(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-22
(45)【発行日】2023-03-03
(54)【発明の名称】SiCインゴット製造用基板の製造方法、及び、SiCインゴット製造用基板
(51)【国際特許分類】
C30B 29/36 20060101AFI20230224BHJP
【FI】
C30B29/36 A
(21)【出願番号】P 2018041835
(22)【出願日】2018-03-08
【審査請求日】2021-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】511027622
【氏名又は名称】ランテクニカルサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】松本 好家
【審査官】宮崎 園子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-116679(JP,A)
【文献】特開2011-184224(JP,A)
【文献】特開2011-256053(JP,A)
【文献】特開2017-188204(JP,A)
【文献】特開2016-013949(JP,A)
【文献】特開2016-18891(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 29/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiC結晶が形成されるSiC基板とSiC基板を支持する支持基板とが接合される接合予定面の少なくとも一方に、SiC中間層を形成する形成工程と、
SiC基板と支持基板とを互いに押し付けて、SiC中間層を介してSiC基板と支持基板とを常温で接合する接合工程と、
SiC基板と支持基板とを剥離する剥離工程と、
を備え、
接合工程の前に、SiC基板と支持基板の接合予定面の少なくとも一方を不活性ガスを含むガス雰囲気中に晒すこと、
を特徴とするSiCインゴット製造用基板の製造方法。
【請求項2】
接合工程の後、かつ剥離工程の前に、SiC基板上にSiC分子を蒸着させてSiCのインゴットを形成するインゴット形成工程を備えること、を特徴とする請求項1に記載のSiCインゴット製造用基板の製造方法。
【請求項3】
支持基板がグラファイト(黒鉛)基板、または、SiC基板であること、を特徴とする請求項1または2に記載のSiCインゴット製造用基板の製造方法。
【請求項4】
形成工程において、SiC中間層を複数形成すること、を特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のSiCインゴット製造用基板の製造方法。
【請求項5】
接合工程の前に、SiC基板か支持基板の少なくとも一方の接合予定面を、所定の運動エネルギーを備える粒子を照射することで活性化させる表面活性化工程をさらに備えること、を特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のSiCインゴット製造用基板の製造方法。
【請求項6】
接合工程の前に、SiC中間層の表面を、所定の運動エネルギーを備える粒子を照射することで活性化させる表面活性化工程をさらに備えること、を特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のSiCインゴット製造用基板の製造方法。
【請求項7】
接合工程の前に、基板接合予定面の一部を選択的に表面活性化すること、を特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のSiCインゴット製造用基板の製造方法。
【請求項8】
不活性ガスが窒素、アルゴン、またはこれらの混合ガスであること、を特徴とする請求項1に記載のSiCインゴット製造用基板の製造方法。
【請求項9】
接合工程が、真空雰囲気中または不活性ガス雰囲気中で行われる、請求項1から8のいずれか一項に記載のSiCインゴット製造用基板の製造方法。
【請求項10】
不活性ガス雰囲気中で行われる接合工程の不活性ガスが窒素、アルゴン、またはこれらの混合ガスであること、を特徴とする請求項9に記載のSiCインゴット製造用基板の製造方法。
【請求項11】
接合工程が、バックグラウンド圧力が1×10
-8Pa以上大気圧未満である、真空ないしは減圧雰囲気中で行われる、請求項1から10のいずれか一項に記載のSiCインゴット製造用基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SiCインゴット製造用基板の製造方法、及び、SiCインゴット製造用基板に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、母材となるSiC(炭化ケイ素)基板とグラファイト(黒鉛)基板を接着した後、チャンバーの中でSiC基板の表面に気化したSiC分子を蒸着させてSiCのインゴットを製造している。例えば、特許文献1には、グラファイト基板が接着されたSiCからなる種結晶基板上にSiC結晶を成長させることにより、SiCのインゴットを製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
SiCのインゴットが製造された後、SiC基板とグラファイト基板は剥離される。一般的に、SiCのインゴットを製造する際のチャンバー内の温度は2300℃以上あり、さらに、SiCのインゴットが完成するまで200時間以上かかっている。通常、SiC基板とグラファイト基板の接着には耐熱性に優れる接着剤を用いているが、インゴット製造に必要な温度を長時間に亘ってかけると、接着剤の物性が変化するという問題がある。
【0005】
また、接着剤による接着時にSiC基板とグラファイト基板との間にピンホール状の欠陥が存在する場合、インゴット製造時の高温により、ピンホール内部のガス残渣が熱により膨張し、SiC基板とグラファイト基板が剥離する恐れもある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、SiCインゴットが蒸着されるSiC基板と、SiC基板が接着される支持基板とを接着剤を用いずに接着することができる、SiCインゴット製造用基板の製造方法、及び、SiCインゴット製造用基板を提供することを目的とする。
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明におけるSiCインゴット製造用基板の製造方法は、SiC結晶が形成されるSiC基板とSiC基板を支持する支持基板とが接合される接合予定面の少なくとも一方に、SiC中間層を形成する形成工程と、SiC基板と支持基板とを互いに押し付けて、SiC中間層を介してSiC基板と支持基板とを接合する接合工程と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の一態様によれば、SiC基板と支持基板とを剥離する剥離工程をさらに備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の一態様によれば、接合工程の後、かつ剥離工程の前に、SiC基板上にSiC分子を蒸着させてSiCのインゴットを形成するインゴット形成工程を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の一態様によれば、上記製造方法において、支持基板がグラファイト(黒鉛)基板、または、SiC基板であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の一態様によれば、上記製造方法において、形成工程において、SiC中間層を複数形成することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の一態様によれば、上記製造方法において、接合工程の前に、SiC基板か支持基板の少なくとも一方の接合予定面を、所定の運動エネルギーを備える粒子を照射することで活性化させる表面活性化工程をさらに備える。
【0013】
また、本発明の一態様によれば、上記製造方法において、接合工程の前に、SiC中間層の表面を、所定の運動エネルギーを備える粒子を照射することで活性化させる表面活性化工程をさらに備える。
【0014】
また、本発明の一態様によれば、上記製造方法において、接合工程の前に、基板接合予定面の一部を選択的に表面活性化する。
【0015】
また、本発明の一態様によれば、上記製造方法において、接合工程の前に、SiC基板と支持基板の接合予定面の少なくとも一方を不活性ガスを含むガス雰囲気中に晒す。
【0016】
また、本発明の一態様によれば、上記製造方法において、不活性ガスが窒素、アルゴン、またはこれらの混合ガスである。
【0017】
また、本発明の一態様によれば、上記製造方法において、接合工程が、真空雰囲気中または不活性ガス雰囲気中で行われる。
【0018】
また、本発明の一態様によれば、上記製造方法において、接合工程が行われる不活性ガス雰囲気中の不活性ガスは窒素、アルゴン、またはこれらの混合ガスである。
【0019】
また、本発明の一態様によれば、上記製造方法において、接合工程が、バックグラウンド圧力が1×10-8Pa以上大気圧未満である、真空ないしは減圧雰囲気中で行われる。
【0020】
また、本発明の一態様によれば、上記の製造方法によって製造されるSiCインゴット製造用基板が提供される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、SiCインゴットが蒸着されるSiC基板と、SiC基板が接着される支持基板とを接着剤を用いずに接着することができるので、SiCインゴット製造に必要な高温に長時間さらされても、SiC基板と支持基板との接合面にボイドの発生などの劣化がなく、SiC基板と支持基板と剥離の恐れがないという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本実施の形態に係るSiCインゴット製造用基板の製造方法を説明する図である。
【
図2】接合工程の後に、SiC結晶を成長させる工程の一例を説明する図である。
【
図3】他の実施の形態1に係るSiCインゴット製造用基板の製造方法の工程を説明する図である。
【
図4】他の実施の形態2に係るSiCインゴット製造用基板の製造方法の工程を説明する図である。
【
図5】本発明の実施例に係る接合体の接合面を撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、実施形態を挙げて本発明を説明するが、本発明がこれらの具体的な実施形態に限定されないことは自明である。
【0024】
[実施形態1]
本実施形態の製造方法は、SiCインゴット製造用基板の製造方法であって、SiC結晶が形成されるSiC基板とSiC基板を支持する支持基板とが接合される接合予定面の少なくとも一方に、SiC中間層を形成する形成工程と、SiC基板と支持基板とを互いに押し付けて、SiC中間層を介してSiC基板と支持基板とを接合する接合工程と、を備える。
【0025】
上記構成からなる製造方法では、SiC中間層を介してSiC基板と支持基板とを接合することにより、基板接合後の工程において、2300℃以上の加熱処理などを行っても、接合面が劣化せず、後に基板と支持基板とを容易に剥離することができる。または、材料や条件によってはさらなる高温で加熱処理を行ってもSiC基板と支持基板は容易に剥離できる可能性がある。
【0026】
図1は、本実施形態に係るSiCインゴット製造用基板の製造方法の一例を説明する図である。この例では、SiC結晶が形成されるSiC基板1と、SiC基板1を支持する支持基板2とが、支持基板2上に形成されたSiC中間層3を介して接合されることにより、SiCインゴット製造用基板が製造される形態を示している。
【0027】
(a)SiC基板および支持基板の準備工程
SiC結晶が形成されるSiC基板1と、該基板を支持する支持基板2とを用意する。
(b)SiC中間層形成工程
SiC基板1が接合される支持基板2の接合予定面に、SiC中間層3を形成する。
(c)基板接合工程
SiC基板1と支持基板2とを互いに押し付けて、SiC中間層3を介してSiC基板と支持基板とを接合して、基板接合体を形成する。この結果、SiCインゴット製造用基板が製造される。
【0028】
図2は、SiCインゴット製造用基板にSiC結晶を成長させる工程の一例を説明する図である。
【0029】
(d)SiCエピタキシャル成長工程
支持基板2との接合面とは反対の面にエピタキシャル成長のためのSiC含有原料ガス4を接触流通させる。
(e)SiCインゴットの形成
SiC基板1上にSiCがエピタキシャル成長により形成され、SiC基板1とエピタキシャル成長により形成されたSiCからなるSiCインゴット5が形成される。
【0030】
上記の製造方法において、支持基板2はグラファイト(黒鉛)基板、または、SiC基板であってよい。
【0031】
上記の製造方法において、工程(b)と工程(c)との間に、後述する表面活性化工程をさらに備えてもよい。
【0032】
上記製造方法において、接合工程の前に、SiC基板1か支持基板2の少なくとも一方の接合予定面を、所定の運動エネルギーを備える粒子を照射することで活性化させる表面活性化工程をさらに備えてもよい。
【0033】
あるいは、上記製造方法において、接合工程の前に、SiC中間層3の表面を、所定の運動エネルギーを備える粒子を照射することで活性化させる表面活性化工程をさらに備えてもよい。
【0034】
表面活性化工程における表面活性化処理により、基板接合工程において、SiC基板1、又は、支持基板2上に形成されたSiC中間層3のいずれか同士の接合界面の接合強度を増すことができる。
【0035】
所定の運動エネルギーを有する粒子を衝突させて、接合面を形成する物質を物理的に弾き飛ばす現象(スパッタリング現象)を生じさせることで、酸化物や汚染物など表面層を除去し、表面エネルギーの高い、すなわち活性な無機材料の新生表面を露出させることができる。
【0036】
表面活性化処理に用いる粒子として、たとえば、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)、ヘリウム(He)などの希ガスまたは不活性ガスを採用することができる。これらの希ガスは、衝突される接合面を形成する物質と化学反応を起こしにくいので、化合物を形成するなどして、接合面の化学的性質を大きく変化させることはない。
【0037】
表面活性化される接合面に衝突させる粒子には、粒子ビーム源やプラズマ発生装置を用いて、粒子を接合面に向けて加速することで所定の運動エネルギーを与えることができる。
【0038】
表面活性化される接合面に衝突させる粒子の運動エネルギーは、1eVから2keVであることが好ましい。上記の運動エネルギーにより、効率的に表面層におけるスパッタリング現象が生じると考えられる。除去すべき表面層の厚さ、材質などの性質、新生表面の材質などに応じて、上記運動エネルギーの範囲から所望の運動エネルギーの値を設定することもできる。
【0039】
粒子ビーム源を用いて、粒子に所定の運動エネルギーを与えることもできる。粒子ビーム源は、たとえばバックグラウンド圧力が1×10-8Pa(パスカル)以下などの、比較的高い真空中で作動する。比較的高い真空に引くために真空ポンプの作動により、金属領域の表面から除去された物質が効率よく雰囲気外へ排気される。
【0040】
これにより、露出された新生表面への望ましくない物質の付着を抑制することができる。さらに、粒子ビーム源は、比較的高い加速電圧を印加することができるので、高い運動エネルギーを粒子に付与することができる。したがって、効率よく表面層の除去および新生表面の活性化を行うことができると考えられる。
【0041】
あるいは、バックグラウンド圧力が1×10-8Pa以上大気圧未満である、真空ないしは減圧雰囲気中で表面活性化処理を行ってもよい。
【0042】
粒子ビーム源として、イオンビームを放射するイオンビーム源や中性原子ビームを放射する中性原子ビーム源を用いることができる。イオンビーム源としては、コールドカソード型イオン源を用いることができる。
【0043】
中性原子ビーム源としては、高速原子ビーム源(FAB,Fast Atom Beam)を用いることができる。高速原子ビーム源(FAB)は、表面層を剥がすための典型的なプラズマを発生させ、このプラズマに電界を掛けて、プラズマから電離した粒子の陽イオンを摘出し電子雲の中を通過させて中性化する構成を有している。
【0044】
この場合、たとえば、希ガスとしてアルゴン(Ar)の場合、高速原子ビーム源(FAB)への供給電力を、1.5kV(キロボルト)、15mA(ミリアンペア)に設定してもよく、あるいは0.1から500W(ワット)の間の値に設定してもよい。たとえば、高速原子ビーム源(FAB)を100W(ワット)から200W(ワット)で稼動してアルゴン(Ar)の高速原子ビームを2分ほど照射すると、接合面の上記酸化物、汚染物など(表面層)は除去され、新生表面を露出させることができる。
【0045】
本発明において、表面活性化に用いられる粒子は、中性原子またはイオンでもよく、さらには、ラジカル種でもよく、またさらには、これらが混合した粒子群でもよい。
【0046】
各プラズマまたはビーム源の稼動条件、または粒子の運動エネルギーに応じて、表面層の除去速度は変化しえる。そこで、表面活性化処理に必要な処理時間を調節する必要がある。
【0047】
たとえば、オージェ電子分光法(AES,Auger Electron Spectroscopy)やX線光電子分光法(XPS,X-ray Photo Electron Spectroscopy)などの表面分析法を用いて、表面層に含まれる酸素や炭素の存在が確認できなくなる時間またはそれより長い時間を、表面活性化処理の処理時間として採用してもよい。
【0048】
プラズマ発生装置を用いて、粒子に所定の運動エネルギーを与えることもできる。基板の接合面に対して、交番電圧を印加することで、接合面の周りに粒子を含むプラズマを発生させ、プラズマ中の電離した粒子の陽イオンを、上記電圧により接合面に向けて加速させることで、所定の運動エネルギーを与える。
プラズマは数パスカル(Pa)程度の低真空度の雰囲気で発生させることができるので、真空システムを簡易化でき、かつ真空引きなどの工程を短縮化することができる。
【0049】
上記製造方法において、SiC基板1と支持基板2とを接合する接合工程の前に、基板表面へ選択的に表面活性化処理を施してもよい。また接合工程の前に、SiC中間層3の一部へ選択的に表面活性化を施してもよい。
【0050】
SiC中間層3の一部とは、たとえば、SiC基板1の外周部であり、外周部のみ表面活性化処理を施すことにより、SiC基板1の中央部に対して外周部の接合力が高くなり好ましい。
【0051】
支持基板2は、既設の設備を使えるという観点から、厚みが0.1mm以上1.1mm以下であることが好ましい。
【0052】
SiC中間層3は、プラズマ促進化学気相成長法(PECVD)やスパッタ蒸着、イオンビームスパッタなどの堆積方法で形成されることが好ましいが、これに限られない。SiC中間層3を形成する際に、所定のマスクを用いることで、所定の領域にのみ形成することができる。
【0053】
SiC基板1と支持基板2との接合のために用いられるSiC中間層3は、加熱工程や洗浄工程などを経た後、容易に剥がれる状態に膜厚、膜質が調整されることが好ましい。
【0054】
SiC基板1の厚みは、0.5μm以上0.5mm以下であることが好ましく、0.5μm以上0.2mm以下であることがより好ましい。
【0055】
上記の実施形態に係る製造方法において、基板接合工程は、真空雰囲気中または不活性ガス雰囲気中で行われてもよい。これにより、SiC基板1と支持基板2との接合強度が容易にコントロールできる。不活性ガスは窒素(N2)、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、等を単体で、または、これらのいずれかを組み合わせた混合ガスであってよい。
【0056】
上記の実施形態に係る製造方法において、基板接合工程の前に、SiC基板1と支持基板2の接合面を不活性ガス雰囲気中に晒す。これにより、加熱による、SiC基板1と支持基板2との接合強度の変化が生じ難い。不活性ガスは窒素(N2)、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、等を単体で、または、これらのいずれかを組み合わせた混合ガスであってよい。
【0057】
上記実施形態に係る製造方法において、基板接合工程が、バックグラウンド圧力が1×10-8Pa以上大気圧未満である、真空ないしは減圧雰囲気中で行われてもよい。
【0058】
基礎真空度をコントロールする事により、SiC中間層3中に含まれる水分、酸素を適正にコントロ―ルできる。適正にコントロールされた水分、酸素量を有するSiC中間層3は加熱時にも接合強度が増すことがなく、剥離も容易である。
【0059】
また、たとえば、先述の表面活性工程を経ずに、基板同士の接合を行ってもよい。たとえば真空中で蒸着などにより形成されたSiC中間層3は、表面において酸化や不純物による汚染などが進んでおらず、表面エネルギーが高い状態にある。このようなSiC中間層3の表面同士を接触させることで、比較的強度の高い接合界面を形成することができる。
【0060】
[他の実施形態1]
図3を参照して、他の実施形態1を示す。本実施形態は、実施形態1の
図1(b)のSiC中間層形成工程において、
図3(f)のように、SiC基板1と支持基板2の両方の接合面にSiC中間層3が形成されている点のみ異なっており、その他は実施形態1と同一の工程である。
【0061】
[他の実施形態2]
図4を参照して、他の実施形態2を示す。本実施形態は、実施形態2の
図3(f)のSiC中間層形成工程において、
図4(g)のように、SiC基板1と支持基板2の両方の接合面に複数のSiC中間層3が形成されている点のみ異なっており、その他は実施形態1と同一の工程である。なお、本図では、SiC中間層3はそれぞれ2層形成されているが、何層形成されてもよい。
【0062】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態の各構成を組み合わせることも本発明に含まれることは自明である。
【実施例】
【0063】
以下に、実施例を示す。
【0064】
[実施例]
実施例の試験は、以下の手順で行った。
(1)SiC基板(支持基板)の準備
支持基板と仮定して、厚みが0.5mmであるSiC基板を用意した。
【0065】
(2)SiC基板(SiCエピタキシャル成長用基板)の準備
SiC基板として、厚みが0.5mmであるSiC基板を用意した。
【0066】
(3)SiC中間層の形成
イオンビームスパッタを使用して、SiC中間層を、支持基板とSiC基板の接合がおこなわれる表面の両面に形成した。このときのイオンビームの入力値は、1.3Kv/400mAであった。
【0067】
(4)常温接合処理
下記条件で、常温接合処理を行った。
(常温接合条件)
5.0kN、5min
【0068】
【0069】
以上、本発明の様々な実施形態を説明したが、上記の説明は本発明を限定するものではなく、本発明の技術的範囲において、構成要素の削除、追加、置換を含む様々な変形例が考えられる。
【符号の説明】
【0070】
1 支持基板
2 SiC基板
3 SiC中間層
4 SiC含有のエピタキシャル成長原料ガス
5 SiCインゴット(エピタキシャル成長後)