(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-21
(45)【発行日】2023-03-02
(54)【発明の名称】電子時計を設定する方法
(51)【国際特許分類】
G04G 21/04 20130101AFI20230222BHJP
G04R 20/26 20130101ALI20230222BHJP
【FI】
G04G21/04
G04R20/26
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020201492
(22)【出願日】2020-12-04
【審査請求日】2020-12-04
(32)【優先日】2019-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591048416
【氏名又は名称】ウーテーアー・エス・アー・マニファクチュール・オロロジェール・スイス
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】パスカル・ラゴルゲット
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-195256(JP,A)
【文献】特開2004-93557(JP,A)
【文献】特開2018-81100(JP,A)
【文献】特開2019-128351(JP,A)
【文献】特開2017-44574(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0362893(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04G 3/00-99/00
G04C 1/00-99/00
G04R 20/26
G06F 21/30-21/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子時計を設定する方法であって、前記時計は、近距離無線通信モジュールと、前記モジュールと電気信号を交換するように構成したマイクロコントローラとを備え、前記方法は、近距離無線通信デバイスと、前記デバイスを制御するように構成したマイクロコントローラとを備える可搬電子機器により実行し、前記方法は、
-前記電子機器と前記時計との間の近距離無線接続を確立するステップ(10)と、
-前記電子機器の前記マイクロコントローラにより、前記時計のクロック状態データの正確さを検証するステップ(13)と、
-前記クロック状態データが不正確である場合、前記電子機器の前記マイクロコントローラが送信を命令すると、前記近距離無線通信デバイスにより、前記時計の前記近距離無線通信モジュールに、少なくとも1つの時計設定命令を送信するステップ(21)と、
-時計設定パラメータを生成するため、前記時計の前記マイクロコントローラにより、受信した前記少なくとも1つの命令を処理するステップ(22)と、
-前記時計の前記マイクロコントローラが構成を命令すると、生成した前記設定パラメータに従って前記時計を構成するステップ(23)と
を含み、さらに、
接続を確立する前記ステップ(10)は、前記時計の前記通信モジュールが、裏蓋に最も近い側で前記時計のムーブメント上に位置する場合、前記時計の前記通信モジュールを露出させるため、前記時計のケースの裏蓋を取り外すサブステップ(11)を含む、設定方法。
【請求項2】
接続を確立する前記ステップ(10)は、前記時計が前記電子機器に対して接続の確立を可能にする距離で位置する場合、前記時計と前記電子機器との間の接続を開始するサブステップ(12)を含む、請求項1に記載の設定方法。
【請求項3】
接続を確立する前記ステップ(10)は、前記時計が前記電子機器に対して接続の確立を可能にする距離で位置する場合、前記時計と前記電子機器との間の接続を自動的に開始するサブステップ(12)を含む、請求項1に記載の設定方法。
【請求項4】
前記検証するステップ(13)は、前記通信デバイスを制御する前記電子機器の前記マイクロコントローラが伝達を命令すると、前記近距離無線通信デバイスにより前記時計の前記通信モジュールに、前記時計のクロック状態データを取り出す命令を伝達するサブステップ(14)を含む、請求項
3に記載の設定方法。
【請求項5】
前記検証するステップ(13)は、前記時計の前記クロック状態データを取り出す命令を受信した後、前記時計の前記マイクロコントローラが送信を命令すると、前記近距離無線通信モジュールにより、前記電子機器に、前記時計の現在の設定を特徴付けるクロック状態データを送信するサブステップ(15)を含む、請求項4に記載の設定方法。
【請求項6】
前記検証するステップ(13)は、前記時計の文字板を読み取る工程から前記クロック状態データを決定するサブステップ(16)を含み、前記読み取り工程は、カメラと光学式認識アルゴリズムとを備える前記電子機器によって実行し、前記光学式認識アルゴリズムは、前記電子機器の前記マイクロコントローラによって実行し、前記サブステップ(16)は、
-前記時計の文字板及び前記電子機器の前記カメラを互いに向き合うように置く段階(17)と、
-前記電子機器の前記カメラ及び前記光学式認識アルゴリズムを使用して、前記時計の現在の設定を特徴付ける、前記文字板上に表示された情報を検出する段階(18)と、
-検出した前記情報に基づき、前記クロック状態データを推定する段階(19)と
を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の設定方法。
【請求項7】
前記検証するステップ(13)は、前記状態データを設定パラメータと比較するサブステップ(20)を含む、請求項5又は6に記載の設定方法。
【請求項8】
前記時計は、万年暦機構と、前記機構の要素を位置決めする手段とを含み、前記時計の前記マイクロコントローラは、前記位置決め手段を制御するように構成し、前記構成ステップ(23)は、前記設定パラメータに対応する位置に前記要素を位置決めするように、前記万年暦機構の要素を位置決めする手段を作動することを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の設定方法。
【請求項9】
前記電子機器は、スマートフォンである、請求項1から8のいずれか一項に記載の設定方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の方法を実施する電子時計を設定するシステムであって、前記システムは、近距離無線通信デバイスとマイクロコントローラとを備える可搬電子機器を備え、前記マイクロコントローラは、前記デバイスを制御するように構成し、前記時計は、近距離無線通信モジュールとマイクロコントローラとを備え、前記マイクロコントローラは、前記モジュールと電気信号を交換するように構成し、前記時計及び前記機器は、前記時計の設定動作を実行するため、互いに近距離無線接続するように構成する、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子時計の技術分野に関する。本発明は、より詳細には、電子時計、例えば水晶時計を設定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器と通信することができる、スマートフォン等のいわゆる「スマート」時計が時計製造分野に出現している。そのような時計は、特にプッシュ・ボタン、りゅうず及び/又は触知キーを起動させることによって手動設定することができるが、このことは、設定動作を担うユーザ又はアフターサービスの者にとって比較的不便である。例えば、時計が万年暦機構である場合、万年暦機構のアナログ表示要素の位置、より一般的には万年暦機構は、時計のりゅうずを引く及び/又は回転させる及び/又は時計の1つ若しくは複数のプッシュ・ボタンを押下することによって設定することができる。こうして、年の種類(例えば、閏年)が選択され、万年暦機構の様々な表示要素、より一般的には要素の全てが正確に位置決めされる。この方法は、ユーザが設定動作の全てを正確に呼び出し、次々に実行する必要があり、ユーザにとって冗長であるだけでなく、更には、エラー及び不具合の危険性を生じさせるものである。
【0003】
特に従来技術の欠点を克服する解決策を発見する必要性があることは、理解されよう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、水晶時計等の電子時計の万年暦機能等のクロック機能を実行する機構を設定する方法を提案することによってこうした欠点を克服することであり、この方法は、単純、強固で確実である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的で、本発明は、電子時計を設定する方法に関し、時計は、近距離無線通信モジュールと、このモジュールと電気信号を交換するように構成したマイクロコントローラとを備え、前記方法は、近距離無線通信デバイスと、前記デバイスを制御するように構成したマイクロコントローラとを備える可搬電子機器により実行し、方法は、
-電子機器と時計との間の近距離無線接続を確立するステップと、
-電子機器のマイクロコントローラにより、時計のクロック状態表示データの正確さを検証するステップと、
-クロック状態データが不正確である場合、電子機器のマイクロコントローラが送信を命令すると、近距離無線通信デバイスにより、時計の近距離無線通信モジュールに、少なくとも1つの時計設定命令を送信するステップと、
-時計設定パラメータを生成するため、時計のマイクロコントローラにより、受信した前記少なくとも1つの命令を処理するステップと、
-時計のマイクロコントローラが構成を命令すると、生成した設定パラメータに従って時計を構成するステップと
を含む。
【0006】
この方法は、ユーザが、例えばりゅうず、プッシュ・ボタン又は触知キーを使用して複雑な設定動作を一切実行する必要なく実施することができるという利点を有する。方法は、開始を要求することができ、この開始は、時計のプッシュ・ボタン若しくは電子機器のタッチ・スクリーンを押すことによって手動で行い得るか、又は時計及び電子機器が互いに近い場合、自動的に行い得る。
【0007】
この方法は、かなりわずかなハードウェアしか必要としないという利点も有する。適切なモバイル・アプリケーションを有するスマートフォン型可搬機器は、前記方法を実施するのに十分である。方法は、コンピュータに接続すべきセンサ等の専用ハードウェアの使用を必要とせず、かさばるハードウェアの使用も必要としない。スマートフォンを所持する者(例えば時計製造業者)は誰でも、本方法を実施することができる。
【0008】
他の実施形態では、
-接続を確立するステップは、時計の通信モジュールが、裏蓋に最も近い側で時計のムーブメント上に位置する場合、時計の通信モジュールを露出させるため、時計の裏蓋を取り外すサブステップを含み、
-接続を確立するステップは、この時計が電子機器に対して接続の確立を可能にする距離で位置する場合、時計と電子機器との間の接続を開始するサブステップを含み、
-接続を確立するステップは、この時計が電子機器に対して接続の確立を可能にする距離で位置する場合、時計と電子機器との間の接続を自動的に開始するサブステップを含み、
-検証するステップは、前記通信デバイスを制御する電子機器のマイクロコントローラが伝達を命令すると、近距離無線通信デバイスにより、時計の通信モジュールに、時計のクロック状態表示データを取り出す命令を伝達するサブステップを含み、
-検証するステップは、時計のクロック状態表示データを取り出す命令を受信した後、時計のマイクロコントローラが送信を命令すると、近距離無線通信モジュールにより、電子機器に、時計の現在の設定を特徴付けるクロック状態データを送信するサブステップを含み、
-検証するステップは、時計の文字板を読み取る工程からクロック状態データを決定するサブステップを含み、読み取り工程は、カメラと光学式認識アルゴリズムとを備える電子機器によって実行し、光学式認識アルゴリズムは、電子機器のマイクロコントローラが実行し、このサブステップは、時計の文字板及び電子機器のカメラを互いに向き合うように置く段階を含み、
-検証するステップは、時計の文字板を読み取る工程からクロック状態データを決定するサブステップを含み、読み取り工程は、カメラと光学式認識アルゴリズムとを備える電子機器によって実行し、光学式認識アルゴリズムは、電子機器のマイクロコントローラが実行し、このサブステップは、電子機器のカメラ及び光学式認識アルゴリズムを使用して、時計の現在の設定を特徴付ける、文字板上に表示された情報を検出する段階を含み、
-検証するステップは、時計の文字板を読み取る工程からクロック状態データを決定するサブステップを含み、読み取り工程は、カメラと光学式認識アルゴリズムとを備える電子機器によって実行し、光学式認識アルゴリズムは、電子機器のマイクロコントローラが実行し、このサブステップは、検出した情報に基づき、クロック状態データを推定する段階を含み、
-検証するステップは、状態データを設定パラメータと比較するサブステップを含み、
-時計は、万年暦機構と、前記機構の要素を位置決めする手段とを含み、時計のマイクロコントローラは、前記位置決め手段を制御するように構成し、構成ステップは、設定パラメータに対応する位置に前記要素を位置決めするように、万年暦機構の要素を位置決めする手段を作動することを含み、
-電子機器は、スマートフォンである。
【0009】
本発明は、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法を実施する電子時計を設定するシステムに更に関し、システムは、近距離無線通信デバイスとマイクロコントローラとを備える可搬電子機器を備え、マイクロコントローラは、前記デバイスを制御するように構成し、時計は、近距離無線通信モジュールとマイクロコントローラとを備え、マイクロコントローラは、このモジュールと電気信号を交換するように構成し、前記時計及び前記機器は、時計の設定動作を実行するため、互いに近距離無線接続するように構成する。
【0010】
本発明の目的、利点及び特徴は、非限定的な例として
図1に示す本発明の少なくとも1つの実施形態に関する以下の詳細な説明を読めばより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】水晶時計等の電子時計を設定する方法のステップの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に示す一実施形態では、本発明は、可搬又は携帯電子機器から、水晶時計等の電子時計を設定する方法に関する。言い換えれば、この時計及び可搬電子機器は、そのような方法の実施を可能にする。そのような方法は、水晶時計の万年暦等のクロック機能をもたらす機構を設定することができる。これらのクロック機能には、現在の日付、曜日、月若しくは年又は現在の月相等を含むこともできる。
【0013】
この方法は、可搬電子機器を備える時計設定システムによって実施され、可搬電子機器は、近距離無線通信技術を介して前記時計に接続することができる。したがって、この背景において、システムのこの時計は、非限定的、非網羅的に、
-近距離無線通信モジュール、特に、以下で説明する、遮蔽された近距離無線通信モジュールと、
-近距離無線通信モジュールと電気信号を交換するように構成したマイクロコントローラと、
-マイクロコントローラに時間基準をもたらし、更に、1つ又は複数のステッピング・モータを作動させ、時間表示針、及び万年暦等の時計のクロック機能の機構のアナログ表示要素を回転させる、水晶発振器等の調整部材と、
-時計の文字板及び裏蓋によって両側で閉鎖されるケースと、
-ケース上に組み付けられるバンドと、
-針、特に時、分及び秒をそれぞれ表示する3つの時間表示針を備えるアナログ表示器と、
-万年暦機構と、
-タッチ・スクリーン又は更にはプッシュ・ボタン若しくはりゅうず等の入力インターフェースと、
-特にマイクロコントローラに電力供給する、セル又は電池等の電源ユニットと
を備える。
【0014】
この時計において、万年暦機構は、日付、曜日及び月を表示する要素を含む要素のセットを備える。表示要素は、好ましくは、アナログ表示要素であり、例えば、曜日及び月を表示する2つの針と、日付を表示する円板とを備える。したがって、これらの表示要素は、日付、曜日、月及び任意で月相の表示が可能である一方で、異なる長さの月及び閏年を自動的に考慮するものであることを理解されたい。より詳細には、針等の表示要素は、日付、曜日、月若しくは月相の表示を指し示すために使用され、時計の文字板上に内接されるか、又は日付、曜日、月若しくは月相表示が内接される円板等の表示要素上に内接され、これらの表示のうち1つは、文字板内の開口に面して位置決めされる。
【0015】
この時計のマイクロコントローラは、万年暦機構の要素、特にこれらの表示機構を位置決めする手段を制御することができる。万年暦機構の要素を位置決めする手段は、有利には、1つ又は複数のステッピング・モータを備える。マイクロコントローラは、制御手段又は入力インターフェースに更に接続され、入力インターフェースは、りゅうず、プッシュ部品又はタッチセンシティブ領域とすることができ、時計着用者によって直接作動させることができる。更に、マイクロコントローラに接続される近距離無線通信モジュールは、
-裏蓋側の、時計ムーブメント上、
-目に見える、この時計の文字板の上面、又は特に、この文字板内に作製した空洞内に配置することによるこの文字板の底面上、
-目に見える、時計の縁の上面、又は特に、この縁内に作製した空洞内に配置することによるこの縁の底面上、
-この文字板の厚さ部内、
-(バンドに向かう)ホーンの間、又は中板の側部上、封止非金属要素の背後、及び
-この時計のベゼルの中又は上
に配置することができる。
【0016】
可搬電子機器は、ユーザ端末としても公知である電子機器であり、ユーザが携行、搬送することができ、電子機器の搬送中、機能させることができる。電子機器は、例えばスマートフォン、ファブレット又はタブレットにも当てはまる。言うまでもないが、主電源を必要とする機器、例えば、デスクトップ・コンピュータは、この定義の範囲内にない。機器の群、例えば、センサがワイヤレス又は有線リンクによって接続される可搬コンピュータも、この定義の範囲内にない。この電子機器を使用し、時計に設定パラメータを伝達する。この電子機器は、電子回路が中に配置されるケースを備える。この電子回路は、マイクロコントローラと、近距離無線通信デバイスとを含み、両方とも電池によって電力供給される。電子機器は、カメラと、タッチ・スクリーン又は更にはボタン等の入力インターフェースとを更に備えることができる。更に、マイクロコントローラは、そのメモリ要素内に、光学式認識アルゴリズムを含むことができ、特に、カメラから発信したデータを処理する動作から、時計の文字板上に表示される情報を検出するのに寄与する。
【0017】
近距離無線通信モジュール及びデバイスは、例えば、NFC(近距離無線通信)型ワイヤレス近距離高周波通信技術を実施する。この通信モジュール及びデバイスは、例えば、高周波数HF、例えば、13.56MHzの周波数帯域で動作することができる。
【0018】
したがって、この通信モジュール及びデバイスは、時計及び電子機器が互いに近距離にある際、データの交換を可能にする。そのような距離は、約0から10cmの範囲内、好ましくは、0から5cmの範囲内にあることができる。時計の通信モジュールは、受動型とすることができ、電力は、電子機器の通信デバイスによって発せられる無線周波数によって通信モジュールに供給される。
【0019】
より詳細には、近距離無線通信モジュール及びデバイスはそれぞれ、電子チップと少なくとも1つのアンテナとを備える。前記少なくとも1つのアンテナに接続されるチップは、ハードウェア要素とソフトウェア要素とを備える。この背景において、チップのハードウェア要素及び/又はソフトウェア要素は、より詳細には、メモリ要素と協働する少なくとも1つのマイクロプロセッサを含む。通信モジュール及びデバイスはそれぞれ、プラスチック又は積層複合基体等の支持要素を備え、この支持要素の上に、チップ及び前記少なくとも1つのアンテナが接合される。
【0020】
時計の通信モジュールは、磁気遮蔽要素を備え、磁気遮蔽要素は、支持要素内、又は支持要素と磁気遮蔽要素を組み付ける時計の部品との間に含まれることに留意されたい。この磁気遮蔽要素は、前記少なくとも1つのアンテナをアンテナの直ぐ近傍に位置する時計の金属構成要素から隔離することによって、通信モジュールのアンテナを介した無線信号の受信/送信の効率及び感度を改善する。言い換えれば、この磁気遮蔽要素は、通信モジュールが放出又は受ける磁界に対するあらゆる変更を防止するものである。この変更は、通信モジュールの直ぐ近傍に位置する時計の様々な金属構成要素の存在による。更に、磁気遮蔽要素は、これらの金属構成要素が通信モジュールの性能レベルにもたらし得る負の影響を低減することができる。この負の影響とは、この通信モジュールが生成又は受ける磁界が減衰されることである。
【0021】
この背景において、時計の設定を可能にする方法は、電子機器及び時計を備える設定システムによって実施される。特に、方法は、前記機構の表示要素を位置決めすることによって、この時計の万年暦機構の設定を可能にする。この万年暦機構を設定する背景において、この方法を水晶時計の万年暦機構設定方法と呼ぶことができる。
【0022】
この方法は、電子機器と時計との間の近距離無線接続を確立するステップ10を含む。本明細書では、用語「近距離」とは、接続が、時計から電子機器を分離する距離が0から10cm、好ましくは0から5cmの範囲にある限り、NFC(近距離無線通信)技術を使用して行われることを意味すると理解されたい。このステップ10は、時計の通信モジュールが、裏蓋に最も近い側で時計ムーブメント上に位置する場合、時計の通信モジュールを露出させるため、時計ケースの裏蓋を取り外すサブステップ11を含む。水晶時計ケースのこの裏蓋は、概して、この時計の電源ユニットを交換できるようにするため、取り外し可能である。
【0023】
しかし、このサブステップ11は、強制的ではなく、例えば、
-裏蓋が透明部分を有するか、若しくは部分的に透明な材料から作製されている場合、又は
-裏蓋が非金属性である場合、又は
-通信モジュールが時計の裏蓋の透明部分上に配置されている場合、又は
-時計の通信モジュールが、例えば、
■時計のベゼル内
■(バンドに向かう)ホーンの間、若しくは中板の側部上、封止非金属要素の背後、
■時計文字板の中若しくは上、及び/又は
■この時計の縁の中若しくは上
に配置されている場合、
実行しない。
【0024】
次に、この接続を確立するステップ10は、この時計が電子機器に対して近距離無線接続の確立を可能にする距離で位置する場合、時計と電子機器との間の接続を、特に自動的に、開始するサブステップ12を含む。言い換えれば、そのようなサブステップ12は、手動又は自動で開始することができる。
【0025】
このサブステップ12を手動で実行する場合、このサブステップは、この時計が電子機器に対して近距離無線接続の確立を可能にする距離で位置する場合に時計と電子機器との間の接続を手動で開始するサブステップ12と呼ばれる。この背景において、時計及び電子機器は、互いに対して、近距離無線接続の確立を可能にする距離で配置されている。次に、ユーザと時計の入力インターフェースとの間の対話の後、又はユーザと電子機器の入力インターフェースとの間の対話の後、ケースに応じて、時計の通信モジュールが、電子機器の通信デバイスとの接続工程を開始するか、又は電子機器の通信デバイスが、時計の通信モジュールとのこの接続工程を開始する。
【0026】
このサブステップ12を自動的に実行する場合、近距離無線接続の確立を可能にする距離で時計を電子機器に対して単に配置することで、時計の通信モジュールと電子機器の通信デバイスとの間の接続工程を開始するのに十分である。この背景において、この工程は、この時計が電子機器に対して接続の確立を可能にする距離で位置する場合に時計と電子機器との間の接続を自動的に開始するサブステップ12と呼ばれる。したがって、この構成において、このサブステップ12は、自動接続の確立に寄与し、ユーザは、時計又は電子機器に対して、この時計と電子機器との間での動作の実施を一切必要とせず、更には、この時計のクロック機能を、自動的に、前記時計のユーザに透過的に設定する。このサブステップ12は、通信デバイスとモジュールとの間で行われる認証段階を含むことができ、この段階はユーザに透過的であることに留意されたい。言い換えれば、そのような認証段階は、ユーザによる動作の実施を一切必要としない。この背景において、認証要素は、通信デバイス及びモジュールのメモリ要素内に含まれる。
【0027】
接続が時計と電子機器との間に確立された後、方法は、電子機器のマイクロコントローラによって、時計のクロック状態表示データの正確さを検証するステップ13を含む。そのようなクロック状態データとは、時計の少なくとも部分的な設定状態を表すデータである。クロック状態データは、例えば、時計上で設定される時間帯、国名コード、アラーム、地理的位置、日付、潮の干満、太陽相又は月相、UTC時間等とし得る。方法が前記万年暦機構の設定を目的とする場合、状態データは、現在の日付、曜日、月又は年(又は更には、万年暦機構が月相表示要素、例えば、地理的位置、半球、国名コード等に関するデータを含む場合、現在の月相)に関連することができ、前記状態データは、万年暦機構の現在の設定状態、例えば、前記機構の表示要素の位置を表す。
【0028】
そのような検証ステップ13は、前記通信デバイスを制御する電子機器のマイクロコントローラが送信を命令すると、近距離無線通信デバイスにより、時計の通信モジュールに、時計のクロック状態表示データを取り出す命令を伝達するサブステップ14を含む。したがって、このサブステップ14の間、前記命令に関する信号は、マイクロコントローラによって生成され、近距離無線通信デバイスに伝達される。次に、近距離無線通信デバイスは、この命令を時計の通信モジュールに伝達する。
【0029】
次に、検証ステップ13は、時計がこの命令を受信した後、時計のマイクロコントローラが送信を命令すると、近距離無線通信モジュールにより、電子機器に、時計の現在の設定を特徴付けるクロック状態データを送信するサブステップ15を含む。現在の設定は、この時計の現在の設定パラメータに対応する。このサブステップ15の間、マイクロコントローラは、万年暦等のクロック機能に対して機構の現在の設定を特徴付けるクロック状態データを決定する。万年暦の背景において、状態データは、現在の日付、曜日、月及び年(及び任意で、万年暦機構が、月相表示要素、例えば、地理的位置、半球又は国名コード等に関するデータを含む場合、現在の月相)に関連する。この状態データは、万年暦機構の現在の設定状態、特に前記機構の表示要素の位置を表すのに十分なものである。次に、マイクロコントローラは、このクロック状態データを含む信号を生成し、信号は、通信モジュールに伝達される。次に、時計の通信モジュールは、前記状態データを通信デバイスに送信する。
【0030】
この伝達サブステップ14及び送信サブステップ15の代替実施形態では、検証ステップ13は、時計の文字板の読み取りを伴う工程からクロック状態データを決定するサブステップ16を提供することができ、読み取り工程は、カメラと光学式認識アルゴリズムとを備える電子機器によって実行し、光学式認識アルゴリズムは、電子機器のマイクロコントローラによって実行される。したがって、そのようなサブステップ16は、時計の文字板及び電子機器のカメラが互いに向き合うように置くように設計した段階17を含む。用語「互いに向き合う」とは、文字板及びカメラが、互いから、時間表示針がカメラの画像捕捉視野内にあるような距離で互いに対して配置されることを意味すると理解されたい。次に、このサブステップ16は、電子機器のカメラ及び光学式認識アルゴリズムにより、この時計の文字板上に表示された時計の現在の設定を特徴付ける情報を検出する段階18を含む。次に、このサブステップ16は、検出した情報に基づき、クロック状態データを推測する段階19を含む。この状態データは、この場合、万年暦機構の現在の設定を更に特徴付ける。
【0031】
次に、検証ステップ13は、万年暦機構の設定が正確であることを検証するため、状態データを設定パラメータと比較するサブステップ20を含む。これらの設定パラメータは、例えば、インターネット・ネットワーク上で電子機器から定期的に又は要求時に取り出される。用語「設定パラメータ」は、時計を少なくとも部分的に設定可能にするあらゆるパラメータを意味すると理解されたい。設定パラメータは、例えば、示されている日付に関連する情報とすることができるが、時間帯、国名コード、アラーム、地理的位置、日付、潮の干満、太陽相若しくは月相又はUTC時間等に関連し得る情報でもある。設定パラメータが万年暦機構の設定パラメータである場合、この設定パラメータは、現在の日付、曜日、月及び年(及び任意で、万年暦機構が月相表示要素、したがって、例えば地理的位置、半球又は国名コード等のデータを含む場合、現在の月相)に関する情報を意味すると理解されることに留意されたい。この情報は、時計の万年暦機構、特に、この機構の表示要素の位置を正確に設定するのに十分なものである。
【0032】
次に、方法は、少なくとも1つの設定命令を時計の近距離無線通信モジュールに送信するステップ21を含む。この設定命令は、クロック状態データが不正確であると特定/推定されるとすぐに、電子機器のマイクロコントローラが送信を命令すると、近距離無線通信デバイスによって送信される。このステップ21の間、前記設定命令に関する制御信号は、マイクロコントローラによって生成され、次に、電子機器の通信デバイスに伝達される。この制御信号は、万年暦機構の設定パラメータの符号化、即ち、現在の日付、曜日、月及び年(及び適切な場合、更には月相)に対するデータ・セットの符号化に対応するようなものである。上述のように、そのような設定パラメータは、例えば、インターネット・ネットワーク上で電子機器から定期的に又は要求時に取り出される。符号化を実施するため、電子機器上にインストールした専用アプリケーションが有利に使用されることに留意されたい。電子機器がスマートフォン又はタブレットである場合、このアプリケーションは、有利には、電子機器がもたらす日付、曜日、月、年及び地理的位置から符号化を生成することができる。次に、この設定命令は、通信デバイスによって時計の通信モジュールに伝達される。
【0033】
次に、方法は、時計設定パラメータを生成するため、時計のマイクロコントローラにより、受信した前記少なくとも1つの命令を処理するステップ22を含む。このステップ22の間、マイクロコントローラは、前記命令を処理し、現在の万年暦の日付を得る。
【0034】
次に、方法は、時計のマイクロコントローラが構成を命令すると、生成した設定パラメータに従って時計を構成するステップ23を含む。このステップ23の間、このステップ23は、時計のマイクロコントローラが命令すると、処理ステップ22の間に得た設定パラメータに対応する位置に前記要素を配置するように、万年暦機構の要素を位置決めする手段を作動するように設計されている。
【0035】
当業者には明らかである様々な修正形態及び/又は改良形態及び/又は組合せは、上記で説明した本発明の実施形態に対して行い得る一方で、依然として添付の特許請求の範囲が定義する本発明の範囲内にあることは理解されよう。例えば、検証ステップ13は、省略することができ、ユーザは、時間表示針の位置を実行可能なデータに変換する。
【0036】
更に、本明細書は、万年暦機構の設定及び設定の検証を説明しているが、代替的に、他の設定、例えば、時間帯、時間又は潮の干満等を実行し得る。更に、この設定情報は、必ずしも時計上に(特に針又は円板によって)アナログ表示されるものではなく、文字板上にデジタル表示することができる。したがって、構成ステップ23は、アナログ表示要素を変位させる起動手段を必ずしも含まない。
【符号の説明】
【0037】
10 近距離無線接続を確立するステップ
13 正確さを検証するステップ
21 少なくとも1つの時計設定命令を送信するステップ
22 少なくとも1つの命令を処理するステップ
23 時計を構成するステップ