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特許7232434心房細動の評価における循環BMP10(骨形成タンパク質10)
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-22
(45)【発行日】2023-03-03
(54)【発明の名称】心房細動の評価における循環BMP10(骨形成タンパク質10)
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20230224BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20230224BHJP
【FI】
G01N33/53 D
C12N15/12 ZNA
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021532521
(86)(22)【出願日】2019-08-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-09
(86)【国際出願番号】 EP2019072042
(87)【国際公開番号】W WO2020035605
(87)【国際公開日】2020-02-20
【審査請求日】2021-04-14
(31)【優先権主張番号】18189551.7
(32)【優先日】2018-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(73)【特許権者】
【識別番号】517079054
【氏名又は名称】アカデミシュ ジーケンハウス マーストリヒト
【氏名又は名称原語表記】ACADEMISCH ZIEKENHUIS MAASTRICHT
(73)【特許権者】
【識別番号】503285519
【氏名又は名称】ユニベルシテイト マーストリヒト
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100187540
【弁理士】
【氏名又は名称】國枝 由紀子
(72)【発明者】
【氏名】カール,ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】カストナー,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ビーンヒューズ-テレン,ウルスラ-ヘンリケ
(72)【発明者】
【氏名】ディートリッヒ,マヌエル
(72)【発明者】
【氏名】ツィーグラー,アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】ショッテン,ウルリヒ
【審査官】小澤 理
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-526087(JP,A)
【文献】国際公開第2018/024905(WO,A1)
【文献】特表2018-518461(JP,A)
【文献】SYEDA, F. et al.,PITX2-dependent gene regulation in atrial fibrillation and rhythm control,The Journal of Physiology,2017年,Vol.595, No.12,p.4019-4026
【文献】TESSARI, A. et al.,Myocardial Pitx2 Differentially Regulates the Left Atrial Identity and Ventricular Asymmetric Remodeling Programs,Circulation Research,2008年,Vol.102, No.7,p.813-822
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/53
G01N 33/68
C12N 15/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における心房細動を評価するための指標を提供する方法であって、
a)対象における血液サンプル、血清サンプル、または血漿サンプルの少なくとも1つにおいて、BMP10型ペプチド(骨形成タンパク質10型ペプチド)の量を決定するステップ、ならびに
b)BMP10型ペプチドの量をBMP10型ペプチドの参照量と比較するステップであって、それによって心房細動を評価するための指標が提供される、ステップ
を含む、方法。
【請求項2】
対象がヒトである、請求項に記載の方法。
【請求項3】
心房細動の評価が心房細動の診断である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
参照量を上回る、BMP10型ペプチドの量が、心房細動に罹患している対象の指標であり、ならびに/または、参照量を下回る、BMP10型ペプチドの量が、心房細動に罹患していない対象の指標である、請求項に記載の方法。
【請求項5】
対象が、心房細動に罹患しており、心房細動の評価が、発作性心房細動と持続性心房細動との区別である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
参照量を上回る、BMP10型ペプチドの量が、持続性心房細動に罹患している対象の指標であり、ならびに/または、参照量を下回る、BMP10型ペプチドの量が、発作性心房細動に罹患している対象の指標である、請求項に記載の方法。
【請求項7】
心房細動の評価が、心房細動に伴う有害事象のリスクの予測である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
心房細動に伴う有害事象が、心房細動の再発および/または脳卒中である、請求項に記載の方法。
【請求項9】
参照量を上回る、BMP10型ペプチドの量が、心房細動に伴う有害事象に罹患するリスクがある対象の指標であり、ならびに/または、参照量を下回る、BMP10型ペプチドの量が、心房細動に伴う有害事象に罹患するリスクがない対象の指標である、請求項またはに記載の方法。
【請求項10】
心房細動の評価が、心房細動のための治療法の評価である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項11】
心房細動の評価を補助する方法であって、
a)対象から得た血液サンプル、血清サンプル、または血漿サンプルの少なくとも1つを提供するステップ、
b)ステップa)で提供された血液サンプル、血清サンプル、または血漿サンプルの少なくとも1つにおいて、BMP10型ペプチド(骨形成タンパク質10型ペプチド)の量を決定するステップ、ならびに
c)BMP10型ペプチドの決定された量についての情報を医師に提供し、それによって心房細動の評価を補助するステップ
を含む、方法。
【請求項12】
心房細動の評価を補助するための方法であって、
a)BMP10型ペプチドについてのアッセイを提供するステップ、ならびに
b)前記アッセイによって得られるまたは得られ得るアッセイ結果を心房細動の評価において使用するためのプロトコルを得るステップ
を含む、方法。
【請求項13】
心房細動を評価するための、コンピューターを利用した方法であって、
a)処理装置で、BMP10型ペプチドの量についての値を受け取るステップであって、BMP10型ペプチドの前記量は、対象から得た血液サンプル、血清サンプル、または血漿サンプルの少なくとも1つにおいて決定されている、ステップ、
b)前記処理装置によって、ステップa)で受け取った1つまたは複数の値を、1つまたは複数の参照と比較するステップ、ならびに
c)比較ステップb)に基づいて心房細動を評価するステップ
を含む、方法。
【請求項14】
(a)ヒト対象から得た血液サンプル、血清サンプル、または血漿サンプルの少なくとも1つにおいて、BMP10型ペプチド(骨形成タンパク質10型ペプチド)の量を決定するステップ、ならびに
(b)BMP10型ペプチドの量をBMP10型ペプチドの参照量と比較するステップであって、それによって心不全を診断するための指標が提供される、ステップ
を含む、心不全を診断するための指標を提供する方法。
【請求項15】
ヒト対象の心不全に起因する入院のリスクを予測するため指標を提供する方法であって、
(a)対象から得た血液サンプル、血清サンプル、または血漿サンプルの少なくとも1つにおいて、BMP10型ペプチド(骨形成タンパク質10型ペプチド)の量を決定するステップ、
(b)BMP10型ペプチドの量を参照量と比較するステップ、ならびに
(c)対象の心不全に起因する入院のリスクを予測するための指標を提供するステップ
を含む、方法。
【請求項16】
ヒト対象の心不全に起因する入院のリスクを予測するための、ヒト対象から得た血液サンプル、血清サンプル、または血漿サンプルの少なくとも1つにおける、
(a)BMP10型ペプチド、および/または
(b)BMP10型ペプチドに特異的に結合する少なくとも1つの作用剤
のインビトロでの使用。
【請求項17】
対象における心房細動を評価するためまたはヒト対象における心不全を診断するための、血液サンプル、血清サンプル、または血漿サンプルの少なくとも1つにおける
i)BMP10型ペプチド、ならびに/または
ii)BMP10型ペプチドに特異的に結合する少なくとも1つの作用剤
のインビトロでの使用。
【請求項18】
作用剤が抗体またはその抗原結合断片である、請求項16または17に記載のインビトロでの使用。
【請求項19】
抗体がモノクローナル抗体である、請求項18に記載のインビトロでの使用。
【請求項20】
対象が50歳以上である、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法、または請求項16~19のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象における心房細動を評価するための方法であって、対象から得たサンプルにおけるBMP10型ペプチドの量を決定するステップ、およびBMP10型ペプチドの量を参照量と比較するステップであって、それによって心房細動が評価される、ステップを含む、方法に関する。さらに、本発明は、対象から得たサンプルにおけるBMP10型ペプチドの決定に基づいて心不全を診断するための方法に関する。さらに、本発明は、対象から得たサンプルにおけるBMP10型ペプチドの決定に基づいて、対象の心不全に起因する入院のリスクを予測するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
心房細動(AF)は、最も一般的なタイプの心臓不整脈であり、高齢者集団の間で最も広く見られる状態の1つである。心房細動は、不規則な心拍を特徴とし、短時間の異常な鼓動で始まることが多く、これは経時的に増大し得、永続的な状態となり得る。推定270万~610万の米国人が、また世界中ではおよそ3300万人が、心房細動を有している(Chugh S.S.ら、Circulation 2014、129:837~47)。
【0003】
心房細動などの心臓不整脈の診断は、典型的には、不整脈の原因の決定および不整脈の分類を伴う。米国心臓病学会(ACC)、アメリカ心臓協会(AHA)、および欧州心臓病学会(ESC)に従った、心房細動の分類のためのガイドラインは、単純性および臨床的関連性に主に基づく。第1のカテゴリーは「初検出AF」と呼ばれる。このカテゴリーの人は、初めてAFと診断されており、未検出のエピソードをこれまでに有していてもいなくてもよい。初検出エピソードは自然に1週間以内に止まるが、その後に別のエピソードが続く場合、カテゴリーは「発作性AF」に変わる。このカテゴリーの患者は最大7日間続くエピソードを有するが、発作性AFのほとんどのケースでは、エピソードは24時間以内に止まる。エピソードが1週間を超えて続く場合、これは「持続性AF」と分類される。このようなエピソードを止めることができず、すなわち、電気的または薬理学的なカルディオバージョンによって止めることができず、1年を超えて続く場合、分類は「永続性AF」に変わる。心房細動は脳卒中および全身性塞栓症の重要な危険因子であるため、心房細動の早期診断が非常に望まれている(Hartら、Ann Intern Med 2007、146(12):857~67;Go ASら、JAMA 2001、285(18):2370~5)。虚血性心疾患の後の脳卒中は、高所得国における障害調整生存年数の低下の原因の、および世界中での死亡の原因の2番目である。脳卒中のリスクを低減させるために、抗凝固療法が最も適切な治療法であると考えられている。
【0004】
心房細動の評価を可能にするバイオマーカーが非常に望まれている。
Latini R.ら(J Intern Med.2011 Feb、269(2):160~71)は、心房細動を有する患者において、様々な循環バイオマーカー(hsTnT、NT-プロBNP、MR-プロANP、MR-プロADM、コペプチン、およびCT-プロエンドセリン-1)を測定した。
【0005】
骨形成タンパク質10(BMP10と略される)は、タンパク質のTGFベータ(トランスフォーミング増殖因子ベータ)スーパーファミリーのリガンドである。このファミリーのリガンドは、様々なTGFベータ受容体を結合して、遺伝子発現を調節するある特定の転写因子の動員および活性化をもたらす。BMP10は、アクチビン受容体様キナーゼ1(ALK1)に結合し、内皮細胞におけるこのキナーゼの機能的アクチベーターであることが示されている(Davidら、Blood.2007、109(5):1953~61)。
【0006】
BMP10は、不活性な前駆体タンパク質(プロBMP10、≒60kDa)として合成され、これはタンパク質分解性の切断によって活性化されて、108アミノ酸からなるグリコシル化されていないC末端ペプチド(≒14kDa、BMP10)および≒50kDaのN末端プロセグメントを生じさせる(Susan-Resigaら、J Biol Chem.2011年7月1日、286(26):22785~94)。双方は構造的に近くに留まり、BMP10のホモ二量体もしくはヘテロ二量体を形成するか、または他のBMPファミリータンパク質と組み合わされている(Yadinら、CYTOGFR 2016、27(2016)13~34)。二量化は、Cys-Cys架橋の形成、または両結合パートナーのC末端ペプチドにおける強力な接着によって生じる。こうして、2つのサブユニットからなる構造が形成される。
【0007】
BMP10が心筋細胞の増殖および心臓サイズの調節を含む心血管の発生、動脈管の閉塞、血管新生、ならびに心室の肉柱形成において役割を有することが示されている。
組織修復の調節に関与することで、可溶性BMP10は、組織線維症に、また心血管疾患に関与する診断標的および処置標的であることが分かっている(例えば、US2013209490を参照されたい)。BMP10の関与は、血管線維症および心臓線維症において記載されている。
【0008】
US2012/0213782は、BMP10プロペプチドが心臓障害の処置に使用され得ることを開示している。
BMP10の全体的な役割は、血管リモデリングの発生調節にある(Ricardら、Blood.2012年6月21日、119(25):6162~6171)。さらに、BMP10は心臓発生の因子であり(Huangら、J Clin Invest.2012、122(10):3678~3691)、心筋梗塞の際に心筋細胞の増殖を誘発する(Sunら、J Cell Biochem.2014、115(11)_1868~1876)。BMP10はまた、内皮細胞に由来することも記載されている(Jiangら、JBC 2016、291(6):2954~2966)。
【0009】
トランスクリプトーム解析は、健康な状態では、BMP10のmRNAが心臓の右心房および右心耳において強力に発現されることを明らかにしている。このmRNAは左心耳よりも右心耳において主に発現する(Kahrら、Plos ONE、2010、6(10):e26389)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
これまで、循環BMP10型ペプチドは心房細動に関連付けられていない。
心房細動の診断、心房細動を有する患者のリスク層別化(脳卒中の発症など)、心房細動の重症度の評価、および心房細動を有する患者における治療法の評価を含む、心房細動の評価のための、信頼性のある方法が必要とされている。
【0011】
本発明の根底にある技術的課題は、前述の要求に応じるための方法を提供することと見なされてよい。技術的課題は、特許請求の範囲においておよび本明細書の以下において特徴付けされる実施形態によって解決される。
【0012】
有利なことに、本発明の研究の流れの中で、対象から得たサンプルにおけるBMP10型ペプチドの量の決定が、心房細動の改善された評価を可能にすることが分かった。本発明によって、対象が心房細動に罹患しているかどうか、または心房細動に伴う脳卒中に罹患するリスクがあるかどうかを例えば診断することができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、対象における心房細動を評価するための方法であって、
a)BMP10型ペプチド(骨形成タンパク質10型ペプチド)の量、ならびに場合によって、ナトリウム利尿ペプチド、ESM-1(エンドカン)、Ang2(アンジオポエチン2)、およびFABP3(脂肪酸結合タンパク質3)からなる群から選択される少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量を決定するステップ、ならびに
b)BMP10型ペプチドの量をBMP10型ペプチドの参照量と比較し、および場合によって、少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量を前記少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの参照量と比較するステップであって、それによって心房細動が評価される、ステップ
を含む、方法に関する。
【0014】
本発明はさらに、心房細動の評価を補助する方法であって、
a)対象から得た少なくとも1つのサンプルを提供するステップ、
b)ステップa)で提供された少なくとも1つのサンプルにおいて、BMP10型ペプチド(骨形成タンパク質10型ペプチド)の量、ならびに場合によって、ナトリウム利尿ペプチド、ESM-1(エンドカン)、Ang2、およびFABP3(脂肪酸結合タンパク質3)からなる群から選択される少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量を決定するステップ、ならびに
c)BMP10型ペプチドの決定された量についての、および場合によって、少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの決定された量についての情報を医師に提供し、それによって心房細動の評価を補助するステップ
を含む、方法に関する。
【0015】
さらに、本発明は、心房細動の評価を補助するための方法であって、
a)BMP10型ペプチドについてのアッセイ、ならびに場合によって、ナトリウム利尿ペプチド、ESM-1(エンドカン)、Ang2、およびFABP3(脂肪酸結合タンパク質3)からなる群から選択されるさらなるバイオマーカーについての少なくとも1つのさらなるアッセイを提供するステップ、ならびに
b)前記アッセイによって得られるまたは得られ得るアッセイ結果を心房細動の評価において使用するための指示を提供するステップ
を含む、方法を検討する。
【0016】
同様に本発明に包含されるものは、心房細動を評価するための、コンピューターを利用した方法であって、
a)処理装置で、BMP10型ペプチドの量についての値、ならびに場合によって、ナトリウム利尿ペプチド、ESM-1(エンドカン)、Ang2、およびFABP3(脂肪酸結合タンパク質3)からなる群から選択される少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量についての少なくとも1つのさらなる値を受け取るステップであって、BMP10の前記量、および場合によって、少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量は、対象から得たサンプルにおいて決定されている、ステップ、
b)前記処理装置によって、ステップ(a)で受け取った1つまたは複数の値を、1つまたは複数の参照と比較するステップ、ならびに
c)比較ステップb)に基づいて心房細動を評価するステップ
を含む、方法である。
【0017】
本発明はさらに、心不全を診断するための方法であって、
(a)対象から得た少なくとも1つのサンプルにおいて、BMP10型ペプチド(骨形成タンパク質10型ペプチド)の量、ならびに場合によって、ナトリウム利尿ペプチド、ESM-1(エンドカン)、Ang2、およびFABP3(脂肪酸結合タンパク質3)からなる群から選択される少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量を決定するステップ、ならびに
(b)BMP10型ペプチドの量をBMP10型ペプチドの参照量と比較し、および場合によって、少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量を前記少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの参照量と比較するステップであって、それによって心不全が診断される、ステップ
を含む、方法に関する。
【0018】
本発明はさらに、対象の心不全に起因する入院のリスクを予測するための方法であって、
(a)対象から得た少なくとも1つのサンプルにおいて、BMP10型ペプチド(骨形成タンパク質10型ペプチド)の量、ならびに場合によって、ナトリウム利尿ペプチド、ESM-1(エンドカン)、Ang2、およびFABP3(脂肪酸結合タンパク質3)からなる群から選択される少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量を決定するステップ、
(b)BMP10型ペプチドの量を参照量と比較する、および場合によって、少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量を前記少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの参照量と比較するステップ、ならびに
(c)対象の心不全に起因する入院のリスクを予測するステップ
を含む、方法に関する。
【0019】
本発明はさらに、BMP10型ペプチドに特異的に結合する作用剤、ならびに、ナトリウム利尿ペプチドに特異的に結合する作用剤、ESM-1に特異的に結合する作用剤、Ang2を特異的に結合する作用剤、およびFABP3に特異的に結合する作用剤からなる群から選択される少なくとも1つのさらなる作用剤を含むキットに関する。
【0020】
さらに、本発明は、心房細動を評価するための、脳卒中のリスクを予測するための、または心不全を診断するための、または対象の心不全に起因する入院のリスクを予測するための、
i)BMP10型ペプチド、ならびに場合によって、ナトリウム利尿ペプチド、ESM-1(エンドカン)、Ang2、およびFABP3(脂肪酸結合タンパク質3)からなる群から選択される少なくとも1つのさらなるバイオマーカー、ならびに/または
ii)BMP10型ペプチドに特異的に結合する少なくとも1つの作用剤、ならびに場合によって、ナトリウム利尿ペプチドに特異的に結合する作用剤、ESM-1に特異的に結合する作用剤、Ang2に特異的に結合する作用剤、およびFABP3に特異的に結合する作用剤からなる群から選択される少なくとも1つのさらなる作用剤
のインビトロでの使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の詳細な説明/定義
本発明は、対象における心房細動を評価するための方法であって、
a)対象から得た少なくとも1つのサンプルにおいて、BMP10型ペプチド(骨形成タンパク質10型ペプチド)の量を決定するステップ、および
b)BMP10型ペプチドの量をBMP10型ペプチドの参照量と比較するステップであって、それによって心房細動が評価される、ステップ
を含む、方法に関する。
【0022】
BMP10型ペプチドは、好ましくは、BMP10、BMP10のN末端プロセグメント(N末端プロBMP10)、プロBMP10、およびプレプロBMP10からなる群から選択される。さらに好ましくは、BMP10型ペプチドは、BMP10および/またはN末端プロBMP10である。
【0023】
本発明の方法の一実施形態において、本方法はさらに、ステップa)における、対象から得たサンプルにおけるナトリウム利尿ペプチド、ESM-1(エンドカン)、Ang2(アンジオポエチン2)、およびFABP-3(脂肪酸結合タンパク質3)からなる群から選択される少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量の決定、ならびに、ステップb)における、少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量の、参照量との比較を含む。
【0024】
したがって、本発明は、対象における心房細動を評価するための方法であって、
a)対象から得た少なくとも1つのサンプルにおいて、BMP10型ペプチド(骨形成タンパク質10型ペプチド)の量、ならびに場合によって、ナトリウム利尿ペプチド、ESM-1(エンドカン)、Ang2(アンジオポエチン2)、およびFABP-3(脂肪酸結合タンパク質3)からなる群から選択される少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量を決定するステップ、ならびに
b)BMP10型ペプチドの量をBMP10型ペプチドの参照量と比較し、および場合によって、少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量を前記少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの参照量と比較するステップであって、それによって心房細動が評価される、ステップ
を含む、方法に関する。
【0025】
心房細動(AF)の評価は、比較ステップb)の結果に基づく。
したがって、本発明は、好ましくは、
a)対象から得た少なくとも1つのサンプルにおいて、BMP10型ペプチドの量、ならびに場合によって、ナトリウム利尿ペプチド、ESM-1(エンドカン)、Ang2(アンジオポエチン2)、およびFABP-3(脂肪酸結合タンパク質3)からなる群から選択される少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量を決定するステップ、
b)BMP10型ペプチドの量をBMP10型ペプチドの参照量と比較する、および場合によって、少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量を前記少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの参照量と比較するステップ、ならびに
c)心房細動を比較ステップb)の結果に基づいて評価するステップ
を含む。
【0026】
本発明に従って言及される方法は、前述のステップから基本的になる方法、または、さらなるステップを含む方法を含む。さらに、本発明の方法は、好ましくは、エクスビボでの方法、さらに好ましくはインビトロでの方法である。さらに、本発明の方法は、上記で明示されているステップに加えて、さらなるステップを含み得る。例えば、さらなるステップは、さらなるマーカーの決定に、および/またはサンプルの前処置もしくは本方法によって得られた結果の評価に関連し得る。本方法は、手動で行われ得るか、または自動化によってアシストされ得る。好ましくは、ステップ(a)、(b)、および/または(c)は、自動化によって、例えば、ステップ(a)における決定のための適切なロボット設備およびセンサー設備、またはステップ(b)におけるコンピューター利用計算によって、全体的にまたは部分的にアシストされ得る。
【0027】
本発明に従って、心房細動が評価される。本明細書において使用される用語「心房細動を評価する」は、好ましくは、心房細動の診断、発作性心房細動と持続性心房細動との区別、心房細動に伴う有害事象(脳卒中など)のリスクの予測、心電図記録法(ECG)を受けた方がよい対象の同定、または心房細動のための治療法の評価を指す。
【0028】
当業者には理解されるように、本発明の評価は通常、試験される対象の100%について正確であることを意図したものではない。この用語は、好ましくは、正確な評価(本明細書において言及される診断、区別、予測、同定、または治療法の評価など)が対象の統計上有意な割合についてなされ得ることを要する。割合が統計上有意であるかどうかは、様々な周知の統計評価ツール、例えば、信頼区間の決定、p値の決定、スチューデントt検定、マン・ホイットニー検定などを使用して、当業者によるさらなる苦労を伴うことなく決定され得る。詳細は、DowdyおよびWearden、Statistics for Research、John Wiley & Sons、New York 1983で見られる。好ましい信頼区間は、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%である。p値は、好ましくは、0.4、0.1、0.05、0.01、0.005、または0.0001である。
【0029】
本発明に従って、「心房細動の評価」という表現は、心房細動の評価における補助、したがって、心房細動の診断における補助、発作性心房細動と持続性心房細動との区別における補助、心房細動に伴う有害事象のリスクの予測における補助、心電図記録法(ECG)を受けた方がよい対象の同定における補助、または心房細動のための治療法の評価における補助として理解される。最終診断は、原則的に医師によって行われる。
【0030】
本発明の好ましい実施形態において、心房細動の評価は、心房細動の診断である。したがって、対象が心房細動に罹患しているか否かが診断される。
したがって、本発明は、
a)対象から得たサンプルにおけるBMP10型ペプチドの量を決定するステップ、および
b)BMP10型ペプチドの量を参照量と比較するステップであって、それによって心房細動が診断される、ステップ
を含む、対象における心房細動を診断するための方法を想定する。
【0031】
一実施形態において、前述の方法は、
(a)対象から得た少なくとも1つのサンプルにおいて、BMP10型ペプチド(骨形成タンパク質10)の量、ならびに場合によって、ナトリウム利尿ペプチド、ESM-1(エンドカン)、Ang2(アンジオポエチン2)、およびFABP-3(脂肪酸結合タンパク質3)からなる群から選択される少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量を決定するステップ、ならびに
(b)BMP10型ペプチドの量をBMP10型ペプチドの参照量と比較し、および場合によって、少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量を前記少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの参照量と比較するステップであって、それによって心房細動が診断される、ステップ
を含む。
【0032】
好ましくは、心房細動を診断するための方法に関連して試験される対象は、心房細動に罹患していることが疑われる対象である。しかし、対象がAFに罹患していると過去に既に診断されていること、および過去の診断が本発明の方法を実施することによって確認されることもまた検討される。
【0033】
本発明の別の好ましい実施形態において、心房細動の評価は、発作性心房細動と持続性心房細動との区別である。したがって、対象が発作性心房細動または持続性心房細動に罹患しているかどうかが決定される。
【0034】
したがって、本発明は、
a)対象から得たサンプルにおいて、BMP10型ペプチドの量を決定するステップ、および
b)BMP10型ペプチドの量を参照量と比較するステップであって、それによって、発作性心房細動および持続性心房細動とが区別される、ステップ
を含む、対象において発作性心房細動と持続性心房細動とを区別するための方法を想定する。
【0035】
一実施形態において、前述の方法は、
a)対象から得た少なくとも1つのサンプルにおいて、BMP10型ペプチド(骨形成タンパク質10)の量、ならびに場合によって、ナトリウム利尿ペプチド、ESM-1(エンドカン)、Ang2(アンジオポエチン2)、およびFABP-3(脂肪酸結合タンパク質3)からなる群から選択される少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量を決定するステップ、ならびに
b)BMP10型ペプチドの量をBMP10型ペプチドの参照量と比較し、および場合によって、少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量を前記少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの参照量と比較するステップであって、それによって、発作性心房細動および持続性心房細動とが区別される、ステップ
を含む。
【0036】
本発明の別の好ましい実施形態において、心房細動の評価は、心房細動に伴う有害事象(脳卒中など)のリスクの予測である。したがって、対象が前記有害事象のリスクがあるおよび/またはないかどうかが予測される。
【0037】
したがって、本発明は、
a)対象から得たサンプルにおいて、BMP10型ペプチドの量を決定するステップ、および
b)BMP10型ペプチドの量を参照量と比較するステップであって、それによって、心房細動に伴う有害事象のリスクが予測される、ステップ
を含む、対象における心房細動に伴う有害事象のリスクを予測するための方法を想定する。
【0038】
一実施形態において、前述の方法は、
a)対象から得た少なくとも1つのサンプルにおいて、BMP10型ペプチド(骨形成タンパク質10)の量、ならびに場合によって、ナトリウム利尿ペプチド、ESM-1(エンドカン)、Ang2(アンジオポエチン2)、およびFABP-3(脂肪酸結合タンパク質3)からなる群から選択される少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量を決定するステップ、ならびに
b)BMP10型ペプチドの量をBMP10型ペプチドの参照量と比較し、および場合によって、少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量を前記少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの参照量と比較するステップであって、それによって、心房細動に伴う有害事象のリスクが予測される、ステップ
を含む。
【0039】
様々な有害事象が予測され得ることが想定される。予測される好ましい有害事象は、脳卒中である。
したがって、本発明は、特に、
a)対象から得たサンプルにおいて、BMP10型ペプチドの量を決定するステップ、および
b)BMP10型ペプチドの量を参照量と比較するステップであって、それによって脳卒中のリスクが予測される、ステップ
を含む、対象における脳卒中のリスクを予測するための方法を検討する。
【0040】
前述の方法は、ステップb)の比較結果に基づいて脳卒中を予測するステップc)をさらに含み得る。したがって、ステップa)、b)、c)は、好ましくは以下の通りである:
a)対象から得たサンプルにおいて、BMP10型ペプチドの量を決定するステップ、および
b)BMP10型ペプチドの量を参照量と比較するステップ、および
c)ステップb)の比較結果に基づいて脳卒中を予測するステップ。
【0041】
本発明の別の好ましい実施形態において、心房細動の評価は、心房細動のための治療法の評価である。
したがって、本発明は、
a)対象から得たサンプルにおいて、BMP10型ペプチドの量を決定するステップ、および
b)BMP10型ペプチドの量を参照量と比較するステップであって、それによって心房細動のための治療法が評価される、ステップ
を含む、対象における心房細動のための治療法の評価のための方法を想定する。
【0042】
一実施形態において、前述の方法は、
a)対象から得た少なくとも1つのサンプルにおいて、BMP10型ペプチド(骨形成タンパク質10)の量、ならびに場合によって、ナトリウム利尿ペプチド、ESM-1(エンドカン)、Ang2(アンジオポエチン2)、およびFABP-3(脂肪酸結合タンパク質3)からなる群から選択される少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量を決定するステップ、ならびに
b)BMP10型ペプチドの量をBMP10型ペプチドの参照量と比較し、および場合によって、少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量を前記少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの参照量と比較するステップであって、それによって心房細動のための治療法が評価される、ステップ
を含む。
【0043】
好ましくは、前述の区別、前述の予測、および心房細動のための治療法の評価に関連する対象は、心房細動に罹患している対象、特に、心房細動に罹患していることが分かっている(したがって、心房細動の病歴が分かっている)対象である。しかし、前述の予測方法に関して、対象が心房細動の病歴が分かっていないこともまた想定される。
【0044】
本発明の別の好ましい実施形態において、心房細動の評価は、心電図記録法(ECG)を受けた方がよい対象の同定である。したがって、心電図記録法を受けた方がよい、または受けなくてよい対象が同定される。
【0045】
本方法は、
a)対象から得た少なくとも1つのサンプルにおいて、BMP10型ペプチド(骨形成タンパク質10)の量、ならびに場合によって、ナトリウム利尿ペプチド、ESM-1(エンドカン)、Ang2(アンジオポエチン2)、およびFABP-3(脂肪酸結合タンパク質3)からなる群から選択される少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量を決定するステップ、ならびに
b)BMP10型ペプチドの量をBMP10型ペプチドの参照量と比較し、および場合によって、少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量を前記少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの参照量と比較するステップであって、それによって、心電図記録法を受けた方がよい対象が同定される、ステップ
を含み得る。
【0046】
好ましくは、心電図記録法を受けた方がよい対象を同定する前述の方法に関連する対象は、心房細動の病歴が分かっていない対象である。「心房細動の病歴が分かっていない」という表現は、本明細書の別の箇所で定義されている。
【0047】
本発明の別の好ましい実施形態において、心房細動の評価は、対象の抗凝固療法の有効性の評価である。したがって、前記治療法の有効性が評価される。
本発明の別の好ましい実施形態において、心房細動の評価は、対象における脳卒中のリスクの予測である。したがって、明細書において言及される対象が脳卒中のリスクがあるか否かが予測される。
【0048】
本発明の別の好ましい実施形態において、心房細動の評価は、対象が少なくとも1つの抗凝固薬の投与に適格である、または少なくとも1つの抗凝固薬の投与量の増大に適格であることの同定である。したがって、対象が前記投与および/または前記投与量の増大に適格であるかどうかが評価される。
【0049】
本発明の別の好ましい実施形態において、心房細動の評価は、抗凝固療法のモニタリングである。したがって、対象が前記治療法に応答するか否かが評価される。
用語「心房細動」(AFまたはAFibと略される)は、当技術分野において周知である。本明細書において使用される場合、この用語は、好ましくは、協調していない心房活性化と、その結果生じる心房の機械的機能の低下とを特徴とする、上室性の頻脈性不整脈を指す。特に、この用語は、速く不規則な鼓動を特徴とする、異常な心臓リズムを指す。これには、心臓の2つの上室が関与する。正常な心臓リズムでは、洞房結節によって生じたインパルスは心臓を通って広がり、心筋の収縮および血液の拍出を生じさせる。心房細動では、洞房結節の規則的な電気インパルスが、不規則な心拍を生じさせる無秩序で速い電気インパルスに置き換わる。心房細動の症候は、心臓の動悸、失神、息切れ、または胸痛である。しかし、ほとんどのエピソードは症候を有さない。心電図では、心房細動は、一貫したP波が、高速の周期的変動に、または、房室伝導が無傷である場合には、不規則で多くの場合高速である心室応答を伴う、振幅、形状、およびタイミングが変化する細動波に置き換わることを特徴とする。
【0050】
米国心臓病学会(ACC)、アメリカ心臓協会(AHA)、および欧州心臓病学会(ESC)は、以下の分類体系を提案している(参照によってその全体が本明細書に組み込まれる、Fuster V.ら、Circulation 2006、114(7):e257~354を参照されたく、例えば、当該文献の図3を参照されたい):初検出AF、発作性AF、持続性AF、および永続性AF。
【0051】
AFを有する全ての人は、初めは、初検出AFと呼ばれるカテゴリーにある。しかし、対象は、過去の未検出のエピソードを有していてもいなくてもよい。AFが1年を超えて続いている場合、特に、サイナスリズムへの変換回復が生じていない(または医療の介入を伴ってのみ)場合、対象は永続性AFに罹患している。AFが7日を超えて続いている場合、対象は持続性AFに罹患している。対象は、心房細動を止めるための薬理学的または電気的介入を必要とする場合がある。好ましくは、持続性AFはエピソードで生じるが、不整脈は自然には(すなわち、医学的介入を伴わずに)サイナスリズムに変換回復しない。発作性心房細動は、好ましくは、最大7日間続く心房細動の断続的なエピソードを指す。発作性AFのほとんどのケースでは、エピソードが続くのは24時間未満である。心房細動のエピソードは自然に、すなわち、医学的介入を伴わずに止まる。したがって、発作性心房細動のエピソードが好ましくは自然に止まる一方で、持続性心房細動は、好ましくは、自然には終わらない。好ましくは、持続性心房細動は、止めるために、電気的もしくは薬理学的なカルディオバージョン、またはアブレーション手順などの他の手順を要する(Fuster V.ら、Circulation 2006、114(7):e257~354)。持続性AFおよび発作性AFは共に再発性であり得、そのため、発作性AFおよび持続性AFの区別はECG記録によって行われる:患者が2つ以上のエピソードを有している場合、AFは再発性であると見なされる。不整脈が自然に止まる場合、AF、特に再発性AFは、発作性であると示される。AFが7日を超えて続く場合、これは持続性であると示される。
【0052】
本発明の好ましい実施形態において、用語「発作性心房細動」は、自然に止まるAFのエピソードとして定義され、ここで、前記エピソードが続くのは24時間未満である。代替的な実施形態において、自然に止まるエピソードは、最大7日間続く。
【0053】
本明細書において言及される「対象」は、好ましくは、哺乳動物である。哺乳動物は、限定はしないが、家畜動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、およびウマ)、霊長類(例えば、ヒト、およびサルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ、ならびに齧歯動物(例えば、マウスおよびラット)を含む。好ましくは、対象は、ヒト対象である。
【0054】
好ましくは、試験される対象はあらゆる年齢であり、さらに好ましくは、試験される対象は、50歳以上、さらに好ましくは60歳以上、および最も好ましくは65歳以上である。さらに、試験される対象が70歳以上であることも想定される。
【0055】
さらに、試験される対象が75歳以上であることも想定される。また、対象は、50歳から90歳の間であり得る。
心房細動を評価する方法の好ましい実施形態において、試験される対象は、心房細動に罹患している。したがって、対象は、心房細動の病歴が分かっている。したがって、対象は、試験サンプルを得る前に心房細動のエピソードを経験しており、過去の心房細動エピソードの少なくとも1つは、例えばECGによって診断されている。例えば、心房細動の評価が発作性心房細動と持続性心房細動との区別である場合、または心房細動の評価が心房細動に伴う有害事象のリスクの予測である場合、または心房細動の評価が心房細動のための治療法の評価である場合、対象は心房細動に罹患していることが想定される。
【0056】
心房細動を評価する方法の別の好ましい実施形態において、例えば、心房細動の評価が、心房細動の診断または心電図記録法(ECG)を受けた方がよい対象の同定である場合、試験される対象は、心房細動に罹患していることが疑われる。
【0057】
好ましくは、心房細動に罹患していることが疑われる対象は、心房細動を評価するための方法を実施する前に心房細動の少なくとも1つの症候を示している対象である。前記症候は通常は一時的であり、数秒間で生じ得、すぐに消失し得る。心房細動の症候は、めまい、失神、息切れ、特に心臓の動悸を含む。好ましくは、対象は、サンプルを得る前の6ヶ月間以内に心房細動の少なくとも1つの症候を示している。
【0058】
あるいは、またはさらに、心房細動に罹患していることが疑われる対象は、70歳以上の対象である。
好ましくは、心房細動に罹患していることが疑われる対象は、心房細動の病歴が分かっていない。
【0059】
本発明に従って、心房細動の病歴が分かっていない対象は、好ましくは、過去に、すなわち、本発明の方法を実施する前には(特に、サンプルを対象から得る前には)、心房細動に罹患していると診断されていない対象である。しかし、対象は、診断されていない心房細動エピソードを過去に有していてもいなくてもよい。
【0060】
好ましくは、用語「心房細動」は、全てのタイプの心房細動を指す。したがって、この用語は、発作性心房細動、持続性心房細動、または永続性心房細動を好ましくは包含する。
【0061】
本発明の一実施形態において、しかし、試験される対象は、永続性心房細動に罹患していない。この実施形態において、用語「心房細動」は、発作性心房細動および持続性心房細動のみを指す。
【0062】
本発明の別の実施形態において、しかし、試験される対象は、発作性心房細動および永続性心房細動に罹患していない。この実施形態において、用語「心房細動」は、持続性心房細動のみを指す。
【0063】
試験される対象は、サンプルが得られる時に、心房細動のエピソードを経験していてもしていなくてもよい。したがって、心房細動の評価の好ましい実施形態(心房細動の診断など)において、対象は、サンプルが得られる時に、心房細動のエピソードを経験していない。この実施形態において、対象は、サンプルが得られる時に、正常なサイナスリズムを有している(そして、サイナスリズムが適当である)。したがって、心房細動が(一次的に)不存在であっても、心房細動の診断は可能である。本発明の方法に従うと、本明細書において言及されるバイオマーカーの上昇は、心房細動のエピソード後に保たれ、したがって、心房細動に罹患している対象の診断を可能にする。好ましくは、AFの診断は、本発明の方法を実施した後(または、より正確には、サンプルが得られた後)約3日間以内、約1ヶ月間以内、約3ヶ月間以内、または約6ヶ月間以内である。好ましい実施形態において、エピソード後約6ヶ月間以内の心房細動の診断が実行可能である。好ましい実施形態において、エピソード後約6ヶ月間以内の心房細動の診断が実行可能である。したがって、本明細書において言及される心房細動の評価、特に、心房細動の評価に関連して本明細書において言及される診断、リスクの予測、または区別は、好ましくは、最後の心房細動エピソードの約3日後、さらに好ましくは約1ヶ月後、さらに好ましくは約3ヶ月後、および最も好ましくは約6ヶ月後に行われる。結論として、試験されるサンプルが、最後の心房細動エピソードの約3日後、さらに好ましくは約1ヶ月後、さらに好ましくは約3ヶ月後、および最も好ましくは約6ヶ月後に好ましくは得られることが想定される。したがって、心房細動の診断は、サンプルが得られる前の好ましくは約3日間以内、さらに好ましくは約3ヶ月間以内、および最も好ましくは約6ヶ月間以内に生じた心房細動のエピソードの診断も好ましくは包含する。
【0064】
しかし、(例えば、脳卒中の予測に関して)サンプルが得られる時に対象が心房細動のエピソードを経験していることもまた想定される。
用語「サンプル」は、体液のサンプル、分離された細胞のサンプル、または組織もしくは器官から得たサンプルを指す。体液のサンプルは周知の技術によって得ることができ、血液、血漿、血清、尿、リンパ液、喀痰、腹水、もしくはあらゆる他の体分泌液、またはこれらの誘導体のサンプルを含む。組織サンプルまたは器官サンプルは、例えば生検によって、任意の組織または器官から得ることができる。分離された細胞は、遠心分離またはセルソーティングなどの分離技術によって、体液または組織または器官から得ることができる。例えば、細胞サンプル、組織サンプル、または器官サンプルは、バイオマーカーを発現するまたは生産する細胞、組織、または器官から得ることができる。サンプルは、例えば凍結されていても、新鮮であっても、固定されていても(例えばホルマリン固定)、遠心分離されていても、および/または包埋されていても(例えばパラフィン包埋)よい。細胞サンプルは、当然のことながら、サンプル中のバイオマーカーの量を評価する前に、様々な周知の回収後分取技術および保存技術(例えば、核酸および/またはタンパク質の抽出、固定、保存、凍結、限外濾過、濃縮、蒸発、遠心分離など)にかけることができる。
【0065】
本発明の好ましい実施形態において、サンプルは、血液(すなわち全血)サンプル、血清サンプル、または血漿サンプルである。血清は、血液を凝血させた後に得られる、全血の液体画分である。血清を得るために、凝血塊は遠心分離によって除去され、上清は回収される。血漿は、血液の無細胞液部分である。血漿サンプルを得るために、全血は、抗凝固剤処理した試験管(例えば、クエン酸処理またはEDTA処理した試験管)に回収される。細胞は遠心分離によってサンプルから除去され、上清(すなわち血漿サンプル)が得られる。
【0066】
上記で説明したように、対象は、サンプルが得られる時点で、サイナスリズムにあり得るか、またはAFリズムのエピソードに罹患している場合がある。
BMP10型ペプチドは、当技術分野において周知である。好ましいBMP10型ペプチドは、例えば、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる、Susan-Resigaら(J Biol Chem.2011年7月1日、286(26):22785~94)(例えば、Susan-Resigaら、またはUS2012/0213782の図3A)において開示されている。
【0067】
一実施形態において、BMP10型ペプチドは、プロセシングされていないプレプロBMP10である。別の実施形態において、BMP10型ペプチドは、プロペプチドであるプロBMP10である。このマーカーは、N末端プロセグメントおよびBMP10を含む。別の実施形態において、BMP10型ペプチドは、BMP10のN末端プロセグメント(N末端プロBMP10)である。別の実施形態において、BMP10型ペプチドは、BMP10である。
【0068】
一実施形態において、BMP10型ペプチドは、ホモ二量体複合体またはヘテロ二量体複合体の一部である。
ヒトプレプロBMP10(すなわち、プロセシングされていないプレプロBMP10)は、424アミノ酸長を有する。ヒトプレプロBMP10のアミノ酸配列は、配列番号1で、または、参照によってその全体が本明細書に組み込まれるUS2012/0213782の図3において、例えば示されている。さらに、プレプロBMP10のアミノ酸配列は、Uniprotを介して評価され得る(受託番号095393-1の配列を参照されたい)。ヒトプレプロBMP10は短いシグナルペプチド(アミノ酸1~21)を含み、これは、酵素によって切断されてプロBMP10を放出する。したがって、ヒトプロBMP10は、ヒトプレプロBMP10の(すなわち、配列番号1で示される配列を有するポリペプチドの)アミノ酸22~424を含む。ヒトプロBMP10は、BMP10のN末端プロセグメントおよび活性形態の(グリコシル化されていない)BMP10にさらに切断される。BMP10のN末端プロセグメントは、配列番号1で示される配列を有するポリペプチドの(すなわち、ヒトプレプロBMP10の)アミノ酸22~316を含む。BMP10は、配列番号1で示される配列を有するポリペプチドのアミノ酸317~424を含む。
【0069】
好ましいBMP10型ペプチドは、BMP10およびN末端プロBMP10である。プロBMP10の切断の後、BMP10およびN末端プロBMP10は構造的に近くに留まり、BMP10のホモ二量体もしくはヘテロ二量体を形成するか、または他のBMPファミリータンパク質と組み合わされている(Yadinら、CYTOGFR 2016、27(2016)13~34)。二量化は、Cys-Cys架橋の形成、または両結合パートナーのC末端ペプチドにおける強力な接着によって生じる。こうして、2つのサブユニットからなる構造が形成される。
【0070】
プロBMP10は等モル濃度の割合でBMP10およびN末端のプロセグメントに切断されるため、BMP10の量は、N末端プロセグメントの量を反映する。したがって、BMP10の量は、N末端プロセグメントの量を決定することによって決定され得、逆の場合も同様である。
【0071】
好ましくは、BMP10型ペプチドの量は、BMP10型ペプチドに特異的に結合する1つまたは複数の抗体(またはこれらの抗原結合断片)を使用して決定される。
例えば、BMP10のN末端プロセグメントに特異的に結合する1つまたは複数の抗体が使用され得る。このような抗体(または断片)はプロBMP10およびプレプロBMP10にも結合するため、BMP10のN末端プロセグメント、プロBMP10、およびプレプロBMP10の量の合計が、本発明の方法のステップa)において決定される。したがって、「BMP10のN末端プロセグメントの量を決定する」という表現はまた、「BMP10のN末端プロセグメント、プロBMP10、およびプレプロBMP10の量の合計を決定する」も意味する。
【0072】
例えばBMP9のような他のBMP型タンパク質から得られる所見に基づく構造的予測は、BMP10がプロBMP10と複合体を形成したままであることを示し、したがって、N末端プロセグメントの検出はまた、BMP10の量も反映する。
【0073】
例えば、BMP10に特異的に結合する1つまたは複数の抗体が使用され得る。このような抗体(または断片)もまたプロBMP10およびプレプロBMP10に結合するため、BMP10、プロBMP10、およびプレプロBMP10の量の合計が、本発明の方法のステップa)において決定される。したがって、「BMP10の量を決定する」という表現はまた、「BMP10、プロBMP10、およびプレプロBMP10量の合計を決定する」も意味する。
【0074】
例えばBMP9のような他のBMP型タンパク質から得られる所見に基づく構造的予測は、BMP10がプロBMP10と複合体を形成したままであることを示し、したがって、BMP10の検出はまた、N末端のプロセグメントの量も反映する。
【0075】
さらに、上記で言及された4つ全てのBMP10型ペプチドの量の合計、すなわち、BMP10、BMP10のN末端プロセグメント、プロBMP10、およびプレプロBMP10の合計を決定することが想定される。
【0076】
したがって、以下のBMP10型ペプチドの量が、本発明に従って決定され得る:
- BMP10の量
- BMP10のN末端プロセグメントの量
- プロBMP10の量
- プレプロBMP10の量
- BMP10、プロBMP10、およびプレプロBMP10の量の合計
- BMP10のN末端プロセグメント、プロBMP10、およびプレプロBMP10の量の合計、または
- BMP10、BMP10のN末端プロセグメント、プロBMP10、およびプレプロBMP10の量の合計。
【0077】
用語「ナトリウム利尿ペプチド」は、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)型ペプチドおよび脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)型ペプチドを含む。したがって、本発明によるナトリウム利尿ペプチドは、ANP型ペプチドおよびBNP型ペプチドならびにこれらのバリアントを含む(例えば、Bonow RO.ら、Circulation 1996、93:1946~1950を参照されたい)。
【0078】
ANP型ペプチドは、プレプロANP、プロANP、NT-プロANP、およびANPを含む。
BNP型ペプチドは、プレプロBNP、プロBNP、NT-プロBNP、およびBNPを含む。
【0079】
プレプロペプチド(プレプロBNPのケースでは134アミノ酸)は短いシグナルペプチドを含み、これは、酵素によって切断されてプロペプチド(プロBNPのケースでは108アミノ酸)を放出する。プロペプチドは、N末端プロペプチド(NT-プロペプチド、NT-プロBNPのケースでは76アミノ酸)および活性ホルモン(BNPのケースでは32アミノ酸、ANPのケースでは28アミノ酸)にさらに切断される。
【0080】
本発明による好ましいナトリウム利尿ペプチドは、NT-プロANP、ANP、NT-プロBNP、BNPである。ANPおよびBNPは活性ホルモンであり、それらのそれぞれの不活性な対応物であるNT-プロANPおよびNT-プロBNPよりも短い半減期を有する。BNPは血液中で代謝されるが、NT-プロBNPは無傷の分子として血液中を循環し、その結果、腎臓を介して排出される。
【0081】
本発明による最も好ましいナトリウム利尿ペプチドは、NT-プロBNPおよびBNP、特にNT-プロBNPである。上記で簡潔に論じたように、本発明に従って言及されるヒトNT-プロBNPは、好ましくはヒトNT-プロBNP分子のN末端部分に対応する76アミノ酸長を含むポリペプチドである。ヒトBNPおよびNT-プロBNPの構造は、先行技術、例えば、WO02/089657、WO02/083913、およびBonow RO.ら、New Insights into the cardiac natriuretic peptides. Circulation 1996、93:1946~1950において既に詳細に記載されている。好ましくは、本明細書において使用されるヒトNT-プロBNPは、EP0648228B1において開示されているヒトNT-プロBNPである。
【0082】
本明細書において使用される用語「FABP-3」は、脂肪酸結合タンパク質3を指す。FABP-3はまた、心臓脂肪酸結合タンパク質または心臓由来脂肪酸結合タンパク質(H-FABPと略される)としても知られている。好ましくは、この用語はまた、FABP-3のバリアントも含む。本明細書において使用されるFABP-3は、好ましくは、ヒトFABP-3に関する。ヒトFABP-3ポリペプチドをコードするポリペプチドのDNA配列およびヒトFABP-3のタンパク質配列は、当技術分野において周知であり、Peetersら(Biochem.J.276(Pt 1)、203~207(1991))によって最初に記載された。さらに、ヒトH-FABPの配列は、好ましくはGenbankエントリーU57623.1(cDNA配列)およびAAB02555.1(タンパク質配列)において見ることができる。FABPの主要な生理学的機能は、遊離脂肪酸の輸送であると考えられている。例えば、Storchら、Biochem.Biophys.Acta.1486(2000)、28~44を参照されたい。FABP-3およびH-FABPの他の名称は、FABP-11(脂肪酸結合タンパク質11)、M-FABP(筋脂肪酸結合タンパク質)、MDGI(乳腺由来成長阻害物質)、およびO-FABPである。
【0083】
バイオマーカーである内皮細胞特異的分子1(ESM-1と略される)は、当技術分野において周知である。このバイオマーカーはエンドカンと呼ばれることも多い。ESM-1は、ヒトの肺組織および腎臓組織の内皮細胞において主に発現する分泌型タンパク質である。公開されているドメインデータは、甲状腺組織、肺組織、および腎臓組織だけではなく、心臓組織における発現も示唆している。例えば、Protein Atlasデータベース(Uhlen M.ら、Science 2015、347(6220):1260419)におけるESM-1についてのエントリーを参照されたい。この遺伝子の発現は、サイトカインによって調節される。ESM-1は、20kDaの成熟ポリペプチドおよび30kDaのO結合型グリカン鎖からなるプロテオグリカンである(Bechard Dら、J Biol Chem 2001、276(51):48341~48349)。本発明の好ましい実施形態において、ヒトESM-1ポリペプチドの量は、対象から得たサンプルにおいて決定される。ヒトESM-1ポリペプチドの配列は当技術分野において周知であり(例えば、Lassale P.ら、J.Biol.Chem.1996、271:20458~20464を参照されたい)、例えばUniprotデータベースを介して評価され得る。エントリーQ9NQ30(ESM1_HUMAN)を参照されたい。ESM-1の2つのアイソフォームであるアイソフォーム1(Uniprot記号Q9NQ30-1を有する)およびアイソフォーム2(Uniprot記号Q9NQ30-2を有する)が、選択的スプライシングによって生産される。アイソフォーム1は、184アミノ酸長を有する。アイソフォーム2において、アイソフォーム1のアミノ酸101~150は失われている。アミノ酸1~19はシグナルペプチドを形成する(これは切断され得る)。
【0084】
好ましい実施形態において、ESM-1ポリペプチドのアイソフォーム1、すなわち、UniProt受託番号Q9NQ30-1で示される配列を有するアイソフォーム1の量が決定される。
【0085】
別の好ましい実施形態において、ESM-1ポリペプチドのアイソフォーム2、すなわち、UniProt受託番号Q9NQ30-2で示される配列を有するアイソフォーム2の量が決定される。
【0086】
別の好ましい実施形態において、ESM-1ポリペプチドのアイソフォーム1およびアイソフォーム2の量、すなわち、全ESM-1の量が決定される。
例えば、ESM-1の量は、ESM-1ポリペプチドのアミノ酸85~184に対するモノクローナル抗体(マウス抗体など)、および/またはヤギポリクローナル抗体で決定され得る。
【0087】
バイオマーカーであるアンジオポエチン-2(「Ang-2」と略され、ANGPT2と呼ばれることも多い)は、当技術分野において周知である。これは、Ang-1およびTIE2の両方にとって天然のアンタゴニストである(例えば、Maisonpierreら、Science 277(1997)55~60を参照されたい)。タンパク質は、ANG-1の不存在下でTEK/TIE2のチロシンリン酸化を誘発し得る。VEGFなどの血管新生誘導因子の不存在下で、細胞-マトリクス接着がANG2を介して緩まると、内皮細胞のアポトーシスと、その結果生じる血管退行が誘発され得る。VEGFと共同して、これは内皮細胞の移動および増殖を促進し得、したがって、許容的な血管新生シグナルとして機能する。ヒトアンジオポエチンの配列は、当技術分野において周知である。Uniprotは、アンジオポエチン-2の3つのアイソフォームであるアイソフォーム1(Uniprot記号:O15123-1)、アイソフォーム2(記号:O15123-2)、およびアイソフォーム3(O15123-3)を列挙している。好ましい実施形態において、アンジオポエチン-2の全量が決定される。全量は、好ましくは、複合体を形成しているアンジオポエチン-2および遊離アンジオポエチン-2の量の合計である。
【0088】
本明細書において言及される、バイオマーカー(BMP10型ペプチドまたはナトリウム利尿ペプチドなど)の量を「決定する」という用語は、バイオマーカーの定量、例えば、本明細書の別の箇所で記載される適切な検出方法を利用してサンプル中のバイオマーカーのレベルを測定することを指す。用語「測定する」および「決定する」は、本明細書において区別せずに使用される。
【0089】
一実施形態において、バイオマーカーの量は、サンプルをバイオマーカーに特異的に結合する作用剤と接触させ、それによって、作用剤と前記バイオマーカーとの複合体を形成させ、形成された複合体の量を検出し、そして、それによって前記バイオマーカーの量を測定することによって、決定される。
【0090】
本明細書において言及されるバイオマーカー(BMP10型ペプチドなど)は、当技術分野において一般に知られている方法を使用して検出され得る。検出の方法は、サンプル中のバイオマーカーの量を定量する方法(定量的方法)を一般に包含する。以下の方法のどれがバイオマーカーの定性的および/または定量的検出に適切であるかは、当業者に一般に知られている。サンプルは、例えばタンパク質について、商業的に利用可能な、ウェスタンアッセイ、ならびに、ELISA、RIA、蛍光に基づく免疫アッセイ、および発光に基づく免疫アッセイなどの免疫アッセイ、ならびに近接伸長アッセイを使用して、都合良くアッセイされ得る。バイオマーカーを検出するためのさらなる適切な方法は、その正確な分子量またはNMRスペクトルなどの、ペプチドまたはポリペプチドに特異的な物理的または化学的特性の測定を含む。前記方法は、例えば、免疫アッセイ、バイオチップ、分析装置、例えば、質量分析計、NMR分析装置、またはクロマトグラフィー装置と組み合わされた、バイオセンサー、光学装置を含む。さらに、本方法は、マイクロプレートELISAに基づく方法、完全自動化されたまたはロボットを利用した免疫アッセイ(例えばElecsys(商標)分析装置で利用可能)、CBA(例えばRoche-Hitachi(商標)分析装置で利用可能な、酵素的コバルト結合アッセイ)、およびラテックス凝集アッセイ(例えばRoche-Hitachi(商標)分析装置で利用可能)を含む。
【0091】
本明細書において言及されるバイオマーカータンパク質の検出では、このようなアッセイフォーマットを使用する広範な免疫アッセイ技術が利用可能である。例えば、米国特許第4,016,043号、米国特許第4,424,279号、および米国特許第4,018,653号を参照されたい。これらは、非競合型の、1部位アッセイおよび2部位アッセイの両方または「サンドイッチ」アッセイ、ならびに従来の競合結合アッセイのものを含む。これらのアッセイは、標的バイオマーカーへの標識された抗体の直接的な結合も含む。
【0092】
電気化学発光標識を利用する方法が周知である。このような方法は、特別な金属錯体が酸化によって励起状態となる能力を利用するものであり、当該励起状態から、当該錯体は基底状態に減衰し、電気化学発光を放出する。概説については、Richter,M.M.、Chem.Rev.2004、104:3003~3036を参照されたい。
【0093】
一実施形態において、バイオマーカーの量を測定するために使用される検出抗体(またはその抗原結合断片)は、ルテニル化(ruthenylated)またはイリジニル化(iridinylated)されている。したがって、抗体(またはその抗原結合断片)はルテニウム標識を含む。一実施形態において、前記ルテニウム標識は、ビピリジン-ルテニウム(II)錯体である。または、抗体(またはその抗原結合断片)は、イリジウム標識を含む。一実施形態において、前記イリジウム標識は、WO2012/107419において開示されている錯体である。
【0094】
BMP10型ペプチドを決定するためのサンドイッチアッセイの一実施形態において、アッセイは、BMP10型ペプチドを特異的に結合するビオチン化された第1のモノクローナル抗体(捕捉抗体として)、およびBMP10型ペプチドを特異的に結合する第2のモノクローナル抗体のルテニル化されたF(ab’)2断片(検出抗体として)を含む。サンドイッチ免疫アッセイの2つの抗体は、サンプル中のBMP10型ペプチドと複合体を形成する。
【0095】
ナトリウム利尿ペプチドを決定するためのサンドイッチアッセイの一実施形態において、アッセイは、ナトリウム利尿ペプチドを特異的に結合するビオチン化された第1のモノクローナル抗体(捕捉抗体として)、およびナトリウム利尿ペプチドを特異的に結合する第2のモノクローナル抗体のルテニル化されたF(ab’)2断片(検出抗体として)を含む。サンドイッチ免疫アッセイの2つの抗体は、サンプル中のナトリウム利尿ペプチドと複合体を形成する。
【0096】
ポリペプチド(BMP10型ペプチドまたはナトリウム利尿ペプチドなど)の量の測定は、好ましくは、(a)ポリペプチドを、前記ポリペプチドを特異的に結合する作用剤と接触させるステップ、(b)結合していない作用剤を(場合によって)除去するステップ、(c)結合した結合剤、すなわち、ステップ(a)で形成された作用剤の複合体の量を測定するステップを含み得る。好ましい実施形態によると、前記接触ステップ、除去ステップ、および測定ステップは、分析装置ユニットによって行われ得る。一部の実施形態によると、前記ステップは、前記システムの単一の分析装置ユニットによって、または互いに動作可能に接続されている2つ以上の分析装置ユニットによって、行われ得る。例えば、具体的な実施形態によると、本明細書において開示されている前記システムは、前記接触ステップおよび除去ステップを実施するための第1の分析装置ユニット、ならびに、前記測定ステップを実施する、輸送ユニット(例えば、ロボットを利用したアーム)によって前記第1の分析装置ユニットに動作可能に接続されている第2の分析装置ユニットを含み得る。
【0097】
バイオマーカーを特異的に結合する作用剤(本明細書において、「結合剤」とも呼ばれる)は、結合した作用剤の検出および測定を可能にする標識に共有結合または非共有結合していてよい。標識は、直接的または間接的な方法によって行われ得る。直接的な標識は、標識の、結合剤への直接的な(共有結合または非共有結合による)結合を伴う。間接的な標識は、一次結合剤への二次結合剤の結合(共有結合または非共有結合による)を伴う。二次結合剤は、一次結合剤に特異的に結合する。前記二次結合剤は、適切な標識と結合し得る、および/または二次結合剤に結合する三次結合剤の標的(受容体)であり得る。適切な二次結合剤および高次結合剤は、抗体、二次抗体、および周知のストレプトアビジン-ビオチンシステム(Vector Laboratories,Inc.)を含み得る。結合剤または基質はまた、当技術分野において知られている1つまたは複数のタグで「タグ付け」されていてよい。このようなタグは次に、高次結合剤の標的となり得る。適切なタグは、ビオチン、ジゴキシゲニン、ヒスタグ、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ、FLAG、GFP、mycタグ、インフルエンザAウイルスヘマグルチニン(HA)、マルトース結合タンパク質などを含む。ペプチドまたはポリペプチドのケースでは、タグは、好ましくは、N末端および/またはC末端にある。適切な標識は、適切な検出方法によって検出可能な任意の標識である。典型的な標識としては、金粒子、ラテックスビーズ、アクリダンエステル、ルミノール、ルテニウム錯体、イリジウム錯体、酵素的に活性な標識、放射性標識、磁気標識(例えば、常磁性標識および超常磁性標識を含む「磁気ビーズ」)、ならびに蛍光標識が含まれる。酵素的に活性な標識は、例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、およびこれらの誘導体を含む。検出のための適切な基質は、ジアミノベンジジン(DAB)、3,3'-5,5'-テトラメチルベンジジン、NBT-BCIP(Roche Diagnosticsから既製品のストック溶液として入手可能な、4-ニトロブルーテトラゾリウムクロリド、および5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-ホスフェート)、CDP-Star(商標)(Amersham Bio-sciences)、ECF(商標)(Amersham Biosciences)を含む。適切な酵素-基質の組み合わせは、着色した反応生成物、蛍光、または化学発光を生じさせ得、これは、当技術分野において知られている方法(例えば、光感受性フィルムまたは適切なカメラシステムを使用する)に従って決定され得る。酵素反応の測定に関しては、上記で示された基準が類似的に適用される。典型的な蛍光標識は、蛍光タンパク質(GFPおよびその誘導体など)、Cy3、Cy5、テキサスレッド、フルオレセイン、およびAlexa色素(例えば、Alexa 568)を含む。さらなる蛍光標識は、例えばMolecular Probes(オレゴン)から入手可能である。また、量子ドットを蛍光標識として使用することも検討される。放射性標識は、既知のおよび適切な任意の方法、例えば光感受性フィルムまたは蛍光体イメージャーによって、検出され得る。
【0098】
ポリペプチドの量もまた、好ましくは、以下のように決定され得る:(a)本明細書の別の箇所で記載されているポリペプチドの結合剤を含む固体担体を、ペプチドまたはポリペプチドを含むサンプルと接触させるステップ、(b)担体に結合しているペプチドまたはポリペプチドの量を測定するステップ。担体を製造するための材料は当技術分野において周知であり、とりわけ、商業的に入手可能なカラム材料、ポリスチレンビーズ、ラテックスビーズ、磁気ビーズ、コロイド金属粒子、ガラスおよび/またはシリコン製のチップおよび表面、ニトロセルロースストリップ、膜、シート、デュラサイト(duracyte)、反応トレーのウェルおよび壁、プラスチックチューブなどを含む。
【0099】
さらなる態様において、サンプルは、結合剤と少なくとも1つのマーカーとの間で形成された複合体の量を測定する前に、形成された複合体から除去される。したがって、一態様では、結合剤は、固体担体に固定されていてよい。さらなる態様において、サンプルは、洗浄溶液を適用することによって、固体担体上の形成された複合体から除去され得る。
【0100】
「サンドイッチアッセイ」は、サンドイッチアッセイ技術の多くのバリエーションを包含する、最も有用で一般に使用されているアッセイの1つである。簡潔に述べると、典型的なアッセイにおいて、標識されていない(捕捉)結合剤が固体基質に固定されているかまたは固定され得、試験されるサンプルが捕捉結合剤と接着させられる。結合剤-バイオマーカー複合体の形成を可能にするために十分な時間にわたる、適切な期間のインキュベーションの後、検出可能なシグナルを生産し得るレポーター分子で標識された二次(検出)結合剤が次いで添加され、結合剤とバイオマーカーで標識された結合剤との別の複合体の形成に十分な時間、インキュベートされる。あらゆる未反応の材料は洗浄で除去され得、バイオマーカーの存在が、検出結合剤に結合したレポーター分子によって生産されるシグナルの観察によって判定される。結果は、可視的なシグナルの単純な観察によって定質的であるか、または量が分かっているバイオマーカーを含有する対照サンプルとの比較によって定量され得る。
【0101】
典型的なサンドイッチアッセイのインキュベーションステップは、必要に応じておよび適切に変化し得る。このようなバリエーションは、例えば、2つ以上の結合剤およびバイオマーカーがコインキュベートされる同時インキュベーションを含む。例えば、分析されるサンプルおよび標識された結合剤の両方が、固定された捕捉結合剤に同時に添加される。分析されるサンプルおよび標識された結合剤をまずインキュベートし、その後、固相に結合したまたは固相に結合し得る抗体を添加することも可能である。
【0102】
特異的結合剤とバイオマーカーとの間で形成された複合体は、サンプル中に存在するバイオマーカーの量に比例する。適用される結合剤の特異性および/または感度が、サンプル中に含まれる特異的に結合され得る少なくとも1つのマーカーの割合の程度を規定することが、理解される。測定を行うための方法についてのさらなる詳細は、本明細書の別の箇所でも見ることができる。形成された複合体の量は、サンプル中に実際に存在する量を反映するバイオマーカーの量に変換される。
【0103】
用語「結合剤」、「特異的結合剤」、「分析物特異的結合剤」、「検出剤」、および「バイオマーカーに特異的に結合する作用剤」は、本明細書において区別せずに使用される。好ましくは、これらの用語は、対応するバイオマーカーを特異的に結合する結合部分を含む作用剤に関する。「結合剤」、「検出剤」、「作用剤」の例は、核酸プローブ、核酸プライマー、DNA分子、RNA分子、アプタマー、抗体、抗体断片、ペプチド、ペプチド核酸(PNA)、または化合物である。好ましい作用剤は、決定されるバイオマーカーに特異的に結合する抗体である。本明細書における用語「抗体」は、最も広い意味で使用され、限定はしないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異的抗体(例えば二重特異的抗体)、および所望の抗原結合活性を示す限りの抗体断片(すなわち、これらの抗原結合断片)を含む、様々な抗体構造を包含する。好ましくは、抗体は、ポリクローナル抗体(またはそれに由来する抗原結合断片)である。さらに好ましくは、抗体は、モノクローナル抗体(またはその抗原結合断片)である。さらに、本明細書の別の箇所で記載されるように、BMP10型ペプチドの異なる位置で結合する2つのモノクローナル抗体が使用されることが想定される(サンドイッチ免疫アッセイにおいて)。したがって、少なくとも1つの抗体がBMP10型ペプチドの量の決定に使用される。
【0104】
一実施形態において、少なくとも1つの抗体は、マウスモノクローナル抗体である。別の実施形態において、少なくとも1つの抗体は、ウサギモノクローナル抗体である。さらなる実施形態において、抗体は、ヤギポリクローナル抗体である。さらなる実施形態において、抗体は、ヒツジポリクローナル抗体である。
【0105】
用語「特異的結合」または「特異的に結合する」は、結合対分子が、それらが他の分子に著しく結合しない条件下で互いに結合を示す、結合反応を指す。用語「特異的結合」または「特異的に結合する」は、バイオマーカーとしてのタンパク質またはペプチドに言及する場合、好ましくは、結合剤が少なくとも10-1の親和性(「会合定数」K)で、対応するバイオマーカーに結合する、結合反応を指す。用語「特異的結合」または「特異的に結合する」は、その標的分子への少なくとも10-1の、またはさらに好ましくは少なくとも10-1の親和性を好ましくは指す。用語「特異的な」または「特異的に」は、サンプル中に存在する他の分子が標的分子に特異的な結合剤に著しくは結合しないことを示すために使用される。
【0106】
本明細書において使用される用語「量」は、本明細書において言及されるバイオマーカー(BMP10型ペプチドまたはナトリウム利尿ペプチドなど)の絶対量、前記バイオマーカーの相対的な量もしくは濃度、およびこれらに相関する任意の値もしくはパラメータを包含するか、またはこれらに由来し得る。このような値またはパラメータは、直接的な測定によって前記ペプチドから得られた全ての具体的な物理的または化学的特性に由来する強度シグナル値、例えば、質量スペクトルまたはNMRスペクトルにおける強度値を含む。さらに、この詳細な説明の他の箇所で特定されている間接的な測定によって得られる全ての値またはパラメータ、例えば、ペプチドに対する応答における生物学的読み出しシステムから決定される応答量、または特異的に結合したリガンドから得られる強度シグナルもまた包含される。前述の量またはパラメータに相関する値もまた全ての標準的な数学的操作によって得られ得ることが理解される。
【0107】
本明細書において使用される用語「比較する」は、対象から得たサンプルにおけるバイオマーカー(BMP10型ペプチド、およびNT-プロBNPまたはBNPなどのナトリウム利尿ペプチドなど)の量と、この詳細な説明の他の箇所で特定されているバイオマーカーの参照量との比較を指す。本明細書において使用される比較が、対応するパラメータまたは値の比較を通常は指すことが理解され、例えば、絶対量は絶対参照量と比較され、一方、濃度は参照濃度と比較され、または、サンプル中のバイオマーカーから得られた強度シグナルは、第1のサンプルから得られた同一のタイプの強度シグナルと比較される。比較は、手動でまたはコンピューターを利用して行われ得る。したがって、比較は、計算装置によって行われ得る。対象から得たサンプルにおけるバイオマーカーの決定されたまたは検出された量および参照量の値は、例えば互いに比較され得、前記比較は、比較のためのアルゴリズムを実行するコンピュータープログラムによって自動的に行われ得る。前記評価を行うコンピュータープログラムは、所望の評価を適切なアウトプットフォーマットで提供する。コンピューターを利用した比較では、決定された量の値は、コンピュータープログラムによってデータベースに保存されている適切な参照に対応する値と比較され得る。コンピュータープログラムは、比較の結果をさらに評価し得、すなわち、所望の評価を適切なアウトプットフォーマットで自動的に提供する。コンピューターを利用した比較では、決定された量の値は、コンピュータープログラムによってデータベースに保存されている適切な参照に対応する値と比較され得る。コンピュータープログラムは、比較の結果をさらに評価し得、すなわち、所望の評価を適切なアウトプットフォーマットで自動的に提供する。
【0108】
本発明に従うと、BMP10型ペプチドの量、および場合によって、少なくとも1つのさらなるバイオマーカー(ナトリウム利尿ペプチドなど)の量は、参照と比較される。参照は、好ましくは参照量である。用語「参照量」は、当業者に良く理解されている。参照量が本明細書において記載されている心房細動の評価を可能にすることが理解される。例えば、心房細動を診断するための方法に関連して、参照量は好ましくは、対象の、(i)心房細動に罹患している対象の群、(ii)心房細動に罹患していない対象の群、のいずれかへの割り当てを可能にする量を指す。適切な参照量は、試験サンプルと共に、すなわち、試験サンプルと同時にまたは試験サンプルに続いて分析される、第1のサンプルから決定され得る。
【0109】
BMP10型ペプチドの量はBMP10型ペプチドの参照量と比較され、その一方で、少なくとも1つのさらなるバイオマーカー(ナトリウム利尿ペプチドなど)の量は前記少なくとも1つの少なくとも1つのさらなるバイオマーカー(ナトリウム利尿ペプチドなど)の参照量と比較されることが理解される。2つ以上のマーカーの量が決定される場合、組み合わされたスコアが2つ以上のマーカーの量(BMP10型ペプチドの量およびナトリウム利尿ペプチドの量など)に基づいて計算されることが想定される。その後のステップで、スコアは、参照スコアと比較される。
【0110】
参照量は、原則的に、標準的な統計方法を適用することによって、所与のバイオマーカーについての代表値または平均値に基づいて、上記で特定された対象のコホートについて計算され得る。特に、有害事象の有無を診断することを目的としている方法などの試験の精度は、その受信者操作特性(ROC)によって最も良く記載される(特に、Zweig MH.ら、Clin.Chem.1993、39:561~577を参照されたい)。ROCのグラフは、観察されたデータの全範囲にわたって決定閾値を連続的に変化させることによって得られる、全ての敏感度対特異度の対のプロットである。診断方法の臨床的性能は、その精度、すなわち、その、対象をある特定の予後または診断に正確に割り当てる能力に依存する。ROCプロットは、区別を行うために適切な全範囲の閾値についての敏感度とそれに対する1-特異度をプロットすることによって、2つの分布間のオーバーラップを示す。y軸は敏感度、または、真陽性の数の試験結果の数と偽陰性の試験結果の数との積に対する真陽性の試験結果の数の割合として定義される、真陽性率である。これは、罹患した下位群からのみ計算される。x軸は、真陰性の結果の数と偽陽性の結果の数との積に対する偽陽性の結果の数の比率として定義される、偽陽性率、または1-特異度である。これは特異性の指標であり、罹患していない下位群から全体として計算される。真陽性率および偽陽性率は、2つの異なる下位群の試験結果を使用することによって全体として別個に計算されるため、ROCプロットは、コホートにおける有害事象の有病率とは無関係である。ROCプロット上の各ポイントは、特定の決定閾値に対応する、敏感度/1-特異度の対を表す。完全な区別を有する(2つの結果分布においてオーバーラップがない)試験は、左上の角を通過するROCプロットを有し、この場合、真陽性率は1.0または100%であり(完全な敏感度)、偽陽性率は0である(完全な特異度)。区別のない(2つの群の結果分布が同一の)試験での理論上のプロットは、左下の角から右上の角までの45°の対角線である。ほとんどのプロットは、これらの2つの極値の間にある。ROCプロットが45°の対角線の完全に下にある場合、これは、「陽性」についての基準を「~より大きい」から「~より小さい」に逆転させることによって容易に修正され、または逆の場合も同様である。定質的に、プロットが左上の角に近いほど、試験の全体的な精度は高い。所望の信頼区間に応じて、閾値はROC曲線から導かれ得、それぞれ敏感度および特異度の適正なバランスでの所与の有害事象の診断を可能にする。したがって、本発明の方法に使用される参照、すなわち、心房細動の評価を可能にする閾値は、好ましくは、上記のような前記コホートについてROCを確立し、このROCから閾値量を導くことによって、得ることができる。診断方法の所望の敏感度および特異度に応じて、ROCプロットは、適切な閾値を導くことを可能にする。例えば、心房細動に罹患している対象を排除する(すなわち除外診断)ために、最適な敏感度が望ましく、その一方で、対象を心房細動に罹患していると評価する(すなわち確定診断)ためには、最適な特異度が想定されることが理解されよう。一実施形態において、本発明の方法は、対象が心房細動および/または脳卒中の発症もしくは再発などの心房細動に伴う有害事象のリスクがあることを予測することを可能にする。
【0111】
好ましい実施形態において、本明細書における用語「参照量」は、所定の値を指す。前記所定の値は、心房細動を評価すること、ひいては、心房細動を診断すること、発作性心房細動と持続性心房細動とを区別すること、心房細動に伴う有害事象のリスクを予測すること、心電図記録法(ECG)を受けた方がよい対象を同定すること、または心房細動のための治療法を評価することを可能にする。参照量は評価のタイプに応じて異なり得ることが理解される。例えば、AFを区別するためのBMP10型ペプチドの参照量は、AFを診断するための参照量よりも通常は多い。しかし、このことは、当業者によって考慮される。
【0112】
上記で説明したように、用語「心房細動を評価する」は、好ましくは、心房細動の診断、発作性心房細動と持続性心房細動との区別、心房細動に伴う有害事象のリスクの予測、心電図記録法(ECG)を受けた方がよい対象の同定、または心房細動のための治療法の評価を指す。以下に、本発明の方法のこれらの実施形態をより詳細に記載する。上記の定義は適宜適用される。
心房細動を診断するための方法
本明細書において使用される用語「診断する」は、本発明の方法に従って言及される対象が心房細動(AF)に罹患しているか否かを評価する手段である。好ましい実施形態において、対象が発作性AFに罹患していることが診断される。代替的な実施形態において、対象がAFに罹患していないことが診断される。
【0113】
本発明に従って、全てのタイプのAFが診断され得る。したがって、心房細動は、発作性AF、持続性AF、または永続性AFであり得る。好ましくは、特に永続性AFに罹患していない対象において、発作性心房細動または持続性心房細動が診断される。
【0114】
対象がAFに罹患しているか否かの実際の診断は、診断の確認などの(例えば、ホルターECGなどのECGによる)さらなるステップを含み得る。したがって、本発明は、患者が心房細動に罹患している可能性を評価することを可能にする。BMP10の量が参照量を超える対象は、心房細動に罹患している可能性が高く、その一方で、BMP10の量が参照量を下回る対象は、心房細動に罹患している可能性が低い。したがって、本発明の文脈における用語「診断する」は、医師による、対象が心房細動に罹患しているか否かの評価を補助することも包含する。
【0115】
好ましくは、1つの参照量(もしくは複数の参照量)と比較して増大している、試験対象から得たサンプルにおけるBMP10型ペプチドの量(ならびに場合によって、ESM-1、Ang-2、FABP-3、および/もしくはナトリウム利尿ペプチドなどの少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量)は、心房細動に罹患している対象の指標であり、ならびに/または、1つの参照量(もしくは複数の参照量)と比較して低下している、対象から得たサンプルにおけるBMP10型ペプチドの量(ならびに場合によって、ESM-1、Ang-2、FABP-3、および/もしくはナトリウム利尿ペプチドなどの少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量)は、心房細動に罹患していない対象の指標である。
【0116】
好ましい実施形態において、参照量、すなわち、BMP10型ペプチドの参照量、および決定される場合には少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの参照量は、心房細動に罹患している対象と、心房細動に罹患していない対象とを区別することを可能にする。好ましくは、前記参照量は、所定の値である。
【0117】
一実施形態において、本発明の方法は、心房細動に罹患している対象の診断を可能にする。好ましくは、BMP10型ペプチドの量(ならびに場合によって、ESM-1、Ang-2、FABP-3、および/またはナトリウム利尿ペプチドなどの少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量)が参照量を超えていれば、対象はAFに罹患している。一実施形態において、BMP10型ペプチドの量が、参照値のある一定のパーセンタイル(例えば99パーセンタイル)上限参照値(URL)を超えていれば、対象はAFに罹患している。
【0118】
心房細動を診断する方法の一実施形態において、前記方法はさらに、診断の結果に基づいて、心房細動のための治療法を推奨および/または開始するステップを含む。好ましくは、対象がAFに罹患していると診断される場合に、治療法は推奨または開始される。心房細動のための好ましい治療法は、本明細書の別の箇所で開示されている(抗凝固療法など)。
【0119】
発作性心房細動と持続性心房細動とを区別するための方法
本明細書において使用される用語「区別する」は、対象において発作性心房細動と持続性心房細動とを区別することを意味する。本明細書において使用されるこの用語は、好ましくは、対象において発作性心房細動および持続性心房細動を鑑別診断することを含む。したがって、本発明の方法は、心房細動を有する対象が発作性心房細動に罹患しているか持続性心房細動に罹患しているかを評価することを可能にする。実際の区別は、区別の確認などのさらなるステップを含み得る。したがって、本発明の文脈における用語「区別」はまた、医師による発作性AFと持続性AFとの区別を補助することも包含する。
【0120】
好ましくは、1つの参照量(もしくは複数の参照量)と比較して増大している、対象から得たサンプルにおけるBMP10型ペプチドの量(ならびに場合によって、ESM-1、Ang-2、FABP-3、および/もしくはナトリウム利尿ペプチドなどの少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量)は、持続性心房細動に罹患している対象の指標であり、ならびに/または、1つの参照量(もしくは複数の参照量)と比較して低下している、対象から得たサンプルにおけるBMP10型ペプチドの量(ならびに場合によって、ESM-1、Ang-2、FABP-3、および/もしくはナトリウム利尿ペプチドなどの少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量)は、発作性心房細動に罹患している対象の指標である。両AFタイプ(発作性および持続性)において、BMP10型ペプチドの量は、非AF対象の参照量と比較して増大している。
【0121】
好ましい実施形態において、参照量は、発作性心房細動に罹患している対象と持続性心房細動に罹患している対象とを区別することを可能にする。好ましくは、前記参照量は、所定の値である。
【0122】
発作性心房細動と持続性心房細動とを区別する上記の方法の一実施形態において、対象は、永続性心房細動に罹患していない。
【0123】
心房細動に伴う有害事象のリスクを予測するための方法
本発明の方法はまた、有害事象のリスクを予測するための方法も検討する。
【0124】
一実施形態において、本明細書において示される有害事象のリスクは、心房細動に伴う任意の有害事象の予測であり得る。好ましくは、前記有害事象は、心房細動の再発(カルディオバージョン後の心房細動の再発など)および脳卒中から選択される。したがって、(心房細動に罹患している)対象が将来的に有害事象(脳卒中または心房細動の再発など)に罹患するリスクが予測される。
【0125】
さらに、心房細動に伴う前記有害事象が、心房細動の病歴が分かっていない対象における心房細動の発症であることが、想定される。
特に好ましい実施形態において、脳卒中のリスクが予測される。
【0126】
したがって、本発明は、
a)対象から得たサンプルにおいて、BMP10型ペプチドの量を決定するステップ、および
b)BMP10型ペプチドの量を参照量と比較するステップであって、それによって脳卒中のリスクが予測される、ステップ
を含む、対象における脳卒中のリスクを予測するための方法に関する。
【0127】
特に、本発明は、
(a)対象から得た少なくとも1つのサンプルにおいて、BMP10型ペプチド(骨形成タンパク質10)の量、ならびに場合によって、ナトリウム利尿ペプチド、ESM-1(エンドカン)、Ang2(アンジオポエチン2)、およびFABP-3(脂肪酸結合タンパク質3)からなる群から選択される少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量を決定するステップ、ならびに
(b)BMP10型ペプチドの量をBMP10型ペプチドの参照量と比較し、および場合によって、少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量を前記少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの参照量と比較するステップであって、それによって脳卒中のリスクが予測される、ステップ
を含む、対象における脳卒中のリスクを予測するための方法に関する。
【0128】
好ましくは、本明細書において使用される用語「リスクを予測する」は、対象が本明細書において言及される有害事象(例えば脳卒中)に罹患する可能性を評価することを指す。典型的には、対象が前記有害事象に罹患するリスクがある(したがって、リスクが上昇している)かリスクがない(したがって、リスクが下がっている)かが予測される。したがって、本発明の方法は、前記有害事象に罹患するリスクがある対象とリスクがない対象とを区別することを可能にする。さらに、本発明の方法が、リスクが下がっている対象、リスクが平均的な対象、またはリスクが上昇している対象の間を区別することを可能にすることが、想定される。
【0129】
上記で説明したように、ある一定の時間窓の中で前記有害事象に罹患するリスク(および可能性)が予測される。本発明の好ましい実施形態において、予測窓は、約3ヶ月、約6ヶ月、または特に、約1年の期間である。したがって、短期間のリスクが予測される。
【0130】
別の好ましい実施形態において、予測窓は、約5年の期間である(例えば、脳卒中の予測では)。さらに、予測窓は、約6年の期間であり得る(例えば、脳卒中の予測では)。あるいは、予測窓は約10年であり得る。また、予測窓が1~3年の期間であることが想定される。したがって、1~3年以内に脳卒中に罹患するリスクが予測される。また、予測窓が1~10年の期間であることが想定される。したがって、1~10年以内に脳卒中に罹患するリスクが予測される。
【0131】
好ましくは、前記予測窓は、本発明の方法の完了から計算される。さらに好ましくは、前記予測窓は、試験されるサンプルが得られた時点から計算される。当業者には理解されるように、リスクの予測は通常、100%の対象について正確であることを意図したものではない。この用語は、しかし、予測が統計上有意な割合の対象に対して適正かつ正確な様式で行われ得ることを要する。割合が統計上有意であるかどうかは、様々な周知の統計評価ツール、例えば、信頼区間の決定、p値の決定、スチューデントt検定、マン・ホイットニー検定などを使用して、当業者によるさらなる苦労を伴うことなく決定され得る。詳細は、DowdyおよびWearden、Statistics for Research、John Wiley & Sons、New York 1983で見られる。好ましい信頼区間は、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%である。p値は、好ましくは、0.1、0.05、0.01、0.005、または0.0001である。
【0132】
好ましい実施形態において、「前記有害事象に罹患するリスクを予測する」という表現は、本発明の方法によって分析される対象が、前記有害事象に罹患するリスクがある対象の群、または前記有害事象(脳卒中など)に罹患するリスクがない対象の群のいずれかに割り当てられることを意味する。したがって、対象が、前記有害事象に罹患するリスクがあるかまたはリスクがないかが予測される。本明細書において使用される場合、「前記有害事象に罹患するリスクがある対象」は、好ましくは、前記有害事象に罹患するリスクが上昇している(好ましくは予測窓の中で)。好ましくは、前記リスクは、対象のコホートにおける平均リスクと比較して上昇している。本明細書において使用される場合、「前記有害事象に罹患するリスクがない対象」は、好ましくは、前記有害事象に罹患するリスクが低減している(好ましくは予測窓の中で)。好ましくは、前記リスクは、対象のコホートにおける平均リスクと比較して低減している。前記有害事象に罹患するリスクがある対象は、好ましくは約1年の予測窓の中で、少なくとも20%以上の、好ましくは少なくとも30%の、心房細動の再発または発症などの前記有害事象に罹患するリスクを好ましくは有する。前記有害事象に罹患するリスクがない対象は、好ましくは1年の予測窓の中で、12%未満の、さらに好ましくは10%未満の、前記有害事象に罹患するリスクを好ましくは有する。
【0133】
脳卒中の予測に関して、前記有害事象に罹患するリスクがある対象は、好ましくは約5年、または特に約6年の予測窓の中で、少なくとも10%以上の、好ましくは少なくとも13%の前記有害事象に罹患するリスクを好ましくは有する。前記有害事象に罹患するリスクがない対象は、好ましくは約5年、または特に約6年の予測窓の中で、10%未満の、さらに好ましくは8%未満の、または最も好ましくは5%未満の前記有害事象に罹患するリスクを、好ましくは有する。リスクは、対象が抗凝固療法を受けていない場合には、より高い場合がある。このことは、当業者によって考慮される。
【0134】
好ましくは、1つの参照量(もしくは複数の参照量)と比較して増大している、対象から得たサンプルにおけるBMP10型ペプチドの量(ならびに場合によって、ESM-1、Ang-2、FABP-3、および/もしくはナトリウム利尿ペプチドなどの少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量)は、心房細動に伴う有害事象のリスクがある対象の指標であり、ならびに/または、1つの参照量(もしくは複数の参照量)と比較して低下している、対象から得たサンプルにおけるBMP10型ペプチドの量(ならびに場合によって、ESM-1、Ang-2、FABP-3、および/もしくはナトリウム利尿ペプチドなどの少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量)は、心房細動に伴う有害事象のリスクがない対象の指標である。
【0135】
好ましい実施形態において、1つの参照量(または複数の参照量)は、本明細書において言及される有害事象のリスクがある対象と、前記有害事象のリスクがない対象との区別を可能にする。好ましくは、前記参照量は、所定の値である。
【0136】
予測される有害事象は、好ましくは脳卒中である。用語「脳卒中」は、当技術分野において周知である。本明細書において使用される場合、この用語は、好ましくは、虚血性脳卒中、特に大脳の虚血性脳卒中を指す。本発明の方法によって予測される脳卒中は、脳細胞への酸素の供給不足をもたらす、脳またはその部分への血流量の低減によって生じる。特に、脳卒中は、脳細胞の死に起因する不可逆的な組織の損傷をもたらす。脳卒中の症候は、当技術分野において周知である。例えば、脳卒中の症候は、顔面、腕、または脚、特に身体の片側の突然のしびれまたは脱力、突然の意識障害、言語障害または認識障害、片目または両目の突然の視覚障害、および突然の歩行障害、めまい、平衡感覚障害または協調運動障害を含む。虚血性脳卒中は、脳主幹動脈のアテローム性血栓症もしくは塞栓症によって、凝固障害もしくは非アテローム性血管疾患によって、または全身血流量の低減をもたらす心臓虚血によって生じ得る。虚血性脳卒中は、好ましくは、アテローム血栓性脳卒中、心原生脳卒中、およびラクナ脳卒中からなる群から選択される。好ましくは、予測される脳卒中は、急性虚血性脳卒中、特に心原生脳卒中である。心原生脳卒中(塞栓性脳卒中または血栓塞栓性脳卒中とも呼ばれることが多い)は、心房細動によって生じ得る。
【0137】
好ましくは、前記脳卒中は、心房細動に伴う。さらに好ましくは、脳卒中は、心房細動によって生じる。しかし、対象が心房細動の病歴を有していないことも想定される。
好ましくは、脳卒中と心房細動のエピソードとの間の一時的な関係がある場合、脳卒中は心房細動に伴う。さらに好ましくは、脳卒中が心房細動によって生じる場合、脳卒中は心房細動に伴う。最も好ましくは、脳卒中が心房細動によって生じ得る場合、脳卒中は心房細動に伴う。例えば、心原生脳卒中(塞栓性脳卒中または血栓塞栓性脳卒中とも呼ばれることが多い)は、心房細動によって生じ得る。好ましくは、AFに伴う脳卒中は、経口抗凝固剤によって予防され得る。同様に好ましくは、試験される対象が心房細動に罹患しているおよび/または心房細動の病歴が分かっている場合、脳卒中は心房細動に伴うと見なされる。また、一実施形態において、対象が心房細動に罹患していることが疑われる場合、脳卒中は心房細動に伴うと見なされ得る。
【0138】
用語「脳卒中」は、好ましくは、出血性脳卒中を含まない。
有害事象(脳卒中など)を予測する前述の方法の好ましい実施形態において、試験される対象は、心房細動に罹患している。さらに好ましくは、対象は、心房細動の病歴が分かっている。有害事象を予測するための方法に従って、対象は、永続性心房細動に、さらに好ましくは持続性心房細動に、最も好ましくは発作性心房細動に、好ましくは罹患している。
【0139】
有害事象を予測する方法の一実施形態において、心房細動に罹患している対象は、サンプルが得られる時に心房細動のエピソードを経験している。有害事象を予測する方法の別の実施形態において、心房細動に罹患している対象は、サンプルが得られる時に心房細動のエピソードを経験していない(したがって、正常なサイナスリズムを有している)。さらに、リスクが予測される対象は、抗凝固療法を受けていてよい。
【0140】
有害事象を予測する方法の別の実施形態において、試験される対象は、心房細動の病歴が分かっていない。特に、対象が心房細動に罹患していないことが想定される。
本発明の方法は、オーダーメード医療を補助し得る。好ましい実施形態において、対象における脳卒中のリスクを予測するための方法は、さらに、i)抗凝固療法を推奨するステップ、または、ii)対象が、脳卒中に罹患するリスクがあると同定されていれば、抗凝固療法の強化を推奨するステップを含む。好ましい実施形態において、対象における脳卒中のリスクを予測するための方法は、さらに、i)抗凝固療法を開始するステップ、または、ii)対象が(本発明の方法によって)脳卒中に罹患するリスクがあると同定されていれば、抗凝固療法を強化するステップを含む。
【0141】
試験対象が抗凝固療法を受けている場合、および対象が(本発明の方法によって)脳卒中に罹患するリスクがないと同定されている場合、抗凝固療法の投与量は低減され得る。したがって、投与量の低減が推奨され得る。投与量を低減させることで、副作用(出血など)に罹患するリスクが低減し得る。
【0142】
本明細書において使用される用語「推奨する」は、対象に適用され得る治療法についての提案を確立することを意味する。しかし、いかなるものであっても実際の治療法の適用はこの用語に含まれないことが理解される。推奨される治療法は、本発明の方法によって提供されるものの結果に応じる。
【0143】
特に、以下が適用される。
試験される対象が抗凝固療法を受けていない場合、対象が、脳卒中に罹患するリスクがあると同定されていれば、抗凝固剤の開始が推奨される。したがって、抗凝固療法が開始される。
【0144】
試験される対象が抗凝固療法を既に受けている場合、対象が、脳卒中に罹患するリスクがあると同定されていれば、抗凝固剤の強化が推奨される。したがって、抗凝固療法が強化される。
【0145】
好ましい実施形態において、抗凝固療法は、抗凝固剤の投与量、すなわち、現在投与されている凝固剤の投与量を増大させることによって強化される。
特に好ましい実施形態において、抗凝固療法は、現在投与されている抗凝固剤をさらに効果的な抗凝固剤で置き換えることによって強化される。したがって、抗凝固剤の置き換えが推奨される。
【0146】
Hijaziら、The Lancet 2016 387、2302~2311(図4)において示されているように、ハイリスクの患者におけるより良好な予防が、ビタミンKアンタゴニストであるワルファリンよりも経口抗凝固剤であるアピキサバンで達成されることが記載されている。
【0147】
したがって、試験される対象が、ワルファリンまたはジクマロールなどのビタミンKアンタゴニストで処置されている対象であることが、想定される。対象が、(本発明の方法によって)脳卒中に罹患するリスクがあると同定されていれば、経口抗凝固剤、特に、ダビガトラン、リバーロキサバン、またはアピキサバンでのビタミンKアンタゴニストの置き換えが推奨される。したがって、ビタミンKアンタゴニストでの治療は中止され、経口抗凝固剤での治療が開始される。
心電図記録法(ECG)を受けた方がよい対象を同定するための方法
本発明の方法のこの実施形態に従って、バイオマーカーで試験される対象が心電図記録法(ECG)、すなわち心電図記録法評価を受けた方がよいかが評価される。前記評価は、診断のために、すなわち、前記対象におけるAFの存在または不存在を検出するために行われる。
【0148】
本明細書において使用される用語「対象を同定する」は、好ましくは、対象のサンプル中のBMP10の量(および場合によって、少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量)に関して生成された情報またはデータを使用して、ECGを受けた方がよい対象を同定することを指す。同定される対象は、AFに罹患する可能性が増大している。ECG評価は確認として行われる。
【0149】
心電図記録法(ECGと省略される)は、適切なECGによって心臓の電気的活性を記録するプロセスである。ECG装置は、身体全体を皮膚まで広がる、心臓によって生じる電気的シグナルを記録する。電気的シグナルの記録は、試験対象の皮膚をECG装置に含まれる電極と接触させることによって行われる。記録を得るプロセスは、非侵襲性であり、リスクがない。ECGは、心房細動の診断のために、すなわち、試験対象における心房細動の存在または不存在の評価のために行われる。本発明の方法の実施形態において、ECG装置は、1リード装置(1リードの携帯型ECG装置など)である。別の好ましい実施形態において、ECG装置は、ホルターモニターなどの12リードECG装置である。
【0150】
好ましくは、1つの参照量(もしくは複数の参照量)と比較して増大している、試験対象から得たサンプルにおけるBMP10型ペプチドの量(ならびに場合によって、ESM-1、Ang-2、FABP-3、および/もしくはナトリウム利尿ペプチドなどの少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量)は、ECGを受けた方がよい対象の指標であり、ならびに/または、1つの参照量(もしくは複数の参照量)と比較して低下している、対象から得たサンプルにおけるBMP10型ペプチドの量(ならびに場合によって、ESM-1、Ang-2、FABP-3、および/もしくはナトリウム利尿ペプチドなどの少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量)は、ECGを受けなくてよい対象の指標である。
【0151】
好ましい実施形態において、参照量は、ECGを受けた方がよい対象と、ECGを受けなくてよい対象とを区別することを可能にする。好ましくは、前記参照量は、所定の値である。
【0152】
前述の方法の一実施形態において、本方法は、特に、試験対象のサンプルにおけるBMP10型ペプチドの量(ならびに場合によって、ESM-1、Ang-2、FABP-3、および/またはナトリウム利尿ペプチドなどの少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量)が、1つの参照量(または複数の参照量)と比較して増大している場合に、心電図記録法を受けた方がよい対象を同定すること、ならびに、同定された対象に心電図記録法を実施することを含む。
心房細動のための治療法の評価のための方法
本明細書において使用される場合、用語「心房細動のための治療法を評価する」は、好ましくは、心房細動を処置することを目的とした治療法の評価を指す。特に、治療法の有効性が評価される。
【0153】
評価される治療法は、心房細動を処置することを目的とした任意の治療法であり得る。好ましくは、前記治療法は、少なくとも1つの抗凝固剤の投与、リズム制御、速度制御、カルディオバージョン、およびアブレーションからなる群から選択される。前記治療法は、当技術分野において周知であり、例えば、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる、Fuster Vら、Circulation 2011、123:e269~e367において概説されている。
【0154】
一実施形態において、治療法は、少なくとも1つの抗凝固剤の投与、すなわち、抗凝固療法である。抗凝固療法は、好ましくは、前記対象における抗凝固剤のリスクを低減させることを目的としている治療法である。少なくとも1つの抗凝固剤の投与は、血液の凝固および関連する脳卒中を低減させるまたは予防することを目的としている。好ましい実施形態において、少なくとも1つの抗凝固剤は、ヘパリン、クマリン誘導体(すなわち、ビタミンKアンタゴニスト)、特にワルファリンまたはジクマロール、経口抗凝固剤、特に、ダビガトラン、リバーロキサバン、またはアピキサバン、組織因子経路阻害剤(TFPI)、抗トロンビンIII、因子IXa阻害剤、因子Xa阻害剤、因子VaおよびVIIIaの阻害剤、ならびにトロンビン阻害剤(抗IIa型)からなる群から選択される。したがって、対象が前述の医薬の少なくとも1つを摂取することが想定される。
【0155】
好ましい実施形態において、抗凝固剤は、ワルファリンまたはジクマロールなどのビタミンKアンタゴニストである。ワルファリンまたはジクマロールなどのビタミンKアンタゴニストはそれほど高価ではないが、至適範囲内時間の変動を伴う、不便で、扱いにくく、信頼性の低い場合が多い処置であるため、より良い患者コンプライアンスを要する。NOAC(新規経口抗凝固剤)は、直接的な因子Xa阻害剤(アピキサバン、リバーロキサバン、ダレキサバン、エドキサバン)、直接的なトロンビン阻害剤(ダビガトラン)、およびPAR-1アンタゴニスト(ボラパクサール、アトパキサール)を含む。
【0156】
別の好ましい実施形態において、抗凝固剤および経口抗凝固剤は、特に、アピキサバン、リバーロキサバン、ダレキサバン、エドキサバン、ダビガトラン、ボラパクサール、またはアトパキサールである。
【0157】
したがって、試験される対象は、試験の時点で(すなわち、サンプルが投与される時点で)、経口抗凝固剤またはビタミンKアンタゴニストでの治療法を受けていてよい。
好ましい実施形態において、心房細動のための治療法の評価は、前記治療法のモニタリングである。この実施形態において、参照量は、好ましくは、早めに得られたサンプル(すなわち、ステップaにおいて試験サンプルの前に得られているサンプル)におけるBMP10の量である。
【0158】
場合によって、本明細書において言及される少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量が、BMP10型ペプチドの量に加えて決定される。
したがって、本発明は、
(a)対象から得た第1のサンプルにおいて、BMP10型ペプチド(骨形成タンパク質10型ペプチド)の量、ならびに場合によって、ナトリウム利尿ペプチド、ESM-1(エンドカン)、Ang2(アンジオポエチン2)、およびFABP-3(脂肪酸結合タンパク質3)からなる群から選択される少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量を決定するステップ、
(b)前記第1のサンプルの後に得られた、対象から得た第2のサンプルにおいて、BMP10型ペプチドの量、ならびに場合によって、ナトリウム利尿ペプチド、ESM-1(エンドカン)、Ang2(アンジオポエチン2)、およびFABP-3(脂肪酸結合タンパク質3)からなる群から選択される少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量を決定するステップ、
(c)第1のサンプルにおけるBMP10型ペプチドの量を、前記第2のサンプルにおけるBMP10型ペプチドの量と比較し、ならびに場合によって、第1のサンプルにおける前記少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量を、前記第2のサンプルにおける前記少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量と比較するステップであって、それによって抗凝固療法をモニタリングする、ステップ、
を含む、心房細動に好ましくは罹患している対象における心房細動のための治療法をモニタリングするための方法に関する。
【0159】
本明細書において使用される用語「モニタリング」は、好ましくは、本明細書の別の箇所で言及される治療法の効果を評価することに関する。したがって、治療法の有効性(抗凝固療法など)がモニタリングされる。
【0160】
前述の方法は、ステップc)で行われた比較ステップの結果に基づいて治療法をモニタリングするさらなるステップを含み得る。当業者には理解されるように、リスクの予測は、通常、100%の対象について正確であることを意図したものではない。この用語は、しかし、予測が統計上有意な割合の対象に対して適正かつ正確な様式で行われ得ることを要する。したがって、実際のモニタリングは、確認などのさらなるステップを含み得る。
【0161】
好ましくは、本発明の方法を実施することによって、対象が前記治療法に応答しているか否かを評価することができる。対象の状態が第1のサンプルを得る時と第2のサンプルを得る時との間で改善していれば、対象は治療法に応答している。好ましくは、状態が第1のサンプルを得る時と第2のサンプルを得る時との間で悪化していれば、対象は治療法に応答していない。
【0162】
好ましくは、第1のサンプルは、前記治療法の開始前に得られる。さらに好ましくは、サンプルは、前記治療法の開始の前1週間以内、特に2週間以内に得られる。しかし、第1のサンプルが前記治療法の開始後(しかし、第2のサンプルが得られる前)に得られ得ることも検討される。このケースでは、進行中の治療法がモニタリングされる。
【0163】
したがって、第2のサンプルは、第1のサンプルの後に得られる。第2のサンプルが前記治療法の開始後に得られることが理解される。
さらに、第2のサンプルが、第1のサンプルを得た後、適度な期間の後に得られることが、特に検討される。本明細書において言及されるバイオマーカーの量がすぐには(例えば、1分以内または1時間以内)変化しないことが理解される。したがって、この文脈における「適度な」は、第1のサンプルを得る時と第2のサンプルを得る時との間の間隔を指し、この間隔は、バイオマーカーを調整することを可能にする。したがって、第2のサンプルは、好ましくは、前記第1のサンプルの少なくとも1ヶ月後、少なくとも3ヶ月後、または特に、前記第1のサンプルの少なくとも6ヶ月後に得られる。
【0164】
好ましくは、第1のサンプルにおけるバイオマーカーの量と比較した、第2のサンプルにおけるバイオマーカーの量、すなわち、BMP10型ペプチドの量、および場合によってナトリウム利尿ペプチドの量の減少、さらに好ましくは有意な減少、および最も好ましくは統計上有意な減少は、治療法に応答している対象の指標である。したがって、治療法は効率的である。同様に好ましくは、第1のサンプルにおけるバイオマーカーの量と比較した、第2のサンプルにおけるBMP10型ペプチドの濃度の変化がないこと、または、バイオマーカーの量の増大、さらに好ましくは有意な増大、最も好ましくは統計上有意な増大は、治療法に応答していない対象の指標である。したがって、治療法は効果的ではない。
【0165】
用語「有意な」および「統計上有意な」は、当業者に既知である。したがって、増大または減少が有意または統計上有意であるかどうかは、様々な周知の統計評価ツールを使用して、当業者によるさらなる苦労を伴うことなく決定され得る。例えば、有意な増大または減少は、少なくとも10%、特に少なくとも20%の増大または減少である。
【0166】
治療法が対象の心房細動の再発のリスクを低減させる場合、対象は、治療法に応答していると見なされる。治療法が対象の心房細動の再発のリスクを低減させない場合、対象は、治療法に応答していないと見なされる。
【0167】
一実施形態において、対象が治療法に応答しない場合、治療法の強度が増大される。さらに、対象が治療法に応答する場合、治療法の強度が低下されることが想定される。例えば、治療法の強度は、投与される医薬の投与量を増大させることによって増大され得る。例えば、治療法の強度は、投与される医薬の投与量を減少させることによって低下され得る。それによって、出血などの望ましくない不都合な副作用を避けることが可能となり得る。
【0168】
別の好ましい実施形態において、心房細動のための治療法の評価は、心房細動のための治療法のガイダンスである。本明細書において使用される用語「ガイダンス」は、好ましくは、治療の間のバイオマーカー、すなわちBMP10型ペプチドの決定に基づく、経口抗凝固剤の用量の増大または減少などの、治療法の強度の調整に関する。
【0169】
さらに好ましい実施形態において、心房細動のための治療法の評価は、心房細動のための治療法の層別化である。したがって、心房細動のためのある特定の治療法に適格である対象が同定される。本明細書において使用される用語「層別化」は、好ましくは、特定の薬剤または手順の特定のリスク、同定された分子経路、および/または想定される有効性に基づく、適切な治療法の選択を指す。検出されるリスクに応じて、特に、不整脈に関する症候が最小のまたはない患者は、心室レート、カルディオバージョン、またはアブレーションの制御に適格となり、さもなければ、抗血栓療法のみを受けることとなる。
【0170】
本明細書において上記で記載されている定義および説明は、必要な変更を加えて、以下に適用される(別段の記載がある場合を除いて)。
本発明はさらに、心房細動の評価を補助する方法であって、
a)対象から得た少なくとも1つのサンプルを提供するステップ、
b)ステップa)で提供された少なくとも1つのサンプルにおいて、BMP10型ペプチドの量、ならびに場合によって、ナトリウム利尿ペプチド、ESM-1(エンドカン)、Ang2、およびFABP-3(脂肪酸結合タンパク質3)からなる群から選択される少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量を決定するステップ、ならびに
c)BMP10型ペプチドの決定された量についての、および場合によって、少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの決定された量についての情報を医師に提供し、それによって心房細動の評価を補助するステップ
を含む、方法に関する。
【0171】
医師は、主治医、すなわち、バイオマーカーの決定を要求した医師である。前述の方法は、心房細動の評価において主治医を補助する。したがって、本方法は、心房細動を評価する方法に関連して上記で言及された診断、予測、モニタリング、区別、同定を包含しない。
【0172】
サンプルを得る、前述の方法のステップa)は、サンプルを対象から抜き取ることを包含しない。好ましくは、サンプルは、サンプルを前記対象から受け取ることによって得られる。したがって、サンプルは引き渡され得る。
【0173】
一実施形態において、上記の方法は、
a)心房細動を評価する方法に関連して、特に、心房細動を予測する方法に関連して本明細書において言及されている、対象から得た少なくとも1つのサンプルを提供するステップ、
b)BMP10型ペプチドの量、ならびにナトリウム利尿ペプチド、ESM-1(エンドカン)、Ang2、およびFABP-3(脂肪酸結合タンパク質3)からなる群から選択される少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量を決定するステップ、ならびに
c)BMP10型ペプチドの決定された量についての、および場合によって、少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの決定された量についての情報を医師に提供し、それによって脳卒中の予測を補助するステップ
を含む、脳卒中の予測を補助する方法である。
【0174】
本発明はさらに、
a)BMP10型ペプチドについてのアッセイ、ならびに場合によって、ナトリウム利尿ペプチド、ESM-1(エンドカン)、Ang2、およびFABP-3(脂肪酸結合タンパク質3)からなる群から選択されるさらなるバイオマーカーについての少なくとも1つのさらなるアッセイを提供するステップ、ならびに
b)心房細動の評価における前記アッセイによって得られるまたは得られ得るアッセイ結果の使用のための指示を提供するステップ
を含む方法に関する。
【0175】
前述の方法の目的は、好ましくは、心房細動の評価における補助である。
指示は、本明細書において上記で記載される心房細動を評価する方法を実施するためのプロトコルを含む。さらに、指示は、BMP10型ペプチドの参照量についての少なくとも1つの値、および場合によって、ナトリウム利尿ペプチドの参照量についての少なくとも1つの値を含む。
【0176】
「アッセイ」は、好ましくは、バイオマーカーの量の決定に適したキットである。用語「キット」は、本明細書において以下に説明される。例えば、前記キットは、BMP10型ペプチドの少なくとも1つの検出剤、ならびに場合によって、ナトリウム利尿ペプチドに特異的に結合する作用剤、ESM-1に特異的に結合する作用剤、Ang2を特異的に結合する作用剤、およびFABP-3に特異的に結合する作用剤からなる群から選択される、少なくとも1つのさらなる作用剤を含む。したがって、1~4個の検出剤が存在し得る。1~4個のバイオマーカーの検出剤は、単一のキットでまたは別個のキットで提供され得る。
【0177】
前記試験によって得られるまたは得られ得る試験結果は、バイオマーカーの量についての値である。
一実施形態において、ステップb)は、脳卒中の予測における前記試験(本明細書の別の箇所で記載される)によって得られるまたは得られ得る試験結果を使用するための指示を提供することを含む。
【0178】
本発明はさらに、心房細動を評価するための、コンピューターを利用した方法であって、
a)処理装置で、BMP10型ペプチドの量についての値、ならびに場合によって、ナトリウム利尿ペプチド、ESM-1(エンドカン)、Ang2、およびFABP-3(脂肪酸結合タンパク質3)からなる群から選択される少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量についての少なくとも1つのさらなる値を受け取るステップであって、BMP10型ペプチドの前記量、および場合によって、少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量は、対象から得たサンプルにおいて決定されている、ステップ、
b)前記処理装置によって、ステップ(a)で受け取った1つまたは複数の値を、1つまたは複数の参照と比較するステップ、ならびに
c)比較ステップb)に基づいて心房細動を評価するステップ
を含む、方法に関する。
【0179】
上記の方法は、コンピューターを利用した方法である。好ましくは、コンピューターを利用した方法の全てのステップは、コンピューター(またはコンピューターネットワーク)の1つまたは複数の処理装置によって行われる。したがって、ステップ(c)における評価は、処理装置によって行われる。好ましくは、前記評価は、ステップ(b)の結果に基づく。
【0180】
ステップ(a)で受け取った1つまたは複数の値は、本明細書の別の箇所で記載される、対象から得たバイオマーカーの量の決定に由来する。好ましくは、値は、バイオマーカーの濃度についての値である。値は、典型的には、値を処理装置にアップロードするまたは送ることによって、処理装置に受け取られる。あるいは、値は、ユーザーインターフェースを介して値をインプットすることによって、処理装置に受け取られ得る。
【0181】
前述の方法の一実施形態において、ステップ(b)で示される1つの参照(または複数の参照)は、メモリから確立される。好ましくは、参照についての値は、メモリから確立される。
【0182】
前述のコンピューターを利用した本発明の方法の一実施形態において、ステップc)で行われた評価の結果は、結果を提示するように構成されたディスプレイを介して提供される。
【0183】
前述のコンピューターを利用した本発明の方法の一実施形態において、本方法は、ステップc)で行われた評価についての情報を対象の電子医療記録に転送するさらなるステップを含み得る。
心不全を診断するための方法
さらに、対象から得たサンプルにおけるBMP10型ペプチドの量の決定が心不全の診断を可能にすることが、本発明の研究において示されている。したがって、本発明はまた、BMP10型ペプチドに基づく(ならびに場合によって、ナトリウム利尿ペプチド、ESM-1、Ang2、および/またはFABP3にさらに基づく)、心不全を診断するための方法を検討する。
【0184】
心房細動の評価に関連して本明細書において上記で記載されている定義は、必要な変更を加えて、以下に適用される(別段の記載がある場合を除いて)。
したがって、本発明はさらに、対象における心不全を診断するための方法であって、
a)対象から得たサンプルにおいて、BMP10型ペプチドの量を決定するステップ、および
b)BMP10型ペプチドの量を参照量と比較するステップであって、それによって心不全が診断される、ステップ、
を含む、方法に関する。
【0185】
心不全を診断するための方法は、ナトリウム利尿ペプチド、ESM-1(エンドカン)、Ang2(アンジオポエチン2)、およびFABP-3(脂肪酸結合タンパク質3)からなる群から選択される少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量の決定、ならびに適切な参照量との比較をさらに含み得る。
【0186】
したがって、心不全を診断するための方法は、
a)対象から得た少なくとも1つのサンプルにおいて、BMP10型ペプチド(骨形成タンパク質10型ペプチド)の量、ならびに場合によって、ナトリウム利尿ペプチド、ESM-1(エンドカン)、Ang2(アンジオポエチン2)、およびFABP-3(脂肪酸結合タンパク質3)からなる群から選択される少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量を決定するステップ、ならびに
b)BMP10型ペプチドの量をBMP10型ペプチドの参照量と比較し、および場合によって、少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量を前記少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの参照量と比較するステップであって、それによって心不全が診断される、ステップ
を含み得る。
【0187】
本明細書において使用される用語「診断する」は、本発明の方法に従って言及される対象が心不全に罹患しているか否かを評価することを意味する。対象が心不全に罹患しているか否かの実際の診断は、診断の確認などのさらなるステップを含み得る。したがって、心不全の診断は、心不全の診断における補助であると理解される。したがって、本発明の文脈における用語「診断する」はまた、対象が心不全に罹患しているか否かの医師による評価を補助することを包含する。
【0188】
用語「心不全」(「HF」と省略される)は、当業者に周知である。本明細書において使用される場合、この用語は、好ましくは、当業者に知られている心不全の明白な徴候が伴う、心臓の収縮期機能障害および/または拡張期機能障害に関する。好ましくは、本明細書において言及される心不全はまた、慢性心不全である。本発明による心不全は、明白なおよび/または進行した心不全を含む。明白な心不全において、対象は、当業者に知られている心不全の症候を示す。
【0189】
本発明の一実施形態において、用語「心不全」は、左室駆出率(HFrEF)が低下した心不全を指す。本発明の別の実施形態において、用語「心不全」は、左室駆出率が保たれた心不全(HFpEF)を指す。
【0190】
HFは、様々な程度の重症度に分類され得る。NYHA(ニューヨーク心臓協会)分類に従うと、心不全患者は、NYHAクラスI、II、III、およびIVに属すると分類される。心不全を有する患者は、その心膜、心筋、冠状動脈循環、または心臓弁に対する構造的および機能的な変化を既に経験している。患者は、その健康を完全には回復させることはできず、処置が必要である。NYHAクラスIの患者は、心血管疾患の明らかな症候は有していないが、機能障害の客観的なエビデンスを既に有している。NYHAクラスIIの患者は、身体活動のわずかな制限を有する。NYHAクラスIIIの患者は、身体活動の顕著な制限を示す。NYHAクラスIVの患者は、不快感なしにはどのような身体活動も行うことができない。これらの患者は、休息時に心不全の症候を示す。
【0191】
この機能的な分類に、米国心臓病学会およびアメリカ心臓協会による、さらに最近の分類が加えられている(2005年にアップデートされたJ.Am.Coll.Cardiol.2001、38、2101~2113を参照されたく、J.Am.Coll.Cardiol.2005、46、e1~e82を参照されたい)。A、B、C、およびDの4ステージが定義されている。ステージAおよびBはHFではないが、「真の」HFを発症する前に早期に患者を同定することを補助すると考えられている。ステージAおよびBの患者は、HFの発症の危険因子を有する患者と定義されるのが最も的確である。例えば、左心室(LV)機能障害、肥大、または心腔の幾何学的な歪みをまだ示していない、冠動脈疾患、高血圧、または糖尿病を有する患者は、ステージAと見なされ、一方、無症候であるがLVの肥大および/またはLV機能障害を示す患者は、ステージBと示される。ステージCは、そして、根底にある構造的心疾患に伴う現在または過去のHF症候を有する患者(HF患者の大部分)を示し、そしてステージDは、真の難治性HFを有する患者を示す。
【0192】
本明細書において使用される場合、用語「心不全」には、好ましくは、上記で言及されたACC/AHA分類のステージA、B、C、およびDが含まれる。また、この用語には、NYHAクラスI、II、III、およびIVが含まれる。したがって、対象は、心不全の典型的な症候を示していてもいなくてもよい。
【0193】
好ましい実施形態において、用語「心不全」は、上記で言及されたACC/AHA分類に従ったステージAの心不全、または特に、ステージBの心不全を指す。処置は不可逆的な損傷が生じる前に開始され得るため、これらの初期段階の、特にステージAの同定は有利である。
【0194】
心不全を診断する方法に従って試験される対象は、好ましくは、心房細動に罹患していない。しかし、対象が心房細動に罹患していることも想定される。用語「心房細動」は、心不全を評価する方法に関連して定義される。
【0195】
好ましくは、心不全を診断する方法に関連して試験される対象は、心不全に罹患していることが疑われる。
用語「参照量」は、心房細動を評価する方法に関連して定義されている。心不全を診断するための方法において適用される参照量は、原則的に、上記のように決定され得る。
【0196】
好ましくは、参照量と比較して増大している、対象から得たサンプルにおけるBMP10型ペプチドの量(ならびに場合によって、ESM-1、Ang-2、FABP-3、および/もしくはナトリウム利尿ペプチドなどの少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量)は、心不全に罹患している対象の指標であり、ならびに/または、参照量と比較して減少している、対象から得たサンプルにおけるBMP10型ペプチドの量(ならびに場合によって、ESM-1、Ang-2、FABP-3、および/もしくはナトリウム利尿ペプチドなどの少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量)は、心不全に罹患していない対象の指標である。
【0197】
心不全を診断する方法の一実施形態において、前記方法はさらに、診断の結果に基づいて心不全のための治療法を推奨および/または開始するステップを含む。好ましくは、対象が心不全に罹患していると診断された場合、治療法は推奨または開始される。好ましくは、心不全の治療法は、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンギオテンシンII受容体ブロッカー、ベータブロッカー、およびアルドステロンアンタゴニストからなる群から選択される少なくとも1つの医薬の投与を含む。アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンギオテンシンII受容体ブロッカー、ベータブロッカー、およびアルドステロンアンタゴニストの例を、次の節で記載する。
対象の入院リスクを予測するための方法
一部の対象はより速く心不全に進行し、そのため、心不全に起因する入院のリスクが上昇していることが分かっている。これらの対象をなるべく早く同定することが重要であり、それは、このことによって、心不全への進行を予防するまたは遅延させる治療方針が可能になるためである。
【0198】
有利なことに、本発明の根底にある研究において、対象のサンプルにおけるBMP10型の量が心不全での入院のリスクがある対象の同定を可能にすることが見出されている。例えば、分析されたコホートのBMP10の第4四分位数における対象(実施例4)は、第1四分位数における対象と比較して、3年以内の期間の心不全での入院のリスクが約4倍であった。
【0199】
したがって、本発明はさらに、対象の心不全に起因する入院のリスクを予測するための方法であって、
(a)対象から得た少なくとも1つのサンプルにおいて、BMP10型ペプチド(骨形成タンパク質10型ペプチド)の量、ならびに場合によって、ナトリウム利尿ペプチド、ESM-1(エンドカン)、Ang2(アンジオポエチン2)、およびFABP-3(脂肪酸結合タンパク質3)からなる群から選択される少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量を決定するステップ、ならびに
(b)BMP10型ペプチドの量をBMP10型ペプチドの参照量と比較する、および場合によって、少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量を前記少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの参照量と比較するステップ
を含む、方法に関する。
【0200】
心房細動を評価する方法および心不全を診断する方法に関連して行われた定義および説明は、好ましくは、対象の心不全に起因する入院のリスクを予測するための方法に適用される。
【0201】
上記の方法は、対象の心不全に起因する入院のリスクを予測するステップ(c)をさらに含み得る。したがって、ステップ(a)、(b)、(c)は、好ましくは以下の通りである:
(a)対象から得た少なくとも1つのサンプルにおいて、BMP10型ペプチド(骨形成タンパク質10型ペプチド)の量、ならびに場合によって、ナトリウム利尿ペプチド、ESM-1(エンドカン)、Ang2(アンジオポエチン2)、およびFABP-3(脂肪酸結合タンパク質3)からなる群から選択される少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量を決定するステップ、ならびに
(b)BMP10型ペプチドの量を参照量と比較する、および場合によって、少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの量を前記少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの参照量と比較するステップ、ならびに
(c)対象の心不全に起因する入院のリスクを予測するステップ。
【0202】
好ましくは、予測は、ステップ(b)における比較の結果に基づく。
表現「入院」は、当業者によって良く理解されており、好ましくは、特に入院患者ベースで、対象が病院に入っていることを意味する。入院は心不全に起因する。したがって、心不全は入院の原因である。好ましくは、入院は、急性心不全または慢性心不全に起因する入院である。したがって、心不全は、急性心不全および慢性心不全の両方を含む。さらに好ましくは、入院は、急性心不全に起因する入院である。したがって、対象の心不全に起因する入院のリスクが予測される。
【0203】
用語「心不全」は、上記で定義されている。この定義は、適宜適用される。一部の実施形態において、入院は、ACC/AHA分類に従ったステージCまたはDと分類される心不全に起因する。ACC/AHA分類は、当技術分野において周知であり、例えば、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる、Huntら(Journal of the American College of Cardiology、第46巻、第6号、2005年9月20日、e1~e82頁、ACC/AHA Practice Guidelines)において記載されている。
【0204】
前述の方法に従って、対象の心不全に起因する入院のリスクが予測される。したがって、心不全に起因する入院のリスクがある対象、または心不全に起因する入院のリスクがない対象が同定され得る。したがって、前述の方法に従って本明細書において使用される用語「リスクを予測する」は、好ましくは、心不全に起因する入院の可能性を評価することを指す。一部の実施形態において、本発明の上記の方法は、心不全に起因する入院のリスクがある対象と心不全に起因する入院のリスクがない対象との区別を可能にする。
【0205】
本発明に従って、用語「リスクを予測する」は、心不全に起因する入院のリスクの予測における補助と理解される。最終的な予測は原則的に医師によって行われ、さらなる診断結果を含み得る。
【0206】
当業者には理解されるように、リスクの予測は通常、100%の対象について正確であることを意図したものではない。この用語は、好ましくは、予測が統計上有意な割合の対象に対して適正かつ正確な様式で行われ得ることを意味する。割合が統計上有意であるかどうかは、様々な周知の統計評価ツール、例えば、信頼区間の決定、p値の決定、スチューデントt検定、マン・ホイットニー検定などを使用して、当業者によるさらなる苦労を伴うことなく決定され得る。詳細は、DowdyおよびWearden、Statistics for Research、John Wiley & Sons、New York 1983で見られる。好ましい信頼区間は、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%である。p値は、好ましくは、0.1、0.05、0.01、0.005、または0.0001である。
【0207】
好ましくは、ある一定の時間窓の中でのリスク/可能性が予測される。一部の実施形態において、前記予測窓は、本発明の方法の完了から計算される。特に、前記予測窓は、試験されるサンプルが得られた時点から計算される。
【0208】
本発明の好ましい実施形態において、予測窓は、好ましくは、少なくとも1年間、少なくとも2年間、少なくとも3年間、少なくとも4年間、少なくとも5年間、または少なくとも10年間、または任意の間欠的な時間範囲間隔である。本発明の別の好ましい実施形態において、予測窓は、好ましくは、最大5年、さらに好ましくは最大4年、または最も好ましくは最大3年の期間である。したがって、最大3年、最大4年、または最大5年の期間内のリスクが予測される。また、1~5年の期間の予測窓が想定される。あるいは、予測窓は、1~3年の期間であり得る。
【0209】
好ましい実施形態において、3年以内の心不全に起因する入院のリスクが予測される。
好ましくは、上記の本発明の方法によって分析される対象は、心不全に起因する入院のリスクがある対象の群、または心不全に起因する入院のリスクがない対象の群のいずれかに割り当てられる。リスクがある対象は、好ましくは、心不全に起因する入院のリスクが上昇している(特に予測窓の中で)対象である。好ましくは、前記リスクは、対象のコホート(すなわち対象群)におけるリスクと比較して上昇している。リスクがない対象は、好ましくは、心不全に起因する入院のリスクが低減している(特に予測窓の中で)対象である。好ましくは、前記リスクは、対象のコホート(すなわち対象群)における平均リスクと比較して低減している。したがって、本発明の方法は、上昇したリスクと低減したリスクとの区別を可能にする。心不全に起因する入院のリスクがある対象は、好ましくは3年の予測窓の中で、12%以上の、またはさらに好ましくは15%以上の、または最も好ましくは20%以上のリスクを好ましくは有する。リスクがない対象は、好ましくは3年の予測窓の中で、10%未満、さらに好ましくは8%未満、または最も好ましくは7%未満の、心不全に起因する入院のリスクを好ましくは有する。
【0210】
用語「参照量」は、本明細書の別の箇所で定義されている。この定義は、適宜適用される。上記の方法において適用される参照量は、心不全に起因する入院のリスクの予測を可能にする。一部の実施形態において、参照量は、心不全に起因する入院のリスクがある対象と心不全に起因する入院のリスクがない対象との区別を可能にする。一部の実施形態において、前記参照量は、所定の値である。
【0211】
好ましくは、参照量と比較して増大している、対象から得たサンプルにおけるBMP10型ペプチドの量は、心不全に起因する入院のリスクがある対象の指標である。同様に好ましくは、参照量と比較して減少している、対象から得たサンプルにおけるBMP10型ペプチドの量は、心不全に起因する入院のリスクがない対象の指標である。
【0212】
2つ以上のバイオマーカーが決定される場合、以下が適用される。
好ましくは、それぞれの参照量と比較して増大している、対象から得たサンプルにおけるBMP10型ペプチドの量および少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの1つの量(または複数の量)は、心不全に起因する入院のリスクがある対象の指標である。同様に好ましくは、それぞれの参照量と比較して減少している、対象から得たサンプルにおけるBMP10型ペプチドの量および少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの1つの量(または複数の量)は、心不全に起因する入院のリスクがない対象の指標である。
【0213】
用語「サンプル」は、本明細書の別の箇所で定義されている。この定義は、適宜適用される。一部の実施形態において、サンプルは、血液サンプル、血清サンプル、または血漿サンプルである。
【0214】
用語「対象」は、本明細書の別の箇所で定義されている。この定義は、適宜適用される。一部の実施形態において、対象はヒト対象である。好ましくは、試験される対象は、50歳以上、さらに好ましくは60歳以上、および最も好ましくは65歳以上である。さらに、試験される対象が70歳以上であることも想定される。さらに、試験される対象が75歳以上であることも想定される。また、対象は50~90歳の間であり得る。
【0215】
一実施形態において、試験される対象は、心不全の病歴を有している。別の実施形態において、試験される対象は、心不全の病歴を有していない。
本発明の方法は、オーダーメード医療の補助であり得る。好ましい実施形態において、対象の心不全に起因する入院のリスクを予測するための上記の方法は、対象が心不全に起因する入院のリスクがあることが予測された場合に、少なくとも1つの適切な治療法を推奨および/または開始するステップをさらに含む。したがって、本発明はまた、治療の方法に関する。
【0216】
好ましくは、対象の心不全に起因する入院のリスクを予測するための方法の文脈において使用される用語「治療法」は、生活様式の変化、食餌レジメン、身体への介入、および医療処置、すなわち1つの医薬(または複数の医薬)での処置を包含する。好ましくは、前記治療法は、心不全に起因する入院のリスクを低減させることを目的としている。一実施形態において、治療法は、1つの医薬(または複数の医薬)の投与である。好ましくは、医薬は、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンギオテンシン受容体アンタゴニスト(ARB)、アルドステロンアンタゴニスト、およびベータブロッカーからなる群から選択される。
【0217】
一部の実施形態において、医薬は、プロプラノロール、メトプロロール、ビソプロロール、カルベジロール、ブシンドロール、およびネビボロールなどの、ベータブロッカーである。一部の実施形態において、医薬は、エナラプリル、カプトプリル、ラミプリル、およびトランドラプリルなどの、ACE阻害剤である。一部の実施形態において、医薬は、ロサルタン、バルサンタン、イルベサンタン、カンデサルタン、テルミサルタン、およびエプロサルタンなどの、アンギオテンシンII受容体ブロッカーである。一部の実施形態において、医薬は、エプレレノン、スピロノラクトン、カンレノン、メクスレノン、およびプロレノンなどの、アルドステロンアンタゴニストである。
【0218】
生活様式の変化は、禁煙、アルコール消費の節制、身体活動の増大、減量、ナトリウム(塩)の制限、体重管理、および健康的な食事、毎日のフィッシュオイル、塩の制限を含む。
【0219】
さらに、本発明は、a)心房細動を評価するため、b)対象における脳卒中のリスクを予測するため、および/またはc)心不全を診断するための、
i)BMP10型ペプチド、ならびに場合によって、ナトリウム利尿ペプチド、ESM-1(エンドカン)、Ang2、およびFABP-3(脂肪酸結合タンパク質3)からなる群から選択される少なくとも1つのさらなるバイオマーカー、ならびに/または
ii)BMP10型ペプチドに特異的に結合する少なくとも1つの作用剤、ならびに場合によって、ナトリウム利尿ペプチドに特異的に結合する作用剤、ESM-1に特異的に結合する作用剤、Ang2に特異的に結合する作用剤、およびFABP-3に特異的に結合する作用剤からなる群から選択される、少なくとも1つのさらなる作用剤
の使用(特に、例えば対象から得たサンプルにおける、インビトロでの使用)に関する。
【0220】
「サンプル」、「対象」、「検出剤」、「特異的に結合する」、「心房細動」、および「心房細動を評価する」などの、前述の使用に関連して言及される用語は、心房細動を評価するための方法に関連して定義されている。この定義および説明は、適宜適用される。
【0221】
本発明はさらに、BMP10型ペプチドの使用、および/または、対象の心不全に起因する入院のリスクを予測するためのBMP10型ペプチドに特異的に結合する少なくとも1つの作用剤の使用(特に、例えば対象から得たサンプルにおける、インビトロでの使用)に関する。
【0222】
好ましくは、前述の使用は、インビトロでの使用である。さらに、検出剤は、好ましくは、モノクローナル抗体などの抗体(またはその結合抗原断片)である。
本発明はまた、キットに関する。一実施形態において、本発明のキットは、BMP10型ペプチドに特異的に結合する作用剤、ならびに、ナトリウム利尿ペプチドに特異的に結合する作用剤、ESM-1に特異的に結合する作用剤、Ang2を特異的に結合する作用剤、およびFABP-3に特異的に結合する作用剤からなる群から選択される、少なくとも1つのさらなる作用剤を含む。
【0223】
好ましくは、前記キットは、本発明の方法、すなわち、心房細動を評価するための方法、または心不全を診断する方法、または対象の心不全に起因する入院のリスクを予測する方法を実施するために適用される。場合によって、前記キットは、前記方法を実施するための指示を含む。
【0224】
本明細書において使用される用語「キット」は、別個にまたは単一の容器内で好ましくは提供された、前述の成分の集合体を指す。容器はまた、本発明の方法を実施するための指示を含む。これらの指示は、説明書の形態であり得るか、または、本発明の方法において言及される計算および比較を行い得る、ならびに、コンピューターまたはデータ処理デバイスに実装されている場合に評価または診断を適宜行うための、コンピュータープログラムコードによって提供され得る。コンピュータープログラムコードは、光学式記憶媒体(例えばコンパクトディスク)などのデータ記憶媒体もしくはデータ記憶デバイス上で提供され得るか、またはコンピューターまたはデータ処理デバイス上で直接提供され得る。さらに、キットは、好ましくは、較正の目的で、標準量のBMP10型ペプチドを含み得る。好ましい実施形態において、キットは、較正の目的で、標準量の本明細書において言及される少なくとも1つのさらなるバイオマーカー(ナトリウム利尿ペプチドまたはESM-1など)をさらに含む。
【0225】
一実施形態において、前記キットは、心房細動を評価するためにインビトロで使用される。代替的な実施形態において、前記キットは、心不全を診断するためにインビトロで使用される。代替的な実施形態において、前記キットは、心不全に起因する入院のリスクを予測するためにインビトロで使用される。
【図面の簡単な説明】
【0226】
図1】3つの患者群(発作性心房細動、持続性心房細動、およびサイナスリズムにある患者)におけるBMP10のELISA測定を示す図である。
図2】発作性AfibにおけるBMP10のROC曲線を示す図である。AUC=0.68。
図3】持続性AfibにおけるBMP10のROC曲線を示す図である。AUC=0.90(探索的AFibパネル:14ケースの発作性AFib、16ケースの持続性Afib、および30の対照を網羅する、心房細動の病歴を有する患者)。
図4】心不全を有する患者と心不全を有さない患者との区別におけるBMP10を示す図である[単位:ng/ml]。
図5】心不全の区別におけるBMP10を示す図である。BMP10のROC曲線、AUC=0.76。
図6】心不全の過去の病歴を有する患者におけるBMP-10の四分位数毎のHFでの入院のリスクを示すカプラン・マイヤー曲線を示す図である。
図7】心不全の過去の病歴を有さない患者におけるBMP-10の四分位数毎のHFでの入院のリスクを示すカプラン・マイヤー曲線を示す図である。
図8】二分されたBMP-10(中央値で)毎の脳卒中のリスクを示すカプラン・マイヤー曲線を示す図である。
【実施例
【0227】
本発明は、以下の実施例によって説明されるにすぎない。前記実施例は、いかなるものであっても、本発明の範囲を限定する様式では解釈されない。
実施例1
マッピングトライアル-心房細動を有する患者を、その異なる循環BMP10レベルに基づいて患者と比較して診断する
MAPPING研究は、開胸外科手術を受けている患者に関するものであった。サンプルは、麻酔および外科手術の前に得た。患者を、多点電極アレイを用いる高密度心外膜マッピング(高密度マッピング)を使用して、電気生理学的に特徴付けした。このトライアルは、14人の発作性心房細動患者、10人の持続性心房細動患者、および考えられる限りで最良に適合させた(年齢、性別、共存症について)28人の対照を含むものであった。BMP10を、MAPPING研究の血清サンプルにおいて決定した。対照と比較して上昇したBMP10レベルが、心房細動を有する患者で見られた。BMP10レベルは、発作性心房細動を有する患者において、適合させた対照よりも上昇し、また持続性心房細動を有する患者においても、対照より上昇した。
【0228】
加えて、バイオマーカーESM-1を、MAPPINGコホートから得たサンプルにおいて決定した。興味深いことに、BMP10の決定とESM-1の決定とを組み合わせると、持続性AFとSR(サイナスリズム)との区別についてAUCが0.92まで増大したことが示された。
【0229】
加えて、バイオマーカーFABP-3を、MAPPINGコホートから得たサンプルにおいて決定した。興味深いことに、BMP10の決定とFABP-3の決定とを組み合わせると、発作性AFとSR(サイナスリズム)との区別についてAUCが0.73まで増大したことが示された。
【0230】
実施例2
心不全パネル
心不全パネルは、60人の慢性心不全患者を含むものであった。ESCガイドラインの基準に従って、休息時の心臓の構造的または機能的異常の典型的な徴候および症候および客観的なエビデンスを有する患者において心不全を診断した。虚血性心筋症または拡張型心筋症または著しい弁膜症を有しており、同意書へのサインが可能であった18~80歳の間の患者を、研究に含めた。直近の6ヶ月の間に急性心筋梗塞、肺塞栓症、または脳卒中を有し、重度の肺高血圧および末期の腎疾患をさらに有する患者は、排除した。患者は主に、心不全ステージNYHA II~IVに罹患していた。
【0231】
健康な対照コホートは33人の対象を含んでいた。健康状態を、ECGの状態および心エコー検査の結果を評価することによって検証した。何らかの異常を有する参加者は排除した。
【0232】
対照と比較して上昇したBMP10レベルが、心不全を有する患者の血清サンプルにおいて観察された。
【0233】
実施例3
バイオマーカーの測定
BMP10を、骨形成タンパク質10(BMP10)のための研究用グレードのECLIAアッセイにおいて測定した。Roche Diagnostics、ドイツ連邦共和国のECLIAアッセイ。
【0234】
ヒト血清サンプルおよび血漿サンプルにおけるBMP10の検出のために、BMP10のN末端プロセグメントに特異的に結合する抗体サンドイッチを使用した。このような抗体はまた、プロBMP10およびプレプロBMP10にも結合する。したがって、BMP10のN末端プロセグメント、プロBMP10、およびプレプロBMP10の量の合計が決定された。例えばBMP9などの他のBMP型タンパク質から得られた所見に基づく構造の予測は、BMP10がプロBMP10との複合体のままであることを示し、したがって、N末端プロセグメントの検出はまた、BMP10の量も反映する。さらに、ホモ二量体形態のBMP10、および例えばBMP9または他のBMP型タンパク質との組み合わせなどのヘテロ二量体構造も検出され得る。
【0235】
実施例4
SWISS AF研究-心不全での入院のリスクの予測
SWISS-AF研究のデータは2387人の患者を含んでおり、このうち、617人は心不全(HF)の病歴を有している。BMP-10をこれらの患者において測定して、心不全に起因する入院のリスクを予測するその能力を評価した。
【0236】
心不全での入院は、心不全の病歴を有する患者において、および心不全の病歴が分かっていない患者において生じ得るため、将来的な心不全での入院を予測する能力を、これらの群において独立して評価した。全部で233人の患者において、追跡の間、HFに起因する入院を記録した。233のうち125の入院が、過去のHFが分かっている患者において生じた。
【0237】
HFの病歴が分かっている患者におけるHFでの入院の予測
表1は、HFの病歴が分かっている患者を含む、コックス比例ハザードモデルの結果を示す。従属変数は、HFでの入院までの時間であり、独立変数は、log-2変換されたBMP-10値である。
【0238】
ハザード比および低いp値によって分かるように、BMP-10は、HFの病歴が分かっている患者におけるHFでの入院のリスクを有意に予測することができる。BMP-10値は、これらをモデルに入れる前にlog-2変換されているため、BMP-10の値が2倍になる場合、ハザード比は、患者のリスクが3.43倍増大すると解釈され得る。
【0239】
【表1】
【0240】
図6は、BMP-10の四分位数毎のHFでの入院のリスクを示すカプラン・マイヤー曲線を示す。BMP-10値の増大と共にリスクは一定して増大しており、最大リスクは最大の四分位数内のBMP-10レベルを有する患者で見られることが分かる。
【0241】
HFの病歴が分かっていない患者におけるHFでの入院の予測
表2は、HFの病歴が分かっていない患者を含む、コックス比例ハザードモデルの結果を示す。従属変数は、HFでの入院までの時間であり、独立変数は、log-2変換されたBMP-10値である。
【0242】
ハザード比および低いp値によって分かるように、BMP-10は、HFの病歴が分かっていない患者におけるHFでの入院のリスクを有意に予測することができる。BMP-10値は、これらをモデルに入れる前にlog-2変換されているため、BMP-10の値が2倍になる場合、ハザード比は、患者のリスクが3.43倍増大すると解釈され得る。
【0243】
【表2】
【0244】
図7は、BMP-10の四分位数毎のHFでの入院のリスクを示すカプラン・マイヤー曲線を示す。BMP-10値の増大と共にリスクは増大しており、リスクは上から2つの四分位数内のBMP-10レベルを有する患者で最も高いことが分かる。
【0245】
実施例5
SWISS AF研究-脳卒中のリスクの予測
循環BMP10の、脳卒中の発症のリスクを予測する能力を、心房細動が記録されている患者のプロスペクティブな多中心型の登録で検証した(実施例3を参照して)(Conen D.、Swiss Med Wkly.2017年7月10日、147:w14467)。
【0246】
BMP10の結果は、有害事象を有する65人の患者および有害事象を有さない2269人の患者で利用可能であった。
BMP10の一変量予後値を定量するために、転帰である脳卒中で比例ハザードモデルを使用した。
【0247】
BMP10の一変量予後予測のパフォーマンスを、BMP10によって得られた予後情報の2つの異なる組み込みによって評価した。
第1の比例ハザードモデルは、中央値(2.2ng/mL)で二値化されたBMP10を含むものであり、したがって、BMP10が中央値以下の患者のリスクとBMP10が中央値を上回る患者のリスクとを比較している。
【0248】
第2の比例ハザードモデルは、オリジナルであるがlog2スケールに変換されているBMP10レベルを含むものであった。log2変換は、より良いモデル較正を可能にするために行った。
【0249】
二分されたベースラインBMP10測定値(≦2.2ng/mLと>2.2ng/mL)に基づく2つの群における絶対生存率を推定するために、カプラン・マイヤープロットを作成した。
【0250】
BMP10の予後値が既知の臨床的および人工統計学的リスク因子から独立しているかどうかを評価するために、年齢および脳卒中/TIA/血栓塞栓症の病歴という変数をさらに含む重み付き比例コックスモデルを計算した。これらの変数は、コホート全体(全ての対照を含む)に対する唯一の有意な臨床的リスク予測因子であった。
【0251】
BMP10の、脳卒中の予後についての既存のリスクスコアを改善する能力を評価するために、CHADSスコア、CHADS-VAScスコア、およびABCスコアを、BMP10(log2変換された)によって拡張した。拡張は、BMP10およびそれぞれのリスクスコアを独立変数として含む、分割されたハザードモデルを作成することによって行った。
【0252】
CHADSスコア、CHADS-VAScスコア、およびABCスコアのc指標を、これらの拡張モデルのc指標と比較した。
【0253】
結果
表1は、二値化されたまたはlog2変換されたBMP10を含む2つの一変量重み付き比例ハザードモデルの結果を示す。脳卒中を経験するリスクとBMP10のベースライン値との関連は、log2変換されたBMP10をリスク予測因子として使用するモデルにおいて有意ではないが、有意レベル0.05に近い。
【0254】
二値化されたBMP10を使用するモデルでは、p値はわずかに高い。しかし、より多くの数の有害事象を用いれば効果が統計上有意であり得ることが議論され得る。
二値化されたBMP10でのハザード比は、ベースラインBMP10≦2.2ng/mLの患者群と比較して、ベースラインBMP10>2.2ng/mLの患者群において、脳卒中のリスクが1.5倍高いことを示唆する。このことは、2つの群についてのカプラン・マイヤー曲線を示す図8でも見ることができる。
【0255】
BMP10をlog2変換された線形リスク予測因子として含む比例ハザードモデルの結果は、log2変換されたBMP10値が、脳卒中を経験するリスクに比例することを示唆している。2.038のハザード比は、BMP10の半減が脳卒中のリスクの2.038倍の増大と関連するというように解釈され得る。
【0256】
【表3】
【0257】
表2は、臨床的および人工統計学的な変数と組み合わせた、BMP10(log2変換された)を含む比例ハザードモデルの結果を示す。BMP10の予後値がある程度低下していることが分かるが、これは、一部には、モデルの検定力が低いことによっても説明され得る。
【0258】
【表4】
【0259】
表3は、CHADSスコアとBMP10(log2変換された)とを組み合わせる重み付き比例ハザードモデルの結果を示す。このモデルにおいて、BMP10はCHADSスコアに予後の情報を追加し得るが、p値は0.05を超えており、これはしかし、サンプルサイズが低いことに関連して許容され得る。
【0260】
【表5】
【0261】
表4は、CHADS-VAScスコアとBMP10(log2変換された)とを組み合わせる重み付き比例ハザードモデルの結果を示す。同様にこのモデルにおいて、BMP10はCHADS-VAScスコアに予後の情報を追加し得るが、p値は0.05を超えており、これはしかし、サンプルサイズが低いことに関連して許容され得る。
【0262】
【表6】
【0263】
表5は、ABCスコアとBMP10(log2変換された)とを組み合わせる重み付き比例ハザードモデルの結果を示す。このモデルにおいて、推定ハザード比は低下しており、BMP-10はいかなる予後パフォーマンスも追加し得ない可能性が高い。
【0264】
【表7】
【0265】
表6は、ケースコホート選択での、BMP10単独の推定c指標、CHADSスコア、CHADS-VAScスコア、ABCスコアの推定c指標、およびCHADSスコア、CHADS-VAScスコア、ABCスコアとBMP10(log2)とを組み合わせる重み付き比例ハザードモデルの推定c指標を示す。BMP10を追加することでCHADSスコア、CHADS-VAScスコアのc指標が改善するが、ABCスコアのc指標は改善しないことが分かる。
【0266】
c指標の差は、CHADSスコア、CHADS-VAScスコア、ABCスコアでそれぞれ0.019、0.015、および-0.002である。
【0267】
【表8】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
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