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特許7232204マイクロバブル強化超音波処置における超音波周波数およびマイクロバブルサイズの最適化
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  • 特許-マイクロバブル強化超音波処置における超音波周波数およびマイクロバブルサイズの最適化 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-21
(45)【発行日】2023-03-02
(54)【発明の名称】マイクロバブル強化超音波処置における超音波周波数およびマイクロバブルサイズの最適化
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/00 20060101AFI20230222BHJP
   A61N 7/00 20060101ALI20230222BHJP
【FI】
A61B17/00 700
A61N7/00
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019571960
(86)(22)【出願日】2018-06-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-27
(86)【国際出願番号】 IB2018000841
(87)【国際公開番号】W WO2019002947
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-05-11
(31)【優先権主張番号】62/526,550
(32)【優先日】2017-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/526,548
(32)【優先日】2017-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/526,545
(32)【優先日】2017-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/637,163
(32)【優先日】2017-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/597,073
(32)【優先日】2017-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/597,076
(32)【優先日】2017-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508154863
【氏名又は名称】インサイテック・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】デ ピチオット, ラフィ
(72)【発明者】
【氏名】グリンフェルド, ハビエル
(72)【発明者】
【氏名】レヴィ, ヨアフ
【審査官】山口 賢一
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-529039(JP,A)
【文献】特表2008-541975(JP,A)
【文献】特表2015-531290(JP,A)
【文献】特表2003-521275(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0295105(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0125080(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0200845(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0258353(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00
A61N 7/00
A61M 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的組織の処置を強化させる一方で非標的組織への損傷を最小化するためのシステムであって、前記システムは、
超音波トランスデューサと、
第1のサイズ分布を有するマイクロバブルを前記標的組織に提供するための投与デバイスであって、前記マイクロバブルをフィルタ処理するためのフィルタを備える投与デバイスと、
コントローラであって、前記コントローラは、
(a)集束を前記標的組織内に発生させるために、前記超音波トランスデューサから伝送される超音波の周波数を選択することと、
(b)前記第1のサイズ分布における前記マイクロバブルの少なくとも50%が臨界半径と異なる半径を有するように、前記マイクロバブルの前記第1のサイズ分布を決定することであって、前記臨界半径は、前記マイクロバブルの共鳴周波数が前記超音波の周波数に合致するときの前記マイクロバブルの平均半径であり、前記フィルタは、前記臨界半径よりも小さい細孔サイズを有する、ことと、
(c)前記超音波トランスデューサに、前記標的組織を処置するために、前記超音波を前記選択された周波数で伝送させることと
を行うように構成される、コントローラと
を備える、システム。
【請求項2】
前記提供されるマイクロバブルの少なくとも99%は、前記臨界半径より小さい半径を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記提供されるマイクロバブルの少なくとも50%の最大半径は、前記臨界半径より少なくとも50%小さい、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記提供されるマイクロバブルの少なくとも99%の最大半径は、前記臨界半径より少なくとも50%小さい、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記標的組織および非標的組織の特性を取得するための超音波検査デバイスをさらに備え前記コントローラは、前記超音波検査デバイスからの前記特性を示す信号に応答し、前記信号に基づいて、前記超音波の周波数を選択するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記非標的組織は、集束超音波源と前記標的組織との間に位置する介在組織を備え、前記コントローラは、(i)前記取得された特性に基づいて、前記超音波と前記介在組織との間の音響相互作用を予測し、(ii)前記予測された音響相互作用に基づいて、前記超音波の周波数を選択するようにさらに構成される、請求項に記載のシステム。
【請求項7】
前記コントローラは、
(i)前記超音波トランスデューサに、異なる周波数を有する複数の超音波を前記標的組織に伝送させることであって、前記複数の超音波の前記異なる周波数は、超音波処置のために適した周波数の範囲内にあり、前記超音波処置のために適した周波数の範囲は、前記マイクロバブルの共鳴周波数を含む、ことと、
(ii)周波数毎に、前記標的組織によって吸収されるエネルギーの量と相関するパラメータの値を測定することであって、前記パラメータは、出力、エネルギー、強度、音響力、組織変位、または温度のうちの少なくとも1つを含む、ことと、
(iii)周波数毎に測定された前記パラメータの前記値に基づいて、前記範囲内の前記周波数の中の前記超音波の周波数を選択することと
を行うようにさらに構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記コントローラは、前記周波数に対して測定された前記パラメータの前記値が前記標的組織によって吸収されるエネルギーの最大量に対応するように、前記超音波の周波数を選択するようにさらに構成される、請求項に記載のシステム。
【請求項9】
前記パラメータの前記値を測定するために、超音波検査デバイスまたは音響信号検出器のうちの少なくとも1つをさらに備え、請求項に記載のシステム。
【請求項10】
前記コントローラは、前記選択された周波数が前記範囲内にあるように、前記超音波の周波数の範囲を決定するようにさらに構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記提供されるマイクロバブルは、前記範囲内の最大周波数に対応する最小半径より小さい半径を前記マイクロバブルの少なくとも50%が有する前記第1のサイズ分布を有する、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記提供されるマイクロバブルは、前記範囲内の最小周波数に対応する最大半径より大きい半径を前記マイクロバブルの少なくとも50%が有する前記第1のサイズ分布を有する、請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
前記マイクロバブルからの音響信号を検出するための検出器をさらに備え、前記コントローラは、前記検出された音響信号に基づいて、前記超音波に対するマイクロバブル応答が所定の閾値を上回るかどうかを判定し、該当する場合、前記超音波と関連付けられた前記選択された周波数または強度のうちの少なくとも1つを調節するようにさらに構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記マイクロバブルからの音響信号を検出するための検出器をさらに備え、前記コントローラは、前記検出された音響信号に基づいて、前記超音波に対するマイクロバブル応答が所定の閾値を上回るかどうかを判定し、該当する場合、前記投与デバイスに、第2のサイズ分布を有するマイクロバブルを提供させるようにさらに構成され、前記第2のサイズ分布内の前記マイクロバブルの半径は、前記第1のサイズ分布内の前記マイクロバブルの半径より小さい、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記マイクロバブルからの音響信号を検出するための検出器をさらに備え、前記コントローラは、前記検出された音響信号に基づいて、前記超音波に対するマイクロバブル応答が所定の閾値を上回るかどうかを判定し、該当する場合、前記投与デバイスに、第2のサイズ分布を有するマイクロバブルを提供させるようにさらに構成され、前記第2のサイズ分布内の前記マイクロバブルの半径は、前記第1のサイズ分布内の前記マイクロバブルの半径より大きい、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記投与デバイスは、処置のために、治療薬を前記標的組織に投与するようにさらに構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
前記治療薬は、ブスルファン、チオテパ、CCNU(ロムスチン)、BCNU(カルムスチン)、ACNU(ニムスチン)、テモゾロミド、メトトレキサート、トポテカン、シスプラチン、エトポシド、イリノテカン/SN-38、カルボプラチン、ドキソルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、プロカルバジン、パクリタキセル、フォテムスチン、イホスファミド/4-ヒドロキシイフォスファミド/アルドイホスファミド、ベバシズマブ、5-フルオロウラシル、ブレオマイシン、ヒドロキシウレア、ドセタキセル、またはシタラビン(シトシンアラビノシド、ara-C)/ara-Uのうちの少なくとも1つを含む、請求項16に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願に対する相互参照)
本願は、(2017年6月29日に出願された)米国特許出願第62/526,548号、(2017年6月29日に出願された)米国特許出願第62/526,545号、(2017年6月29日に出願された)米国特許出願第62/526,550号、(2017年6月29日に出願された)米国特許出願第15/637,163号、(2017年12月11日に出願された)米国特許出願第62/597,073号、および、(2017年12月11日に出願された)米国特許出願第62/597,076号に対する優先権およびその利益を主張するものである。これらの優先権ドキュメントの全開示は、参照により本明細書中に援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、概して、マイクロバブル強化超音波処置に関し、より具体的には、標的の処置効率性を増加させるために、超音波周波数およびマイクロバブルサイズを最適化するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
集束超音波(すなわち、約20キロヘルツを上回る周波数を有する音響波)は、患者内の内部身体組織を撮像または治療的に処置するために使用されることができる。例えば、超音波は、腫瘍のアブレーション、標的化薬物送達、血液脳関門(BBB)の途絶、血餅の溶解、および他の外科手術手技を伴う用途において使用されてもよい。腫瘍アブレーションの間、圧電セラミックトランスデューサが、患者の外部であるが、アブレートされるべき腫瘍(すなわち、標的領域)に近接近して設置される。トランスデューサは、電子駆動信号を機械的振動に変換し、音響波の放出をもたらす。トランスデューサは、それらが放出する超音波エネルギーが、集束ビームを標的領域に対応する(またはその中の)「集束域」に集合的に形成するように、他のそのようなトランスデューサとともに、幾何学的に成形され、位置付けられてもよい。代替的に、または、加えて、単一トランスデューサが、複数の個々に駆動されるトランスデューサ要素から形成されてもよく、その位相は、各々、独立して制御されることができる。そのような「位相アレイ」トランスデューサは、トランスデューサ間の相対的位相を調整することによって、集束域を異なる場所に操向することを促進する。本明細書において使用される場合、用語「要素」は、アレイ内の個々のトランスデューサまたは単一のトランスデューサの独立して駆動可能な部分のいずれかを意味する。磁気共鳴画像診断(MRI)が、患者および標的を可視化し、それにより、超音波ビームを誘導するために使用されてもよい。
【0004】
集束超音波手技の間、小ガスバブル(または「マイクロバブル」)が、発生され、および/または標的領域の中に導入されてもよい。印加される音響場の振幅および周波数に応じて、マイクロバブルは、発振または圧潰し(「キャビテーション」として知られる現象)、それにより、種々の熱効果を標的領域および/またはその周囲に生じさせ得る。例えば、マイクロバブルキャビテーションは、超音波集束領域におけるエネルギー吸収を強化させ、その中の組織を、マイクロバブルの不在下で生じるものより高速で加熱させ、より効率的にアブレートさせ得る。中枢神経系において利用される場合、マイクロバブルキャビテーションは、血管を途絶し、それにより、標的化薬物送達を強化させるために、BBBの「開放」を誘発させ得る。本明細書において使用される場合、印加される超音波処理に対するマイクロバブルの応答は、「マイクロバブル応答」と称され、超音波処理および/またはマイクロバブルキャビテーションから生じる標的領域内および/または非標的領域内の熱効果は、「治療効果」と称される。
【0005】
超音波/パルスの印加に応じたマイクロバブル発振/キャビテーションの機構は、マイクロバブルの共鳴性質を伴う(すなわち、マイクロバブルは、印加される音響場に応答して、共鳴周波数で発振し得る)。マイクロバブル共鳴周波数は、概して、マイクロバブルのサイズおよびそれらが存在する周囲媒体の性質(例えば、薬剤の粘度、脈管のサイズ等)に依存する。従来、トランスデューサアレイは、マイクロバブル応答を最大化し、それにより、処置効率性を最適化するために、マイクロバブル共鳴周波数と等しい周波数で駆動される。このアプローチは、標的領域における処置効果を改良し得るが、非標的領域(例えば、標的領域を囲む組織)内のマイクロバブルの存在は、印加される超音波エネルギーの効果を強化させることによって望ましくない付随的損傷を生じさせ、そうでなければ臨床上影響されない非標的組織への傷害をもたらし得る。
【0006】
故に、標的領域を効率的に処置する一方で非標的組織への損傷を回避する改良されたマイクロバブル強化処置の必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、1つまたは複数の超音波パラメータ(例えば、周波数および/または出力)の値と標的領域におけるマイクロバブル共鳴周波数とに基づいて処置の効果を最適化するマイクロバブル強化超音波処置に関する。共鳴周波数では、マイクロバブルは、印加される超音波の処置効果を強化させるように、発振および/または圧潰する。本明細書における全体的な目的は、付随的損傷を排除する(または少なくとも低減させる)ように、非標的領域(例えば、標的領域を囲む組織、および/または、超音波トランスデューサと標的領域との間に位置する組織)におけるマイクロバブル応答(それによる治療効果)および/またはキャビテーションの程度を限定することである。種々の実施形態では、超音波パラメータは、標的組織および/または非標的領域の特性(例えば、タイプ、性質、構造、厚さ、密度等)と、超音波-組織相互作用(例えば、組織界面における反射、屈折、および/または散乱、ならびに/あるいは、組織内の超音波伝搬)とに基づいて、最適化される。加えて、(例えば、マイクロバブルの平均半径に基づく)マイクロバブル共鳴周波数は、印加される超音波/パルスの周波数と異なるように選択されてもよい。好ましくは、マイクロバブル共鳴周波数は、超音波周波数より実質的に大きい(例えば、10倍)が、それは、所望に応じて、超音波周波数より実質的に小さくあることができる。例えば、超音波/パルスは、0.23MHzの周波数を有してもよく、マイクロバブル共鳴周波数は、2MHzであってもよい。その結果、低音響出力を使用する超音波手技では、非標的領域におけるマイクロバブルは、比較的低音響場に対して非応答である(またはキャビテーションを伴うことなく、限定された応答を少なくとも有する)が、標的領域におけるマイクロバブル(音響場は、集束ビームに起因して、比較的に高い)は、発振および/または圧潰し得る。故に、本発明の実施形態は、標的を囲む健康な組織内ならびにトランスデューサと標的領域との間の経路に沿った組織内の応答に対して、標的領域における印加される超音波に対するマイクロバブル応答を最大化する。本明細書において使用される場合、用語「最適」および「~を最適化する」は、概して、標的領域を処置するために、臨床診療、利用される技術、および採用される方法の限界内で実際的に判別可能な最良周波数を判定/選択することを伴う。
【0008】
いくつかの実施形態では、マイクロバブル共鳴周波数は、マイクロバブルのサイズ分布を選択することによって制御される。概して、マイクロバブルの半径が小さいほど、その共鳴周波数は、より大きくなる。故に、超音波周波数が判定されると、超音波周波数と実質的に等しい共鳴周波数を有するマイクロバブルの平均半径が、判定され得る。一実装では、マイクロバブルのサイズ分布は、マイクロバブルの有意な割合(例えば、50%を上回る、90%、95%、または99%、もしくはそれを上回る)が、印加される超音波周波数と等しい共鳴周波数に対応するものを下回る半径を有するように(マイクロバブル共鳴周波数が、印加される超音波周波数を超えるように)、選択される。例えば、選択されたマイクロバブルの最大半径は、超音波周波数と等しい共鳴周波数に対応する半径より50%小さくてもよい。実際は、これは、選択されたマイクロバブルサイズに対応する細孔サイズを有するフィルタを通してマイクロバブルを通過させることによって達成されることができる。フィルタ処理されたマイクロバブルは、次いで、超音波処置を強化させるために、標的領域の中に導入され得る。再び、これらのマイクロバブルは、非標的組織への損傷を回避する(または少なくとも限定する)ために、非標的領域に指向される比較的低出力音響場に対して非応答であり得るが、標的領域では、比較的高音響場に応答して、発振および/または圧潰し、それにより、標的領域における組織途絶を強化させ得る。
【0009】
故に、一側面では、本発明は、標的組織の処置を強化させる一方で非標的組織への損傷を限定するためのシステムに関する。種々の実施形態では、本システムは、超音波トランスデューサと、第1のサイズ分布を有するマイクロバブルを標的組織に提供するための投与デバイスと、(a)集束を標的組織内に発生させるために、超音波トランスデューサから伝送される超音波の周波数を選択することと、(b)マイクロバブルの少なくとも50%が、超音波の選択された周波数に合致する共鳴周波数に対応する臨界半径と異なる半径を有するように、マイクロバブルの第1のサイズ分布を判定することと、(c)超音波トランスデューサに、標的組織を処置するために、選択された周波数で超音波を伝送させることとを行うように構成されるコントローラとを含む。一実装では、投与デバイスは、臨界半径と異なる細孔サイズを有するフィルタを含む。一実施形態では、提供されるマイクロバブルの少なくとも99%は、臨界半径より小さい半径を有する。加えて、提供されるマイクロバブルの少なくとも50%(または、いくつかの実施形態では、99%)の最大半径は、臨界半径より少なくとも50%小さい。代替的には、提供されるマイクロバブルの少なくとも99%は、臨界半径より大きい半径を有してもよい。提供されるマイクロバブルの少なくとも50%(または、いくつかの実施形態では、99%)の最小半径は、臨界半径より少なくとも50%大きい。
【0010】
種々の実施形態では、本システムは、標的組織および非標的組織の特性を取得するための撮像デバイスをさらに含んでもよく、コントローラは、撮像デバイスからの特性を示す信号に応答し、信号に基づいて、周波数を選択するように構成される。加えて、非標的組織は、集束超音波源と標的組織との間に位置する介在組織を含んでもよく、コントローラは、(i)取得された特性に基づいて、超音波と介在組織との間の音響相互作用を予測することと、(ii)予測された音響相互作用に少なくとも部分的に基づいて、超音波の周波数を選択することとを行うようにさらに構成されてもよい。さらに、コントローラは、(i)超音波トランスデューサに、試験範囲内の複数の超音波周波数を用いて、標的組織を超音波処理させることと、(ii)周波数毎に、標的組織内に堆積される超音波エネルギーの量を示すパラメータ(例えば、出力、エネルギー、強度、音響力、組織変位、および/または温度)の値を測定することと、(iii)測定された値に基づいて、試験範囲内の周波数の中の超音波の周波数を選択することとを行うようにさらに構成されてもよい。一実施形態では、コントローラは、それ自体が標的組織内に堆積される超音波エネルギーの最大量に対応する、測定された値に対応する超音波の周波数を選択するようにさらに構成される。加えて、本システムは、パラメータの値を測定するために、撮像デバイスおよび/または音響信号検出器をさらに含んでもよい。
【0011】
いくつかの実施形態では、コントローラは、周波数範囲を、選択された周波数がその中にあるように判定するようにさらに構成される。加えて、提供されるマイクロバブルの少なくとも50%は、周波数範囲内の最大周波数に対応する最小半径より小さい半径を有してもよい。代替的には、提供されるマイクロバブルの少なくとも50%は、周波数範囲内の最小周波数に対応する最大半径より大きい半径を有してもよい。一実装では、本システムは、マイクロバブルからの音響信号を検出するための検出器をさらに含む。コントローラは、次いで、検出された音響信号に基づいて、超音波に対するマイクロバブル応答が所定の閾値を上回るかどうかを判定し、該当する場合、超音波と関連付けられた選択された周波数および/または強度を調節し、かつ/または、投与デバイスに、第2のサイズ分布を有するマイクロバブルを提供させるようにさらに構成されることができ、第2のサイズ分布内のマイクロバブルの半径は、第1のサイズ分布内のマイクロバブルの半径より小さくてもよい(または、いくつかの実施形態では、より大きい)。加えて、本システムは、処置のために、ある放射用量を標的組織に伝送するための放射デバイスをさらに含んでもよい。一実施形態では、投与デバイスは、処置のために、治療薬を標的組織に投与するようにさらに構成される。治療薬は、ブスルファン、チオテパ、CCNU(ロムスチン)、BCNU(カルムスチン)、ACNU(ニムスチン)、テモゾロミド、メトトレキサート、トポテカン、シスプラチン、エトポシド、イリノテカン/SN-38、カルボプラチン、ドキソルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、プロカルバジン、パクリタキセル、フォテムスチン、イホスファミド/4-ヒドロキシイフォスファミド/アルドイホスファミド、ベバシズマブ、5-フルオロウラシル、ブレオマイシン、ヒドロキシウレア、ドセタキセル、および/またはシタラビン(シトシンアラビノシド、ara-C)/ara-Uを含んでもよい。
【0012】
別の側面では、本発明は、集束超音波源を使用して標的組織の処置を強化させる一方で非標的組織への損傷を限定する方法に関する。種々の実施形態では、本方法は、(a)集束を標的組織内に発生させるために、集束超音波源から伝送される超音波の周波数を選択することと、(b)マイクロバブルの少なくとも50%が、超音波の選択された周波数に合致する共鳴周波数に対応する臨界半径と異なる半径を有するように、第1のサイズ分布を有するマイクロバブルを提供することと、(c)選択された周波数で超音波を印加し、標的組織を処置することとを含む。一実装では、本方法は、臨界半径と異なる細孔サイズを有するフィルタを用いて、マイクロバブルをフィルタ処理することをさらに含む。一実施形態では、提供されるマイクロバブルの少なくとも99%は、臨界半径より小さい半径を有する。加えて、提供されるマイクロバブルの少なくとも50%(または、いくつかの実施形態では、99%)の最大半径は、臨界半径より少なくとも50%小さい。代替的には、提供されるマイクロバブルの少なくとも99%は、臨界半径より大きい半径を有してもよい。提供されるマイクロバブルの少なくとも50%(または、いくつかの実施形態では、99%)の最小半径は、臨界半径より少なくとも50%大きい。
【0013】
種々の実施形態では、本方法は、例えば、撮像データを使用して、標的組織および非標的組織の特性を取得することをさらに含み、超音波の周波数は、取得された特性に基づいて選択される。一実施形態では、非標的組織は、集束超音波源と標的組織との間に位置する介在組織を含む。本方法は、取得された特性に基づいて、超音波と介在組織との間の音響相互作用を予測することをさらに含んでもよく、超音波の周波数は、次いで、予測された音響相互作用に少なくとも部分的に基づいて選択される。加えて、本方法は、試験範囲内の複数の超音波周波数を用いて、標的組織を超音波処理することと、周波数毎に、標的組織内に堆積される超音波エネルギーの量を示すパラメータ(例えば、出力、エネルギー、強度、音響力、組織変位、および/または温度)の値を測定することとをさらに含んでもよく、超音波の周波数は、測定された値に基づいて、試験範囲内の周波数の中で選択される。一実施形態では、超音波の選択された周波数は、それ自体が標的組織内に堆積される超音波エネルギーの最大量に対応する、測定された値に対応する。
【0014】
いくつかの実施形態では、本方法は、周波数範囲を、選択された周波数がその中にあるように判定することをさらに含む。加えて、提供されるマイクロバブルの少なくとも50%は、周波数範囲内の最大周波数に対応する最小半径より小さい半径を有してもよい。代替的には、提供されるマイクロバブルの少なくとも50%は、周波数範囲内の最小周波数に対応する最大半径より大きい半径を有してもよい。一実装では、本方法は、マイクロバブルからの音響信号を検出すること、超音波に対するマイクロバブル応答が所定の閾値を上回るかどうかを判定すること、該当する場合、超音波と関連付けられた選択された周波数および/または強度を調節すること、および/または、第2のサイズ分布を有するマイクロバブルを提供することをさらに含み、第2のサイズ分布内のマイクロバブルの半径は、第1のサイズ分布内のマイクロバブルの半径より小さくてもよい(または、いくつかの実施形態では、より大きい)。加えて、本方法は、処置のために、標的組織をある放射用量に暴露させること、または、処置のために、治療薬を標的組織に投与することをさらに含んでもよい。治療薬は、ブスルファン、チオテパ、CCNU(ロムスチン)、BCNU(カルムスチン)、ACNU(ニムスチン)、テモゾロミド、メトトレキサート、トポテカン、シスプラチン、エトポシド、イリノテカン/SN-38、カルボプラチン、ドキソルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、プロカルバジン、パクリタキセル、フォテムスチン、イホスファミド/4-ヒドロキシイフォスファミド/アルドイホスファミド、ベバシズマブ、5-フルオロウラシル、ブレオマイシン、ヒドロキシウレア、ドセタキセル、および/またはシタラビン(シトシンアラビノシド、ara-C)/ara-Uを含んでもよい。
【0015】
本明細書において使用される場合、用語「実質的に」は、±10%、いくつかの実施形態では、±5%を意味する。「臨床上影響されない」は、例えばそこへの損傷の発生を誘起することに先立って臨床医によって重要ではないと見なされる組織に対する望ましくない効果を有する(時として、所望の効果を欠いている)ことを意味する。本明細書の全体を通して、「一実施例」、「ある実施例」、「一実施形態」、または「ある実施形態」の言及は、実施例と関連して説明される特定の特徴、構造、または特性が、本技術の少なくとも1つの実施例に含まれることを意味する。したがって、本明細書の全体を通した種々の箇所における語句「一実施例では」、「ある実施例では」、「一実施形態」、または「ある実施形態」の出現は、必ずしも全てが同一の実施例を指すわけではない。その上さらに、特定の特徴、構造、ルーチン、ステップ、または特性は、本技術の1つまたは複数の実施例において、任意の適した様式で組み合わせられてもよい。本明細書に提供される見出しは、便宜上のためだけのものであり、請求される技術の範囲または意味を限定もしくは解釈することを意図していない。
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
標的組織の処置を強化させる一方で非標的組織への損傷を限定するためのシステムであって、前記システムは、
超音波トランスデューサと、
第1のサイズ分布を有するマイクロバブルを前記標的組織に提供するための投与デバイスと、
コントローラであって、前記コントローラは、
(a)集束を前記標的組織内に発生させるために、前記超音波トランスデューサから伝送される超音波の周波数を選択することと、
(b)前記マイクロバブルの少なくとも50%が、前記超音波の選択された周波数に合致する共鳴周波数に対応する臨界半径と異なる半径を有するように、前記マイクロバブルの第1のサイズ分布を判定することと、
(c)前記超音波トランスデューサに、前記標的組織を処置するために、前記超音波を前記選択された周波数で伝送させることと
を行うように構成される、コントローラと
を備える、システム。
(項目2)
前記投与デバイスは、前記臨界半径と異なる細孔サイズを有するフィルタをさらに備える、項目1に記載のシステム。
(項目3)
前記提供されるマイクロバブルの少なくとも99%は、前記臨界半径より小さい半径を有する、項目1に記載のシステム。
(項目4)
前記提供されるマイクロバブルの少なくとも50%の最大半径は、前記臨界半径より少なくとも50%小さい、項目1に記載のシステム。
(項目5)
前記提供されるマイクロバブルの少なくとも99%の最大半径は、前記臨界半径より少なくとも50%小さい、項目1に記載のシステム。
(項目6)
前記提供されるマイクロバブルの少なくとも99%は、前記臨界半径より大きい半径を有する、項目1に記載のシステム。
(項目7)
前記提供されるマイクロバブルの少なくとも50%の最小半径は、前記臨界半径より少なくとも50%大きい、項目1に記載のシステム。
(項目8)
前記提供されるマイクロバブルの少なくとも99%の最小半径は、前記臨界半径より少なくとも50%大きい、項目1に記載のシステム。
(項目9)
前記標的組織および非標的組織の特性を取得するための撮像デバイスをさらに備え、前記コントローラは、前記撮像デバイスからの前記特性を示す信号に応答し、前記信号に基づいて、前記周波数を選択するように構成される、項目1に記載のシステム。
(項目10)
前記非標的組織は、集束超音波源と前記標的組織との間に位置する介在組織を備え、前記コントローラは、(i)前記取得された特性に基づいて、前記超音波と前記介在組織との間の音響相互作用を予測し、(ii)前記予測された音響相互作用に少なくとも部分的に基づいて、前記超音波の周波数を選択するようにさらに構成される、項目9に記載のシステム。
(項目11)
前記コントローラは、
(i)前記超音波トランスデューサに、試験範囲内の複数の超音波周波数を用いて、前記標的組織を超音波処理させることと、
(ii)周波数毎に、前記標的組織内に堆積される超音波エネルギーの量を示すパラメータの値を測定することと、
(iii)前記測定された値に基づいて、前記試験範囲内の前記周波数の中の前記超音波の周波数を選択することと
を行うようにさらに構成される、項目1に記載のシステム。
(項目12)
前記コントローラは、それ自体が前記標的組織内に堆積される超音波エネルギーの最大量に対応する、前記測定された値に対応する前記超音波の周波数を選択するようにさらに構成される、項目11に記載のシステム。
(項目13)
前記パラメータは、出力、エネルギー、強度、音響力、組織変位、または温度のうちの少なくとも1つを含む、項目11に記載のシステム。
(項目14)
前記パラメータの値を測定するために、撮像デバイスまたは音響信号検出器のうちの少なくとも1つをさらに備える、項目11に記載のシステム。
(項目15)
前記コントローラは、周波数範囲を、前記選択された周波数がその中にあるように判定するようにさらに構成される、項目1に記載のシステム。
(項目16)
前記提供されるマイクロバブルは、前記周波数範囲内の最大周波数に対応する最小半径より小さい半径を前記マイクロバブルの少なくとも50%が有する前記第1のサイズ分布を有する、項目15に記載のシステム。
(項目17)
前記提供されるマイクロバブルは、前記周波数範囲内の最小周波数に対応する最大半径より大きい半径を前記マイクロバブルの少なくとも50%が有する前記第1のサイズ分布を有する、項目15に記載のシステム。
(項目18)
前記マイクロバブルからの音響信号を検出するための検出器をさらに備え、前記コントローラは、前記検出された音響信号に基づいて、前記超音波に対するマイクロバブル応答が所定の閾値を上回るかどうかを判定し、該当する場合、前記超音波と関連付けられた前記選択された周波数または強度のうちの少なくとも1つを調節するようにさらに構成される、項目1に記載のシステム。
(項目19)
前記マイクロバブルからの音響信号を検出するための検出器をさらに備え、前記コントローラは、前記検出された音響信号に基づいて、前記超音波に対するマイクロバブル応答が所定の閾値を上回るかどうかを判定し、該当する場合、前記投与デバイスに、第2のサイズ分布を有するマイクロバブルを提供させるようにさらに構成され、前記第2のサイズ分布内の前記マイクロバブルの半径は、前記第1のサイズ分布内の前記マイクロバブルの半径より小さい、項目1に記載のシステム。
(項目20)
前記マイクロバブルからの音響信号を検出するための検出器をさらに備え、前記コントローラは、前記検出された音響信号に基づいて、前記超音波に対するマイクロバブル応答が所定の閾値を上回るかどうかを判定し、該当する場合、前記投与デバイスに、第2のサイズ分布を有するマイクロバブルを提供させるようにさらに構成され、前記第2のサイズ分布内の前記マイクロバブルの半径は、前記第1のサイズ分布内の前記マイクロバブルの半径より大きい、項目1に記載のシステム。
(項目21)
処置のために、ある放射用量を前記標的組織に伝送するための放射デバイスをさらに備える、項目1に記載のシステム。
(項目22)
前記投与デバイスは、処置のために、治療薬を前記標的組織に投与するようにさらに構成される、項目1に記載のシステム。
(項目23)
前記治療薬は、ブスルファン、チオテパ、CCNU(ロムスチン)、BCNU(カルムスチン)、ACNU(ニムスチン)、テモゾロミド、メトトレキサート、トポテカン、シスプラチン、エトポシド、イリノテカン/SN-38、カルボプラチン、ドキソルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、プロカルバジン、パクリタキセル、フォテムスチン、イホスファミド/4-ヒドロキシイフォスファミド/アルドイホスファミド、ベバシズマブ、5-フルオロウラシル、ブレオマイシン、ヒドロキシウレア、ドセタキセル、またはシタラビン(シトシンアラビノシド、ara-C)/ara-Uのうちの少なくとも1つを含む、項目22に記載のシステム。
(項目24)
集束超音波源を使用して標的組織の処置を強化させる一方で非標的組織への損傷を限定する方法であって、前記方法は、
(a)集束を前記標的組織内に発生させるために、前記集束超音波源から伝送される超音波の周波数を選択することと、
(b)マイクロバブルの少なくとも50%が、前記超音波の前記選択された周波数に合致する共鳴周波数に対応する臨界半径と異なる半径を有するように、第1のサイズ分布を有するマイクロバブルを提供することと、
(c)前記超音波を前記選択された周波数で印加し、前記標的組織を処置することと
を含む、方法。
(項目25)
前記マイクロバブルの少なくとも99%は、前記臨界半径より小さい半径を有する、項目24に記載の方法。
(項目26)
前記提供されるマイクロバブルの少なくとも50%の最大半径は、前記臨界半径より少なくとも50%小さい、項目24に記載の方法。
(項目27)
前記提供されるマイクロバブルの少なくとも99%の最大半径は、前記臨界半径より少なくとも50%小さい、項目24に記載の方法。
(項目28)
前記提供されるマイクロバブルの少なくとも99%は、前記臨界半径より大きい半径を有する、項目24に記載の方法。
(項目29)
前記提供されるマイクロバブルの少なくとも50%の最小半径は、前記臨界半径より少なくとも50%大きい、項目24に記載の方法。
(項目30)
前記提供されるマイクロバブルの少なくとも99%の最小半径は、前記臨界半径より少なくとも50%大きい、項目24に記載の方法。
(項目31)
前記臨界半径と異なる細孔サイズを有するフィルタを用いて、前記マイクロバブルをフィルタ処理することをさらに含む、項目24に記載の方法。
(項目32)
前記標的組織および非標的組織の特性を取得することをさらに含み、前記超音波の周波数は、前記取得された特性に基づいて選択される、項目24に記載の方法。
(項目33)
前記特性は、撮像データを使用して取得される、項目32に記載の方法。
(項目34)
前記非標的組織は、前記集束超音波源と前記標的組織との間に位置する介在組織を備え、前記方法は、前記取得された特性に基づいて、前記超音波と前記介在組織との間の音響相互作用を予測することをさらに含み、前記超音波の周波数は、前記予測された音響相互作用に少なくとも部分的に基づいて選択される、項目32に記載の方法。
(項目35)
試験範囲内の複数の超音波周波数を用いて、前記標的組織を超音波処理することと、周波数毎に、前記標的組織内に堆積される超音波エネルギーの量を示すパラメータの値を測定することとをさらに含み、前記超音波の周波数は、前記測定された値に基づいて、前記試験範囲内の前記周波数の中で選択される、項目24に記載の方法。
(項目36)
前記超音波の前記選択された周波数は、それ自体が前記標的組織内に堆積される超音波エネルギーの最大量に対応する、前記測定された値に対応する、項目35に記載の方法。
(項目37)
前記パラメータは、出力、エネルギー、強度、音響力、組織変位、または温度のうちの少なくとも1つを含む、項目35に記載の方法。
(項目38)
周波数範囲を、前記選択された周波数がその中にあるように判定することをさらに含む、項目24に記載の方法。
(項目39)
前記提供されるマイクロバブルは、前記周波数範囲内の最大周波数に対応する最小半径より小さい半径を前記マイクロバブルの少なくとも50%が有する前記第1のサイズ分布を有する、項目30に記載の方法。
(項目40)
前記提供されるマイクロバブルは、前記周波数範囲内の最小周波数に対応する最大半径より大きい半径を前記マイクロバブルの少なくとも50%が有する前記第1のサイズ分布を有する、項目30に記載の方法。
(項目41)
前記マイクロバブルからの音響信号を検出することと、前記超音波に対するマイクロバブル応答が所定の閾値を上回るかどうかを判定することと、該当する場合、前記超音波と関連付けられた前記選択された周波数または強度のうちの少なくとも1つを調節することとをさらに含む、項目24に記載の方法。
(項目42)
前記マイクロバブルからの音響信号を検出することと、前記超音波に対するマイクロバブル応答が所定の閾値を上回るかどうかを判定することと、該当する場合、第2のサイズ分布を有するマイクロバブルを提供することとをさらに含み、前記第2のサイズ分布内の前記マイクロバブルの半径は、前記第1のサイズ分布内の前記マイクロバブルの半径より小さい、項目24に記載の方法。
(項目43)
前記マイクロバブルからの音響信号を検出することと、前記超音波に対するマイクロバブル応答が所定の閾値を上回るかどうかを判定することと、該当する場合、第2のサイズ分布を有するマイクロバブルを提供することとをさらに含み、前記第2のサイズ分布内の前記マイクロバブルの半径は、前記第1のサイズ分布内の前記マイクロバブルの半径より大きい、項目24に記載の方法。
(項目44)
処置のために、前記標的組織をある放射用量に暴露させることをさらに含む、項目24に記載の方法。
(項目45)
処置のために、治療薬を前記標的組織に投与することをさらに含む、項目24に記載の方法。
(項目46)
前記治療薬は、ブスルファン、チオテパ、CCNU(ロムスチン)、BCNU(カルムスチン)、ACNU(ニムスチン)、テモゾロミド、メトトレキサート、トポテカン、シスプラチン、エトポシド、イリノテカン/SN-38、カルボプラチン、ドキソルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、プロカルバジン、パクリタキセル、フォテムスチン、イホスファミド/4-ヒドロキシイフォスファミド/アルドイホスファミド、ベバシズマブ、5-フルオロウラシル、ブレオマイシン、ヒドロキシウレア、ドセタキセル、またはシタラビン(シトシンアラビノシド、ara-C)/ara-Uのうちの少なくとも1つを含む、項目45に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図面では、同様の参照文字は、概して、異なる図全体を通して同一の部分を指す。また、図面は、必ずしも縮尺通りではなく、代わりに、概して、本発明の原理を例証することに重点が置かれている。以下の説明では、本発明の種々の実施形態は、以下の図面を参照して説明される。
【0017】
図1図1は、本発明の種々の実施形態に従った、例示的超音波システムを図式的に描写する。
【0018】
図2図2は、種々の実施形態に従った、マイクロバブルサイズとマイクロバブル共鳴周波数との間の関係を描写する。
【0019】
図3図3は、種々の実施形態に従った、マイクロバブルを標的領域に導入するための例示的投与システムを描写する。
【0020】
図4図4は、本発明の種々の実施形態に従った、マイクロバブルを利用して、超音波処置および/または標的化薬物送達を強化させるためのアプローチを図示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、集束音響エネルギービームを発生させ、集束音響エネルギービームを患者の身体内の標的領域101に送達するための例示的超音波システム100を図示する。印加される超音波/パルスは、標的領域内の組織をアブレートし、および/または、マイクロバブル発振および/またはキャビテーションを誘発し、処置効果を改良し得る。種々の実施形態では、システム100は、トランスデューサ要素104の位相アレイ102と、位相アレイ102を駆動するビーム形成器106と、ビーム形成器106と通信するコントローラ108と、入力電子信号をビーム形成器106に提供する周波数発生器110とを含む。種々の実施形態では、本システムは、標的領域101および/または非標的領域における組織の解剖学的特性(例えば、タイプ、性質、構造、厚さ、密度等)を判定するために、撮像機112(例えば、磁気共鳴画像診断(MRI)デバイス、コンピュータ断層撮影(CT)デバイス、陽電子放射断層撮影(PET)デバイス、単一光子放射断層撮影(SPECT)デバイス、または、超音波検査デバイス等)をさらに含む。
【0022】
アレイ102は、それを患者の身体の表面上に設置するために適した湾曲(例えば、球状または放物線)形状を有してもよい、あるいは、1つまたは複数の平面または別様に成形される区分を含んでもよい。その寸法は、数ミリメートル~数十センチメートルで変動してもよい。アレイ102のトランスデューサ要素104は、圧電セラミック要素であってもよく、シリコーンゴム内または要素104間の機械的結合を減衰させるために適した任意の他の材料内に搭載されてもよい。圧電複合材料、すなわち、概して、電気エネルギーを音響エネルギーに変換することが可能な任意の材料もまた、使用されてもよい。トランスデューサ要素104への最大出力伝達を保証するために、要素104は、入力コネクタインピーダンスに合致する50Ωにおける電気共鳴のために構成されてもよい。
【0023】
トランスデューサアレイ102は、ビーム形成器106に結合され、これは、個々のトランスデューサ要素104を、それらが集合的に集束超音波ビームまたは場を生産するように、駆動する。n個のトランスデューサ要素に関して、ビーム形成器106は、n個の駆動回路を含有してもよく、各々は、増幅器118と、位相遅延回路120とを含み、または、それらから成り、各駆動回路は、トランスデューサ要素104のうちの1つを駆動する。ビーム形成器106は、典型的には0.1MHz~10MHzの範囲内の無線周波数(RF)入力信号を周波数発生器110から受信し、これは、例えば、Stanford Research Systemsから利用可能なモデルDS345発生器であってもよい。入力信号は、ビーム形成器106のn個の増幅器118および遅延回路120のためのn個のチャネルに分裂されてもよい。いくつかの実施形態では、周波数発生器110は、ビーム形成器106と統合される。無線周波数発生器110およびビーム形成器106は、トランスデューサアレイ102の個々のトランスデューサ要素104を、同一周波数であるが異なる位相および/または異なる振幅で、駆動するように構成される。
【0024】
ビーム形成器106によって課される増幅係数または減衰係数α-αおよび位相偏移a-aは、超音波エネルギーを、トランスデューサ要素104と標的領域との間に位置する介在組織を通して伝送し、標的領域101上に集束させ、介在組織内で誘発される波歪曲を考慮する役割を果たす。増幅係数および位相偏移は、コントローラ108を使用して算出され、コントローラ108は、ソフトウェア、ハードウェア、ファームウェア、結線接続、または任意のそれらの組み合わせを通して、コンピュータ機能を提供し得る。種々の実施形態では、コントローラ108は、所望の集束または任意の他の所望の空間場パターンを標的領域101に発生させるように、各要素104と関連付けられた超音波パラメータ(例えば、周波数、位相偏移、および/または、増幅係数)の最適値を判定するために、過度の実験を伴わずに従来の様式においてソフトウェアでプログラムされる汎用または特殊目的デジタルデータプロセッサを利用する。超音波パラメータの最適値は、例えば、下記にさらに説明されるように、集束品質、標的領域101に対する集束場所、および/または超音波処理に対するマイクロバブル応答に基づいて、超音波手技の前、後、および/またはその間に1回または複数回、実験的に精緻化されてもよい。集束の品質および場所は、撮像機112を使用して監視されてもよく、マイクロバブル応答は、トランスデューサ102および/または音響信号検出器122を使用して検出されてもよい。
【0025】
ある実施形態では、超音波パラメータの最適値は、物理的モデルを使用して、コンピュータ的に推定される。例えば、物理的モデルは、各要素104と関連付けられた1つまたは複数の超音波パラメータと、トランスデューサ要素104の幾何学形状および標的領域101に対するその場所および配向についての情報とに基づいて、集束性質(例えば、集束域204の形状、サイズおよび場所)を予測し得る。予測に基づいて、コントローラ108は、標的領域101における最も所望の集束性質を発生させる超音波パラメータの最適値を判定し得る。いくつかの実施形態では、物理的モデルは、介在組織の特性および音響エネルギーの伝搬に対するその効果(例えば、反射、屈折、および/または散乱)についての詳細な情報を含む。そのような情報は、撮像機112および/または他の適したデバイスから取得されてもよい。画像獲得は、3次元(3D)であってもよく、または代替的には、撮像機112は、標的領域および/または非標的領域の3D画像を再構成するために適した2次元(2D)画像のセットを提供してもよい。画像操作機能性は、撮像機112内、コントローラ108内、または別個のデバイス内に実装されてもよい。
【0026】
ある処置シナリオでは、異なる方向から標的領域101に向かって伝搬する超音波/パルスは、非常に可変の生体構造(例えば、異なる厚さの組織層および異なる音響インピーダンス)に遭遇し得る。その結果、標的領域101におけるエネルギー堆積は、周波数に伴って、有意に、多くの場合には非単調に、変動し、特定の患者のための最適周波数は、典型的には、予測不能である。故に、いくつかの実施形態では、超音波の周波数は、超音波手技に先立ってまたはその間(例えば、処置設定の間)のいずれかにおいて、試験周波数範囲内の異なる「試験周波数」を有する波を用いて、標的領域101を連続して超音波処理することによって最適化される。試験される周波数毎に、標的領域101内のエネルギー堆積を示すパラメータ(例えば、温度、音響力、組織変位、出力、エネルギー、強度等)が、測定される。加えて、測定は、物理的予測モデルのパラメータを調節するために利用されてもよい。
【0027】
試験範囲は、超音波処置のために適した周波数(例えば、種々の実施形態では、0.1MHz~10MHz)の範囲全体に及んでもよいが、典型的には、最適周波数が予期されることになるはるかに小さい下位範囲である。そのような下位範囲は、例えば、物理的モデルを使用した最適周波数の推定、コンピュータシミュレーションの結果、または、他の患者における同一標的に関して取得された実験的データに基づいて、判定されてもよい。試験されるべき周波数は、試験範囲にわたって均一または非均一に分散されてもよい。種々の実施形態では、試験周波数の密度は、例えば、同一器官または同一組織を用いた以前の経験に基づいて、推定された最適周波数との近接度に伴って増加する。試験範囲およびその中の試験周波数は、事前に判定されてもよい、または、最適化プロセスの間に動的に調節されてもよい。例えば、一実施形態では、試験は、最初に、大試験範囲(例えば、0.1~10MHz)にわたって、大周波数間隔で(例えば、20kHzずつ)実施され、高エネルギー堆積を標的領域101にもたらす周波数の下位範囲(例えば、0.1~1MHz)を判定し、最適周波数は、その後、より小さい間隔で(例えば、5kHzずつ)試験することによって、下位範囲内で判定される。別の実施形態では、試験は、所定の潜在的試験周波数のサブセットに関して実施され、各実際の試験周波数は、前の試験の結果に基づいて、潜在的試験周波数のセットから選択される。
【0028】
したがって、超音波周波数を最適化することは、試験周波数を反復的に設定することと、標的領域101を選択された周波数で超音波処理することと、標的領域101における結果として生じるエネルギー堆積を定量的に査定することとを伴ってもよい。これは、例えば、堆積されるエネルギーから生じる標的領域101内の温度上昇を測定するためのMRI測温、標的領域101における音響圧力から生じる組織変位を測定するためのMR-ARFI、標的領域101から反射された超音波の強度を測定するための超音波検出、または概して、公知かつ予測可能な様式において標的領域101におけるエネルギー堆積と相関するパラメータを測定するための任意の実験技法を使用して、遂行されてもよい。周波数最適化に続いて、位相アレイトランスデューサ102の位相設定および/または振幅設定は、選択された周波数のための集束を最適化するために調節されてもよい。超音波印加のための最適周波数を判定するためのアプローチは、例えば、米国特許公開第2016/0008633号に提供され、その内容は、参照により本明細書に援用される。
【0029】
種々の実施形態では、マイクロバブルは、超音波処置を強化させるために、静脈内から、または、いくつかの場合には従来の投与システム124(例えば、注射器、蠕動ポンプ等)を使用した標的領域101に近接する注射によって、導入される。例えば、マイクロバブルは、ガス充填バブルとして続いて蒸発する液体液滴、または、別の適した物質(例えば、従来の超音波造影剤)と同伴される液体液滴の形態で、患者の脳の中に導入されてもよい。マイクロバブルは、体積拍動を伴って、印加される発振音響圧力に反応し得る。超音波/パルスの振幅に応じて、マイクロバブル発振は、印加される音響圧力に対して、線形にまたは非線形にのいずれかで関連する。低音響圧力に関して、瞬間マイクロバブル半径は、印加される音響圧力の振幅に関連して線形に発振し得る。マイクロバブル発振は、パラメータ(例えば、共鳴周波数、減衰係数、およびシェル性質)によって左右される。したがって、印加される音響波/パルスの周波数がマイクロバブル共鳴周波数と等しい場合、マイクロバブルは、大きな力を被り、圧潰し得る。これは、マイクロバブルがその中に存在する場合、非標的組織への損傷のリスクがある。
【0030】
この望ましくない効果を回避するために、種々の実施形態では、マイクロバブルの共鳴周波数fは、選択された最適超音波周波数fと実質的に異なる(例えば、10倍大きいまたは小さい)ように選択される。加えて、トランスデューサ要素104は、処置の間、低音響出力(例えば、5W)を有する波/パルスを伝送するようにアクティブ化される。このように、非標的領域に到着する超音波/パルスは、低音響強度を有し、それらの周波数は、マイクロバブルの共鳴周波数と実質的に異なるため、非標的領域内のマイクロバブルは、印加される音響場に対して非応答であり得る(またはキャビテーションを伴わずに、限定された応答を有する)。これは、これにより、非標的組織が損傷されない(または少なくとも非常に限定される)ことを確実にする。対照的に、超音波ビームが集束される標的領域101では、音響強度は、標的領域外より実質的に大きく、マイクロバブルを発振および/または圧潰させるために十分であり得る。これは、組織アブレーションのために、標的領域101におけるエネルギー吸収を強化させ、かつ/または、標的化薬物送達のために、血管の途絶を生じさせる。
【0031】
図2を参照すると、マイクロバブルサイズ(例えば、平均半径R)とマイクロバブル共鳴周波数fとの間の関係200が、超音波手技に先立って、実験的に確立され得る。描写されるように、概して、マイクロバブルの半径が小さいほど、それらが有する共鳴周波数は、より大きい。故に、いくつかの実施形態では、導入されるマイクロバブルの共鳴周波数fは、そのサイズ分布を介して制御される。例えば、超音波の最適周波数fが、上述されたように判定された後、最適超音波周波数に対応するマイクロバブルの半径は、確立された関係200を使用して、(任意の必要な内挿または外挿を用いて)コンピュータ的に判定されてもよい。マイクロバブルのサイズ分布は、次いで、マイクロバブルの有意な割合(例えば、50%を上回る、90%、95%、または99%、あるいはそれを上回る)が、印加される超音波周波数fと等しい共鳴周波数に対応するものを下回る(または、いくつかの実施形態では、上回る)半径を有するように選択されてもよい。一実施形態では、投与されるマイクロバブルの最大半径は、印加される超音波周波数fと等しい共鳴周波数に対応する半径より少なくとも50%小さいように選択される。これは、選択されたマイクロバブルサイズの細孔サイズを有するフィルタを用いて、マイクロバブルをフィルタ処理することによって達成されることができる。別の実施形態では、投与されるマイクロバブルの最小半径は、印加される超音波周波数fと等しい共鳴周波数に対応する半径より少なくとも50%大きいように選択される。再び、選択されたマイクロバブルサイズの細孔サイズを有するフィルタが、マイクロバブルをフィルタ処理するために実装されてもよい。続いて、フィルタを通過しなかったマイクロバブルは、後の標的領域の中への注射のためのマイクロバブル溶液中に懸濁されてもよい。
【0032】
種々の実施形態では、フィルタは、投与システム124と統合される。例えば、図3を参照すると、投与システム124は、標的化薬物送達のために、事前に形成されたマイクロバブルおよび/または治療薬を貯蔵する1つまたは複数の容器308、310に流動的に結合される1つまたは複数の独立チャネル302~306を含んでもよい。チャネル302~306は、次いで、マイクロバブルおよび/または治療薬をそれらの対応するチャネルから患者の身体の中に投与するために、導入デバイス(例えば、カテーテルまたは針)312に流動的に結合されてもよい。加えて、システム124は、患者への投与のために、マイクロバブルおよび/または治療薬をそれらの対応するチャネルを通して導入デバイス312の中に押進させるために、コントローラ316に結合される作動機構(例えば、注射器、蠕動ポンプ等)314を含んでもよい。コントローラ316は、超音波コントローラ108と別個のユニットであってもよく、または、単一のユニットとしてそれと統合されてもよい。いくつかの実施形態では、容器内のマイクロバブルは、サイズが多分散されてもよい。したがって、それと関連付けられた各チャネルは、異なる細孔サイズのフィルタを有してもよい。例えば、チャネル302、304は、それぞれ、0.5μmおよび2μmの細孔サイズを伴うフィルタ322、324を有してもよい。容器308を異なるチャネルに結合することによって、異なる最大サイズを有するマイクロバブルが、発生されてもよい。このアプローチは、特に、標的/非標的領域の条件(例えば、サイズまたは温度)および/または超音波/パルスに対するマイクロバブル応答が、処置の間に変化し、かつ、マイクロバブルサイズの調節が標的領域における最適処置効果を維持する一方で非標的領域への損傷を最小化するように所望されるときに、有用である。一実装では、容器308とチャネル302、304との間の流体結合は、下記にさらに説明されるように、監視される標的/非標的条件および/またはマイクロバブル応答に基づいて、リアルタイムで調節される。マイクロバブルの所望のサイズ分布を選択し、マイクロバブルを標的領域101の中に導入するための投与システム124および1つまたは複数のフィルタの構成は、米国特許出願第62/597,076号に見出され得、その内容は、参照により本明細書に援用される。
【0033】
処置の間、標的領域および/または非標的領域上の治療効果(例えば、組織浸透性強化またはアブレーション)は、撮像機112または他の適したデバイス(例えば、温度センサまたは生体センサ)を使用して、監視されてもよい。加えて、標的領域および/または非標的領域における印加される音響場に対するマイクロバブル応答は、トランスデューサ102および/または音響信号検出器122を使用して、監視されてもよい。標的領域内の治療効果が所望の標的目的を下回り、かつ/または、非標的領域における望ましくないマイクロバブル応答および/または治療効果が検出される場合、超音波パラメータの判定された値は、調節されてもよい。例えば、標的BBB領域における組織浸透性増加が、それを通した所望の治療薬の浸透を可能にするために不十分であるとき、超音波強度は、増加されてもよく、かつ/または、超音波処理周波数は、低減され、付加的マイクロバブルキャビテーションを生じさせ、それによって、満足する程度まで標的BBB領域を途絶してもよい。逆に言えば、標的領域外の敏感な器官が途絶されると、超音波出力は、低減されてもよく、かつ/または、超音波周波数は、増加され、非標的領域におけるマイクロバブル応答を低減させてもよい。代替的には、マイクロバブル応答およびそのエネルギー強化効果は、処置の間、選択された最適超音波周波数fとさらに異なるように、後続用量におけるマイクロバブルの共鳴周波数fを調整することによって、低減されてもよい。例えば、マイクロバブル共鳴周波数fと選択された超音波周波数fとの間の差異は、超音波処理に対するマイクロバブル応答を低減させるために、10倍~20倍増加されてもよい。いくつかの実施形態では、非標的領域における治療効果は、安全性閾値を実質的に下回る。安全性を損なわせることなく、標的領域における処置効率性を改良するように、マイクロバブル共鳴周波数fと選択された超音波周波数fとの間の差異を(例えば、10倍から5倍に)低減させることが望ましくあり得る。マイクロバブル共鳴周波数fの調節は、マイクロバブルの化学性質(例えば、シェル材料の分子量または組成物)を変化させ、かつ/または、図2に描写される確立された関係を使用して対応するマイクロバブルサイズをコンピュータ的に内挿または外挿することによって、達成されてもよい。続いて、マイクロバブルは、算出されたマイクロバブルサイズに対応する細孔サイズを有するフィルタを用いて、フィルタ処理されてもよい。このように、処置強化効果は、処置自体の間、安全性または有効性の理由から、改変されることができる。故に、本発明の種々の実施形態は、標的領域101における治療効果を最大化する一方で非標的領域におけるマイクロバブルから生じる損傷を最小化するアプローチを有利に提供する。超音波手技の間に組織浸透性を測定するためのアプローチは、例えば、本願と同日に出願された「Cavitation-Enhanced Targeted Drug Delivery and Dosing」と題された米国特許出願に提供され、超音波手技の間に標的領域および/または非標的領域上の治療効果をリアルタイムで監視するためのアプローチは、例えば、(2017年12月11日に出願された)米国特許出願第62/597,073号に提供され、印加される音響場に対するマイクロバブル応答を測定するためのアプローチは、例えば、(2018年5月22日に出願された)国際出願第PCT/US18/33815号に提供され、マイクロバブル応答を検出するためのトランスデューサアレイを構成するためのアプローチは、例えば、(2018年6月6日に出願された)米国特許出願第62/681,282号に提供される。これらの出願の内容は、参照により本明細書に援用される。
【0034】
いくつかの実施形態では、超音波処置は、他の治療方法(例えば、放射治療または標的化薬物送達)と組み合わせて実施される。例えば、超音波誘発マイクロバブル発振/キャビテーションは、標的領域101内の血管組織を途絶し得る。これは、放射治療における放射用量が有意に低減されることを可能にする一方で、依然として、処置の所望の効率性を達成する。超音波および放射治療を組み合わせるためのアプローチは、例えば、2017年6月29日に出願された米国特許出願第15/637,163号に提供され、その内容は、参照ぬより本明細書に援用される。別の処置シナリオでは、超音波誘発マイクロバブル発振/キャビテーションは、標的領域における組織浸透性を増加させ得る。これは、治療薬のより高い用量が、標的組織に到達することを可能にし、これにより、治療効果を強化させる。
【0035】
図4は、種々の実施形態に従った、マイクロバブルを使用して超音波処置および/または標的化薬物送達を強化させる一方で非標的組織への損傷を限定する代表的アプローチ400を図示する。第1のステップ402では、撮像機(例えば、MRIデバイス)112が、標的領域および/または非標的領域の情報(場所、サイズ、形状、タイプ、性質、構造、厚さ、密度等)を取得するために利用される。第2のステップ404では、撮像機を使用して取得された情報に少なくとも部分的に基づいて、超音波トランスデューサと関連付けられた1つまたは複数の超音波パラメータ(例えば、周波数、振幅、位相)の最適値が、物理的モデルを使用して判定されることができる。加えて、または、代替的に、超音波パラメータの最適値は、超音波手技に先立って、実験的に判定されてもよい。第3のステップ406では、超音波トランスデューサの判定された最適値に基づいて、マイクロバブル特性(例えば、共鳴周波数)が、超音波処置を強化させるために判定されてもよい。好ましくは、マイクロバブル共鳴周波数は、超音波周波数より実質的に(例えば、10倍)大きいが、所望に応じて、超音波周波数より実質的に小さくあることができる。第4のステップ408では、判定された共鳴周波数に対応するマイクロバブルのサイズ分布が、例えばその間の確立された関係を使用して、判定されてもよい。第5のステップ410では、判定されたサイズ分布を有するマイクロバブルが、次いで、標的領域に導入されてもよい。第6のステップ412では、超音波トランスデューサは、判定された最適値に基づいてアクティブ化され、処置を実施してもよい。(第7のステップ414において)処置の間、標的/非標的領域における治療効果および/またはマイクロバブル応答は、監視されてもよい。標的領域内の治療効果が所望の標的目的を下回り、かつ/または、非標的領域における望ましくないマイクロバブル応答ならびに/あるいは治療効果が検出される場合、超音波パラメータ値および/またはマイクロバブル特性は、調節されてもよい。ステップ408~414は、超音波手技全体を通して反復的に実施されてもよい。
【0036】
一般に、マイクロバブルを利用して超音波処置および/または標的化薬物送達を強化させる一方で非標的組織への損傷を限定するための機能性は、撮像機122、超音波システム100、および/または投与システム124のコントローラ内に統合されるか、または別個の外部コントローラもしくは他のコンピュータエンティティもしくは複数のエンティティによって提供されるかどうかにかかわらず、ハードウェア、ソフトウェア、または両方の組み合わせ内に実装される1つまたは複数のモジュール内に構造化されてもよい。そのような機能性は、例えば、上述されたように、撮像機112を使用して取得された標的領域および/または非標的領域の撮像データを分析すること、実験的におよび/または撮像データを使用して、超音波パラメータの最適値を判定すること、マイクロバブルサイズ分布とマイクロバブル共鳴周波数との間の関係を確立すること、最適超音波パラメータ値に基づいて、マイクロバブル共鳴周波数およびその対応するマイクロバブルサイズ分布を判定すること、判定されたサイズ分布を有するマイクロバブルを標的領域に導入させること、判定された最適パラメータ値を使用して、超音波トランスデューサをアクティブ化させること、超音波手技の間、標的/非標的領域における治療効果および/またはマイクロバブル応答を監視すること、かつ/または、最適超音波パラメータ値および/またはマイクロバブル共鳴周波数を調節することを含んでもよい。
【0037】
加えて、超音波コントローラ108および/または投与システムコントローラ316は、ハードウェア、ソフトウェア、または両方の組み合わせ内に実装される1つまたは複数のモジュールを含んでもよい。機能が1つまたは複数のソフトウェアプログラムとして提供される実施形態に関して、プログラムは、いくつかの高レベル言語(例えば、PYTHON、FORTRAN、PASCAL、JAVA(登録商標)、C、C++、C#、BASIC、種々のスクリプト言語、および/または、HTML)のうちのいずれかで書かれてもよい。加えて、ソフトウェアは、標的コンピュータ上に常駐するマイクロプロセッサにダイレクトされるアセンブリ言語で実装されることができる。例えば、ソフトウェアは、それがIBMPCまたはPCクローン上で起動するように構成される場合、Intel80x86アセンブリ言語で実装されてもよい。ソフトウェアは、フロッピー(登録商標)ディスク、ジャンプドライブ、ハードディスク、光ディスク、磁気テープ、PROM、EPROM、EEPROM、フィールドプログラマブルゲートアレイ、またはCD-ROMを含むがこれらに限定されない製造品上で具現化されてもよい。ハードウェア回路を使用する実施形態は、例えば、1つまたは複数のFPGA、CPLD、またはASICプロセッサを使用して実装されてもよい。
【0038】
治療薬は、腫瘍を処置するために適した任意の薬物を含んでもよい。例えば、膠芽腫(GBM)を処置するために、薬物は、例えば、ブスルファン、チオテパ、CCNU(ロムスチン)、BCNU(カルムスチン)、ACNU(ニムスチン)、テモゾロミド、メトトレキサート、トポテカン、シスプラチン、エトポシド、イリノテカン/SN-38、カルボプラチン、ドキソルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、プロカルバジン、パクリタキセル、フォテムスチン、イホスファミド/4-ヒドロキシイフォスファミド/アルドイホスファミド、ベバシズマブ、5-フルオロウラシル、ブレオマイシン、ヒドロキシウレア、ドセタキセル、シタラビン(シトシンアラビノシド、ara-C)/ara-U等のうちの1つまたは複数を含む、または、それらから成ってもよい。
【0039】
加えて、GBMを処置するために、当業者は、患者安全性制約内でBBBを横断して薬物吸収を強化させるために最適化された薬物およびBBB開放方式を選択することができる。この点において、BBBは、実際には、多くの腫瘍のコア内ですでに途絶されており、抗腫瘍薬物の部分的浸透を可能にすることが知られている。しかし、BBBは、侵襲性/逃散GBM細胞が見出され得る「腫瘍に隣接する脳」(BAT)領域の周囲で広く無傷であり、これは、腫瘍再発を引き起こす。腫瘍コアおよびBAT内のより良好な薬物送達のためにBBBを克服することは、本明細書に説明されるように、超音波を使用して遂行されることができる。採用される薬物は、種々の毒性度およびBBBを通した種々の浸透パーセンテージを有する。理想的薬物は、(その吸収および細胞毒性効果が、BBBが途絶される領域に閉じ込められ得るように)腫瘍に対して高細胞毒性および無BBB浸透性、(神経系への損傷を回避するため)低神経毒性、および、事前に規定された用量における(例えば、閾値を下回る)許容可能全身毒性を有する。薬物は、静脈内から、または、いくつかの場合には腫瘍領域に近接した注射によって、投与されてもよい。
【0040】
本明細書に採用される用語および表現は、限定ではなく、説明の用語および表現として使用され、そのような用語および表現の使用において、示されて説明される特徴の任意の均等物またはその一部を除外するいかなる意図も存在しない。加えて、本発明のある実施形態を説明しているが、本明細書に開示される概念を組み込む他の実施形態が本発明の精神および範囲から逸脱することなく使用され得ることは、当業者に明白である。故に、説明される実施形態は、あらゆる側面において例証的にすぎず、制限的ではないと見なされるものである。
図1
図2
図3
図4