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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-21
(45)【発行日】2023-03-02
(54)【発明の名称】船舶のナビゲーションシステム
(51)【国際特許分類】
   G08G 3/02 20060101AFI20230222BHJP
   G16Y 10/40 20200101ALI20230222BHJP
   G16Y 20/20 20200101ALI20230222BHJP
   G16Y 40/60 20200101ALI20230222BHJP
【FI】
G08G3/02 A
G16Y10/40
G16Y20/20
G16Y40/60
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021097806
(22)【出願日】2021-06-11
(62)【分割の表示】P 2018150235の分割
【原出願日】2018-08-09
(65)【公開番号】P2021144751
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2021-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000219406
【氏名又は名称】東亜建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】田中 孝行
(72)【発明者】
【氏名】藤山 映
(72)【発明者】
【氏名】那須野 陽平
【審査官】武内 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-301897(JP,A)
【文献】特開2015-215532(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 3/02
G16Y 10/40
G16Y 20/20
G16Y 40/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定された所定区域内における船舶の運航を支援するナビゲーションシステムであって、
船舶の前方の撮影画像データを取得するカメラ装置と、前記船舶の前方向を示す方位データを取得する方位検出手段と、前記船舶の位置座標データを取得する測位手段と、前記 所定区域内における前記船舶の通行経路の境界線の位置座標データを有する境界線設定データが記憶されている記憶手段と、前記船舶の操縦室に設置されたモニタと、前記カメラ装置、前記方位検出手段、前記測位手段、前記記憶手段および前記モニタに通信可能に接続された演算装置とを備えて、
前記演算装置に逐次入力される前記撮影画像データ、前記方位データおよび前記船舶の位置座標データと、前記記憶手段に記憶されている前記境界線設定データとに基づいて、前記演算装置により前記通行経路の境界線の前記撮影画像データでの対応する位置を特定する境界線表示データが逐次算出され、その逐次算出された前記境界線表示データに基づいて、対向配置されて延在する前記通行経路の境界線がリアルタイムの前記撮影画像データに重ね合わせて前記モニタに表示される構成であり、
前記演算装置に通信可能に接続された船舶自動識別装置またはレーダ装置を備え、前記船舶自動識別装置が受信した他船の航行情報データまたはレーダ装置が検出したレーダ検出データと、前記方位データ、前記船舶の位置座標データおよび前記境界線設定データとに基づいて、前記演算装置により前記船舶と前記他船との衝突の可能性の有無が判断され、前記船舶と前記他船との衝突の可能性があると判断された場合には、前記他船の航行情報データまたは前記レーダ検出データと、前記撮影画像データ、前記方位データ、前記船舶の位置座標データおよび前記境界線設定データとに基づいて、前記船舶と前記他船との 衝突を回避するための前記船舶の避航経路の位置座標データの前記撮影画像データでの対応する位置を特定する避航経路表示データが算出され、その算出された避航経路表示データに基づいて、前記通行経路とは異なる対向配置されて延在する前記避航経路の境界線がリアルタイムの前記撮影画像データに重ね合わせて前記モニタに表示される構成にしたことを特徴とするナビゲーションシステム。
【請求項2】
予め設定された所定区域内における船舶の運航を支援するナビゲーションシステムであって、
船舶の前方の撮影画像データを取得するカメラ装置と、前記船舶の前方向を示す方位データを取得する方位検出手段と、前記船舶の位置座標データを取得する測位手段と、前記 所定区域内における前記船舶の通行経路の境界線の位置座標データを有する境界線設定データが記憶されている記憶手段と、前記船舶の操縦室に設置されたモニタと、前記カメラ装置、前記方位検出手段、前記測位手段、前記記憶手段および前記モニタに通信可能に接続された演算装置とを備えて、
前記演算装置に逐次入力される前記撮影画像データ、前記方位データおよび前記船舶の位置座標データと、前記記憶手段に記憶されている前記境界線設定データとに基づいて、前記演算装置により前記通行経路の境界線の前記撮影画像データでの対応する位置を特定する境界線表示データが逐次算出され、その逐次算出された前記境界線表示データに基づいて、対向配置されて延在する前記通行経路の境界線がリアルタイムの前記撮影画像データに重ね合わせて前記モニタに表示される構成であり、
前記船舶の動揺を検知する動揺センサを備えて、前記演算装置により前記境界線表示データを算出する際に、前記動揺センサの動揺データに基づいて前記境界線表示データの補正を行う構成にしたことを特徴とするナビゲーションシステム。
【請求項3】
前記演算装置に通信可能に接続された船舶自動識別装置またはレーダ装置を備え、前記船舶自動識別装置が受信した他船の航行情報データまたはレーダ装置が検出したレーダ検出データと、前記方位データ、前記船舶の位置座標データおよび前記境界線設定データとに基づいて、前記演算装置により前記船舶と前記他船との衝突の可能性の有無が判断され、前記船舶と前記他船との衝突の可能性があると判断された場合には、前記他船の航行情報データまたは前記レーダ検出データと、前記撮影画像データ、前記方位データ、前記船舶の位置座標データおよび前記境界線設定データとに基づいて、前記船舶と前記他船との 衝突を回避するための前記船舶の避航経路の位置座標データの前記撮影画像データでの対応する位置を特定する避航経路表示データが算出され、その算出された避航経路表示データに基づいて、前記通行経路とは異なる対向配置されて延在する前記避航経路の境界線がリアルタイムの前記撮影画像データに重ね合わせて前記モニタに表示される構成にした請求項2に記載のナビゲーションシステム。
【請求項4】
前記所定区域内における水底深さを示す等深線の位置座標データを前記境界線設定デー タに含まれていて、前記等深線がリアルタイムの前記撮影画像データの対応する位置に重ね合わせて前記モニタに表示される構成にした請求項1~3のいずれかに記載のナビゲーションシステム。
【請求項5】
前記記憶手段に所定時刻毎の前記境界線設定データが記憶されていて、前記演算装置により、前記カメラ装置による撮影画像データ取得時刻に対応する前記境界線設定データが抽出されて、前記境界線表示データの算出に使用される構成にした請求項1~4のいずれかに記載のナビゲーションシステム。
【請求項6】
前記船舶に配置された警告手段を備え、前記境界線設定データに前記所定区域内における前記船舶の警戒エリアの境界線の位置座標データが含まれていて、前記演算装置により、前記船舶の位置座標データと前記境界線設定データとに基づいて、前記警戒エリア内に前記船舶が位置しているか否かが逐次判断され、前記船舶が前記警戒エリア内に位置していると判断された場合には、前記警告手段により警告を発する構成にした請求項1~5のいずれかに記載のナビゲーションシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶のナビゲーションシステムに関し、さらに詳しくは、安全な運航経路を操船者に遅滞なく認識させることができ、操船者の負担を軽減できる船舶のナビゲーションシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
船舶の運航においては、進入禁止エリアを示す浮標(ブイ)などが設けられている場合はあるが、水上に船舶の通行経路や進入禁止エリアの境界線は明確には標示されていない。そのため、従来、自船の周囲の海図や物標が平面視で表示される航行経路図やハザードマップを確認しながら操船を行っている(例えば、特許文献1参照)。それ故、操船作業が煩雑になっていて、通行経路から外れそうになったり、進入禁止エリアに進入しそうになったりすることを操船者が早期に認識することが難しく、改善の余地がある。
【0003】
陸上を走行する車両の運行においては、工事現場や私有地などの道路標示が整備されていない区域では、車両の通行経路や進入禁止エリアの境界線が明確に標示されていない場合が多い。そのため、運転手は地面におかれたカラーコーン(登録商標)や立て看板などから、通行経路や進入禁止エリアの位置を把握して車両の運転を行っている。それ故、通行経路からはみ出して走行しそうになったり、進入禁止エリアに進入しそうになったりすることを運転手が早期に認識することが難しく、船舶の運航と同様、改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-49639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、安全な運航経路を操船者に遅滞なく認識させることができ、操船者の負担を軽減できる船舶のナビゲーションシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のナビゲーションシステムは、予め設定された所定区域内における船舶の運航を支援するナビゲーションシステムであって、船舶の前方の撮影画像データを取得するカメラ装置と、前記船舶の前方向を示す方位データを取得する方位検出手段と、前記船舶の位置座標データを取得する測位手段と、前記 所定区域内における前記船舶の通行経路の境界線の位置座標データを有する境界線設定データが記憶されている記憶手段と、前記船舶の操縦室に設置されたモニタと、前記カメラ装置、前記方位検出手段、前記測位手段、前記記憶手段および前記モニタに通信可能に接続された演算装置とを備えて、前記演算装置に逐次入力される前記撮影画像データ、前記方位データおよび前記船舶の位置座標データと、前記記憶手段に記憶されている前記境界線設定データとに基づいて、前記演算装置により前記通行経路の境界線の前記撮影画像データでの対応する位置を特定する境界線表示データが逐次算出され、その逐次算出された前記境界線表示データに基づいて、対向配置されて延在する前記通行経路の境界線がリアルタイムの前記撮影画像データに重ね合わせて前記モニタに表示される構成であり、前記演算装置に通信可能に接続された船舶自動識別装置またはレーダ装置を備え、前記船舶自動識別装置が受信した他船の航行情報データまたはレーダ装置が検出したレーダ検出データと、前記方位データ、前記船舶の位置座標データおよび前記境界線設定データとに基づいて、前記演算装置により前記船舶と前記他船との衝突の可能性の有無が判断され、前記船舶と前記他船との衝突の可能性があると判断された場合には、前記他船の航行情報データまたは前記レーダ検出データと、前記撮影画像データ、前記方位データ、前記船舶の位置座標データおよび前記境界線設定データとに基づいて、前記船舶と前記他船との 衝突を回避するための前記船舶の避航経路の位置座標データの前記撮影画像データでの対応する位置を特定する避航経路表示データが算出され、その算出された避航経路表示データに基づいて、前記通行経路とは異なる対向配置されて延在する前記避航経路の境界線がリアルタイムの前記撮影画像データに重ね合わせて前記モニタに表示される構成にしたことを特徴とする。
本発明の別のナビゲーションシステムは、予め設定された所定区域内における船舶の運航を支援するナビゲーションシステムであって、船舶の前方の撮影画像データを取得するカメラ装置と、前記船舶の前方向を示す方位データを取得する方位検出手段と、前記船舶の位置座標データを取得する測位手段と、前記 所定区域内における前記船舶の通行経路の境界線の位置座標データを有する境界線設定データが記憶されている記憶手段と、前記船舶の操縦室に設置されたモニタと、前記カメラ装置、前記方位検出手段、前記測位手段、前記記憶手段および前記モニタに通信可能に接続された演算装置とを備えて、前記演算装置に逐次入力される前記撮影画像データ、前記方位データおよび前記船舶の位置座標データと、前記記憶手段に記憶されている前記境界線設定データとに基づいて、前記演算装置により前記通行経路の境界線の前記撮影画像データでの対応する位置を特定する境界線表示データが逐次算出され、その逐次算出された前記境界線表示データに基づいて、対向配置されて延在する前記通行経路の境界線がリアルタイムの前記撮影画像データに重ね合わせて前記モニタに表示される構成であり、前記船舶の動揺を検知する動揺センサを備えて、前記演算装置により前記境界線表示データを算出する際に、前記動揺センサの動揺データに基づいて前記境界線表示データの補正を行う構成にしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、船舶の通行経路の境界線が、船舶の前方を撮影するカメラ装置によって取得したリアルタイムの撮影画像データの対応する位置に重ね合わせて表示される。それ故、水上に船舶の通行経路の境界線が明確に標示されていない場合にも、操船者はモニタの表示を見ることで、操縦時の視点で船舶の通行経路の境界線の位置を正確に認識することが可能となる。これにより、操船者に安全な運航経路を遅滞なく認識させることができ、船舶が通行経路からはみ出して走行することをより確実に防ぐことができる。さらに、操船者はモニタの表示を見るだけで、船舶と通行経路との位置関係を直感的に把握できるので、操船者の負担を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係る実施形態のナビゲーションシステムを平面視で模式的に例示する説明図である。
図2図1のナビゲーションシステムの構成を模式的に例示する説明図である。
図3図1のナビゲーションシステムのモニタに表示される画像データを例示する説明図である。
図4図1のナビゲーションシステムのモニタに表示される別の画像データを例示する説明図である。
図5図1のナビゲーションシステムのモニタに表示されるさらに別の画像データを例示する説明図である。
図6】参考形態のナビゲーションシステムを平面視で模式的に例示する説明図である。
図7図6のナビゲーションシステムのモニタに表示される画像データを例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の船舶のナビゲーションシステムを図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0010】
本発明のナビゲーションシステムは、予め設定された所定区域内における船舶の操船者による運航を支援する。図1~5に船舶20a(移動体20)に適用したナビゲーションシステム1(以下、システム1という)を例示している。以後、操縦者は船舶20aの場合は操船者、車両20bの場合は運転手である。操縦室21は、船舶20aの場合は操舵室、車両20bの場合は運転席である。
【0011】
図1および図2に示すように、このシステム1は、船舶20aの前方の撮影画像データ30を取得するカメラ装置2と、船舶20aの前方向を示す方位データを取得する方位検出手段3と、船舶20aの位置座標データを取得する測位手段4と、電子データを記憶可能な記憶手段5と、データ処理を行う演算装置6と、船舶20aの操縦室21に設置されたモニタ7とを備えている。この実施形態のシステム1は、さらに、入力手段8、船舶自動識別装置9、レーダ装置10、警告手段11および管理サーバ12を備えている。
【0012】
図1に示すように、モニタ7は船舶20aの操船者が操縦時に目視できる位置に配置される。この実施形態では、操縦室21にカメラ装置2、方位検出手段3、測位手段4、記憶手段5、演算装置6、モニタ7、入力手段8、船舶自動識別装置9、レーダ装置10、および警告手段11を配置しているが、モニタ7以外は操縦室21の外に配置することもできる。管理サーバ12は、船舶20aの外部に設けられている。
【0013】
図2に示すように、カメラ装置2、方位検出手段3、測位手段4、記憶手段5、モニタ7、入力手段8、船舶自動識別装置9、レーダ装置10および警告手段11はそれぞれ演算装置6に無線または有線によって通信可能に接続されている。演算装置6は管理サーバ12にインターネット回線を介して通信可能に接続されている。
【0014】
カメラ装置2には例えば、動画を撮影可能なデジタルカメラ等が使用される。カメラ装置2として、暗所でも撮影可能な低照度カメラ(高感度カメラ)や赤外線暗視カメラ等を採用することもできる。低照度カメラは、暗所においても撮影可能なワイドダイナミックレンジ機能(WDR機能)等の画像処理機能を塔載し、周辺領域の照度が0.005Lux程度の低照度においても撮影可能である。カメラ装置2による撮影範囲(ズーム率および上下左右の広角範囲)は記憶手段5に入力、記憶されている。
【0015】
方位検出手段3としては、ジャイロコンパスや磁気コンパスなどが例示できる。測位手段4としては、全地球測位システムから位置座標データを取得するGNSS受信装置などが例示できる。方位検出手段3および測位手段4は、同じ装置(例えば、GNSS方位計など)で構成することもできる。
【0016】
記憶手段5としては、不揮発性メモリやハードディスクなどが例示できる。記憶手段5には、所定区域内における船舶20aの通行経路TCの境界線TLの位置座標データおよび船舶20aの進入禁止エリアPAの境界線PLの位置座標データを有する境界線設定データが記憶されている。この実施形態の境界線設定データには、さらに、所定区域内における船舶20aの警戒エリアCAの境界線CLの位置座標データと、船舶20aの目標停止エリア(目的地)SAの境界線SLの位置座標データと、物標(航路標識や陸上物標)42の位置座標データおよびその物標情報データが含まれている。上述の種々の位置座標データは平面視の二次元データでよい。
【0017】
演算装置6としては、コンピュータ等を例示できる。モニタ7には、演算装置6から出力された画像データや文字データが表示される。入力手段8は、例えば、キーボードやマウス、タッチパネルなどで構成される。この実施形態では、モニタ7および入力手段8として、表示機能と入力機能を兼ね備えたタッチパネル式のモニタ7、8を採用している。
【0018】
船舶自動識別装置(AIS送受信機)9は、船舶どうしが航行情報を相互に交換する装置である。航行情報としては、船名や位置情報、針路、船首方位、速度などが例示できる。レーダ装置10は、船舶20aの周辺水域に存在する他船40aや浮遊体、障害物などの船舶20aに対する方向および離間距離を検出する。
【0019】
警告手段11は、船舶20aの操船者や乗組員に対して警告を発する。警告手段11としては、警報器や警告灯、携帯用端末(腕時計や携帯電話等)などが例示できる。この実施形態では、警告手段11として、操縦室21に警報器と警告灯が設置されている。操縦室21の外で作業する乗組員は、警告手段11として、振動機能と文字表示機能を有する携帯用端末を携帯している。
【0020】
管理サーバ12には、船舶20aの運航管理(車両の場合は運行管理)を行う管理部13の端末などがアクセスできる。管理部13の端末から管理サーバ12および演算装置6を介して、記憶手段5への境界線設定データの入力や、記憶手段5に記憶されている境界線設定データの更新、編集を行える構成になっている。
【0021】
次に、このシステム1による船舶20aのナビゲーション方法を説明する。
【0022】
船舶20aを運航する前に、予め設定した所定区域内における船舶20aの境界線設定データを作成し、記憶手段5に記憶させておく。船舶20aを運航する区域が、土木工事が行われる施工水域などのように、船舶20aの通行経路TCや進入禁止エリアPAなどの位置が時間帯によって変化する区域を含んでいる場合には、所定時刻毎の境界線設定データを作成し、その作成した複数の境界線設定データを記憶手段5に記憶させておく。
【0023】
境界線設定データは、管理部13の端末から管理サーバ12および演算装置6を介して記憶手段5に入力することもできる。船舶20aの運行中に、管理部13の端末を操作して、境界線設定データに設定されている通行経路TCや進入禁止エリアPA、警戒エリアCA、目標停止エリアSAなどの位置座標データの変更や修正を行うこともできる。
【0024】
所定区域内で船舶20aを運航するときには、カメラ装置2によって船舶20aの前方の撮影画像データ30が逐次取得され、方位検出手段3により船舶20aの前方向を示す方位データが逐次取得され、測位手段4によって船舶20aの位置座標データが逐次取得され、それぞれのデータが演算装置6に逐次入力される。
【0025】
そして、演算装置6に逐次入力される撮影画像データ30、方位データおよび船舶20aの位置座標データと、記憶手段5に記憶されている境界線設定データとに基づいて、演算装置6により通行経路TCの境界線TLおよび進入禁止エリアPAの境界線PLの撮影画像データ30での対応する位置を特定する境界線表示データが逐次算出される。記憶手段5に所定時刻毎の複数の境界線設定データが記憶されている場合には、演算装置6により、カメラ装置2による撮影画像データ取得時刻に対応する境界線設定データが抽出されて、境界線表示データの算出に使用される。
【0026】
そして、図3~5に例示するように、演算装置6によって逐次算出された境界線表示データに基づいて、通行経路TCの境界線TLおよび進入禁止エリアPAの境界線PLがカメラ装置2で取得されるリアルタイムの撮影画像データ30に重ね合わせてモニタ7に表示される。
【0027】
この実施形態のように、境界線設定データに、警戒エリアCAの境界線CLの位置座標データと、目標停止エリアSAの境界線SLの位置座標データと、所定区域内における物標42の位置座標データおよびその物標情報データとが含まれている場合には、通行経路TCおよび進入禁止エリアPAと同様に、演算装置6により警戒エリアCAの境界線CLと、目標停止エリアSAの境界線SLと、物標42のそれぞれの撮影画像データ30での対応する位置を特定する境界線表示データが逐次算出され、警戒エリアCAの境界線CLと、目標停止エリアSAの境界線SLと、物標42の物標情報35とが、リアルタイムの撮影画像データ30の対応する位置に重ね合わせてモニタ7に表示される。
【0028】
船舶20aにおけるカメラ装置2の配置および向きは既知なので、逐次取得される上記の方位データおよび船舶20aの位置座標データに基づいて、カメラ装置2の位置座標は把握できる。そして、カメラ装置2の撮影範囲は既知なので撮影画像データ30(このデータ30の座標系)において、記憶手段5に記憶されている種々のデータ(境界線TL、PL、CL、SLなど)の位置を特定して表示することができる。
【0029】
図3は平常時に表示される画像データ、図4は船舶20aと他船40aとの衝突の可能性があるときに表示される画像データ、図5は船舶20aが目標停止エリアSAの近くに位置するときに表示される画像データを例示している。図3~5では、通行経路TCの境界線TLを実線、進入禁止エリアPAの境界線PLを二点鎖線、警戒エリアCAの境界線CLを一点鎖線、目標停止エリアSAの境界線SLを破線で示している。
【0030】
通行経路TCは船舶20aの左右に表示されている2本の境界線TLの間の領域であり、進入禁止エリアPAは境界線PLで囲われたシングルハッチングで示された領域である。警戒エリアCAの境界線CLは、通行経路TCの境界線TLの外側に設定され、境界線CLと境界線PLの間の領域が警戒エリアCAとして設定されている。目標停止エリアSAは、図5の境界線SLで囲われたクロスハッチングで示された領域である。
【0031】
境界線TLや境界線PL、境界線CL、境界線SLのそれぞれの表示形式(線の太さや色、透明度など)は特に限定されず適宜決定できる。また、進入禁止エリアPAや目標停止エリアSAなどを、背景とは異なる色をつけて表示することもできる。この実施形態では、船舶20aの船首部分がモニタ7に映る構成にしているが、船舶20aが映らない構成にすることもできる。
【0032】
この実施形態では、さらに、演算装置6に逐次入力される撮影画像データ30、方位データおよび船舶20aの位置座標データと、境界線設定データに含まれている通行経路TCの境界線TLおよび目標停止エリアSAの境界線SLの位置座標データとに基づいて、演算装置6により船舶20aの現在位置から目標停止エリアSAに向かうための船舶20aの進路方向の撮影画像データ30での対応する位置を特定する進路方向表示データが逐次算出される。そして、図3に示すように、その逐次算出された進路方向表示データに基づいて、船舶20aの進路方向31がリアルタイムの撮影画像データ30に重ね合わせてモニタ7に表示される構成になっている。この実施形態では、船舶20a(移動体20)の進路方向31を矢印で表示しているが、矢印とは異なる表示形式にすることもできる。
【0033】
モニタ7にはさらに、境界線設定データを平面視で示す平面経路図32が表示され、その平面経路図32に船舶20aの現在位置とその周辺の通行経路TCの境界線TLや進入禁止エリアPAの境界線PLなどが表示される構成になっている。モニタ7には、方位データに基づいて船舶20aの前方向の方位情報33も表示されるようになっている。
【0034】
この実施形態では、船舶20aに搭載された船舶自動識別装置9が他船40aの航行情報データを受信した場合には、その航行情報データが演算装置6に逐次入力される。そして、演算装置6により、逐次入力される撮影画像データ30、方位データ、船舶20aの位置座標データおよび他船40aの航行情報データに基づいて、他船40aの撮影画像データ30での対応する位置を特定する他船情報表示データが算出される。
【0035】
そして、その算出された他船情報表示データに基づいて、リアルタイムの撮影画像データ30の他船40aが映っている位置の近くに他船40aの航行情報34aが重ね合わせてモニタ7に表示される構成になっている。モニタ7に表示される航行情報34aとしては、他船40aの名称や、進路方向、速度などが例示できる。平面経路図32にも、他船40aの現在位置と他船40aの進路方向が表示される構成になっている。
【0036】
さらに、船舶自動識別装置9が他船40aの航行情報データを受信した場合には、船舶自動識別装置9が受信した他船40aの航行情報データ、方位データ、船舶20aの位置座標データおよび境界線設定データに基づいて、演算装置6により、船舶20aと他船40aとの衝突の可能性の有無が判断される。即ち、船舶20aと他船40aとがそれぞれ現在の条件でそのまま時間が経過した場合に、互いの位置座標が相手と干渉し得る範囲にあると推定されると衝突の可能性が有ると判断される。
【0037】
そして、船舶20aと他船40aとの衝突の可能性があると判断された場合には、他船40aの航行情報データ、撮影画像データ30、方位データ、船舶20aの位置座標データおよび境界線設定データに基づいて、船舶20aと他船40aとの衝突を回避するための船舶20aの避航経路の位置座標データの撮影画像データ30での対応する位置を特定する避航経路表示データが算出される。そして、図4に示すように、その算出された避航経路表示データに基づいて、船舶20aの避航経路ACがリアルタイムの撮影画像データ30に重ね合わせて表示される構成になっている。避航経路ACとしては、進入禁止エリアPAを避けた経路が算出される。
【0038】
避航経路ACが表示される場合には、船舶20aの平常時の通行経路TCの境界線TLと警戒エリアCAの境界線CLが一時的に避航経路ACの境界線ALとその境界線ALの外側に設定された避航時の警戒エリアCAの境界線CLに変更されて表示されるとともに、船舶20aの避航時の進路方向31aと、避航経路ACに進路変更を促す文字情報とがモニタ7に表示される構成になっている。
【0039】
船舶20aが避航経路ACを進み、演算装置6により船舶20aと他船40aとの衝突の可能性がなくなったと判断されると、演算装置6により平常時の通行経路TCに合流する避航経路ACが算出されて、その避航経路ACがモニタ7に表示される。そして、船舶20aが避航経路ACから平常時の通行経路TCに合流すると、避航経路ACに関連する表示が消えて、平常時の通行経路TCの境界線TLと警戒エリアCAの境界線CLがモニタ7に表示された状態に戻る。
【0040】
この実施形態では、さらに、レーダ装置10によって船舶自動識別装置9を搭載していない小型の他船40aや、サイズが一定以上の浮遊体や障害物などが検出された場合には、その検出対象物(他船40aや浮遊体、障害物など)41のレーダ検出データが演算装置6に逐次入力される。そして、演算装置6により、逐次入力される撮影画像データ30、方位データおよび船舶20aの位置座標データと、レーダ装置10から入力されるレーダ検出データとに基づいて、その検出対象物41の撮影画像データ30での対応する位置を特定するレーダ検出表示データが算出される。そして、その算出されたレーダ検出表示データに基づいて、検出対象物41をより視認し易くするマーカー37がリアルタイムの撮影画像データ30の検出対象物41が映っている位置に重ね合わせてモニタ7に表示される構成になっている。
【0041】
さらに、レーダ装置10が小型の他船40aを検出した場合には、航行情報データの代わりにレーダ検出データが利用されて、船舶自動識別装置9の場合と同様に、演算装置6により、船舶20aと他船40aとの衝突の可能性の有無が判断され、船舶20aと他船40aとの衝突の可能性があると判断された場合には避航経路表示データが算出され、その避航経路表示データに基づいて、避航経路ACがリアルタイムの撮影画像データ30に重ね合わせてモニタ7に表示される構成になっている。
【0042】
また、演算装置6により船舶20aと他船40aとの衝突の可能性があると判断された場合には、演算装置6による制御により、警告手段11から船舶20aが他船40aと衝突する可能性があることを伝える警告が発せられる。具体的には、警報器から警告音または警告音メッセージが発せられ、警告灯が点灯または点滅する。さらに、乗組員が装着している携帯用端末が振動し、船舶20aが他船40aと衝突する可能性があることを伝える文字情報が携帯用端末の画面に表示される。演算装置6により、船舶20aと他船40aとの衝突の可能性がなくなったと判断された場合には、警告手段11による警告は停止する。
【0043】
この実施形態では、さらに、演算装置6により、船舶20aの位置座標データと境界線設定データとに基づいて、警戒エリアCA内または進入禁止エリアPA内に船舶20aが位置しているか否かが逐次判断され、船舶20aが警戒エリアCA内または進入禁止エリアPA内に位置していると判断された場合には、警告手段11により警告を発する構成になっている。
【0044】
具体的には、船舶20aが境界線CLを越えて警戒エリアCA内に位置していると判断された場合には、演算装置6による制御により、警報器から警告音または警告音メッセージが発生し、警告灯が点灯または点滅する。そして、モニタ7に、船舶20aが通行経路TCから外れていることを操船者に警告する文字情報が表示されるとともに、船舶20aを通行経路TCに戻すための進路方向31が表示される。
【0045】
船舶20aがさらに境界線PLを越えて進入禁止エリアPA内に位置していると判断された場合には、演算装置6による制御により、警報器から警戒エリアCAの場合とは異なる警告音または警告音メッセージが発生し、警告灯の点灯の色や点滅の速さなどが変化する。船舶20aが通行経路TCに戻り、演算装置6により船舶20aが通行経路TCに位置すると判断されると、警告手段11による警告は停止する。
【0046】
図5に例示するように、船舶20aが目標停止エリアSAの近くに位置するときには、モニタ7に船舶20aの目標停止エリアSAの境界線SLが表示される。さらに、船舶20aの現在位置から目標停止エリアSAまでの離間距離36が表示される構成になっている。
【0047】
このシステム1では、操船者に対するメッセージデータを管理部13の端末から管理サーバ12を介して演算装置6に入力することができ、演算装置6にメッセージデータが入力されると、モニタ7にそのメッセージデータが表示される構成になっている。また、入力手段8により、平面経路図32や他船40aの航行情報などのサイズ変更や表示の有無の切り替えなどを行えるようになっている。
【0048】
演算装置6に出入力される各種データは、管理サーバ12または記憶手段5に随時記録される構成になっている。記録された各種データは、操船者を教育する際の教材や災害発生時の検証データなどとして利用できるようになっている。
【0049】
このように、本発明によれば、船舶20aの通行経路TCの境界線TLと進入禁止エリアPAの境界線PLが、船舶20aの前方を撮影するカメラ装置2によって取得したリアルタイムの撮影画像データ30の対応する位置に重ね合わせて表示される。それ故、水上に船舶20aの通行経路TCの境界線TLや進入禁止エリアPAの境界線PLが明確に標示されていない場合にも、操船者はモニタ7の表示を見ることで、操縦時の視点で船舶20aの通行経路TCの境界線TLと進入禁止エリアPAの境界線PLの位置を正確に認識することが可能となる。これにより、操船者に安全な運航経路を遅滞なく認識させることができ、操船者が通行経路TCからはみ出して走行することや、進入禁止エリアPAに進入することをより確実に防ぐことができる。さらに、操船者はモニタ7の表示を見るだけで、船舶20aと通行経路TCおよび進入禁止エリアPAとの位置関係を直感的に把握できるので、操船者の負担を軽減できる。
【0050】
特に、施工水域では、潜水士による潜水作業が行われているエリアや他船40aが停泊するエリアなどの位置を正確に把握することは従来難しかったが、このシステム1では、そのようなエリアを進入禁止エリアPAとしてモニタ7に表示させることができるので非常に有用である。また、このシステム1では、夜間や霧などの視界が悪い状況においても、モニタ7に通行経路TCの境界線TLと進入禁止エリアPAの境界線PLの位置が操縦時の視点で表示されるので、船舶20aを安全に運行させることができる。カメラ装置2として、低照度カメラや赤外線暗視カメラを採用すると、暗所においても船舶20aの周辺状況をモニタ7に鮮明に表示できるので、夜間の操船者の負担を軽減するにはより有利になる。
【0051】
進路方向31や、警戒エリアCAの境界線CL、目標停止エリアSAの境界線SL、目標停止エリアSAまでの離間距離36をモニタ7に表示させることは必須ではないが、これらをモニタ7に表示すると、操船者が船舶20aの操縦をより直感的に行い易くなり、操船者の負担をより軽減できる。また、平面経路図32や、他船40aの航行情報34a、物標情報35、マーカー37をモニタ7に表示させることは必須ではないが、これらをモニタ7に表示すると、操船者に船舶20aの周囲の状況をより確実に遅滞なく認識させることができるので、船舶20aを安全に運航させるには有利になる。
【0052】
施工水域などでは、時間帯によって船舶20aが通行可能な通行経路TCや進入禁止エリアPAが変化する場合がある。そこで、記憶手段5に所定時刻毎の境界線設定データが記憶されている構成にするとよい。そして、演算装置6により、カメラ装置2による撮影画像データ取得時刻に対応する境界線設定データが抽出されて、境界線表示データの算出に使用される構成にする。これにより、施工水域などを運航する船舶20aのシステム1として非常に有用になる。
【0053】
この実施形態のように、船舶20aが警戒エリアCA内または進入禁止エリアPA内に位置していると判断された場合に、警告手段11により警告を発する構成にすると、船舶20aの操船者に通行経路TCから外れて走行していることや、進入禁止エリアPAに進入していることをより確実に遅滞なく認識させることができる。それ故、操船者の誤った操縦を抑制するにはより有利になる。
【0054】
このシステム1は、船舶自動識別装置9またはレーダ装置10を備えている構成にするとよい。そして、演算装置6により、船舶20aと他船40aとの衝突の可能性があると判断された場合に、避航経路ACがリアルタイムの撮影画像データ30に重ね合わせてモニタ7に表示される構成にする。これにより、船舶20aと他船40aとの衝突を回避するのに適切な避航経路ACを操船者に早期に認識させることができるので、船舶20aと他船40aとの衝突を回避するにはより有利になる。
【0055】
このシステム1では、水底深さを示す等深線の位置座標データを境界線設定データに含めて、等深線がリアルタイムの撮影画像データ30の対応する位置に重ね合わせてモニタ7に表示される構成にすることもできる。等深線の位置座標データは、事前に音響測深機や水中スキャナーなどで水底深さを実測して作成することもできるし、海図などのデータを利用することもできる。また、モニタ7に船舶20aの吃水を表示させることもできる。モニタに等深線と船舶20aの吃水を表示させると、操船者が、船舶20aが座礁する可能性のあるエリアをより正確に把握できるので、船舶20aの座礁を回避するにはより有利になる。
【0056】
船舶20aの動揺を検知する動揺センサを備えて、演算装置6により境界線表示データを算出する際に、動揺センサの動揺データに基づいて境界線表示データの補正を行う構成にすることもできる。この構成にすると、船舶20aの動揺が大きい場合にも、リアルタイムの撮影画像データ30と境界線TL、CL、SL、ALの位置をより精度よく合わせることができる。換言すると、この動揺データを使用せずに船舶20aが動揺れしていないと仮定してシステム1を構成すると、演算処理の負担が大幅に軽減するので、演算装置6として汎用スペック品を用いることができる。
【0057】
このシステム1に、船舶20aの左右方向や後方の撮影画像データ30を取得するカメラ装置2を備えることもできる。そして、船舶20aの前方の撮影画像データ30をモニタ7に表示する場合と同様に、船舶20aの後方や左右方向のリアルタイムの撮影画像データ30に境界線TL、CL、SL、ALや、他船40aの航行情報34aなどが重ね合わせてモニタ7に表示される構成にする。この構成にすると、操船者が船舶20aの左右方向や後方の状況をモニタ7で確認できるので、船舶20aを安全に運航させるにはより有利になる。
【0058】
カメラ装置2に撮影方向を変更する旋回機構を設けることもできる。そして、演算装置6により、逐次入力される撮影画像データ30、方位データ、船舶20aの位置座標データおよび旋回機構の旋回方向データと、記憶手段5に記憶されている境界線設定データとに基づいて、境界線表示データが逐次算出される構成にする。この構成にすると、カメラ装置2を旋回させる場合にも、その旋回させた方向のリアルタイムの撮影画像データ30の対応する位置に境界線TL、CL、SL、ALを重ね合わせてモニタ7に表示させることが可能となる。
【0059】
図6および図7に車両20bに適用したシステム1の参考形態を示す。
【0060】
この参考形態においても、システム1を構成するカメラ装置2、方位検出手段3、測位手段4、記憶手段5、演算装置6、モニタ7、入力手段8、警告手段11および管理サーバ12は、図1~5に示した実施形態と同じである。図6に示すように、この参考形態では、車両20bの操縦室21に、カメラ装置2、方位検出手段3、測位手段4、記憶手段5、演算装置6、モニタ7、入力手段8および警告手段11を配置している。
【0061】
図6に例示するように、先に示した実施形態と同様の方法で、カメラ装置2で取得するリアルタイムの撮影画像データ30の対応する位置に、境界線TL、CL、SL、ALや平面経路図32が重ね合わせてモニタ7に表示される。
【0062】
この参考形態では、船舶自動識別装置9およびレーダ装置10に代えて、車両どうしの運行情報を相互に交換する無線装置14を備えている。例えば、工事現場などでは、施工区域を走行するそれぞれの車両(工事用車両や建設機械等)に無線装置14を搭載することで、車両どうしで各々の運行情報を相互に交換することが可能となる。無線装置14で受信した他車40bの運行情報は、撮影画像データ30の他車40bが映っている位置の近くに表示される構成になっている。モニタ7に表示する他車40bの運行情報34bとしては、車番や位置情報、進行方向、速度などが例示できる。
【0063】
この参考形態でも先に示した実施形態と同じ作用効果を奏することができる。即ち、工事現場や私有地などの道路標示が整備されていない区域では、車両20bの通行経路TCの境界線TLや進入禁止エリアPAの境界線PLが明確に標示されていない場合が多いが、このシステム1を採用することで、車両20bの運転手に安全な運行経路を遅滞なく認識させることができ、運転手の負担を軽減できる。
【符号の説明】
【0064】
1 ナビゲーションシステム
2 カメラ装置
3 方位検出手段
4 測位手段
5 記憶手段
6 演算装置
7 モニタ
8 入力手段
9 船舶自動識別装置
10 レーダ装置
11 警告手段
12 管理サーバ
13 管理部
14 無線装置
20 移動体
20a 船舶
20b 車両
21 操縦室
30 撮影画像データ
31 進路方向
31a 避航時の進路方向
32 平面経路図
33 方位情報
34a 他船の航行情報
34b 他車の運行情報
35 物標情報
36 目標停止エリアまでの離間距離
37 マーカー
40a 他船
40b 他車
41 検出対象物
42 物標
TC 通行経路
TL 通行経路の境界線
PA 進入禁止エリア
PL 進入禁止エリアの境界線
CA 警戒エリア
CL 警戒エリアの境界線
SA 目標停止エリア
SL 目標停止エリアの境界線
AC 避航経路
AL 避航経路の境界線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7