(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-22
(45)【発行日】2023-03-03
(54)【発明の名称】共重合ポリエステル、水分散体およびこれを用いた水性塗料
(51)【国際特許分類】
C09D 167/00 20060101AFI20230224BHJP
C08G 63/127 20060101ALI20230224BHJP
C08L 67/02 20060101ALI20230224BHJP
C09D 7/41 20180101ALI20230224BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20230224BHJP
【FI】
C09D167/00
C08G63/127
C08L67/02
C09D7/41
C09D7/61
(21)【出願番号】P 2020518204
(86)(22)【出願日】2019-04-10
(86)【国際出願番号】 JP2019015558
(87)【国際公開番号】W WO2019216093
(87)【国際公開日】2019-11-14
【審査請求日】2022-03-29
(31)【優先権主張番号】P 2018089319
(32)【優先日】2018-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】岩下 祐司
(72)【発明者】
【氏名】三上 忠彦
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-143891(JP,A)
【文献】特表2005-506420(JP,A)
【文献】特開2016-069627(JP,A)
【文献】米国特許第05880223(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/00-63/91
C08L 67/00-67/08
C09D 167/00
C09D 7/41
C09D 7/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分散体(B)を含み、さらに架橋剤(C)としてのアミノ樹脂、顔料(D)および添加剤(E)からなる群より選ばれる1種以上を含有する水性塗料であって、水分散体(B)が、共重合ポリエステル(A)、有機溶媒および水を含有し、共重合ポリエステル(A)が、多価カルボン酸成分と多価アルコール成分を共重合成分とし、全多価カルボン酸成分を100モル%としたときに、芳香族多価カルボン酸成分および脂環族多価カルボン酸成分の合計が100モル%であり、かつ全多価アルコール成分を100モル%としたときに、二つの水酸基が炭素数5以下のアルキレン基で結合しており、前記アルキレン基の側鎖として炭素数2以上のアルキル基を有するグリコール成分(a)を10~40モル%含み、
前記グリコール成分(a)が、一般式(1)で表され、共重合ポリエステル(A)のガラス転移温度が-10~20℃であり、共重合ポリエステル(A)の酸価が150~400当量/トンである、水性塗料。
[化1]
(一般式(1)中、R
1
およびR
2
は、それぞれ独立に直鎖または分岐の炭素数1~10のアルキル基であり、nは1~3の整数である。複数のR
1
およびR
2
は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。ただし、R
1
およびR
2
のいずれか一方の炭素数は2以上である。)
【請求項2】
前記一般式(1)が2,2-ブチルエチルプロパンジオールである請求項
1に記載の水性塗料。
【請求項3】
共重合ポリエステル(A)の数平均分子量が5000~13000の範囲である請求項1
または2に記載の水性塗料。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれかに記載の水性塗料が塗装された金属塗装板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共重合ポリエステル、水分散体およびこれを用いた水性塗料に関する。更に詳しくは、水分散体の保存安定性と加工性、耐水性に優れる樹脂および水性塗料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
共重合ポリエステルはコーティング剤、インキおよび接着剤等に用いられる樹脂組成物の原料として広く使用されており、一般に多価カルボン酸と多価アルコールから構成される。多価カルボン酸と多価アルコールの選択と組合せによる柔軟性や、分子量の高低を自由にコントロールできるため、コーティング剤用途や接着剤用途をはじめ、様々な用途で広く使用されている。
【0003】
その中でも樹脂成分を水媒体中に分散させた樹脂水分散体をバインダー成分として用いた水性塗料においては、樹脂骨格中に酸価を付与した共重合ポリエステルが多く使用されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、水性媒体中に疎水性のポリエステル樹脂を安定的に分散するためには多くの酸価を付与する必要があり、塗膜の親水性が高くなってしまうため、屋外環境を想定した耐水性において問題があった。
【0006】
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものである。すなわち、本発明の目的は、水性塗料に配合する樹脂成分として有効な共重合ポリエステルおよび水分散体を提供することであり、更には長期間の湿潤下への暴露を想定した条件での基材への耐水密着性を有し、また、高分子量ポリエステルと同等の加工性(高屈曲性)を有し、さらに硬度に優れる塗膜を形成可能な塗料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討した結果、以下に示す手段により、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、以下の構成からなる。
【0008】
多価カルボン酸成分と多価アルコール成分を共重合成分とする共重合ポリエステルであって、全多価カルボン酸成分を100モル%としたときに、芳香族多価カルボン酸成分および脂環族多価カルボン酸成分の合計が100モル%であり、かつ全多価アルコール成分を100モル%としたときに、二つの水酸基が炭素数5以下のアルキレン基で結合しており、前記アルキレン基の側鎖として炭素数2以上のアルキル基を有するグリコール成分(a)を10~40モル%含み、ガラス転移温度が-10~20℃であり、酸価が150~400当量/トンである共重合ポリエステル(A)。
【0009】
二つの水酸基が炭素数5以下のアルキレン基で結合しており、前記アルキレン基の側鎖として炭素数2以上のアルキル基を有するグリコール成分(a)は、一般式(1)で表される構造を有することが好ましく、より好ましくは2,2-ブチルエチルプロパンジオールである。
【化1】
(一般式(1)中、R
1およびR
2は、それぞれ独立に直鎖または分岐の炭素数1~10のアルキル基であり、nは1~3の整数である。複数のR
1およびR
2は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。ただし、R
1およびR
2のいずれか一方の炭素数は2以上である。)
【0010】
共重合ポリエステル(A)の数平均分子量は5000~13000の範囲であることが好ましい。
【0011】
前記の共重合ポリエステル(A)、有機溶媒および水を含有する水分散体(B)。さらに架橋剤(C)、顔料(D)および添加剤(E)からなる群より選ばれる1種以上を含有する水性塗料。前記水性塗料が塗装された金属塗装板。
【発明の効果】
【0012】
本発明の共重合ポリエステルを用いた水性塗料は、高硬度、加工性(屈曲性)、耐水密着性および良好な保存安定性を発揮する。このため、金属やプラスチック基材に塗布する水性塗料に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳述する。
【0014】
<共重合ポリエステル(A)>
本発明の共重合ポリエステル(A)を用いた水性塗料は優れた硬度、加工性および耐水密着性を発揮する。このため、コーティング後に屋外環境下に曝されるような水性塗料に好適であり、本発明の共重合ポリエステル(A)を用いて製造された製品は高硬度且つ、高屈曲性、高耐水性を有する塗膜が得られる。
【0015】
本発明の共重合ポリエステル(A)は、多価カルボン酸成分と多価アルコール成分との重縮合物によって得ることのできる化学構造からなるものであることが好ましく、多価カルボン酸成分と多価アルコール成分とはそれぞれ1種または2種以上の選択された成分からなるものであることが好ましい。
【0016】
本発明の共重合ポリエステル(A)において、多価カルボン酸成分としては、芳香族多価カルボン酸または脂環族多価カルボン酸であることが好ましく、芳香族ジカルボン酸または脂環族ジカルボン酸であることがより好ましい。全多価カルボン酸成分における芳香族多価カルボン酸および脂環族多価カルボン酸の共重合量の合計が100モル%であることが必要である。共重合成分として芳香族多価カルボン酸成分または脂環族多価カルボン酸成分の合計を100モル%とすることで水分散体の保存安定性が良好となる。
【0017】
本発明の共重合ポリエステル(A)を構成する芳香族ジカルボン酸としては、特に限定されないが、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジカルボキシビフェニル、5-ナトリウムスルホイソフタル酸などを使用することができる。なかでもテレフタル酸、イソフタル酸が好ましく、イソフタル酸がより好ましい。
【0018】
本発明の共重合ポリエステル(A)を構成する脂環族ジカルボン酸としては、特に限定されないが、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、水素添加ナフタレンジカルボン酸などを使用することができる。なかでも1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸無水物が好ましい。
【0019】
全多価カルボン酸成分100モル%のうち、芳香族多価カルボン酸成分が60モル%以上であることが好ましく、より好ましくは70モル%以上であり、さらに好ましくは80モル%以上であり、特に好ましくは90モル%以上であり、100モル%でも差し支えない。芳香族多価カルボン酸を過剰量使用することで共重合ポリエステル(A)を用いて製造した塗膜の硬度が高くなる傾向にある。
【0020】
本発明の共重合ポリエステル(A)において、全多価アルコール成分を100モル%としたときに、二つの水酸基が炭素数5以下のアルキレン基で結合しており、前記アルキレン基の側鎖として炭素数3以上のアルキル基を有するグリコール成分(a)(以下、単に「グリコール成分(a)」ともいう。)が10~40モル%共重合されていることが必要である。前記二つの水酸基が結合しているアルキレン基の炭素数は1以上であればよく、好ましくは2以上であり、さらに好ましくは3以上である。また、アルキレン基の炭素数は4以下であることが好ましい。アルキレン基の炭素数を前記範囲内とすることで塗膜の硬度が良好となる。前記アルキレン基の側鎖であるアルキル基の炭素数は4以上であることが好ましく、より好ましくは5以上であり、さらに好ましくは6以上である。アルキレン基の炭素数を前記値以上とすることで耐水性が良好となる。アルキル基の炭素数の上限は特に限定されないが、20以下が好ましく、より好ましくは15以下であり、さらに好ましくは10以下である。アルキレン基の炭素数を前記値以下とすることで水中への分散性が良好となる。
【0021】
グリコール成分(a)の共重合量は、全多価アルコールを100モル%としたときに、10モル%以上が必要であり、12モル%以上が好ましく、15モル%以上がより好ましい。また、40モル%以下が必要であり、38モル%以下が好ましく、35モル%以下がより好ましく、30モル%以下がさらに好ましい。前記下限値以上とすることで共重合ポリエステル(A)の耐水性および水分散体の保存安定性が良好となり、前記上限値以下とすることで基材への加工性が良好となる。
【0022】
グリコール成分(a)は、一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。
【化1】
一般式(1)中、R
1およびR
2は、それぞれ独立に直鎖または分岐の炭素数1~10のアルキル基であることが好ましく、R
1およびR
2ともに直鎖の素数1~10のアルキル基であることが好ましい。好ましい炭素数は2以上であり、より好ましくは3以上であり、さらに好ましくは4以上である。また、9以下が好ましく、より好ましくは8以下であり、さらに好ましくは6以下である。ただし、R
1およびR
2のいずれもが炭素数1になることはなく、R
1およびR
2のいずれか一方の炭素数は2以上であることが好ましい。R
1およびR
2の炭素数の合計は3以上であることが好ましく、より好ましくは4以上であり、さらに好ましくは5以上である。前記値以上とすることで耐水性が良好となる。また、R
1およびR
2の炭素数の合計は20以下であることが好ましく、より好ましくは15以下であり、さらに好ましくは10以下である。複数のR
1およびR
2は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、好ましくはR
1の炭素数が1~3であり、R
2の炭素数が3~5である、nは1~3の整数であることが好ましい。前記値以下とすることで塗膜の硬度が良好となる。
【0023】
一般式(1)で表されるグリコール成分としては、特に限定されないが、2-メチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-n-プロピル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジn-プロピル-1,3-プロパンジオール、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール(以下、BEPGともいう。)、2,2-ジn-ブチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール等が挙げられる。これらを単独でまたは2種以上併用して使用することができる。なかでも耐水性の向上効果の高い2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールが好ましい。
【0024】
本発明の共重合ポリエステル(A)を構成する多価アルコールとしては、グリコール成分(a)以外の多価アルコール成分が含まれていても差し支えない。グリコール成分(a)以外の多価アルコール成分としては特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1-メチル-1,8-オクタンジオール等の脂肪族グリコール成分が使用でき、これらの内から、1種、または2種以上を使用できる。また、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール等の脂環族グリコール成分、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレンエーテルグリコール成分も使用できる。また3価以上の多価アルコールを用いることもでき、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、α-メチルグルコース、マンニトール、ソルビトールが挙げられる。好ましくはエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノールである。
【0025】
本発明の共重合ポリエステル(A)のガラス転移温度は-10~20℃の範囲であることが必要である。ガラス転移温度を-10~20℃の範囲にすることで、良好な硬度と加工性を両立することができる。好ましくは-9℃以上であり、より好ましくは-8℃以上である。ガラス転移温度を前記下限値以上とすることで塗膜の硬度が良好となる。また、18℃以下が好ましく、より好ましくは15℃以下である。ガラス転移温度を前記上限値以下とすることで塗膜の加工性が良好となる。
【0026】
本発明の共重合ポリエステル(A)には、3価以上の多価カルボン酸成分および/または3価以上の多価アルコール成分を共重合しても良い。3価以上の多価カルボン酸成分としては、例えばトリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメシン酸、無水トリメリット酸(TMA)、無水ピロメリット酸(PMDA)などの芳香族カルボン酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸などの脂肪族カルボン酸などが挙げられ、これらを1種、又は2種以上の使用が可能である。3価以上の多価カルボン酸成分の共重合量は、全多価カルボン酸成分を100モル%としたときに、5モル%以下であることが好ましく、より好ましくは3モル%以下であり、さらに好ましくは1モル%以下である。3価以上の多価アルコール成分としては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、α-メチルグルコース、マンニトール、ソルビトールが挙げられ、これらより1種、又は2種以上の使用が可能である。3価以上の多価カルボン酸成分の共重合量は、全多価カルボン酸成分を100モル%としたときに、5モル%以下であることが好ましく、より好ましくは3モル%以下であり、さらに好ましくは1モル%以下である。3価以上の多価カルボン酸成分および/または3価以上の多価アルコール成分の共重合量が多すぎると、共重合ポリエステル(A)重合時にゲル化してしまうことがある。
【0027】
本発明の共重合ポリエステル(A)の数平均分子量は5000以上、13000以下であることが好ましく、6000以上、10000以下であることがより好ましい。数平均分子量を前記範囲内とすることで塗膜の加工性および耐水密着性が良好となる。さらに塗料にした際の粘度が良好で取り扱いが容易となる。
【0028】
本発明の共重合ポリエステル(A)の還元粘度は0.20dl/g以上であることが好ましく、0.25dl/g以上であることがより好ましい。また、0.45dl/g以下であることが好ましく、0.40dl/g以下であることがより好ましく、0.37dl/g以下であることがさらに好ましい。還元粘度を前記下限値以上とすることで塗膜の屈曲性が良好となる。また、前記上限値以下とすることで有機溶剤を含む水中に分散した際の粘度が良好となり、取り扱いが容易となる。
【0029】
本発明の共重合ポリエステル(A)を製造する重合縮合反応の方法としては、例えば、1)多価カルボン酸と多価アルコールを任意の触媒存在下で加熱し、脱水エステル化工程を経て、脱多価アルコール・重縮合反応を行う方法、2)多価カルボン酸のアルコールエステル体と多価アルコールを任意の触媒存在下で加熱、エステル交換反応を経て、脱多価アルコール・重縮合反応を行う方法、などがある。前記1)2)の方法において、酸成分の一部またはすべてを酸無水物に置換しても良い。
【0030】
本発明の共重合ポリエステル(A)を製造する際には、従来公知の重合触媒、例えば、テトラ-n-ブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、チタンオキシアセチルセトネートなどのチタン化合物、三酸化アンチモン、トリブトキシアンチモンなどのアンチモン化合物、酸化ゲルマニウム、テトラ-n-ブトキシゲルマニウムなどのゲルマニウム化合物、その他、マグネシウム、鉄、亜鉛、マンガン、コバルト、アルミニウムなどの酢酸塩などを使用することが出来る。これらの触媒は1種、または2種以上を併用することができる。
【0031】
本発明の共重合ポリエステル(A)の酸価は150~400当量/トンであることが必要である。共重合ポリエステル(A)の樹脂酸価を150~400当量/トンとすることによって水分散性、基材密着性および架橋性を高める効果が期待できる。酸価は160当量/トン以上が好ましく、より好ましくは180当量/トン以上であり、さらに好ましくは200当量/トン以上である。酸価を前記下限値以上とすることで共重合ポリエステル(A)の水分散体の安定性が良好となる。また、380当量/トン以下が好ましく、より好ましくは350当量/トン以下である。酸価を前記上限値以下とすることで架橋性や耐水性が良好なり、耐久性を要求される用途にも好適に使用できる。
【0032】
本発明の共重合ポリエステル(A)の酸価を上げる方法としては、例えば、(1)重縮合反応終了後に、3価以上の多価カルボン酸および/または3価以上の無水多価カルボン酸を添加し、反応させる方法(酸付加)や、(2)重縮合反応時に、熱、酸素、水などを作用させ、意図的に樹脂変質を行う、などの方法があり、これらを任意で行うことが出来る。前記酸付加方法での酸付加に用いられる多価カルボン酸無水物としては、特に限定されないが、例えば、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水コハク酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、3,3,4,4-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3,4,4-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテートなどが挙げられ、これらを1種、又は2種以上の使用が可能である。好ましくは無水トリメリット酸または無水ピロメリット酸である。
【0033】
<水分散体(B)>
水分散体(B)は、前記共重合ポリエステル(A)、有機溶媒および水を含有する組成物であり、好ましくは共重合ポリエステル(A)を有機溶媒および水に分散した組成物である。有機溶剤としては親水性を有するものが好ましく、メタノール、エタノール、イソプロパノール、2-エチルヘキサノールなどのアルコール類、n-ブチルセロソルブ、t-ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール等のグリコール類があげられる。また、水分散体としたときに分離しないものであれば、親水性の低いシクロヘキサノン、イソホロンなどのケトン類なども使用することができ、溶解性、蒸発速度(乾燥性)などを考慮して任意に選択、配合される。なかでもエーテル類が好ましく、グリコールエーテル系がより好ましい。
【0034】
本発明の共重合ポリエステル(A)は水への分散性を向上させるために、共重合ポリエステル(A)中の酸成分を塩基成分で中和し、中和塩とすることができる。使用できる塩基成分として特に限定されないが、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属塩、アンモニア、モノエタノールアミン、トリエチルアミン、ジメチルアミノエタノール、ジアザビシクロウンデセン等の有機アミン等から自由に選択できる。
【0035】
<水性塗料>
水性塗料は、前記水分散体(B)を含み、さらに架橋剤(C)、顔料(D)および添加剤(E)からなる群より選ばれる1種以上を含有する組成物である。好ましくは水分散体(B)、架橋剤(C)、顔料(D)および添加剤(E)からなる群より選ばれる2種以上を含有する組成物であり、より好ましくは水分散体(B)、架橋剤(C)、顔料(D)および添加剤(E)を含有する組成物である。
【0036】
<架橋剤(C)>
本発明の共重合ポリエステル(A)とともに使用することができる架橋剤(C)は、共重合ポリエステル(A)に対して架橋反応を生じるものであれば特に限定されない。好ましい例としてイソシアネート化合物、エポキシ樹脂、アミノ樹脂(アルキルエーテル化ホルムアルデヒド樹脂の一般名称)、フェノール樹脂などを挙げることができ、これらより1種、または2種以上を任意に選択して使用できる。
【0037】
イソシアネート化合物としては、特に限定されないが、芳香族、脂環族、脂肪族のポリイソシアネート化合物があり、低分子量タイプ、高分子量タイプのいずれでもよい。例えばテトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、或いはこれらイソシアネート化合物の3量体、および前記したイソシアネート化合物とエチレングリコール、トリメチロールプロパン、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリアミド類などの活性水素化合物と反応させて得られる末端イソシアネート化合物が挙げられる。これらは1種、または2種以上の併用ができる。
【0038】
また、イソシアネート化合物としてブロック化イソシアネート化合物を使用すると、水性塗料のポットライフを長くすることができる。ブロック化イソシアネート化合物のブロック剤としては例えば、フェノール、チオフェノール、メチルチオフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール、ニトロフェノール、クロロフェノール等のフェノール類、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、t-ブタノール、t-ペンタノール等のアルコール類、ε-カプロラクタム等のラクタム類、その他芳香族アミン類、イミド類、アセチルアセトン、アセト酢酸エステル、マロン酸エチルエステルなどの活性メチレン化合物、メルカプタン類、イミン類、尿素類、等を挙げることができる。ブロック化イソシアネート化合物は前記イソシアネート化合物とブロック化剤とを従来公知の方法により反応させて得られ、1種、又は2種以上を併用して使用できる。
【0039】
エポキシ樹脂としては、例えばビスフェノール-Aのグリシジルエーテル及びそのオリゴマー、オルトフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、p-ヒドロキシ安息香酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、エチレングリコールジグリシジルエステル、プロピレングリコールジグリシジルエステル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエステル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエステル、およびポリアルキレングリコールジグリシジルエステル類、トリメリット酸トリグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート、1,4-グリシジルオキシベンゼン、ジグリシジルプロピレン尿素、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールエタングリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、グリセロールアルキレンオキシド付加物のトリグリシジルエーテルなどを挙げることが出来る。これらは1種、または2種以上を併用して使用することができる。
【0040】
アミノ樹脂としては、特に限定されないが、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミン、ジシアンジアミドなどのアミノ成分とホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒドなどのアルデヒド成分との反応によって得られるメチロール化アミノ樹脂が挙げられる。このメチロール化アミノ樹脂のメチロール基を炭素原子1~6のアルコールによってエーテル化したものもこのアミノ樹脂に含まれる。これらを単独で、または2種以上併用して使用することができる。
【0041】
フェノール樹脂としては、レゾール型フェノール樹脂を使用することができる。レゾール型フェノール樹脂としては、例えばフェノール、m-クレゾール、m-メチルフェノール、3,5-キシレノール、m-メトキシフェノール、o-クレゾール、p-クレゾール、p-tert-ブチルフェノール、p-エチルフェノール、2,3-キシレノール、2,5-キシレノールビスフェノール-A、ビスフェノール-F等を原料とするフェノール樹脂を挙げることができ、これらを単独でまたは2種以上を併用して使用することができる。
【0042】
架橋剤(C)は、共重合ポリエステル(A)100質量部に対して、1質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましく、10質量部以上であることがさらに好ましい。また、50質量部以下であることが好ましく、40質量部以下であることがより好ましく、30質量部以下であることがさらに好ましい。前記下限値以上とすることで水性塗料から得られる塗膜の架橋が十分となり、塗膜の堅さや堅牢さ、密着強度が良好となる。また、前記上限値以下とすることで塗膜の屈曲性が良好となる。
【0043】
本発明では、共重合ポリエステル(A)と架橋剤(C)との架橋反応に寄与する触媒をさらに使用することができる。例えば酸触媒として、p-トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、カンファースルホン酸等の有機スルホン酸化合物、リン酸化合物、およびこれらのアミン中和体を使用することが出来る。塩基触媒としてはアミン化合物を使用することが出来る。金属触媒としては、各種金属の有機酸塩、ハロゲン化塩、硝酸塩、硫酸塩、有機配位子化合物などが使用できる。これら触媒は架橋剤(C)の硬化挙動に合わせて1種、または2種以上を併用できる。
【0044】
<顔料(D)>
本発明の共重合ポリエステル(A)は、顔料(D)とともに使用することができる。顔料(D)の具体例としては特に限定されないが、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、酸化クロム、クロム酸塩、カオリングレー、カーボンブラック、酸化鉄、タルク、マイカ、リン酸亜鉛、リン酸鉄、リン酸アルミニウム、亜リン酸亜鉛、トリポリリン酸アルミニウム、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸アルミニウム、モリブデン酸バリウム、酸化バナジウム、ストロンチウムクロメート、ジンククロメート、カルシウムシリケート、水分散シリカ、ヒュームドシリカなどの無機顔料やフタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、カルバゾールジオキサジンバイオレット、アントラピリミジンイエロー、イソインドリノンイエロー、インダスレンブルーなどの有機顔料を挙げることができる。これらを1種または2種以上添加することで、着色、防食、耐久性の向上、といった効果が期待できる。
【0045】
顔料(D)は、共重合ポリエステル(A)100質量部に対して、5質量部以上であることが好ましく、50質量部以上であることがより好ましく、100質量部以上であることがさらに好ましい。また、300質量部以下であることが好ましく、250質量部以下であることがより好ましく、200質量部以下であることがさらに好ましい。顔料(D)を前記下限値以上とすることで、目的としている着色や防食等の効果を奏することができる。また、前記上限値以下とすることで塗膜の屈曲性の低下を防ぐことができる。
【0046】
<添加剤(E)>
本発明の共重合ポリエステル(A)は添加剤(E)を必要に応じて使用することができる。添加剤(E)の具体例としては特に限定されないが、アミン化合物などの塩基触媒、分散剤、消泡剤、レベリング剤、熱劣化防止剤、紫外線吸収剤、粘度調整剤、ワックスなどが挙げられる。これらを1種または2種以上使用することができる。添加剤(E)は塗膜物性に影響を与えない程度であれば、自由に配合することが出来る。好ましくは、共重合ポリエステル(A)100質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下である。
【0047】
<金属塗装板>
本発明の金属塗装板は、金属板の少なくとも片面に、本発明の水性塗料を塗布し、乾燥することにより得られる塗膜を有するものである。塗装方法について、特に限定はされないが、ロールコーター塗装、カーテンフローコーター塗装、エアースプレー塗装、静電スプレー塗装、スクリーン印刷等を取ることができる。
また、金属板としては、特に限定されないが、例えば熱延伸鋼板、電気亜鉛メッキ鋼板、合金メッキ鋼板、アルミニウム亜鉛合金メッキ鋼板、アルミニウム板、錫メッキ鋼板、ステンレス鋼板、銅板、銅メッキ鋼板、ティンフリースチール、ニッケルメッキ鋼板、極薄錫メッキ鋼板、クロム処理鋼板などの金属板が好ましい。
【0048】
塗膜の膜厚は5μm以上であることが好ましく、より好ましくは10μm以上である。また、50μm以下であることが好ましく、より好ましくは30μm以下である。前記範囲内とすることで本発明の効果を損なうことなく実用的に使用することができる。
【実施例】
【0049】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、本実施例および比較例において、単に部とあるのは質量部を示すこととする。
【0050】
(1)共重合ポリエステル(A)の組成の測定
400MHzの1H-核磁気共鳴スペクトル装置(以下、NMRと略記することがある)を用い、共重合ポリエステル(A)を構成する多価カルボン酸成分、多価アルコール成分のモル比定量を行った。溶媒には重クロロホルムを使用した。なお、酸後付加により共重合ポリエステルの酸価を上げた場合には、酸後付加に用いた酸成分以外の酸成分の合計を100モル%として、各成分のモル比を算出した。
【0051】
(2)共重合ポリエステル(A)の数平均分子量の測定
試料(共重合ポリエステル(A))4mgを、4mLのテトラヒドロフランに溶解した後、孔径0.2μmのポリ四フッ化エチレン製メンブランフィルターでろ過した。これを試料溶液とし、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で分析を行った。装置はTOSOH HLC-8220、検出器は示差屈折率検出器、移動相はテトラヒドロフランを用い、流速1mL/分、カラム温度40℃で測定した。カラムは昭和電工製KF-802、804L、806Lを用いた。分子量標準には単分散ポリスチレンを使用し、数平均分子量は標準ポリスチレン換算値とし、分子量1000未満に相当する部分を省いて算出した。
【0052】
(3)ガラス転移温度の測定
示差走査型熱量計(SII社、DSC-200)を用いて測定した。試料(共重合ポリエステル(A))5mgをアルミニウム抑え蓋型容器に入れ密封し、液体窒素を用いて-50℃まで冷却した。次いで150℃まで20℃/分の昇温速度にて昇温させ、昇温過程にて得られる吸熱曲線において、吸熱ピークが出る前(ガラス転移温度以下)のベースラインの延長線と、吸熱ピークに向かう接線(ピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの間での最大傾斜を示す接線)との交点の温度をもって、ガラス転移温度(Tg、単位:℃)とした。
【0053】
(4)酸価の測定
試料(共重合ポリエステル(A))0.2gを精秤しクロロホルム40mlに溶解した。次いで、0.01Nの水酸化カリウムのエタノール溶液で滴定を行った。指示薬にはフェノールフタレインを用いた。試料に対して、水酸化カリウム当量を求め、測定値を試料1トンあたりの当量に換算し、単位は当量/トンとした。
【0054】
(5)還元粘度ηsp/c(dl/g)の測定
試料(共重合ポリエステル(A))0.1±0.005gおよびフェノール/テトラクロロエタン(重量比6/4)の混合溶媒25ccに溶かし、ウベローデ粘度管を用いて30℃で測定した。
【0055】
以下、本発明の共重合ポリエステル(A)、および比較例となる共重合ポリエステルの製造例を示す。
【0056】
共重合ポリエステル(a1)の製造例
攪拌機、コンデンサー、温度計を具備した反応容器にテレフタル酸323部、イソフタル酸323部、BEPG273部、1,5-ペンタンジオール329部、触媒としてオルトチタン酸テトラブチルを全酸成分に対して0.03モル%仕込み、160℃から220℃まで4時間かけて昇温、脱水工程を経ながらエステル化反応を行った。次に重縮合反応工程は、系内を20分かけて5mmHgまで減圧し、さらに250℃まで昇温を進めた。次いで、0.3mmHg以下まで減圧し、60分間の重縮合反応を行った。その後、220℃まで冷却し、無水トリメリット酸30部を投入し、30分間反応させた。これを取り出した。得られた共重合ポリエステル(a1)はNMRによる組成分析の結果、モル比でテレフタル酸/イソフタル酸/BEPG/1,5-ペンタンジオール=50/50/30/70[モル比]であった。また、数平均分子量は6000、ガラス転移温度は13℃、酸価は300当量/トンであった。結果を表1に記載した。
【0057】
共重合ポリエステル(a2)~(a18)の製造例
共重合ポリエステル(a1)の製造例に準じ、原料の種類と配合比率を変更して、共重合ポリエステル(a2)~(a18)を合成した。結果を表1に記載した。
【0058】
水分散体(a1)の製造例
上記共重合ポリエステル(a1)500部をノルマルブチルセロソルブ188部に溶解し、ジメチルアミノエタノール13部を添加後、イオン交換水549部を添加して、水分散体(a1)を得た。結果を表1に記載した。
【0059】
水分散体(a2)~(a18)の製造例
水分散体(a1)の製造例に準じ、原料の種類と配合比率を変更して、本発明の水分散体(a2)~(a18)を製造した。結果を表1に記載した。
【0060】
【0061】
水分散体の評価(保存安定性)
ポリエステル水分散体(a1)~(a18)を5℃、および25℃下に3か月間静置し、各温度での溶液粘度の変化を確認した。粘度の上昇が小さいほど保存安定性は良好である。溶液粘度の測定は、ポリエステル分散体をガラス容器に充填し、25℃下で、東機産業社製BL型粘度計で測定した。回転数は30rpmとした。
評価基準
溶液粘度の変化幅=|静置後の溶液粘度/静置前の溶液粘度|
○:溶液粘度の変化幅≦100%
△:溶液粘度の変化幅>100%
×:溶液が固化した。
【0062】
実施例1(水性塗料(A1)の調製)
酸化チタン(CR-93:石原産業製)100部、イオン交換水 179部、分散剤(DISPERBYK(登録商標)-190:BYK社)10部、ガラスビーズ289部をガラス容器に入れ、しんとう機にて6時間分散し、顔料ペースト(X)を得た。次いで、水分散体(a1)100部、メラミン樹脂(サイメル(登録商標)327:オルネクス社)11部、顔料ペースト(X)140部、レベリング剤(BYK(登録商標)-381:BYK社)0.3部を容器に配合し、撹拌することで水性塗料(A1)を得た。
【0063】
実施例2~9、比較例1~7(水性塗料(A2)~(A18)の調製)
水性塗料(A1)と同様の方法にて、本発明の実施例または比較例である水性塗料(A2)~(A18)を得た。
【0064】
金属塗装板の評価
(試験片の作成)
0.5mm厚のボンデ(登録商標)鋼板に前記実施例及び比較例で得られた水性塗料を乾燥後の膜厚が12μmとなる様に塗装し、250℃で50秒間乾燥し、金属塗装板の試験片を得た。
【0065】
(塗膜硬度)
前記金属塗装板試験片の塗装面に対し鉛筆の芯を45度の角度で当て、前方向に滑らせた。鉛筆の芯の堅さは硬い方から、HB、B、2B、3B、4Bを用い、傷がつかない最高硬度を評価した。硬度が高いほど塗膜の硬度は高く、傷がつきにくい。
評価基準
○:B以上
△:2B~3B
×:4B以下
【0066】
(加工性)
前記金属塗装板試験片を25℃下で塗膜面を外側に180°折り曲げ試験を行い、目視にて、塗膜の割れを確認した。例えば、2Tとは、金属板塗装板試験片と同じ厚さの金属板を2枚挟んで折り曲げた際に塗膜の割れが発生しないことである。数字が小さいほど屈曲性が良好である。
評価基準
○:1T以上
△:2~3T
×:4T以下
【0067】
(耐水密着性)
前記金属塗装板試験片の端部をテープで保護し、95℃温水中に24時間浸漬させた。浸漬後、取り出した金属塗装板試験片上の塗膜に、素地に達するように1mm間隔の碁盤目状にクロスカットを入れ、大きさ1mm×1mmの碁盤目を100個作った。その表面に粘着セロハンテープを貼着し、20℃においてそのテープを急激に剥離した後の碁盤目塗膜の残存数を調べた。
評価基準
◎:塗膜残存マス数80個以上
○:塗膜残存マス数30~79個
△:塗膜残存マス数78~39個
×:塗膜残存マス数38個以下
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の共重合ポリエステル、水分散体、および水性塗料は、保存安定性、硬度、加工性、耐水性に優れ、水性塗料用樹脂として有用である。