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<図1>
  • 特許-腐食センサ、及び、腐食検出方法 図1
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  • 特許-腐食センサ、及び、腐食検出方法 図10
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-22
(45)【発行日】2023-03-03
(54)【発明の名称】腐食センサ、及び、腐食検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 17/04 20060101AFI20230224BHJP
   G01N 27/26 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
G01N17/04
G01N27/26 351P
G01N27/26 351H
G01N27/26 371G
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019046898
(22)【出願日】2019-03-14
(65)【公開番号】P2020064037
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-12-20
(31)【優先権主張番号】P 2018194319
(32)【優先日】2018-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「IoT推進のための横断技術開発プロジェクト/Field Intelligence搭載型大面積分散IoTプラットフォームの研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000221546
【氏名又は名称】東電設計株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(74)【代理人】
【識別番号】100124936
【弁理士】
【氏名又は名称】秦 恵子
(72)【発明者】
【氏名】桑原 章史
(72)【発明者】
【氏名】田中 稔彦
(72)【発明者】
【氏名】水野 晃太郎
(72)【発明者】
【氏名】福原 克郎
(72)【発明者】
【氏名】河村 直明
(72)【発明者】
【氏名】滝野 晶平
(72)【発明者】
【氏名】井出 周治
(72)【発明者】
【氏名】関谷 毅
(72)【発明者】
【氏名】植村 隆文
【審査官】櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-009819(JP,A)
【文献】特開2018-135422(JP,A)
【文献】特開昭63-163266(JP,A)
【文献】特開2001-165883(JP,A)
【文献】米国特許第05084680(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 17/00-17/04
G01N 27/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造物中の鋼材の腐食状態を検出する腐食センサであって、
前記鋼材に電気的に接続される電線と、
前記コンクリート構造物の表面に配置される電極と、
前記電極と前記電線との間の電圧を検出する電圧検出部とを備え、
前記電極が、導電性フィラーが分散されたホットメルト樹脂を含むホットメルト電極を有し、
前記ホットメルト樹脂が、熱可塑性エラストマーを含む、腐食センサ。
【請求項2】
前記導電性フィラーが、銀または導電性カーボンである、請求項1に記載腐食センサ。
【請求項3】
前記電極が、前記ホットメルト電極上に、更に照合電極を有する、請求項1又は2に記載の腐食センサ。
【請求項4】
前記電極上に、更に基材を有する、請求項1乃至のいずれか一項に記載の腐食センサ。
【請求項5】
前記電極を複数有し、当該複数ある電極が、シート状の基材にパターン状に配置されている、請求項1乃至のいずれか一項に記載の腐食センサ。
【請求項6】
検出された電圧に基づく情報の無線送信を行う無線送信部をさらに備える、請求項1乃至のいずれか一項に記載の腐食センサ。
【請求項7】
前記無線送信部が、更に電力を供給するバッテリを備える、請求項に記載の腐食センサ。
【請求項8】
前記電極と前記電圧検出部とが検出パターンで接続され、前記検出パターンの少なくとも一部が、前記基材の少なくとも一方の面に形成されたパターン配線である、請求項4又は5に記載の腐食センサ。
【請求項9】
コンクリート構造物中の鋼材の腐食状態を検出する腐食検出方法であって、
請求項1乃至のいずれか一項に記載の腐食センサを準備する準備工程と、
前記腐食センサが備える電線を、前記鋼材と電気的に接続する電線接続工程と、
前記腐食センサが備える電極を、前記コンクリート構造物の表面に接着する接着工程と、
前記電極と前記電線との間の電圧を検出する電圧検出工程とを有し、
前記接着工程が、前記ホットメルト電極を加熱溶融する工程を含む、腐食検出方法。
【請求項10】
前記準備工程が、請求項またはに記載の腐食センサを準備する準備工程であり、
前記電圧検出工程後、検出された電圧に基づく情報の無線送信を行う工程を更に有する、請求項に記載の腐食検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物中の鋼材の腐食状態を検出する腐食センサ、及び、腐食検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物の鉄筋等の鋼材の腐食等の判定方法として、自然電位測定法が知られている。自然電位測定法は、腐食により変化する鋼材の電位を測定することによって、鋼材の腐食を電気化学的に判断する方法である。
【0003】
自然電位測定法を利用したセンサは、通常、コンクリート表面を湿潤状態としてから測定する必要があった(例えば特許文献1、2)。しかし、コンクリートの濡れ具合によって、測定値が変化してしまうため、測定値の安定性に課題があり、また、安定化のための時間がかかるという問題があった。また、都度準備をする必要があるため、長期的な腐食状態のモニタリングには不向きであった。
【0004】
特許文献3には、導電性を有する粘着剤からなる接着部が設けられた電極版を備える照合電極が開示されており、当該粘着剤として、高分子ポリマーに添加物として電解質を加えたものが挙げられている。
【0005】
また、本発明者らは特許文献4において、コンクリート構造物の表面と照合電極との間に、イオン液体を含む接触部材を備える腐食センサを開示している。特許文献4においては、前記イオン液体を高分子ポリマーと混合してゲル化することを開示している。特許文献4の手法によれば、イオン液体によって、電気伝導率の高い接触を安定に且つ長期にわたって実現できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-181778号公報
【文献】特開平9-5286号公報
【文献】特許第6018467号
【文献】特開2018-9819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献3の粘着剤は、基本的に水を含有させて用いるものであり、粘着材の乾燥の程度により測定値が変化する課題があった。そのため、膨潤により接着性が低下するおそれがあり、長期的な腐食状態のモニタリングには不向きであった。
また、特許文献4のイオン液体を含む接触部材は、イオン液体の劣化や、コンクリートへの浸透などによる、電気伝導率の低下が認められた。
このように、より長期にわたって安定した電圧測定が可能な腐食センサが求められている。
【0008】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、長期的なモニタリングが可能な腐食センサ及び腐食検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本実施の腐食センサは、
コンクリート構造物中の鋼材の腐食状態を検出する腐食センサであって、
前記鋼材に電気的に接続される電線と、
前記コンクリート構造物の表面に配置される電極と、
前記電極と前記電線との間の電圧を検出する電圧検出部とを備え、
前記電極が、導電性フィラーが分散されたホットメルト樹脂を含むホットメルト電極を有する。
【0010】
上記腐食センサの一実施形態は、前記導電性フィラーが、銀または導電性カーボンである。
【0011】
上記腐食センサの一実施形態は、前記ホットメルト樹脂が、熱可塑性エラストマーを含む。
【0012】
上記腐食センサの一実施形態は、前記電極が、前記ホットメルト電極上に、更に照合電極を有する。
【0013】
上記腐食センサの一実施形態は、前記電極上に、更に基材を有する。
【0014】
上記腐食センサの一実施形態は、前記電極を複数有し、当該複数ある電極が、シート状の基材にパターン状に配置されている。
【0015】
上記腐食センサの一実施形態は、検出された電圧に基づく情報の無線送信を行う無線送信部をさらに備える。
【0016】
上記腐食センサの一実施形態は、前記無線送信部が、更に電力を供給するバッテリを備える。
【0017】
上記腐食センサの一実施形態は、前前記電極と前記電圧検出部とが検出パターンで接続され、前記検出パターンの少なくとも一部が、前記基材の少なくとも一方の面に形成されたパターン配線である。
【0018】
本実施の腐食検出方法は、
コンクリート構造物中の鋼材の腐食状態を検出する腐食検出方法であって、
前記本発明に係る腐食センサを準備する準備工程と、
前記腐食センサが備える電線を、前記鋼材と電気的に接続する電線接続工程と、
前記腐食センサが備える電極を、前記コンクリート構造物の表面に接着する接着工程と、
前記電極と前記鋼材との間の電圧を検出する電圧検出工程とを有し、
前記接着工程が、前記ホットメルト電極を加熱溶融する工程を含む。
【0019】
上記腐食検出方法の一実施形態は、
前記準備工程が、無線送信部を備える腐食センサを準備する準備工程であり、
前記電圧検出工程後、検出された電圧に基づく情報の無線送信を行う工程を更に有する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、長期的なモニタリングが可能な腐食センサ及び腐食検出方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1実施形態における腐食センサの設置状態を示す図である。
図2】第1実施形態における腐食センサの要部の断面図である。
図3図2のIII部の拡大図である。
図4】第2実施形態における腐食センサの要部の断面図である。
図5】第3実施形態における腐食センサの要部の断面図である。
図6】第3実施形態における腐食センサの概要図である。
図7図5のVII部の拡大図である。
図8】第4実施形態における腐食センサの電極の断面図である。
図9A】第5実施形態における、配線パターンを備える電極シートの概略的な正面図である。
図9B図9Aの側面図である。
図10】腐食検出方法の実施形態のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[腐食センサ]
本実施の腐食センサは、
コンクリート構造物中の鋼材の腐食状態を検出する腐食センサであって、
前記鋼材に電気的に接続される電線と、
前記コンクリート構造物の表面に配置される電極と、
前記電極と前記鋼材との間の電圧を検出する電圧検出部とを備え、
前記電極が、導電性フィラーが分散されたホットメルト樹脂を含むホットメルト電極を有する。
【0023】
本実施の腐食センサは、上記のような構成とすることにより、長期的(例えば3ヶ月以上)にモニタリング可能な腐食センサとすることができる。
このような本実施の腐食センサに関し、まず電極について説明し、次いで各実施形態について図面を参照して説明する。
【0024】
<電極>
本実施の腐食センサにおいて用いられる電極は、少なくとも導電性フィラーが分散されたホットメルト樹脂を含むホットメルト電極を有するものであり、必要に応じて、照合電極など、更に他の構成を有していてもよいものである。以下このような電極の各構成について説明する。
【0025】
(ホットメルト電極)
本実施において、ホットメルト電極は、前記コンクリート構造物の表面に配置されて用いられるものである。
本実施においてホットメルト電極は、加熱により溶融し、コンクリート構造物の表面に貼り付けた後、冷却して固化するものである。そのため、コンクリート構造物表面に密着して安定して保持される。また、ホットメルト電極は、コンクリート構造物表面の空隙を充填するため、接触抵抗が抑制される。また、導電性フィラーはホットメルト樹脂中に分散されているため、電極から解離してコンクリート構造物に浸透することなく電極中に保持される。
そのため、本実施のホットメルト電極は、コンクリート構造物表面での状態変化が小さく、安定して電圧を測定することが可能である。このように、当該電極を用いることにより長期的なモニタリングが可能な腐食センサを得ることができる。
【0026】
本実施のホットメルト電極は、少なくともホットメルト樹脂と、導電性フィラーとを含有するものであり、必要に応じて更に他の成分を含有してもよいものである。以下、このようなホットメルト電極に含まれる各成分について説明する。
【0027】
(1)ホットメルト樹脂
本実施においてホットメルト樹脂は、電極をコンクリート構造物の表面に設置する際に加熱溶融可能な樹脂を含むものであり、このような樹脂として熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0028】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリウレタン系樹脂、アクリロニトリル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン系樹脂、シリコン系樹脂や、熱可塑性エラストマーが挙げられ、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
本実施においてはホットメルト樹脂として、熱可塑性エラストマーを含むことが好ましい。熱可塑性エラストマーを含むことにより、常温(例えば、25℃)においてゴム弾性を有する電極とすることができる。ゴム弾性を有することにより、電極の破断が抑制されて、より長期的なモニタリングが可能な腐食センサを得ることができる。当該熱可塑性エラストマーの常温における弾性率は、例えば、0.1~100MPaとすることができる。
【0030】
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)等のスチレン系熱可塑性エラストマー;ウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU);オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO);ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPEE);ポリアミド系熱可塑性エラストマー;フッ素系熱可塑性エラストマー;塩ビ系熱可塑性エラストマー等が挙げられ、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、上記熱可塑性エラストマーは、水素添加されたものであってもよい。
本実施においては、熱可塑性エラストマーの中でも、スチレン系熱可塑性エラストマーを含むことが好ましい。
【0031】
本実施においてホットメルト樹脂の重量平均分子量は、取り扱い性の点から、5,000以上1,000,000以下が好ましく、10,000以上800,000以下がより好ましい。
なお本実施において、重量平均分子量は、東ソー社製GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)「HLC-8320」を用いた測定におけるポリスチレン換算分子量である。
【0032】
ホットメルト樹脂の含有割合は、導電性と接着性の点から、ホットメルト電極全量100質量%中、40~98質量%が好ましく、60~95質量%がより好ましい。
【0033】
(2)導電性フィラー
本実施において、導電性フィラーは、ホットメルト樹脂中に分散されて用いられ、電極の導電性を確保するものである。導電性フィラーは、公知のものの中から適宜選択できる。導電性フィラーの形状は、ホットメルト樹脂中で分散され得る粒子状ものであればよく、フレーク状(鱗片状)、球状、針状、繊維状、樹枝状など任意の形状とすることができる。導電性フィラーの含有比率を減らしながら導電性を確保する点からは、フレーク状の導電性フィラーを用いることが好ましい。
【0034】
導電性フィラーの材質としては、例えば、銀、金、銅、亜鉛、酸化亜鉛、マンガン、ニッケル、アルミニウムなどの金属;酸化スズドープ酸化インジウム(ITO)、酸化スズドープ酸化インジウム(FTO)、酸化スズ(IO)、ネオジム・バリウム・インジウム酸化物などの金属酸化物;ポリピロール系、ポリチオフェン系、ポリアニリン系、オリゴチオフェン系等の有機物;カーボンブラック、黒鉛、グラフェン、グラファイト、カーボンナノチューブ、カーボンファイバー、フラーレン、酸化グラフェン、アセチレンブラックなどの導電性カーボンのほか、アルミナ、ガラスなどの無機絶縁体やポリエチレンやポリスチレンなどの高分子の表面を導電性材料でコーティングしたもの等が挙げられる。本実施において導電性フィラーは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
本実施においては、中でも、導電性フィラーが銀または導電性カーボンであることが好ましく、導電性カーボンであることがより好ましい。更に、導電性カーボンとしては、中でも、グラファイト、カーボンファイバー、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、又は酸化グラフェンが好ましい。
銀及び導電性カーボンは導電性に優れ、また、耐熱性、耐水性、耐酸性など各種耐性に優れているため、長期信頼性に優れた電極となる。また、銀または導電性カーボンを用いたホットメルト電極は、当該銀または導電性カーボンが安定して存在し、長期的なモニタリングが可能であるため、照合電極を用いることなく電圧の変化を捉えることができる。そのため、本実施の電極は照合電極を有しない構成であっても、腐食センサを実現することができる。
【0036】
導電性フィラーの含有割合は、導電性と接着性の点から、ホットメルト電極100質量%中、2~60質量%が好ましく、5~40質量%がより好ましい。
ホットメルト電極の厚みは特に限定されないが、例えば、50~2000μmであり、100~1500μmが好ましい。
【0037】
(3)その他の成分
本実施のホットメルト電極は、効果を損なわない範囲で、他の成分を含有してもよい。好適な他の成分として、粘着付与剤、可塑剤などが挙げられる。粘着付与剤又は可塑剤を含むホットメルト電極は、粘着性が付与されるため、コンクリート表面への仮止めが可能になり接着時の施工が容易になる。粘着付与剤及び可塑剤は、公知のものの中から適宜選択して各々1種単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。また、粘着付与剤及び可塑剤は、一方のみを用いてもよく、併用してもよい。
ホットメルト電極が粘着付与剤又は可塑剤を含有する場合、その合計の含有割合は、ホットメルト電極全量100質量%中、0.5質量%以上40質量%以下が好ましく、1質量%以上20質量%以下がより好ましい。
【0038】
また、本実施のホットメルト電極は、更に他の成分として、例えば、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、柔軟性付与剤、難燃化剤、保存安定剤、酸化防止剤、金属不活性化剤、紫外線吸収剤、チキソトロピー付与剤、レベリング剤、消泡剤、分散安定剤、流動性付与剤、消泡剤、ブロッキング防止剤、難燃剤、色材等を含有してもよい。ホットメルト電極がこれらの成分を含有する場合、その含有割合は、ホットメルト電極全量100質量%中、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましい。
【0039】
(他の構成)
本実施において電極は、前記ホットメルト電極のみを有する構成であってもよく、必要に応じて、照合電極など、更に他の構成を有していてもよい。
【0040】
照合電極は、ホットメルト電極のコンクリート構造物の表面に配置される面とは反対側の面に設けられるものである。本実施において照合電極は、自然電位測定法で用いられる公知の照合電極の中から適宜選択して用いることができる。例えば、銀・塩化銀電極、カーボンフレークを含有する銀・塩化銀電極が挙げられる。
【0041】
また、電極上に更に基材を有していてもよい。基材は、通常、ホットメルト電極のコンクリート構造物の表面に配置される面とは反対側の面に配置される、照合電極を有する場合には当該照合電極上に配置される。基材は電極製造時における取り扱い性を向上するほか、電極使用時においてホットメルト電極等の保護膜としての機能を有する。
本実施において、基材は限定されず、例えば各種樹脂フィルムの中から適宜選択することができる。基材の材質としては、例えば、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂)、AES(アクリロニトリル-エチレン-スチレン共重合樹脂)、カイダック(アクリル変性塩ビ樹脂)、変性ポリフェニレンエーテル、及びこれら樹脂の2種以上からなるポリマーアロイ等のフィルムや、これらの積層フィルムなどが挙げられる。基材は透明であっても不透明であってもよい。基材はコンクリート表面の凹凸に追従しやすい点から可撓性を有することが好ましい。
【0042】
(電極の製造方法)
本実施に電極の製造方法について、以下に一例を示す。
電極の製造方法の一例として、まず、前記ホットメルト樹脂と、前記導電性フィラーと、必要に応じて用いられる他の成分とを混合して混合物とする。当該混合物は、均一に分散するためにホットメルト樹脂を溶解する溶剤を含有してもよい。
次いで、前記混合物を公知の分散機により分散して分散体とする。分散機としては、例えば、2本ロール、3本ロール等のロールミル、ボールミル、振動ボールミル等のボールミル、ペイントコンディショナー、連続ディスク型ビーズミル、連続アニュラー型ビーズミル等のビーズミルが挙げられる。
次いで、得られた分散体を基材上に塗布する。塗布方法は、ホットメルト電極の厚みや材質等に応じて適宜選択すればよい。例えば、インクジェット法、スプレー法、スピンコート法、ディップ法、ロールコート法、ブレードコート法、ドクターロール法、ドクターブレード法、カーテンコート法、スリットコート法、スクリーン印刷法、反転印刷法、ホットメルトアプリケーター、ホットメルトコーター、スリットコーター、ホットメルトロールコーター等の方法が挙げられる。得られた膜を必要に応じて乾燥することにより、ホットメルト電極を得ることができる。
基材が不要な場合は、剥離性の基材を用いて上記と同様の塗膜を形成した後に、基材を剥離してもよい。また、電極が照合電極を有する場合には、基材上に照合電極を形成した後照合電極上に、前記ホットメルト電極用の分散体を塗布して、ホットメルト電極を形成すればよい。
【0043】
<第1実施形態>
腐食センサの第1実施形態について、図1図3を参照して説明する。なお、本実施形態においては、鋼材として鉄筋を有するコンクリート構造物の腐食を検出する例を示す。
【0044】
図1に示すように、腐食検出システム5は、腐食センサ10と、処理部90とを備える。
腐食センサ10は、電極30と、電圧検出部60とを備え、鉄筋2を有するコンクリート構造物1の腐食状態を検出する。本実施形態では、図1に示すように、複数の腐食センサ10が、コンクリート構造物1の表面1aであるトンネルの内壁表面の各領域に対応して設けられる。
各腐食センサ10は、複数の電極30を有する。
本実施形態では、少なくとも各電極30がトンネルに設置され、トンネルの内壁表面の腐食を検出する。
【0045】
後で説明する図2に示すように、腐食センサ10は、電線3aをさらに備える。電線3aは鉄筋2に電気的に接続される。具体的には、コンクリート構造物1から鉄筋2の一部を露出させて、露出させた鉄筋2と電線3aとを接続させる。電線3aを鉄筋2に接続する単純な手段としては、露出させた鉄筋2に電線3aを直接巻き付けて接点20を形成すればよい。電線3aを鉄筋2に接続する他の手段としては、導電性のクリップやフック等で接点20を形成して鉄筋2に接続してもよいし、溶接やネジ止め等で接点20を形成して鉄筋2に接続してもよい。
【0046】
図1の下部に示した図は、トンネルに設置された複数の電極30のうち、一部分の複数の電極30を拡大して示している。当該拡大した図に示すように、複数の電極30は、鉄筋2に沿って、コンクリート構造物1の表面1aに面状に配置されている。本実施形態では、複数の電極30は、コンクリート構造物1の表面1aの広い領域にわたって並べられている。
したがって、腐食センサ10は、後で詳しく示す電圧検出部60において、コンクリート構造物1の表面1aにおける電極30が設置された各点についての電圧を検出する。
【0047】
電圧検出部60と処理部90とは、通信可能に接続されており、検出された各点の電圧に基づく情報は、腐食センサ10の電圧検出部60から処理部90に出力される。
電圧検出部60から送られてきた各点の電圧に基づく情報は、処理部90において表示、印刷等によって出力され、作業者に提示される。処理部90は、各点の電圧をそのまま出力してもよいが、電線3aに対する照合電極40の板面40bの電位として出力すれば、自然電位として腐食の検出が可能となる。さらに、処理部90は、次に示すようにマップデータで出力するものであってもよい。
また、自然電位と腐食レベルとを関連づけることによって、自然電位に代えて腐食レベルをマップデータで出力することも可能である。
【0048】
処理部90には、電極30が設置された各点と各点の位置との関係がデータとして予め記憶されている。処理部90は、当該記憶された関係から、検出された各点の電圧に基づく情報とコンクリート構造物1の表面1aの位置とを関連付ける。
したがって、処理部90は、検出された各点の電圧に基づく情報とコンクリート構造物1の表面1aの位置とを関連付けることによって、コンクリート構造物1の表面1aの自然電位や腐食レベルのマップデータを作成することができる。
作成されたマップデータは、処理部90において表示、印刷等によって出力され、作業者に提示される。作業者に提示されるマップデータは、自然電位と位置との関係又は腐食レベルと位置との関係を等高線やカラーマップで示すものである。
自然電位と位置との関係又は腐食レベルと位置との関係を等高線やカラーマップで示すことで、作業者は、コンクリート構造物1の表面1aに沿った自然電位又は腐食レベルの二次元分布を評価することができる。
本実施形態では、作業者は、当該マップデータから鉄筋2の腐食箇所を判断し、腐食状況の報告又は腐食箇所の補修や保守を行う。
本実施形態に用いる処理部90は、CPU、記憶部、I/O部等を有するコンピュータシステムであればどのようなものを用いてもよいが、電気回路や電子回路で構成してもよい。また、任意の場所で検出された電圧に基づく情報を確認できるように、処理部90としてノートパソコン、PDA、タブレット等の携帯端末を用いてもよい。
【0049】
本実施形態の腐食センサ10の構造について説明する。
図2は、コンクリート構造物1の表面1aに垂直であって鉄筋2に沿った断面からみた各電極30を示す。
各電極30は、照合電極40及びホットメルト電極50を備える。
本実施形態では、接点20を介して鉄筋2に接続された電線3aは、電圧検出部60に電気的に接続されている。
電極30の接触部材50は、コンクリート構造物1の表面1aに対し対向するように配置され、コンクリート構造物1の表面1aに接触されている。
【0050】
図3に、複数の電極30うちの一つの電極30を詳しく示す。なお、図に示される電極30は、いずれもホットメルト電極50上に、照合電極40と基材70とがこの順に積層した積層体であるが、電極30の構成は前述の通り、少なくともホットメルト電極50を備えればよい。
照合電極40を有する場合、当該参照電極40は一対の板面40a及び40bを備える板形状である。
照合電極40は、板面40aがコンクリート構造物1の表面1aに対し対向するように設置されている。照合電極40の板面40bは、検出パターン3bによって、電圧検出部60に電気的に接続されている。
【0051】
ホットメルト電極50は、照合電極40の板面40aとコンクリート構造物1の表面1aの間に介在するように配置され、照合電極40と、コンクリート構造物1の表面1aとの電気的接触を良好に維持している。本実施形態では、ホットメルト電極50は、少なくともコンクリート構造物1への設置時において、一対の面を有しており、一方の面がコンクリート構造物1の表面1aに接し、他方の面が板面40a乃至検出パターン3bに接している。
【0052】
腐食センサ10は複数の基材70をさらに備えてもよい。各基材70の一方の表面には、必要に応じて設けられる照合電極40と、ホットメルト電極50が一対積層されている。
照合電極40の板面40b、または、ホットメルト電極50と検出パターン3bとは、基材70のスルーホールを介して電気的に接続されている。
【0053】
電圧検出部60は、接続された電線3aと照合電極40またはホットメルト電極50との間の電圧を自然電位として検出する。当該電圧は、常時検出してもよいし、必要な時だけ検出してもよい。
【0054】
各電極30は、ホットメルト電極50を加熱溶融しながらコンクリート構造物1の表面1aに接着し、冷却することにより固定される。
【0055】
本実施形態では、ホットメルト電極50を電極30として用いているため、コンクリート構造物1の表面1aに凹凸があったとしても、ホットメルト電極50は、溶融時に凹凸に沿って変形し、更に、コンクリート構造物1の微細な空隙を埋めることができる。その結果、コンクリート構造物1の表面1aに対し、電気的接触を良好に維持している。
【0056】
アルコールや水といった溶媒を使ったゲルで接触部材を構成した場合、アルコールや水が蒸発してしまうため、検出の度に検出現場に赴き、電気的接触を回復させる必要があった。
本実施形態では、導電性フィラーが分散されたホットメルト樹脂を含むホットメルト電極50を用いるため、溶媒が蒸発してしまうゲルに比べて、経時劣化しにくい。よって、長期にわたって導電性の高い電気的接触を維持することが可能となり、検出の度に検出現場に赴く必要がない。よって、常時遠隔での検出も可能となる。
【0057】
さらに、コンクリート構造物1の表面1aを湿潤状態とした直後は、電位が落ち着くまでに時間が掛かる。また湿潤状態とする度に湿潤状態が変化し、湿潤状態の程度に応じて測定される電位が変化してしまうため、安定した測定結果を得るために何度も再測定する必要がある。
本実施形態の各電極30は、常にコンクリート構造物1の表面1aと導電性の高い電気的接触を維持しているので、電位が落ち着くまで待つ必要がなく、再測定のための時間を軽減できるで、測定時間の短縮が可能となる。
【0058】
<第2実施形態>
腐食センサの第2実施形態について、図4を参照して説明する。
本実施形態の腐食センサ110は、第1実施形態と基本的に同じであるが、基材の構成が異なっている。
【0059】
図4に示すように、腐食検出システム105は、腐食センサ110と、処理部90を備える。
本実施形態の腐食センサ110は、基材170を備える。
図4に示すように、基材170は、電極30を複数有し、当該複数ある電極30が、シート状の基材170にパターン状に配置されている。各電極30は、積層された照合電極40及びホットメルト電極50の対を備える。
本実施形態では、基材170に可撓性を持たせている。
【0060】
各電極30は、コンクリート構造物1の表面1aに固定される。
具体的には、配列された電極30のホットメルト電極50を加熱溶融してコンクリート構造物1の表面1aに接着する。
【0061】
本実施形態の腐食センサ110のさらなる作用、効果について説明する。
本実施形態では、基材170に可撓性を持たせているため、例えばトンネルの内壁表面に腐食センサ110を設置する場合、トンネルの内壁に基材170を固定するとトンネルの内壁の曲表面や凹凸表面に沿って基材170が変形する。したがって、トンネルの内壁の曲表面や凹凸表面に沿って複数の電極30を設置することができる。
【0062】
<第3実施形態>
腐食センサの第3実施形態について、図5図7を参照して説明する。
本実施形態の腐食センサ210は、第2実施形態と基本的に同じであるが、無線送信部を備える点が異なっている。
【0063】
図5に示すように、腐食検出システム205は、腐食センサ210と、処理部290を備える。
腐食センサ210は、電線203aと、照合電極40及びホットメルト電極50を備えた複数の電極30と、複数の電圧検出ユニット80と、を備える。本実施形態では、図5に示すように、各電極30の隣に対応する電圧検出ユニット80が配置されている。
【0064】
腐食センサ210は、基材270を備える。
本実施形態では、基材270は可撓性を有するシートで構成されている。
図6に示すように、1つの電極30及び1つの電圧検出ユニット80の複数の対は、基材270全体にわたって格子状に並ぶように、基材270の表面270aに設けられている。
【0065】
腐食センサ210は、コンクリート構造物1に接着剤によって固定される。
変形例として、基材270を薄いシートで構成し、電極30及び電圧検出ユニット80を避けた位置において、基材270をコンクリート構造物1の表面1aにピンやステープル等で固定することによって、腐食センサ210をコンクリート構造物1に固定してもよい。
【0066】
基材270は、基材270全体にわたって均一な電位を与える導電性の主パターン203Dを備える。
本実施形態では、主パターン203Dは、基材270の中間層として設けられているが、基材270の表面270a上に設けてもよいし、基材の裏面270bに設けてもよい。
鉄筋2に電気的に接続された電線203aは、主パターン203Dに電気的に接続されている。
主パターン203Dは、面パターンでも、線パターンでもよく、電線203aの電位を基材270全体に分布させることができるものであれば、どのようなものであってもよい。
【0067】
各電圧検出ユニット80の構造について図7を用いて説明する。
各電圧検出ユニット80は、電圧検出部260と、無線送信部81と、バッテリ82と、を備える。
【0068】
照合電極40の板面40bは、検出パターン203bによって、電圧検出部260に電気的に接続されている。電圧検出部260は、副パターン203dによって、主パターン203Dに電気的に接続されている。
本実施形態では、検出パターン203bの一部を、基材270内部に設けているが、変形例として、基材270の表面270a上だけに設けてもよい。さらに、本実施形態では、副パターン203dの一部を、基材270内部に設けているが、変形例として主パターン203Dを基材270の表面270a上に設けて、副パターン203dを主パターン203Dとともに、基材270の表面270a上だけに設けてもよい。この場合、基材270内部にパターンを設ける必要がないので、パターンの加工工程が簡略化される。
【0069】
電圧検出部260は、接続された電線203aと照合電極40の板面40bとの間の電圧を検出する。電圧は、常時検出してもよいし、必要な時だけ検出してもよい。
【0070】
無線送信部81は、電圧検出部260で検出された電圧に基づく情報を処理部290に無線で送信する。本実施形態では、無線送信部81は、電圧検出部260で検出された電圧に相当する信号を受け取り、当該電圧に相当する信号Sdに変換する。変換された信号Sdは、無線送信部81によって、処理部290に送信される。送信される信号Sdは、検出された電圧に相関した信号であればどのような信号でもよく、アナログ方式でも、デジタル方式でも、どちらの方式でもよい。また、送信形態は光、電波、電磁波等どのような通信形態でもよい。
このとき、検出された電圧に基づく情報がどの電圧検出ユニット80からの情報かを識別できるように、各無線送信部81は、自身が設けられている電圧検出ユニット80の識別情報を、検出された電圧に基づく情報と併せて処理部290に送る。
【0071】
バッテリ82は、無線送信部81に必要な電力を供給する。また必要であれば、バッテリ82から電圧検出部260にも電力を供給してもよい。バッテリ82によって無線送信部81や電圧検出部260に必要な電力を供給すれば、電力の供給配線を設ける必要がないため、コンクリート構造物1の表面1aに対して腐食センサ210を任意の場所に設置することができる。
本実施形態では各電圧検出ユニット80がバッテリ82を備えているが、変形例として各電圧検出ユニット80にバッテリ82を設けずに、いくつかの電圧検出ユニット80毎にバッテリを設け、一つのバッテリからいくつかの電圧検出ユニット80に電力を供給してもよい。
電力の供給配線の敷設に困難がない場合は、バッテリではなく電力の供給配線によって、複数の電圧検出ユニット80に電力を供給してもよい。
【0072】
処理部290は、各電圧検出ユニット80から送られてきた検出された電圧に基づく情報及び電圧検出ユニット80の識別情報を取集し、作業者に提供する。
本実施形態では、処理部290には、電圧検出ユニット80の識別情報と各電圧検出ユニット80が設置された位置との関係が予め記憶されている。処理部290は、当該記憶された関係から、電圧検出ユニット80の識別情報を用いて、検出された電圧に基づく情報とコンクリート構造物1の表面1aの位置とを関連付けることができる。
したがって、検出された電圧に基づく情報とコンクリート構造物1の表面1aの位置とを関連付けることによって、処理部290は、各電圧検出ユニット80から送られてきた情報から、コンクリート構造物1の表面1aの自然電位又は腐食レベルのマップデータを作成することができる。
作成されたマップデータは、処理部290によって、表示、印刷等によって出力され、作業者に提示される。作業者に提示されるマップデータは、自然電位と位置との関係又は腐食レベルと位置との関係を示した等高線やカラーマップによって提示される。
本実施形態では、作業者は、当該マップデータから鉄筋2の腐食箇所を判断し、腐食状況の報告又は腐食箇所の補修や保守を行う。
本実施形態において、任意の場所で検出された電圧に基づく情報を確認できるように、処理部290としてノートパソコン、PDA、タブレット等の携帯端末を用いている。
【0073】
<第4実施形態>
腐食センサの第4実施形態について、図8を参照して説明する。
本実施形態の腐食センサ10は、第1実施形態と基本的に同じであるが、電極30の構成が異なっている。
図8に、複数の電極30うちの一つの電極30を詳しく示す。なお、図8において保護部55以外の構成は、図3と同様である。
【0074】
本実施形態では、コンクリート構造物1の表面1a上に配置された電極30が、保護部55で被覆されている。このような構成とすることにより、ホットメルト電極50を含む電極30と、外部の水分や塩分との接触を抑制できるため、より長期信頼性に優れた腐食センサとなる。保護部55は、図8の例に示されるように基材70を含む電極30全体を封止するものであってよい。また保護部55は、少なくとも電極30の周縁部に配置され、基材70との組合せにより電極30を保護してもよい。保護部55は、公知の樹脂を用いることができる。
【0075】
<第5実施形態>
腐食センサの第5実施形態について、図9A及び9Bを参照して説明する。
第5実施形態では、検出パターン3bの少なくとも一部は、基材70上に形成されたパターン配線3cにより構成されている。即ち、第5実施形態では、基材70上に、パターン配線3cと電極50とを備えたパターン配線付電極シート300を用いる。パターン配線3cと電極50は同一面に形成してもよく、また、電極50とは反対側の面にパターン配線3cを形成して、基材の開口部を通じて結線してもよい。
パターン配線3cの形成方法は、例えば、基材70上の電極50と、基材70の側面等に配置された検出部60との間を、導電材を含むインキを印刷してパターニングする方法や、
フレキシブル回路のように、基材70上に蒸着、金属箔のラミネートやメッキ等により導電性金属を積層し、エッチングでパターンを形成し、次いで用いるホットメルト電極50を形成し、検出パターン60の配線と結線する方法が挙げられる。
配線パターン3cと電極50との間の接合部分は、接触抵抗が小さければそのまま印刷により結線できる。また、接触抵抗が大きい場合は銀ペーストや金属フィラーによる導電性接着剤等により結線してもよい。配線パターン3c上には更に当該配線パターンを封止する保護部55を有してもよく、また、耐候性のある基材と粘着剤を積層したラミネートフィルムによって全体または部分的にラミネートしてもよい。
電極50と同一面にパターン配線3cを印刷する場合は、配線の端部で電極を形成し、電極を部分的あるいは全体を露出させて加熱溶融してコンクリート構造物1の表面上に設置できる。パターン配線付電極シートの電極50の反対面にパターン配線3cを印刷する場合は電圧検出部または電極部の基材にスルーホールを設けその中に導電インキ、導電性の接着剤、あるいはホットメルト電極を埋め込むことで接合することもできる。その場合もパターン配線3c上に保護部55を有してもよく、耐候性のある基材と粘着剤を積層したラミネートフィルムによって全体または部分的にラミネートしてもよい。
【0076】
配線パターン3c印刷用の導電性インキは、少なくとも導電性微粒子を含有するものであり、必要に応じてバインダー成分や、溶剤などの他の成分を含有してもよいものである。
【0077】
前記導電性微粒子は、形成された導電性配線内で、焼結して焼結体となるものであってもよいが、複数の導電性微粒子が接触して導電性を発現するものが好ましい。
【0078】
導電性微粒子としては、金属微粒子、カーボン微粒子、導電性酸化物微粒子などが挙げられる。
金属微粒子としては、例えば、金、銀、銅、ニッケル、クロム、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、インジウム、アルミニウム、タングステン、モルブテン、白金等の金属単体粉のほか、銅-ニッケル合金、銀-パラジウム合金、銅-スズ合金、銀-銅合金、銅-マンガン合金などの合金粉、前記金属単体粉または合金粉の表面を、銀などで被覆した金属コート粉などが挙げられる。また、カーボン微粒子としては、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブなどが挙げられる。また、導電性酸化物微粒子としては、酸化銀、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ルテニウムなどが挙げられる。導電性微粒子は1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本実施においては、導電性配線の長期信頼性の点から、耐水性、耐酸性などの耐候性に優れたカーボン微粒子を用いることが好ましい。
【0079】
導電性微粒子の形状は特に限定されず、不定形、凝集状、鱗片状、微結晶状、球状、フレーク状、ワイヤー状等を適宜用いることができる。また、導電性微粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、導電性インキ中での分散性や、配線後の導電性の点から、0.1μm以上50μm以下が好ましく、0.5μm以上30μm以下がより好ましい。
【0080】
導電性インキは、バインダー成分を含有することが好ましい。バインダー成分としては、成膜性及び、成膜後の密着性、柔軟性などの点から樹脂を含むことが好ましい。前記樹脂は、導電性配線用途に用いられる樹脂の中から適宜選択して用いることができる。当該樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ビニルエーテル樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン樹脂、スチレン系ブロック共重合樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂などが挙げられ、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0081】
パターン配線3c中の導電性微粒子の含有割合は、パターン配線3c全量に対し、50質量%以上95質量%以下が好ましく、60質量%以上90質量%以下がより好ましい。また、パターン配線3c中のバインダー成分の含有割合は、パターン配線3c全量に対し、5質量%以上50質量%以下が好ましく、10質量%以上40質量%以下がより好ましい。
導電性微粒子の含有割合が上記下限値以上であれば、導電性に優れた導電性配線となる。また、バインダー成分の含有割合が上記下限値以上であれば、成膜性や、基材50への密着性が向上し、パターン配線付電極シート300の配線パターン3cに柔軟性を付与することができる。
【0082】
パターン配線付電極シート300cは、例えば、前記導電性微粒子と前記バインダー成分と、必要に応じて溶剤等を含有する導電性インキを調製した後、当該導電性インキを、基材上に印刷し、必要に応じて溶剤を除去することにより形成できる。
溶剤は、印刷方法に応じて適宜選択すればよい。また印刷方法は、導電性インキの組成や、パターン配線の膜厚に応じて、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷、インクジェット法など公知の印刷技術の中から適宜選択すればよい。
【0083】
パターン配線付電極シート300の導電性配線の厚みは特に限定されず、導電性と柔軟性を両立する点から、例えば、1μm以上500μm以下とすることができ、10μm以上300μm以下が好ましい。また、検出パターン付き電極シートの導電性配線の幅は、限定されず、必要な導電性が得られる幅とすればよい。例えば、0.1mm以上とすることができ、1mm~100mmが好ましい。なお、複数ある導電性配線は同一の厚みや幅であってもよく、互いに異なる厚みや幅を有していてもよい。
【0084】
<パターン配線付電極シートの保護部(保護層)>
パターン配線付電極シートの保護部55は、少なくとも配線パターン3c上に設けられ、
前記配線パターン3cの傷つきや、水、酸素、酸やアルカリ等との接触を抑制し、長期信頼性を向上する。保護部55は、例えば、前記検出パターン付き電極シートのシート基材と同様のシートを貼り合せることにより保護層として形成できる。
【0085】
本実施形態の腐食センサ210のさらなる作用、効果について説明する。
まず、本実施形態では、1つの電極30及び1つの電圧検出ユニット80の複数の対を基材270全体にわたって格子状に並べているので、腐食センサ210は、コンクリート構造物1の表面1aにおける格子状の各点についての腐食状態を検出することができる。したがって、コンクリート構造物1の表面1aに沿って、腐食状態の二次元分布を測定することができる。
また、本実施形態では、ホットメルト電極50を使ったことにより、コンクリート構造物1の表面1aの腐食状態を短時間で測定できると共に、長期的な監視が可能である。加えて、無線による腐食状態の情報取得が可能であるため、処理部290さえ身近にあれば、作業者は、長期にわたって検出現場に赴くことなく、コンクリート構造物1の表面1aの任意の場所の自然電位又は腐食レベルを、任意の場所で監視したり、当該自然電位又は腐食レベルのマップデータを、任意の場所で監視したりすることができる。
また、処理部290を携帯端末で構成すれば、処理部290で腐食箇所を確認しながら、腐食箇所と判断された検出現場へ向かうことができるため、腐食箇所の補修や保守の作業効率が高まる。
【0086】
さらに、本実施形態の腐食センサ210と処理部290とは無線である。また、基材270は、可撓性を有するシートで構成されている。
したがって、例えばトンネルの内壁表面に腐食センサ210を設置する場合、トンネル内に図6のような腐食センサ210だけを持っていき、トンネル内壁に接着剤、ピン、ステープルで貼り付けるだけで、腐食センサ210の設置が完了するため、腐食センサ210の設置が簡単である。
【0087】
さらに、本実施形態のパターン配線付電極シート300を用いた腐食センサは予めシート上に検出パターン3bを基材上に設けてあるため、大面積・多点の自然電位測定を行う際に腐食センサの設置がさらに簡単になる。
【0088】
[腐食検出方法]
本実施の腐食検出方法は、
コンクリート構造物中の鋼材の腐食状態を検出する腐食検出方法であって、
前記腐食センサを準備する準備工程と、
前記腐食センサが備える電線を、前記鋼材と電気的に接続する電線接続工程と、
前記腐食センサが備える電極を、前記コンクリート構造物の表面に接着する接着工程と、
前記電極と前記鋼材との間の電圧を検出する電圧検出工程とを有し、
前記接着工程が、前記ホットメルト電極を加熱溶融する工程を含む。
【0089】
以下、本発明の腐食検出方法の実施形態について、図10を参照して説明する。
本実施形態は、図10に示す各工程が実施される。本実施形態は、腐食センサ10、110又は210のいずれかを、鉄筋2を有するコンクリート構造物1に適用することによって、実施される。
【0090】
まず、腐食センサ10を準備する(S1:準備工程)。この段階で腐食センサは、電線と、電極と、電圧検出部とが電気的接続された状態で準備してもよく、各々部品として準備してもよい。本実施形態において腐食センサは、後述する電圧検出工程の前に準備されていればよい。
次に、鉄筋2に電線を電気的に接続する(S2:電線接続工程)。次に、電極30と、コンクリート構造物1の表面1aとを、ホットメルト電極50を介して電気的に接触させる(S3:接着工程)。続いて、電線と、照合電極40の板面40bとの間の電圧を電圧検出部で検出する(S4:電圧検出工程)。
検出した電圧は、電圧検出部においてそのまま表示、印刷等によって出力され、作業者に提示されてもよいが、本実施形態では、さらに、検出された電圧に基づく情報を処理部に無線送信する工程を有していてもよい(S5:無線送信工程)。検出された電圧に基づく情報は、処理部において表示、印刷等によって出力され、作業者に提示される。
【0091】
本実施形態では、接着工程において、少なくともホットメルト電極50を備えた複数の電極30を用いて、前記ホットメルト電極を加熱溶融する工程を含む。このような手法により、コンクリート構造物1の表面1aに凹凸があったとしても、ホットメルト電極50は、溶融時に凹凸に沿って変形し、更に、コンクリート構造物1の微細な空隙を埋めることができる。その結果、コンクリート構造物1の表面1aに対し、電気的接触を良好に維持している。
【0092】
本実施形態の腐食センサは、トンネルに限らず、鋼材を有するコンクリート構造物であればどのようなものでも適用可能である。例えば、橋梁、橋脚、ダム等の鋼材を有するコンクリート構造物に適用されてもよい。
【実施例
【0093】
以下、本発明を実施例により具体的かつ詳細に説明するが、これらの実施例は本発明の一態様に過ぎず、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0094】
[腐食センサ用電極の製造]
<製造例1>
加熱装置を備えた卓上ニーダーにSIS(スチレン・イソプレン・スチレン)系エラストマーをベースとしたホットメルト樹脂とカーボンフィラーを加え、130~180℃で3時間加熱攪拌した。エラストマーの溶け残りがないことを確認し、ホットメルト電極を得た。作製したホットメルト電極をポリイミドフィルム(カプトン200EN:東レ・デュポン株式会社製)上に200μmの厚みで積層し、基材を有する電極とした。電極部位の体積抵抗率は2×10Ωcmであった。
【0095】
<製造例2>
加熱装置を備えた卓上ニーダーにSIS(スチレン・イソプレン・スチレン)系エラストマーをベースとしたホットメルト樹脂とカーボンフィラーを加え、130~180℃で3時間加熱攪拌した。エラストマーの溶け残りがないことを確認し、ホットメルト電極を得た。作製したホットメルト電極をPEN(ポリエチレンナフタレート)フィルム上に100μmの厚みで積層し、基材を有する電極とした。電極部位の体積抵抗率は3×10Ωcmであった。
【0096】
<製造例3>
加熱装置を備えた卓上ニーダーにSEPS(スチレン・エチレン・プロピレン・スチレン)系エラストマーをベースとしたホットメルト樹脂とカーボンフィラーを加え、130~180℃で3時間加熱攪拌した。エラストマーの溶け残りがないことを確認し、ホットメルト電極を得た。作製したホットメルト電極をPENフィルム上に200μmの厚みで積層し、基材を有する電極とした。電極部位の体積抵抗率は2×10-1Ωcmであった。
【0097】
<製造例4>
加熱装置を備えた卓上ニーダーにSEPS(スチレン・エチレン・プロピレン・スチレン)系エラストマーをベースとしたホットメルト樹脂、粘着付与剤、可塑剤及びカーボンフィラーを加え、130~180℃で3時間加熱攪拌した。エラストマーの溶け残りがないことを確認し、ホットメルト電極を得た。作製したホットメルト電極をポリイミドフィルム上に1000μmの厚みで積層し、基材を有する電極とした。電極部位の体積抵抗率は2×10Ωcmであった。
【0098】
<製造例5>
加熱装置を備えた卓上ニーダーにSEBS(スチレン・エチレン・ブチレン・スチレン)系エラストマーをベースとしたホットメルト樹脂とカーボンフィラーを加え、130~180℃で3時間加熱攪拌した。エラストマーの溶け残りがないことを確認し、ホットメルト電極を得た。作製したホットメルト電極をPENフィルム上に300μmの厚みで積層し、基材を有する電極とした。電極部位の体積抵抗率は6×10Ωcmであった。
【0099】
<製造例6>
加熱装置を備えた卓上ニーダーにポリアミド系熱可塑性樹脂をベースとしたホットメルト樹脂とカーボンフィラーを加え、130~180℃で3時間加熱攪拌した。エラストマーの溶け残りがないことを確認し、ホットメルト電極を得た。作製したホットメルト電極をPENフィルム上に150μmの厚みで積層し、基材を有する電極とした。電極部位の体積抵抗率は5×10Ωcmであった。
【0100】
<製造例7>
加熱装置を備えた卓上ニーダーにポリエステル系熱可塑性樹脂をベースとしたホットメルト樹脂とカーボンフィラーを加え、130~180℃で3時間加熱攪拌した。エラストマーの溶け残りがないことを確認し、ホットメルト電極を得た。作製したホットメルト電極をPENフィルム上に500μmの厚みで積層し、基材を有する電極とした。電極部位の体積抵抗率は4×10Ωcmであった。
【0101】
<製造例8>
加熱装置を備えた卓上ニーダーにポリオレフィン系熱可塑性樹脂をベースとしたホットメルト樹脂とカーボンフィラーを加え、130~180℃で3時間加熱攪拌した。エラストマーの溶け残りがないことを確認し、ホットメルト電極を得た。作製したホットメルト電極をPENフィルム上に250μmの厚みで積層し、基材を有する電極とした。電極部位の体積抵抗率は1×10Ωcmであった。
【0102】
<製造例9>
加熱装置を備えた卓上ニーダーにポリウレタン系熱可塑性樹脂をベースとしたホットメルト樹脂とカーボンフィラーを加え、130~180℃で3時間加熱攪拌した。エラストマーの溶け残りがないことを確認し、ホットメルト電極を得た。作製したホットメルト電極をPENフィルム上に400μmの厚みで積層し、基材を有する電極とした。電極部位の体積抵抗率は1×10Ωcmであった。
【0103】
<製造例10>
加熱装置を備えた卓上ニーダーにポリ塩化ビニル(PVC)系熱可塑性樹脂をベースとしたホットメルト樹脂とカーボンフィラーを加え、130~180℃で3時間加熱攪拌した。エラストマーの溶け残りがないことを確認し、ホットメルト電極を得た。作製したホットメルト電極をPENフィルム上に200μmの厚みで積層し、基材を有する電極とした。電極部位の体積抵抗率は1×10Ωcmであった。
【0104】
<製造例11>
加熱装置を備えた卓上ニーダーにSEPS(スチレン・エチレン・プロピレン・スチレン)系エラストマーをベースとしたホットメルト樹脂と銀フィラーを加え、130~180℃で3時間加熱攪拌した。エラストマーの溶け残りがないことを確認し、ホットメルト電極を得た。作製したホットメルト電極をPEN基材上に200μmの厚みで積層された電極を得た。電極部位の体積抵抗率は4×10-4Ωcmであった。
【0105】
<ホットメルト樹脂組成物および封止材シートの製造例>
攪拌機を備えたステンレスビーカーに、熱可塑性樹脂としてSISを、150℃の温度で加熱して溶融した。その後、攪拌を行って、均一に分散された溶融溶液を得た(ホットメルト樹脂組成物1)。当該ホットメルト樹脂組成物1を離型フィルムに挟み、テスター産業製卓上テストプレス機にて100℃100kgf/cmで30秒間熱プレスをおこない膜厚200~300μmのシート状に加工し封止材シート1とした。
【0106】
<製造例12:パターン配線付電極シート>
300mm×100mmのポリアミドフィルム(カプトン200EN:東レ・デュポン株式会社製)の基材上に図10のように導電性カーボンインキ(カーボン系導電ペースト RA FS 090:東洋インキ製)で幅10mmライン4本をライン間スペース5mmで検出パターン303bを印刷し100℃30分で熱乾燥させて、さらに実施例1で作成したホットメルト電極を40mm×40mmとなるように基材上に200μmの厚みで積層し、更に電極部分を避け、配線部分を覆うように基材上に封止材シートを離型フィルムの上から熱ロールラミを150℃、4kgf/cm、1m/minで行い、電極と炭素配線と封止材を備えるパターン配線付電極シート300を得た(図10)。電極部位の体積抵抗率は2×10Ωcmであった。
【0107】
<製造例13:パターン配線付電極シート>
300mm×100mmのポリアミドフィルム(カプトン200EN:東レ・デュポン株式会社製)の基材上に図10のように導電性銀ペースト( RA FS 007:東洋インキ製)で幅10mmライン4本をライン間スペース5mmで検出パターン303bを印刷し100℃30分で熱乾燥させて、さらに実施例1で作成したホットメルト電極を40mm×40mmとなるようにポリイミドフィルム(カプトン200EN:東レ・デュポン株式会社製)上に200μmの厚みで積層し、更に電極部分を避け、配線部分を覆うように基材上に封止材シートを離型フィルムの上から熱ロールラミを150℃、4kgf/cm、1m/minで行い、電極と炭素配線と封止材を備えるパターン配線付電極シート300を得た(図10)。電極部位の体積抵抗率は2×10Ωcmであった。
【0108】
<製造例14:パターン配線付電極シート>
300mm×100mmの片面ポリイミド銅張積層板(F30-VC1:ニッカン工業株式会社製)の基材上に図10の様に幅1mmのライン4本をライン間スペース5mmで検出パターン303bを銅エッチングで形成し、さらに電極部分を避け配線部分を覆うように基材上にポリイミドカバーレイフィルム(ニカフレクスCSKE ベースフィルム厚さ25μm:日刊工業株式会社製)を貼り付け、カバーレイ部分を160℃×90分、成型圧力4MPaで熱プレスし配線部分を封止した。さらに実施例で作成したホットメルト電極を40mm×40mmとなるように基材上に300mmの厚みで積層し、電極とエッチングによる銅配線による配線パターンとカバーレイによる封止材を備えるパターン配線付電極シート300を得た(図10)。電極部位の体積抵抗率は2×10Ωcmであった。
【0109】
<比較製造例1>
高分子ポリマー(Poly(styrene-b-ethylene oxide-b-styrene):PS-PEO-PS)とイオン液体とを混合してなるイオン導電性ゲルをアルミ箔上に積層することによってイオン導電性を持つ電極を得た。電極部位のイオン伝導度は4×10-2Scmであった。
【0110】
【表1】
【0111】
<実施例1>
(測定)
1.体積抵抗率の測定
製造例1で作製した電極とポリイミドフィルムの積層物を1.5cm×3cmに裁断し、低抵抗率計(株式会社三菱化学アナリテック製:ロレスターGX MCP-T700)を用いて電極部位の体積抵抗率の測定を行った。3回測定し、その平均値を測定値とした。
【0112】
2.接着力の測定
接着力判定には島津製作所社製の引張試験機EX―SXを用いて測定した。製造例1で得られた、200μmの厚みを持つホットメルト電極とポリイミドフィルムの積層物からなる25mm幅のシートをグラインダーで表面研磨処理をした7cm×7cmのコンクリート被着体表面、に対してホットメルト電極側を貼りつけ、さらに200℃に加熱した板を基材の上から1分間押し付けることでコンクリートに対する接着を行った。加熱終了後、室温に戻るまで24時間放置したものを測定サンプルとした。測定方法はシートの端を90度の角度で速度を50mm/min.で引き剥がしたときの荷重から接着力を評価した。
使用グラインダー:Monotaro スリムディスクグラインダー(MRO-100DG)
【0113】
3.複合腐食耐性試験
複合腐食試験は日本自動車技術会規格(JASO)M609/M610に準拠した試験を長時間実施した。具体的には複合腐食試験機(BQD-2)内部にサンプルを地面に対して70度に傾けた状態で置いた。サンプルの複合腐食条件は、初めに5%NaCl、35℃で2時間塩水噴霧を行った後、50%RH、60℃の乾燥環境下に4時間おき、さらに95%RH、50℃の湿潤環境下に2時間おいた。このサイクルを200回実施した。実施後、測定サンプルを回収し、下記の試験前後の結果を比較することで劣化判定を行った。
【0114】
A.導電性変化
複合腐食試験測定用のサンプルは1.体積抵抗率の測定、と同様にして作製し、同時に抵抗率も測定した。サンプルを複合腐食試験機に投入し、上記の条件で腐食サイクル試験を行った後、同様の方法でサンプルの体積抵抗率の測定を行った。
複合腐食試験前後で体積抵抗率が1×10Ωcm未満を保持している場合は◎、複合腐食試験前後で体積抵抗率が1×10Ωcm未満を保持している場合は〇、それ以外の場合は×とした。
【0115】
B.接着性変化
実施例1で作製した、ホットメルト電極がコンクリートに接着した測定サンプルを上記条件で腐食サイクル試験を行った後、同様の方法にて接着力を評価した。試験前の接着力が10N以上でかつ腐食試験後の接着力値の低下が10N未満の場合は◎、試験前の接着力が5N以上でかつ腐食試験後の接着力値の低下が5N未満の場合は〇、それ以外の場合は×とした。
使用グラインダー:Monotaro スリムディスクグラインダー(MRO-100DG)
【0116】
4.自然電位測定(自然電位計測ノイズ・鉄筋劣化検知)
実施例1で作製したホットメルト電極とポリイミドフィルムからなる積層体を鉄筋コンクリートの表面にホットメルト電極部位を貼付し、上から150℃~250℃に加熱した状態で平板で圧をかける事によりコンクリート表面に接着した。当該電極と、コンクリート中の鉄筋に接続される導線との間に電圧計に接続することで計測を可能とした。この時、鉄筋との導線接合部位は封止材で保護することによって導線部位が水にぬれないようにした。水槽の水位を6時間ごとに干満させることにより、鉄筋部位の腐食を促進させた。
電位計測中のノイズレベルが20mV未満の時は自然電位計測ノイズを◎、20mV以上50mV未満の時を〇、50mV以上を×とした。
さらに、電位計測中、電位が1日以内で50mV以上負に変化し、さらに内部の鉄筋のさびが確認された場合は自然電位鉄筋劣化検知を〇、それ以外を×とした。
【0117】
<比較例1>
比較製造例1で作製したイオンゲル電極をアルミ基板上に500μmの厚みで積層されたものを用いて、下記の測定を行った。導電性の評価は交流インピーダンス法を用いて行った。
【0118】
<測定>
1.イオン伝導率の測定
比較製造例1で作製したイオンゲル電極を、インピーダンスアナライザーを用いてイオン伝導率の測定を行った。3回測定し、その平均値を測定値とした。
【0119】
2.接着力の測定
接着力判定には島津製作所社製の引張試験機EX―SXを用いて測定した。比較製造例1で得られた、500μmの厚みを持つイオンゲル電極とアルミ基材の積層物からなる25mm幅のシートをグラインダーで表面研磨処理をした7cm×7cmのコンクリート被着体表面、に対してイオンゲル電極側を貼りつけることで接着を行った。接着力の測定方法はシートの端を90度の角度で速度を50mm/min.で引き剥がしたときの荷重から接着力を評価した。
使用グラインダー:Monotaro スリムディスクグラインダー(MRO-100DG)
【0120】
3.複合腐食耐性試験
複合腐食試験は日本自動車技術会規格(JASO)M609/M610に準拠した試験を長時間実施した。具体的には複合腐食試験機(BQD-2)内部にサンプルを地面に対して70度に傾けた状態で置いた。サンプルの複合腐食条件は、初めに5%NaCl、35℃で2時間塩水噴霧を行った後、50%RH、60℃の乾燥環境下に4時間おき、さらに95%RH、50℃の湿潤環境下に2時間おいた。このサイクルを200回実施した。実施後、測定サンプルを回収し、下記の試験前後の結果を比較することで劣化判定を行った。
【0121】
A.導電性変化
複合腐食試験測定用のサンプルは1.イオン伝導率の測定、と同様にして作製し、同時に抵抗率も測定した。サンプルを複合腐食試験機に投入し、上記の条件で腐食サイクル試験を行った後、同様の方法でサンプルの導電性の測定を行った。複合腐食試験前後でイオン伝導率が1×10-3S/cm以上を保持している場合は◎、複合腐食試験前後でイオン伝導率が1×10-5S/cm以上を保持している場合は〇、それ以外の場合は×とした。
【0122】
B.接着性変化
比較例1で作製した、イオンゲル電極がコンクリートに接着した測定サンプルを上記条件で腐食サイクル試験を行った後、同様の方法にて接着力を評価した。試験前の接着力が10N以上でかつ腐食試験後の接着力値の低下が10N未満の場合は◎、試験前の接着力が5N以上でかつ腐食試験後の接着力値の低下が5N未満の場合は〇、それ以外の場合は×とした。
使用グラインダー:Monotaro スリムディスクグラインダー(MRO-100DG)
【0123】
4.自然電位測定(自然電位計測ノイズ・鉄筋劣化検知)
比較例1で作製したイオンゲル電極を鉄筋コンクリートの表面に貼付することによりコンクリート表面に接着した。当該電極と、コンクリート中の鉄筋に接続される導線との間に電圧計に接続することで計測を可能とした。この時、鉄筋との導線接合部位は封止材で保護することによって導線部位が水にぬれないようにした。水槽の水位を6時間ごとに干満させることにより、鉄筋部位の腐食を促進させた。
電位計測中のノイズレベルが20mV未満の時は自然電位計測ノイズを◎、20mV以上50mV未満の時を〇、50mV以上を×とした。
さらに、電位計測中、電位が1日以内で50mV以上負に変化し、さらに内部の鉄筋のさびが確認された場合は自然電位鉄筋劣化検知を〇、それ以外を×とした。
【0124】
<実施例2~13、比較例1>
実施例1と同様の方法にて、実施例2~13、比較例1の作製と測定を行った。結果を表2に示す。
【0125】
【表2】
【符号の説明】
【0126】
1:コンクリート構造物
1a:表面
2:鉄筋
3a:電線
3b:検出パターン
3c:配線パターン
5:腐食検出システム
10:腐食センサ
20:接点
30:電極
40:照合電極
40a:板面
40b:板面
50:ホットメルト電極
55:保護部
60:電圧検出部
70:基材
80:電圧検出ユニット
81:無線送信部
82:バッテリ
90:処理部
105:腐食検出システム
110:腐食センサ
170:基材
170a:表面
203a:電線
203b:検出パターン
203d:副パターン
203D:主パターン
205:腐食検出システム
210:腐食センサ
260:電圧検出部
270:基材
270a:表面
270b:裏面
290:処理部
Sd:信号
300:パターン配線付電極シート
303b:検出パターン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10