(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-22
(45)【発行日】2023-03-03
(54)【発明の名称】競技用ボールの移動軌跡出力システム
(51)【国際特許分類】
G01S 19/19 20100101AFI20230224BHJP
A63B 43/00 20060101ALI20230224BHJP
A63B 67/14 20060101ALI20230224BHJP
A63B 67/197 20160101ALI20230224BHJP
A63B 65/06 20060101ALI20230224BHJP
A63B 65/10 20060101ALI20230224BHJP
A63B 65/02 20060101ALI20230224BHJP
A63J 5/02 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
G01S19/19
A63B43/00 D
A63B67/14 B
A63B67/197
A63B65/06
A63B65/10 A
A63B65/02 A
A63B65/02 E
A63J5/02
(21)【出願番号】P 2018074374
(22)【出願日】2018-04-09
【審査請求日】2021-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】518122445
【氏名又は名称】YKS特許評価株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109553
【氏名又は名称】工藤 一郎
(72)【発明者】
【氏名】工藤 一郎
【審査官】安井 英己
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-026631(JP,A)
【文献】特開2012-139493(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0252632(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0077112(US,A1)
【文献】中国実用新案第204208265(CN,U)
【文献】韓国公開実用新案第20-2008-0000513(KR,U)
【文献】特開平10-314357(JP,A)
【文献】特開2002-346019(JP,A)
【文献】特表2007-538255(JP,A)
【文献】特開2009-297057(JP,A)
【文献】特表2015-503399(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0080142(US,A1)
【文献】特開2006-040052(JP,A)
【文献】特開2014-171907(JP,A)
【文献】特開平09-054150(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00- 5/14,
G01S 19/00-19/55,
A63B 43/00,
A63B 65/02,65/06,65/10,
A63B 67/14,67/197,
A63J 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
競技用ボールと、移動軌跡出力装置と、からなる競技用ボールの移動軌跡出力システムであって、
前記競技用ボールは、
測位衛星からの測位信号を少なくとも競技が行われている時間帯の一部では常時受信することが可能な
アンテナの受信面が自身の中心部付近で各方向に平等な多面体を構成するように配置される複数のチップ型アンテナが複数配置され、同一の信号が複数のチップ型アンテナによって受信される場合には、最適信号選択として、受信強度が最も高いものを選ぶか、又は測位誤差に係わるノイズの強度を測り強度が最も低い信号を選択するかして出力する最適信号選択手段にて選択するように構成された測位信号常時受信部と、
受信した測位信号に基づく位置情報を連続的に無線出力する位置情報無線出力部と、
各部を駆動する非接触充電型のためのコイルを有する駆動電源と、
を内部に格納するとともに、
自身である競技用ボールの表面には前記駆動電源に対して非接触充電をする際に自身である競技用ボールの配置方向又は/及び配置位置を示す情報が視認可能に表示され、外表面には何らの電子部品も露出していないように構成され
前記移動軌跡出力装置は、
前記競技用ボールから連続的に無線出力される前記位置情報を連続的に取得する位置情報取得部と、
取得した位置情報に基づいて前記競技用ボールの移動軌跡を取得する移動軌跡取得部と、
取得した移動軌跡を出力する移動軌跡出力部と、
を有する移動軌跡出力装置と、
からなる競技用ボールの移動軌跡出力システム。
【請求項2】
請求項1に記載の競技用ボールの移動軌跡出力システムと、請求項1に記載の競技用ボールの移動軌跡出力システムの競技用ボールで競技を行うための競技フィールドと、
からなる競技場システム。
【請求項3】
競技用ボールの移動軌跡出力システムは、
競技フィールドの位置の情報を含む競技フィールドの3Dデータを保持した競技フィールド3Dデータ保持部と、
競技フィールド3Dデータと、移動軌跡出力装置から出力される移動軌跡とを用いて、競技フィールドと、競技フィールド内で移動する競技用ボールとからなる3D画像を取得する3D画像取得部と、
取得した3D画像を出力する3D画像出力部と、
をさらに有する請求項2に記載の競技場システム。
【請求項4】
競技フィールドは板状面、床面又は地面を含み、移動軌跡出力装置の位置情報取得部は、この板面、床面又は地面の下に競技用ボールの位置情報無線出力部から出力される位置情報の信号を受信するアンテナを含むアンテナ手段を有する請求項2又は請求項3に記載の競技場システム。
【請求項5】
3D画像出力部は、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)、SR(代替現実)のいずれか一以上の出力手段である仮想出力手段を有する請求項3又は請求項4に記載の競技場システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛星測位システムを用いてスポーツ競技で用いられるボールなどを測位し、競技判定、スポーツ技術向上、観戦の楽しみの増大をする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来野球などでは投手の投げたボールの速さを測定器で測定するなどは行われてきたが、ボールがどのような軌跡をたどっていたかは、画像分析や専門家の目視測定などによって行われてきた。
スポーツ競技の機械による測定はそのほとんどが写真撮影、ないしはレーザーセンサー等によっていた。例えば競輪や競馬、100メートル走などの順位を競う競技ではゴール地点での連続写真撮影によって順位が客観的に判断される。また同じく速さを競う競技では、ゴール地点のレーザー光を遮ったタイミングで時間計測がされていた。またテニスのボールがラインにかぶっているか、ラインから出ているかなども動画に基づく画像認識技術を応用して実施されている。
【0003】
最近は一般消費者向けに腕時計型の運動センサーなども出現しているが収集する情報は人の情報である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特開2016-163627
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術では、順位や時間、ラインとの関係など最終的な判断に寄与する情報は機械によって測定されこれを利用できるが、そこに至るまでの三次元位置情報を機械によって測定されることはなかった。
競技、スポーツにおいては結果も重要であるが、結果に至る過程こそが観戦者が楽しめるコンテンツとなる。しかし、観戦者は肉眼でもっぱら過程の観察はできるが、肉眼で可能な範囲なので微妙な違いの観察はできない。スポーツ、競技は人間の持てる力のぎりぎりの部分を鑑賞するものであり、この微妙な違いの観察が可能となればさらにスポーツ観戦の魅力が増大するし、競技をしている本人が自身を客観的に観察することにより問題点の克服に役立てることもできる。
【0006】
また、順位や時間、ストライクかボールか、など最終的な判断もより精緻に行うことができる。
【0007】
一方、特許文献1のように測位衛星を用いてゴルフボールの落下位置を探索するシステムはあったが、移動軌跡を出力するようなものでなかった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本件発明は、衛星測位システムからの測位信号を少なくとも競技が行われている時間帯の一部では常時受信する測位信号常時受信部と、受信した測位信号に基づく位置情報を連続的に無線出力する位置情報無線出力部と、を有する競技用ボールと、
【0009】
連続的に無線出力される前記位置情報を連続的に取得する位置情報取得部と、取得した位置情報に基づいて競技用ボールの移動軌跡を取得する移動軌跡取得部と、取得した移動軌跡を出力する移動軌跡出力部と、を有する移動軌跡出力装置と、からなる競技用ボールの移動軌跡出力システムを提案する。
【0010】
競技用のボールは、例えば、野球、ビリヤード、ボウリング、ゲートボール、ラクロス、ドッジボール、キックベースボール、ゴルフ、ハンドボール、フライングディスク、アルティメット、ガッツ、ディスクゴルフ、バレーボール、ファウストボール、インディアカ、バスケットボール、ウォーターバスケットボール、ネットボール、コーフボール、ポートボールサッカー、フットサル、ラグビー、アメリカンフットボール、クリケット、ソフトボール、ペサパッロ、テニス、パドルテニス、ジュ・ド・ポーム(リアルテニス)、卓球、バドミントン、スカッシュ、タムビーチ、タンブレリ、タンブレロ、スピードミントン、ラケットボール、ハイアライなどの競技のボールが含まれる。
【0011】
競技用ボール等の他の例としては、弓道やアーチェリーの競技用矢、アイスホッケーなどに用いられる競技用パック、カーリング競技用ストーン、バトミントン競技用シャトル、やり投げ競技用やり、砲丸投げ競技用砲丸、円盤投げ競技用円盤などを挙げることができる。
【0012】
またこれらの競技用ボール、弓道やアーチェリーの競技用矢、アイスホッケーなどに用いられる競技用パック、カーリング競技用ストーン、バトミントン競技用シャトル、やり投げ競技用やり、砲丸投げ競技用砲丸、円盤投げ競技用円盤などは、各部(衛星信号受信部、衛星信号無線出力部、即情報生成部、測位情報無線出力部)を駆動するための電源を有しており、電源は非接触充電型の電源や、無電源RFタグのように外部電波励起型電源であってもよい。
さらにこれらの競技用ボール等にはさらなる情報を収集するために小型マイク、温度センサー、重力センサなどが備えられていてもよい。小型マイク、温度センサー、重力センサーなどからのデータもリアルタイムに又はいったん蓄積されて外部に無線出力されるように構成することが好ましい。小型マイクや温度センサー、重力センサーなどからの情報はインパクトの大きさ、ボール等のインパクト場所、ボール等の自転情報などを生成するために利用可能である。これらは単独で分析情報として利用可能となるまではセンシング結果とインパクトの大きさ、インパクト場所、自転情報などを別途の測定手段で測定して人工知能などを用いて因果関係を明確にしたのちに利用するようにすることも可能である。
【0013】
さらにボール類にはそのボールに接触する人の手からその人の運動状態を検知するセンサーを備えることも考えられる。脈拍センサー、臭気センサー、血糖値センサーなどである。これによって競技するプレイヤーの肉体的情報を収集することも可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本件発明によって、従来の技術では測定できなかったボール、弓道やアーチェリーの競技用矢、アイスホッケーなどに用いられる競技用パック、カーリング競技用ストーン、バトミントン競技用シャトル、やり投げ競技用やり、砲丸投げ競技用砲丸、円盤投げ競技用円盤などの競技中の移動軌跡を三次元位置情報として測定することが可能となった。
これによって、観客や審判などの肉眼で把握不能な範囲のボール等の時間-位置情報の観察が可能となり、これを観戦者に提供すればスポーツ観戦の魅力が増大し、競技をしている本人が自身を客観的に観察すればより競技能力を上達させるための問題点の発見と克服に役立てることもできる。また審判などに提供すればストライクかボールか、など最終的な判断もより精緻に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】競技用ボールの移動軌跡出力システムの概念図
【
図2】競技用ボールの移動軌跡出力システムの機能ブロック図
【発明を実施するための形態】
【0016】
発明を実施するための形態を説明する。
以下に本発明を実施するための最良の形態を説明する。なお、本発明はこれら実施形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施しうる。
<実施形態1>
<実施形態1:概要>
【0017】
図1にあるように、本実施形態は請求項1から請求項7に主に関連し、衛星測位システム(測位衛星0101)の測位信号でその移動軌跡を出力可能(出力端末0103)な競技用ボール0102の移動軌跡出力システムである。この出力は、所定時間間隔での競技用ボールの三次元座標上の座標点(位置)又は、時間(時刻)と三次元座標上の座標点(位置)とを関連付けた情報である位置情報を出力する。
【0018】
<実施形態1 構成>
【0019】
図2に示すように、本実施形態の競技用ボールの移動軌跡出力システムは、競技用ボール0200Aと、移動軌跡出力装置0200Bとからなり、競技用ボール0200Aは測位信号常時受信部0201と、位置情報(2D又は3Dの位置を示す情報であり、測位衛星からの信号そのもの、又は測位衛星からの信号を含む信号である場合がある。以下同じ。)0200Cを出力する位置情報無線出力部0202と、を有し、移動軌跡出力装置0200Bは、位置情報0200Cを取得する位置情報取得部0203と、移動軌跡取得部0204と、移動軌跡(情報である。2D情報の場合と3D情報の場合がある。ただし、測位衛星からの信号そのものを含む場合もある。以下同じ。)0206を出力する移動軌跡出力部と、を有する。以下に主要な用語と構成に関して説明する。
【0020】
<実施形態1 構成の説明>
【0021】
<前提となる構成の説明>
「測位衛星」とは衛星測位システムで利用される衛星で、複数の測位衛星(人工衛星の一種)が信号を地上の不特定多数に向けて電波送信し、それを受信する受信機を用いる方式の位置測定システムを指す。
【0022】
代表的な機能は、測位衛星システムの電波を受信することで地表面上や空中で対象の位置を時間(時刻)と関連付けて知ることである。測位衛星システムとして代表的なものは、GPS、GLONASS、北斗、ガリレオなどがあるが、日本の準天頂衛星みちびきが2018年に4機体制でシステムを運用開始し、さらに2020年に初号機の後継1機と2023年に衛星3機を追加して7機体制で運用することが決定されている。現在最も日本で利用されているGPSでは位置測定誤差が数メートルあるが、みちびきでは、日本全国向けに既に民間サービスによる1cm級の精度の補正情報の提供が展開されており、この程度の精度でボール等の位置-時間情報が利用でき、十分である。
【0023】
<競技用ボールに備えられる構成の説明>
【0024】
「測位信号常時受信部」は、測位衛星からの測位信号を少なくとも競技が行われている時間帯の一部では常時受信することが可能なように構成されている。常時受信するとは、ボールが停止した際だけ受信するようなものでないことを示す。本願発明の目的は競技用ボール等の競技中の移動軌跡を三次元データとして又は三次元画像として出力することにあり、ボールの所在を割り出すことを目的としているものではない。したがって従来技術のゴルフボールの位置情報を取得する発明とは全く異なる。測位信号の受信は測位信号常時受信部に対する競技用ボール外からの無線信号命令によって常時受信状態になるように構成するとよい。なお、競技用ボールであるから、ボールの外表面が競技に適さないものであってはならず、特に競技の公式ルールによってボールの規格が定められている場合にはその企画に即したボールである必要がある。外表面は競技において手で握ったり、道具でたたいたりする面なので何らかの部品などが露出すると不都合であり、したがって競技用ボールに対する命令は無線で内部に格納されている各部に対して行われるように構成する。測位信号常時受信部は、測位信号によって位置情報を算出できるように受信するので同時に複数の測位衛星の信号を常時受信するように構成されていなければならない。
【0025】
測位信号常時受信部の受信機能の一部はアンテナで構成される。アンテナはチップ型で数ミリ×数ミリ程度で厚さは1ミリ程度のものを利用する。ボール等は自転するために必ずしもアンテナの向きを適正方向に向けられない場合もあるので、例えばボールであればボールの中心部付近に六面方向(任意の向きを上として上下前後左右)にアンテナの受信面を配置するように構成することが考えられる。アンテナの受信面は必ずしも六面配置である必要はなく多面体で各方向に平等に配置できるようであれば何面体であってもよい。オイラーの多面体定理に従う多面体が考えられる。アンテナには衛星信号受信チップを接続する。衛星信号受信チップも小型化が進んでおり数ミリ角、厚みも1~2ミリ程度のものが利用できるのでボール等の中心付近にアンテナに応じて複数配置するようにする。
【0026】
測位信号常時受信部は、受信した測位衛星の信号を位置情報無線出力部に引き渡すが、複数のアンテナがある場合には各アンテナの中で受信強度が最も高いか、ノイズ強度が最も低い信号を選択して出力するように構成することが好ましい。そのために測位信号常時受信部では、このような機能を果たす最適信号選択手段を有していてもよい。
【0027】
「位置情報無線出力部」は、受信した測位信号に基づく位置情報を連続的に無線出力する。受信した測位信号は測位信号常時受信部から出力されるのでこれを取得する。位置情報無線出力部は、位置情報として、測位信号そのものでもよいし、測位信号に加工を加え、測位信号に処理を施した信号でもよい。位置情報無線出力部は位置情報を連続的に無線出力するが、この連続的にはインターバルが短い間欠送信も含まれるものとする。インターバルは、1秒間に1回程度から50回程度、好ましくは1秒間に5回から30回程度、さらに好ましくは1秒間に10回から30回程度が良い。インターバルが大きすぎると移動軌跡の分解能が不十分となり、インターバルが小さすぎるとボールの移動前の中心位置が移動後のボールの領域内に含まれるようになり情報過多となるからである。また位置情報無線出力部は、受信した測位信号を保持する保持部を有し、その測位信号を数秒間まとめてバッチ処理し、バッチ処理した位置情報をまとめて無線出力するように構成してもよい。バッチ処理した位置情報の無線出力は数秒間のボールの移動軌跡を取得する程度の情報量でもよいし、数十分程度のボールの移動軌跡を取得する程度の情報量でもよい。数十分程度のボールの移動軌跡を取得する程度の情報量である場合にはボール外部からの無線命令に従って出力するものであり、位置情報無線出力部の連続的な無線出力に加えて又は代えて備えられる機能、手段となる。また位置情報無線出力部は後述する各種のセンサ情報を付加して無線出力するように構成されていもよい。
【0028】
位置情報無線出力部の送信アンテナはフレキシブルな帯型ないしはくし形、ないしは渦巻き型の薄型のアンテナをボール等の内部の球状のコア部材や球状のベース部材などの略全面にわたって巻きまわすような形で配置する。送信が十分な距離可能とするためである。ただし、衛星信号受信アンテナに対する干渉が起こらないように設計する。
【0029】
「駆動電源」はボールの各部に電源を供給するためにボールに含まれる。駆動電源は前述のとおり非接触受電が可能なものが好ましい。非接触受電(非接触充電)のためのコイルは衛星信号受信アンテナや送信アンテナとは干渉しないように配置しなければならない。またボール等の外観から観察して非接触受電(非接触充電)の際のボール類の配置方向、配置位置を示す情報が視認可能に表示されているとよい。例えばボールに円を描いて、その円の部分を非接触充電装置の球面状くぼみに合わせるようにシステム化することが考えられる。
【0030】
なお、位置情報には位置に関する情報以外の情報を含むものであってもよい。例としては、競技用ボールの電源の充電割合、競技用ボールに備えられる各部の故障情報、あるいは故障予測情報、各種センサー(衝撃センサ、加速度センサ、回転センサ、温度センサ)などからのセンシング情報などである。
【0031】
<移動軌跡出力装置に備えられる構成>
【0032】
「位置情報取得部」は、前記競技用ボールから連続的に無線出力される前記位置情報を連続的に取得する。取得した位置情報は移動軌跡取得部に利用させるために出力される。
【0033】
「移動軌跡取得部」は、取得した位置情報に基づいて競技用ボールの移動軌跡を取得する。競技用ボールの移動軌跡は三次元情報であり、地球上の三次元座標で表される。例えば経度、緯度、地面からの高さ(又は地球標準表面からの高さ)である。
【0034】
「移動軌跡出力部」は、取得した移動軌跡を出力する。出力することで競技の参加者、競技の観戦者などに利用させるためである。出力先は競技場運営者のサーバシステムでもよいし、観戦者の携帯端末でもよいし、競技場の大型スクリーンでもよいし、放送装置でもよいし、録画装置でもよいし、インターネット閲覧システムでもよい。
【0035】
<移動軌跡出力システム>
【0036】
以上のように、移動軌跡出力システムは、競技用ボールと移動軌跡出力装置とからなる。
<実施形態2>
【0037】
<実施形態2 概要>
【0038】
図3に示すように、実施形態2は、競技用ボール0302と、移動軌跡出力装置0303からなる競技用ボールの移動軌跡出力システムと、競技用ボールで競技を行う競技フィールド0304と、からなる競技場システムである。
【0039】
<実施形態2 構成>
【0040】
実施形態2の競技場システムは、すでに説明した競技用ボールの移動軌跡出力システムと、その競技用ボールで競技を行うことができる競技フィールドとからなる。
「競技フィールド」は、サッカー場や野球場、テニスコートなどのグラウンドとその周辺構造物(ゴールやホームランスペース、ネットなど)であったり、バスケットボールの床面やゴール、バドミントンの床面やネット、卓球台とネット、ボーリングレーンとピン、並びにこれらの空中領域など競技を意味あるものとして鑑賞するために必要な三次元領域を言う。
<実施形態3>
【0041】
<実施形態3 概要>
【0042】
本実施形態は競技用ボールの移動軌跡を競技フィールドの3D画像中で鑑賞できるようにする。
【0043】
<実施形態3 構成>
【0044】
実施形態3は、実施形態2を基礎とする実施形態で実施形態2の競技用ボールの移動軌跡出力システムは競技フィールド3Dデータ保持部と、3D画像取得部と、3D画像出力部と、をさらに有する競技場システムである。
【0045】
<実施形態3 構成の説明>
【0046】
「競技フィールド3Dデータ保持部」は、競技用ボールの競技中の位置との関係で競技上の意味を表す情報を含む競技フィールドの3Dデータを保持するように構成される。競技フィールドの3Dデータは、VR(仮想現実:Virtual Reality:バーチャルリアリティ)AR(拡張現実:Augmented Reality:オーグメンテッドリアリティ)、MR(複合現実:Mixed Reality:ミックスドリアリティ)、SR(代替現実:Substitutional Reality:sa:サブストゥショナルリアリティ)のいずれか一以上を構成可能なデータであることが望ましい。このデータは現在の競技場のダイナミックなデータを3Dカメラで取得して3Dデータとしたものを含むものであってもよい。競技場の3Dデータを3Dカメラからダイナミックに取得するためには競技場の競技フィールドを鳥瞰可能なように複数の3Dカメラを競技場に設置するのが好ましい。また競技フィールド3Dデータは、競技参加者の3Dデータを含むものであってもよい。競技参加者の3Dデータは合成データでもよいし、実写データでもよい。
【0047】
「3D画像取得部」は、競技フィールド3Dデータと、移動軌跡出力装置から出力される移動軌跡とを用いて、競技フィールドと、競技フィールド内で移動する競技用ボールとからなる3Dデータに基づいて3D画像を取得するように構成される。またこの3Dデータは3Dデータ保存手段に保存されてリクエストに応じて3D画像を取得して(構成して)出力されるように構成してもよい。
【0048】
「3D画像出力部」は、取得した3D画像を出力するように構成される。3D画像出力部は、サーバの操作者や、端末の利用者からの視点情報に応じて3D画像を出力できる視点情報異存出力手段を有するとなお臨場感ある画像を利用できる。また3D画像はスロー再生、早送り再生、静止画再生などが可能で、各再生中に視点位置を視聴者のリクエストに応じて移動可能に構成することが好ましい。
<実施形態4>
【0049】
<実施形態4 概要>
【0050】
本実施形態は実施形態2、実施形態3を基本とし、その競技フィールドは板状面(例えば卓球台の面)、床面(例えば卓球台の周辺、バスケットボールの床面、ボウリングのレーン)又は地面(例えば野球場のグラウンド)であり、位置情報取得部は、この板面、床面又は地面の下に競技用ボールの位置情報無線出力部から出力される位置情報の信号を受信するアンテナを含むアンテナ手段を有する競技場システムである。
【0051】
<実施形態4 構成>
【0052】
基本的に競技用ボールは競技フィールド上を移動するものであるが、競技フィールド上にアンテナを設置すると競技の障害となってしまう。一方競技フィールが望める位置に配置することも考えられる。しかし、競技用ボールの利用できる電力はそれほど大きくないので競技用ボールからの弱い電波を確実に受信できればこれに越したことはない。そこで競技フィールドの下で競技の邪魔にならないようにアンテナやアンテナ周辺部材を配置する。そうすれば競技用ボールから発信される電波強度が比較的弱くても良好に受信できるからである。アンテナは競技フィールドが広い場合にはいくつかのブロックに分けて複数のアンテナを配置することが考えられる。
【0053】
<実施形態4 構成の説明>
「競技フィールド」はボールを用いて行う競技をする領域及び場合によりその隣接領域である。本実施形態では競技フィールドの下にアンテナを設置する。したがって、野球場やサッカー競技場、アメフト競技場、ラグビー競技場、テニスコート、などで露天で設けられているものでは排水設備など金属製の構造物が配置されないように構成する。
「アンテナ手段」はアンテナそのものを含む。アンテナそのもの以外にはアンテナで受信した信号の増幅回路、増幅された信号の送信回路、複数のアンテナが配置される場合にはアクティブとするアンテナの切り替え回路などをさらに含んでいてもよい。
「アンテナ」は耐衝撃性、耐水性、耐熱性に優れたものである必要があり、フレキシブル材料でかつ水蒸気透過性の少ないプラスティック等で覆われた薄型のアンテナが適している。
「アンテナ被覆材料」としては、成形性、耐薬品性、電気絶縁性、耐水性に優れたPE ポリエチレンや、摺動性、機械特性、電気特性、耐薬品性、耐衝撃性、耐熱性、に優れたPET ポリエチレンテレフタレートや、アラミドシート、アラミドパルプなどが適している。
【0054】
<実施形態5>
【0055】
本実施形態は実施形態3又は実施形態4を基本とし、競技用ボールの移動軌跡出力システムの3D画像出力部は、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)、SR(代替現実)のいずれか一以上の出力手段である仮想出力手段を有する競技場システムである。
【0056】
例えば競技用ボールの移動軌跡を臨場感をもって視聴者に視聴させるために実写でなく、CGを用いたほうが良い場合がある。また競技用ボールの移動軌跡に競技者を含めた3D空間を表示する場合にはボールの移動軌跡だけでなく競技者の体の動きや表情なども3D表示されたほうが良い。しかし、あらゆる視点から実写の競技者の動きを3D表示することが難しい場合もあるので、場合によっては競技者はCGで競技フィールドは実写というようにミックスるするこも考えられる。競技フィールドは通常動きがないので、競技場に誰もいない状態で実写情報を取得し、保持しておく。また競技ボールの画像も実写したものを用いてもよいし、CGのものを用いてもよい。
<実施形態6、7、8>
【0057】
以上述べた実施形態は競技用ボールを用いるケースであるが、競技用ボールに代えて競技用矢、競技用パック、カーリング競技用ストーン、バトミントン競技用シャトル、やり投げ競技用やり、砲丸投げ競技用砲丸、円盤投げ競技用円盤のいずれか一とする実施形態1の移動軌跡出力システムを提案する。
【0058】
あるいは、競技用ボールに代えて競技用矢、競技用パック、カーリング競技用ストーン、バトミントン競技用シャトル、やり投げ競技用やり、砲丸投げ競技用砲丸、円盤投げ競技用円盤のいずれか一とした実施形態2から実施形態5のいずれか一とする競技場システムを提案する。また前述の競技場システムを用いて行う競技方法や競技興行方法を提案する。
<その他の実施形態1>
【0059】
また競技場のアンテナからはボール類に配置される各部をコントロールするコントロール信号を送信するように構成して、コントロール信号に応じてボール類に配置される各部が制御されるようにボール類を構成することも考えられる。例えばボール類から発信される信号のプロトコル、冗長度、信号の再送要求、信号出力の調整、使用周波数帯の変更、予備機能の駆動命令などである。
【0060】
これは特に屋外競技場の場合に通信環境が天候や周辺環境に左右されやすいためである。天候や周辺環境としては気温、湿度、ボール類の濡れ具合、ボール類の汚れ具合、競技場床面・地面の濡れ具合、床面・地面を構成する材料の種類、量、周辺の他の種類の電波量などを挙げることができる。
<その他の実施形態2>
【0061】
本願発明によると競技用ボールの移動軌跡の3Dデータを取得することができる。この3Dデータを単なる観賞用でなく、テレビゲームに応用することが考えられる。テレビゲームでは実際の球団名、実際の選手をそのままCGにして楽しませるものがあるが、例えば投手の投げる球はコンピュータ内で作られたデータとして存在する物であり、実際のデータを利用していない。そこで、本願発明によって取得した競技用ボールの移動軌跡をテレビゲームないで利用することでより実際に近い臨場感のあるテレビゲームを楽しむことができる。これは野球だけでなく、サッカー、テニス、ゴルフなどどのような競技でも同じである。
【符号の説明】
【0062】
0101 測位衛星
0102 競技用ボール(本願発明の特徴を有する)
0103 移動軌跡出力装置
0200A 競技用ボールの機能ブロック部分
0200B 移動軌跡出力装置の機能ブロック部分
0200C 位置情報
0201 測位信号常時受信部
0202 位置情報無線出力部
0203 位置情報取得部
0204 移動軌跡取得部
0205 移動軌跡出力部
0206 金額比較部
0512 移動軌跡