(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-21
(45)【発行日】2023-03-02
(54)【発明の名称】バルブモジュール、バルブ装置、バルブシステム
(51)【国際特許分類】
F16K 31/122 20060101AFI20230222BHJP
F16K 31/08 20060101ALI20230222BHJP
【FI】
F16K31/122
F16K31/08
(21)【出願番号】P 2021546070
(86)(22)【出願日】2019-09-17
(86)【国際出願番号】 JP2019036285
(87)【国際公開番号】W WO2021053708
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000110343
【氏名又は名称】トリニティ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114605
【氏名又は名称】渥美 久彦
(72)【発明者】
【氏名】石川 勝浩
(72)【発明者】
【氏名】大澤 直浩
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-145276(JP,A)
【文献】国際公開第2010/113767(WO,A1)
【文献】特開2017-115944(JP,A)
【文献】特開2012-112449(JP,A)
【文献】特表2012-522942(JP,A)
【文献】特表2016-503155(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/122
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストン収容室を有するピストン収容体と、その一部が前記ピストン収容体に挿入されるとともに、前記ピストン収容室内に位置する領域にピストン部が設けられ、前記ピストン収容室外に位置する領域に弁部が形成された弁ロッドとを備え、前記ピストン部に作用するパイロットエアのエア圧により前記弁ロッドを第1方向に駆動しかつ付勢手段の付勢力により前記弁ロッドを前記第1方向とは反対の第2方向に駆動し、前記パイロットエアの給排により前記弁部を弁座に接離させることで弁の開閉を制御するバルブモジュールであって、
前記ピストン部の外周位置に設けられた第1磁石保持部と、
前記ピストン収容体側において前記第1磁石保持部に対向する位置に設けられた第2磁石保持部と、
前記第1磁石保持部において前記第2磁石保持部に最も近い位置に形成された肉薄状の第1衝突回避部に対して端面を当接させうる状態で、前記第1磁石保持部に保持された第1永久磁石と、
前記第2磁石保持部において前記第1磁石保持部の前記第1衝突回避部に最も近い位置に形成された肉薄状の第2衝突回避部に対して端面を当接させうる状態で、前記第2磁石保持部に保持された第2永久磁石と
を備え、
前記両永久磁石間には、前記ピストン部を前記第1方向に駆動させるとともに相互の接近に伴い増大する磁気吸引力が作用するとともに、最接近時であっても前記両永久磁石の前記端面同士が直接衝突しない配置関係が設定されており、
前記第1衝突回避部は、前記第1永久磁石の前記端面の少なくとも一部を前記第1磁石保持部の外部に露出させた状態で、前記第1永久磁石の前記端面に当接可能に設けられ、
前記第2衝突回避部は、前記第2永久磁石の前記端面の少なくとも一部を前記第2磁石保持部の外部に露出させた状態で、前記第2永久磁石の前記端面に当接可能に設けられている
ことを特徴とするバルブモジュール。
【請求項2】
前記第1磁石保持部の有する収容室の前記弁ロッドの軸線方向における寸法は、前記第1永久磁石の前記軸線方向の寸法よりも大きく、
前記第2磁石保持部の有する収容室の前記弁ロッドの軸線方向における寸法は、前記第2永久磁石の前記軸線方向の寸法よりも大きい
ことを特徴とする請求項1に記載のバルブモジュール。
【請求項3】
前記第1衝突回避部及び前記第2衝突回避部の厚さの総和は、1mm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のバルブモジュール。
【請求項4】
ピストン収容室を有するピストン収容体と、その一部が前記ピストン収容体に挿入されるとともに、前記ピストン収容室内に位置する領域にピストン部が設けられ、前記ピストン収容室外に位置する領域に弁部が形成された弁ロッドとを備え、前記ピストン部に作用するパイロットエアのエア圧により前記弁ロッドを第1方向に駆動しかつ付勢手段の付勢力により前記弁ロッドを前記第1方向とは反対の第2方向に駆動し、前記パイロットエアの給排により前記弁部を弁座に接離させることで弁の開閉を制御するバルブモジュールであって、
前記ピストン部の外周位置に設けられた第1磁石保持部と、
前記ピストン収容体側において前記第1磁石保持部に対向する位置に設けられた第2磁石保持部と、
前記第1磁石保持部において前記第2磁石保持部に最も近い位置に形成された肉薄状の第1衝突回避部に対して端面を当接させうる状態で、前記第1磁石保持部に保持された第1永久磁石と、
前記第2磁石保持部において前記第1磁石保持部の前記第1衝突回避部に最も近い位置に形成された肉薄状の第2衝突回避部に対して端面を当接させうる状態で、前記第2磁石保持部に保持された第2永久磁石と
を備え、
前記両永久磁石間には、前記ピストン部を前記第1方向に駆動させるとともに相互の接近に伴い増大する磁気吸引力が作用するとともに、最接近時であっても前記両永久磁石の前記端面同士が直接衝突しない配置関係が設定されており、
前記第1永久磁石及び前記第2永久磁石は、厚さ方向に着磁された環状かつ同径の永久磁石であり、
前記第1永久磁石及び前記第2永久磁石の少なくとも一方は、複数個用いて厚さ方向に多段配置され、
前記第2永久磁石の個数は、前記第1永久磁石の個数よりも多い
ことを特徴とするバルブモジュール。
【請求項5】
ピストン収容室及び弁座を内部に有するハウジングブロックと、その一部が前記ピストン収容室に挿入されるとともに、前記ピストン収容室内に位置する領域にピストン部が設けられ、前記ピストン収容室外に位置する領域に弁部が形成された弁ロッドとを備え、前記ピストン部に作用するパイロットエアのエア圧により前記弁ロッドを第1方向に駆動しかつ付勢手段の付勢力により前記弁ロッドを前記第1方向とは反対の第2方向に駆動し、前記パイロットエアの給排により前記弁部を前記弁座に接離させることで弁の開閉を制御するバルブ装置であって、
前記ピストン部の外周位置に設けられた第1磁石保持部と、
前記ハウジングブロック側において前記第1磁石保持部に対向する位置に設けられた第2磁石保持部と、
前記第1磁石保持部において前記第2磁石保持部に最も近い位置に形成された肉薄状の第1衝突回避部に対して端面を当接させうる状態で、前記第1磁石保持部に保持された第1永久磁石と、
前記第2磁石保持部において前記第1磁石保持部の前記第1衝突回避部に最も近い位置に形成された肉薄状の第2衝突回避部に対して端面を当接させうる状態で、前記第2磁石保持部に保持された第2永久磁石と
を備え、
前記両永久磁石間には、前記ピストン部を前記第1方向に駆動させるとともに相互の接近に伴い増大する磁気吸引力が作用するとともに、最接近時であっても前記両永久磁石の前記端面同士が直接衝突しない配置関係が設定されており、
前記第1衝突回避部は、前記第1永久磁石の前記端面の少なくとも一部を前記第1磁石保持部の外部に露出させた状態で、前記第1永久磁石の前記端面に当接可能に設けられ、
前記第2衝突回避部は、前記第2永久磁石の前記端面の少なくとも一部を前記第2磁石保持部の外部に露出させた状態で、前記第2永久磁石の前記端面に当接可能に設けられている
ことを特徴とするバルブ装置。
【請求項6】
前記第1磁石保持部の有する収容室の前記弁ロッドの軸線方向における寸法は、前記第1永久磁石の前記軸線方向の寸法よりも大きく、
前記第2磁石保持部の有する収容室の前記弁ロッドの軸線方向における寸法は、前記第2永久磁石の前記軸線方向の寸法よりも大きい
ことを特徴とする請求項5に記載のバルブ装置。
【請求項7】
前記第1衝突回避部及び前記第2衝突回避部の厚さの総和は、1mm以下であることを特徴とする請求項5または6に記載のバルブ装置。
【請求項8】
ピストン収容室及び弁座を内部に有するハウジングブロックと、その一部が前記ピストン収容室に挿入されるとともに、前記ピストン収容室内に位置する領域にピストン部が設けられ、前記ピストン収容室外に位置する領域に弁部が形成された弁ロッドとを備え、前記ピストン部に作用するパイロットエアのエア圧により前記弁ロッドを第1方向に駆動しかつ付勢手段の付勢力により前記弁ロッドを前記第1方向とは反対の第2方向に駆動し、前記パイロットエアの給排により前記弁部を前記弁座に接離させることで弁の開閉を制御するバルブ装置であって、
前記ピストン部の外周位置に設けられた第1磁石保持部と、
前記ハウジングブロック側において前記第1磁石保持部に対向する位置に設けられた第2磁石保持部と、
前記第1磁石保持部において前記第2磁石保持部に最も近い位置に形成された肉薄状の第1衝突回避部に対して端面を当接させうる状態で、前記第1磁石保持部に保持された第1永久磁石と、
前記第2磁石保持部において前記第1磁石保持部の前記第1衝突回避部に最も近い位置に形成された肉薄状の第2衝突回避部に対して端面を当接させうる状態で、前記第2磁石保持部に保持された第2永久磁石と
を備え、
前記両永久磁石間には、前記ピストン部を前記第1方向に駆動させるとともに相互の接近に伴い増大する磁気吸引力が作用するとともに、最接近時であっても前記両永久磁石の前記端面同士が直接衝突しない配置関係が設定されており、
前記第1永久磁石及び前記第2永久磁石は、厚さ方向に着磁された環状かつ同径の永久磁石であり、
前記第1永久磁石及び前記第2永久磁石の少なくとも一方は、複数個用いて厚さ方向に多段配置され、
前記第2永久磁石の個数は、前記第1永久磁石の個数よりも多い
ことを特徴とするバルブ装置。
【請求項9】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のバルブモジュールと、
内部に前記弁座が形成されたバルブモジュール装着部を有するハウジングブロックと
を備え、前記バルブモジュール装着部に
前記弁部が当接する状態で前記バルブモジュールが前記ハウジングブロックに装着されている
ことを特徴とするバルブ装置。
【請求項10】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の少なくとも1つのバルブモジュールと、
内部に前記弁座が形成されたバルブモジュール装着部を少なくとも1つ有するマニホールドブロックと
を備え、前記バルブモジュール装着部に
前記弁部が当接する状態で前記バルブモジュールが前記マニホールドブロックに装着されている
ことを特徴とするバルブシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバルブモジュール等に係り、特には塗料供給源から送液される各色塗料を択一的に選択して塗装機等へ供給するためのカラーチェンジバルブとしての使用に好適なバルブモジュール等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のボディカラーに対する需要者のニーズは近年多様化しつつあり、同一の車種に対して多種類の塗装作業が必要となってきている。特に近年の自動車ボディの塗装ラインにおいては、塗装色の異なる自動車ボディが混在して搬送されてくるため、自動車ボディに応じて色替塗装をすることが求められている。
【0003】
色替塗装においては、例えば
図12に示すような色替装置101が用いられる。従来における一般的な色替装置101は、塗料流路102が形成されたマニホールドブロック103に対し、複数のカラーチェンジバルブ104、洗浄液バルブ105、洗浄エアバルブ106等を装着した構造を有している。これら複数のカラーチェンジバルブ104は、各色の塗料供給源P1~P4に個別に接続されている。洗浄液バルブ105は洗浄液供給源107に接続されており、洗浄エアバルブ106は圧縮空気供給源108に接続されている。そして、このような色替装置101を用いることで、複数色の供給塗料のなかから任意の塗色塗料を色替装置101で択一的に選択し、その選択された塗色塗料を塗装機109に供給して塗装を行うようにしている。
【0004】
図13には、この種の色替装置101におけるカラーチェンジバルブ104として用いられる従来のバルブ装置が例示されている。このカラーチェンジバルブ104は、ピストンシリンダを駆動手段としたパイロット形の2ポートバルブであって、図面上部側に位置する弁駆動部112と、図面下部側に位置する弁本体部113とによって構成されている。
【0005】
弁駆動部112を構成するピストンハウジング121は、内部にピストン収容室122を有するとともに、ピストン収容室122に連通するロッド挿通孔123を下部に有している。ピストンハウジング121の下端面には、バルブハウジング131が取り付けられている。バルブハウジング131の側面には入力ポート132が形成され、下面には出力ポート133が形成されており、これらのポート132,133はバルブハウジング131内に設けられた流路134に連通されている。出力ポート133の開口部内側には弁座135が形成されている。また、バルブハウジング131にはパッキング136,137等を含んで構成された軸シール138が配設されている。
【0006】
このカラーチェンジバルブ104は、ロッド部142、ピストン部143及び弁部144を有する移動体としての弁ロッド141を備えている。ピストン部143はロッド部142における基端側に固定されるとともに、ピストン収容室122内にて摺動可能に収容されている。ロッド部142の先端側は、ロッド挿通孔123及び軸シール138を介してピストン収容室122外に突出し、バルブハウジング131における弁座135の近傍にまで到達している。弁部144はロッド部142の先端に一体形成されており、その弁座135に対して当接及び離間可能となっている。
【0007】
ピストンハウジング121内のピストン収容室122は、ピストン部143により第1室151及び第2室152に区画されている。ピストンハウジング121における第1室151側には、ピストン部143を上方向に駆動させるパイロットエアが供給されるパイロットポート153が形成されている。ピストンハウジング121における第2室152内には、ピストン部143を下方向に常時付勢する付勢手段154が収容されている。そして、このように構成されたカラーチェンジバルブ104では、パイロットエアの給排により弁ロッド141を上下方向に駆動させて、弁部144を弁座135に接離させることにより、弁の開閉を制御するようになっている。
【0008】
なお、この種のバルブ装置として他には、例えば特許文献1に示すようなものが従来提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許第5511339号公報
【文献】特開2017-2939号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、上記従来のバルブ装置は、塗装機のアームなどのような駆動部分に搭載されることがある関係上、できるだけ小型であることが求められる。しかしながら、バルブ装置を小型化しようとすると、ピストン径を小さくせざるを得なくなり、結果としてピストン部の受圧面積が減ってしまう。よって、ピストン部を今までと同程度の力で駆動させるためには、パイロットエアの圧力を増大させる必要が生じ(例えば0.4MPa→0.8MPa)、エアを供給するためのコンプレッサの圧力を高くせざるを得なくなる。
【0011】
このような事情の下、パイロットエアに基づくピストン駆動力を磁石の磁力を用いて補助するバルブ装置が従来提案されている(例えば、特許文献2を参照)。しかしながら、この従来装置の場合、構造が複雑であることに加え、ハウジング内に収容された磁石同士が直接当接して破損する等の懸念もあり、耐久性が低いという問題もあった。
【0012】
そこで本願発明者らは、パイロットエアに基づくピストン駆動力を永久磁石の磁気吸引力を用いて補助するにあたり、弁ロッド側の永久磁石とハウジング側の永久磁石との間に、相互の最接近時であっても両者が空隙を隔てて対向する配置関係を設定することを検討している。具体的にいうと、図13のバルブ装置において例えば161、162で示した位置にそれぞれ永久磁石を配置することを考えている。
【0013】
しかしながら、このバルブ装置において所望とする磁気吸引力を得るためには、できるだけ大きい永久磁石を使用すべきであるが、小型のバルブ装置であることから、使用できる永久磁石の大きさに制約を受けるという問題があった。また、所望とする磁気吸引力を得るために永久磁石間に設定すべき隙間を極めて狭く(例えば1mm以下に)する必要がある反面、実際にはそのような隙間の確保が非常に困難であった。また、動作時にピストン部がブレて僅かに傾くことが考えられるが、前記隙間が極めて小さいことから、永久磁石同士が直接当接するリスクが高まるという問題があった。さらに、それぞれの永久磁石を確実に固定しておく手段も必要とされていた。また、個々の永久磁石には寸法ばらつきがあり、バルブ装置の製品ごとで性能にばらつきが生じることが考えられる。よって、製品ごとの性能ばらつきの発生をなくすことが求められていた。
【0014】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、小型であるにも関わらず比較的低圧のパイロットエアで動作することができ、しかも耐久性にも優れ、製品ごとの性能ばらつきも小さいバルブモジュール、バルブ装置、バルブシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、手段1に記載の発明は、ピストン収容室を有するピストン収容体と、その一部が前記ピストン収容体に挿入されるとともに、前記ピストン収容室内に位置する領域にピストン部が設けられ、前記ピストン収容室外に位置する領域に弁部が形成された弁ロッドとを備え、前記ピストン部に作用するパイロットエアのエア圧により前記弁ロッドを第1方向に駆動しかつ付勢手段の付勢力により前記弁ロッドを前記第1方向とは反対の第2方向に駆動し、前記パイロットエアの給排により前記弁部を弁座に接離させることで弁の開閉を制御するバルブモジュールであって、前記ピストン部の外周位置に設けられた第1磁石保持部と、前記ピストン収容体側において前記第1磁石保持部に対向する位置に設けられた第2磁石保持部と、前記第1磁石保持部において前記第2磁石保持部に最も近い位置に形成された肉薄状の第1衝突回避部に対して端面を当接させうる状態で、前記第1磁石保持部に保持された第1永久磁石と、前記第2磁石保持部において前記第1磁石保持部の前記第1衝突回避部に最も近い位置に形成された肉薄状の第2衝突回避部に対して端面を当接させうる状態で、前記第2磁石保持部に保持された第2永久磁石とを備え、前記両永久磁石間には、前記ピストン部を前記第1方向に駆動させるとともに相互の接近に伴い増大する磁気吸引力が作用するとともに、最接近時であっても前記両永久磁石の前記端面同士が直接衝突しない配置関係が設定されており、前記第1衝突回避部は、前記第1永久磁石の前記端面の少なくとも一部を前記第1磁石保持部の外部に露出させた状態で、前記第1永久磁石の前記端面に当接可能に設けられ、前記第2衝突回避部は、前記第2永久磁石の前記端面の少なくとも一部を前記第2磁石保持部の外部に露出させた状態で、前記第2永久磁石の前記端面に当接可能に設けられていることを特徴とするバルブモジュールをその要旨とする。
また手段2に記載の発明は、ピストン収容室及び弁座を内部に有するハウジングブロックと、その一部が前記ピストン収容室に挿入されるとともに、前記ピストン収容室内に位置する領域にピストン部が設けられ、前記ピストン収容室外に位置する領域に弁部が形成された弁ロッドとを備え、前記ピストン部に作用するパイロットエアのエア圧により前記弁ロッドを第1方向に駆動しかつ付勢手段の付勢力により前記弁ロッドを前記第1方向とは反対の第2方向に駆動し、前記パイロットエアの給排により前記弁部を前記弁座に接離させることで弁の開閉を制御するバルブ装置であって、前記ピストン部の外周位置に設けられた第1磁石保持部と、前記ハウジングブロック側において前記第1磁石保持部に対向する位置に設けられた第2磁石保持部と、前記第1磁石保持部において前記第2磁石保持部に最も近い位置に形成された肉薄状の第1衝突回避部に対して端面を当接させうる状態で、前記第1磁石保持部に保持された第1永久磁石と、前記第2磁石保持部において前記第1磁石保持部の前記第1衝突回避部に最も近い位置に形成された肉薄状の第2衝突回避部に対して端面を当接させうる状態で、前記第2磁石保持部に保持された第2永久磁石とを備え、前記両永久磁石間には、前記ピストン部を前記第1方向に駆動させるとともに相互の接近に伴い増大する磁気吸引力が作用するとともに、最接近時であっても前記両永久磁石の前記端面同士が直接衝突しない配置関係が設定されており、前記第1衝突回避部は、前記第1永久磁石の前記端面の少なくとも一部を前記第1磁石保持部の外部に露出させた状態で、前記第1永久磁石の前記端面に当接可能に設けられ、前記第2衝突回避部は、前記第2永久磁石の前記端面の少なくとも一部を前記第2磁石保持部の外部に露出させた状態で、前記第2永久磁石の前記端面に当接可能に設けられていることを特徴とするバルブ装置をその要旨とする。
【0016】
従って、手段1、2に記載の発明によると、両永久磁石間にはピストン部を第1方向に駆動させるとともに相互の接近に伴い増大する磁気吸引力が作用する。このため、パイロットエアの供給時においては、パイロットエアの圧力に加えて磁気吸引力が作用することで弁ロッドが第1方向に駆動される。それゆえ、ピストン部の受圧面積が小さくても、比較的低圧のパイロットエアを用いて弁の開閉を制御することができる。また、両永久磁石間には最接近時であっても両永久磁石同士が空隙を隔てて対向する配置関係が設定されているため、弁ロッドを駆動したときに両永久磁石同士の当接が回避される。よって、永久磁石の直接的な当接による破損が起きにくくなり、耐久性が向上する。また、両永久磁石同士が当接して互いに吸着した場合、大きな切り離し力が必要になるが、両永久磁石同士の当接が回避されることから、切り離し力を低減することができる。さらに、第1及び第2磁石保持部に第1及び第2永久磁石がそれぞれ保持され、かつ両永久磁石の端面が第1及び第2衝突回避部に対して当接可能に配置されていることから、両永久磁石が確実に固定される。また、第1及び第2衝突回避部はいずれも肉薄状であるため、両永久磁石同士の直接的な衝突を回避しつつ,両永久磁石間の隙間を極めて狭く設定することが可能となる。しかも、個々の永久磁石に寸法ばらつきがあったとしても、例えば第1及び第2衝突回避部の厚み分によって隙間の大きさを規定することにより、磁気吸引力の大きさを揃えることが可能であるため、製品ごとの性能ばらつきを最小化することができる。
また、上記構成によると、第1及び第2永久磁石の端面の少なくとも一部が第1及び第2磁石保持部の外部に露出しているため、非露出の場合と比べて第1及び第2永久磁石の磁力線が互いに作用し合いやすくなり、比較的大きな磁気吸引力を得ることができる。
【0017】
手段1、2において、前記第1磁石保持部の有する収容室の前記弁ロッドの軸線方向における寸法は、前記第1永久磁石の前記軸線方向の寸法よりも大きく、前記第2磁石保持部の有する収容室の前記弁ロッドの軸線方向における寸法は、前記第2永久磁石の前記軸線方向の寸法よりも大きいことが好ましい。
【0018】
上記構成によると、第1及び第2永久磁石を第1及び第2磁石保持部においてそれぞれ弁ロッドの軸線方向に若干遊び(空間的な余裕)をもって収容することができる。ゆえに、個々の永久磁石に寸法ばらつきがあったとしても、それらを第1及び第2磁石保持部内に無理なく収容することができるとともに、永久磁石の割れやカケ等も未然に防止することができる。なお、第1及び第2永久磁石の間には磁気吸引力が常時作用しており、互いに引き合っているので、遊びをもって収容したとしても固定状態の低下にはつながらない。
【0021】
手段1、2において、前記第1衝突回避部及び前記第2衝突回避部の厚さの総和は、1mm以下であることが好ましい。
【0022】
従って、上記構成によると、第1及び第2衝突回避部の厚み分によって隙間の大きさを1mm以下という極めて小さい値に規定することができる。このため、磁気吸引力を確実に大きくしつつその大きさを揃えることができる。
【0023】
手段1´に記載の発明は、ピストン収容室を有するピストン収容体と、その一部が前記ピストン収容体に挿入されるとともに、前記ピストン収容室内に位置する領域にピストン部が設けられ、前記ピストン収容室外に位置する領域に弁部が形成された弁ロッドとを備え、前記ピストン部に作用するパイロットエアのエア圧により前記弁ロッドを第1方向に駆動しかつ付勢手段の付勢力により前記弁ロッドを前記第1方向とは反対の第2方向に駆動し、前記パイロットエアの給排により前記弁部を弁座に接離させることで弁の開閉を制御するバルブモジュールであって、前記ピストン部の外周位置に設けられた第1磁石保持部と、前記ピストン収容体側において前記第1磁石保持部に対向する位置に設けられた第2磁石保持部と、前記第1磁石保持部において前記第2磁石保持部に最も近い位置に形成された肉薄状の第1衝突回避部に対して端面を当接させうる状態で、前記第1磁石保持部に保持された第1永久磁石と、前記第2磁石保持部において前記第1磁石保持部の前記第1衝突回避部に最も近い位置に形成された肉薄状の第2衝突回避部に対して端面を当接させうる状態で、前記第2磁石保持部に保持された第2永久磁石とを備え、前記両永久磁石間には、前記ピストン部を前記第1方向に駆動させるとともに相互の接近に伴い増大する磁気吸引力が作用するとともに、最接近時であっても前記両永久磁石の前記端面同士が直接衝突しない配置関係が設定されており、前記第1永久磁石及び前記第2永久磁石は、厚さ方向に着磁された環状かつ同径の永久磁石であり、前記第1永久磁石及び前記第2永久磁石の少なくとも一方は、複数個用いて厚さ方向に多段配置され、前記第2永久磁石の個数は、前記第1永久磁石の個数よりも多いことを特徴とするバルブモジュールをその要旨とする。
また手段2´に記載の発明は、ピストン収容室及び弁座を内部に有するハウジングブロックと、その一部が前記ピストン収容室に挿入されるとともに、前記ピストン収容室内に位置する領域にピストン部が設けられ、前記ピストン収容室外に位置する領域に弁部が形成された弁ロッドとを備え、前記ピストン部に作用するパイロットエアのエア圧により前記弁ロッドを第1方向に駆動しかつ付勢手段の付勢力により前記弁ロッドを前記第1方向とは反対の第2方向に駆動し、前記パイロットエアの給排により前記弁部を前記弁座に接離させることで弁の開閉を制御するバルブ装置であって、前記ピストン部の外周位置に設けられた第1磁石保持部と、前記ハウジングブロック側において前記第1磁石保持部に対向する位置に設けられた第2磁石保持部と、前記第1磁石保持部において前記第2磁石保持部に最も近い位置に形成された肉薄状の第1衝突回避部に対して端面を当接させうる状態で、前記第1磁石保持部に保持された第1永久磁石と、前記第2磁石保持部において前記第1磁石保持部の前記第1衝突回避部に最も近い位置に形成された肉薄状の第2衝突回避部に対して端面を当接させうる状態で、前記第2磁石保持部に保持された第2永久磁石とを備え、前記両永久磁石間には、前記ピストン部を前記第1方向に駆動させるとともに相互の接近に伴い増大する磁気吸引力が作用するとともに、最接近時であっても前記両永久磁石の前記端面同士が直接衝突しない配置関係が設定されており、前記第1永久磁石及び前記第2永久磁石は、厚さ方向に着磁された環状かつ同径の永久磁石であり、前記第1永久磁石及び前記第2永久磁石の少なくとも一方は、複数個用いて厚さ方向に多段配置され、前記第2永久磁石の個数は、前記第1永久磁石の個数よりも多いことを特徴とするバルブ装置をその要旨とする。
上記手段1´、2´においては、前記第1永久磁石及び前記第2永久磁石は、厚さ方向に着磁された環状かつ同径の永久磁石であるため、小型のバルブモジュール内において比較的大きな磁気吸引力を互いに作用させることができる。
【0025】
この場合、前記第1永久磁石及び前記第2永久磁石の少なくとも一方は、複数個用いて厚さ方向に多段配置されているため、第1及び第2永久磁石を1つずつ使用した場合に比べて、より大きな磁気吸引力を得ることができる。
【0027】
さらに前記第2永久磁石の個数は、前記第1永久磁石の個数よりも多いため、第1永久磁石の個数が第2永久磁石の個数よりも多い場合とは異なり、弁ロッド全体の重量増を伴うことなく、磁気吸引力を増大させることができる。
【0029】
手段3に記載の発明は、手段1、1´に記載のバルブモジュールと、内部に前記弁座が形成されたバルブモジュール装着部を有するハウジングブロックとを備え、前記バルブモジュール装着部に前記弁部が当接する状態で前記バルブモジュールが前記ハウジングブロックに装着されていることを特徴とするバルブ装置をその要旨とする。
【0030】
手段4に記載の発明は、手段1、1´に記載の少なくとも1つのバルブモジュールと、内部に前記弁座が形成されたバルブモジュール装着部を少なくとも1つ有するマニホールドブロックとを備え、前記バルブモジュール装着部に前記弁部が当接する状態で前記バルブモジュールが前記マニホールドブロックに装着されていることを特徴とするバルブシステムをその要旨とする。
【発明の効果】
【0031】
以上詳述したように、請求項1~8記載の発明によると、小型であるにも関わらず比較的低圧のパイロットエアで動作することができ、しかも耐久性にも優れ、製品ごとの性能ばらつきも小さいバルブモジュールまたはバルブ装置を提供することができる。また、請求項9、10に記載の発明によると、いずれも上記の優れたバルブモジュールを備えているため、小型であるにも関わらず比較的低圧のパイロットエアで動作することができ、しかも耐久性にも優れ、製品ごとの性能ばらつきも小さいバルブ装置、バルブシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明を具体化したバルブモジュールを用いて構成された第1の実施形態のバルブ装置を示す概略縦断面図。
【
図2】第1の実施形態において、バルブモジュールをハウジングブロックから取り出した状態を示す概略縦断面図。
【
図3】第1の実施形態において、(a)は永久磁石同士が最も離間している状態(バルブ全閉状態)、(b)は永久磁石同士が最も接近している状態(バルブ全開状態)を示す要部拡大断面図。
【
図4】第1の実施形態のバルブ装置の使用時の状態を説明するための概略図。
【
図5】本発明を具体化したバルブモジュールを用いて構成された第2の実施形態のバルブシステムを説明するための概略図。
【
図6】本発明を具体化したバルブモジュールを用いて構成された第3の実施形態のバルブ装置を示す概略縦断面図。
【
図7】第3の実施形態において、バルブモジュールをハウジングブロックから取り出した状態を示す概略縦断面図。
【
図8】第3の実施形態において、(a)は永久磁石同士が最も離間している状態、(b)は永久磁石同士が最も接近している状態を示す要部拡大断面図。
【
図9】別の実施形態のバルブモジュールを示す概略縦断面図。
【
図10】別の実施形態のバルブモジュールを示す要部拡大断面図。
【
図11】別の実施形態のバルブ装置を示す要部拡大断面図。
【
図12】バルブ装置を使用した色替装置の構成を説明するための概略図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
[第1の実施形態]
以下、本発明のバルブ装置を具体化した一実施の形態のカラーチェンジバルブ11を
図1~
図4に基づき詳細に説明する。
図1は、バルブモジュールを用いて構成された本実施形態のカラーチェンジバルブ11を示す概略縦断面図である。
図2は、バルブモジュールをハウジングブロックから取り出した状態を示す概略縦断面図である。
図3(a)は永久磁石同士が最も離間している状態を示す要部拡大断面図であり、
図3(b)は永久磁石同士が最も接近している状態を示す要部拡大断面図である。
図4はカラーチェンジバルブ11を色替装置CV1の一部として使用した時の状態を説明するための概略図である。
【0034】
図1、
図2に示されるように、本実施形態のカラーチェンジバルブ11は、ピストンシリンダを駆動手段としたパイロット形の2ポートバルブ(2方弁)であって、弁駆動部であるバルブモジュール12と、弁本体部であるハウジングブロック13とによって構成されている。
【0035】
本実施形態のハウジングブロック13は、上面中央部において大きく開口するとともに下面側にいくに従って段階的に縮径するバルブモジュール装着部14を有している。このバルブモジュール装着部14には、バルブモジュール12が装着可能となっている。ハウジングブロック13の側面には入力ポート32が形成され、下面中央部には出力ポート33が形成されている。また、ハウジングブロック13内の下側領域には塗料が流れる流路34が形成されており、入力ポート32及び出力ポート33はその流路34にそれぞれ連通されている。バルブモジュール装着部14の内部、より具体的にいうと出力ポート33の開口部内側には、断面テーパ状をなす弁座35が形成されている。
【0036】
本実施形態のバルブモジュール12は、ピストン収容体21を備えている。ピストン収容体21は、複数の部材(下側部材21A、上側部材21B及び蓋部材21C)によって構成されるとともに、その内部にピストン収容室22を有している。なお、下側部材21Aの上端側には上側部材21Bの下端側が接合されており、上側部材21Bの開口部には蓋部材21Cがねじ込み、圧着、接着等によって固定されている。ピストン収容体21を構成する下側部材21Aは、小径部とその上側にある大径部とにより構成されている。小径部の中心部には、ピストン収容室22とピストン収容室22の外部領域とを連通させるロッド挿通孔23が貫設されている。ロッド挿通孔23の内壁面には断面略V字状のシール部材36が配設され、小径部の外周面には断面円形状のシール部材37が配設されている。シール部材36は、パイロットエアがピストン収容室22側からロッド挿通孔23を介してピストン収容室22の外部領域側(即ち流路34側)に漏れるのを防止している。シール部材37は、流路34側に導入される塗料や洗浄剤などがピストン収容室22側に漏れるのを防止するとともに、パイロットエアが流路34側に漏れるのを防止している。また、小径部の下端面には、シール部材としてのダイアフラムシール38が配設されている。
【0037】
このカラーチェンジバルブ11は、ロッド部42、ピストン部43、弁部44及び固定ナット46を有する移動体としての弁ロッド41を備えている。この弁ロッド41は、隔離部材としてのダイアフラムシール38の中心孔に挿通されるとともに、ロッド挿通孔23に摺動可能な状態でその一部が挿入されている。本実施形態のロッド部42は、下側半分が相対的に大きい直径を有する大径部となっていて、上側半分が相対的に小さい直径を有する小径部となっている。有底筒状をなすピストン部43は、ロッド部42における小径部、つまりピストン収容室22内となる位置に設けられている。ピストン部43はピストン収容室22内に収容されるとともに、ピストン収容室22内にて上下方向に摺動可能となっている。ピストン部43の外周面には溝状のパッキング収容凹部が設けられており、そこには環状をなす断面略V字状のシールパッキング45が収容されている。
【0038】
ロッド部42の下端側(先端側)は、ロッド挿通孔23を介してピストン収容室22の外側領域に突出し、さらにダイアフラムシール38の中心孔を通り抜けてピストン収容室22の外部領域側(流路34側)に到っている。テーパ面を有する弁部44は、ロッド部42の先端に一体形成されている。弁部44は、弁ロッド41の上下動に伴い、ハウジングブロック13側の弁座35に対して当接及び離間可能となっている。ちなみに、
図1は弁部44が弁座35に対して当接した状態を示している。
【0039】
ピストン収容体21内のピストン収容室22は、ピストン部43により下側の第1室51と、上側の第2室52とに区画されている。第1室51側には、ピストン部43を上方向に駆動させるパイロットエアが供給されるパイロットポート53が形成されている。このパイロットポート53はピストン収容体21の側面において開口することで、第1室51と大気圧領域と連通させている。
【0040】
ピストン収容体21における第2室52は、蓋部材21Cの中央に設けられたロッド逃がし孔25を介して大気圧領域と連通されている。このロッド逃がし孔25内には、ロッド部42における小径部の上端が常時非接触の状態で挿通されている。このような第2室52内には、付勢手段としての金属製のコイルばね54が圧縮状態で収容されている。このコイルばね54の一端はピストン部43の上端面に当接しており、他端は蓋部材21Cの内壁面に当接している。その結果、コイルばね54によって、ピストン部43を常時下方向に付勢する付勢力が作用した状態となっている。なお、コイルばね54は、周囲の磁力の影響を受けにくくするために、例えばSUS316等のような非磁性体金属製であることが好ましい。
【0041】
次に、パイロットエアに基づくピストン駆動力を磁力を用いて補助する機構について説明する。
【0042】
図1~
図3に示されるように、本実施形態のカラーチェンジバルブ11は、バルブモジュール12内に第1永久磁石56と第2永久磁石57とを備えている。本実施形態において第1永久磁石56及び第2永久磁石57は、ともに厚さ方向に着磁された環状かつ同径の永久磁石である。第1永久磁石56及び第2永久磁石57としては、従来公知の任意の永久磁石を用いることが可能であるが、本実施形態では磁力の強いネオジム磁石の市販品を使用している。このほかにも、例えばサマリウムコバルト磁石、フェライト磁石、アルニコ磁石などを用いてもよい。
【0043】
図3に示されるように、本実施形態では第1永久磁石56を取り付けるための保持構造(第1磁石保持部61)が、移動側であるピストン部43側に設けられている。即ち、第1磁石保持部61の一部をなす肉薄状の第1衝突回避部(第1フランジ部62)を有する環状部材63が、ピストン部43の上面側にねじ止め等によって取り付けられている。一方、ピストン部43の上面側の外周位置には、第1磁石保持部61の一部をなす環状段部64が形成されている。そして、ピストン部43と環状部材63とによって収容室が形成されている。
【0044】
同じく
図3に示されるように、第2永久磁石57を取り付けるための保持構造(第2磁石保持部71)が、固定側であるピストン収容体21側において第1磁石保持部61に対向する位置に設けられている。即ち、上側部材21Bの内周面と蓋部材21Cの外周面との間には所定の収容室が形成され、これが第2磁石保持部71としての役割を果たしている。蓋部材21Cの下端部には、肉薄状の第2衝突回避部である第2フランジ部72が形成されている。
【0045】
そして、第1永久磁石56は、肉薄状の第1フランジ部62に対して端面を当接させた状態で、第1磁石保持部61に保持されている。なお、第1フランジ部62は、第1磁石保持部61において第2磁石保持部71に最も近い位置、具体的にはピストン部43の最上端部に形成されている。また、第2永久磁石57は、肉薄状の第2フランジ部72に対して端面を当接させた状態で、第2磁石保持部71に保持されている。なお、第2フランジ部72は、第2磁石保持部71において第1磁石保持部61の第1フランジ部62に最も近い位置、具体的には蓋部材21Cの最下端部に形成されている。即ち本実施形態では、第1永久磁石56は移動側であるピストン部43側に設けられ、第2永久磁石57は固定側であるピストン収容体21に設けられている。
【0046】
本実施形態では、第1磁石保持部61に保持されている第1永久磁石56の数は1個である。これに対し、第2磁石保持部71に保持されている第2永久磁石57の数はそれよりも多く、2個とされている。2個の第2永久磁石57は、厚さ方向に積層された状態で多段配置されている。
【0047】
第1磁石保持部61の有する収容室の弁ロッド41の軸線方向(
図3では上下方向)における寸法は、第1永久磁石56の1個分についての軸線方向の寸法よりも若干大きく(例えば0.1mm~1.0mm程度大きく)なっている。このため、第1磁石保持部61において第1永久磁石56が弁ロッド41の軸線方向に若干遊び(空間的な余裕)をもって収容されている。具体的には、
図3にて示される位置に僅かな隙間59が生じている。
【0048】
また、第2磁石保持部71の有する収容室の弁ロッド41の軸線方向における寸法は、第2永久磁石57の2個分についての軸線方向の寸法よりも若干大きく(例えば0.1mm~1.0mm程度大きく)なっている。このため、第2磁石保持部71において多段配置された第2永久磁石57が弁ロッド41の軸線方向に若干遊び(空間的な余裕)をもって収容されている。具体的には、
図3にて示される位置に僅かな隙間59が生じている。
【0049】
図3に示されるように、第1フランジ部62は、第1永久磁石56の端面の約半分の領域を第1磁石保持部61の外部に露出させた状態で、第1永久磁石56の端面に当接している。また、第2フランジ部72は、第2永久磁石57の端面の約半分の領域を第2磁石保持部71の外部に露出させた状態で、第2永久磁石57の端面に当接している。それゆえ、第1永久磁石56及び第2永久磁石57は、磁力線が互いに作用し合いやすくなっている。
【0050】
ここで、第1フランジ部62の厚さt1及び第2フランジ部72の厚さt2は、いずれも非常に薄く、例えば0.1mm~0.5mm程度に設定されている。それゆえ、第1フランジ部62及び第2フランジ部72の厚さの総和t3は1mm以下となっており、本実施形態では0.3mm~0.4mmになっている。つまり、ここでは第1フランジ部62及び第2フランジ部72の厚み分によって、第1永久磁石56及び第2永久磁石57の最接近時における隙間の大きさを極めて小さい値に規定している。
【0051】
また、第1永久磁石56及び第2永久磁石57の間には、ピストン部43を
図1の上方向A1(第1方向)に駆動させるような磁力、つまり磁気吸引力が作用するような配置関係が設定されている。従って、第1永久磁石56と第2永久磁石57とは、互いに異極を向け合った状態で対向配置されている。なお、この場合において磁気吸引力は、第1永久磁石56及び第2永久磁石57が相互に接近するに伴って増大し、両者が最接近した
図3(b)の状態において最大となる。
【0052】
ここで、
図1(a)に示すパイロットエアの未供給時においては、第1室51及び第2室52内がいずれも大気圧領域となっており、ピストン部43を介して第1方向A1及び第2方向A2に作用する大気圧による押圧力は相殺されている。また、このときピストン部43には、当該ピストン部43を第2方向A2に押圧しようとするコイルばね54の付勢力が作用するとともに、当該ピストン部43を第1方向A1に押圧しようとする磁気吸引力が作用している。ただし、
図3(a)に示されるように、第1永久磁石56及び第2永久磁石57は相互に最も離間(例えば1mm~4mm程度離間)しているため、このとき磁気吸引力は最小値となっている。同様に第1フランジ部62及び第2フランジ部72も相互に離間している。そしてこのとき、磁気吸引力がコイルばね54の付勢力よりも小さくなるように設定されているため、ピストン部43が第2方向A2に移動する。その結果、弁ロッド41が下動して弁部44が弁座35に当接し、流路34が閉成される。即ち、本実施形態のカラーチェンジバルブ11では、パイロットエアを遮断した状態であってもコイルばね54の付勢力よって弁が確実に閉状態となる。
【0053】
パイロットエアの供給時においては、第2室52内が大気圧領域のままである一方、パイロットポート53から加圧されたパイロットエアが第1室51内に導入される。その結果、ピストン部43の下面側にパイロットエアの圧力が作用し、ピストン部43を第1方向A1に押圧しようとする力が働く。パイロットエアによる押圧力と上記磁気吸引力との総和は、コイルばね54の付勢力よりも大きくなるようにあらかじめ設定されている。このため、パイロットエアによる押圧力と上記磁気吸引力とが同時に作用することにより、ピストン部43がコイルばね54の付勢力に抗して第1方向A1に移動する。そして、第1フランジ部62と第2フランジ部72とが互いに当接し、ピストン部43が停止した状態となる。その結果、弁ロッド41が上動して弁部44が弁座35から離間し、流路34が開成される。
【0054】
次に、このように構成された本実施形態のカラーチェンジバルブ11を色替装置CV1の一部として使用したときの動作について説明する。
図4に示されるように、本実施形態のカラーチェンジバルブ11は、例えば、マニホールドブロックM1に複数個連設された状態で使用される。マニホールドブロックM1内には塗料流路である主流路R1が形成されるとともに、そこから分岐した副流路R2が複数箇所に形成されている。前記主流路R1は図示しない塗装機に対して接続されている。各カラーチェンジバルブ11は、各副流路R2の開口部と各出力ポート33とが連通するように、ハウジングブロック13側がマニホールドブロックM1に接する状態で取り付けられている。また、各カラーチェンジバルブ11の入力ポート32は、別々の塗料供給源(図示略)に対してそれぞれ接続されている。各カラーチェンジバルブ11のパイロットポート53は、図示しない電磁弁等の流体制御装置を介してパイロットエアを供給するためのエアコンプレッサ(図示略)に接続されている。本実施形態の場合、例えば0.4MPa~0.5MPa程度の比較的低圧のエアが供給されるようになっている。
【0055】
各カラーチェンジバルブ11に対してパイロットエアを供給していない初期状態においては、各カラーチェンジバルブ11の流路34が閉成されているため、副流路R2及び主流路R1側に塗料は供給されない。ここで、特定のカラーチェンジバルブ11に対してパイロットエアを供給すると、当該カラーチェンジバルブ11の弁ロッド41が
図1、
図4の上方向に駆動される。その結果、弁部44が弁座35から離間した開成状態となり、流路34を介して入力ポート32と出力ポート33との間が連通された状態となる。よって、当該カラーチェンジバルブ11側から所定の塗料がマニホールドブロックM1側に流入し、その塗料が塗装機側に供給されるようになっている。なお、当該カラーチェンジバルブ11に対するパイロットエアの供給を停止すると、当該カラーチェンジバルブ11の弁ロッド41が
図1、
図4の下方向に移動する。その結果、弁部44が弁座35に当接した閉成状態となり、入力ポート32と出力ポート33との間が遮断された状態となる。よって、当該カラーチェンジバルブ11側から所定の塗料がマニホールドブロックM1側に流入することはなくなり、塗装機側への塗料の供給がストップするようになっている。
【0056】
従って、本実施の形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0057】
(1)本実施形態のカラーチェンジバルブ11によれば、第1永久磁石56及び第2永久磁石57の間には、ピストン部43を第1方向A1に駆動させるとともに相互の接近に伴い増大する磁気吸引力が作用する(
図3(a)、(b)参照)。このため、パイロットエアの供給時においては、パイロットエアの圧力に加えて磁気吸引力が作用することで、弁ロッド41が第1方向A1に駆動される。それゆえ、ピストン部43の受圧面積が小さくても、比較的低圧のパイロットエアを用いて弁の開閉を制御することができる。また、第1永久磁石56及び第2永久磁石57の間には、最接近時であってもそれらの端面同士が直接衝突しない配置関係が設定されている。そのため、弁ロッド41を駆動したときに第1永久磁石56及び第2永久磁石57同士の直接的な当接が回避される結果、それらに破損が起きにくくなり、耐久性が向上する。また、両永久磁石56、57同士が当接して互いに吸着した場合、大きな切り離し力が必要になるが、両永久磁石56、57同士の当接が回避されることから、切り離し力を低減することができる。さらに、第1及び第2磁石保持部61、71に第1及び第2永久磁石56、57がそれぞれ保持され、かつ両永久磁石56、57の端面が第1及び第2フランジ部62、72に対してそれぞれ当接配置されている。このため、両永久磁石56、57が第1及び第2磁石保持部61、71に確実に固定される。また、第1及び第2フランジ部62、72はいずれも肉薄状であるため、両永久磁石56、57同士の直接的な衝突を回避しつつ,両永久磁石56、57間の隙間を極めて狭く設定することが可能となる。しかも、個々の永久磁石56、57に寸法ばらつきがあったとしても、例えば第1及び第2フランジ部62、72の厚み分によって隙間の大きさを規定することにより、磁気吸引力の大きさを揃えることが可能である。そのため、製品ごとの性能ばらつきを最小化することができる。以上のように本実施形態によれば、小型で軽量であるにも関わらず比較的低圧のパイロットエアで動作することができ、しかも耐久性にも優れ、製品ごとの性能ばらつきも小さいカラーチェンジバルブ11を提供することができる。
【0058】
(2)また、このカラーチェンジバルブ11の場合、パイロットエアの未供給時にピストン部43に対して作用する磁気吸引力は、コイルばね54の付勢力よりも小さくなるように設定されている。このため、コイルばね54の付勢力により、弁部44が弁座35に当接する位置まで弁ロッド41が移動し、弁が確実に閉成された状態に保持される。また、パイロットエアの供給時にピストン部43に対して作用する磁気吸引力及びパイロットエアによる押圧力の総和は、コイルばね54の付勢力よりも大きくなるように設定されている。このため、磁気吸引力及びパイロットエアによる押圧力の合力により、弁部44が弁座35から離間する位置に弁ロッド41が移動し、弁が確実に開成された状態に保持される。なお本実施形態では、パイロットエアの未供給時にコイルばね54の付勢力により弁が閉成されるノーマルクローズ形となっているため、複数あるカラーチェンジバルブ11のうちの大部分を閉成しておく色替装置CV1を動作させるときのパイロットエアの供給量を削減することができる。
【0059】
(3)このカラーチェンジバルブ11の場合、第1磁石保持部61の有する収容室の弁ロッド41の軸線方向における寸法が、1個の第1永久磁石56の軸線方向の寸法よりも大きくなっている。また、第2磁石保持部71の有する収容室の弁ロッド41の軸線方向における寸法は、多段配置された2個の第2永久磁石57の軸線方向の寸法よりも大きくなっている。従って、第1及び第2永久磁石56、57を第1及び第2磁石保持部61、71においてそれぞれ弁ロッド41の軸線方向に若干遊びをもって収容することができる。ゆえに、個々の永久磁石56、57に寸法ばらつきがあったとしても、それらを第1及び第2磁石保持部61、71内に無理なく収容することができるとともに、永久磁石56、57の割れやカケ等も未然に防止することができる。なお、第1及び第2永久磁石56、57の間には磁気吸引力が常時作用しており、互いに引き合っているので、遊びをもって収容したとしても固定状態の低下にはつながらない。
【0060】
(4)このカラーチェンジバルブ11の場合、第1及び第2永久磁石56、57の端面の一部が、それぞれ第1及び第2フランジ部62、72の外部に露出している。よって、第1及び第2永久磁石56、57が非露出である場合と比べて、第1及び第2永久磁石56、57の磁力線が互いに作用し合いやすくなり、比較的大きな磁気吸引力を得ることができる。
【0061】
(5)このカラーチェンジバルブ11の場合、第1及び第2フランジ部62、72の厚さの総和が1mm以下に設定されている。ゆえに、これらの厚み分によって最接近時における第1及び第2永久磁石56、57の隙間の大きさを1mm以下という極めて小さい値に規定することができる。このため、磁気吸引力を確実に大きくしつつその大きさを揃えることができる。
【0062】
(6)このカラーチェンジバルブ11の場合、第1及び第2永久磁石56、57は、ともに厚さ方向に着磁された環状かつ同径の永久磁石である。そして、このような形状の第1及び第2永久磁石56、57を用いることにより、小型のバルブモジュール12内において比較的大きな磁気吸引力を互いに作用させることができる。また、第1永久磁石56及び第2永久磁石57のうち、第2永久磁石57については複数個用いて厚さ方向に多段配置されている。そのため、第1及び第2永久磁石56、57を1つずつ使用した場合に比べて、より大きな磁気吸引力を得ることができる。さらにこの場合において、第2永久磁石57の個数が第1永久磁石56の個数よりも多くなっている。よって、第1永久磁石56の個数が第2永久磁石57の個数よりも多い場合とは異なり、移動側である弁ロッド41全体の重量増を伴うことなく、磁気吸引力を増大させることができる。
【0063】
[第2の実施形態]
以下、本発明を具体化したバルブモジュール12を用いて構成された第2の実施形態のバルブシステムを
図5に基づき詳細に説明する。本実施形態のバルブシステムを構成するバルブモジュール12は、第1実施形態のカラーチェンジバルブ11Aにおいて使用したものと同じである。そのため、ここでは第1の実施形態と相違する部分について中心に説明し、共通する部分については同じ部材番号を付すのみとし詳細な説明を省略する。
【0064】
本実施形態におけるマニホールドブロックM2はバルブハウジングとしての機能を有するものであって、その複数箇所には複数のバルブモジュール装着部84が形成されている。各バルブモジュール装着部84の底部側領域は塗料等が流れる流路34となっており、この流路34の部分に連通して入力ポート32及び出力ポート33が形成されている。各バルブモジュール装着部84の底部中央部に位置する出力ポート33は、マニホールドブロックM2に設けられた各々の副流路R2に接続されており、その接続部分には弁座35が形成されている。また、マニホールドブロックM2には複数のパイロットエア導入路85が設けられており、各々のパイロットエア導入路85は各バルブモジュール装着部84の内側面にて開口している。そして、各バルブモジュール装着部84に、それぞれカラーチェンジバルブ用のバルブモジュール12を装着することで色替装置CV2が構成されている。このとき、各バルブモジュール装着部84には、それぞれバルブモジュール12が弁ロッド41の先端側を底部に向けた状態、即ち弁ロッド41の弁部44が弁座35に当接する状態で装着されている。
【0065】
以上のように構成された本実施形態においても、パイロットエアの給排により弁ロッド41を上下方向に駆動させて、弁部44を弁座35に接離させることにより、弁の開閉制御を行うことが可能である。また、このようなバルブモジュール12であれは、小型であるにも関わらず比較的低圧のパイロットエアで動作することができ、しかも耐久性にも優れ、製品ごとの性能ばらつきも小さいものとすることができる。
【0066】
[第3の実施形態]
以下、本発明のバルブ装置を具体化した第3の実施形態のカラーチェンジバルブ11Bを
図6~
図8に基づき詳細に説明する。
図6は、バルブモジュール12Aを用いて構成された本実施形態のカラーチェンジバルブ11Bを示す概略縦断面図である。
図7は、バルブモジュール12Aをハウジングブロック13Aから取り出した状態を示す概略縦断面図である。
図8(a)は永久磁石同士が最も離間している状態を示す要部拡大断面図であり、
図8(b)は永久磁石同士が最も接近している状態を示す要部拡大断面図である。なお、本実施形態では第1の実施形態と相違する部分について中心に説明し、共通する部分については同じ部材番号を付すのみとし詳細な説明を省略する。
【0067】
このカラーチェンジバルブ11Bは、弁駆動部であるバルブモジュール12Aと、弁本体部であるハウジングブロック13Aとによって構成されている。ただし、第1実施形態のカラーチェンジバルブ11が2ポートバルブであったのに対し、本実施形態のカラーチェンジバルブ11Bは3ポートバルブ(3方弁)である点で相違する。
【0068】
本実施形態のハウジングブロック13Aの側面における2箇所には、第1の入力ポート32A及び第2の入力ポート32Bがそれぞれ形成されている。これら2つの入力ポート32A、32Bは、出力ポート33とともに流路34にそれぞれ連通されている。バルブモジュール装着部14の内部、より具体的にいうと出力ポート33の開口部内側には、断面テーパ状をなす弁座35が形成されている。
【0069】
本実施形態のバルブモジュール12Aの場合、ダイアフラムシール38の下端面側にさらにスリーブ状部材91が配設されており、このスリーブ状部材91の下面側開口部が弁座92となっている。つまり、このバルブモジュール12Aは2箇所に弁座35、92を有している点で、第1実施形態のバルブモジュール12と相違している。このスリーブ状部材91には、第2の入力ポート32Bに対して連通する透孔93が形成されている。
【0070】
本実施形態のバルブモジュール12Aにおける弁ロッド41Aは、第1実施形態のも弁ロッド41と同様に、ロッド部42、ピストン部43、弁部44及び固定ナット46を有している。ただし、この弁ロッド41Aは、弁ロッド41Aの先端部とは別の位置にさらに弁部94を有している。弁部94は、弁ロッド41Aの大径部において径方向に張り出すようにして一体形成されている。
【0071】
ロッド部42の下端側(先端側)は、ロッド挿通孔23を介してピストン収容室22の外側領域に突出し、さらにダイアフラムシール38及びスリーブ状部材91の中心孔を通り抜けてピストン収容室22の外部領域側(流路34側)に到っている。
図6にて下方に位置する弁部44は、弁ロッド41Aの上下動に伴い、ハウジングブロック13A側の弁座35に対して当接及び離間可能となっている。ちなみに、
図6は弁部44が弁座35に対して当接した状態を示している。また、
図6にて上方に位置する弁部94は、弁ロッド41Aの上下動に伴い、バルブモジュール12A側の弁座92に対して当接及び離間可能となっている。ちなみに、
図6は弁部94が弁座92に対して離間した状態を示している。
【0072】
ここで、
図6に示すパイロットエアの未供給時においては、
図8(a)に示されるように、第1永久磁石56及び第2永久磁石57は相互に最も離間(例えば1mm~5mm程度離間)しているため、このとき磁気吸引力は最小値となっている。同様に第1フランジ部62及び第2フランジ部72も相互に0.5mm~4mm程度離間している。そしてこのとき、磁気吸引力がコイルばね54の付勢力よりも小さくなるように設定されているため、ピストン部43が第2方向A2に移動する。その結果、弁ロッド41Aが下動して、弁部44がハウジングブロック13A側の弁座35に当接する一方、弁部94がバルブモジュール12A側の弁座92から離間する。このとき、出力ポート33が閉成されて流路34と非連通の状態になるとともに、2つの入力ポート32A、32B間が流路34を介して連通された状態となる。
【0073】
パイロットエアの供給時においては、パイロットエアによる押圧力と上記磁気吸引力とが同時に作用することにより、ピストン部43がコイルばね54の付勢力に抗して第1方向A1に移動する。すると、弁ロッド41Aが上動して、弁部44がハウジングブロック13A側の弁座35から離間する一方、弁部94がバルブモジュール12A側の弁座92に対して当接することにより、ピストン部43が停止した状態となる。このとき、第1フランジ部62及び第2フランジ部72は当接せず、相互に0.5mm~2mm程度離間して最接近した状態となる。このとき、2つの入力ポート32A、32B間の流路34が閉成されて非連通の状態になるとともに、出力ポート33が開成されて入力ポート32Aと流路34を介して連通された状態となる。
【0074】
以上のように構成された本実施形態のカラーチェンジバルブ11Bにおいても、パイロットエアの給排により弁ロッド41Aを上下方向に駆動させて、2つの弁部44、94を弁座35、94にそれぞれ接離させることにより、弁の開閉制御を行うことが可能である。また、このようなカラーチェンジバルブ11Bであれば、小型であるにも関わらず比較的低圧のパイロットエアで動作することができ、しかも耐久性にも優れ、製品ごとの性能ばらつきも小さいものとすることができる。特に本実施形態の場合、3方弁であるカラーチェンジバルブ11Bにおいて、両永久磁石56、57の最接近時に第1フランジ部62及び第2フランジ部72同士が当接しないような配置関係が設定されている。つまり、弁部94がバルブモジュール12A側の弁座92に対して当接することによりピストン部43が停止することから、ピストン部43に対する上方向への駆動力が全て弁部94と弁座92とに加わり、弁部94と弁座92との間に高いシール性を付与することができる。
【0075】
なお、本発明の実施の形態は以下のように変更してもよい。
【0076】
・上記第1の実施形態等においては、ダイアフラムシール38を用いて、塗料や洗浄剤などがロッド挿通孔23を介してピストン収容室22側に漏れるのを防止していたが、これに限定されない。例えば、
図9に示す別の実施形態のカラーチェンジバルブ用のバルブモジュール12Bのように、ダイアフラムシール38に代えてスリーブ状の軸シール96を設け、その内周面に複数種類のシール部材97、98を設けることによりシールを図るようにしてもよい。
【0077】
・上記第1の実施形態等においては、第1永久磁石56を1個用いるとともに、第2永久磁石57を2個用いたが、これに限定されない。例えば、
図10に示す別の実施形態のカラーチェンジバルブ用のバルブモジュール12Cのように、第2永久磁石57の数をさらに増やして3個用いてもよく、この場合にはよりいっそう大きな磁気吸引力を得ることができる。なお、第2永久磁石57の数は4個以上であってもよい。第1永久磁石56の個数も1個に限らず、2個以上にすることも勿論許容される。なお、
図10においては、同径かつ同じ厚さの第2永久磁石57を3個用いたが、第2永久磁石57の厚さは異なっていてもよい。例えば、所定厚さを有する1個の第2永久磁石57と、当該所定厚さの2倍の厚さを有する1個の第2永久磁石57とを用いてもよい。勿論、第1永久磁石56を複数個用いるような場合、それらの厚さは同じであってもよく、異なっていてもよい。さらに、上記第1の実施形態等においては、第1永久磁石56の厚さ及び第2永久磁石57の厚さは同じであったが、異なっていてもよい。また、第1永久磁石56の径及び第2永久磁石57の径は同じであったが、異なっていてもよい。
【0078】
・上記第1の実施形態等においては、付勢手段としてコイルばね54が用いられていたが、コイルばね54以外の形状のばねを用いてもよいほか、ばね以外の付勢手段を用いてもよい。さらに、ピストン部43を第1方向A1に駆動させるときと同じように、第2方向A2に駆動させるのにパイロットエアを用いてもよい。
【0079】
・上記第1の実施形態等においては、第1永久磁石56及び第2永久磁石57がいずれも環状であったが、これらの形状は環状に限定されず、任意の形状であってよい。
【0080】
・上記第1の実施形態等においては、付勢手段の付勢力が弁を閉成する方向に作用し、パイロットエアの圧力及び永久磁石同士の吸引力が弁を開成する方向に作用するように構成したが、これに限定されない。即ち、付勢手段の付勢力が弁を開成する方向に作用し、パイロットエアの圧力及び永久磁石同士の吸引力が弁を閉成する方向に作用するように構成してもよい。
【0081】
・上記第1の実施形態等においては、第1永久磁石56をピストン部43の外周位置に設け、ピストン収容体21側において第1永久磁石56に対向する位置に第2永久磁石57を設けたが、第1及び第2永久磁石56、57をさらに別の箇所にそれぞれ追加してもよい。例えば、弁ロッド41の中心部付近に第1永久磁石56を追加し、ピストン収容体21側においてその追加された第1永久磁石56に対向する位置に第2永久磁石57を追加してもよい。このような構成とした場合、いっそう大きな磁気吸引力を得ることができる。
【0082】
・上記第1の実施形態等においては、コイルばね54を非磁性体からなる材料で形成したが、これに限定されない。例えば、第1永久磁石56及び第2永久磁石57以外のバルブ構成部品をすべて非磁性体製にしてもよい。
【0083】
・例えば、
図11に示される別の実施形態のバルブ装置11Cのように構成してもよい。なお、
図1に示したバルブ装置11と相違する部分について中心に説明し、共通する部分については同じ部材番号を付すのみとし詳細な説明を省略する。このバルブ装置11Cは、図面上部側に位置する弁駆動部側の部材88と、図面下部側に位置する弁本体部側の部材87とによって構成されたハウジングブロック13Bを備えている。弁駆動部側の部材88の内部にはピストン収容室22が形成され、弁本体部側の部材87の内部には弁座35が形成されている。その一方で、このバルブ装置11Cは、
図1のものとは異なり下側部材21A及び上側部材21Bに相当する部材を備えていない。弁本体部側の部材87の上側開口部には蓋部材21Cがねじ込み、圧着、接着等によって固定されている。その結果、ハウジングブロック13B側(即ち弁本体部側の部材87と蓋部材21Cとの間)に、第2磁石保持部72が設けられている。また、弁駆動部側の部材88と弁本体部側の部材87との接合界面の近傍には、ロッド挿通孔23を有する円筒状の軸シール89が配設されている。この軸シール89には、シール部材36、37がそれぞれ配設されている。
【0084】
・上記第1の実施形態等においては、本発明のバルブ装置を塗装設備における色替装置CV1を構成するカラーチェンジバルブ11として用いたが、これに限定されることはなく、他の用途に用いても勿論よい。
【0085】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した各実施の形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0086】
(1)請求項1乃至14のいずれか1項において、前記付勢手段の付勢力は弁を閉成する方向に作用する一方、前記パイロットエアの圧力及び前記磁気吸引力は弁を開成する方向に作用すること。
(2)請求項1乃至14のいずれか1項において、前記第1永久磁石及び前記第2永久磁石以外のバルブ構成部品は非磁性体製であること。
(3)請求項1乃至14のいずれか1項において、前記付勢手段は非磁性体金属製のばねであること。
(4)請求項1乃至7のいずれか1項において、前記バルブモジュールは3方弁を構成するものであって、前記両永久磁石の最接近時に前記両衝突回避部同士が衝突しない配置関係が前記両永久磁石間に設定されていること。
(5)請求項1乃至7のいずれか1項において、前記バルブモジュールは2方弁を構成するものであって、前記両永久磁石の最接近時に前記両衝突回避部同士が衝突して前記弁ロッドが止まる配置関係が前記両永久磁石間に設定されていること。
(6)請求項8乃至14のいずれか1項において、前記バルブ装置は3方弁であって、前記両永久磁石の最接近時に前記両衝突回避部同士が衝突しない配置関係が前記両永久磁石間に設定されていること。
(7)請求項8乃至14のいずれか1項において、前記バルブ装置は2方弁であって、前記両永久磁石の最接近時に前記両衝突回避部同士が衝突して前記弁ロッドが止まる配置関係が前記両永久磁石間に設定されていること。
【符号の説明】
【0087】
11、11B、11C…バルブ装置としてのカラーチェンジバルブ
12、12A、12B、12C…バルブモジュール
13、13A、13B…ハウジングブロック
14、84…バルブモジュール装着部
21…ピストン収容体
22…ピストン収容室
35、92…弁座
41、41A…弁ロッド
43…ピストン部
44、94…弁部
51…第1室
52…第2室
53…パイロットポート
56…第1永久磁石
57…第2永久磁石
61…第1磁石保持部
62…第1衝突回避部としての第1フランジ部
71…第2磁石保持部
72…第2衝突回避部としての第2ランジ部
A1…第1方向
A2…第2方向
M1、M2…マニホールドブロック
t3…厚さの総和