(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-21
(45)【発行日】2023-03-02
(54)【発明の名称】人工心肺における生理学的パラメータをモニタリングするシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/00 20060101AFI20230222BHJP
A61M 1/14 20060101ALI20230222BHJP
【FI】
A61B5/00 102D
A61M1/14
(21)【出願番号】P 2019565593
(86)(22)【出願日】2018-02-09
(86)【国際出願番号】 BR2018050030
(87)【国際公開番号】W WO2018152606
(87)【国際公開日】2018-08-30
【審査請求日】2020-12-24
(31)【優先権主張番号】BR102017003716-9
(32)【優先日】2017-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BR
(73)【特許権者】
【識別番号】516098476
【氏名又は名称】ザンミ インスツルメンタル エリテーデーアー
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルイス ヘンリック バラガス フォンチカ
【審査官】高松 大
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-314800(JP,A)
【文献】特開2015-227856(JP,A)
【文献】実開昭60-102003(JP,U)
【文献】特開平06-213732(JP,A)
【文献】特開2015-130977(JP,A)
【文献】特表2009-521984(JP,A)
【文献】特開2014-133174(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00
A61M 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工心肺(CPB)変換器(110)と、ミニモニタ(30)という少なくとも2つの構成要素を備え、前記CPB変換器(110)は、CPBセンサ(80)用の区画であって、前記
CPBセンサ(80)
用の区画内に設けられ
て、
CPBハウジング(90)の孔を通じて患者の血液に直接接触する、使い捨て圧力センサ(51)の少なくとも1つとともに設けられる区画と、接続ケーブル(20)と、1つの電気コネクタ(10)と、1つの
前記CPBハウジング(90)と、1つの任意の継手(100)とを有し、前記ミニモニタ(30)は、前記CPB変換器(110)への直接的な電気接続と、前記使い捨て
圧力センサからの圧力および温度信号を増幅およびフィルタリングするためのアナログ電子回路と、を備え、
前記ミニモニタ(30)のCPUは、後にディスプレイ上に表示して見られるように外部ディスプレイにデジタル送信するように、アナログ信号をデジタル化し、処理し、前記ミニモニタ(30)はさらに、自動ゼロシステムを有し、圧力変換器のゼロ調整を行い、前記
CPB変換器
(110)をCPB回路に直接接続できるようにすることを特徴とする、CPBにおける生理学的パラメータをモニタリングするシステム。
【請求項2】
前記CPB変換器(110)は、さらに使い捨て温度センサ(52)を有することを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記CPB変換器(110)は、同一の電気コネクタ(10)を使用することを特徴とする、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記ミニモニタ(30)は圧力および/または温度値およびユーザインタフェースを見るためのディスプレイ(1)と、前記CPB変換器(110)への接続用の電気コネクタ(2)と、前記CPB変換器(110)または回路管との直接接続用の継手(3)と、補助クランプ継手(4)と、外部電源へのコネクタ(5)と、外部モニタとの通信ケーブル用のコネクタ(6)とを有し、前記CPB変換器(110)は前記ミニモニタ(30)に直接接続される、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記システムは別構成として、各種ミニモニタ(30、30’、30’’、30’’’)からデータを受信可能で、当該データをグラフィックで、数字で、同時に同一のディスプレイに表示しつつ、いくつかの計算が可能である外部モニタ(40)を備えることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記外部モニタ(40)は、コンパクトで、ソフトウェアとの相互作用のためのディスプレイ(41)および制御ボタン(42)と、デジタル通信ケーブル(44)用のコネクタ(43)と、前記ミニモニタ(30)への接続用のコネクタ(45)とを有することを特徴とする、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記システムは、別構成として、ビデオケーブル(120)を介して相互接続された制御モジュール(60)およびビデオモニタ(70)アセンブリを有することを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記
CPBハウジング(90)は、アセンブリを適切な支持部に固定するための継手(100)を有することを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記ミニモニタ(30)は、
-400~+999mmHgの範囲で平均圧力を継続的に監視すること、
-20~+50
℃の範囲で温度を継続的に監視すること、および、
前記CPB変換器(10)または補助クランプに直接結合するフィッティングを有すること、を備える、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工心肺処置における生理学的変数をモニタリングするための、特に直接人工心肺に作用することを目的とした圧力変換器を使用する一体的システムに関する。
【背景技術】
【0002】
人工心肺(CPBとも呼ばれる)は、現在心臓手術で最も一般的に利用されている技術である。この技術によれば、患者に対する循環および肺換気補助を促して、外科医が異なる心臓手術をしやすくなり得るように、心臓の鼓動が抑制された心停止状態が実現できる。血流は、人工心肺に結像された機械式ポンプにより維持される。人工心肺はかなり複雑で、ポンプと共に、手術中に患者の生命を維持するために必要な血流と酸素を維持するのに必要ないくつかの装置を含む。即ち、人工肺、動脈ライン、動脈フィルタ等である。人工心肺は、患者の生理学的パラメータを慎重にモニタリングすることが求められる、高リスク処置である。
【0003】
Standards and Guidelines For Perfusion Practice of American Society of ExtraCorporeal Technologyによると、人工心肺の複数点において圧力および温度測定が行われることが強く推奨される。しかし、現状利用可能な圧力および温度モニタおよび変換器は、患者の生存徴候をモニタリングすることを目的としており、これは人工心肺における圧力および温度信号とは大幅に異なるパラメータである。
【0004】
以下の表は、患者用モニタが動作する典型的な値範囲と、人工心肺中のモニタリングに必要な値範囲を示す。
【表1】
【0005】
このように、市販のセンサの利用には、値範囲が不十分であること加え、基本的な問題があるのである。即ち、センサは、人工心肺ではなく、患者の圧力および温度のモニタリング用に設計されているのである。例えば、圧力変換器の場合、市販されているものは2種類である。
【0006】
機械式圧力変換器(圧力アイソレータとも呼ばれる)は、2つの区画に分割されたドームであり、各側にコネクタがあり、可撓性膜が2つの区画を分けている。この種の変換器は、ルアーコネクターを通じてCPB回路の動脈ラインに繋がれるべきであり、動脈ラインに接続される側が液体に満たされるものである。反対側は、空気で満たされ、水銀またはアネロイド型圧力計に繋がれるものである。この種の変換器は多くの欠点がある。第1の欠点として、組み立てが困難である。即ち、膜の片側を生理食塩水で満たし、膜を正しく配置する必要がある。これが行われないと、圧力測定に不備が生じ得る。第2の欠点として、高圧力となるので、血液がドーム内に入ることが多い。これにより、凝固を生じ得、圧力の計測が乱され得る。第3の欠点として、圧力波が減衰してしまう。これは、装置の、回路内の平均圧力しか測定できないという性質によるものであり、ローラーポンプのように、誤った測定結果に繋がり得る。例えば、この種のシステムで特定され得ない圧力ピークがあることも多い。この種の変換器にはさらなる欠点もある。
【0007】
市販されている公知の第2の種類の圧力変換器として、使い捨て電子圧力変換器がある。これは患者圧力モニタリング用として、現状最新のものである。これは、ケーブル付きの備え付け電子センサを有するドームから成る。ケーブルは、外部圧力モニタに接続されるべき電気コネクタが一端に設けられる。しかし、この変換器も特に人工心肺回路内の圧力をモニタリングするために設計されていないので、CPB中の圧力測定に関し、欠点がいくつかある。例えば、電子圧力変換器が設けられる回路には他にも、延長線、モニタをゼロにするための三方活栓、血栓チューブセット、流れ装置が設けられる。変換器は、ルアーロックコネクタに接続された非対応の延長線を通じて回路に接続される。変換器回路は、圧力が変換器に送られるように、生理食塩水で満たされる必要がある。さらなる欠点は、変換器が設けられるフラッシュ装置に関する。同装置は、変換器の線内に血液が逆流することを防ぐため、300mmHgで加圧された生理食塩水バッグに接続する必要がある。しかし、CPB回路の内圧が300mmHgを超えることも珍しくなく、その場合、ライン内で血液の逆流が起き、その後凝固が生じてしまい、圧力のモニタリングが困難となる。さらに、フラッシュ装置の機能は、変換器回路を通じて3mL/hrの水流を維持して、回路端で血液凝固を防止することである。この流れは、患者圧力(通常120/80mmHg)と、圧力バッグによる300mmHgとの間の圧力勾配により実現される。しかし、人工心肺中、圧力が300mmHgを超えなくとも、圧力勾配は大きく低下し、回路内の流れが生じなくなると、逆流しなくても凝固が生じ得る。CPBで使用される電子圧力変換器に関するさらなる欠点として、変換器が血清により満たされた経路を介してCPB回路に接続されるため、変換器と測定点との間に液柱が存在する。患者圧力モニタリングの場合、測定される圧力値に対する液柱の効果に抗するため、変換器は患者の中腋窩線と同じ高さにする必要がある。しかし、CPB回路内には参照点がなく、大気圧そのものが参照となる。測定点は互いに高さが異なり得るため、圧力測定評価には、測定点と変換器固定点との間の高さの差も考慮しなければならない。そうでなければ、測定値が誤解釈され得る。
【0008】
さらに、CPB処置中、温度センサも使用される。これは多くの場合、使い回しされるもので、CPB回路内で血液に直接接触するように配置できない。したがって、一般的には、使い捨てアダプタを使用して、使い回し可能なセンサを、測定点で血液に熱的に接続する。このようなアダプタは、市場で入手困難であるだけではなく、センサとアダプタとの間の熱的接続により、測定誤差を生じ得る。さらに、温度センサは、耐性が低いことが多く、使用するにつれて、測定誤差が生じ得る
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述の欠点を解消するため、人工心肺(CPB)処置における生理学的変数をモニタリングするための一体的システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るシステムは、3つの基本構成要素を備える。具体的には、使い捨てのCPB変換器と、ミニモニタと、ミニモニタと接続可能な任意の中央モニタである。当該CPB変換器としては、3つの種類が製造され得る。圧力専用変換器と、圧力および温度変換器と、温度専用変換器である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
人工心肺(CPB)処置における生理的変数をモニタリングするための、本発明に係る一体的システムは、添付の図面の記載により、より良く理解されよう。図はあくまで例示であって、当業者であれば、下記の発明の範囲と概念から逸脱することなく、いくつかのさらなる実施形態が実施可能であることが理解される。図は以下のとおりである。
【
図1】
図1は、本発明のシステム体に係るCPB圧力変換器を示す概略図である。
【
図2】
図2は、本発明のシステム体に係るCPB圧力変換器を示す電気図である。
【
図3】
図3は、本発明のシステム体に係るCPB圧力および温度変換器を示す第2の実施形態の電気図である。
【
図4】
図4は、本発明のシステム体に係るCPB温度変換器の第3の実施形態を示す電気図である。
【
図5】
図5は、本発明のシステム体のミニモニタを、それぞれ左側、正面、右側、背面から見た概略図である。
【
図6】
図6は、本発明のシステム体の、コンパクトな中央モジュールを示す概略図である。
【
図7】
図7は、本発明のシステム体の、別の制御モジュールおよびビデオモニタアセンブリを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に示すように、人工心肺における生理学的パラメータをモニタリングするための、本発明に係る最小システムは、基本的に2つの構成要素を備える。即ち、図1に示すCPB変換器(110)は、センサ区画(80)と、接続ケーブル(20)と、電気コネクタ(10)と、ハウジング(90)と、任意の継手(100)とを有する。ハウジング(90)は、CPB回路内に存在するいくつかのチューブ型計器への接続を可能にするように、いくつかの計器内で利用可能である。継手(100)は、アセンブリを図5に示すように、ミニモニタ(30)の後で固定するためのものである。
【0013】
図2は、上記CPUCPB変換器(10)の電気的構成を示す。使い捨て圧力センサ(51)が、センサ区画内(80)に設けられ、ハウジング(90)の穴を通じて、患者の血液と直接接触(50)する。当該使い捨て圧力センサ(51)は、CPB変換器(110)の電気コネクタ(10)に、ケーブル組(20)により接続される。したがって、CPB回路内の圧力を直接測定可能である。
【0014】
この構成により、人工心肺の生理学的パラメータをモニタリングするための、本発明に係るシステムは、従来技術に対して多数の利点を実現できる。その内の強調されるものを以下に示す。
【0015】
・圧力を測定する箇所でパイプを切断し、CPB変換器(110)を定位置に挿入すればよいので、組み立てが極めてシンプルである。
【0016】
・CPB回路そのものに直接挿入されるため、変換器は下処理不要である。
【0017】
・よどみ点や流れを阻害するものがなく血流が連続して変換器を流れるため、変換器内で凝固する虞がない。
【0018】
・変換器と測定点との間に液柱がないため、圧力変換器の高さ合わせが不要である。
【0019】
・圧力モニタへ直接電気接続されるため、変換器信号内のノイズおよび電気的干渉による計測誤差が低減される。
【0020】
・減衰を伴わないリアルタイム測定。
【0021】
・大気圧が参照されるため、測定点で、実際の圧力が測定される。
【0022】
・バルブ、フラッシュ装置、圧力線、血栓管組、圧力バッグ等の追加構成要素が不要なため、従来の変換器よりも低コストである。
【0023】
図3に示す別の実施形態では、CPB変換器(110)はさらに使い捨て温度センサ(52)を備えてもよい。これを挿入することで、人工心肺の生理学的パラメータをモニタリングするための、本発明に係るシステムは、さらに以下を実現可能とする。
【0024】
・測定点における、アダプタ不要のリアルタイム温度測定。
【0025】
・センサが回路内の血液と直接接触していることによる、熱結合による誤差や遅延を伴わない、低誤差、高測定速度。
【0026】
・同じコネクタ(10)上の圧力および温度信号による効率と利便性。
【0027】
・手術の度に新たなセンサを使うことにより、測定精度が高まり、信頼性向上。
【0028】
・同一のハウジング内に2つのセンサが埋め込まれるため、ケーブル一本、電気コネクタ一個となるため、低コスト。
【0029】
さらに別の実施形態では、温度測定、制御のみが必要な処置のために、CPB変換器(110)は温度センサ(52)のみを有してもよい。
【0030】
なお、図2、3、4に示す3つの実施形態において、本発明に係るシステムのCPB変換器(110)は、同一の電気コネクタ(10)を使用することで、システム全体の柔軟性、互換性向上が保証される。
【0031】
上述のように、手術室内で利用可能な圧力および温度モニタは通常、麻酔医が使用する生存徴候モニタのみである。圧力および温度チャネルが、患者パラメータ専用となっているだけではなく、上述のように、このモニタはCPBにおいて求められる圧力および温度モニタリング範囲に及ばない。
【0032】
この問題を解消し、CPB中に体外循環士が圧力および温度をモニタリングできるような、シンプルかつ低価格な手段を提供するため、人工心肺における生理学的パラメータをモニタリングする本発明に係るシステムは、CPB変換器(110)に直接結合される、圧力および温度ミニモニタ(30)を提供する。これにより、その他補機を要することなく、平均圧力および温度回路の連続測定が実現される。
【0033】
図5Aから5Dに示す当該ミニモニタ(30)は、使い捨てセンサからの圧力および温度信号を増幅およびフィルタリングするアナログ電子回路と、アナログ信号をデジタル化し、処理して、後に機器パネル上のディスプレイ(1)を介して表示する、さらに任意の外部モニタ(不図示)へのデジタル送信用に処理するCPUとを有する。なお、このミニモニタ(30)は、図2,3,4にそれぞれ示す、圧力、圧力および温度、温度という上記3つの種類のCPB変換器(110)に対応可能である。さらに、当該ミニモニタ(30)は、従来の圧力変換器に対応可能である。さらに、当該ミニモニタ(30)は、如何なる構成種類も必要としない。単純にCPB変換器(110)あるいは従来の圧力変換器をミニモニタ(30)に接続すれば、圧力のみ、圧力および温度、または温度のみという利用可能なセンサに応じた値が表示される。
【0034】
さらに、ミニモニタ(30)は外部電源または電池により電力供給できる。あるいは、外部モニタ(不図示)に接続される場合、デジタル通信ケーブルを介した電力供給も可能で、外部電力供給が不要となる。
【0035】
構造的には、上記ミニモニタ(30)は、圧力および/または温度値とユーザインタフェースを表示するディスプレイ(1)と、CPB変換器(110)用の電気コネクタ(2)と、任意で配置しやすさのために延長線を有してもよい。ミニモニタ(30)は裏側に、CPB変換器(110)または回路管への直接接続のための回転継手(3)と、補助クランプ継手(4)とを有する。ミニモニタ(30)はさらに、外部電力供給用のコネクタ(5)と、中央モニタに対する通信ケーブル用のコネクタとを有する。
【0036】
本発明に係るミニモニタ(30)は、以下の好適な技術的特徴を有する。値範囲-400~+999mmHgの、平均圧力の連続モニタリング、値範囲-20~+50℃の、平均温度の連続モニタリング、瞬間的な圧力変化を表示するためのバログラフ、圧力および温度用の視覚的および音響的アラーム、CPB変換器(10)または補助的継手への直接接続用の継手。
【0037】
さらに、上記ミニモニタ(30)は、中間ケーブルなしで、CPB変換器(110)に直接電気接続できる。これにより、信号雑音比が向上し、信号干渉が低減されるため、変換器からの信号の品質と信頼性が向上する。したがって、圧力および温度計測の精度も向上する。同一出願人の別の特許に示すように、さらに自動ゼロシステムを備える。これによれば圧力変換器をゼロにする必要がなく、変換器をCPB回路に直接接続可能である。極めてシンプルな動作に加え、外部電源を接続、または電池を入れてミニモニタ(30)をONにすることで、モニタリングは即座に開始する。
【0038】
上述の様に、多くの場合において、圧力および温度ミニモニタ(30)は体外循環士の要求に沿うものであるが、ECMO処置や、ポンプが脈動流を提供するような手術や、より長く複雑な手術のような特定の状況では、追加的な情報または資源が必要となり得る。即ち、圧力曲線、収縮期および拡張期圧力値、油圧抵抗計算、トレンドチャート、アラーム等である。このような特定の状況に対応するため、ミニモニタ(30)はデジタル通信用のコネクタが設けられる。これを介して、収縮期、拡張期、および平均圧力および温度値が、図6に示す外部モニタ(40)に送られる。一方この外部モニタ(40)は、複数のミニモニタ(30、30’、30’’、30’’’)からデータを受信し、それを同一
のディスプレイに、グラフィックおよび数字として連動して表示する。さらにいくつかの計算機能がある。例えば、後述するような、油圧抵抗計算である。さらに、市販の生存徴候モニタと共通のその他特徴も有する。視覚的、音響的アラーム等である。
【0039】
人工心肺における生理学的パラメータをモニタリングするための、本発明に係るシステムによると、上記外部モニタ(40)は、ミニモニタ(30)に接続されると、画面表示用のデータを受信することに加え、外部電源または電池なしで、動作に必要な電力も提供する。上記外部モニタ(40)は、CPUとユーザインタフェースとを含む単一のコンパクトなユニットから成ってもよい。あるいは、手術室内でより柔軟に配置ができ、ユーザの利便性が向上するように、CPUとユーザインタフェース制御パネルを含むモジュールと、ビデオケーブルを介して接続された外部ビデオモニタとから成ってもよい。
【0040】
なお重要なことであるが、上記外部モニタ(40)の用途は圧力および温度変換器に限られず、オンラインフローおよび酸素センサ等のその他センサ、または上記外部モニタ(40)の通信プロトコルに対応するその他設備と使用されてもよい。
【0041】
構造的には、本発明に係るコンパクトな外部モニタ(40)は、スクリーン(41)と、ソフトウェアとの相互作用のための制御ボタン(42)とを有してもよい。そして、ミニモニタ(30)のコネクタ(45)との接続のための、コネクタ(43)およびデジタル通信ケーブル(44)を有する。
【0042】
或いは、本発明に係るシステムは、
図7に示すように、制御モジュール(60)およびビデオモニタ(70)アセンブリを有してもよい。この場合、
図6に示す中央モニタ(40)は、制御モジュール(60)にビデオケーブル(
120)を介して接続される外部ビデオモニタユニット(70)に置き換えられる。制御モジュール(60)は、遠隔モニタ(70)のソフトウェアとの相互作用用の制御ボタン(不図示)を有する。
【0043】
本発明のシステムの、従来の生存徴候モニタに対するいくつかの利点を以下のとおりに確認されたい。
【0044】
信号品質向上
【0045】
従来のモニタは、機器内の生存徴候を増幅、調整するアナログ電子回路を有し、概して長いケーブルを通じてセンサ信号を受信する。センサからの信号は、数ミリボルト単位の極めて小さい振幅を有する。したがって、一般的に干渉だらけの環境に存在する、長いケーブルを介して送信される場合、品質、振幅が落ちる。さらに、アナログ電子回路は、電磁干渉の主な発生源である電源とCPUに近い。これら全てにより、モニタは元信号を取得するため、高度な信号増幅およびフィルタリング回路が必要となる。本発明に係るミニモニタ(30)の場合、圧力および温度CPB変換器(10)は増幅回路に直接接続され、電源は外部に存在する。これにより、アナログ電子回路入力において、干渉、損失を伴わない、したがってより高品質な信号が得られる。これにより、信号品質を損なうことのない、よりシンプルな増幅およびフィルタリング回路が得られる。さらに、ミニモニタ(30)は、信号をデジタル化および処理し、備え付けのディスプレイに表示し、適切に処理された後の圧力および温度値をデジタル信号として実質的に損失なく、外部モニタ(40)に送信するCPUを有する。したがって、外部モニタ(40)は、単純にミニモニタ(30)により処理済みの値を表示するものであるため、あらゆる種類のアナログ電子回路が不要となる。また、通信ケーブル(80)を通じて遠隔モニタ(70)に送られる信号はデジタル信号であるため、実質的に干渉の影響は受けない。これら全てにより、現状のモニタよりも、シンプルかつ低コストでありながら、高性能のシステムが得られる。
【0046】
簡潔性と強固性
【0047】
システムは、その設計により、極めてシンプルな電子回路の利用を可能とするが、その上で市販のシステムの性能向上が図られる。さらに、よりシンプルであることで、より強固で欠陥が少なくなる。
【0048】
モジュール式
【0049】
上述の様に、システムは完全にモジュール式であるため、単純に新たなモジュールを加えることで、ユーザのニーズに合わせた規模を実現できる。
【0050】
柔軟性
【0051】
システムは、各ユーザまたは場面の要件に合わせて調整可能である。単純な手術の場合、ユーザはCPB変換器(10)およびミニモニタ(30)のみを選択してもよい。ECMOのようなより複雑な手術や処置の場合、各ミニモニタ(30)と、外部モニタ(40)に結合された複数のCPB変換器(10)を使用してもよい。これにより、アラームおよびその他特徴に加えて、あらゆるパラメータを見て制御することが可能となる。さらに、心臓手術の場合、例えば、制御モジュール(60)+ビデオモニタ(70)システムを使用すれば、制御モジュール(60)が体外循環士近くに配置できる。これにより、動作が楽になり、人間工学的にも合理的となる。ビデオモニタ(70)が高い位置に配置できるので、手術室内の別の医療専門家にも見える。多くの時間、体外循環士が一人で作業するECMOの場合、可動性が高まり、人間工学的にも合理的となるように、センターコンソール近傍に配置可能な、コンパクトな外部モニタ(40)を使用してもよい。
【0052】
実用性
【0053】
本システムは極めて使いやすい。単純にCPB変換器(10)を人工心肺回路に搭載し、ミニモニタ(30)を各CPB変換器(10)に接続し、通信ケーブル(44)を介してミニモニタ(30)を中央モニタ(40)に接続すれば、完全なモニタリングを実行できる。機器をONにするだけで、システムは自動的に回路パラメータをモニタリングするので、追加の手順は一切必要ない。変換器をゼロにしたり、レベル調整したりする必要もない。
【0054】
油圧抵抗計算
【0055】
処置中の、人工心肺回路装置の抵抗変化を評価することが望ましい状況において、油圧抵抗計算は極めて有用となり得る。例えば、油圧抵抗をモニタリングすることで、動脈フィルタまたは酸素供給器の通常動作を検証可能である。装置の油圧抵抗を計算するには、2つの圧力変換器と、1つの流量変換器が必要である。変換器はそれぞれ装置前後に設けられて評価され、流量センサは、装置に隣接して、同系列で設けられる必要がある。装置の油圧抵抗は、以下の数式で計算される。
Rh=(Pe-Ps)/flow
【0056】
式中、
【0057】
Rhは油圧抵抗、
【0058】
Peはデバイス入口での圧力、
【0059】
Psはデバイス出口での圧力、
【0060】
Flowは装置内の総流量である。
【0061】
通常、装置の動作確認は、圧力と流れを別々に評価することで実現される。しかし、この評価は複雑で、ユーザは極めて深い知識と経験が求められる。一方、流体抵抗の分析は、よりシンプルで、わかりやすい。即ち、その他全てのパラメータの寄与度が1つの値に落とし込まれるのである。したがって、感度と信頼性が大幅に向上し、パラメータが解釈しやすくなる。即ち、処置中に抵抗が一定であればよい。抵抗の増加開始は、装置内の詰まりまたは凝固を示しうる。抵抗の減少開始は、装置内の漏洩を示しうる。さらに、回路に沿って、複数の変換器を適切な箇所(例えば、酸素供給機前、酸素供給機後、動脈フィルタ後等)で使用することで、CPBパラメータを変更する場合、深刻化する前に、どの装置に問題が生じているか確認できる。
【0062】
低価格
【0063】
より部品点数が少なく、単純な回路を有するため、本発明に係るシステムはより低コストである。