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特許7232342船舶エンジンの燃料供給用液化天然ガス輸送管
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-21
(45)【発行日】2023-03-02
(54)【発明の名称】船舶エンジンの燃料供給用液化天然ガス輸送管
(51)【国際特許分類】
   F16L 59/147 20060101AFI20230222BHJP
   F16L 9/18 20060101ALI20230222BHJP
【FI】
F16L59/147
F16L9/18
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021543313
(86)(22)【出願日】2020-05-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-07
(86)【国際出願番号】 KR2020006717
(87)【国際公開番号】W WO2020235970
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2021-07-21
(31)【優先権主張番号】10-2019-0060861
(32)【優先日】2019-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521325592
【氏名又は名称】スンムン カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SUNGMOON CO., LTD
【住所又は居所原語表記】105, Sodeung-ro, Samho-eup, Yeongam-gun Jeollanam-do, 58452, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】リ, ジェ ホン
(72)【発明者】
【氏名】パク, スン ソン
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】実開昭48-001258(JP,U)
【文献】実公昭46-012744(JP,Y1)
【文献】特開2004-084702(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0122178(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0043611(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0060764(KR,A)
【文献】韓国登録特許第10-0850833(KR,B1)
【文献】特開2017-180709(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 59/147
F16L 9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化天然ガスが移動する流路を形成するインナーパイプと、
該インナーパイプの外周面を包むように形成される断熱部と、
該断熱部の外周面とその内周面が所定の間隔で離隔されてエアギャップが形成できるように前記断熱部を包むアウターパイプと、
前記断熱部の外周面と前記アウターパイプの内周面とを離隔すると共に間隔を維持する間隔維持手段と、を備え、
前記断熱部は、前記インナーパイプの外周面を中空部を有する独立した単位断熱部材が半径方向に積層して構成され、
前記各単位断熱部材の中空部の直径が前記インナーパイプの外周面から半径方向に外側に位置できるように大きくなることによって、インナーパイプの冷却により各単位断熱部材の熱膨張量が相違になってこれらの間でスリップを発生させ、
前記間隔維持手段は、断熱部の外周面を包むものであって、第1及び第2固定部材が結合してなされた固定フレームと、該固定フレームの外周面に所定の間隔で設けられて前記インナーパイプを包む断熱部の外周面と前記アウターパイプの内周面との間隔を一定に維持する保持部を備え、
前記保持部は、前記固定フレームをなす第1及び第2固定部材の外周面に設けられ、前記インナーパイプの半径方向に挿入孔が形成されたリップ部材と、該リップ部材に摺動自在に保持されて前記アウターパイプの内周面と接するガイド保持部材とを備え
前記断熱部は、前記インナーパイプの熱膨張係数より相対的に小さい熱膨張係数を有する前記単位断熱部材により構成され、
前記断熱部は、前記積層された前記単位断熱部材の間に、前記インナーパイプから前記液化天然ガスが漏れたときにガスを独立して遮断できる空間である密着エアギャップ部を有しており、
前記各々の単位断熱部材の材料は、シリカエアロジェルからなり、前記インナーパイプは、ステンレス材からな
ことを特徴とする船舶エンジンの燃料供給用液化天然ガス輸送管。
【請求項2】
前記リップ部材の挿入孔に保持されて前記アウターパイプの内周面と接する前記ガイド保持部材の端部は、前記アウターパイプの内周面に点接触できるように曲面に形成されて相対移動時摩擦力を軽減できるようになることを特徴とする請求項1に記載の船舶エンジンの燃料供給用液化天然ガス輸送管。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化天然ガス輸送管に係り、さらに詳しくは、液化天然ガスの漏れ、温度による圧力変化、外部から加わる衝撃による破損などを軽減できる液化天然ガス輸送管に関する。
【背景技術】
【0002】
産業の高度化に伴って石炭、石油などの消費が抑えられ、清浄な燃料というLNG、液化天然ガス(LNG:liquefied natural gas)の使用が急激に増加しつつある。かかるLNGガスの供給は、ガス受入基地からガス導管と、ガス導管を通して供給されるガスを統制するための統制システムを用いて各産業団地及び地域に供給されている。
【0003】
これと関連して液化天然ガスがエネルギー資源としてその使用が増加することによって、この液化天然ガスを生産基地から需要地の引受地まで大量に輸送できる効率的な輸送対策が図られており、海上へ輸送できる液化天然ガス運搬船の需要も急増している。
【0004】
特に、液化天然ガス運搬船は、液化天然を極低温状態に貯蔵タンク(一般にカーゴタンクと称する)内に溜めて運搬するようになるが、運搬過程において外からの熱侵入により液化天然ガスの気化現象が発生し、多量のガスが気化される。
【0005】
かかる気化ガスをBOG(boil-off gas)と称し、気化ガスの圧力が高くなると、タンクが破損する危険性が高まるので、かかる気化ガスを用いて船舶を推進するための燃料として使うようになる。
【0006】
前記BOGを使うエンジンとしては、BOGを高圧で圧縮して(一般に150~300BAR)主機関で燃焼させるME-GIエンジンが主に用いられる。前記ME-GIエンジンは燃料ガスを供給する管が高圧であることから、漏れなどの事故に構えた安全装置が必須に求められる。
【0007】
BOGは、カーゴ機械室(Cargo machinery room)内に設けられた高圧燃料ガス供給装置から燃料ガス制御のためのガス制御装置(Gas valve unit room)へ移送され、船舶の機関室内に設けられた船舶エンジンに供給するようになり、この際高圧燃料ガス供給装置からガス制御装置の間に室外に設けられるガス供給管には漏れを感知するための装置が設けられる。
【0008】
以上のように、液化天然ガスの運搬船のBOGガスを圧縮して移送したり、各種の産業施設における高圧のガスを移送させるための液化ガス輸送管は、通常に二重管が用いられる。
【0009】
韓国実用新案公開第1998-066598号には、二重構造のガス供給管が開示されており、韓国特許公開第2010-0060764号には、LNG船舶の高圧燃料供給管が開示されている。
【0010】
開示の発明の燃料供給管は、高圧燃料が通る内管と、該内管の外面を包む外管と、船舶の窒素供給装置に連結されて前記内管と外管との間の中空部に窒素ガスを供給する窒素供給管とを含む。
【0011】
開示の発明の燃料供給管は内管と外管との間に窒素が供給されるが、これらの間隔を維持できる手段を持っていないことから、ベンディング時間隔を維持し難く、外部から加わる衝撃による外管の変形時その衝撃力が内管にそのまま伝達される欠陥がある。
【0012】
また、内管が外管により包まれている場合、夏に外部に露出された外管が加熱され内管の温度が急激に上昇するようになり、さらには液化天然ガスが移送される内管の圧力が急激に上昇する問題がある。
【0013】
韓国特許第10-0850833号には、燃料ガス供給管を備えた燃料供給装置(FGSS:fuel gas supplying system)が開示されており、韓国特許公開第2016-0026413号には、二重燃料エンジンの二重管構造のガス供給管路が開示されている。
【0014】
そして、日本特開第2004-169741号には、断熱二重管における内管保持装置が開示されている。この内管保持装置は、断熱材が内管の外面に薄く被覆されており、断熱材を包む内管サポートとその外周面に設けられステンレス材からなる複数の弾性翼片を備える。内管保持装置は、熱膨張または熱収縮によって内管が半径方向に変形されることを弾性的に保持する構造を有する。
【0015】
前述した従来の内管保持装置は、弾性翼片がステンレス金属からなり、内管と内管を流れるガスの荷重が一方向へのみ働き続けるので、荷重が働く側の変形状態が続くことによって内管を外管の中心に置かせることが困難である。
【0016】
そして、韓国実用新案第20-291614号には、断熱被覆二重保温管が開示されている。内管の外周面に形成された断熱被覆層と、該断熱被覆層を断熱材が積層され断熱材の外周面を包むクランプ部材と、クランプ部材の外周面に所定の間隔で設けられるローラ保持台を備え、断熱材の外周面と外管との間に補充層が設けられた構成を有する。かかる構造は、相対的に薄い断熱層にクランプ部材が設けられているので、内管に液化天然ガスのように超低温(マイナス162℃)の流体が流れる場合、冷気がローラ保持台を通して保温層の外部に伝達されて断熱が破壊される問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】韓国実用新案公開第1998-066598号
【文献】韓国特許公開第2010-0060764号
【文献】韓国特許第10-0850833号
【文献】日本特開第2004-169741号
【文献】韓国実用新案第20-29161号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みて案出されたものであり、本発明の目的とするところは、液化天然ガスの輸送時外部温度の影響を最小化でき、外部から加わる衝撃を吸収できる船舶エンジンの燃料供給用液化天然ガス輸送管を提供することにある。
【0019】
本発明の他の目的は、船舶エンジンの燃料供給装置に高圧の液化天然ガスを輸送することができ、液化天然ガスの漏れを効率よく感知できる船舶エンジンの燃料供給用液化天然ガス輸送管を提供するところにある。
【0020】
本発明のさらに他の目的は、インナーパイプを断熱するための断熱部は、インナーパイプを包む単位断熱部材が積層した構造をなしており、これらが相対移動自在に設けられることによってインナーパイプと単位断熱部材との間に独立し区画された遮断空間を形成してガスの漏れを防止でき、熱膨張量の差によって断熱が破壊されることを防止できる船舶エンジンの燃料供給用液化天然ガス輸送管を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
前述した課題を解決するために、本発明の観点によれば、本発明に係る船舶エンジンの燃料供給用液化天然ガス輸送管は、液化天然ガスが移動する流路を形成するインナーパイプと、該インナーパイプの外周面を包むように形成される断熱部と、該断熱部の外周面とその内周面が所定の間隔で離隔されてエアギャップが形成されるように断熱部を包むアウターパイプと、前記断熱部と、前記アウターパイプに設けられて前記断熱部の外周面とアウターパイプの内周面とを離隔させるとともに間隔を維持する間隔維持手段を備える。
【0022】
前記断熱部は、インナーパイプの外周面を中空部を有する独立した単位断熱部材が半径方向に積層されインナーパイプの長手方向に積層され、単位断熱部材が連続的に接合されることによって、積層された単位断熱部材の間に独立した密着エアギャップが形成され、各々の単位断熱部材の材料はcryogelからなる。
【0023】
前記間隔維持手段は、断熱材の外周面を包むものであって、第1及び第2固定部材が結合してなされた固定フレームと、該固定フレームの外周面に所定の間隔で設けられて前記インナーパイプを包む断熱材の外周面とアウターパイプの外周面との間隔を一定に維持する保持部を備える。
【0024】
本発明において、前記保持部は、固定フレームをなす第1及び第2固定部材の外周面に設けられインナーパイプに半径方向に挿入孔が形成されたリップ部材と該リップ部材に摺動自在に保持されてアウターパイプの内周面と接するガイド保持部材を備える。
【0025】
また、前記リップ部材の挿入孔に保持されて前記アウターパイプの外周面と接する前記ガイド保持部材の端部は、アウターパイプの内周面に点接触できるように曲面に形成されて相対移動時摩擦力を低減できる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、本発明に係る液化天然ガス輸送管によれば、断熱材により包まれたインナーパイプとアウターパイプとからなる二重構造の管を用いて高圧の液化天然ガスを移動させうるものであって、外部衝撃を和らげて輸送管の破損を効率よく防ぐことができる。
【0027】
また、液化天然ガス輸送管は、高圧の液化天然ガスが移動するインナーパイプの外面をアウターパイプで包んでいることから、インナーパイプから液化天然ガスが漏れるとしてもアウターパイプの外部に液化天然ガスが排出されることを防止でき、エアギャップに不活性ガスが充填されているので、液化天然ガスの漏れによる爆発及び火災の発生を防ぐことができる。
【0028】
前記断熱部は、独立した中空を有するチューブ状の単位断熱部材が積層構造よりなり、積層された単位断熱部材の間に区画された密着エアギャップ部を有しているので、断熱効果を極大化でき、漏れたガスが多段に遮断される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、本発明の船舶エンジンのLNG燃料供給用液化天然ガス輸送管を示した斜視図である。
図2図2は、図1に示した船舶エンジンのLNG燃料供給用液化天然ガス輸送管を抜粋して示した一部切除分離斜視図である。
図3図3は、図2に示した間隔維持手段により断熱部で包まれているインナーパイプがアウターパイプにより保持された状態を示す断面図である。
図4図4は、インナーパイプの外周面に設けられた断熱部をなす単位断熱部材とインナーパイプの伸縮関係を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0031】
本発明に係る船舶エンジンの燃料供給用液化天然ガス輸送管は、液化天然ガスを燃料とするLNG液化天然ガス運搬用船舶の貯蔵タンクから船舶エンジンまで液化天然ガスが移動する全経路、または一部の経路に適用でき、各種の産業施設、危険地域における液化天然ガスの輸送に適用できる。
【0032】
本発明に係る船舶エンジンの燃料供給用液化天然ガス輸送管の一の実施形態を図1ないし図3に示した。
【0033】
図面を参照すれば、船舶エンジンの燃料供給用液化天然ガス輸送管10は、LNG燃料運搬用船舶の船舶エンジンのLNG燃料貯蔵タンクから船舶のエンジンに液化天然ガスを輸送するためのものであって、液化天然ガスが移動する流路を形成するインナーパイプ11と、インナーパイプ11の外周面を包むように形成される断熱部20と、断熱部20の外周面と所定の間隔で離隔されて断熱部20を包むアウターパイプ15と、断熱部20とアウターパイプ15との間にエアギャップ14を形成するようにアウターパイプ15に対してインナーパイプ11が設けられた断熱部20を離隔させる間隔維持手段30とを備える。
【0034】
インナーパイプ11は、内部に流路が形成されて流路に沿って液化天然ガスが移動する。かかるインナーパイプ11としては、通常のLNG用パイプが用いられる。前記インナーパイプ11の一側端部側には、インナーパイプ11を流れる液化天然ガスを断続するための第1制御バルブ13が設けられる。そして、前記インナーパイプ11は、金属管よりなりうるが、インナーパイプ11は、ステンレス材からなるのが望ましい。
【0035】
前記断熱部20は、中空部を有する独立した単位断熱部材21~24がインナーパイプ11の外周面を多重に包む構造よりなる。このため、各単位断熱部材21~24の中空部の直径は相違に形成できる。そのため、各単位断熱部材21~24の中空部の直径は、インナーパイプ11の外周面から半径方向に外側に位置できるように大きくなるが、前記単位断熱部材21~24の厚さは、均一にするのが望ましい。
【0036】
前述したような単位断熱部材21~24によってインナーパイプ11を断熱するために、インナーパイプ11の外周面に一つの単位断熱部材21を施工するが、長手方向に切断された両端部をインナーパイプ11の外周面を包んだ状態で接合して施工することができる。そして、インナーパイプ11が包まれた単位断熱部材21の外周面に別の単位断熱部材22を同様の方法で繰り返して施工する。この際、前記インナーパイプ11を包む単位断熱部材21~24の接合部21a~24aは、互いに重畳せず円周方向に食い違って位置できるようにするのが望ましく、各単位断熱部材21~24の長手方向の接合部(図示せず)も互いに異なる箇所に位置できるようにするのが好ましい。
【0037】
かかる構造の断熱部20は、インナーパイプ11の半径方向に単位断熱部材21~24の間に独立した密着エアギャップ部26が形成される。この密着エアギャップ部26は、インナーパイプ11の長手方向に形成されているので、インナーパイプ11から漏れたガスを独立して遮断できる空間をなすようになる。
【0038】
一方、前記断熱部20は、インナーパイプ11の外周面を中空部を有する独立した単位断熱部材が半径方向に積層され、インナーパイプ11の長手方向に積層された単位断熱部材が連続して連結されて積層された単位断熱部材の間に断熱部材の円周方向に独立した密着エアギャップ部26が形成される。ここで、断熱部の単位長さ当たり熱膨張係数は、前記インナーパイプ11の熱膨張係数より相対的に小さい材質を使用するのが好ましい。
【0039】
前記断熱部20をなす単位断熱部材は、シリカエアロジェル(silica aerogel)を使うのが好ましい。さらに詳しくは、前記単位断熱部材は、メチルシリル化シリカ(methylxylated silica)40ないし50%、ポリエチレンテレフタレート(PETまたはポリエステル)10ないし20%、ガラス繊維(織物等級)10ないし20%、水酸化マグネシウム1ないし5%、アルミニウム0ないし5%からなる。
【0040】
前述した単位断熱部材21~24としては、Aspen Aerogels. Inc.の製品であるcryogelまたはpyrogelを使うのが望ましい。
【0041】
前記アウターパイプ15は、インナーパイプ11を包む断熱部の外周面と所定の間隔で離隔できるように包むものであって、金属管すなわちステンレス材またはステンレス合金からなり、インナーパイプ11の軌跡に沿って所定の角度のエルボと直管部からなる。そして、前記アウターパイプ15には、前記断熱部20の外周面とアウターパイプ15の内周面とが離隔した空間内のガスの排出を断続するための第2制御バルブ16が設けられる。前記アウターパイプ15には、断熱部20が設けられるインナーパイプ11の挿入時インナーパイプ11の連結部位と対応する側に開口部18が形成され、該インナーパイプ11の連結が行われた後前記開口部18を密閉する密閉部材17を備える。前記アウターパイプ15の前記開口部18を遮断する密閉部材17とアウターパイプ15の締結(接合)は、溶接によりなされることが好ましい。
【0042】
前記アウターパイプ15の直径は、断熱部20の外径よりさらに大きく形成される。これによりアウターパイプ15の内周面と断熱部20との間に空間、すなわちエアギャップ14が形成される。エアギャップ14は、外部の衝撃からインナーパイプ11を保護する役目を果たし、インナーパイプ11の損傷時漏れたガスが外部に漏れないように遮断する。エアギャップ14には、窒素、アルゴンのような不活性ガスが充填できる。そして、アウターパイプ15には、ガスの漏れを感知するために圧力センサ、光ファイバを用いたセンサーなどが設けられ、特に光ファイバ格子センサーを設けてアウターパイプに働く応力を測定することができる。
【0043】
そして、前記間隔維持手段30は、断熱部20の外周面に結合され、断熱部20の外周面とアウターパイプ15の内周面との間に一定の間隔を保つ。かかる間隔維持手段30は、断熱部の外周面に固定できるように半円形の第1及び第2固定部材31、32が互いに結合部材33により結合される固定フレーム34を含む。そして、前記固定フレームをなす第1及び第2固定部材31、32の外周面には、所定の間隔で断熱部20の外周面とアウターパイプ15の外周面との間隔を保ち、アウターパイプ15の中空部に沿って断熱部20が設けられたインナーパイプ15の挿入時アウターパイプ15の内周面との摩擦を低減するための保持部36が設けられる。
【0044】
前記保持部36は、第1及び第2固定フレーム31、32の外周面に中心から所定の間隔で設けられる。前記保持部36は、結合された第1及び第2固定フレーム31、32の中心に対して120°間隔で3つ設けるのが望ましい。
【0045】
前記保持部36は、固定フレーム34をなす第1及び第2固定部材31、32の外周面に設けられ、インナーパイプ11の半径方向に挿入孔36aの形成されたリップ部材36bが設けられ、該リップ部材36bには、アウターパイプ15の内周面と接するガイド保持部材36cが半径方向に摺動自在に設けられる。
【0046】
そして、前記リップ部材36bの挿入孔36aに保持されて前記アウターパイプ15の外周面と接するガイド保持部材36cの端部は、アウターパイプ15の内周面に点接触できるように曲面またはできるだけ断面積が小さく形成される。これは、ガイド保持部材36cの端部がアウターパイプ15の内周面に沿って移動する際摩擦力を最小化するためのことである。前記ガイド保持部材36cは、テフロン(登録商標)(teflon)のような軟質の金属材、合成樹脂またはゴム材からなりうる。前記保持部36のリップ部材36bは固定フレーム34と一体に形成されうる。そして、図示されていないが、前記リップ部材36bの内部には、ガイド保持部材36cを外側方向に弾性バイアスさせるための弾性バネが設けられる。
【0047】
前述したように構成された本発明に係る船舶エンジンの燃料供給用液化天然ガス輸送管は、LNG運搬船に設けられた液化天然ガス貯蔵タンクから液化天然ガスを運搬船の船舶エンジンに供給するようになるが、この液化天然ガス輸送管は、断熱部20により包まれたインナーパイプ11がアウターパイプ15により包まれているので、外部の衝撃によってインナーパイプ11が損傷することを防止できる。そして、インナーパイプ11からガスが漏れる場合、インナーパイプ11をアウターパイプ15が包んでいることから外部に漏れなくなる。これは火災または爆発の危険性を排除でき、船体の底部に流出して船体の底面が急冷されることによって応力が集中して船体が損傷することを防ぐことができる。
【0048】
一方、極低温の液化天然ガスを運搬する輸送管は、断熱部20をなす単位断熱部材21~24が半径方向に積層設置されてインナーパイプ11の断熱が行えるように設けられているので、コールドスポット(cold spot,冷点)の発生を根本的に防止できる。特定部位の絶縁が破壊されたコールドスポットが発生する場合、この部位から霜が引き続き成長することを防げ、コールドスポット部に応力が集中することから外部衝撃により損傷することが防止できる。
【0049】
特に、インナーパイプ11を包む断熱部20は、インナーパイプ11の外周面に独立した中空部を有する単位断熱部材21~24によって重畳されているので、単位断熱部材21~24の間には密着エアギャップ26が形成される。従って、インナーパイプ11から液化天然ガスが漏れる時、単位断熱部材21~24によって段階的に遮断される。
【0050】
図4に示したように、インナーパイプ11の内部を流れる液化天然ガスの温度は、マイナス150℃以上になるが、この場合、インナーパイプ11は冷却されて収縮する。しかし、ステンレス材よりなるインナーパイプ11の膨張係数がcryogelからなる断熱部材の熱膨張係数より相対的に大きいので、断熱部20をなす単位断熱部材21~24が全体として急激に収縮することを防止できる。従って、従来のようにインナーパイプ11を包む断熱部にクラックが発生することによってコールドスポットの発生を防ぐ。特に、インナーパイプ11を断熱する単位断熱部材21~24は、独立した中空部を有し、インナーパイプ11の外周面に積層されているので、インナーパイプ11の冷気に冷却される温度が相違になる。従って、インナーパイプ11と接する単位断熱部材21と単位断熱部材21を包む単位断熱部材22の熱膨張量が相違になり、これらの間でスリップが発生して熱膨張量の差によって断熱部20が損傷することを防止することができる。
【0051】
また、インナーパイプ11に断熱が行われた状態でインナーパイプ11の冷却のためcryogelからなる断熱部が冷却することによって縮まる収縮量が多くないので、従来のように断熱部に別の収縮量の吸収または温度の上昇による膨張量の吸収のための収縮膨張のためのジョイントの設置が不要である。インナーパイプと近接した側の単位断熱部材21が収縮するとしても外側に位置する単位断熱部材24は、温度の変化が最小化して収縮は引き起こらなくなる。
【0052】
本発明者の実験によれば、図4に示したようにステンレス材よりなるインナーパイプ11の場合、マイナス150℃とプラス50℃の範囲内で収縮量(A)が3.3mm/mであることが分かったし、cryogelからなりインナーパイプ11と接触する単位断熱部材21の収縮量(B)は2.4mm/mであることが分かった。従って、インナーパイプ11が伸縮するとしても単位断熱部材の伸縮量が相対的に少ないことから、単位断熱部材の伸縮によって損傷することを根本的に防止できる。
【0053】
そして、前記間隔維持手段30は、断熱部20の外周面を包んでおり、インナーパイプ11と物理的な接触が全然なされていないので、断熱材の損傷を最小化することができる。
【0054】
また、前記間隔維持手段30は、断熱部20の外周面に所定の間隔で設けられる保持部36が固定フレーム34に設けられたリップ部材36bに摺動自在にガイド保持部材36cが設けられているので、ガイド保持部材36cがアウターパイプ15の内周面に沿って移動する際長手方向への移動を円滑に行い、アウターパイプの中心に断熱部20により断熱が施されたインナーパイプ11を保持できるようになる。特に、間隔維持手段30により断熱部の外周面とアウターパイプの内周面との間に一定のエアギャップを保っているので、外部から伝達される熱が特定部位に集中することを防止でき、漏れたガスを遮断すると共に漏れたガスの排出のための流動路を形成することができる。
【0055】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、これについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
図1
図2
図3
図4