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  • 特許-車両用ローンチコントロール方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-21
(45)【発行日】2023-03-02
(54)【発明の名称】車両用ローンチコントロール方法
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/06 20060101AFI20230222BHJP
   F16H 61/66 20060101ALI20230222BHJP
   F16H 63/46 20060101ALI20230222BHJP
   F16H 59/18 20060101ALI20230222BHJP
   F16H 59/38 20060101ALI20230222BHJP
   F16H 59/54 20060101ALI20230222BHJP
   F16H 59/16 20060101ALI20230222BHJP
【FI】
F16H61/06
F16H61/66
F16H63/46
F16H59/18
F16H59/38
F16H59/54
F16H59/16
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020517168
(86)(22)【出願日】2018-09-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-10
(86)【国際出願番号】 EP2018075046
(87)【国際公開番号】W WO2019068452
(87)【国際公開日】2019-04-11
【審査請求日】2021-06-22
(31)【優先権主張番号】17195333.4
(32)【優先日】2017-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516323231
【氏名又は名称】パーキンス エンジンズ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】PERKINS ENGINES COMPANY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100177426
【弁理士】
【氏名又は名称】粟野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】マイケル バイアー
(72)【発明者】
【氏名】マイケル クローニン
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン スペンサー
(72)【発明者】
【氏名】マシュー マウリッツソン
(72)【発明者】
【氏名】ケビン スタッツマン
【審査官】糟谷 瑛
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-035414(JP,A)
【文献】特公平06-071862(JP,B2)
【文献】特開2006-194263(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 59/00
F16H 61/00
F16H 63/00
F16D 48/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクセル、ブレーキおよび無段変速機(CVT)を有する車両用のローンチコントロール方法であって、
(i)車両のブレーキペダルを押すことによって車両の運転者が設定したブレーキトルクと、(ii)前記車両を静止位置に保持するために必要な保持トルクとを決定するステップと、
運転者が前記ブレーキペダルを解放したことを判定するステップと、
CVTのローンチクラッチを係合している間に前記ブレーキを解放するステップであって、前記ローンチクラッチは、ブレーキトルクとクラッチのクラッチトルクとの合計が保持トルクと同等に維持されるように、第1の圧力ランプ速度でクラッチ係合圧力を増加させることによって係合される、ステップと、
前記アクセルを介して運転者によって要求される加速トルクを決定するステップと、
前記クラッチ係合圧力は、前記クラッチトルクが前記加速トルクによって増大されるように、前記ブレーキトルクが実質的にゼロであると判定されると、第2の圧力ランプ速度で増大されるステップと、
固定された最小圧力ランプ速度を記憶するステップであって、前記最小圧力ランプ速度は、クラッチ係合圧力を最大係合圧力に向けて増加させるステップと、
現在の圧力ランプ速度を最小圧力ランプ速度と比較するステップと、
前記現在の圧力ランプ速度が前記最小圧力ランプ速度よりも小さい場合、前記クラッチ係合圧力を前記最小圧力ランプ速度に切り替えるステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記係合圧力切り替えステップの前に、更に、
前記ローンチクラッチの入力速度および出力速度が所定の速度で収束しているか否かを判定するステップと、
前記速度が所定の速度で収束しているときに、前記クラッチ係合圧力を現在のレベルに保持するステップと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ローンチクラッチの入力速度および出力速度が所定の速度で収束していないと判定された場合、前記方法は更に、前記クラッチ係合圧力を第3の圧力ランプ速度で増加させるステップを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ローンチクラッチが完全に係合されているとの判定は、前記クラッチの入力速度および出力速度が実質的に同じであるか否かを判定することによって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
更に、所定のシフト期間を記憶するステップと、前記ローンチクラッチが前記シフト期間内に完全に係合されない場合に前記CVTをニュートラル状態にするステップとを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
更に、
運転者が前記ブレーキペダルの解放に続いて前記ブレーキペダルを踏んだか否かを監視するステップと、
前記ブレーキペダルが踏まれていることが確認された場合、前記CVTをニュートラル状態にするステップと、
を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のトランスミッションの分野に関する。具体的には、本発明は、車両の始動または発進イベント中に車両のトランスミッションを制御する方法である。
【背景技術】
【0002】
歴史的に、車両の始動または発進イベントには、車両のスムーズな発進を確保するために、車両の運転者がアクセルペダル、ブレーキペダル、およびマニュアルのトランスミッション車両ではクラッチペダルの操作のバランスをとる必要があった。自動車技術の発展により、特にブレーキおよびクラッチ機能の制御はある程度自動化されており、電子コントローラがブレーキおよびクラッチ機能の側面を制御して車両の運転者を支援する。これは特に、運転者がブレーキペダルの踏み込みを止めた後でさえも車両のブレーキがかけられ続ける「ヒルスタート」技術の開発に当てはまる。これにより、車両が傾斜を後方に転がり落ちることはなく、ブレーキを介して印加されるブレーキトルクと一致するローンチクラッチトルクが印加されているとコントローラが判定するまで、ブレーキがかけられ続ける。
【0003】
「ヒルスタート」技術は、マニュアルまたはオートマチックトランスミッションを備えた車両で使用可能であるが、例えば、トラック、バス、並びに、ダンプトラックおよび作業機械等の様々なオフ・ハイウェイ車両のような重量車(HDV)にとって特に有益である。これらのHDVは通常、ブレーキホールド機能だけでなくクラッチ機能も制御する1つ以上のコントローラを備えている。そのような自動化された構成の欠点の1つに、ブレーキの解放およびローンチクラッチの係合が適切に調整されない場合に、ブレーキおよび/またはトランスミッション部品に不必要な摩耗が生じ得る点が挙げられる。
【0004】
特許文献1は、車両用の始動制御方法に関する。この方法では、協調的に、コントローラによりブレーキトルクを低減し、ローンチクラッチトルクを増加させて、ブレーキおよびローンチクラッチのトルクの組み合わせが、車両を現在の位置に保持するために必要な保持トルクと一致するようにする。このような調整により、前述の部品の摩耗が確実に減少する。しかしながら、開示された方法は、ローンチクラッチの完全な係合を監視および保証するための何らかのステップを含まない故に、加速トルクが印加された後、ローンチクラッチが不所望に摩耗する可能性が依然としてある。
【0005】
特許文献2は、請求項1のプリアンブルに記載されている特徴を有する車両用の制御システムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第8239107(B2)号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2014526(A1)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、特許文献1に開示されているような既知の制御方法に伴う、これらの欠点を取り除くまたは軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、アクセル、ブレーキおよび無段変速機(CVT)を有する車両用のローンチコントロール方法が提供される。この方法は、(i)車両のブレーキペダルを押すことによって車両の運転者が設定したブレーキトルクと、(ii)車両を静止位置に保持するために必要な保持トルクとを決定するステップを含む。この方法は、運転者がブレーキペダルを解放したことも判定する。CVTのローンチクラッチを係合している間にブレーキが解放され、ここで、ローンチクラッチは、ブレーキトルクとクラッチのクラッチトルクとの合計が保持トルクと同等に維持されるように、第1の圧力ランプ速度でクラッチ係合圧力を増加させることによって係合される。アクセルを介して運転者によって要求される加速トルクが決定される。クラッチ係合圧力は、クラッチトルクが加速トルクによって増大されるように、ブレーキトルクが実質的にゼロであると判定されると、第2の圧力ランプ速度で増大される。固定された最小圧力ランプ速度が記憶され、ここで、最小圧力ランプ速度は、クラッチ係合圧力を最大係合圧力に向けて増加させる。現在の圧力ランプ速度が最小圧力ランプ速度と比較され、現在の圧力ランプ速度が最小圧力ランプ速度よりも小さい場合、クラッチ係合圧力は最小圧力ランプ速度に切り替えられる。
【0009】
次に、本発明の好ましい実施形態を、単なる例示として、以下の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】車両のドライブトレインおよび関連する運転者制御の概略図である。
図2図1の車両のドライブトレインに適用されるローンチコントロール方法における様々なステップを示すフローチャートである。
図3図2のローンチコントロール方法が適用されたときの、ブレーキおよびローンチクラッチ圧力のコマンドプロファイルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明のローンチコントロール方法が適用され得る車両のドライブトレインおよび関連する運転者制御を概略的な形態で示している。しかしながら、本発明の方法は、本明細書に示されている特定のドライブトレイン構成だけに適用されることを意図していないことを理解されたい。例えば、ドライブトレインの無段変速機(CVT)は、本明細書に記載されているCVTとは異なるレイアウトおよび駆動経路を有し得る。同様に、ドライブトレインおよび運転者制御の特定の構成要素は、本明細書に記載のローンチコントロール方法に関係しない故に、明確性を確保するため省略されている場合があることを理解されたい。
【0012】
ドライブトレインは、例えば、内燃機関または電気モータであり得る原動機1を備える。原動機1は、トランスミッション入力シャフト2によってCVT3に接続されている。CVTは、車両の副動輪5に接続されるトランスミッション出力シャフト4も備える。車両の車輪は、車両に制動力を印加するための少なくとも1つのブレーキ7を含む。図示の実施形態では、副動輪5はそれぞれブレーキ7を有する。
【0013】
入力シャフト2は、入力シャフト2に平行に配置されたバリエータ入力シャフト10上に載置された第1のサテライトギア8と噛み合う入力ギア6を備える。入力シャフト10は、全体的に12で示されるハイドロメカニカルバリエータを駆動する。バリエータ12は、入力シャフト10によって駆動される容量可変ポンプ14を備える。ポンプ14は、既知のタイプの制御要素または回転斜板16を有し、一対の油圧ライン20、22によって油圧モータ18に流体接続されている。モータ18は、バリエータ出力ギア26を備えるバリエータ出力シャフト24に接続される。副軸28は、バリエータシャフト10、24に平行に配置されており、出力ギア26と噛み合う第1の副軸ギア30と、サミングトランスミッション(summing transmission)34の第1のサンギア36と噛み合う第2の副軸ギア32とを有する。
【0014】
サミングトランスミッションまたはディファレンシャルトランスミッション34は、第1および第2の遊星ギアセット38、48を含む。第1の遊星38の第1のリングギア40および第2の遊星48の第2の遊星キャリア49は、入力シャフト2の回転がこれら2つの要素も回転させるように、入力シャフト2に接続されている。第1の遊星38の第1の遊星キャリア39および第2の遊星48の第2のリングギア50は、低速またはローンチクラッチ52の形態の、第1の摩擦シフト要素の入力側に接続されている。第2の遊星48の第2のサンギア46は、別の摩擦シフト要素である第1の高速クラッチ56の入力側に接続されている。中間シャフト58は、第1の低速クラッチ52および第1の高速クラッチ56の出力側に接続されている。中間シャフト58は、入力および出力シャフト2、4と同軸である。
【0015】
第1の低速および高速クラッチ52、56は、トランスミッション34、60が互いに同軸になるように、サミングトランスミッション34を出力またはレンジトランスミッション60に選択的に接続する。クラッチ52、56はどちらも、サミングトランスミッション34と出力トランスミッション60との間に画定された接続空間に配置されている。上述したように、低速および高速クラッチ52、56のそれぞれの入力側は、サミングトランスミッション34の少なくとも1つの要素に接続される。第1の低速および高速クラッチ52、56のそれぞれの出力側は、トランスミッション入力および出力シャフト2、4と同軸である中間シャフト58に接続される。出力トランスミッション60は、第3および第4の遊星ギアセット64、74を含み、そのそれぞれの第3および第4のサンギア62、72は両方とも中間シャフト58に接続される。第3の遊星64の第3の遊星キャリア65は、リバースギア80に接続されており、これは、本明細書ではドッグクラッチ82の形態をとる、連動式シフト要素を介して係合することができる。
【0016】
第1の低速および高速クラッチ52、56は、中間シャフト58に選択的に接続されると共に、更に別の摩擦シフト要素である第2の高速クラッチ84の入力側にも選択的に接続される。第2の高速クラッチ84は、第1の低速および高速クラッチ52、56との接続スペースに位置し、第3の遊星キャリア65に接続される出力側を有する。従って、第2の高速クラッチ84が係合されると、第3の遊星64の第3のサンギアおよび遊星ギアが一緒にロックされ、一体となって回転する。
【0017】
第3および第4の遊星64、74の第3および第4のリングギア66、76は、互いに接続され、かつ第2の低速クラッチまたはブレーキ要素90に接続される。第2の低速クラッチ90が係合されると、第3および第4のリングギア66、76の回転が阻止される。第4の遊星74の第4の遊星キャリア75は、出力シャフト4に接続されている。
【0018】
ドライブトレインを制御するための運転者制御および制御コンポーネントも図1に示されている。コントローラまたは電子制御ユニット100は、好ましくはソレノイド弁である制御弁102と連通している。この制御弁102は、その係合および解放のために、流体リザーバ106からローンチクラッチ52への油圧流体の流れを制御する。コントローラ100も、その適用および解放のために少なくとも1つのブレーキ7と通信している。
【0019】
コントローラは、タイマーおよびランダムアクセスメモリ(RAM)を含むことができ、第2のリングギア50および出力シャフト4の回転速度をそれぞれ測定する第1および第2の速度センサ110、112と通信することもできる。
【0020】
車両運転者制御は、アクセルペダル150およびブレーキペダル160を含む。両ペダル150、160は、コントローラにより、運転者がいつペダルを踏んだか、および、少なくともブレーキペダルの場合に、運転者がペダル上に印加した圧力を決定することができるように、コントローラ100と通信するセンサ(図示せず)を有する。
【産業上の利用可能性】
【0021】
次に、特に図2を参照して、上記のような車両用のローンチコントロール方法について説明する。この方法は、コントローラにより、車両が静止しており、かつブレーキペダルが車両の運転者によって踏み込まれていることを判定する開始ステップ200から始まる。その後の最初のステップは、コントローラにより、ブレーキペダルを踏んでいる車両の運転者が設定したブレーキトルクと、車両を静止位置に保持するために必要な保持トルクとを決定するプロセスステップ202である。この保持トルクは、コントローラに通信される勾配および/またはペイロード情報に基づいて計算されてもよい。判定ステップ204では、コントローラにより、1つ以上のブレーキペダルセンサを介して、運転者がブレーキペダルを解放したか否かをチェックする。そうでない場合、本方法は、ブレーキペダルの解放を監視し続ける。ブレーキペダルが解放されている場合、本方法はプロセスステップ206に進み、ここで、CVTの第1の低速クラッチまたはローンチクラッチが係合されるのと同時に、車両のブレーキが解放される。
【0022】
ローンチクラッチは、第1の圧力ランプ速度でクラッチ係合圧力を増加させることにより係合される。換言すると、クラッチ係合圧力は、ステップ206を通して第1の速度で増加する。この第1のランプ速度により、車両のロールバック応答と、負荷に応答するエンジンの能力とのバランスをとる。そうすることで、コントローラにより、ブレーキトルクとクラッチのクラッチトルクとの合計が保持トルクに等しい状態を維持することで、ブレーキが解放されても車両が静止した状態を維持する。クラッチ係合圧力は、必要に応じてクラッチを作動させるために流体リザーバから流体を解放するクラッチ制御弁を介して、コントローラによって制御される。
【0023】
このブレーキおよびローンチクラッチ調整ステップ206に続いて、コントローラは、判定ステップ208にて、加速トルク要求が保持トルクより大きい場合に、加速トルクがアクセルペダルを介して運転者によって要求されたか否かを判定する。そうでない場合、ブレーキおよびローンチクラッチ調整ステップ206が継続する。しかしながら、加速トルクが要求された場合、コントローラは、プロセスステップ210にて、クラッチ制御弁に調整を命令し、引いては、第2の圧力ランプ速度でクラッチ係合圧力を増加させる。しかしながら、コントローラは、ブレーキトルクが実質的にゼロである、または、換言するとブレーキが完全に解放されたと判断した場合にのみ、このステップを実行する。従って、クラッチトルクは、プロセスステップ210によって加速トルクにより増加される。
【0024】
任意に、この時点で、本方法はトランスミッション速度比較判定ステップ212に進むことができる。判定ステップ212において、コントローラは、第2のリングギアおよびCVTの出力シャフト上の速度センサを介して、ローンチクラッチに対する入力および出力の速度が、所定の速度で速度差ゼロに向けて収束しているか否かを判定することができる。第2のセンサは出力シャフト上にあるが、コントローラは、ローンチクラッチの出力速度を出力シャフト速度から既知の方法で計算することができるようにプログラムされている。
【0025】
速度が所定の速度で速度差ゼロに向けて収束している場合、これは、ローンチクラッチが所望の通りに完全に係合した位置に移動していることを示している。この場合、プロセスは、クラッチ係合圧力がコントローラによって現在のレベルに保持される、クラッチ圧力保持プロセスステップ214に移動することができる。ステップ212により、速度が所望の速度で収束していないと判定されると、コントローラは制御弁を再び調整することにより、プロセスステップ216にて、クラッチ係合圧力を第3の圧力ランプ速度で再び増加させる。
【0026】
本方法に速度比較ステップ212が含まれるか否かに関係なく、本方法は、ローンチクラッチのための記憶された最小クラッチランプ速度データ218を含む。この最小ランプ速度は、ローンチクラッチの圧力が最大係合圧力に向けて増加し、ローンチクラッチの完全な係合を保証するデフォルトの速度である。任意の速度比較ステップ212の有無にかかわらず、ステップ210でクラッチ係合圧力が第2のランプ速度で増加された後、判定ステップ220は、現在の圧力ランプ速度を記憶された最小ランプ速度と比較する。現在の(即ち、第2または第3の)圧力ランプ速度が(現在の圧力がステップ214で一定に保持されている故に)ゼロまたは最小圧力ランプ速度未満である場合、コントローラはランプ速度をプロセスステップ222にて最小ランプ速度に切り替える。現在の圧力ランプ速度が最小速度よりも大きい場合、本方法は、プロセスステップ224にて、係合圧力がそのより高い速度で増加し続けることを可能にする。本方法は、ローンチクラッチが完全に係合されているとコントローラが判断するまで、クラッチ係合圧力を現在のまたは最小のレベルにて増加させることを可能にし、この時点で、本方法は終了ステップ226を使用するであろう。クラッチの完全な係合は、クラッチの入力速度および出力速度が実質的に同じであると判断することによって確立され得る。
【0027】
本方法は、発進制御中に2つのイベントのいずれかが発生した場合にトランスミッションをニュートラル状態にする一対のオーバーライド判定ステップも使用することができる。それらのうちの第1のステップは判定ステップ228であり、ここではコントローラにより、ローンチクラッチの完全な係合を完了するための所定の期間を超過したか否かを監視する。そうでない場合、ローンチプロセスは継続することができるが、時間が超過した場合、プロセスステップ230にて、トランスミッションをニュートラル状態に設定し、プロセスはステップ232にて終了する。同様に、関連するセンサを介して、ローンチイベント中に運転者がブレーキペダルを踏んだか否かをコントローラにより常に監視する、判定ステップ234が採用される。再度、これが検出された場合、コントローラは、プロセスステップ236にてトランスミッションをニュートラル状態にし、ステップ238にてプロセスを終了する。
【0028】
ローンチコントロール方法で使用され得るコマンドプロファイルを図3に示しており、ここでは、ブレーキ圧力およびクラッチ係合圧力の経時的な変化が示されている。プロファイルは、ローンチプロセスの5つのフェーズA~Eに分割されている。ブレーキが解除されたときに車両を静止状態に維持するために必要な例示的な保持トルクHと、アクセルペダルを介した車両の運転者からのトルク要求に基づく例示的な運転者トルクしきい値Oとがプロファイルに示されている。プロファイルに示されている圧力の変動と同様に、ブレーキおよびクラッチトルクが変動することが認識されよう。
【0029】
フェーズA、または「充填」フェーズは、図2に示すプロセスのステップ200および202に対応する。このフェーズの間、ブレーキをオンに保つために印加されるブレーキ圧力BPは一定であり、ブレーキがなくとも車両を保持するのに必要な保持トルクHが決定される。フェーズAの終わりに、運転者がブレーキペダルを解放したことが確認されるため、ブレーキ圧力BPが徐々に低下して、ブレーキが徐々に解放される。同時に、コントローラにより、生成されたブレーキトルクとクラッチトルクの合計が保持トルクHに等しい状態を維持しつつ、ローンチクラッチ係合圧力CPを増加させる。このフェーズB、または「グレード」フェーズは、プロセスのクラッチおよびブレーキ圧力調整ステップ206を示す。
【0030】
フェーズBの終わりには、運転者がアクセルペダルを踏んだため、車両を発進および加速させることを望んでいると判断される。これは、ブレーキ圧力BPおよび結果として生じるトルクが実質的にゼロになり、車両がクラッチ係合圧力CPおよび結果として生じるクラッチトルクによって静止状態に保たれているときにのみ可能である。フェーズC、または「運転者」フェーズは、プロセスのステップ208および210をカバーしており、ここでは、クラッチ係合圧力CPが第2のランプ速度で増加され、加速トルクがクラッチトルクに追加される。フェーズCの終わりに、加速トルクは、運転者のアクセルペダルの操作によって指示される運転者トルクしきい値Oに達している。この時点で、プロセスの任意の速度比較ステップ212により、トランスミッションの入力速度および出力速度が所定の範囲内にあるか否かを確認することができる。図示のプロファイルでは、速度はまだ範囲内にないため、プロファイルのフェーズDまたは「速度進行」フェーズにて、クラッチ圧力が第3の圧力ランプ速度で印加されている。フェーズDの特定の時点で、速度の比較により、速度が望ましい速度で収束していると判断され、プロセスのステップ214のように、クラッチ圧力CPが現在の値に保持される。
【0031】
最後に、プロファイルのフェーズDからフェーズE、または「固定速度」フェーズへの遷移は、ステップ220により、クラッチ圧力ランプ速度がゼロになり、最小ランプ速度MR未満であると判断したポイントを表す。従って、この時点でコントローラはランプ速度を固定の最小ランプ速度MRに切り替え、クラッチ圧力を最大に増大させることによって、ローンチクラッチが完全に係合される。
【0032】
本発明の方法は、ブレーキが解除された後でさえも、ブレーキおよび/またはトランスミッション部品の摩耗量を最小限に抑えつつ、車両のスムーズで応答性の高い発進を提供する。
【0033】
添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、修正および改善を組み込むことができる。
図1
図2
図3