143内の使用データを通信することができる。
【0050】
検出ユニット130からの情報(スマート電極部品120に組み込まれている)は、通信リンク146と通信ユニット135を介して、制御ユニット171に対して直接送信される。これは例えば1-Wire通信プロトコルを介して実施される。例えばRFIDプロトコルなどの無線通信リンクを採用することもできる。検出ユニット130からの情報は、スマート電極部品120をTENS刺激器105に対して接続することなく、通信チャネル147を介して、デジタルユニット140のデジタル記憶ユニット141上においてスマート電極部品120上に格納することができる。これは特に、スマート電極部品が使用中ではないとき(すなわち、スマート電極部品がTENS刺激器105と接続されていないとき)記憶環境状態をモニタするスマート電極機能にとって有用である。電源149(例えばスマート電極部品120が備えるボタンバッテリ)を提供して、スマート電極部品がTENS刺激器105に接続されていないときスマート電極機能を可能にすることができる。
【0051】
本発明の望ましい1形態において、スマート電極部品120は、暗号プロトコルを介してのみスマート電極部品と接続されたTENS刺激器105と通信するように設計されている。本発明の別形態において、検出ユニット130および/またはデジタルユニット140が保持している情報のサブセットは、非暗号化プロトコルによってTENS刺激器105へ送信することができる。本発明の別形態において、スマート電極部品120の検出ユニット130および/またはデジタルユニット140が保持している情報のサブセットは、任意の「リーダ」によって読み取ることができるが、暗号プロトコルを介してTENS刺激器105によってのみ変更することができる。
【0052】
<電極タイプに基づくTENS刺激制御>
本発明の望ましい1形態において、共通の機械的電気的接続インターフェースを、TENS刺激器105と一連のスマート電極部品120との間に配置し、各スマート電極部品は異なる特性を有する。本発明のこの形態において、TENS刺激器105の制御ユニット171は、スマート電極部品に格納されている情報に基づき、TENS刺激器105に接続されているスマート電極部品120のタイプを判定するように構成されている。
【0053】
本発明の望ましい1形態において、スマート電極部品の電極タイプについての情報は、集積回路(IC)チップ(すなわちデジタルユニット140のデジタル記憶ユニット142)内にコード化されている。これは、1-Wire、I2C、RFIDなどの通信プロトコルを介して、TENS刺激器105が読み取ることができる。スマート電極部品を認識できない場合、またはスマート電極部品がサポートされているスマート電極部品セットに属していない場合、TENS刺激器105は電極部品を、デフォルト特性を有する特殊タイプの電極部品として取り扱うことができる。
【0054】
本発明の別形態において、TENS刺激器105は、電極タイプが認識できないときユーザの電気刺激を終了することができる。
【0055】
本発明の別形態において、TENS刺激器105は、特定のスマート電極部品が接続されるまで機能停止することができる。
【0056】
本発明の別形態において、電極タイプが認識できないとき、TENS刺激器105は、TENS刺激器が製造業者によってリセットされるまで機能停止することができる。
【0057】
本発明の望ましい1形態において、電極アレイがTENS刺激器105によって認識されないとき、フィードバック(例えばLED点滅)をユーザに対して提供する。
【0058】
本発明の別形態において、TENS刺激器105が電極部品を認識できないとき、ユーザにとって特定のTENS刺激器105の機能が利用不能となったことを除き、ユーザに対してフィードバックを提供しない。
【0059】
電極タイプの1側面は、ハイドロゲル電極パッドのゲル特性である。例えば防汗ゲルは水分吸収が少なく、したがって湿気が多い天気において屋外活動で用いるのに適しているが、これに限らない。標準ゲルは多くの水分を含み、毎日の使用における連続した快適なインターフェースを提供する。ハイドロゲル電極パッド内のゲルの水分含有レベルに起因して、各タイプの電極は、ハイドロゲル電極パッドがユーザの皮膚上に配置されたとき、それぞれ異なる電極-皮膚インターフェース特性を有することになる。防汗ゲルタイプを利用するハイドロゲル電極パッドは、より高い電極-皮膚インターフェースインピーダンスが予測される。
【0060】
本発明の1形態において、電極ゲルタイプに基づき、TENS刺激器105の制御ユニット171は、異なるゲルタイプのインピーダンス差を補償するようにTENS刺激器105の刺激パラメータをセットするように構成されている。
【0061】
刺激パラメータ調整に加えて、TENS刺激器105は、使用パラメータを適応予測するように構成されている。本発明の望ましい1形態において、標準ゲルタイプ電極の使用履歴に基づき、残バッテリ容量(利用可能な治療セッション回数の観点)を計算してユーザに対し報告する。防汗ゲル付きの電極を有するスマート電極部品が検出された場合、防汗ゲルの高いインピーダンスに起因して、バッテリ容量(利用可能な治療セッションの回数で表される)は、新ゲルタイプの実際の使用履歴を蓄積することなく、より小さい値へ適応的に調整することができる。
【0062】
電極タイプのその他の側面は、ハイドロゲル電極パッドのサイズである。同じ刺激電流強度を仮定すると、電極-皮膚接触面積が小さければ、電流密度(電流強度を接触面積で除算することにより定義される)が大きいので、刺激の感覚はより強い。ある電極サイズを有するスマート電極部品においてある刺激強度レベルまで較正したTENS刺激器をユーザが所有している場合、より小さい電極サイズのスマート電極部品120へ後に交換すると、TENS刺激器105の制御ユニット171は、刺激強度を自動的に減少させて、強すぎる刺激密度に起因する(すなわち、新たなスマート電極部品の電極が小さくなり、電極-皮膚接触面積が減少することに起因する)不快感をユーザに対して生じさせないように構成される。小サイズハイドロゲル電極パッドを有するスマート電極部品から大サイズハイドロゲルパッドのものへ、ユーザが電極タイプを交換したとき、同様の調整をして同じ刺激感覚を維持することができる。
【0063】
電極タイプの別側面は、電極分類である。例えば国や地域が異なれば、電極に対する要求が異なる場合がある。それらの要求は、機能的なものではなくラベル付けである場合がある。同じTENS刺激器を複数の地域へ配布しつつ、規制要件に適合することができる。TENS刺激器105が電極の特定分類に「ロックオン」(すなわち正確に機能するように調整する)できるようにするため、スマート電極部品の単一の分類とのみ動作するようにTENS刺激器を構成することができる。TENS刺激器がサポートする分類の電極部品に対してTENS刺激器105が接続されたとき、TENS刺激器に接続されたスマート電極部品の特定分類までサポート分類タイプを自動的に減少させるように、TENS刺激器を構成することができる。異なる分類の電極部品は、TENS刺激器が電極部品を介して電気刺激を供給できないようにする。また、TENS刺激器の補助機能(例えば活動トラッキングや睡眠モニタリング)も、最初に接続された電極部品の分類タイプとは異なる分類タイプの電極部品に対して接続されたとき、無効化することができる。
【0064】
<電極使用トラッキング>
本発明の望ましい1形態において、スマート電極部品120の電極は、ハイドロゲルベース材料で作成することが望ましい。ハイドロゲルベース材料を利用する電極の接着特性と導電特性は、使用回数と時間によって劣化する。したがって、使用時間と間隔に基づきスマート電極部品120を交換することが望ましい。使用時間は、スマート電極部品120がユーザの皮膚と接触している蓄積時間である。使用間隔は、現在時刻と、スマート電極部品の最初の使用時刻との間の経過時間である。
【0065】
従来技術において、交換スケジュールを固定使用間隔としてユーザに対して通知する場合がある。例えばTENS電極を2週間ごとの使用間隔で交換する、などである。このような固定使用間隔推奨は一般に、通常ユーザ状態の下における通常の毎日の使用期間に基づいている。これは、電極品質が通常使用状態よりも速く劣化するユーザにとっては、準最適治療結果をもたらす可能性がある。同様に固定交換スケジュールは、電極を必要以上に早く交換する可能性がある。
【0066】
したがって、本発明の望ましい1形態において、スマート電極部品120は、デジタル記憶ユニット143(デジタルユニット140内)を用いて、総使用時間を格納する。格納時間は、製造した新たなスマート電極部品についてはゼロに初期化される。スマート電極部品が後にTENS刺激器105と接続されて「皮膚上」に配置されたとき、TENS刺激器105の制御ユニット171は、そのスマート電極部品の使用時間をトラッキング開始する。TENS刺激器105は、蓄積皮膚上時間によって、スマート電極部品120のデジタル記憶ユニット143を更新する。この更新は、規定時間間隔で実施することが望ましい。望ましい1実施形態において、更新間隔は1分である。
【0067】
60分の治療セッションにおいて、スマート電極部品の総使用時間は、60分ずつ増える。オプションとして、治療セッションの時間長は、スマート電極部品を通過する刺激電流強度に比例する係数によって変更される。変更した時間長は、総使用時間に加算される。また電気刺激がアクティブでない皮膚上時間も、別の(例:より小さい)変更係数で総使用時間に加算することができる。本発明の別形態において、デジタルユニット140は、スマート電極部品120が皮膚上にある時間をトラッキングする電子部品を備え、これによりスマート電極部品の総使用時間を、TENS刺激器105に対して接続するか否かによらず正確にトラッキングする。
【0068】
本発明の望ましい形態において、2つの閾値を総使用時間に対してセットする。1つの閾値を用いて、スマート電極部品を交換するリマインダ(Threshold4Reminder1)を起動し、もう1つの閾値(Threshold4Unusable1)を用いて、スマート電極部品が使用不能であることをマークする。総使用時間がThreshold4Reminder1閾値を超えると、TENS刺激器105はユーザフィードバックを起動して、ユーザに対してスマート電極部品交換をリマインドするように構成される。閾値は、同じデジタル記憶ユニット143に対して、異なる場所でスマート電極部品に対してセットおよび格納することができる。閾値はTENS刺激器105のユーザによってセットし、またはTENS刺激器に接続したデバイス(例:ハンドヘルド電子デバイス860)上のAPPを介してセットできる。本発明の望ましい1形態において、ユーザに対するフィードバックは、通常治療パルスのパターンとは異なるパターンを有する電気パルスシーケンスの形態である。本発明の別形態において、ユーザフィードバックは機械振動を含む。本発明の別形態において、ユーザフィードバックは、APPを介して、TENS刺激器に接続されたデバイス(例:ハンドヘルド電子デバイス860)上で視覚または音声リマインダを提示する。
【0069】
総使用時間がThreshold4Unusable1を超えると、TENS刺激器105は、デジタル記憶ユニット143上に格納されている状態値を更新する。状態が「使用不能」に更新されると、そのスマート電極部品を介した電気刺激はTENS刺激器105によってそれ以上供給されない。本発明の望ましい1形態において、閾値Threshold4Unusable1は、Threshold4Reminder1よりも20時間長く、Threshold4Reminder1は200時間である。
【0070】
本発明の望ましい1形態において、各スマート電極部品120の使用間隔は、使用時間と同様にトラッキングされる。TENS刺激器105と最初に接続すると、スマート電極部品120の初回使用の「日付スタンプ」(またはこれと等価なもの)が、そのスマート電極部品に組み込まれたデジタル記憶ユニット143に格納される。総使用間隔は、現在の「日付スタンプ」と初回使用「日付スタンプ」に基づき更新される。総使用間隔は、スマート電極部品のデジタルユニット140に格納されているアラート閾値(Threshold4Reminder2)と比較される。総使用間隔がアラート閾値よりも大きい場合、電極交換のアラートがユーザに対して発信される。総使用間隔が最大使用間隔閾値よりも大きい場合、TENS刺激器105はそのスマート電極部品を使用不能としてマークする。
【0071】
本発明の望ましい1形態において、スマート電極部品交換のアラート(使用期間または使用間隔によってトリガされる)は、サプライヤに対して特定タイプおよび分類のスマート電極部品の注文を自動生成する。
【0072】
使用情報をTENS刺激器105上に格納することに代えて、スマート電極部品自身に使用情報を格納することは、利点がある。ユーザが2つのTENS刺激器を有し、これらを交換しながら用いる場合(例:デバイスAの交換中、デバイスBをTENS治療のために用いる)、各刺激器は電極使用履歴の一部を「見る」のみである。スマート電極部品自身に使用情報を格納することにより、各刺激器が不完全な使用履歴を見ることを克服できる。
【0073】
<水分状態トラッキング>
本発明の望ましい1形態において、水分センサ(検出ユニット130が備える)は、スマート電極部品120が皮膚と接している位置において、ユーザの皮膚乾燥度をモニタリングする。乾燥肌は通常肌よりも速く、ハイドロゲル電極パッドの水分を枯渇させる。ハイドロゲル電極パッドの水分が損なわれると、ゲルパッドは導電性が減少し、したがってスマート電極部品をより頻繁に交換する必要が生じる。TENS刺激器105は、肌乾燥度をモニタリングした結果を用いて、電極交換をユーザに促す(例:ハンドヘルド電子デバイス860を介して)1以上の値を変更する。この値は以下を含む:使用期間リマインダ閾値(Threshold4Reminder1)、使用期間使用不能閾値(Threshold4Unusable1)、使用間隔閾値(Threshold4Reminder2)、使用間隔閾値(Threshold4Unusable2)。
【0074】
スマート電極部品120がユーザの皮膚上に配置されていないとき、そのハイドロゲル電極パッドは格納環境の要素に対して露出する。本発明の望ましい1形態において、水分センサ(検出ユニット130が備える)は、スマート電極部品が格納されている環境の湿度をモニタリングする。TENS刺激器105の制御ユニット171は、モニタした周辺状態を用いて、スマート電極部品120のデジタル記憶ユニット141が格納している1以上の値を変更する。この値は、使用間隔閾値(Threshold4Reminder2)と使用間隔閾値(Threshold4Unusable2)を含む。本発明の別形態において、モニタした周辺湿度状態が電極状態に対して悪影響を及ぼすと予測されるとき、ユーザに対して(例:ハンドヘルド電子デバイス860を介して)フィードバックを提供して、スマート電極部品をより制御された環境へ格納するように推奨する。この制御された環境の例としては、ハイドロゲル電極パッドからの過剰な水分損失を防ぐ気密バッグが挙げられる。
【0075】
<肌温度トラッキング>
肌温度変化は、TENS刺激に関するいくつかの生理的変化と相関している。これらは以下を含む:電気刺激の結果として局所的血流が増加したことに起因する温度変化;入眠にともなう温度変化;様々な睡眠ステージにおける温度変動。臨床研究は、下肢を温めることにより睡眠が改善する利点を報告している。スマート電極部品120の検出ユニット130内の皮膚接触温度センサは、上記生理的変化に関する肌温度のわずかな変化を検出するために必要な正確な肌温度測定結果を提供することができる。
【0076】
電気刺激は局所的血流を増やすことが知られている。本発明の望ましい1形態において、スマート電極部品120の検出ユニット130内の温度センサは、肌温度をモニタリングする。TENS刺激器105の制御ユニット171は、モニタした肌温度結果を用いて、電気刺激の効果を判定する。本発明の望ましい1形態において、刺激時またはその直前の肌温度を測定する(T1)。固定期間のTENS刺激の後(例:10分後)、肌温度を再測定する(T2)。温度変化(dT=T2-T1)がターゲット範囲内に収まる場合(例:摂氏0.25~0.75度)、TENS刺激は有効とみなされる。温度変化dTがゼロに近い場合、TENS刺激はターゲット強度未満とみなされ、制御ユニット171はユーザに対して(例:ハンドヘルド電子デバイス860を介して)TENS刺激強度を増やすように促す。変化dTが大きすぎる場合、刺激強度は大き過ぎる可能性があり、TENS刺激器105の制御ユニット171はユーザに対して(例:ハンドヘルド電子デバイス860を介して)TENS刺激強度を減らすように促す。
【0077】
本発明の別形態において、温度変化(dT)に基づく刺激強度の調整は、TENS刺激器105の制御ユニット171によって自動実施される。
【0078】
本発明の望ましい1形態において、上記閾値は固定値である。
【0079】
本発明の別形態において、上記閾値は、ベースライン(T1)における肌水分レベルと肌温度の関数である。
【0080】
本発明の望ましい1形態において、温度変化を用いて、TENS刺激強度が電気触覚閾値を超えているか否かを判定する。電気触覚閾値は、刺激を受けているユーザの電気触覚感覚を生じさせる最低刺激電流強度である。電気触覚閾値を用いて、強いけれども快適な最適TENS刺激強度ITをセットする。真の電気触覚閾値よりも高い閾値をユーザが誤って認識した場合、認識した閾値に基づく治療刺激強度は高すぎる値にセットされることになる。
【0081】
本発明の望ましい1形態において、スマート電極部品を介してTENS刺激電流が身体に対して供給される前に、肌温度(Tb)を測定する。刺激電流をステップ状に増やすことにより、電気触覚感覚閾値をユーザが識別できるようにする。電気触覚感覚閾値をユーザが識別すると、TENS刺激器105の制御ユニット171はその強度レベルで、ある期間にわたって(例:10分)ユーザを刺激する。測定した肌温度Tsが摂氏(Tb+0.5)度よりも高ければ、ユーザが示した強度は真の電気触覚感覚閾値よりも高いとみなされる。TENS刺激器105の制御ユニット171はユーザに対して(例:ハンドヘルド電子デバイス860を介して)、適正な電気触覚閾値を識別するプロセスを繰り返すように促す。
【0082】
本発明の他形態において、測定した肌温度Tsが摂氏(Tb+0.5)度よりも高く、かつ電極-皮膚接触エリア下の筋収縮がTENS刺激器によって検出された場合(例:検出ユニット130の加速度計を介して、またはTENS刺激器105が備える加速度計を介して)、識別した閾値は真の電気触覚閾値レベルよりも高いとみなされる。
【0083】
肌温度は日中に変動することが知られている。神経活性化閾値(したがってこれに加えておよび電気触覚閾値)は、温度依存であることが知られている。肌温度が高いとき活性化閾値は低い。したがって、ある肌温度状態の下で最適化したTENS刺激強度は、肌温度が変化すれば調整する必要がある。本発明の望ましい1形態において、TENS刺激器105の制御ユニット171は、スマート電極部品120の検出ユニット130がモニタリングする肌温度Tcを用いて、別の温度状態T0において決定した刺激強度I0を調整する。現在の肌温度Tcが元の温度T0よりも高ければ、TENS刺激器105の制御ユニット171は、負オフセットによって刺激強度I0を調整する。同様に現在の肌温度Tcが元の温度T0よりも低ければ、TENS刺激器105の制御ユニット171は刺激強度I0を正オフセットにより調整する。
【0084】
慢性疼痛は睡眠に対して干渉し、睡眠が悪いと痛みも悪化する。近年の技術的進歩が、睡眠中にTENSデバイスを用いることを妨げる安全問題を克服することにより、慢性疼痛を有するユーザは、睡眠中にTENSデバイスを用いることが可能となった。スマート電極部品120の検出ユニット130が備える温度センサは、ユーザが夜間眠っているとき肌温度パターンをモニタリングできる。
【0085】
本発明の望ましい1形態において、睡眠中に肌温度をモニタリングする。組み込み加速度計を備えるTENS刺激器は、身体の向きと移動を検出して、ベッドへ向かう;眠りにつく;起床する;などのイベントのタイミングを判定できる。研究によれば、個別の入眠遅れ(ベッドに向かってから入眠するまでの時間)は温度操作によって改善できるが(例:ベッドに向かう前に足湯などで足温度を上げる)、温度操作量と入眠遅れ改善は個人差がある。肌温度の継続的モニタリングと目標入眠遅れ測定結果により、各ユーザについて、入眠遅れと肌温度との間の関係を特定することができる(すなわち、ターゲット肌温度範囲を特定して睡眠を改善できる)。測定した肌温度がターゲット範囲外であるとき、ユーザが最初にベッドへ入るとユーザに対してプロンプトを出す(例:ハンドヘルド電子デバイス860を介して)。
【0086】
人は入眠後、睡眠サイクルのそれぞれ異なる睡眠ステージに向かう:ノンREM(高速眼移動)ステージ1(NS1);ノンREMステージ2(NS2);ノンREMステージ3(NS3);ノンREMステージ2(NS2);ノンREMステージ1(NS1);REM睡眠(REMS)。REMS後、NS1に戻り、その他の睡眠サイクルを繰り返す。ノンREM睡眠ステージ中、身体温度は通常よりも低い。身体温度はREMSステージ中において最も低い。NS3からNS2への遷移において、通常は一連の身体移動が生じる。アクティグラフベース睡眠モニタリングは、この遷移を判定できる。ただし他の睡眠ステージにおいて身体移動がないと、アクティグラフベース睡眠モニタリングはこれらの睡眠ステージを識別できない。身体移動は、睡眠が浅いことあるいはユーザが起床しそうになっているときにも生じるからである。肌温度測定をアクティグラフベース睡眠モニタリングに組み込むことにより、睡眠モニタリング精度が向上する。
【0087】
したがって、本発明の望ましい1形態において、TENS刺激器105が備える睡眠判定ユニット173に組み込んだ睡眠分類アルゴリズムのなかで、温度センサ測定結果(検出ユニット130からのもの)を用いる。睡眠判定ユニット173は、ユーザの睡眠状態を判定し、ユーザの睡眠状態に基づきユーザに対してTENS治療を変更することができる、任意の部品である。例えば、睡眠判定ユニット173は以下に開示されている種類のものとすることができるが、これに限らない:米国特許出願14/253,628、2014年4月15日出願、出願人Neurometrix Inc.およびShai Gozani等、発明の名称TRANSCUTANEOUS ELECTRICAL NERVE STIMULATOR WITH AUTOMATIC DETECTION OF USER SLEEP-WAKE STATE(代理人整理番号NEURO-65)。同特許出願は参照により本願に組み込まれる。この特許出願は、ユーザの身体移動に基づきユーザの睡眠状態を判定すること、およびユーザの睡眠状態に基づきユーザに対して供与するTENS治療を変更することを開示している。上記睡眠判定ユニット173に組み込んだアクティグラフベース睡眠アルゴリズムが入眠を検出した後、ユーザはNS1に入り、ユーザの肌温度は減少すると予測される。身体温度が低く維持されまたは下がる傾向にある場合、身体移動は、起床や慢性疼痛不快感による移動の前兆ではなく、NS3からREMSへの遷移と解釈される。温度トラッキングにより、アクティグラフベース睡眠分類アルゴリズムの性能を向上させ、睡眠期間中における睡眠ステージを識別できる。
【0088】
したがって、身体移動に基づき睡眠中のTENS治療を制御する従来の装置および方法(例えば上記米国特許出願14/253,628)は、スマート電極部品120から得られる温度情報を用いることによって拡張することができる。
【0089】
本発明の望ましい1形態において、足移動と身体温度の下降傾向が結びついている場合、TENS刺激器105の制御ユニット171は、TENS治療刺激を開始しない。足移動が身体温度下降傾向と結びついていない場合、TENS刺激器105の制御ユニット171は、従前のスケジュールに基づきTENS治療刺激を進行させる。
【0090】
本発明の別形態において、TENS刺激器105に組み込んだ温度センサが取得する周辺温度を用いて、睡眠品質を判定し、TENS刺激を制御する。温度環境は、人の睡眠に対して影響する最も重要な要因の1つである(Okamoto-Mizuno et al,Effects of thermal environment on sleep and circadian rhythm,Journal of Physiological Anthropology,31:14,2012)。例えばやや寒い周辺温度は徐波睡眠(NS3睡眠)を増やす。アクティグラフによって判定した睡眠品質と温度環境との間の関係はユーザごとに判定することができ、より良い睡眠品質に関連する熱環境状態をユーザに対して通知して睡眠品質を改善できる。
【0091】
本発明の他形態において、肌温度(スマート電極部品120の検出ユニット130の温度センサが取得したもの)と、TENS刺激器105に組み込んだ別の温度センサが判定した周辺温度との組み合わせを用いて、睡眠品質を判定する。睡眠品質判定結果を用いて、制御ユニット171を介してTENS刺激器105の動作を変更する。肌温度変化は睡眠ステージと関連していると見られ、周辺温度状態の意味における肌温度変化は、睡眠ステージおよびステージ間遷移をより具体的に示すことができる。例えば安定した周辺温度状態における肌温度の低下は、周辺温度が下降しているときの同じ肌温度低下よりも正確に、NS3からREMSへの遷移を予測する。
【0092】
TENS電極を格納している周辺温度のモニタリングは、スマート電極部品の品質劣化予測についての情報を提供できる。極端な温度(寒すぎるまたは熱すぎる)は、スマート電極部品のハイドロゲル電極パッドの導電特性を損なわせる可能性がある。したがって本発明の望ましい1形態において、電極部品120が格納されているとき(すなわち皮膚上にないとき)、スマート電極部品120の検出ユニット130の温度センサは、環境温度をトラッキングする。スマート電極部品120がTENS刺激器105に対して接続された後、TENS刺激器105の制御ユニット171は、温度履歴を読み取って処理する。極端な格納温度が検出されたとき、スマート電極部品の予測される残使用時間を変更して、スマート電極部品のハイドロゲル電極パッドに対する周辺温度の悪影響を反映する。本発明の別形態において、ユーザに対してフィードバックを提供して(例:ハンドヘルド電子デバイス860)、より制御された環境(例えば屋内生活空間)へスマート電極部品を格納するように推奨する。
【0093】
<ガルバニック皮膚反応センサ>
ガルバニック皮膚反応センサは、スマート電極部品120の検出ユニット130の一部として提供され、ユーザの肌コンダクタンスレベルまたは皮膚電気活動(EDA)を測定する。EDAパターンは、睡眠ステージと相関していることが分かっている。具体的には、EDAの高頻度活動がNS2とNS3睡眠ステージにおいて生じる(Sano et al, Quantitative analysis of wrist electrodermal activity during sleep, Int J. Psychophysiol. 94(3): 382-389, 2014)。
【0094】
本発明の望ましい1形態において、睡眠判定ユニット173の一部として、睡眠分類アルゴリズム内でガルバニック皮膚反応センサ測定結果(検出ユニット130内のガルバニック皮膚反応センサからのもの)を用いて、睡眠ステージを判定する。TENS刺激器105の制御ユニット171は、精緻化した睡眠ステージ判定結果を用いて、TENS刺激器105の刺激ユニット172の動作を制御する。
【0095】
本発明の望ましい別形態において、加速度計、温度、化学物質、およびガルバニック皮膚反応センサに基づく判定結果を組み合わせて、睡眠ステージ判定結果を改善する。
【0096】
<電極品質トラッキング>
スマート電極部品120の特性(特にインピーダンスと使用期間)をスマート電極部品に格納して分析し、交換が必要となる前に、スマート電極部品の寿命を予測することができる。
【0097】
本発明の望ましい1形態において、電極履歴を品質指標Qとして要約することができる。スマート電極部品の特性は、TENS刺激器105の制御ユニット171が新たに測定するごとに、スマート電極部品120上のデジタル記憶ユニット142内に更新および格納される。測定結果の特性属性としては以下が挙げられる:初回使用インピーダンス(電極が皮膚上に初めて配置されたとき測定したインピーダンス);インピーダンス履歴(各TENS治療セッション中に測定したインピーダンス);インピーダンス測定時において用いる刺激電流強度;測定のタイムスタンプ。最初の5セットのインピーダンス値の平均は、ベースラインインピーダンス(IMP)として計算される。直近5セットのインピーダンス値を平均して現在のインピーダンス(IMP)を取得する。電極アレイ品質指標は、電極アレイ状態を定量化する。本発明の望ましい1形態において、品質指標Qは100(最良)から0(最悪)まで変化し、100×exp(-IMP/IMP+1)として定義される。
【0098】
TENS刺激器105の制御ユニット171は、品質指標Qを用いて、元のターゲット刺激強度レベルITに対してオフセットを加えることにより、刺激強度を変更する。本発明の望ましい1形態において、オフセットは(Q/100-1)dBにセットされる。このオフセットの結果として、電極品質が劣化したとき、より低い刺激強度レベルを用いる。品質指標Qが低いことは、スマート電極部品のハイドロゲル電極パッドの導電特性と接着特性が低いことを示している(接着特性が低いことは、有効な電極-皮膚接触面積が、新規スマート電極部品のものよりも小さいことを意味する)。同じ刺激電流強度を用いる場合、より高い電流密度(電流強度を電極-皮膚接触面積で除算したもの)が電極-皮膚インターフェースを通過し、TENSユーザにとって不快感を生じさせる可能性がある。TENS刺激器は品質指標Qを用いて、スマート電極部品が格納している1以上の値を変更して、電極部品の寿命を予測することもできる。この値は、スマート電極部品の残使用時間と残総使用期間を含む。本発明の1形態において、総使用日10日後に品質指標Qが80以上である場合、閾値を上方調整する。本発明の別形態において、総使用日10日以内で品質指標Qが50以下である場合、閾値を下方調整する。
【0099】
本発明の望ましい1形態において、スマート電極部品に格納している情報は、Bluetooth(登録商標)リンクや無線リンクなどの通信リンクを介して、永続記憶のために中央データベースに対して送信される(直接またはTENS刺激器105を介して)。ユーザが電極アレイを新規注文したとき、この情報を用いて、ユーザの電極アレイ使用特性と履歴に基づき、ユーザにとってより適切な電極アレイタイプを識別することができる。例として、夏期は汗をかきやすいユーザ(スマート電極部品120の検出ユニット130の水分センサと温度センサにより測定する)は、水分子の吸収性がより小さい導電ゲルのハイドロゲル電極パッドを備える電極部品を提案される。
【0100】
<電極再注文の推奨システム>
本発明の望ましい1形態において、同じユーザが使用する複数のスマート電極部品から収集した情報を、Bluetoothリンクや無線リンクなどの通信リンクを介して、永続記憶のため中央データベースに対して送信する。この情報を用いて、ユーザの電極使用特性と履歴に基づき、ユーザにとってより適切な電極部品タイプを識別できる。ユーザが電極の新規注文をリクエストしたとき、ユーザへ推奨することができる。例として、夏期は汗をかきやすいユーザ(スマート電極部品120の検出ユニット130の水分センサにより測定する)は、水分子の吸収性がより小さい導電ゲルのハイドロゲル電極パッドを備える電極部品を提案される。
【0101】
<望ましい実施形態の変形例>
本発明の性質を説明するために記載および図示した詳細部分、材料、ステップ、部品配置は、本発明の原則と範囲のなかで当業者が変更できることを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7